>>373 縛られてるように見えたw
かわいいのう、かわいいのう
またギリギリなのよん。TSから
* * *
吾輩は猫である……今のところ。
話は数週間前にさかのぼる。
その朝、いつものようにけたたましい目覚まし時計の音で目が覚めた。
そしていつものように目覚ましを止めようと手を伸ばした。
が、手は空を切るばかり。夜中に寝ぼけて落としたのだろうか。
しかたがないので立ち上がろうとしたのだが、うまくバランスが取れない。
別に酔っているわけではない。でもなにやら違和感を覚える。
何気なく目をこする。そういえば手、こんなにふさふさしてたっけ……。
俺は手を見つめたまま凍りついた。猫?
混乱している間に、もぞもぞと動く音がして目覚ましが止んだ。
見上げると俺がいた。
俺は俺と同じように不思議そうに手を眺めていたが、やがて洗面台のほうへ歩いていった。そういえばあっちには鏡があったな。
俺はすぐに戻ってきた。手にはキャットフードを持って。
「食べる? これおいしいよ。『この』口には合わなかったみたいだけど。」
俺? 俺に話しかけてるの? どうみてもそのようだ。
ということはやっぱり俺は猫に……。
「ケンちゃんでしょ? 体、入れ替わっちゃったみたい。」
俺には飼い猫がいる。タマ、二歳メス。
つまり俺は今タマになってるってことなの? いろいろ聞きたいことがある。だが、どんなに声を出せども……。
「にゃあ!」
「……やっぱり言葉は通じないか。」
そして今に至る。いや、本当はいろいろあったんだが思い出したくもない。
近所のオスどもに追いかけられて即引きこもりになった。こいつそんなに可愛かったのだろうか。猫の基準はよく分からない。
猫の基準といえば、キャットフードはなかなか美味かった。開発者の人間はよくこんなに猫の舌にあったものを作れたな。
そしてタマの方はというと、俺とは対照的にうまく仕事をやっていってるらしい。
その上最近は俺が長い間できないでいた女まで連れ込んできやがった。お前本当にメス猫か?
「タマにもカッコイイ彼氏見つけてあげるからね」なんてことまで言いやがる。
できてたまるかっ! と思いつつちょっと期待している自分が怖ろしい。
早く元に戻らないとこのまま適応してしまいかねない。でもいろいろ調べようにも外は怖い。
まあ……そんな感じで、猫をかぶる日々はしばらく続きそうです。