【コッソリ】多ジャンルバトルロワイアル【影に】
ここは様々な作品のキャラを使ってバトルロワイアルの企画をリレー小説で行おうというスレです。
みんなでワイワイSSをつないで楽しみましょう。一見さんも、SSを書いたことのない人も大歓迎。
初投下で空気が読めないかもしれない? SS自体あまり書いたことがなくて不安?
気にせずにどうぞ! 投下しなくちゃ始まりません。
キン肉マンのラーメンマン先生曰く「最後に勝負を決めるのは技(SSの質)ではない! 精神力だ! 心だ!」
リレー小説バトルロワイアル企画とは……
原作バトルロワイアル同様にルールなし、特定会場で最後の一人が生き残るまで続くという企画です。
キャラをみんなでリレーし、交わらせ、最後の一人になるまでリレーを行う、みんなで物語を作るスレです。
ここしか書けない、このキャラしか書けないという人も分かる範囲で書けるし、
次どうなるかを期待して次の人にバトンを渡すこともできます。
全ての作品を知りつくてしなければ参加できない企画ではないので、興味が沸いたらぜひ参加を!
詳細ルールに関してはこちらを
ttp://www3.atwiki.jp/fullgenre/?page=%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB 〜予約、トリップについて〜
予約する際はトリップをつけてしたらばの予約スレに書き込んでおいてください。
トリップのつけかたは、名前欄に #の後に半角8文字以下、全角4文字以下の好きな言葉を打ち込んで書きこんで。
これは、書いてるのをかぶるのを防ぐためです。分岐制があるため、別パターンの話が2つあっても問題ありませんが、
わざわざ他人の作品にかぶせるつもりもないのに書いているキャラがかぶってしまうのを防ぐためです。
したらばに予約するのは、この「他の人が書いてるから避けよう」という心理を利用し、予約だけして放置することで
企画を妨げる「予約荒らし」という行為を防ぐためです。予約期間は3日(72時間)ですが、
間に合わないからもうちょっと伸ばして!という報告があればさらに2日予約期間を追加(48時間)できます。
したらば(予約などいろいろな時にご利用を)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11918/ wiki(まとめサイトです)
http://www3.atwiki.jp/fullgenre/
★キャラクター能力制限★
・シャナ(@灼眼のシャナ)、C.C.(@コードギアス)は再生能力を落とす&急所(頭)ぶち抜かれたら即死。
・ルルーシュ・ランペルージ(@コードギアス)のギアス能力は、「死ね」「殺せ」など、
直接相手や自分の生死に関わる命令は無効。 (「死ぬ気で頑張れ」とかならあり)
・らき☆すたキャラのオタ知識、ラノベ知識は制限。
・仮面ライダー龍騎キャラのミラーワールドへの侵入禁止。
・仮面ライダー龍騎キャラには、自分のカードデッキを支給。(ただし、支給品枠2つ分としてカウント)
・ローゼンメイデンキャラのnのフィールドへの侵入は禁止。
・泉新一(@寄生獣)はミギー付き。
・COMP(@真女神転生)は禁止。
・シャナ(@灼眼のシャナ)の「封絶」は禁止。
★支給品としてのアイテム制限★
・KMF(@コードギアス)などのロボ系は禁止。
・カードデッキ(@仮面ライダー龍騎)は、龍騎キャラには支給品として自分のものを支給。
(龍騎キャラに支給される際は、支給品枠2つ分としてカウント。それ以外のキャラに支給される場合は支給品1つの扱い)
・デスノート(@DEATH NOTE)は禁止。
・サタンサーベル(@仮面ライダーBLACK)はシャドームーンから没収&世紀王の呼び寄せ禁止。
★その他★
・ひぐらしのなく頃にの雛見沢症候群は、まあ、空気読む方向で。
・新女神転生ifの男主人公の名前は、最初に書いた人におまかせ。
6/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
○ルルーシュ・ランペルージ/○枢木スザク/○C.C./○ロロ・ランペルージ/○篠崎咲世子/○ジェレミア・ゴットバルト
6/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
○前原圭一/○竜宮レナ/○園崎魅音/○北条沙都子/○園崎詩音/○北条悟史
5/5【スクライド@アニメ】
○カズマ/○劉鳳/○由詑かなみ/○ストレイト・クーガー/○橘あすか
5/5【らき☆すた@漫画】
○泉こなた/○柊つかさ/○柊かがみ/○高良みゆき/○岩崎みなみ
5/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
○緋村剣心/○斎藤一/○志々雄真実/○瀬田宗次郎/○雪代縁
4/4【仮面ライダー龍騎@実写】
○城戸真司/○北岡秀一/○浅倉威/○東條悟
4/4【ルパン三世@アニメ】
○ルパン三世/○次元大介/○石川五ェ門/○銭形警部
4/4【ローゼンメイデン@アニメ】
○真紅/○水銀燈/○翠星石/○蒼星石
3/3【ガンソード@アニメ】
○ヴァン/○レイ・ラングレン/○ミハエル・ギャレット
3/3【寄生獣@漫画】
○泉新一/○田宮良子(田村玲子)/○後藤
3/3【ゼロの使い魔@小説】
○ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール/○平賀才人/○タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
3/3【バトルロワイアル@小説】
○稲田瑞穂/○千草貴子/○三村信史
2/2【相棒@実写】
○杉下右京/○亀山薫
2/2【仮面ライダーBLACK@実写】
○南光太郎/○シャドームーン
2/2【真女神転生if@ゲーム】
○男主人公/○狭間偉出夫
2/2【DEATH NOTE@漫画】
○夜神月/○L
2/2【TRICK@実写】
○山田奈緒子/○上田次郎
2/2【バトルロワイアル@漫画】
○織田敏憲/○桐山和雄
1/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
○アイゼル・ワイマール
1/1【灼眼のシャナ@小説】
○シャナ
65/65
すいません、スレタイ間違えました。
ただしくは『【コッソリ】多ジャンルバトルロワイアル【影に】 part2』です。
>>1乙!
早速自分から投票したいと思います。
B
自分はBで。
15 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 23:13:08 ID:aUjsun3C
Aで。
B
乙!
A
B
B
Aで
終了
Aかな
23:30を過ぎたので、OP投票を打ち切ります。
23:30までの投票で自分が集計した所
@が1票
Aが8票
Bが5票
上記の結果になりましたので、間違いが無ければOPはAの前スレ
>>946-949に決定しました。
本当ですか!?
未熟な文ですがありがとうございます。
予約は0時からでいいのですかね?
ありがとうございます。
何かミス等が合ったら修正いたしますので。
>>26 前スレにてこんなのがありました。
◆KS.UfY2NoY氏のOPにて、つかさのみゆきに対する三人称が「みゆきちゃん」になっていますが、
正しくは「ゆきちゃん」かと
wiki収容の際は修正をお願いします
>>27 あ、す、すみません……orz
何でだろう……修正しておきます。
指摘ありがとうございます。
>>29 他に候補無かったし、もう予約開始したから確定で良いと思う。
んじゃ地図、参加者、ルール、OPも本決まり
予約も開始してもう本格スタートだな
沙都子・・・せっかく悟史もいるのに・・・よりによって一番ヤバイ奴と・・・
ふと思ったんだけど、OPでルルーシュがみんなの前で思いっきり
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!」って言っちゃってるんだけど、
参加者に配られる名簿上でのルルーシュの名前は「ランぺルージ」のほうなのかな?
微妙だネッ!(^з^)-☆Chu!!
>>34 多分ランペルージの方ですね……。
ギアスの面子的に本名知っている人しかいませんし、デスノートもないので大丈夫かと思いました。
(ルルーシュはギアスかけるときは必ず本名ですし)
問題があるなら名前の部分を修正させていただきます。
泉こなた、投下します。
―――ピピピピッピピピピッピピピピッ、ピ。
目覚ましを止めて、規則的な呼吸を繰り返していた私は、瞼を開くと同時に深く息を吸い込んで一時的に呼吸を止めた。
そのままうん、と両腕を頭上へと突き出せば眠気が身体から解き放たれるような、そんな錯覚を覚えた。
近頃ネトゲを朝方までやってばかりいたため、こんな規則正しい時間に一日の始めを迎えることができたことが、何となく清々しい。
私は起きてまず、パソコン……の前まで歩み寄るが、何とか自分を制御し壁の方へとUターン。
たどり着いたところで、ハンガーに掛けていた制服に着替えた。また二階に戻ってくると今度は欲求を無視できるか不安だし、朝ご飯のときに汚れちゃっても、どうせもうすぐ衣替えだし平気平気。
ほぼ空の状態に近い鞄を握って自室を出、階段を駆け降りる。起きたばかりだったからだろうか………ちょっと頭にキて、途中から静かに降りた。
洗面台に行くと、お父さんもゆーちゃんも居なかった。ラッキーだ、……ちょっと口元が緩むと鏡の私と目が合って何だか照れくさかったから、さっさと顔を洗って歯を磨く作業に取りかかった。
歯磨き粉を適量ブラシの上に乗せたところで、それを口内へと突っ込む。利き手を緩く動かすだけの作業の退屈を察した脳が、自然に考え事を浮かび上がらせる。
…………今日はどうやってかがみんをからかおうかな。
…………今日もつかさは二度目の眠りについているのだろうか。
…………今日もみゆきさんは私を萌えさせてくれるんだろうなぁ。
…………昨日、ネトゲどこまで進んだっけ?
…………あ、今夜はあのアニメがあるんだ。楽しみ〜。
くだらないことばかりだが、こんな時間も私にとっては楽しいと言えるのだ。
…………お腹空いたな〜、今日の朝ご飯は何だろう。
…………そういえば台所から物音がしないなァ。
…………今日の食事当番はたしかゆーちゃんだったよね?
ちょうど歯磨きも終わったので、私はまず台所に行ってみた。
「ゆーちゃ……あれ、やっぱり」
…………居ない。
案の定そこには綺麗に片付けられたままの台所があっただけで、ゆーちゃんは居なかった。
…………体調が悪くなったとか?
心配になって、私は二階へと駆け上がりゆーちゃんの部屋の扉を乱雑に開く。
私が開けるときはいつも整理整頓された、女の子らしい部屋…のはずなのに、なぜか家具までさっぱり無くなっていて、隅に溜まっている埃だけが目についた。
…………まるでゆーちゃんが来る前の家みたいだ。いったいどうしたんだろう。
…………もしかして私、まだ寝ぼけてるのかな?入る部屋を間違っちゃったのかも。
慌てて空白の部屋をあとにして、廊下を見渡してみる。
でも、いくら考えても、やっぱりゆーちゃんの部屋はさっきの空室なのだ。
「ゆーちゃん?ゆーちゃん!!おーい、ゆーちゃ…」
「こなたー、朝食はまだかー?お父さん餓死しちゃうぞー!」
無償に不安になってきた私の大きな叫びを掻き消したお父さんの声。
一階から聞こえたってことは、お父さんはずっと書斎に居たってことか。
鬱陶しい感じもしたけれど、お父さんが居てくれたという事実にちょっぴり安心しながら、私はお父さんが居る一階に降りていった。
「ねぇお父さん、ゆーちゃんがどこにも居ないよ。部屋も片付けられてるし、どうしちゃったの?」
「え?」
はて、……と首をかしげるお父さん。
私は何もおかしいことは言っていないのに、不思議そうに眉を寄せる姿が、先程私の中に生まれた安堵感を不安一色で塗りつぶした。
「そうだよ、ゆーちゃんだよ」
「こなた……、」
あまりに無関心なお父さんの肩を乱暴に揺らす私の腕を、やはり理解不能とでも言いた気な顔をして、お父さんが解く。
「ゆーちゃんって、誰だ?」
…………は?
支援
支援
「ゆーちゃんはゆーちゃんでしょ。寝ぼけてないで一緒に捜すとか何とかしようヨ」
「待て待てこなた。寝ぼけてるのはお前だよ、ゆーちゃんって何のキャラクターなんだ?」
「お父さん、ふざけてる場合じゃないって。冗談はやめてよ」
「そんなこと言ってもなァ、こなた。ゆーちゃんなんて人、お父さんは知らないゾ?」
どくんどくんどくんどくんどくん。
心臓の鼓動が速くなっていく。勢いよく怒鳴ってしまったことによる副作用ではない、胸騒ぎがするからだ。
私は胸ポケットから携帯を取り出すと、ゆーちゃんの姉であるゆい姉さんに電話を掛けた。
二度目のコールが終わり、三度目にさしかかろうとしたところで、姉さんの声がした。
『んー、どしたこなたァ?こんな朝っぱらから』
「姉さん事件だよ!ゆーちゃんが居ないの、どこにも!」
『はァ〜?』
突然の出来事だからだろうか、姉さんは状況が読み込めていないらしい。
懸念と苛立ちを抑えながら、私はこの現状を最初から最後まで、一気に説明する。
『んもォ、真剣な声で事件とか言うからびっくりしたヨ。で、何の漫画の話なの?』
「姉さんまで何言ってんの!ゆーちゃんだよ?姉さんの妹のゆーちゃんが、いきなり居なくなったんだよ?」
『妹って誰?さっきからゆーちゃんゆーちゃんって‥‥。私その漫画知らないから、のってあげられな―――』
…………どうして。
それ以上聞きたくなくて、私は携帯を落としてしまった。
突如肩を落とし俯く私をお父さんが心配して声を掛けてきたが、何を言っているのか、頭の中に入ってこない。
…………何でゆーちゃんのこと、忘れたふりするの?
…………みんなはゆーちゃんのこと、心配じゃないの?
そう考えると、今度は猛烈に腹ただしくなった私は玄関に行き、鞄を取って家を飛び出した。
…………学校に行こう。ゆーちゃんが居るかもしれない。
電車に乗って、駅から学校まで全速力で走った。遅刻をするときもこんなに速度を出したことはないというのに。
きっとこの心の中にあるモヤモヤのせいだ。これがいけないんだ。だから、早くゆーちゃんに逢って、このモヤモヤを取り除こう、そうしよう。
学校の校門をくぐり抜け昇降口を通ると、上靴に履き替えることも忘れゆーちゃんのクラスへと直行した。
「ゆーちゃん!」
スライドさせた反動で半分ほど戻ってきた扉を避け、半ば滑りこむようにして教室に入る。
室内に居た一年生はみんな私の大声に驚いて、こちらに視線を注目させた。私はその眼差しに対して無視を決め込み、前の列から席を確認していく。
…………ゆーちゃんが、居ない。
「じゃあいったいどこに――」
「あっ、泉先輩おはようございます!」
「おはようございます」
「……! おはよう、みなみちゃんひよちゃん、…ゆーちゃん!」
みなみちゃんとひよちゃんの声が扉のほうから。
ここで、ゆーちゃんも一緒に登校して来たのかもしれないという希望が生まれ、私は笑顔で顔を声の出所に向けたのだけれど。
「どうしたんスかァ泉先輩、ゆーちゃんって誰?」
「…?」
ゆーちゃんは居なかった。その上、二人までお父さんや姉さん同様の反応。
唯一の希望も簡単に消えうせてしまって、私はどうしていいかわからなくなり、その場に崩れ落ちた。
「だっ、大丈夫ッスか先輩!?」
支援
…………わからない。
…………わからないよ。
…………ゆーちゃんはどこに行ったの?何でどこにも居ないの?
…………どうしてみんなゆーちゃんのことを忘れてるの?まるで最初から居なかったみたいに。
悲しみからか、恐怖からか、私の瞳からは涙がこぼれおちた。人前で泣くのって、いつぶりだっけ。
現実から逃げるように、強く瞼を閉じる。しばらく視界を閉ざしていると、周りの喧騒が消えていった。
何事かと緩く目をあけたときには、いつの間にか、景色が真っ暗闇に差し替えられていた。
「どこ、ここ。みなみちゃん?ひよちゃん?」
落としていた重たい腰を強制的に持ち上げて、宙へと目線を泳がした。
すると、そこに現れたボールのような形をした何かが足元に転がってきたことに気付いて、私は足先に触れたそれを見下ろす。
「ゆーちゃんっ!!」
そこにあった固体は、たしかにゆーちゃんだった。いつもと変わらない笑顔を浮かべた、ゆーちゃん。
いつもと違う点といえば……………、どういうわけか、首から下が無いというところだけ。
「お姉ちゃん」
「ゆー、ちゃん?」
「みんな私のこと、忘れちゃってたね。死んじゃったからかな?」
寂しいことを言いながら一世一代の微笑みを見せるゆーちゃんは、頭のてっぺんから光の粒と化していった。
きらきらと輝く小さな塊は、天へと昇っていく。映画のワンシーンでも見ているかのように思えた。
「こなたお姉ちゃんは、私のこと、忘れないでね」
+ + + +
―――今回は目覚ましが起こしてくれることはなかった。
泉こなたは自力で短い夢から目を覚ますと、硬いコンクリートをベッドにしていたことによって生じた、身体のあちこちで唸る痛みに顔をしかめた。
さすがに背伸びをする気にもなれずに、ゆっくりと上半身を起こし周辺を見回して、前方に観覧車が見えたことにより、付近に遊園地があるということを知る。
遊園地といえば小さな頃に来た覚えがあるが、いつのことかははっきりと言えない。覚えていない、忘れてしまったからだ。
記憶というものは、実に簡単な仕組みでできているものだと改めて思う。
例えば電子メールだってそうだ。新しいメールを受信すれば、古いメールから消えていく。それと一緒で、記憶だって新しい知識を得れば、古い知識から失っていく。
忘れたくないものも、いつの間にか頭の中から、心の中から、出て行ってしまうのだ。
「忘れる、そんなのやだよ」
…………ゆーちゃん。
夢の中のみんなはゆーちゃんのことを忘れていた。覚えている人は私を除いて、誰一人居なかった。
いつも一緒に居るみなみちゃんやひよりんも、家族のように接していたお父さんも、血の繋がった姉であるゆい姉さんも。
みんなの記憶からゆーちゃんのことだけがポッカリと消えていた。それなのに、みんな平然と日常を過ごそうとしていた。
「私がゆーちゃんを、忘れる‥」
忘れない、私は忘れないよ、ゆーちゃんのこと。私は忘れたくない。だってゆーちゃんは私にとって家族同然だもん。
そういうキャラじゃないからあんまり口に出さなかったけど、本当の妹みたいに思ってた。その笑顔が大好きだった。優しい声に励まされたよ。
そんなゆーちゃんを忘れるはずないじゃん!なのに……なのにどうしてそういうこと言うの?
『みんな私のこと、忘れちゃってたね。死んじゃったからかな?』
『こなたお姉ちゃんは、私のこと、忘れないでね』
そんな寂しいこと言わないでよ。ゆーちゃん、駄目だよ行かないでよ。みなみちゃんはどうするの?姉さんだって悲しむよ。
かがみもつかさもみゆきさんもひよちゃんもお父さんも、ゆーちゃんが居なくなったらみんな悲しくなるよ!
戻っておいで。ゆい姉さんの代わりに、こなたお姉ちゃんが守ってあげるから。
具合が悪くなったらちゃんと看病してあげるし、退屈になったらネット我慢してお外につれてってあげる。
だから、だからゆーちゃん、帰って―――――
…………来れるはずがない。だってゆーちゃんは!
「ううん、違う。これはゲームなんだ。だったらリセットすればいいだけじゃん」
こんなのが現実なわけがない。きっと私はバーチャルゲームの世界に居るんだ。
リセットしたら、ゲームデータ全てが消えて、また最初から。つまり楽しい日常が、ゆーちゃんが戻ってくる。
お父さんに絡まれて、ゆい姉さんに可愛がられて、みなみちゃんとひよちゃんに囲まれて、ゆーちゃんにも【毎日】が帰ってくる。
でもきっと今ここにはリセットボタンはない。だって、あの白髪の男の子は【優勝者には願いを叶えてあげる】って言ってた。
そうだ、あの子ならリセットボタンをくれる。私がリセットボタンをもらえばいい。そうしたら、ゆーちゃんが、みんなが居るあの世界でずっと暮らせばいい。
人形が指導者によって操られるような、そんな奇妙な動きで、こなたは立ち上がり、【ゲーム終了】まで歩き始めた。
彼女の物語の結末は、見るもの全てに恐怖を与えるような虚ろな瞳が教えてくれるだろう。
【泉こなた@らき☆すた(漫画)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式 未確認(1〜3)
[状態]健康 精神不安定(強)
[思考・行動]
1:優勝して、白髪の男の子にリセットボタンをもらう。
※ この世界をゲームの中だと思っています。
投下終了。
って初っ端からミスってます、消すの忘れてました、死にたいです。
>>39のこなたの、「そうだよ、ゆーちゃんだよ」はいりません。
ああ〜〜〜〜〜〜〜ん本当にごめんなさい。
今後は気をつけます。
(^з^)-☆Ochu!!
あと、OPに寄せます。(これで合ってるのかな)
あとあとっ支援有難うございましたっ><
ひぃぃ書き手なんて久々やったから忘れ物ばっかだよ
うおおおおおいきなりこたな激しく病んでるー!? GJすぎる。
でもそうだよな、知り合い見せしめにされた日常の人間ならこういうリアクションが普通なのかもしれないw
ものすごく丁寧にこなたの心象とかイメージが書かれてるからこういう思考に立ったまでの思考が凄い自然に感じる……うまいなあ
自分もこんなのを書いてみたい。あと寄せるのもそれで多分あってますよー 次の人はあなたのかえして! ニチジョウセイカツによせるってことになるのかな?
なんかもうwktkしてきたw
志村、エリアエリア!
乙です!
こなたが……こなたがヤンデレ化してしまった……。
まああんな光景見せられたら無理もないよなあ。
文章もうまいし本当GJでした!
投下乙!
さすがにこなたはこの現状を受け入れられなかったか…
投下乙!
誰かー誰かこなたを癒してあげてー
投下乙!
こなたヤンデレ化は想定外だった
乙!こなちゃんが……こなちゃんが……。
投下乙です。
漫画ロワでは普通に受け入れてたから差別化って事ですね。
投下乙です!
こなたのイメージ描写の上手く、心理の変遷過程が自然に受け止められました。
ただ、こなたの現在位置と時間はどうなっているのでしょうか?
感想ありがとうございました。
あと、ミスばっかりで本当にすみません‥。
【一日目深夜/G-10 遊園地付近】
で、お願いします。
64 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 19:54:46 ID:+rcDR81Q
乙age
東條、沙都子投下します。
雲の合間から薄い月明かりだけが降り注ぐ闇夜の中。
一人の青年は天を仰ぎ、ただ瞳を閉じて静かに考え事をしていた。
青年の手の中には青色をした四角形のカードケース。
支給されたデイパックの中からそれを見つけた瞬間から、青年はそれを手放さない。
強くそのカードケースを握り締めたまま、青年は思考を巡らせていく。
いや、それは思考などという複雑なものではないかもしれない。
何故ならば彼は、自分の身に起こったたった一点の不可思議な現象について考えていたからだ。
その現象とは即ち――何故自分が、ここにこうして立っているのかという事。
――自分は死んだはずなのに。
仲睦まじく歩いていた親子を迫ってきていた車から守り。
そして、そのまま自分は撥ねられ――死んだ。
少なくともこの青年――東條悟は、そう認識していた。
もしも、仮に意識を失いつつも一命を取り留めていたとしても、自分がここにいるのはおかしい。
このように五体満足で歩けるはずがないし、目覚める場所もこんな殺戮の舞台の上などではなく病院のベッドの上のはずだ。
もしかしてあの出来事は全て夢だったのだろうか?
一度はそう思ってみたものの、あの時の痛みは決して夢のそれではなかったと思う。
ならば何故、自分が生きているのか……どれだけ考えても答えは一向に出なかった。
小さく溜息を吐きながら、先ほどデイパックの中身を確認した際に見つけた名簿へと視線を向ける。
そこには自分の名前と共に、よく知った三人の名前が連なって並んでいた。
「城戸くん達も……いるんだ……」
一人は、自分がかつて抹殺をしようとした能天気な青年。
彼はここに連れてこられてどう思っているのだろうか? ……少なくとも、大人しくしているようなタイプじゃないだろう。
一人は、何度か戦った事もある脱獄囚。
彼は恐らく、こんな状況でも楽しんでいる事だろう。
そして、もう一人――。
ああ沙都子南無・・・
「………」
その名前を睨み付けながら、青年は静かに歯を食いしばった。
クロをシロに変える敏腕弁護士、やけに癪に触る言い回しをする……青年流に言えば、"英雄"とは程遠い存在だった彼。
そんな彼に言われた言葉を思い出し、青年の体は自然と強張る。
――英雄になろうとした時点で、英雄になる条件を失っている。
「ああああああああああああっ!!」
突如声をあげながら、青年は地面に崩れ落ちる。
瞳には涙が浮かび上がり、全身は微かに震えていた。
怒りとも違う、絶望とも違う……彼の心の中にあるもの、それは虚無。
ずっと英雄になろうと思い、英雄になるべく行動をし、英雄に近づこうと努力してきた。
そう、全ては英雄になる為に――。
最初は、ただ師の教えに従いその指示する行動を起こしてきた。
神崎優衣の抹殺――その為にしたくもないアルバイトをこなして彼女に近づこうとした。
しかしその計画は失敗し……だが、すぐに青年は自分を取り戻した。
それはその計画の最中に死んだ、同じ目的の為に行動を共にしていた彼を思い恩師が言っていた言葉。
"大事な人を失ったからこそ、人は英雄になれる"
そう、確かに恩師はそう言っていたのだ――そして、青年はそれを忠実に守った。
その恩師を殺したのだ。
なのに……それだというのに、かの弁護士は自分では英雄になれないと言う。
「どうして……かな……」
青年は忠実に恩師の言うことを守ってきたのだ。
英雄になる為に必死に行動を起こしてきたのだ。
だというのに、それが全て否定された――その行動を行ったからこそ、自分は英雄にはなれないのだと。
その言葉を投げかけられただけで、青年のアイデンティティーは簡単に崩れ去ったのだった。
その後の事は、おぼろげにしか覚えていない。
ただ――それでもまだ英雄になろうと、仮面ライダーの戦いに勝とうとしていた事は覚えている。
あの時、残っていた仮面ライダーを呼び出してミラーワールドへと舞台を移させ、
その隙にミラーワールドへと向かった彼らの出口となる車を炎上させた。
そしてそのままふらついた足取りで街へと出て――死んだ。
あの親子を庇ったのは、別に大した理由じゃない。
ただあの親子の後姿が、青年の恩師とその子供の姿に重なって見えたからだ。
……重なって見えた瞬間、青年の体は自然と動いていた。
それほどまでに、青年は恩師を敬愛していたのだ。
「香川先生……」
ぽつりと、誰に言うでもなく恩師の名を呟く。
しかし、その恩師はもうこの世に存在しないのだ……自分が殺したのだから。
恩師はもう自分に何も教えてくれない、道を指し示してくれない。
「教えてください先生……僕は、どうしたらいいんですか……」
呟きながら、青年は歩き出す。
無防備な姿を晒しながら、森の中へと足を踏み入れる。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
森の中の茂みで、身を縮ませながら必死に体の震えを抑えている少女がいた。
まだ幼い……恐らく小学生であろうその少女は、しかし、震えながらも涙は流していなかった。
「怖くなんてありませんわ……怖くなんて……」
うわ言のように、自身を鼓舞するように小声で呟き前を見据える。
初めて見た人間の死体――しかも、首輪が爆発するなどというグロテスク極まりない死に様。
そして、殺し合いをしろと命じられたこの状況。
首へと手をやれば、そこには冷たい金属製の首輪がつけられている事がわかる。
心の底から沸き上がってくる恐怖心を押さえ込みながら、少女は込み上げてくるものを我慢する。
本心を言えば、泣き出してしまいたい。
当然だ――こんな状況に放り込まれて、平気でいられるはずがない。
それが年端も行かない少女だというのなら尚更だ。
だが、それでも少女は決して恐怖に駆られて自暴自棄にはなっていなかった。
震える手で掴んでいた名簿に目を向ける。
先ほどから何度も見ていた、それこそ穴が開くほどに。
それほどまでにその名簿の内容は信じがたいものだった……何故なら。
「にーにー……」
自分の名前の二つ後ろに書かれている名前、それは紛れもなくずっと探していた兄の名だった。
北条悟史――いつの日か失踪してしまった、誰よりも大切な自分の肉親。
その名前が、この名簿に載っているのである。
ぎゅっとその名簿を抱きながら、沙都子は目を瞑って思いを馳せる。
あの時兄がいなくなってしまったのは、多分に自分が弱すぎたからだろう……。
でも、今は違う。
兄が失踪してしまってから、自分は変わったはずだ。
もう兄を頼ってばかりいた幼かった日の自分ではない……。
今度は兄を支えられるほどまでに成長しているはずなのである。
こんな状況では素直に喜べないのは事実である。
だが、だからこそ今は泣き言を言っている場合じゃないのだ。
いつまでも震えていては、兄が失踪する前の自分と同じである。
今度は自分が兄達を助けなければならない……自分は、強くなったのだから。
「圭一さん達もいらっしゃる事ですし、皆で力を合わせればきっと……」
そう、それにこの場にいるのは自分と兄の二人だけではない。
いつも自分を支えてくれる、大切な仲間達がいるのだ。
皆で力を合わせれば、こんな殺し合いなんてふざけた舞台から降りる事だって出来るはず。
強く握り締めていた名簿をデイパックの中へと押し込むと、それを担いで静かに立ち上がる。
まだ若干震えは残っているが……しかし、いつまでもここにいる訳にもいかない。
まずは森を出て人の集まりそうな場所に向かわねば――と歩みを進めようとしたその時。
『ガササッ』
「!?」
背後から、何かが動く音が聞こえた。
ゆっくりと音を立てないように振り返りつつ、目を向ける。
音は茂みの向こうから聞こえてきた。
見通しの悪い森である事に加え、この闇夜では一体何者がそこにいるのかは確認出来ない。
もしかすれば、この森に生息する野生動物の類かもしれないが、さりとてそうだと断定する判断材料も無い。
このまま音を立てずに逃げるか……?
しかし、運動神経には自信があるとはいえ自分はまだ子供だ。
仮に音を立ててしまえば、すぐに追いかけられて捕まえられてしまうだろう。
それに……茂みの向こうにいる者が、この殺し合いをやる気になっている者だという確証も無い。
もしかしたら、自分の探していた仲間かもしれないし、そうだとすればここで離れてしまうのは非常に痛い。
茂みの向こうにいる者は自分の存在には気づいていないらしく、無反応だ。
逃げるべきか否か……難しい選択肢だが、どちらかを選ばなければならないのは事実。
拳をぎゅっと握り締め、少女は短い時間を使って思案をし結論を出した。
デイパックを背中に追い、後ろに下がって見通しの悪い道へと足をかける。
そして、このまま茂みの向こうにいる者へと声をかけようと息を深く吸い込んだ。
もしも相手がやる気になっている者だとしても、この位置取りならば逃げ切れるはずだ。
すぐに自分を追ってきたところで、この見通しの悪い道ならば相手も自分を見失うに決まっている。
何度も自分に言い聞かせるように心中で繰り返しながら、沙都子は自分を落ち着かせるとその口を開いた。
「もし! お待ちになって下さいませ!!」
緊張しすぎていたからだろうか、思いがけず大きめの声が出てしまい両手で口を塞ぐ。
そして、そのままの姿勢で静かに茂みの向こうの様子を見た。
歩く音はピタリと止まったが、まだそこに誰かがいる気配は感じる。
手を下ろし、小さく深呼吸をしてから再び沙都子は茂みの向こうへと問いかける。
「あ、あなた様のお名前は何と仰るのですか? その……」
本来ならばやる気の有無なりを聞けばよかったのかもしれないが、やはり少女も混乱していたのだろう。
このような状況で真っ先に聞く質問が名前というのはマズかったかもしれないが、それも今更言っては仕方ない事。
出来れば自分の知る名前であって欲しいと思いながら、少女は依然逃げる態勢を取ったまま茂みの奥に耳を傾け――そして、聞いた。
か細く、まるで蚊の鳴くような声ではあるが……その声を。
「僕は……北条、悟史……」
「……え?」
一瞬、聞き間違えをしたものかと思った。
だってその名は――ずっと探していた人の名前だったから。
名簿を見て、その名がある事を知って――これから見つけようと、意気込んでいたのだ。
それがまさか、こんなにあっさりと見つかるだなんて。
「にー……にー……?」
「? 誰……なのかな?」
「わ、私ですわっ! 沙都子ですっ! にーにーッ!!」
先ほどまでの恐怖心を忘れたかのように笑みを浮かべ、駆け出す沙都子。
無論、その行く先は先ほどまで自分が逃げ込もうとしていた道ではない。
茂みの先――そこにいる人物の確認する為に、沙都子は走る。
「にーにーっ!!」
声のした方向へと無我夢中で走り、茂みの中を掻き分けてその人を探す。
その時、ふと沙都子の目に人影が映りこんだ。
頭で静止をかける前に、体は自然と動きだす。
その人影をもっと間近で見ようと、その前に躍り出て――気づいた。
「えっ……?」
「……君は?」
その人は……沙都子の探していた人物とは、別人である事に。
あまりにも予想外の事に、沙都子の思考は停止する。
何故? 自分は確かに聞いた、兄の名前を。
だというのに、どうして目の前にいるのは兄ではなく全く別人の男なのか。
固まっている沙都子を見つつ、しかし沙都子の目の前の男はポーカーフェイスを崩さない。
突然見知らぬ少女に声をかけられた上に、突然その少女が飛び出してきたというのに。
一向に青年は顔色を変えなかった。
「……ねえ、どうしたの?」
「え……あ……」
青年に声をかけられ、ようやく沙都子は気を取り直す。
そうだ、混乱している場合ではない――まずは事情を聞かないと。
何故目の前の青年が兄の名を騙ったのか……それに、この殺し合いに乗っているのかどうかも。
何の武器も持たない自分を襲ってこない所を見ると乗っていない可能性が高いとは思うが、念の為に確認しておいた方がいい。
「あ、あの……ど、どうして北条悟史の名を騙ったのでございますか!?」
「……? どういう事?」
「どういう事もこういう事もございませんわ! ですから――!!」
「……僕は、東條だよ」
「へ?」
一気に捲し立てる沙都子を制し、静かに、矢張り小さな声で告げる青年。
その言葉を聞いて、沙都子は再び沈黙する。 東條――?
「東條 悟(とうじょう さとる)……それが、僕の名前……だから……」
「嘘……そんな、まさか……」
"とうじょう さとる"と"ほうじょう さとし"とを……聞き間違えたというのだろうか。
確かに、並べてみれば二人の名前はよく似ていた。
東條の声は小さいものだったし、沙都子も心の内でその名前が返ってくる事を期待していたのかもしれない。
故に、聞き間違えてしまったのも仕方の無いと言えるかもしれないが――。
「こんな……こんな事って……」
沙都子はただその言葉を繰り返しながら、後ずさりをして目を細める。
そうだ、これ程残酷な事があろうものか……。
探していた兄だと思って近づいた相手が、実は全くの別人だったなんて。
知らず知らずの内に涙が込み上げてくるが、無意識の内にそれをどうにかして押し込める。
しかし、それでも悲しみは一向に収まらない。
半ば放心をしている沙都子をやはり無表情で見つめながら、東條は小さく溜息を吐く。
それからどれだけの時間が流れたろう……数分か、数十分か。
少女と青年はその間ずっと無言で、見詰め合ったまま一歩も動かずにいた。
しかし、それだけの時間が経過すると、流石に沙都子も少しずつ冷静さを取り戻す。
そして冷えてきた頭で、今の自分の状況のマズさを今更ながらに感じ取った。
相手は見ず知らずの成人男性――もしも今の状態で襲われたならば、間違いなく死んでしまう。
少女と青年との間はそれほど離れてはいない。
今更逃げたところで追いつかれるのは見えている。
「あ……あの……もし……」
「何かな……?」
大きな音を立てて唾を飲み込んだ後、沙都子は恐る恐るといった様子で青年に問いかける。
一方の青年は少女の事は全くの無関心といった様子で、ポーカーフェイスを崩さずに耳を傾ける。
「あ、あなた様はこの殺し合いをする気にはなっておられないんですわよね?」
「…………」
「……あ、あの?」
少女の問いかけに、しかし青年は答えようとしない。
ただ首を少しだけ捻り、手に持っていた青いカードデッキを見つめるのみだ。
それから再び数秒の沈黙があり……そして、ようやく青年は口を開く。
「……どうしたらいいか、わからないんだ」
「え……?」
「先生がいたら……教えてくれると思うけど……先生はもう、いないから……。
英雄へのなり方も……ここでどうしたらいいのかも……」
小さく、か細い声で言葉を淡々と紡いでいく青年。
その声には全く感情がこもっていない事に気づき、沙都子は少しだけ悪寒を感じる。
直感的に、本能が目の前の青年を危険なものだと感じ取っているのだ。
この殺し合いに乗るだとか、乗らないだとか……この青年は全く考えていない。
この青年はただ――どちらでもいいと思っている。
「君は……わかるかな……? どうしたら英雄になれるのか……」
「えっ……?」
不意に青年から質問をされて戸惑う沙都子。
英雄になる方法? そんな哲学的な話を、何故こんな状況でしなければならないというのだろうか。
目の前の人間が何を考えているのかはわからないが、下手な答えは出来ない。
青年の目は冷たかったが、しかしそれ以上に真剣だった。
もしもここで茶化すような事を言えば青年は間違いなく怒りだし、場合によっては自分を殺すだろう。
唾をごくりと飲み込んで、沙都子は言葉を選びながら話し始める。
「え、英雄へのなり方、ですわね? それは……その……ええ、とても難しい問題ですわ。
どうすれば英雄になれるのか……」
「うん、難しいんだ……先生はその方法を教えてくれたけど、それじゃあなれなかったから……」
「あの……差し出がましいようですございますが、一つ質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「……うん」
「あなた……えっと、東條さんは、何故英雄になろうと……? あの、率直な疑問でしたので、その……」
「……だって、英雄だと、みんなが好きになってくれるでしょ」
「へ?」
思わず間抜けな声が出てしまったが、青年はそんな事は気にも留めずに言葉を続ける。
「先生はね……そんな僕に英雄のなり方を教えてくれたんだ……。
先生がやろうとしていた英雄的行為を、手伝わせてくれたんだよ……僕はそんな先生が好きだったんだ。
だって、そんな英雄的行為をする先生は英雄だったから……」
恩師の話をする青年の顔には少しだけ笑みが浮かんでいる。
一瞬、ほんの一瞬だけだが、沙都子は目の前にいる青年を酷く幼いものと感じ取った。
青年は本気で思っているのだ、自分が英雄になれると――英雄になれば、皆に好かれるようになると。
一体青年が何故にそのような考えに至ったのかは定かではないが、それは紛れも無い事実。
さて、ではその事実がわかったところで――どうしたものだろうか。
ここは彼の機嫌を取るような言葉を並べて有耶無耶にし、お引取りを願うべきだろう。
だがしかし――それで本当にいいのだろうか?
このままこの青年を放っておけば、いつ何がきっかけでこの殺し合いに乗ってしまうかもしれない。
そしてその刃が向く先は、自分だけではなく自分の大切な兄や仲間達かもしれないのだ。
それだけは、何としても止めなければならない。
「でも、それは……違うのではございませんこと?」
「……どういう事、かな?」
沙都子に話を遮られ、あからさまに憮然とした表情で睨みつける青年。
それに若干の恐怖を感じながらも、沙都子は言葉を続ける。
「英雄になろうとする……その、志は、とても素敵なものだと思いますわ……。
でも……手段と目的を履き違えては、いけないのではございません?」
青年は、"英雄"になる事を目指している。
愚直なまでに真っ直ぐに、余りにも純粋な思いで目指している。
しかし、それが本当に正しい事なのだろうか? ……少なくとも、沙都子は違うと思う。
英雄とは他者が決める俗称であって、決して本人が目指してなろうとするものではないだろう。
「英雄となる事を目的とするのでは、その人は英雄になどなれませんわ。
その人が行った事が周囲に認められて、はじめてその人は英雄と呼ばれるのですから」
「……じゃあ、どうしたらいいのかな?」
「それは……」
彼は英雄になろうと常に思っていた――しかし、沙都子はそれを否定してしまった。
英雄になろうとしても英雄にはなれないのだと、そう言ってしまったのだ。
それはその青年がかつて北岡秀一に言われた言葉と殆ど同じ。
即ち――英雄になろうと思ってしまった段階で、東條悟は英雄にはなれないというもの。
「それじゃあ僕はやっぱり……英雄になれないのかな……? どうして……?
僕は、英雄にならないといけないのに……」
いつの間にか青年は地べたへとへたり込み、虚ろな瞳を宙に彷徨わせてうわ言のように呟いた。
瞳からは、薄っすらと涙が滴り落ちている。
その姿を見ながら、沙都子はどのような言葉をかけるべきか迷う。
既に青年は動く気力すらも失ったように座り込んでいるが、しかし、沙都子にはどうも彼を放ってはおけなかった。
それは彼が余りにも不安定で、放っていては仲間の命に関わるかもしれないからという点も――あるにはある。
しかし、それと同じくらいに……沙都子はこの青年に同情をしてしまっていたのだ。
支援
目の前で思い悩んでいる青年の姿が、いつの日か兄が失踪した事に戸惑っていた自分に重なる。
あの時の自分と同じように、青年はいつも共にいてくれた恩師を失って迷っている。
如何にして自分は行動すべきなのか……ずっと頼り続けていた人が突然いなくなった為に、青年には判断がつきかねているのだ。
自分にはあの時周囲に仲間がいた――故に立ち直り、変わる事が出来た。
弱かった自分から、強くなった自分へとなる事が出来たのだ。
しかし、青年には今、他に支えてくれる人がいないのだ……放っておけるはずがない。
「東條さん……その……英雄になるというのは、きっと本当に難しい事なのですわ。
ですから、そう簡単に答えなど……出せる訳がありませんわ」
「でも……先生は……いつも答えをくれたよ……」
「ですが、その先生はもうおられないんでございましょう?」
「……うん」
「でしたら、いつまでもそのお方に頼ろうとしていてはいけませんわ。
自分で考えて、強くなっていきませんと……」
言いながら青年の肩を掴み、立ち上がらせようとする。
それに気づいたのか、青年もゆっくりではあるものの自力で立ち上がろうと足を動かした。
「それに……私一人に英雄になる方法を聞くよりも、もっと他の人のお話を聞いては如何でして?
お話を聞いていけば、如何にすれば英雄になれるのか……きっと解決の糸口になるものと思いましてよ」
「……色んな人に、話を?」
「ええ、そうですわ」
座ってしまったが為に青年のズボンについてしまった泥を払いながら、沙都子は言う。
一方の青年はされるがまま、呆然としたように沙都子の言葉を聞いていた。
どうすればいいのかはまるでわからない……大事な人を殺しても、英雄的行動をしようとしても、仮面ライダーの頂点に立とうとしても、英雄にはなれなかった。
そして、たまたま遭遇した少女に英雄のなり方を聞いても……やはり、明確な答えは出てこなかった。
ならばどうするか……そうだ、他の人に英雄のなり方を聞けばいい。
英雄になろうとした時点で失格だと言われようと――自分には、英雄になる道しか残されていないのだから。
「それは……いい考え、かも……」
「そうでございましょう?」
青年が小さく呟いた言葉に、少女は笑みを浮かべて答えた。
そうだ、何もまだ全てが終わった訳ではない……。
何も北岡秀一の言ったあの言葉が正しいと決まった訳ではないのだ。
「私の名前は北条沙都子……私も、私のご友人達を探していますの。
東條さんも人をお探しになるというのなら、もしよろしければご一緒に行動をしませんこと?」
「うん……そうだね……」
沙都子は考えていた、どのようにすればこの青年が立ち直れるのかを。
今、青年は目的を失ってしまっている――否、正しくは目的への道程を失ってしまっているのだ。
だからこそ青年は悩み、自分が如何様に行動をすればいいのかを迷っている。
自分では青年の望むような答えも何も用意は出来ない――しかし。
或いは、他の人物ならば――この青年を納得させる事の出来る答えを持っているのではないだろうか。
……無論、それは希望的観測でしかない。
そもそもこのような状況において、他人の話を聞こうとする行為自体褒められたものではないだろう。
加えて言えば他人の話を聞いたところで青年の求める答えは返って来ないかもしれない。
しかし、それでも青年の事を考えれば放ってなどおけないし、彼を野放しにしない為にも共に行動をして彼の行動を手伝わなければならない。
多少危険は増えるだろうが――どちらにしろ人探しは自分のしようとしていた事だ。
自分の心をもう一度確認し、納得をすると沙都子は東條の手を引いて森の中を進む。
自分の仲間を探す為に――そして、東條の求める答えを探し出す為に。
――しかし、この時沙都子は知らなかった。
東條がどれだけ危険な人物であるのかという事を。
英雄となる為ならばどれだけ大事な人であろうと殺そうとする冷酷さを持っている人物であるという事を。
何も知らないまま――二人は、森の中を進んでいく。
【一日目深夜/G−4 森】
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)(1〜3)
[状態]健康
[思考・行動]
1:東條と共に行動し、自分の仲間や英雄のなり方を知っている人を探す
2:仲間達と一緒にこのゲームを脱出する
【東條悟@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、タイガのデッキ@仮面ライダー龍騎、ランダム支給品(確認済み)(0〜1)
[状態]健康
[思考・行動]
1:沙都子と共に行動し、英雄のなり方を知っている人を探す
2:ゲームに乗るか否かは保留、というより余り考えていない
※TV本編死亡後よりの参戦です
これにて投下終了です。支援ありがとうございました。
何か突っ込みどころあれば言ってください。
投下乙です。
おお、予想外。
確かに死亡後ならスタンス不安定になるよな。
沙都子が死ぬかと思われた矢先、予想の裏をついてきた氏には驚かされます。
GJです。
何に寄せるの
>>84 すみません、忘れてました。
かえして!ニチジョウセイカツに寄せます。
投下乙です
この二人は原作知らないからよくわからないんだけど…東條からはヘタレ臭がするぜw
沙都子には頑張って欲しいな
ところでwiki編集してみたんだけど、あれでいい?
>>87 いや戦闘力的にはへたれだん
別の面で色々と怖いが
>>87 そういう意味で恐ろしいと言ったんだが・・・
特に精神的な部分が。
投下乙!
沙都子が死ぬかと思ったけど死亡後から東條を持ってくるとは思わなかった。
英雄の事について悩む東條の描写が上手いなぁ……沙都子が諭すシーンも良かったです!
これから沙都子が東條の本性を知っていく中でどんな行動を取るのかも非常に気になります!
上田次郎、由詫かなみ投下します。
…短い上に拙い文章ですが。
普段は、その幻想的な景色により訪れた家族や恋人達を
迎え入れてくれるのであろう場所。
水族館。
だが、其処に人が存在しないというだけでその空間は一転する。
観るものも居らず、音も無く、ただ水槽を漂うだけの魚達は何処か寂しげであり、異質である。
そんな全てが音を失ったかのような世界を全力で疾走する一人の男性。
長身、筋肉質で無駄の無い体格、短く逆立った髪。
日本科学技術大学教授、上田次郎は必死に探していた。
自分の生理的問題を解決できる場所を。
上田が最後に覚えていた記憶。
それは確か次の著作の出版に向けて新たな研究対象を探していた時、
都合よく取材の依頼が舞い込んだ為、これまた都合の良い助手である山田奈緒子を
同行させようと思い、彼女の自宅に侵入しようとした所までである。
其処から先は如何しても思い出すことができず、目が覚めれば自分は変な場所に拉致されていた。
自分の近くには誘いに行こうと思っていた当の本人、奈緒子の姿も見かけることができた。
彼女に声をかけようとした時、一歩踏み出そうとした時だ。
あの妙な子供が現れ、自分達に「殺し合いをしろ」と馬鹿げた命令をしてきたのは。
更に、子供は自分たちの首に付けられている首輪に爆弾が仕掛けられていると話し、
デモンストレーションとして目の前で見知らぬ少女の首輪を爆発させた。
だが、その一部始終を見届ける事無く、首輪が爆発した時点で上田は失神していたのだが…
そして、気がつけば上田はまるで人気の感じられない水族館の一画に放り込まれていた。
元来、小心者である上田はまず最初に周囲に自分の他に誰かこの場所に存在しないか確認した。
でなければ、怖くてしょうがないからである。
そんな儚い希望も空しく、この場所に自分一人しか存在していないという事だけを思い知らされると
この水族館という場所は上田にとって不気味な場所へと変化していく。
演出のためか薄暗い照明。
周りを取り囲む水槽。
その中を回遊しているだけの魚の群れ。
時に見え隠れする鮫等の獰猛な魚類の姿は上田に不安感を与えていく。
人の成長は未熟な過去を乗り越える事にある。これはとある人が言った言葉ですが・・・
書き手にも当てはまるんじゃないでしょうか?支援させて頂きます。
そして、小心ゆえに募る不安は遂に彼の膀胱を捉えた。
危機的状況の中でも上田のプライドは失禁だけは許さない。
一人で行動する事に暫しの逡巡こそあったものの、彼の膀胱はすでに臨界点を迎えている。
このままでは彼のプライドごと瓦解する瞬間を待つばかりであり、
故に立ち止まっている余裕はすでに無い。
彼は自分の巨大すぎる物体を両手で押さえつけると道標だけを頼りに駆け出した。
広い空間の中、表示される道標は曖昧であり、目的の場所を見出せぬまま迷走を続ける。
とある角を曲がった時に上田は思わず股間を押さえつけていた両手を離しそうになった。
向こう側から歩いてくる誰かの姿が確認できたから。
しかし、注視するまでも無くそれが小柄な子供の姿であると分かると立ち止まることはせず、
というより出来ず、一気にその子供の側まで駆け寄った。
突然、大柄な人物に駆け寄られた所為か、その少女は怯えた様子を見せたが、
「き、君、すまないがこの辺で手洗いを見なかったか!?」
上田の発したこの言葉を聞いた途端、顔を赤らめて俯くと意外とすぐ側にあった手洗いの場所を指差した。
「済まない!」
一言だけ、礼を告げ、上田はすぐに光明へと飛び込んだ。
暫しの開放感と安堵感。
だが、すぐに上田は気づく。
相手が子供だからと油断していたが、そもそも自分をここに連れてきたのも矢張り子供である。
あの少女だって何をしてくるか分かったものではない。
もしかしたら、こうしている間にも出口では恐ろしい準備をし、舌なめずりして待ち受けているかもしれない。
すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られたが、彼の描く放物線は止まらない。
開放感と焦燥と衝動、それらに蝕まれながら動けずに居る。
「あの〜…」
少女に声をかけられた。
「ドゥワッ!」
息を呑む。
次に少女は何を自分に告げる気なのか、其処に何が待ち受けているのか上田の想像は止まらない。
「あ、あの!安心してください、私、何もする気はありません。
ただ、お願いしたいことがあるんです。
…だから、できれば早く出てきて欲しいです」
扉の外から最後は恥ずかしそうに告げる少女に
上田は「…あぁ、はい」と自分の状況を再認識し、間抜けに答えた。
「自己紹介をしておこう。私は日本科学技術大学教授上田次郎だ。
…ちなみに私の書いた『ドンと来い!超常現象』は全国で4千…マン…部程売れている。
サインならいつでも歓迎するよ?」
とりあえず、無事に目的を達成できた上田は出口で恥ずかしそうに待っていた
少女と共にゆっくり話ができる場所としてテーブルの備えられたラウンジに場所を移動していた。
「私は由詫かなみって言います。
それで、あの、人を探しているんです。
…カズマっていうんですけど」
少女、由詫かなみはその幼い見た目よりも丁寧な態度で自己紹介し、上田に目的を話す。
「ほぅ、それでそのカズマというのはどんな人物なんだい?」
上田は人に会えた安心感からか、若しくは自分を頼りにしている少女に存在感を示す為か、
さっきまでの醜態を忘れているかのごとく冷静に振舞う。
かなみは少し考えたあと、
「えっと、カズ君は甲斐性無しのろくでなしで、凄く喧嘩っ早くて乱暴で
いつも怪我ばっかりしてくるんです。それで、えっと…」
そう答えた。
「そうではなくて、肉体的特長を聞いていたのだが」
少女の答えに上田は苦笑する。
まさか10にも満たないであろう子供に惚気話をされるとは思いもよらなかった。
(最近の子供は矢張り進んでいるな)そんな考えが頭をよぎる。
「あ、あの!惚気とかそういうつもりはなかったんです!
カズ君とはそういう関係じゃないし、それにそんな進んでいる気もないです!」
かなみが頬を赤らめながら必死に食い下がろうとしてくる。
少女の必死な姿に上田は一瞬とある疑問が頭をよぎったがすぐにかき消されてしまった。
「まぁ、この日本科学技術大学教授上田次郎に任せておきなさい。
ドンとこ〜い!とね、ハハハハ!」
立ち上がり、胸を鳴らして腕を突き出す。
かなみは当初、きょとんとしていたが自分の頼みが受け入れられたのだと気づくと顔を輝かせて
「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀をした。
「さてと、それではかなみちゃん、私達が今すべきことだが置かれている状況の確認だ。
差し当たっては支給されたものの確認だな。」
それだけ言うと、上田はテーブルの上にデイパックをどかりと置き、中身を漁っていく。
出てきたものは他の者にも支給されているという共用品、誰かの使い古しのポラロイドカメラ、
それに黒いカードデッキである。
「…なんだこれは」
一言だけ、呟く。
少女の前で余裕を示そうと思っていたのに支給品のあまりの使えなさについ言葉が漏れてしまった。
上田が呆然としている横で、かなみは支給品の陰に隠れていた紙に気がつき目を通し始める。
「…えっと、らいだーでっきについて?」
かなみの言葉で我を取り戻した上田はかなみから紙を譲り受け、読み通す。
其処に書いてある事は突拍子も無いことであり、
子供の頃に見ていたヒーロー物のドラマががまるでこの世に存在するかのごとく書かれている。
上田は紙に目をやりながら黒いカードデッキを手に取る。
説明ではこれを使うらしい。
「ふん、これを使えば変身できるだって?
馬鹿馬鹿しい、あのガキの遊びに其処まで付き合ってやる義理は俺には無いね」
上田はかなみに読んでいた紙を渡すと不意に立ち上がり、片手でカードデッキをぷらぷらとさせながら
土産物が陳列されているショーウィンドウの前まで歩いていく。
「変身!…なんてな」
ショーウィンドウに映る往年の特撮ヒーロ−のポーズを取った自分の姿。
何のつもりは無い、ただの冗談でそうしたのだが変化はすぐに訪れた。
ガラスに映る自分の鏡像に突然ベルトが巻きつく、
それと共に実際の自分にもベルトが巻きついている。
自分に訪れた予期せぬ変化に驚いた上田がベルトを外そうと腰に手を回したとき、
持っていたカードデッキを誤ってベルトのバックル部に差し込んでしまった。
その瞬間、ガラスに映る自分の姿に何かが重なり合ったと共に不意に身体を違和感が襲う。
何か、急に全身に力が漲ってくる様な感覚である。
自分の姿を確認しようとして正面のウィンドウを見る。
其処には頭部、肩部に角のようなオブジェが付き、
右脛にアンクレットが付いた黒い鎧を着た自分の姿が映りこんでいた。
それらを確認した時、上田は失神した。
「…え…うえ…さん…うえ…ださん…上田さん!」
誰かに名前を呼ばれている。
(…全く、あいつは私がいないと何もできないのか)
「うるさいぞYOUは、耳元でそんなに叫ばないでも聞こえている」
何故か妙にズキズキと痛む額を押さえながら、起き上がり、声の主の方に向き直る。
声の主。
そこには見慣れた人物の顔はなく、困ったような顔をしたかなみがいた。
「良かった、そんなに傷は深くなかったんですけど、打ち所が悪かったのかと心配だったんです」
段々と意識がはっきりして来た。
先ほど自分が立っていた場所の正面のウィンドウが大きくひび割れているのが見える。
多分、自分が気絶したときにそのまま激突してしまったのだろう、
額に触れた時に巻かれていた包帯がそれを物語っている。
意識がはっきりしてくると同時に自分が発していた言葉にうんざりしてくる。
こんな時に山田の事を真っ先に想像するとは思いもよらなかった。
「あぁ、大丈夫だともかなみちゃん。
それよりも、私にあの時何があったのか君は見ていたのか?」
上田の質問にかなみは更に困惑した表情を浮かべている。
かなみはしばらく考え込んだあと、
「…その事なんです。上田さん、あなたはアルターを知っていますか?」
何かが引っかかっているのだろうか、神妙な表情で逆に上田に質問を返す。
「アルター?何だそれは、『ALTERATION』の事か?
進化とか変化とかいう意味の…」
かなみの質問の意図が読めず、頭を掻きながら先程のガラスの前まで向かう。
ふと、そこで先程の黒いカードデッキが足元に落ちているのに気がつき、拾い上げた。
一瞬、先程の鎧を纏った自分の姿が脳裏をよぎった。
「ヲォウッ!…何だ、今のは!?」
持っていたデッキを思わず取り落とし、頭を振る。
そんな上田の様子を眺めながらかなみは考える。
(上田さんは嘘をついてない、それだけは何とか分かる。
あの自分の姿に本当に驚いている感じだった。
でも、だったら何でアルターの事を知らないんだろう?
それに、私のアルターもいつもよりなんだか漠然としてて強い思いしか分からない)
かなみが戸惑っている間、上田もまた考え込んでいた。
(今のはなんだ?もしかして、さっきのは本当に起こった事なのか?
変身だと?馬鹿な、あり得え無い。第一、質量保存の法則を無視している。
だが、もしあれが、本当におきた事ならこれはノーベル賞モノだぞ?
どうする?上田次郎。なぜベストを尽くさない!?)
足元にあるデッキを再度、手に取る。
これを使用する事は正直怖い。
だから、今、自分にできる事。
それはこのカードデッキは極力使用せずに科学によってその謎を解明する事。
その先にはきっとベストセラーとなった自分の著作が待っている。
拾い上げたカードデッキをズボンのポケットに仕舞いこみ、かなみの元に戻る。
かなみはまだ何かを考えていたのか、上田に肩を叩かれるまで
側まで来ていたことにすら気が付いていなかった。
「いくぞ、カズマって言うのを探すんだろう?
どうやら此処には他には誰もいないようだ、さっさと移動する事にしよう」
上田の方は迷いが吹っ切れたのか意気揚々と歩いていく。
その背中を追いかけながら、かなみは何処かにいるであろう想い人の無事を祈っていた。
【一日目深夜/G−6 水族館】
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]インペラーのライダーデッキ
[支給品]支給品一式、富竹のポラロイド
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)
[思考・行動]
1.謎のカードデッキの科学的解明(怖いので使用はしない)
2.かなみと共にカズマの捜索
3.山田は…まぁ、どうでもいい
【由詫かなみ@スクライド(アニメ)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ランダムアイテム(1〜3確認済み)
[状態]健康
[思考・行動]
1.上田と共にカズマの捜索
2.アルターが弱まっている事、知らない人物がいる事に疑問
*彼女のアルター能力(ハート・トゥ・ハーツ)は制限されており
相手が強く思っている事しか読む事が出来ず、大まかにしか把握できません。
又、相手に自分の思考を伝える事もできません
*本編終了後のため、自分のアルター能力を理解しています。
投下完了です。
青虎、闇夜にて、英雄を論ずに寄せさせてもらいます。
>>82 投下乙です!
東條が死亡後とは! これは予想外!
対主催として生きるのか、はたまたサイコなマーダーと転じるか……
沙都子の命運もコイツ次第だなあw GJ!
>>99 投下乙です!
かなみは上田に保護されたか。うーん、頼れるのか、頼れないのかw
素で結構強い + デッキだから期待できるんだろうけど……
そのデッキがインペラーので、それに加えて使う気がないってのが心配だw こちらもGJ!
投下乙!
上田さん……wかなみを放ってトイレにダッシュするのを想像したら笑ってしまったw
タイトルから何のカードデッキが来るんだろうと思ってたらまさかインぺラーとはwしかも使わないって勿体ないwww
どっちが保護する立場か良くわからないけどこのコンビも先が気になりますね!
すいません、状態表の修正です。
インペラーのデッキ@龍騎
富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に
@○○を付け忘れていましたので。
…蟹、カメレオン、インパラの三択でした。
投下乙です!
さすが上田、アホすぎるぜ!
上田さんは今頃名誉教授になってるかなあ・・・
今年が丁度5年後だが。
投下乙です。
トリック未把握だがこwれwはw
すごく興味持ちましたw
なんかかなみの方がまだ頼りになりそうな気がするのはなぜだろう……?
本当に乙でした。
さすが上田先生だ! 予想の範疇でありながら笑わせてくれるぜ!!
かなみが山田化してしまいそうだwどっちが保護者かわからんぜww
乙です
上田さんは清涼剤になりそうだな。
>>50、
>>82、
>>99 投下乙&GJです。
>>36 すっごい亀ですけど、OPの方を修正する必要はないと思います。
名簿に関しては、もし誰かがルルーシュの名前に関して描写したら
それが採用でいいかな、と思う。
ちょっと質問。
龍騎系のキャラはミラーワールドに入れないみたいだけど、ミラーモンスターの扱いはどうなるの?
本編中でも蟹刑事が変身せずにカードを使っただけでボルキャンサーが鏡の中から出てきて人間喰ったりしたし、
浅倉も水面からベノスネーカー呼び出して命令してたみたいだけどそういうのはNG?
やっぱドラグレッダーみたいにどっかから現れて〜みたいな感じじゃないと駄目かな?
べつにミラーワールドはいれないだけで召喚不意打ちはありじゃない?
そのミラーモンスターって倒せるの?
>>111 ピンキリ
格闘できる一般人でも倒せるのとライダーでも無理\(^o^)/なのがいる
ミラーモンスターの扱い難しいな、あまりにも不意打ちの応用が便利過ぎる。
個人的には
契約ミラーモンスター召喚は専用カード「アドベント」や「ファイナルベント」等の枚数だけ
現実世界での活動時間1分以上で消滅
カードかざすだけ召喚は無し、空腹暴走は初日や二日目は無し
ミラーワールドからの召喚に関しては、前スレで↓の意見は出てたけど
はっきりとは決まってないな。
nのフィールドとセットで侵入禁止は決定事項だけど。
名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/09/27(土) 09:00:06 ID:qo1lHXMA
>>736 ミラーワールドに進入禁止でよくないか?
ただし、ミラーワールドから契約モンスターをこっちに引っ張り出して襲わせるのは原作どおりあり
>>114 つまりミラーモーンスターにミラーワールドに引っ張り込ませるとガラスに激突アウチッってことか
なんてかっこ悪いww
出してえ!ここから出してぇ!
私はただ・・・超常現象を解明したかっただけなのに・・・
お、またちょこちょこ予約入ってる
119 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 16:10:27 ID:MhsHAk8b
もっと面白い話書けよ!
予約入れた奴等も糞つまらん話書いたら許さんからな
なんてツンデレ
プレッシャアーーーーッ!
シンイチ投下します。
だいたい最初の2,3回書かれるまではキャラ立ての時期だよな
登場するだけでそんな大作書いてももったいないしw
リレーが進んでフラグが立ったりキャラの方針が固まってからが本番さ
「おい、ミギーッ!!」
私はシンイチの呼び声で目を覚ました。
「騒々しいな、何があったんだ」
表情、口調から察するにシンイチは明らかに狼狽している。
今までもシンイチが狼狽えるのを見たが、今回のそれは群を抜いて酷い。
私を宿してから様々な経験を積んだので多少は冷静になったと思っていたのだが、どうやらその認識を改めなければならないようだ。
もしくは常軌を逸脱した状況に陥って得た冷静を手放さざるを得なかったのか。
前者である事を望みつつ、私は聞き手に回った。
幸いな事に、シンイチは私が目を覚ました事によって平静を取り戻したのか、荒い呼吸を整えつつ訥々と我々が置かれている状況を語り始めた。
「成る程。大体の状況は掴めた」
殺し合いを強要されている。
逆らえば殺される。
参加者には田村令子、そして後藤がいる。
私なりにシンイチの話を噛み砕くと、非道な話があるものだな、と思う。たが私の同族がやっている事とさほど変わりはないようにも思える。
我々――パラサイトと呼ばれる生命体はヒトに寄生し、ヒトを捕食する。
ヒトとパラサイトがある種の生存競争をしていると考えれば、合点がいかない訳ではない。
「シンイチ、君はどうしたいんだ? 私は生き残る事を考えるべきだと思う」
「生き残るって事は殺し合いをするって事なのかよ!」
私の言葉にシンイチは頭をかきむしりながら怒鳴る。彼は未だに混乱している様だ。
「そうじゃない。現状ではあまりに情報が少なすぎる。生き残りつつ情報を集めるんだ。殺し合いをする訳ではない」
主催者とやらが信用出来る訳ではないからな、と付け足すと、シンイチは腕を組み考え込んだ。
「私は君から聞いただけだから詳しい話が解らないが、主催者――V.V.と言ったか? の意図が解らない。ヒトを集めて殺し合わせる事に何の意味があるのだろうか?」
「そんな事俺にはわからねえよッ!」
「だろうな。私が判らないのだからな」
「オマエ、性格悪いな」
「そんな事はどうでもいい」
無駄な議論を打ち切り、私の考えを述べる。
「ルートに私意的な物を感じるな。平等に見えて平等ではない」
「どういう事だよ」
「例えば、首輪だな。意図的に外す事も不可能ではない。例えば――」
「後藤か?」
シンイチの答えが私と均しい事に私は満足する。
うわ投下キタ支援
「ああ、あの後藤ならば……あるいは、な」
――後藤。自身を含め五体のパラサイトを宿した存在。奴なら自らの首を跳ねて首輪を外し、再度頭部に収まる事も不可能ではない筈だ。
現に奴が頭部の交換が可能である事を見た。
応用すれば、自分だけではなく右手の三木を始めとした支配下にあるパラサイトを他の寄生体に宿す事すら可能だろう。
「V.V.とやらが知っているかどうかは別として、後藤にとっては都合の良いルールだ」
「その事を後藤は……気付いてるだろうなァ」
「私が気付くぐらいだ。後藤が気付かない筈がない」
シンイチは周囲に憚る事なく盛大に嘆息する。
「何にせよ、後藤は殺し合いには乗らないだろう」
「何でだよ」
「奴はヒトを喰いはするだろうが、殺し合いをする事はないだろう。奴からみればヒトはエサに過ぎん」
「やっぱり性格悪いな、オマエ」
無駄なやり取りをしている内に、睡魔が襲ってきた。あがない難い、強い睡魔だ。私はそれに身を任せ深い微睡みに落ちて行った。
◆
「おい、ミギー! ミギー!?」
うんともすんとも返事はない。なしのつぶてだ。どうやらミギーは完全に寝ちまったみたいだ。
「ったぁく、どうしろってんだよ!」
ミギーと出会った時(アレを出会いとするのは少し間違ってるかもしれない)時にもビックリしたけど、それ以上だ。
殺し合いをしろ、一番になれば元の世界に戻れる、願いを叶える事が出来る。
ミギーも言ってたけど、あの子供――V.V.は信用出来ない。かの大合作のあさりよしとお並みに信用出来ない。いや、Sさんのホホホのニョーボ並みかもしれない。
駄目だ。混乱している。少し休もう。休んで落ち着こう。幸いな事に目の前にホテルがある。
息をひっそりとひそめていれば危険はないだろう。
【一日目深夜/B−2 ホテル前】
【泉新一@寄生獣】
[装備]なし
[支給品]支給品一式、ランダム支給品
[状態]混乱による疲労
[思考・行動]
1.とりあえず休みたい
2.生き残る
終わりかな?
投下乙!
うーん寄生獣読みたくなってきたな
古本屋で手に入れよう
以上、投下終了。
上田教授に寄せます。
投下乙!
俺も寄生獣把握してないんだけど
もう一人格いるってことは一人でも掛け合いできていいなw
独白形式でもいいけど、やっぱ会話があったほうが書きやすいし読みやすいもんな
投下乙〜
とりあえず休むっていう思考か
近くに危険な人物がいないといいが…
半分くらいしか参加者知らなくても、書き手ってできる?
できるできる
むしろ一番最初の時点なら半分知ってれば上出来じゃね?
把握してるキャラだけ書いてればいいんだよ
>>132 じゃあちょっと書いてみようかな、人数多くて主催者もいるギアス知らないのは痛く感じるけど
あと投下乙〜
だな、群像劇みたいな感じでいろんな場所でいくつかのグループが行動する話になるし
知らないキャラが絡んでないパート書けばおk
むしろ全部の作品とキャラ把握してるやつなんていんの?
だがしかし、そのうち知らないキャラが合流したりしたせいで
好きなキャラを書けなくなることもある諸刃の剣
昔必死でキャラ把握した思い出が甦る…
そんなに1パートの人数増えたりしないしな
合流しすぎて人数増えたら誰かが散らす話書くし
あんまりいろんな作品のキャラが集まると全部を把握しててかける人がいなくなるしな
それに単純に人数多くても書きにくいし
手分けして何か探すとかいざこざ起こして分裂とかやるな
まだ予約が入ってないキャラ一覧できたよー
6/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
○C.C./○ロロ・ランペルージ/○篠崎咲世子
6/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
○前原圭一/○竜宮レナ/○園崎魅音/○北条悟史
5/5【スクライド@アニメ】
○劉鳳/○ストレイト・クーガー/○橘あすか
5/5【らき☆すた@漫画】
○泉こなた/
5/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
○緋村剣心/○斎藤一/○志々雄真実/○瀬田宗次郎/○雪代縁
4/4【仮面ライダー龍騎@実写】
○城戸真司/○北岡秀一
4/4【ルパン三世@アニメ】
○次元大介/○石川五ェ門
4/4【ローゼンメイデン@アニメ】
○真紅/○水銀燈/○翠星石/○蒼星石
3/3【ガンソード@アニメ】
○ヴァン/○レイ・ラングレン/○ミハエル・ギャレット
3/3【寄生獣@漫画】
○泉新一/○田宮良子(田村玲子)/○後藤
3/3【ゼロの使い魔@小説】
○ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール/○平賀才人/○タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
3/3【バトルロワイアル@小説】
○稲田瑞穂/○千草貴子/○三村信史
2/2【仮面ライダーBLACK@実写】
○南光太郎
2/2【真女神転生if@ゲーム】
○男主人公/○狭間偉出夫
2/2【バトルロワイアル@漫画】
○織田敏憲/○桐山和雄
1/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
○アイゼル・ワイマール
1/1【灼眼のシャナ@小説
○シャナ
〜完売いたしました〜
2/2【相棒@実写】
2/2【DEATH NOTE@漫画】
2/2【TRICK@実写】
>>122 投下乙
ミギーの語りは面白かったです。ただ、後藤を知っているということは
新一は身体能力Upバージョンですよね?そう考えると新一のキャラが若干違うような
6/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
○C.C./○ロロ・ランペルージ/○篠崎咲世子
6/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
○前原圭一/○竜宮レナ/○園崎魅音/○北条悟史
5/5【スクライド@アニメ】
○劉鳳/○ストレイト・クーガー/○橘あすか
5/5【らき☆すた@漫画】
○泉こなた/
5/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
○緋村剣心/○斎藤一/○志々雄真実/○瀬田宗次郎/○雪代縁
4/4【仮面ライダー龍騎@実写】
○城戸真司/○北岡秀一
4/4【ルパン三世@アニメ】
○次元大介/○石川五ェ門
4/4【ローゼンメイデン@アニメ】
○真紅/○水銀燈/○翠星石/○蒼星石
3/3【ガンソード@アニメ】
○ヴァン/○レイ・ラングレン/○ミハエル・ギャレット
3/3【寄生獣@漫画】
○田宮良子(田村玲子)
3/3【ゼロの使い魔@小説】
○平賀才人/○タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
3/3【バトルロワイアル@小説】
○千草貴子/○三村信史
2/2【仮面ライダーBLACK@実写】
○南光太郎
2/2【真女神転生if@ゲーム】
○男主人公/○狭間偉出夫
2/2【バトルロワイアル@漫画】
○織田敏憲/○桐山和雄
1/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
○アイゼル・ワイマール
1/1【灼眼のシャナ@小説
○シャナ
〜完売いたしました〜
2/2【相棒@実写】
2/2【DEATH NOTE@漫画】
2/2【TRICK@実写】
抜けと一周終了含めるとこうじゃね?
>>122氏乙です。
所で死者スレっていつ立てるべきだと思う?
>>141 うはwwすまん
>>142 もう立てていいんじゃないか
いけにえだったゆーちゃんのいる場所が必要だし
死者スレがあると好きなキャラが死んだときの悲しみが和らぐんだよな
ロワの進行のためにはしょうがないけど、やっぱりさびしいからな
死者スレがあるとむしろそこでどんな風に遊ばせてあげようかとwktkする
基本的に生前の事は水に流すからあまり空気悪くならないしな。
某GRロワでは約2名ほど黒モードのままだったけど、面白いから良かった。
>>144 乙
死者スレが機能してないロワは復活もあるんだよなw
俺は死者スレのキャラにロワをオチさせるのが好きだw
151 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 20:43:23 ID:MhsHAk8b
死者スレほど気持ち悪いものはない
暫くはゆーちゃん一人だろうなw
アニロワの死者スレは好きだったな、倒壊したホテルが降って来るって…w
こ・・こんなハイクオリティな作品が続くなんて・・・
無理だ兄貴ッ!俺には投下できねえッ!
>>152 あそこは壊れたり無くなったりしたものが全部死者スレに移動してたなw
アルルゥに食べられたカマンベールチーズ入りドラ焼きが大量にたどり着いたりして
155 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 21:00:29 ID:MhsHAk8b
ハイクオリティ(笑)
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今までのSSでなんか壊れたものあったっけ
ゆーちゃんの遊び道具に送ってあげたい
>>152 2ndではモロトフさんやオレンジ、素晴らしき人がいい人過ぎて笑ってた。
>>156 こなたはもう投下されたから
今予約されてないキャラじゃないか?
>>156 こなたはもう投下されてるから
今予約されてるキャラじゃないよ
うわ、ごめん二重になった
最初書き込みに失敗したって出たのに
162 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 21:07:30 ID:MhsHAk8b
感想書いたの三人って
感想書かずにレスしている奴等の神経おかしいだろ
163 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 21:08:52 ID:MhsHAk8b
感想書けよ!感想書けよ!感想書けよ!感想書けよ!
感想書けよ!感想書けよ!感想書けよ!感想書けよ!
感想書けよ!感想書けよ!感想書けよ!感想書けよ!
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感想
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感想
>>126 投下乙!
ミギー可愛いな。寄生獣はグロってことで読むの敬遠してたが、けっこう面白そうだね。
バトロワとの兼ね合いも含めて買ってみようかしら。
上田が激突したガラスw
俺も寄生獣読もうかな…
あれって古本屋とかで見つかるかな
予約合戦で予約された分って今晩が締め切り?
三日だから、明日の晩が締切じゃない?
ごめん、当日含んで明日までだったorz
175 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 21:27:55 ID:MhsHAk8b
感想は書かない方針で進めるロワですね、わかります
じゃあ明日の晩が最初の予約合戦のSSの投下?
たぶんそうなのかな?
投下ラッシュになりそうで明日が楽しみだー
178 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 21:47:42 ID:MhsHAk8b
楽しみでも感想は書かない住人達
正確には3日だけど
ほとんどの予約が0〜1時くらいだから
明日の夜に投下されるだろうね
このロワで寄生獣に興味を持った。
俺も古本屋とかで探してみようかな。
俺もだけど
全員古本屋古本屋言ってるんだよなw
>>128 投下乙です。
未把握だけど、このミギーってヤツ(パラサイト?)なんかいいな。
今後に期待。
ってか、今日、寄生獣も含めた未把握の漫画と小説探しに古本屋に行ったんだけど
小説版のバトルロワイヤルしか見つからなかったんだよな。
あ、俺もバトルロワイアル探してる
俺なんて小説も漫画もどっちも手に入らなかったぞ
近所にある古本屋3つ梯子したのになんでだ
寄生獣はちょっと大きなブックオフいくと全部立ち読みできる罠
やっぱ把握は古本屋が基本でしょ
それよりアニメの把握のほうが苦労する件
ビデオ屋でアニメ大量に借りるのなんだか恥ずかしいし
見るのにやたら時間かかるし
>>183 バトロワは小説は既読だが、漫画のほうは読んでなかったなぁ
寄生獣と一緒に探しに行ってみるか
俺パロロワは結構よんでる癖に本家バトロワ読んだこと無いな
この期に把握するか
バトロワって漫画と原作凄い違ったんだよな・・・
桐山と杉村とか・・・
漫画バトロワの織田はかなりイキイキしてるぜ!
あの織田様に殺された清水(だよな?)が
改心しかけてたから哀れだった。
漫画版はみんなデザインが斬新だけどその中でも織田は輝いてる
漫画は主役級キャラが全員とんでもないことになってたが特に光子があまりにもアレ過ぎて……
織田様とヅキのシーンで差し引いても-65536ぐらいなんだよなあ
滝口関連とvs桐山はそのぐらい酷すぎる
せめて前者は朝チュンにして後者は執念見せろっての
>>192 前者:織田様とヅキのシーン
後者:滝口関連とvs桐山
だと一瞬思って戦慄した
>>192 とりあえず川田は確実に年齢詐欺してるだろと思ったな。
195 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 23:35:15 ID:MhsHAk8b
はやく潰れねぇかな
196 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 23:36:41 ID:MhsHAk8b
もう企画終了しようぜ
シャナの制限に関してだけどさ。
アラストールは制限しないと駄目なんじゃないの?
アラストールってシャナ抜きじゃ「喋るペンダント」くらいだと思ってたけど、違うのか?
こんな微妙な時間帯に申し訳ありません。
園崎詩音投下します。
凄く短いですが・・・
まるでそこは自分の場所だと自己主張しているかのように聳えている建物がある。
その建物の中に幾つかある椅子に腰掛けている少女がいる。
その少女は殺し合いをしろと言われた今の状況でも大して動じていなかった。
「私に警察署って……皮肉のつもりかよ」
少女――園崎詩音は悲鳴をあげる訳でも掠れた声を出す訳でもなく、一言そう愚痴るとデイパックを開いた。
「さて、どうしましょうかねえ……あの場にはお姉や圭ちゃんもいましたが……あのお人よしさん達なら今頃親切な人に騙されて死んでだとしてもおかしくはないですね」
そしてデイパックを開き目当ての名簿を見つける。そしてある一つの名前を見つけた所でまるで時が止まったかのように彼女の指はピタリと止まる。
「悟史君……」
1年前に失踪した沙都子の兄にして詩音の思い人。彼の失踪と同時に彼の叔母が惨殺された事件が起こった。詩音はこれを悟史の犯行だと確信していた。
そして彼の為に詩音は様々な行動を取った。別のよく似た世界では園崎家に抹殺されたと思いこみ、復讐の為に姉の魅音を含む5人を殺害したほどである。
「悟史君……生きてたんだ……!」
村人からはオヤシロ様の祟りと言われ、彼女自身もほとんど諦めかけていた。
気が付けば涙がこぼれ落ちていた。今彼女の頭の中は大量の悟史くんで埋め尽くされていることだろう。
「悟史君、私は約束を守ったよ!ちゃんと沙都子の面倒を見てるよ。
沙都子だって強くなったんだ!あの糞ったれの叔父に負けなかった!それから、それから……」
興奮しながら一人で喋っていた彼女は他人が見たら不気味に見えたかもしれない。
その楽しそうな様は殺し合いという場では到底考えられないような光景だった。
「悟史君……待っててね、今行くよ……」
この後この少女はどうなったのかは神様…いや、オヤシロ様だけが知っているのかもしれない……
【一日目深夜/H−9 警察署内】
【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ランダム支給品(1〜3)
[状態]健康、興奮気味
[思考・行動]
1:悟史に会う
2:仲間との合流、沙都子を優先
※皆殺し編、沙都子救出後の綿流し祭の最中からの参戦です
以上で投下終了です。
AFTERN∞N に寄せます。
おかしな所があったらご指摘頂けると幸いです。
投下乙!
綺麗な詩音ktkr
せっかく北条兄妹と園崎姉妹が揃ったんだから
詩音にはねぇねぇ役をやってほしかったんだ
いや、これからどうなるかはわからんけどね
204 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/02(木) 08:58:45 ID:pLCwMEE8
確かに過去ロワではいきなり発狂したり奉仕したりしていたからな。
このまま最後まで綺麗でいてほしいですね。
何はともあれ乙です
投下乙です!
この状態の詩音は、なんか逆に不気味なんだぜ!
ぐぎゃってない詩音だ!
悟史くんと早く会えるといいね
悟史くんが近くにいるといいけど…
投下乙!
これ、悟史が死んだとしたらどうなっちゃうの詩音
209 :
ラウ・ル・クルーゼ:2008/10/02(木) 10:41:25 ID:vpAwaLyr
umeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
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沙都子は東條といるはずなんだよな…ゴクリ
>>197 まぁ天破壌砕は禁止かも知れんけど、簡単に使えるもんでもないような。
>>198 喋るペンダント(コキュートス)はアラストールと会話出来る道具みたいなもんかな。
アラストール自身はシャナの体の中にいるはず。
ラノロワではコキュートス無いとアラストールと喋れない設定だった。
>>202 ぐぎゃってない詩音だけど、参加時期が不吉すぎるw
今後の展開しだいでどっちにでも転ぶなw
ルパン三世、夜神月
投下します
――この世は腐ってる……。
日本一優秀な高校生・夜神月は、いつものように退屈な授業を聞き流しながら外を眺めていた。
雲はまばらで何をするにもちょうどよい天気であろう。とはいえ教室の月にはどうでもいいことだ。
一通り雲を数え終わり、ふと校庭の方に目をやると、なにやら黒いものが落ちているのを見つけた。
よく目を凝らしてみるとどうやらノートらしい。
ここは学校だ。ノートのひとつ校庭に落ちていたところでおかしくないのかもしれない。
しかし、そのノートには月を惹きつける不思議な雰囲気があった。
「いや、気のせいだ。」
そうつぶやいて、視線を黒板の方に向けた。既に全部頭に入っている授業でも、代わり映えのしない外の風景よりはマシだ。
放課後、生徒玄関を出、彼は再びそのノートを目にする。
周りにはたくさん生徒がいるというのに、誰一人気付いていないのだろうか。それとも皆、興味を持つに値しないと思ったのか。
月はそっとノートを拾い上げた。ノートは黒一色の表紙で、ただ表に白抜きの文字でこう書かれていた。DEATH NOTE。
その瞬間だった。月は強烈なめまいに襲われ、その場に崩れ落ちる。周りから悲鳴が聞こえる……。
「今から、皆に殺し合いをしてもらいたいんだ。」
少年は確かそう言った。その後、見知らぬ少女を連れてきて――死の音が鳴り響いた。
月は森の中で目を覚ました。
さっきのできごとは、夢? いや、そうでないことは首にかかるこの感触から分かる。
世の中は腐っていると常日頃から思っていたが、まさかここまでとは。
人を拉致してきて殺し合いをさせるなどということが行われているとは夢にも思わなかった。
しばらく放心状態だった月だが、近くにデイパックが落ちているのを見つけ、中を見てみることにした。
地図・コンパス・水……サバイバルに最低限必要なものは揃っている。
これはなんだろう。月は名簿に手を伸ばした。だが、ざっと目を通し見知った名前が無いことを確認、デイパックに戻す。
それから……。ここが殺し合いの舞台であることを示すようにデイパックの中で一際輝きを放っているものがあった。
夜神月には将来の目標がある。それは警察庁の長官になり、そして犯罪の無い世の中を作り上げること。
そのためにこの道具は避けては通れないものであろう。
だが、それを目の前にして戸惑いが無い訳ではなかった。
「ピストル……本物だ。これを、僕が持つのか。」
手に取って、その冷たく重い感触を確かめる。本当に殺し合いが行われるなら……。
もちろん自分はそんなものには参加しない。だが、この身に危険が訪れるなら……。
「その時は、これを使うことになるかもしれない。」
突然、近くの草むらが大きく揺れる音がした。
慌てて銃を構える月。もしかしたら早速殺人鬼と出会ってしまうかもしれない。
不気味な静けさが月の周りを支配した。
五秒、十秒、何も起きない。気が立っていただけだろうか。
落ち着くため一度深呼吸をし、銃を下ろそうとした。途端、暗闇から一人の男が姿を現した。
「慣〜れない物扱うなってぇ。震えてるぜ、坊主。」
すぐさま銃を構えなおす月に、赤いスーツを着た細見の男が両手を上げて話しかけてきた。
「野郎に優しくしてやる趣味はねぇんでなぁ、一度だけ言うぜ。そいつを下ろしな。」
と言われても、もしこの男の言うとおりに行動したとして、彼が武器を隠し持っているとしたら。
月は死への恐怖に体がすくんで動けなかった。
月が躊躇していると男は再び口を開いた。
「しょうがねぇなぁ。本当ぁカワイコちゃん以外にこんな姿見せるったぁいけすかねぇんだがよぉ……。」
そう言ってデイパックを放りだし、服を脱ぎ始めた男。
突然の行動に月がうろたえている間に、男はトランクス一丁の姿になり、前、後ろ、前と向き直った。
「ほら、分かったろ。俺ぁ丸腰だ。さあ、銃を下ろせ。」
ここまでされると流石にこのまま銃口を向けているわけにはいかないだろう。
月は銃を丁寧にデイパックの上に置くと、再び服を着始めた男に向かって問うた。
「あなたは一体……?」
着替え終わった男はポーズを決めてこう放った。
「よ〜くぞ聞いてくれました。俺様ルパ〜ン三世。」
風が二人の間を通り抜けた。
「そうですか。僕は夜神月と申します。」
「で、お前さんこれからどうするよ?」
「もちろん、こんなくだらないゲーム、さっさと脱出して、警察に報せますよ。」
「警察ねぇ……。」
月は訝しんだ。この人は警察を信用していないのだろうか。
いや、実際月も信用してはいない。
あそこにも腐った人間はたくさんいる。刑事局長の父親からそういう話はうんざりするほど聞いている。
だがしかし、このような凶悪な犯罪に対して立ち向かうことができるのは結局のところ警察だけだ。
いくら優秀な頭脳を持っているとはいえ、一介の高校生である月にどうこうできる話ではない。
もどかしい。自分が警察を動かせる立場になるには後何年かかるのだろう……。
ちょうど月の思考が一段落したところで、タイミングよくルパンは次の句を告いだ。
「ま、俺も脱出っちゅーのにゃあ賛成だな。皆で、仲良く、元の生活に帰ろうや。」
しばらくして二人の間に会話はなくなった。この暗闇の中、他人に一方的に居場所を知らせることになりかねないからである。
ルパンは思考を巡らせた。
ひとつに、このゲームの首謀者のこと。これほど大掛かりなことをできるということは相当な金持ちであろう。
脱出ついでにそいつのお宝もちょちょいと盗んでやろう。
それから、ライトとかいう坊主が持っていた銃。あれは次元のものだ。
ということは自分のデイパックに入っているものも誰かのものなのだろうか。ワルサーも誰かの手に渡っているのだろうか。
そしてもうひとつ、坊主の眼。
最初に対峙した時、恐怖に震えていた彼の眼には危うさがあった。ふとした弾みでどう変わるか分からない危うさが。
そうして身を滅ぼした人間をルパンは何度も見てきた。
彼が正しい道を歩めるよう祈るばかりだ。そう、自分とは違う、正しい道を。
【一日目深夜/D-7 森】
【ルパン三世@ルパン三世】
[装備]なし
[支給品]支給品一式、ランダムアイテム
[状態]健康
[思考・行動]
1:仲間を募りゲームを脱出する
2:主催者のお宝をいただく
3:月を見張る
【夜神月@DEATH NOTE】
[装備]なし
[支給品]支給品一式、M19コンバット・マグナム(次元の愛銃)@ルパン三世
[状態]健康
[思考・行動]
1:仲間を募りゲームを脱出する
※1巻冒頭からの参加です。Lのことも知りません
以上です
『オヤシロ様がみてる』に寄せます
乙です。
月がそっからの参戦ですか、望みが叶うってところに執着しちゃえば
ステルスになる可能性はかなり高そうですね。
…ルパンが自然と脳内再生されましたw
>>218 投下乙!
この月は新鮮。果たして綺麗な月になれるのか。
ルパンが脱ぐのはお約束ですねw
1巻からか、月も詩音みたいにどっちに転ぶか分からなそうですね。
もしかしたら綺麗な月が拝めるかも・・・・
投下乙
これから月が何を拾うかで作品がDEATH NOTEじゃなくなるかもしれないw
ありがとうございます
書いた側としても月がどうなるのか楽しみw
投下乙!
月が、月が白いw
まさかこの登場時期からの参戦とは想像してませんでした。
そういえば最初は普通の男の子だったんだよなぁ…
もしかして、Lの誤解フラグか?
そしてルパン。
独特な口調が上手く表現できていて、脳内であの声が再生されましたw
それにこんなときでもお宝のことを考えるとは…さすが天下の大泥棒。
改めてGJでした!
それから一応報告。
wikiにかえして!ニーソックスを保管したのですが、
描写などの関係で、先日訂正した部分をまた、以下のように訂正しています。
訂正前
「ねぇお父さん、ゆーちゃんがどこにも居ないよ。部屋も片付けられてるし、どうしちゃったの?」
「え?」
はて、……と首をかしげるお父さん。
私は何もおかしいことは言っていないのに、不思議そうに眉を寄せる姿が、先程私の中に生まれた安堵感を不安一色で塗りつぶした。
「そうだよ、ゆーちゃんだよ」
「こなた……、」
あまりに無関心なお父さんの肩を乱暴に揺らす私の腕を、やはり理解不能とでも言いた気な顔をして、お父さんが解く。
訂正後
「ねぇお父さん、ゆーちゃんがどこにも居ないよ。部屋も片付けられてるし、どうしちゃったの?」
「え、ゆーちゃん?」
はて、……と首をかしげるお父さん。
私は何もおかしいことは言っていないのに、不思議そうに眉を寄せる姿が、先程私の中に生まれた安堵感を不安一色で塗りつぶした。
「そうだよ、ゆーちゃんだよ」
「こなた……、」
あまりに無関心なお父さんの肩を乱暴に揺らす私の腕を、やはり理解不能とでも言いた気な顔をして、お父さんが解く。
投下乙です
この時期のライトとは予想外
本編でのいろんな体験をしていないライトっていうことは
やっぱり頭の回り方も違ったりするのかな
>>224 修正乙です
これは文頭下げを直しただけなのかな
投下乙です!
ちょwきれいな月w珍しいこともあるものだ。
これから白いままでいけるのか、それともロワで現実を知り黒くなっちゃうのか……GJです。
えっと、こちらでいいのかわかりませんが、OPの修正を行いました。
みゆきの呼称→ゆきちゃんに。
ルルーシュについては修正はいいということを言われたのでそのままにしました。
あと今日の投下ですが……諸事情あって1時頃になる可能性があります。申し訳ありません。
修正乙です!
それくらいの遅刻大丈夫大丈夫!
楽しみにまってまーす
申し訳ないの一言ですむの?
これから先もそうなの?
>>228 >間に合わないからもうちょっと伸ばして!という報告があればさらに2日予約期間を追加(48時間)できます。
今夜締め切りの予約って結構あるよね
投下wktk
投下乙
月も詩音も面白い時期から登場したなぁ、楽しみだ
田村令子、緋村剣心投下します。
田村令子は空腹だった。
故に彼女は食料を欲していた。
「A−3か」
バックパックには地図、コンパス、食料、水、そして煙草、手錠、名簿が入っていた。
地図を読み、眼前の建造物から位置を割り出す。
名簿を確認すると、彼女が見知った名前が二つ。
後藤、泉新一。
かたや最強のパラサイト。かたや不完全なパラサイト。
しかし、彼女は二つの名前には心に惹かれる事は無かった。
周囲の警戒を怠る事が無かった彼女は、自分の様子を窺っている気配に気付き、そちらに食指が動いていた。
「――誰だ」
彼女は害意がない事を表す為に両手を挙げて振り返った。
現れたのは身なりばかりか口調も古めかしい短身痩躯の青年だ。
どちらかと言えば間の抜けた顔には痕がある。
纏う気配にはある程度の修羅場をくぐった人間特有の剣呑さか見え隠れしている。
彼女が近付こうとすると男は目に見えぬ速さ、神速と言っても過言ではない速さで飛び退く。
二人を隔てる距離は10m程。後ろ向きの一足跳びで5m程退いた男の身体能力は決して低くはない。
彼女は素直に感心する。
「お主は……何者でござるか?」
間の抜けた顔から険しい顔に変わり隠していた剣呑さを露にする。
「返答次第では私を殺すか?」
双方共に取り繕わない白刃の様な気配を発する。
それに影響されて二人の周囲の空気の質が粘着な物に変わり、重くなった。
返答はない。ただ、ごくりと息を呑む音だけが返ってくる。
「私は殺し合いに乗る気はない」
「本当でござるか?」
返答には男の疑い深さが見える。否、獣じみた気配を発する彼女を信じる事に抵抗があるのだろう。
「ハァッハハハハハ!」
彼女の無機質な笑いに、男は毒気を抜かれる。が、決して隙を見せる事はない。
その用心深さは豊富な経験――戦いの経験を感じさせる。
「何の真似でござるか?」
「人間は面白いと思った時に笑う。違うか?」
交錯するやり取りに鬼気が迫る。
「先程お前は私が何者であるか聞いたな?」
ゆっくりと、無防備に近づくと拮抗していた空気が揺らぐ。
「――飛天御剣流――」
彼女の尋常に有らぬ気配を感じたのか、男は鋭利な刃に似た剣気を解き放つ。
投下ktkr
支援
「九頭龍閃!!」
――壱弐参肆伍陸漆捌玖。
それぞれに必殺の威力を秘めた九連撃が彼女を襲う。
勝負にもし、たら、れば、の言葉は禁物である。
もし自分の得物を持っていれば、彼――緋村剣心は見事に田村令子を倒し得ただろう。
が、不運な事に得物を持ち合わせていなかった彼は、素手で打撃を叩き込もうとした。
更に重ねて、彼女が人間であると思い込んでいた。
そもそも、闘いの質が違っていた。
相手を殺さない不殺、相手を食べる捕食。
二人の意志、刃は違い過ぎていた。
彼は胸を貫いた刃――戦闘形態をなった彼女の頭部から触手の様に伸びた硬質な先端を見つめ、自らの攻撃が届く事が無かった事を悟ると呆けた様に笑い、崩れ落ちた。
呆気ないと言えば呆気ない、ただの一瞬だけの交錯。
「私達はか弱いが……無敵だ……そして、私は殺し合いに乗る気はないが……ヒトを殺すという本能に逆らうつもりもない」
彼女の声は夜の静寂に溶け、彼の耳には届かない。否、届きようがない。
頭部を変形させた彼女に上半身は喰われ、胃の中に収まっているからだ。
噛み千切られた部分からは緋色の血が流れ、薄紅の肉はおろか、臓物が覗いている。
生臭い臭いにが満ち溢れ、大地には溢れ出た鮮血が池となっている。
咀嚼する事なく上体を呑み込んだ彼女は、ついで下半身を一飲みに丸かじる。
服を血で汚し、異形の姿で空腹を癒す彼女の姿は、まさに人に在らざるモノ――パラサイトと呼ばれるバケモノであった。
食事を終えると、エサであった剣心の荷物――デイパックを拾い、彼女は深い闇へと紛れていった。
【一日目深夜/A−3 美術館前】
【田村令子@寄生獣】
[装備]なし
[支給品]支給品一式×2、ランダムアイテム しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒
[状態]軽度の疲労
[思考・行動]
1:エサを見つけて食べる
2:本能的に泉新一を危険視
3:本能に従いヒトを殺す
投下終了であります。
ライト・ライトに寄せまつ
投下乙です
田村令子怖えーーーーーーーーーーーーーーーーーー
寄生獣ってこういうのなのか…怖すぎるよママン
あ、あと指摘なんだけど、剣心の死亡表記抜けてるよ
それとも実は死んでないの?
投下乙です。
と言うか本編最初の死者が剣心か・・・。
忘れてた
【緋村剣心@るろうに剣心 死亡確認 残り64人】
ごちそうさま。
投下乙
そりゃ刀が無けりゃ剣心は役立たずだ
縁いるのに・・・もったいない気もするなあ・・・
まさか最初に死ぬとは、寄生獣読んでみようかな?
投下乙!
最初はただの食欲魔人なキャラかと思ったら食料って人かよ
怖いよこいつ、しかもごちそうさまってw
>>243 そんな君に
つGRロワ2
そういやアニロワ2ndの豆兄貴もまさかの1話退場だったな。
投下乙
この場合首輪ってどうなってるの?
投下乙〜
初めての死者の死因が食事とはこれは予想外w
最近文章書きはじめたっぽい初々しさがあるなー
これからもがんばってくれ
投下乙です。
実はこんな田村玲子が寄生獣のパラサイト陣営の中で一番マシだったりする。
…一応、本当にママンなんだよ、この人。
泣き止まない赤ん坊の頭掴んで「黙れ」ってやるけど…
投下乙……なんだけど田村玲子のキャラに違和感がある
原作だと彼女は出来るだけ人間を食わないで共存する道を模索してるキャラで、
出会った人間を片っ端から殺したり食べたりする様なキャラじゃない。
腹が減ったから剣心を食ったのは納得できるが、一人食べたらしばらくは食人しないはず
だから状態表の表記は原作からしたら不自然なのでは?
原作を把握してる人間が少ない作品だからこそ慎重に書かないと後々の作者様がキャラを勘違いされると思うのであえて厳しめに突っこませてもらいました
見苦しいと思う方もいらっしゃるとは思うでしょうが、原作厨の痛い行動ですので見逃してください
>>249 >間を食わないで共存する道を模索してるキャラ
マジかよw
めちゃくちゃ無差別マーダーじゃないのかw
>>249 何か便乗ですが、そこは自分も引っかかってました。
田村を名乗っているという事は少なくとも出産後だと思いますし、
この頃になると田村玲子は自分の正体に気づいた田宮良子の母親や
自分の子供を殺そう(演技?)とした倉森を殺害した以外は
積極的な殺害描写はなかったと思います。
パラサイトとしての本能より研究者的な欲求が強い気がしますね。
作品事態は問題ないと思いますが、状態表は少し気になります。
田村令子の状態表変更
【一日目深夜/A−3 美術館前】
【田村令子@寄生獣】
[装備]なし
[支給品]支給品一式×2、ランダムアイテム しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒
[状態]軽度の疲労
[思考・行動]
1:ヒトを観察
2:泉新一を危険視
3:今は満腹。
に変更お願いします
後藤、ルイズ投下します。
支援
C
魅力的な鞄だった。
見た目はごく普通、いや、むしろ若干趣味が悪いと言っていい。
少なくとも良家のお嬢様であるルイズが、人参のアップリケ付きの鞄を喜んで持ち歩こうとは思わない。
デザインセンスに優れた鞄なら、実家に帰ればいくらでも手に入るし、その意味で、この鞄は全く魅力的ではない。
しかしながら、その見た目を補って余りあるモノが、これには付いていた。
名前は『秘密バッグ』と言うらしい。何とも投げやりな名前だが、機能は投げやりじゃない。
ルイズが鞄の中に手を入れると、手はどこまでも入っていく。
小さな鞄で、大きさはルイズの膝に乗るぐらいでしかない。
外から見たらどう見ても肘まで入るかどうかも怪しいサイズだが、そんな外見を無視していくらでも腕は入っていく。
腕の付け根、肩のあたりまでどっぷり腕を差し込んだルイズはそこから、ぐるぐる腕をまわして鞄の中を漁る。
鞄の中、と言っても正確にいえば中ではなく外だ。
鞄の中に入ったかと思えば、外に出ていた。何を言っているのか分からないと思うが、まー、そんな鞄だ。
とまれ、鞄の中だか外だか分らない奇妙な空間から、ノートを一冊取り出してみる。
まだ使ってない真新しいノートを一冊、鞄の中から取り出した。
「…………特に不思議なところはないわね」
ざっと見まわしてみると、やたら上質な紙を使っていて手触りや透き通るような白さが特徴的なこと以外、目立った特徴はない。
もっとも、その白さや手触りもルイズが住んでいたハルケギニアの工学技術が低いから特別に見えただけで、使い魔の平賀才人が見れば、どっからどう見ても普通のノートにしか見えなかったろう。
「他には何かないかしら」
再び、鞄の中をまさぐってみるが、大したものはなさそうだ。
小さな鞄を開けて、中を直接覗き込んでみると、そこには女の子の部屋があった。
どうして、女の子の部屋だと思ったかというと大きめの勉強机と、可愛らしい人形がそこに置いてあったから。
とりあえず、殺し合いに役立ちそうなものはかけらも見当たらない。
それに、不思議なことに、いくら鞄の中を探っても部屋の外には行けないのだ。
どうもこの鞄は『ルイズのいる場所』と『名も知らぬ女の子の部屋』を繋ぐ機能しか持っていないらしい。
「不思議な鞄よね……」
不思議なことは他にもある。
なんと、取り出したアイテムを戻すことが出来ないのだ。
説明書には確かに「アイテム取り寄せ」と『だけ』書かれているから、まぁ間違いではない。
しかし、それにしたって不思議すぎる。
一度は向こうから取り出せたアイテムではないか。戻せてもよさそうなものだ。
「ますます不思議ね」
人が殺されたばかりだというのに、ルイズの好奇心は高まるばかり。
いや、むしろ人が殺されたばかりだからこそ、ルイズの好奇心は高まっているといってもいいかもしれない。
なぜなら、このアイテムは……
「でもさ、これって……要するに空間を移動できるマジックアイテムってことよね?」
剣と魔法の世界に住む少女らしい理解の早さ。
そう、だからこそ、ルイズはこの鞄に魅力を感じたのだ。
今自分たちは、殺し合いを強制されている。
自分は、そんなものに参加するつもりなどさらさらない。
幼い子供を殺しておいて、偉そうに命令する……あの所業、あの態度、全てがルイズの癇に障った。
かといって、彼女には何もできない。
本当の意味で何もできない。
もしも彼女が、素直な少女ならば、ここで怖がることもできただろう。
泣き叫び、狂い、人殺しにでも走ろうか。あるいは、感情を狂わされ、笑い叫びながら自殺でもしてやろうか。
しかし、ルイズにはそんなことさえできなかった。
『残念なことに』彼女は非常にプライドが高かったのだ。
だからこそ、人が殺される瞬間、首輪が爆発される瞬間を見ても、悲しみと怒りが湧いてくるだけだった。恐怖は湧いてこなかった。
しかし同時に、矛盾しているようだが、彼我の戦力差も自覚した。
首輪をはめられた状態では、自分には何もできない。飼い主と飼い犬の関係が、今の自分とV.V.のそれだ。
この状態ではとても、戦えたものではない。
許せない、でも戦えない。
そんな中ルイズが考えたのは、外の世界へ応援を要請することだった。
「これがあれば、それも難しくない」
ルイズは大きな危機の中に立たされ、同時に物凄いアイテムを渡されたことで、危機感にも負けないほどの正義感を芽生えさせていた。
そう。
このアイテムの原理を解明できれば、殺し合いを止める決定打を放つことになるのだ。
首輪をつけて、変な場所で殺し合わせる。
しかし、そこにトリステイン魔法学院の先生方が来たらどうなるだろう。
当然、止めてくださるに決まっている。トリステインのメイジたちは、こんな殺し合いに負けるほど誇りを失ってない。
「そうよ、あんなの絶対、絶対に許さないんだから!!」
自分には戦う力がない事ぐらい自覚している。
サイトに守ってもらえば、何とかなるかもしれないけど、それだってなんか悔しい。
絶対、絶対、絶対に自分の力で解決してみせる。
そして、この鞄の仕組みが分かれば、それは決して難しい事じゃない。
鞄をよく見れば、人参のアップリケが付いていて、その近くにヴィオラートと書かれている。
どうやら、これはヴィオラートという持ち主がいた鞄らしい。
それにいかにも手作り感漂うアップリケを見るに、おそらくはヴィオラート本人が作った鞄だろう。
人が作った鞄ということは、必ず人が理解できるメカニズムをもって制御されているに違いない。
だとしたら、姿知れぬヴィオラートに出来て自分に出来ない理由があるだろうか。
いやない。
ルイズはかぶりを振って、高まってきた正義感を強く持ちだす。
「そうよ、もう……もう、これ以上殺し合いなんて絶対に許さない。首輪をつけて、殺し合えなんて貴族を何だと思ってるのよ!!」
「そうそう、許しちゃいけないよ!! アハハハハッ」
「え??」
高ぶりも最高潮に達した正義感。
そのルイズのそばに、一人の男が現れていた。
(気付かなかったわ……)
鞄漁りに夢中になりすぎた。
気がつけば、白紙のノート以外にも鉛筆やらボールペンやらが地面に転がっている。
慣れていないとはいえ、殺し合いの中、不用心すぎたとルイズは後悔する。
「君、名前なんて言うの? あ、俺は三木」
「る、ルイズよ……」
大柄の男・三木は半袖シャツとジーパン姿。
ハルケギニアに来たばかりのサイトとほとんど同じ格好をしている。
もちろん、サイズはまるで違うのだが、それでも恰好から彼も日本から来た人間なのだろうと推測できる。
いやしかし、それよりも正義感高ぶるルイズには、一つだけ気になることがあった。
タイトルの元ネタってレイ○ースですか?
支援。
「ナハハハ、ルイズってのか。変わった名前だなァ」
「ミキの方が変わってると思うけど……、ってか、アンタさっきから何ずっと笑ってんのよ」
「ナハハハ、ネがカルいからね」
「だから笑うな! ひひひひ人が死んでるのよ、分かってるの? 事件なのよ!!」
「あぁ、そういえばそうだったね」
顔はいい男だ。
筋肉質の体も悪くない。きっと、ツェルプストーならすぐにでも手を出すだろう。
しかし、笑うとは不謹慎すぎやしないか。湧き上がる不快感を抑えつつ、ルイズは念のため、男に確認する。
「い一応聞いておくけど、あんたは殺し合うつもりなんかないわよね?」
見た目、男は武器を持っていない。半袖の服は肘から上を完全に露出させており、彼が武器を持っていないことを示している。
持物と言えば、背中に背負ったデイパックのみ。その中に支給品の武器があったとしても、すぐには取り出せないだろう。
「少なくとも『殺し合う』つもりはないよ」
『殺し合う』の部分に若干強調がかかっていたことにルイズは気づくこともなく、単純に男が殺し合いに参加しない人間だと解釈した。
(そう……なら笑いすぎなのは、精神をやってしまったからなのかしら? 当然よね、あんなのを見たら誰だって……)
「ルイズちゃんだったね? 君は殺し合うつもりあるの?」
「ある訳ないじゃない!!」
「あれま、そうなんだ」
何を当たり前な。
この男は、笑ったり、当然のことを言ったり、どうにも要領を得ない。
よほど混乱しているのだろう。それに、この男、どうにも見た目に違和感がある。何とも言えないのだが、何かがルイズと違う気がする。
「と、とにかく、アンタ殺し合うつもりがないのなら、今すぐこの場から逃げなさいよ」
「どーやって?」
「それはね……、このバッグを使えば出来るわ」
「へぇ、すごい」
男はルイズの行動にイチイチ、大げさなリアクションを取ってくる。
いい顔をしているのだが、表情の作りがオーバーすぎて、どことなく不自然で、何となく不気味だ。
「このバッグはね、遠くにあるものを取り出すことができるのよ」
「すごいね」
「だから、アンタを今すぐ元の場所に戻してあげることができるわ。殺し合いなんかない日常にね」
「すごいね」
目が笑ってない。
顔と口だけで笑顔を作って、男はルイズに笑いかけている。
(なななんなのよ、コイツは……せせせっかく、日常に戻れるのよ)
もちろん、秘密バッグの仕組みが分かってないのだから『今すぐ』戻ることなんか出来やしない。
ほんの少し、見栄っ張りのルイズが嘘を吐いてしまっただけのことなんだが、それでも、男の不自然な笑顔は無性に腹が立つ。
「あ、アンタねぇ……」
「アハハハッ、ごめんねェ。でもさ、ルイズちゃん少し勘違いしてるよ」
「何を勘違いしてるってのよ?」
「俺は『殺し合う』つもりはないって言ったんだよ」
そう言った瞬間だった。
男の両腕がダラリと伸び、まるで箸から滑り落ちた餅のように地面にボトりと着いたのだ。
「な、何よそれ……」
人間の腕が、粘土のような質感を持ち、突然のびて地面に届く。
ルイズの目の前で、あり得ない現象が展開されている。三木はそれを気にする風もなく、笑顔のまま話を続けてくる。
「俺や後藤さんが、人間たちと『殺し合う』ことなんて出来るわけないんだよね……
ま、田村さんなら分からなくもないけどさ……あの人頭よさそうだし」
「な、何突然言ってるの? アンタ帰りたくないわけ?」
「帰るってどこに?」
「アンタの家よ、帰る場所ぐらいあるでしょ!!」
「うーん……、どうかなぁ……別にどこにも行く必要ないしねェ」
言うや否や、男の右腕が突然持ち上がり、一瞬のうちにルイズを叩きつけた。いや、斬りつけた。
先ほどまで粘土だったそれは、ルイズの見ている前で、ルイズの目にもとまらぬスピードで、いつの間にやら剣に変わっている。
顔の皮一枚を掠ったその攻撃に、ルイズは瞬き一つすることも出来なかった。
「あアンタ…………」
続けざまに降りかかる刃は、ルイズの動体視力を優に超えている。
やわらかい粘土のような質感を持った腕が一瞬のうちに硬質化してルイズを切り刻んでいく。
(あ、ああぁあ、熱い……、あつい、あついよ…………)
理不尽すぎる突然さ。
ルイズは恐怖心も、戸惑いも、何一つ感情らしきものを動かせない。
いきなり斬りつけられて、感じるものと言えば、単純な痛みのみ。
男の攻撃は、文字通り雨のようにルイズに襲い掛かかり、その表情は先ほどまでとうって変わって能面のような無表情だ。
(ああぁあ、何、何………………何なの、さっ……きまで……)
まるで別人という表情を見せる三木だが、元より表情豊かな外見は作りものにすぎない。
『餌』を食べる時にニコやかな笑顔は必要ない。
「……さァて、そろそろ食べるかなァ?」
しえん
(…………、な、何、ねェ……なにが…………)
斬り刻まれすぎて、痛みを感じすぎて、何が何だか分からない。
(なに、なに、いったい…………)
恐怖すら感じることなく横たわるルイズに三木が近づいてくる。
すでにルイズを死体と思っているのか、攻撃の手は止まり、ゆっくり近づいてくるのみ。
そんな、三木の顔が、両腕と同じく粘土細工に変わり、大きく変形する。
まるで、『口だけ頭』
頭全体が口になり、ルイズをゆっくり飲みこもうとする。
と、その時。
三木の目の前、ルイズの背中に背負われたデイパックから一筋の光があふれ出した。
「えェ…………」
あふれ出した光の束の中央。
1瓶の壺が、ルイズの頭の上にくる。
全自動で動く壺、ルイズの理解も、三木の理解も超えている。
唖然とする三木。
全身血まみれで動けないルイズ。
一匹と一人が見つめる中、壺から一筋の液体が降り注いできた。
「な、何が…………」
降り注ぐ液体は、ルイズの全身を覆い、瞬く間にその傷を治していく。
その様に、ルイズも三木もただただ動きを止めて見守るだけ。
気がつけばルイズの傷はまるで無かったかのように癒え、破れて原形をとどめていない服の下に、彼女の白い素肌が覗くようにまでなっていた。
「う、嘘…………」
「な、何だよそりゃ……」
お互い理解できていない。
しかし、ルイズにとっては幸運以外の何物でもない。
そう思って、ルイズは面をあげる。
するとそこには、三木が……いや、人間ではない、何かがいた。
(何コレ? 口だけ頭…………)
(触手だけ頭? ………ああぁあああああ、何、何なの……)
「いやあああああああああああああああああああああああああぁあああああああああああ!!!」
逃げた。
一目散に。
何も考えずに、ただひたすらに逃げた。
貴族の誇りだとか、ゼロの二つ名だとか、ガンダールヴを使役しているだとか。一切関係なかった。
ただひたすらに、走っていた。
「なに、何、何なのよ……」
自分が話していた男だと思った生き物は、人間ですらなかった。
しばらく走り、ルイズは一軒の民家の二階に走りこむ。
ガクガクふるえながら、先ほどの男を思い出す。謎の壺で助かったものの、突然殺されそうになったのだ。
何が何だか分からない。助かったことさえ理解できないのだから、素直に喜ぶこともできない。
「何、あれは……何、一体何なの…………」
支援
ただひたすらに怖かった。
人間でないものと、人間同士の殺し合い。どうあがいても、ゼロの自分には勝ち目はない。
「サイト…………」
民家の二階から、恐る恐る外を覗く。サイトさえいれば、あいつにも……
いや、ダメだ。サイトだって敵わない。だって、あれは化け物なんだから。
そんなとき、窓の外に化け物が走っているのが見えた。
ほっほと、鈍重な動きを見せながら、三木と名乗っていたころと同じ頭を見せながら。
「こ…………こわい、…………」
相手は気づいていないのに、ルイズは恐怖で体が動かない。
カーテンを閉めるのも忘れ、目を背けることすらできず、ただじっと三木を見つめるばかり。
「…………やっぱり、俺と人間じゃ『殺し合い』にならなかったかァ……」
外から化け物の声が聞こえる。
そういえば、最初に会った時『殺し合う』つもりはない、と言っていた。
あれはこういう意味だったのだ。殺し合いではなく、虐殺をするつもりだと。
「しっかし、あの娘も最初は強そうにしてたけど、突然逃げるんだもんなァ……
殺し合いは許さないんじゃなかったのかな、言ってることが違うじゃないか」
そのつもりだった。
しかし、自分には無理だ。相手は化け物なんだから、どうしようもないじゃないか。
自分だって、サイトだって、タバサだって、殺されてしまうんだ。
どうしようもないじゃないか、あんな化け物。
「でもま、人間にしちゃよくやった方か、あの壺が無かったら食べられたと思うんだけどねェ……」
そうだ。あの壺のおかげで、自分はかろうじて命をつないでいる。
一体あれは何だったのだ。
ルイズは恐怖に震える体を無理やり動かしながら、命の恩人を確認すべくデイパックを再びまさぐった。
何も分からない支離滅裂な状況を、せめて1つだけでも理解しよう。
あの壺が自分の支給品なら、説明書ぐらい付いているはずだ。
そういえば、殺し合いが始まった直後は『秘密バッグ』の性能に驚かされて、他は名簿ぐらいしか確認していなかった。
ルイズは、デイパックの中にある壺の説明書を見つけ、それを読んでみる。
『エリキシル剤×2:HP超回復、MP超回復、LP超回復、生きている』
という表題の説明書。
中を読んでみると、どうやらこの支給品は使用者の傷を全快してくれるらしい。
さらに、これは『生きている』ものらしく、使用者の体力が20%以下になったとき、自動的に発動するのだそうだ。
個数は二個。さっき一個使ったので、残りは一個。
窓の外を見れば、化け物がまだうろついている。
これがあれば勝てる?
これをサイトに使わせたら勝てる?
(…………ば、馬鹿……私ったら何考えてるのよ)
無茶に決まっている。いくらサイトでも、回復アイテム一個では勝ち目がない。
もう一つの支給品、『秘密バッグ』にしたって、戦闘では使えない。
駄目だ。
(助けてサイト…………)
矛盾するような祈りを込め、ルイズは部屋の中でガタガタと震えている。
支援
そんな時だった、ルイズの目の前に最後の支給品が飛び込んできたのは。
それは、彼女も一度だけ見たことがあるもの。
それは、彼女の使い魔が一度だけ使って見せたもの。
それの前で、彼女は一度、貴族の誇りを見せたもの。
「こ、これは……まさか……」
異世界トーキョーから来たアイツの前で、一番最初に見せた自分の勇士。
「さ、サイト……」
自分の最後の支給品は、サイトと共に闘った初のミッション。その時に、決め手となった武器。
サイト曰く、ロケットランチャー。伝承曰く、破壊の杖。
そうだ、あの時自分は叫んだではないか。
『魔法を使える者を貴族と呼ぶんじゃない。敵に後ろをみせない者を貴族と呼ぶのよ!』
と。
巨大なゴーレムにもひるまず、立ち向かって行ったではないか。
破壊の杖を手に取り、ルイズは思い出す。
そうだ。
自分はメイジだ、自分は貴族だ。
相手が人食いの化け物だろうと関係ない。だからどうしたというんだ。
メイジの杖は、貴族の誇りは、そんなにも容易く折れてしまうものだというのか。
(いいえ、違うわ)
破壊の杖を右腕に、秘密バッグを肩に、エリキシル剤を背中のデイパックに背負い。
ルイズは再び叫ぶ。
「そうよ、『魔法を使える者を貴族と呼ぶんじゃない。敵に後ろをみせない者を貴族と呼ぶのよ!』」
支援
◆ ◆ ◆
民家を出たルイズが、三木を見つけたのはすぐのことだった。
もう逃げるつもりはなかった。究極のマジックアイテムと、サイトがくれた誇りが自分にはある。
「あれま、逃げたんじゃなかったんだ」
「……」
「まぁ、その方が都合いいけどね」
「…………アンタに一つ言っておくわ」
「?」
「アンタは一時とは言え、私の誇りを砕いてくれた。貴族の私が、敵に背中を見せて逃げ出してしまった。
でももう逃げない。貴族としてメイジとして、殺し合いに参加した化け物を見過ごすことはできない!!」
「殺し合いじゃないって、ただの食事だよ」
「問答無用!!」
破壊の杖を右肩に乗せたのが、戦闘開始の合図。
変形する三木の両腕が、幾筋もの刃となりルイズに襲い掛かってくる。
ルイズはその攻撃を無視し、できる限り三木へ近づこうとする。
(破壊の杖は単発。避けられたら終わり)
両腕と違い、三木本体の動きはきわめて鈍重である。
ロケットランチャーの弾を避けられるとは思わないが、それでも慎重を期したい。
避けられなくとも、すばやい両腕で防がれたら一巻の終わりだからだ。
ランチャーの砲身を盾に、三木の攻撃をかわしながら、ルイズはフーケ討伐に向かった頃のサイトを思い出す。
あの頃のサイトといえば、まったくなってなかった。
自分の使い魔だというのに、ツェルプストーに手を出したり、給仕の女の子に手を出したり。
おまけに自分の事をゼロのルイズと大笑い。
使い魔の取替えがきくなら、すぐにでも追い返してやりたいと思っていたものだ。
タバサみたいなドラゴンは無理でも、せめてツェルプストーと同等のサラマンダーぐらいは欲しい。
みすぼらしい服を着て、無礼な平民なんて、使い魔にふさわしくない。
何度も何度も思った。
でも違った。アイツは凄くいい奴だった。
いくつものミッションをこなした今だからこそ分かる。
フーケの時も、アルビオンの時も、アイツは誰より活躍してくれた。
ルイズの、自分の体よりはるかに大きなプライドは、彼の力によって優しく守られていた。
(……でも、アイツは………………)
伝説のガンダールヴだなんて言われても、やっと信じられるようになったばかり。
どこから、どう見ても自分と同年代の普通の男の子。
いくら、伝説の力を持っていても。
場違いな工芸品を操り、並みのメイジを遥かに凌ぐ戦闘力を持っていても。
それでも、アイツはただの男の子。
ルイズだって、考えたことがないわけじゃない。アイツは…………
三木の攻撃は激しさを増し、ルイズはまったく近づけない。
ランチャーを盾にして、攻撃を防ごうと思っても、そもそも三木の攻撃はほとんど見ることすら適わないので、実質防御率は0だ。
でも、不思議と恐怖はなかった。
背中に背負ったエリキシル剤はまだ発動していない。
三木の攻撃は本気には程遠く、だからこそルイズにも耐えられる。
寄生生物にも、かすかに存在する警戒心がルイズへの攻撃を緩めている。
しかし近づけない。この距離と、刃の雨では、ランチャーの照準を合わせることさえできない。
(だ大丈夫、チャンスは来るわ……アイツがエリキシル剤を警戒している限り)
ルイズはたった一度だけ、それでも確実に来るチャンスを待つ。
そして、その時は唐突にやってきた。
背中のデイパックから光が漏れる。
その光に三木がギョっとして、一瞬動きを止める。
そのチャンスをルイズは逃さず、一気に三木との間を詰めた。
背中のエリキシル剤が、光に遅れて飛び出してくる。
全自動『生きてるエリキシル剤』はルイズを追尾するが、標的は無視して突き進む。
三木はそんな一人と一個をみて、一瞬どちらを攻撃しようか迷ってしまった。
その迷いこそ、ルイズが求めた天文学的に低い確率の、だがしかし確実に来ると信じたチャンスだった。
「チェックメイトよ」
間合いをつめ、三木の首にランチャーを当てる。
このまま撃てば、首輪は暴発し確実に倒せる。
ルイズはそう信じて引き金を引いた。
支援
支援
◆ ◆ ◆
首を破壊された化け物は驚くほどあっけなく死んでしまった。
ルイズは右手に残る確かな感触をギュッと噛みしめるように握りしめる。
「やった……勝った………………」
弾きとんだ場所から、噴水のように湧き上がる鮮血。
人間と同じ真紅のそれを見ても、ルイズに悲しみはなく、大きな達成感のみが彼女の体を纏っていた。
ルイズにはそう、やらねばならぬことがある。秘密バッグの解明だ。
このバッグの仕組みさえ明らかになれば、殺し合いから解放されることも夢じゃない。
ここに連れてこられた、自分やサイト、タバサと言った罪なき人々を救いだすことができる。
その所業は、ヴァリエール家にとってもかつてないほどの偉業。
化け物を除いても50人近くいるであろう被害者たち全員を救済するのだ。
それだけじゃない。
空間を転移するとはすなわち、別の問題の解決をも意味する。
そこまで考えたとき、ルイズの目の前にサイトが現れた。
「さサイト……」
サイトはにこやかに笑ったまま答えない。
「あああアンタね、何やってたのよ、わわ私がヒドい目にあってたのよ。
とんでもない化け物でさ、両腕がこーーなってね」
ルイズの一生懸命なジェスチャーはオリジナルを全く再現していない。それでもサイトは笑顔を崩さずにいた。
「ああそうだ、あアンタ、トーキョーに帰りたがってたでしょ? 帰りたいわよね、そうに決まってるよね!!」
サイトがいくら伝説の使い魔でも自分と同じ年頃の少年。
ルイズだって、考えたことがないわけじゃない。
自分が家に帰りたいと思うことがあるように、サイトだって、時々はそう考えているはずなんだ。
「感謝しなさい、すっごい手掛かりを見つけたんだから」
いや、サイトの場合は、時々ではないかもしれない。
自分は会ったこともないけれど、優しそうな家族が彼にはいたはずなのだ。
そして、その家族はハルケギニアから遠く離れたトーキョーという別世界にいる。
連絡を取ろうにも、全く繋がらない異世界。
学院から実家に戻るとか、そんなレベルではない隔絶感が、孤独感となり、サイトに襲い掛かっているはずなのだ。
「このバッグよ、これの仕組みが分かればね……」
もしも自分が、サイトと同じ立場になったらどうなるだろう。
見たこともないトーキョーの街に、突然放り込まれたらどうなるだろう。
実家に帰ることもできず、学院に戻ることもできず。
会いたい友達もいない。常識さえ通用しない。お金もない、食べ物もない。
ないない尽くしの世界に放り込まれたら、自分はどうなるだろう。
「ねぇ、サイト喜びなさいよ。もうすぐ帰れるのよ、私がアンタを帰してあげるんだから!!」
だけどもう、そんな悩みからも解放される。
「ねぇ、喜びなさいよ。アンタもうすぐトーキョーに帰れるのよ…………」
サイトの表情は笑顔で、しかしどことなく哀しみをたたえたものだった。
【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 死亡】
◆ ◆ ◆
ルイズの放ったロケットランチャーは、確かに三木の首を弾き飛ばしていた。
しかし、その結末は彼女の望むものとは大きく異なっていた。
吹き飛んだ三木の首には、参加者全員にあるはずの首輪がなかったのだ。
ルイズは最初から、彼の違和感に気づいていたものの、最期まで首輪がないことは見抜けないでいたのだ。
舞い上がる血しぶきと、打ち上げ花火のように飛び上る首。
それを見て彼女が勝利を確信したとき、『三木』の右腕にいた『後藤』が、三木の支配を逃れ、ルイズの心臓を突き破った。
遅れてやってきたエリキシル剤も、心臓が破られ生命活動を停止した体には効果がなく、ルイズは結局息を吹き返すことがなかったのだ。
「それにしても酷い出血だ……、おい『三木』戻って来い」
右手にいた後藤はすぐさま頭部に移動し、三木を呼び戻す。
「いやぁ面目ない」
「話にならんな、やはりお前は右手でいるのが分相応のようだ『三木』」
「いやでも、あの壺凄かったんだよ」
「壺などどうでもいい、当分は眠っていろ」
そもそも、三木が壺を必要以上に警戒しすぎたことが今回の原因だ。
最初から自分が出ていれば、出血もなく食事に取りかかれただろうに、どうにも三木は信用できない。
まぁ、何事も慣れだと思っているので、いずれは自分と同等の存在になれるだろうが、それはずっと先の話だ。
「…………ふぅ、少し、だるいな」
右手の支配権を取り戻したことを確認し、後藤は体の様子を確かめる。
出血がひどい。前回も三木に任せた時、同じようなことがあった。
とりあえず、手元にある餌を食べ、落ち着くこととしよう。
彼は、かつてルイズと呼ばれた肉塊を口に運ぶ。
それは決して、満足できるものではなかった。
「とてもじゃないが、足りないな……」
ルイズの体は小さい。後藤は寄生生物の中でも図抜けた大食漢である。
おかわりが欲しいな。そう思って彼は、深夜の街を歩くのだった。
支援
支援
【一日目深夜/F−10 地図にない民家の前】
【後藤@@寄生獣】
[装備]なし
[支給品]支給品一式、ランダムアイテム×3(本人未確認)
[状態]軽度の疲労
[思考・行動]
1:餌が足りないので、おかわりが欲しい。
[備考]
1:後藤には首輪が付いていません。体のどこか別の場所に同等の機能を持つものが付いています。
2:F-10近くにルイズの死体と秘密バッグ@ヴィオラートのアトリエ、破壊の杖@ゼロの使い魔(残弾0)が落ちています。
3:エリキシル剤@ヴィオラートのアトリエはすべて消費しました。
投下終了です。
全ルートに寄せます。(で、いいんですかね?)
投下乙
まあ予約段階からルイズ死亡は確定的に明らかな気がしたのでショックが少なくて済んだw
投下乙です!
ああルイズ
ルイズが死んだ
切ないよ
俺・心の俳句
乙
この生物強すぐる
>>236 投下乙!
寄生獣の雰囲気出てるなあ。
無機質な笑いが、いかにも田村さんって感じでよかった。
>>286 投下乙!
くぎゅううううううううう!
心臓ドキドキで見てたよー。緊迫感あってマジ面白かった。
投下乙
ルイズの覚悟や壮絶な死に様がすごくかっこよかったです!
だけど……流石にロケットランチャーの直撃食らえば後藤だって死にますぜ?
実際に描写があったわけじゃないけど、山岸さんのヤツだって一応避けてましたし
文句が多くてスミマセンorz
上でも言いましたとおり、把握してる人数が少ないからこそキツイ感じで言わせて貰っています
寄生獣勢大暴れだなwwww
まさか続けて死ぬとは・・・
293 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/02(木) 21:39:47 ID:HD6V8uY0
>>291 そうなの?強い強い言われてたからもっと硬いと思ってた
まあ最初から強さ見せ付けすぎるとすぐ死ぬパターンが多いし大量虐殺にはならないかな
ageちゃってごめんね
ところで備考2のルイズの死体は食べられたから無いのでは
スレやつちだま見たら、昨日から寄生獣のキャラに違和感を抱いている人が何人か居るらしいが、俺は把握してないからよくわからんのよ
だから寄生獣を書いた人と把握してる人はしたらばで話し合ってくれないか?
本当にキャラ違うならこれから把握する書き手が合わせるのが大変だし
キャラ違いは何とか修正効きそうだけど耐久力の問題は結構大きいな
寄生獣未把握だから聞きたいんだがやつらってどの程度ダメージ受けると死ぬんだ?
ロケランで頭吹っ飛ばされても軽度の疲労ですむって事はやっぱ全身粉々にしないと死なんのか?
投下乙
主役キャラが立て続けに死亡か、序盤から大荒れだな
>>298 頭部寄生の一般型は心臓刺されりゃ死にます。
後藤も体が硬いわけではないです。
所詮人間の体を変形させているだけなのでRPG喰らったら全身吹き飛びます。
後藤はバラバラになっても部分部分が健在ならくっつけますが、
その状態の時はそれしか考えられなくなってるので簡単に止めさせます。
原作の後藤の死因は廃棄物の毒が体に進入した所為で
全身の制御が聞かなくなって飛び散ったところを新一に鉈で止めをさされました。
確かに彼らはかなり強いんですけど生物なんで脆くもあります。
そういや分岐制だったから分岐すりゃいいのかな
ただ泉ってやつがキャラ違うなら、次は上田からになるんでしょ?
だったら詩音のSSはどうなるんだろ
寄生厨の俺が言う
田村玲子はあくまでも頭部以外は生身の人間だから、耐久性は人間程度で普通に失血死とかもする
後藤は、5体のパラサイトが集まって全身を覆ってるから、ショットガン(特別製)でも殺せなかった
けど、あくまでもベースは人間の体だからパラサイトに覆われて守られてる内臓が破壊されたら死ぬ
ちなみに後藤の防御力はショットガンではダメージを食らわないが、マシンガンを連続で受けるのはキツイってレベル
>>281 を修正します。
ルイズの放ったロケットランチャーは、確かに三木の首を弾き飛ばしていた。
しかし、その結末は彼女の望むものとは大きく異なっていた。
吹き飛んだ三木の首には、参加者全員にあるはずの首輪がなかったのだ。
ルイズは最初から、彼の違和感に気づいていたものの、最期まで首輪がないことは見抜けないでいたのだ。
-- ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ --
ルイズの放ったロケットランチャーは、確かに三木の首を弾き飛ばしていた。
しかし、その結末は彼女の望むものとは大きく異なっていた。
吹き飛んだ三木の首には、参加者全員にあるはずの首輪がなかったのだ。
ルイズは最初から、彼の違和感に気づいていたものの、最期まで首輪がないことは見抜けないでいたのだ。
そしてもうひとつ、首に接近しすぎたため、被弾面積が小さくなり、実質的に三木が受けたダメージが少なくなったことも、彼女の敗因となった。
>>291 そのことは投下寸前まで悩んでいたことでもあります。
おっしゃる通り、RPGの直撃を受ければ後藤でも大ダメージないしは死亡すると思われますが、
今回は首を貫通しただけ、とさせていただきました。
>>295 寄生生物が食べた後は、食べカスが残るものなんです。
>>300、302
反応ありがとうございます
そのぐらいの耐久力なら大丈夫そうかな
某旦那みたいに超再生繰り返すようなやつらだったらどうしようかとw
分岐制だからそこまでこだわる必要無いと思うが
某所を見るに、
>>304の回答では不十分のようなのですが、もう一度何かありましたらご指摘をお願いします。
ズガンとかチートは分岐させてなかったことにすればいいし
わざわざ修正とかさせるなよ
>>301 いや、詩音の作者は泉SSに寄せてあるから分岐したら詩音SSはそのルートでは無かったことになる
まぁ詩音SSの作者が上田に寄せりゃいいんだが
>>309 修正乙でした。
寄生獣を知らないのでこれくらいしか言えない、申し訳ない
>>309 修正乙です。
個人的には特に問題ないと思います。
シャドームーン、銭形警部、投下します。
明かりと言えば、窓から差し込む月明かり位である図書館内の
幾つも規則的に並ぶ高い書架の間隔の一角に、男が1人座り込んでいる。
男は自分に支給された武器、ベレッタM92Fの状態を確かめ弾奏を装填する。
つばの広い帽子を被りスーツの上からトレンチコートを着込んだ、初老の男性。
銭形幸一は憤慨しながら、自分に支給された荷物を改めていた。
警察官である自分を掴まえて、殺し合いをしろ等と言われては
警察の職分を超えた所でも、強い正義感を持ち続ける銭形にとっては仕方が無い事である。
命が危険に晒されている自覚は有っても
怒りと、常から死の覚悟していた事もあって恐怖は薄い。
そして国際刑事警察機構(インターポール)捜査官として、幾多の修羅場を潜った経験ゆえか
怒りに駆られ荷物を改めながらも、今後の行動方針を思考する冷静さを保っていた。
(こんなふざけた殺し合い等仕組んだあのガキは、絶対に逮捕だ!!
あんな悪党黙って捨て置く、銭形様じゃないって事よ!)
まず殺し合いに乗るという選択肢は、無条件で除外し
殺し合いの主催者の逮捕に、行動方針を絞った。
しかしそうなると、途端に問題が難しくなる。
まず首輪を自力で外さなくてはならない。
首輪を外しても、得体の知れない――しかし大きな軍事力を持つと思しき――主催者との戦闘も不可避となるであろう。
それらの問題を銭形1人の力で解決するのは、どう考えても不可能だ。
つまり協力者が必要と言う結論になる。
そうは言っても、首輪の解除や主催者に関する情報収集とその戦闘に役立ち
且つ信用が出来る人物等、殺し合いの参加者の中から見付かる可能性は低い。
(まさか、こいつ等まで参加させられとるとはな……!)
そして居たのだ。
全ての条件を備えた者の名が、名簿に記されている。
奴等は脅されたからといって、進んで人を殺して回る人間でもなければ
殺し合いという状況に押し潰されて、錯乱する人間でも無く
加えて逃げるとか、脱出するとかに関しては恐らく世界一のエキスパート。
世界的に有名な大泥棒ルパン三世。
その仲間の次元大介と石川五ェ門。
銭形はこの3人、特にルパンの事を良く知っていた。
何しろ自分が逮捕する為に、ずっと追い続けてきた人物なのだから。
(……うぬぅ〜、やはりこいつ等と協力しなければならんか)
人格を取っても能力を取っても、申し分無く信用出来るが
警官である自分が泥棒を頼るというのが、銭形にはどうしても感情的に引っ掛かる。
しかもルパンは、銭形が長年その逮捕のみに人生を費やしてきたと言っていい程の
云わば宿敵である。
そして、それだからこそ分かるのだ。
現状では、彼等がどれ程頼りになるかを。
しかし因縁のある相手を頼もしく思っている自分に、銭形は更に割り切れない心情を募らせる。
突如図書館の玄関が、乱暴に開け放たれる音が響き
カシャ カシャ カシャ カシャ
という足音――にしては奇妙な音が近付いてくる。
(なんだぁ〜!? 誰か来たのか?)
銭形は慌ててベレッタを持ち、荷物を纏めたデイパックを背負って
身を潜めながら、足音の主を捜し出した。
銭形は書庫の陰から、斜め前方の図書館中央に位置する少し開けたホールを歩く足音の主を観察する。
西洋の甲冑でも、着込んでいるのだろうか?
それにしたって妙な格好をした人物だと、銭形には思えた。
何しろ銀色の金属的な光沢を放つ全身に、エメラルドの如き巨大な双眸が一際強い輝きを放っているのだ。
(あれじゃ動き難いし、目立つだろうに…………
それにしても……妙に存在感と言うか、威圧感のある奴だ…………)
武器と言えそうな物は両肘と両の踵から伸びた、黒い刃以外見受けられない。
それなのに銭形はその者から警察官としての勘ゆえか、あるいはもっと原初的な生物の本能ゆえか
危険な気配を察知していた。
「そこに居る者、出て来い」
(見付かった!?)
考察が終わらない内に、当の相手から声を掛けられ内心銭形は慌てる。
相手は銭形が隠れる書架に向き直る。
(…………ええい、こうなりゃ出たとこ勝負だ!!)
銭形は意を決して書庫から姿を現し、ベレッタを向ける。
「わしはインターポールの銭型警部だ! ゆっくりとデイパックを床に置いて、両手を上げデイパックから離れろ。
大人しくこちらの指示に従えば、危害は加えん!!」
銭形はあえて高圧的な態度に出る。
そうする事で互いの不用な牽制を抑え、却って安全に話が出来ると踏んだからだ。
何より銭形にとっては、こうした方がやり易い。
相手が安全な人物だと確認出来たならば、銃を向けるのは止め交渉に入るつもりだ。
「ブラックサンを知っているか?」
しかし相手は銭形の言葉に反応せず、質問を返す。
「おい、わしの言う事が聞こえとらん筈はあるまい」
「名簿にある名前は南光太郎だ。知っているか?」
「知らん。ここで会ったのは、お前が初めてだ。いいから、こっちの指示に従え!」
思わず質問に答えてしまい、銭形は内心歯噛みする。
強大な武力を持った者、巨大な権力を持った者が相手であろうと怖気づく事の無い銭形が
目前のたった1人に、完全に気圧されていた。
未だかつて無い程、危険な存在だとの認識を強くする。
「ではサタンサーベルに心当たりは?」
「いいかげんにしろ!!」
なおも指示に従わない相手に、語気を強める。
威嚇の為ではない、先程から自分を圧迫する恐怖を誤魔化す為だ。
「答えんか…………ならば死ね」
言い終わり1歩踏み出す相手に、ほとんど反射的にベレッタで発砲する。
胸に2発、的確に命中した。
「今のは攻撃のつもりか?」
しかし被弾箇所には、傷1つ付かない。
今度は頭部のエメラルドに光る部分。
ここにも銭形は、ベレッタの9mmパラベラム弾を命中させた。
「話にならん。所詮キングストーンを持たぬ者の戦い等、世紀王にとっては児戯に等しいという事か。
フッ、分かっていた事だがな」
それでもまるで効いた様子が無い。
銭形は逃げるべく、図書館の玄関に向け駆け出した。
その首筋を掴まれる。
(馬鹿な!! 何時の間に近付いてきた!?)
銭形と相手は、15mは離れていた筈である。
それなのに銭形が接近に気付かない早さで、相手は間合いを詰めたのだ。
(ルパンも人間離れした動きをしていたが、今こいつのした動きはそんなもんじゃない!! それになんて力なんだ!!)
大型の機械でもなければ出せない様な異常な力で、銭形の首は締め付けられる。
危険過ぎる。
相手は絶対に生かしては駄目な存在だと、銭形は確信した。
銭形は薄れる意識の中、相手の首元にベレッタを押し当てた。
銃口は首輪に当てられている。
(……これなら…………効くだろ)
引き金さえ引けば、今度こそ確実に殺せる。
そう銭形が思った瞬間、首を締める力が一挙に膨れ上がり
銭形の首が千切れ落ちた。
◇ ◇ ◇
支援
――――ゴルゴムの仕業だ。
シャドームーンが殺し合いに呼ばれ、最初に思った事がそれであった。
シャドームーンはかつて人間、秋月信彦であったが
太古より地球を支配してきた暗黒結社ゴルゴムの支配者、創世王の後継者候補である世紀王に改造された。
世紀王は人知を超えた戦闘能力、超能力を発揮出来る。
只の人間では、否世紀王に太刀打ち出来る者など存在しない筈なのだ。
ある例外を除いては。
つまりこの殺し合いにシャドームーンを参加させる事は、あのV.V.と呼ばれた者には不可能なのである。
しかし先程出て来た例外の存在が、裏に居ると考えれば説明が付く。
その存在とはゴルゴムの支配者、創世王に他ならない。
ゴルゴムの本拠地でブラックサンと対峙し、創世王から力を与えられた直後のタイミングで
殺し合いの最初に集められた会場に移動していた事からも、ほぼ間違いない。
(世紀王である俺を、取るに足らぬ人間共に混ぜて殺し合いとは……一体創世王は何を考えている?)
意図は読めないが創世王が主催しているとあれば、シャドームーンとて不快な首輪も下手に外す訳にもいかない。
最初の会場で小娘を殺した首輪の爆発等、全く脅威ではないが
シャドームーンの首輪には、相応の措置がしてあるかも知れないからだ。
そうでなければこんな首輪を何時までも付けている等、シャドームーンの誇りが許さない。
荷物を改め、ブラックサンが参加しているのを確認出来た。
(サタンサーベルの存在が感知できない上、呼び寄せる事も出来ない。
確かV.V.とやらが、武器を回収してバラバラに配ったと言っていたな。
サタンサーベルも、他の者に配られているという訳か……)
取り合えずブラックサンとサタンサーベルの捜索を目的に、出発した。
そして図書館で人間と出会い殺害して、現在に至る。
自らが殺した人間の死体を、シャドームーンは冷めた気持ちで見下ろす。
(こんな事に何の意味が有る?)
ブラックサンなら、あるいは意味が有るかも知れない。
人間共との殺戮劇を演ずる事で、人間である事を捨て世紀王としての覚悟を決めるかも知れない。
だがシャドームーンにとっては、ただただ無意味な茶番だ。
現に1人自分の手で殺したとて、まるで赤子の手を捻る様に簡単であったし
精神にも何の痛痒も無い。
(こんな事を、最後の1人になるまで続けろと? そして俺とブラックサンとの決着すら、こんなもののついでに済ませるつもりか!?
これでは無意味な茶番所ではない。世紀王に対する、我が宿命に対する侮辱ではないか! 創世王!!)
創世王の意図はどうあれ、ブラックサンとの戦いを人間同士の殺し合いに埋もれさせる事等
シャドームーンには到底許し難い事だ。
その精神はゴルゴムの改造によって、世紀王のものとなった。
その世紀王の宿命は創世王に与えられたものだ。
だがシャドームーンが世紀王の宿命を選んだのは、創世王も秋月信彦も関係無い。
シャドームーン自身の意思によるものだ。
その意思と誇りと宿命を、当の宿命を与えた創世王自身が汚したのだ。
(いいだろう創世王よ、この茶番に最後まで付き合うのも致し方ないだろう。
ブラックサンを含む人間共を、この手で皆殺しにしてやる。
だが全てが終わった暁には創世王よ、お前を殺す! 我が宿命を汚したお前だけは許せん!!)
銭形の荷物を改め、特に自分と変わった物が無いと確認すると放り捨て
シャドームーンは図書館を出るべく、銭形の死体とベレッタには目もくれず歩き出す。
窓から差し込む月明かりだけが、月の名を持つ王子を見送っていた。
【銭形警部@ルパン三世(アニメ) 死亡】
【一日目深夜/F−7 図書館】
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備] 無し
[支給品] 支給品一式、ランダム支給品(1〜3本人確認済み)
[状態] 健康
[思考・行動]
1.参加者を捜して殺す(ブラックサン優先)。
2.サタンサーベルを探す。
3.元の世界に帰り、創世王を殺す。
*本編50話途中からの参戦です。
*殺し合いの主催者の裏に、創世王が居ると考えています。
*銭形の荷物とベレッタM92F@バトルロワイアル(小説)は、銭形の死体の傍に放置してあります。
投下完了しました。
問題点等が有れば、指摘をお願いします。
投下乙
シャドームーンならしょうがないね・・・
またズガンですか
正直面白くないです
乙!
銭形は何かキャラ的にこういうポジションにくるかなぁとは薄々‥
しかし改めて文にされると悲しいなぁ
投下乙
正直自分も微妙に感じるな・・・
投下乙
やはり序盤はどんどん死んでいくものなのか
投下乙
銭形さん哀れ。
ゴルゴムの仕業をお前が使うかw
GJ!
すいません、忘れていました。
全ルートに寄せます。
やっぱり荒らし書き手に安易にキャラが殺されて詰むのか……
マルチから流れてきてるんだろうな
>>318 投下乙!
とっつぁーん/(^o^)\
情報もほぼ無い序盤は良心的なキャラがどうしても殺られてしまうか。
これは個人的な質問なのだけど、
バトロワ勝者の願いで、死者を蘇生(もちろん一人)させるのって可能?
>>309 ずいぶんと遅いレスになってしまいますが、今回寄生獣に関して
自分のコメントの所為で◆xmy4xBA4UI氏には随分と多大な迷惑を
かけてしまいました事を謝罪します。
これも自分の所為かとは思いますが一話死亡話が続いたからといって
安易に荒らし認識する事や批判をするのは早計ではないでしょうか?
>>318 逆てつをに笑ってしまいましたw
とっつぁんは相手が悪すぎでしたね…
>>329 過去ロワでも終盤でキャラが復活したパターンもあったといえばあったけど、
優勝エンドとかで、それはなかったと思う。
キャラを騙してマーダー化させるのに使われたりすることはあるけど。
え〜っと、なんか大変な事になってるみたいですが・・・
今更なんですけど、寄せるルートって後から変えたら駄目ですかね?
すいません。鳥忘れました。
>>331 別に過去ロワとか関係なくない?
よそはよそ、うちはうち、でしょ?
>>331 ありがとう。
そういう事例があるなら安心だー。
二人とも乙です。
ルイズも警部も安らかに。
予約されてないキャラまとめとかある?
【ギアス】C.C./○ロロ・ランペルージ/○篠崎咲世子
【ひぐらし】前原圭一/○竜宮レナ/○園崎魅音○北条悟史
【スクライド】○劉鳳/○ストレイト・クーガー/○橘あすか
【るろ剣】○斎藤一/○志々雄真実/○瀬田宗次郎/○雪代縁
【龍騎】○城戸真司/○北岡秀一
【ルパン三世】○次元大介/○石川五ェ門
【ローゼンメイデン】○真紅/○水銀燈/○翠星石/○蒼星石
【ガンソード】○ヴァン/○レイ・ラングレン/○ミハエル・ギャレット
【ゼロの使い魔】○タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
【バトロワ@小説】○三村信史
【BLACK】○南光太郎
【if】○狭間偉出夫
【バトロワ@漫画】○織田敏憲/○桐山和雄
【ヴィオラートのアトリエ】 ○アイゼル・ワイマール
【灼眼のシャナ】 ○シャナ
一周、完売は外してます。
間違ってたらごめん。
今きた。投下乙です。
>>201 これは、ロワでは見れないと思ってた綺麗な詩音。
けど、参戦時期を考えると、綺麗だと喜んでばかりもいられない気が…
>>218 月はほぼ普通の高校生な時期から参戦か。これは予想してなかった。
なんとなくサバイバル能力低そうな気もするけど、ルパンもいることだし今後に期待。
>>237 ちょ! 剣心ーーーーー!! これがロワか……
にしても、寄生獣未把握なんだが、食べるとか怖すぎる。
>>286 剣心に続きルイズまで。 これがロワか…(←2回目)
これ読む限り、後藤が殺されるのとか想像つかない……
>>318 銭形警部まで死亡なんて。 これがロワか…(←3回目)
銭形にはひそかに期待してたけど、相手が悪かった。
みなさん、乙&GJでした。
ルルーシュ、つかさ、浅倉投下
その山小屋は、林の中のちょっとした広間に建てられていた。
大きめのコテージといった外観の二階建てであり、二十人程度の宿泊が可能な様に設計されている。
しかし今、この小屋を利用している人物はいない。 常駐する管理人や登山客などは誰一人として存在しない。
ただ、凄惨な殺し合いへの参加を強制させられた者が放り込まれているだけだった。
「くそっ! 何が起こっているというんだ……!?」
閑散とした食堂で、学生服を着た一人の少年が呟く。
少年の名はルルーシュ・ランペルージ。 本当の名を、ルルーシュ・ヴィ・ヴリタニアという。
かつては神聖ブリタニア帝国の第十一皇子であり、今は日本──エリア11にあるアッシュフォード学園に通う平凡な学生。 そして、ブリタニアに反逆するテロリスト集団「黒の騎士団」を率いるゼロの正体でもある。
彼は今、(当然のことではあるが)焦燥と狼狽の渦中にあった。 ナナリーが作る特区日本と袂を分かち、中華連邦の政権そのものを覆す作戦を実行し、反ブリタニア戦力の足場を固め、ようやく日本への帰路に着いたのがつい先日のことだ。
それが今、こうして呆気なく敵の手の内に囚われている。 ブリタニアを崩壊させる為の様々な積み重ねが、全て無に帰したと言っても過言ではない状況だった。
(いいや、まだだ! この程度で諦められるか!)
しかしどのような苦境に陥ろうと、ルルーシュは勝たねばならない。 真実を暴き出すために。 彼が望む世界を創りあげるために。
(たとえその道が血に塗れていようとも……!)
決意と共に、深呼吸をひとつ。
頭のスイッチを切り替える。 自分の身に起こったことと周囲で起こったことを思い出し、冷静に現状を把握する。
(俺を始末する為にわざわざこんな茶番を仕組んだのか? 或いはブリタニアに反抗した者を集めての悪趣味なショー、という可能性もある)
傍らに置いてあったデイバッグの中身を確認する。 すぐに出てきた物は、V.V.が言うところの"バトルロワイアル"の参加者名簿だった。
「やはりスザクが…… しかもオレンジまで。 生きていたとはな」
自分がこうしている以上、C.C.やロロ、咲世子が同じく囚われているというのはまだ解かる。 しかしブリタニアの軍人である枢木スザクとジェレミア・ゴットバルトの名前が記されているという事実は、ルルーシュに軽い困惑を与えていた。
(あの場にいた人間は一様に戸惑っている様子だった。 これがブリタニアが仕組んだものであるとすれば、奴等まで巻き込まれている理由は何だ?)
もっともブリタニアという悪辣な国のことを考えると、忠誠を誓う軍人があっさり切り捨てられるというのも有り得る話。 そうだとすれば嘲笑ってやりたくなるが、二人ともルルーシュに強い恨みを持っているので、自ら手を下す為に志願したという可能性も無くはない。
(まあ、現時点では情報が少なすぎる。 保留か)
考えられる様々な可能性を等しく頭の内に留めておき、それ以外の名前を確認する。
名簿の上では、他にルルーシュが知っている人物はいない。 名前のみで判断すると多くは日本人であり、その中に二割ほどブリタニアかEUの人間らしき名が混じっている。 しかし中には、どうにも判別し難いものもあった。
(多くはフルネームなのに、一部はおそらくファーストネームのみが記載されている。 この三世というのは明らかに名前とは思えないが…… シャドームーンやLなど、これはコードネームの類じゃないのか? 水銀燈やなんとか石というのも、日本人にしては変わった名だ)
記名の形式が統一されておらず、本名なのかどうか判らない名が多過ぎる名簿。 疑いだせばキリが無く、少なくともルルーシュの知る五人がバトルロワイアルに参加させられている事だけは確かだと思うことにした。
えっとすみません。先ほど1時過ぎになると言いましたが、
今日もまだ用事が立て込んでいて終わりそうになく、明日は丸一日パソコンに触れない可能性が高いです。
申し訳ありませんが2日間の延長をしてもよろしいでしょうか?
ご迷惑になるようでしたら破棄も考えとります。
まだ始まったばかりでこの状態……誠に申し訳ありません。
え、この参戦時期ってまさかw
支援
さらにバッグを探ると、出てきたのは拳銃だった。 ルルーシュが今まで手にしたことの無い、初めて見る型のものだ。
本体と別に弾倉が二つ入っており、やや手間取りながら弾を出してみると、一つにつき十三発入るようになっていた。
「殺し合いの為の武器ということか? つまらん真似をしてくれる……」
悪態をつきながらも弾倉を挿入、初弾を装填し、軽く狙いを定めてみる。 重量や大きさの点でも使いづらいという訳はなく、問題無く使用出来そうだった。 しかし……
(妙な違和感があるな。 本当に見たことの無い銃だ。 まさか精巧に造られた玩具ということはないだろうな)
一般に銃と呼ばれる兵器、ルルーシュが今まで使用してきた拳銃とは、何かが違う。 いざという時に撃てないでは困るので試射をしたいところだが、銃声によって好ましくない人間を呼んでしまう可能性もあった。
(いや、誰が来ようとも俺にはギアスがある。 今後の為にも、不安は払拭しておくべきだ)
そう判断し、ルルーシュは食堂を出た。 毛布か何かがあれば、消音しながら撃つことも出来るかも知れない。 それ以外にも何かしら利用できる物があることを期待して、物置というプレートが貼ってある扉を開く。
そこに、人がいた。
と、投下中失礼しました。支援
×考えとります→○考えております です。
咄嗟にルルーシュは銃を向けた。
「誰だ!」
「ひっ!」
誰何への応えは、小さな悲鳴。
薄汚れた物置の隅に蹲っていたのは、学生服らしきものを着た一人の少女だった。 そうすれば全ての危機から身を守れるかのように、頭を抱えて何も見ないようにしている。
「う、撃たないで撃たないで!」
その声も姿も、余りに弱々しい。 相手を油断させる為の演技という訳でもなく、ルルーシュに対する本物の恐怖に身を震わせているようだ。
とりあえず危険度は低いと見てよかった。 ルルーシュは銃を下ろし、少女に可能な限り優しげな言葉をかける。
「すまなかった、撃つ気はない。 こんな状況だから慌てて銃を向けてしまった。 そちらが何もしないなら、こちらも何もしない」
「やだ、やだ、死にたくないよお姉ちゃんこなちゃんゆきちゃんみなみちゃん助けて、助けて」
少女はルルーシュの声を聞いていなかった。 こちらを見ようともせず、誰かの名を呼びながら助けを請うている。
「大丈夫だ、安心しろ。 何もする気はない、落ち着いて話そう」
「やだよやだよなんでなんでゆたかちゃんおねえちゃんおねえちゃんおねえちゃん──」
言葉は届かない。 この世の中の全てを恐れ、外部からの情報を遮断しようとしているかの様だ。
舌打ち一つしたルルーシュは、彼女の傍に支給品であろうデイバッグが置いてあることを確認する。 震え続ける少女を横目に、それを自分の足元に寄せた。
(さて)
このままでは会話も出来ない。 ルルーシュは意を決して左目のコンタクトレンズを外し、ぐいと少女の腕を掴んだ。
「や、いやああぁあぁっ!!」
少女はますます混乱し、闇雲に手足を振り回した。
「くそっ、暴れるな! 俺の目を見ろ!」
思った以上に手こずりながらも、ルルーシュは何とか少女を床に押さえつけることが出来た。 それでも頑なに閉じられる目蓋を、指で無理矢理に開かせる。
僅かな隙を逃さず、ルルーシュの目の紅い紋様が輝く。 絶対命令権、ギアスが発動する。
「冷静になれ!」
相手の意思も思想も踏み躙る紅い光が、少女の眼から脳内へと浸透してゆく。 ただ一つの命令が、彼女の内に深く刻み込まれる。
「……うん」
先程までの恐慌が嘘だったかの様に、少女はきょとんとした顔で頷いた。 その目はギアスをかけられた者特有の色を見せている。
(ギアスは効くようだな。 だとすれば、あの兵士達全員が何らかのギアス対策をしていたということか?)
そんな思考が一瞬だけルルーシュの脳裏を過ぎるが、今はひとまず目の前の少女への対応だ。
「そうだよね、泣いたって何にもならないよね」
「ああ、そうだ」
ルルーシュが少女を解放すると、本人の意識とは無関係に"冷静になった"彼女は、服の汚れを掃いながら立ち上がった。
やや曖昧なギアスではあったが、少女の中から先程までの恐怖は取り除かれている様だ。 もっと重要な命令の為にとっておくべきかとも考えたが、ギアスが使用可能かどうかの判断と、その効果の程を測るためのテストの意味合いもあった。
ルルーシュは二、三歩後ずさり、少女との間に距離を置く。 彼女が"冷静"になった結果、こちらを排除しとうと攻撃してくる可能性もあった。 その為に武器が入っているかも知れないデイバッグを確保しておいたのだ。
銃口を向けはしないが、それでもすぐに発砲できるよう態勢を整えながら、ルルーシュは少女を注視する。
程無く彼女の口から飛び出したのは、
「初めまして、柊つかさです」
満面の笑顔を添えた挨拶だった。
「あ、ああ。 俺はルルーシュ・ランペルージだ」
やや気勢を削がれつつ、ルルーシュも応じる。
「じゃあ、あの、えっと、ランペルージ君は殺し合い、するの?」
つかさと名乗った少女は、一切の怯えも動揺もなく、日常の中の平凡な質問であるかの様にそう尋ねた。
「ルルーシュで構わない。 そうだな、俺の命を狙う者がいるなら防衛力の行使を躊躇うつもりはない。 その結果、相手が死ぬことになっても」
「う〜ん……」
つかさは何かを考える様な仕草で俯いている。 構わずルルーシュは続けた。
「ただ積極的に殺し合いを進めていれば、それこそV.V.達の思う壷だ。 だからまずは、この首輪を外すために行動したい。 俺達の命を握るこれさえなければ、連中に従う必要もなくなる」
「うん、そっか、そうだよね。 私もそうしたいなあ。 ゆたかちゃんは残念だったけど、お姉ちゃんやこなちゃん、ゆきちゃん、みなみちゃんまで死んじゃったら大変だもん」
「なら問題無い。 俺達は互いに協力できる。 このバトルロワイアルとやらに反逆し、俺と、君の友人達を連れて脱出しよう」
「反逆かあ…… うん、そうだね、一緒に協力しよ、えっと、ルルーシュ君」
つかさは無垢な笑顔をルルーシュに向けている。 あれだけ怯えていた割に、初対面のルルーシュを警戒したり疑ったりすることは無いらしい。
平時ではその様子も微笑ましく見られるが、今はおよそ平時とは程遠い状況だ。 ギアスで"冷静に"なってもこの調子では、面倒が起こった時に役に立つかどうか疑わしい。
(邪魔になるようなら、さっさと切り捨てるか)
冷徹に、ルルーシュはそう思った。
銃の試射は問題無く行われた。 登山客に宛がわれるのであろう二階の大部屋にベッドが幾つも置いてあり、毛布に包んで発砲することである程度の消音効果が得られた。
その後、二人は食堂に戻り情報交換を始めた。
情報と言っても、つかさがこの殺し合いに関して知っていることなど何も無く、ルルーシュが知る事が出来たのは参加者数人の人となり程度である。 それでも前後不覚な現状にあっては生き延びるための重要な鍵であると言えた。
ただしつかさが語るその内容は、ルルーシュに大きな困惑をもたらす事になった。
つかさは、神聖ブリタニア帝国の存在を知らないのである。
ルルーシュは当初、つかさを名誉ブリタニア人だと思っていた。 そうでなければ、日本人でありながら小奇麗な制服を着て学校に通うなどという生活は不可能である。 或いは、ナナリーが本土に残った日本人に対し生活改善の措置を取ったか。
しかしつかさが語る彼女の日常には、ブリタニアの存在を思わせる要素は欠片も無かった。 日本は他国に支配されることなく、つかさや友人達はごく当たり前に学生生活を楽しんでいるという。
(どういうことだ……?)
もっとも導き易い結論は、つかさが妄想と現実の区別がつかない少女だということだ。
しかしそれは、ギアスという超常の能力を知っているルルーシュにすれば余りにも安易な答えである。 彼自信、偽りの記憶を信じて過ごした経験がある故に。
(ギアスでこの女の記憶を書き換えているのか? だとすれば何の為に?)
疑念の材料は次々と増えてゆく。 幾通りもの結論を想定したところでその正否は確認しようがなく、先送りになる問題に苛立ちばかりがつのる。
実はルルーシュが銃に対して感じた違和感も、つかさの語る内容への疑念も、根は同じであった。
異世界。
ルルーシュとつかさはそれぞれ異なる"世界"に生きる人間であり、件の銃もまた、ルルーシュの"世界"には存在しない物。
この突拍子も無い答えに辿り着けぬのも、無理からぬ話だった。
「ルルーシュ君は友達とかいないの?」
「あ、ああ。 いや、そうじゃなくてだな……」
とりあえずルルーシュの方は、C.C.、ロロ、咲世子のことを「友人」とだけ説明しておいた。 実際には(特にロロは)もっと複雑な関係ではあるが、わざわざそこまで語る必要性はどこにも無い。
つかさの様に悲喜交々の細かなエピソードを織り交ぜて紹介するのは時間の無駄としか考えられなかった。
「じゃあ、どうするの? お姉ちゃんたちや、その、シーツーさんたちを探しに行くの?」
互いにある程度の話を終え、支給品の確認なども済んだのは一時間ほど後のことだった。 つかさの姉と友達自慢に多くの時間を取られたが、ルルーシュも気を取り直す。
「迂闊に動き回らないことだ。 この暗さでは、こちらを狙う者がいた場合に発見が遅れる」
屈辱的なことではあるが、身体能力について自慢できる点があるとは自分でも思っていない。 つかさが戦力になるとはとても思えず、移動においては最大限の安全策を取る必要があった。
そして山小屋がスタート地点であった事は不幸中の幸いと言ったところか。 完全に安心とは言えないが、いつ襲撃者と遭遇するかも知れない屋外より遥かにマシで、落ち着いて思索に耽ることも出来る。
「うん、そうだね── あ」
窓の外を見ていたつかさが振り向き、小さな声をあげた。 その視線はルルーシュではなく、その後方に向けられている。
ルルーシュの反応は素早かった。 ぱっ身を翻すと同時に銃口を正面に向ける。
食堂の入り口に一人の男が立っていた。 ルルーシュとの距離は四メートルと開いておらず、一瞬肝が冷える思いを味わった。
(屋内が安全だと思った直後にこれか! 銃声のせいか!? 入って来る音を聞き逃したのか!? それとも何処かの部屋で息を潜めていたのか!? いや、落ち着け!)
想定外の事態に軽いパニックに陥りかけたが、理性を総動員して目の前の現実に対処する。
「何者だ!」
声が上擦っていたかも知れない。
「あぁ……?」
ルルーシュの誰何に対し、男はどこか気だるげな声を出す。
跳ねるような金髪。 毒々しい蛇柄の服。 ただそこに立っているだけで、男の全身からは凶暴な気配が溢れ出している。
「お前こそ誰だ」
質問を質問で返され顔をしかめつつも、ルルーシュはランペルージ姓の方を名乗った。
「それで、お前は」
「……浅倉だ」
名簿に載っていた名を思い出す。 アサクラ・タケシだったか。
対峙している人間の名を聞き、ルルーシュはようやく頭が冷えてきたのを自覚する。 隣で自分も名乗るべきか考えているつかさの姿が見えたことも一因かも知れない。
「浅倉。 お前は、このバトルロワイアルについて何か知っているのか」
「知るか、そんなもの」
「そうか」
男──浅倉の吐き捨てるような素っ気無い答えは、嘘や思惑の含みをまるで感じさせない。
「もう一つ訊く。 お前はこのバトルロワイアルでどう動くつもりだ?」
「あぁ?」
「あの子供の言っていたように、自分以外の数十人と殺し合いを演じるつもりか。 それとも、協力者を見つけるなりして脱出の方法を探るか」
「……ゴチャゴチャと五月蝿い奴だ」
愚問だと言う様に、浅倉はせせら笑った。
「戦えばいいんだよ、最後の一人になるまでな!」
自分に向けられている銃口など見えていないのか、ルルーシュに向けてずいと歩み出す。
コンタクトを外す動作は、素早く。
(フン、獣め)
ほんの短いやり取りだったが、浅倉という男を判断するには充分だった。
ルルーシュにとっては取るに足らぬ存在。 おそらくは志も目的も無く、ただ毎日を生きているだけの下らない人種。 こういう手合いは見下すか、餌をチラつかせ利用してやるかのどちらかだ。
そして、図々しくも黒の騎士団を率いるゼロに歯向かおうとしている、この浅倉にくれてやる言葉は一つだけだった。
「跪け!」
一言、ただそれだけで良い。
次の瞬間、あと一歩でルルーシュに手が届く距離にいた浅倉は、がっくりと両膝を床に着いた。 傍から見ていれば、急に下半身から力が抜け切ったかの様にも思える。 浅倉はそのまま立ち上がろうともせず、ただルルーシュを睨み上げるだけだった。
これがギアスという能力だ。 相手を無力化するのに「死ね」などと命じる必要も無い。 跪けと言えば跪くし、動くなと言えば動かなくなる。 腕立て伏せをしろと言えばそうするのだ。
このバトルロワイアルにおいて、ルルーシュは余りにも圧倒的な能力を持っている。
「この人、どうしちゃったの?」
つかさは浅倉の顔を不思議そうに覗き込みながら、ルルーシュに尋ねた。
「うるさい、黙ってろ……!」
浅倉は噛み付くような声をあげる。 その目には凶暴な光が宿っているが、膝を付いた姿勢を崩そうとはしない。 今の彼にとって、「跪く」という状態を維持することが何よりも優先すべきことなのだ。
「放っておこう。 どうやら何もする気はないようだ」
「お前……!」
ギアスに支配されながらもルルーシュへの敵意は失っていないらしい。 しかし敵意だけで人に害は及ぼせない。
もはや浅倉は、ギアスという強靭無比な鎖で繋がれた獣にすぎなかった。 つかさがすぐ傍で興味深げに眺めていても、噛み付くことさえ出来ない。
(誰かに殺されるまでそうしているがいい)
つかさの目が逸れているうちに、ルルーシュの顔に傲岸な笑みが浮かぶ。 彼がブリタニア皇族であると知る者ならばさもあらんと頷きそうな、遥かな高みから敗者を見下ろす嘲笑。
地に這い蹲り泥を啜って生きてきた浅倉の暗い視線が、その顔をじっと見据えた。
「さて、ここにいると鬱陶しそうだ。 別の部屋で今後のことを考えようか」
すぐに平素な顔を取り繕うと、ルルーシュはつかさの返事を待たずにデイバッグを担いで歩き出した。 無論、浅倉が持って来た分を回収することも忘れていない。
「あ、ルルーシュ君、待って」
つかさはちらちらと浅倉の様子を伺いながらルルーシュの後に続く。 浅倉は二人の姿が見えなくなった後も、食堂の入り口に刺す様な視線を向け続けていた。
「ルルーシュ君、さっき『ひざまずけ』って言ったよね。 それであの人は、その、ひざまずいちゃったんだよね?」
廊下を歩きながら、つかさは前を行くルルーシュに声をかけた。
「さあ、どうかな」
二人分のバッグが意外に軽いことにやや安堵しながら、ルルーシュは適当に答えた。 巧くはぐらかしたいところだが、明らかに敵意を持って接近して来た男が自分の指示に素直に従うなど、どう説明がつく状況でもない。
「ルルーシュ君、すごいね! 魔法使いみたい」
言い訳はつかず、つかさは少なくともルルーシュが浅倉に何かをしたことだけは確信したようだ。 素直に賞賛の言葉を贈ってくるが、ルルーシュとしては悩みの種が一つ増えたところだ。
ギアスという能力は出来る限り隠しておくべきものだ。 つかさはその人間性ゆえにルルーシュを信頼し切り、既に自分が"魔法"をかけられているなどと疑いもしていない。
しかし彼女は新しく協力関係になった人間にも、暢気にルルーシュの"魔法"を吹聴する可能性があった。
(この女はもう役に立ちそうにないな。 姉や友人と接触する時に名前を出せば充分といったところか。 面倒なことになる前に、いっそ──)
切り捨てる時期は意外に早そうだと、ルルーシュは思った。
(すごいなあ、ルルーシュ君。 不思議な魔法が使えるんだ。 えーと、超能力、かな?)
柊つかさは先刻の出来事を何度も思い返していた。
ルルーシュの不思議な能力に対する、素直な感動の念が湧いてくる。 ただしそれは普段の彼女が持つであろう、様々な物事に対する感動よりは幾分か小さなものだった。
今のつかさにとって重要なのは、ルルーシュがそういう能力を有している事ではなく、その能力が自分やかがみ達の生存にどう活用できるのかということ。
(もっと詳しく聞いてみたいけど、ルルーシュ君はあんまり話したくなさそうだし……)
彼の能力について、もっと色々教えてほしいと思う。 何しろこれから協力していくのだから、お互い大事なことは知っておいた方がいい筈だ。
(まだちょっと安心できないかな、ぶいつう君と知り合いみたいだし。 映画とかでも、いちばん仲間っぽい人が敵と協力してたりするしね)
つかさは覚えている。 目の前にゆたかの首が転がって来た時のことも、今なら動揺もせずに思い起こせる。
(もし、ルルーシュ君が敵だったら──)
その先を考えることに、少し抵抗があった。 本来つかさが有している何かが、そんなはずないよ、と心のどこかで声を上げている。
しかし今の彼女は、余計な感情や雑念を排して思考を続けることが出来た。
(可哀想だけど、殺さないと駄目だよね。 そうしないと、そのルルーシュ君がお姉ちゃんやこなちゃんたちを殺しちゃうかも知れないもんね。 そんなの嫌だもん)
ルルーシュは、自分の身を守る為ならば相手を殺すことになっても仕方ないと言った。 つかさもその意見には頷ける。
今のつかさの中では、様々な事柄の優先順位がハッキリと決定していた。 かがみやこなた達の命は、それ以外の人間の命よりも明らかに重い。 だから、可哀想だとは思うけれども、軽い命を切り捨てていくのは仕方の無いことなのだ。
(なんだか頭が冴えてるなあ。 超KOOLって感じ。 今の私なら、お姉ちゃんにも勝てそう)
柊つかさは彼女の人生の中で、今までに無く"冷静"だった。
一人残された浅倉威は、ひたすら「跪け」という命令に従い続けている。 僅かな身動ぎはあっても、膝を着いた姿勢を決して崩そうとはしない。
ルルーシュは彼が持って来たデイバッグを悠々と回収したが、その中にあった支給品が幾つか欠けている事実にまだ気付くことはないだろう。
一つは、食料として支給されたパン。 バトルロワイアルが開始されて間も無く、それはデイバッグから浅倉の胃袋へとスムーズに移動することになった。
そしてもう一つは、やはり開始早々デイバッグから抜き出して、ズボンのポケットに納められた紫のカードデッキ。 幾人ものライダーを屠ったその力は、今はまだ、誰にも使われることはない。
ギアスに支配された紅い目は、閑散とした食堂の虚空を見据えていた。
【一日目深夜/B−6 山小屋】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[装備]FNブローニング・ハイパワー(13発)
[支給品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)(1〜2) 、FNブローニング・ハイパワーのマガジン×1(13発)、浅倉の支給品一式、浅倉のランダム支給品(未確認)(1)
[状態]健康
[思考・行動]
1.つかさを切り捨てるべきかどうか考える
2.C.C.、咲世子、ロロと接触し、バトルロワイアルに反逆する
3.利用できる人間は利用する、敵には容赦しない
※参戦時期はR2の11話、日本に戻る直前
※ギアスの制限に気付いていません
※銃に違和感を覚えています
※つかさがギアスで記憶を改変されていると思っています
【柊つかさ@らき☆すた】
[装備]なし
[支給品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)(1〜3)
[状態]健康、ギアス「冷静になれ」継続中
[思考・行動]
1.かがみやこなた達と一緒に生き延びる
2.ルルーシュと一緒に行動する
3.かがみやこなた達以外の人間は殺すことになっても仕方がない
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[装備]なし
[支給品]王蛇のデッキ@仮面ライダー龍騎
[状態]健康、ギアス「跪け」継続中
[思考・行動]
1.跪く
以上です。
なんか色々長すぎますね。ごめんなさい。
月の光に映る影 に寄せます。
>>345にKS.UfY2NoYさんの延長申請あります
>>345 2日間の延長は
>>1にルールとして明記されてるので問題ないと思います。
延長申請はしたらばの予約スレにもしておいたほうがいいのかな? よく分からないんだけど。
投下待ってますので頑張ってください。
と、帰宅したらめっちゃ投下されてる!
みなさん、乙です!
>>201 し、詩音が綺麗だ! でも、危うさを感じさせるなあ……
彼が死んだらどうなってしまうのか……
>>218 月も割りと綺麗だ! でも、こいつも状況次第で分かんないなあ。
ルパ〜ン三世が、原作月ルートへ向かうのを止めてくれるか。はたまた……
>>237 ああ、剣心。あいつ等相手に攻撃入れたのは、よくやったほうだよ。
食べられるシーンで、原作の最初のほうの『バグン』ってとこ思い出しちまったw
>>286 ルイズ……お前も、よくやったよ。
デイアックに関する考察は少しズレてたかもだが、いや、マジによくやったと思う。
>>318 とっつぁん死亡。残念だが、相手が悪かった。悪すぎた。
シャドームーン、カッケェなあ…… 裏に創世王がいるかはともかく、宿命を汚した相手に怒ってるとこが素敵だ。
つーか、ゴルゴムの仕業だ! とか言うなww
>>360 コードギアス知らないけど、なんかギアスってすげえ! あの浅倉が跪くなんて……!
ルルーシュが危険対主催で、浅倉が無差別マーダー。そして、つかさのスタンスが……こうきたか。
これまた、知り合い死んだらどう転ぶかなー。wktk
>>345 把握ですー。がんばってくださいねー。
寄生獣ガキの頃読んだっきりだから、曖昧だ……
読み直さなきゃなー。
>>361 分かりました。ありがとうございます!
精一杯頑張ります。
あとしたらばにも予約申請してきますね。
>>360 感想忘れてたw投下乙です!
おおおお、ルルの参戦時期が……
そしてつかさにびっくり。OP書いた自分もいい意味で全く予測できませんでしたw
これはいいフラグですね。ルルーシュはまたギアスで自分の首を絞めるのだろうか?
そして浅倉可哀想すぎる……w
>>360 投下乙です。
いいのかルルーシュ、そんな簡単にギアス使っちゃって。
つかさが地味に凄いこと考えてるし。
いちばん心配なのは「跪け」継続中の人だけどw
デイアックってなんぞ?
ジェレミア・ゴットバルト、山田奈緒子。投下します
巨大なベットの上にて、山田奈緒子は目を覚ました。
「何だ?今の変な夢……」
どこだかよくわからん場所に大勢の人間が集められている夢。
大人から子供まで、男女問わずの人達……上田さんも混じっていたような気がする。
ぶいつー、とかいう名前の外国人の少年(妙に日本語が達者だった)に、殺し合いをしてもらうと命令されて。
……まだ小さな女の子の首が、爆発して。
「ったく……何だったんだ一体」
僅かな吐き気と胸糞悪さを覚えながら、ベットの上から下りる。
改めて、自分が寝ていた部屋を見渡す。
……まったく見覚えのない部屋。とりあえず自室よりは格段に広い。
綺麗に整理整頓されて、そしてなかなかに豪奢な調度品……ホテルの一室だろうか?。
どこだろう。また上田さんの超常現象取材に付き合わされたんだったっけ。
(―――とりあえず、顔でも洗って頭をすっきりさせるか)
部屋に備えつけだった洗面所を見つけると、水道の蛇口を捻って顔を洗う。
同じく部屋の備品らしいタオルで顔を拭き……タオルを取り落とす。
洗面所の鏡に映った自らの姿、そして自分の首に付けられた……金属製の首輪。
首に手をやれば、そこには確かにひんやりとした感触が。
「……夢じゃ、ない?」
どくん、と心臓が急激に跳ね上がるのを感じた。
◇
「V.V.……まさか、生きていたとはな」
豪華でありながら趣味の悪くない調度品が並ぶ、広いホテルのロビー。
そこに置かれたソファに腰掛け、ジェレミア・ゴットバルトは思考を巡らせる。
>>360 投下乙です
しかしギアスの制限が軽すぎると思います
思考や行動を司るギアスがこんなに簡単に連発出来るようだと、バランスが崩壊しかねませんので
えーと、こういう時には修正要求を出すって言えばいいのかな?
sien
「確かに死体を確認した訳ではなかったが……何のつもりだ?大勢の人間を集めての殺し合いなど……」
苦虫を噛み潰したような表情で見つめる視線の先には、デイパックの中に入っていた参加者名簿。
(ルルーシュ様……それに枢木スザク、C.C.、ロロ・ランペルージ……篠崎咲世子、とはあのSPの名前だったか?
人選には特に意図も見られないな。全体的に見れば、イレブンが少し多い程度。
最後の一人は無事に帰すと言っていたが……とても信用はできんな)
とりあえず自分が考えるべき事は、主君の安全……早急に居場所を探し出さねばならないだろう。
この場所はホテル……地図によると、B−1かG−2のどちらかだろう。
(まずはここが北か南、どちらのホテルかを調べる必要があるか。一先ず外に出てみれば分か―――)
チン、という軽い音が突如耳に届く。
名簿をデイパックに突っ込むと、素早く身を翻して柱の影に身を潜める。
先ほどの音はおそらくエレベーターの到着音。自分以外の参加者がこの建物にいるという事だ。
もしもの事を考え、デイパックに入っていた日本刀を握りしめる。
エレベーターのあった方向から現れた人影は………
(女性……イレブンか)
辺りをきょろきょろと見回しながら歩く様子からは、この状況に戸惑っている様子が感じられる。
軍属の人間には見えない……恐らくは民間人だろうか。
巻き込まれただけの民間人ならば、できれば保護などしたいところではあるが……
(今優先すべきはルルーシュ様……申し訳ないとは思うが、ここは見逃すべきか?)
民間人では、どうしても足手まといになるのは避けられない。
主君を一刻も早く見つけたい今、移動を制限されるのは避けたいところ。
立ち去るか、声をかけるか。忠義と善意の狭間で考える中―――
突然床に響いた振動と大きな音に、ジェレミアはその場でたたらを踏んだ。
◇
(……ひとまず、上田さんを探そう)
奈緒子の考え付いた行動方針は、簡単な物だった。
名簿に乗っている知り合いの名は上田のみ、とりあえずは知り合いといた方が何かと心強い。
ロビーまでエレベーターで下り、外へ出ようとし……ふと思い出す。
(そういや、荷物の中身まだ確かめてなかったっけ……)
ホテルの部屋では、名簿を見ただけで確認は終えてしまった。
何か役立つ物が入っているかもしれない……と、背負っていた荷物を下ろし、中を漁る。
最初に取り出したのは、鋏。平仮名で書くと、ハサミ。
妙にアンティークっぽい雰囲気だが、あまり役立つとは思えない。
……ハズレと認識し、次の支給品を探す。
次に取り出したのは一冊の本。表紙に書かれたタイトルは『エロ凡パンチ・'75年4月号』
どうみてもただのエロ本です本当にありがとうございました。
……脊髄反射気味に、それを床に思いっきり叩き付ける。
「あ……あのガキんちょ……喧嘩売ってんのか」
殺し合いなど開催している時点で喧嘩を売っているどころではないのだが、コンプレックスをピンポイントに突かれた事でそれどころではない。
もしや、自分に配られた道具はこれだけなのか……と不安になりながら、さらにデイパックの中身を漁る。
手が固いものに触れた……今度こそ役に立つ品が出てくることを祈りながら、それを掴み引っぱり出す。
―――彼女が、荷物の確認をホテルの部屋でも廊下でもなく広いロビーで行ったことは、相当な幸運かもしれない。
荷物の袋から出てきたのは、車だった。
クリーム色のカラーリングをした、四人乗り程度の小型車。
それが、荷物を入れるデイパックの中からスポンと飛び出してきた。
「……は?」
sien
ぽかん、と呆けるしかない奈緒子。
それが当り前の反応というものだろう。何しろ背中に背負える程度の大きさしかない袋の中から、小型とはいえ車が一台出て来たのだから。
「ちょっと待て……どうなってるんだこれ?」
自分は上田のような知識は持っていないが、明らかにおかしい事くらい分かる。
荷物を背負っている時も車の重さなんて感じなかったし、そもそも入れ物の大きさ的にありえない。
だが……彼女が目の前の事態に収集をつける前に、新たな出来事が訪れる。
「失礼、そこの貴女」
「………へっ!?」
後ろから掛けられた声に、慌てて振り向いた先には………奇妙な男性が立っていた。
白と紫を基調としたコートに、同系色を基調とした貴族の様な服装。
緑色の髪に……顔の左半分を覆う、オレンジ色の仮面。
「……劇団の、人?」
「……違いますが」
ぽつりともらした感想に、仮面の男性は律義に訂正を入れてくれた。
◇
「はぁ……つまり、ルルーシュさんって方を探したいんですね?ええと……ジェレミアさん、でよかったですか?」
「ああ、貴女の名は山田奈緒子さん、でよかっただろうか?」
「ええ……まあ……」
ホテルのソファに向かい合って座りながら、奈緒子はジェレミアと名乗った珍妙な仮面の人物を見据えた。
名前からして外国人だろうが、日本語にはそれらしい訛りも感じられない。
あのぶいつーという少年といい……これが国際化、というやつだろうか。
ちなみにデイパックから這い出てきた車は、ロビーに置きっぱなしにしてある。
「それで、その人を探す協力をしてほしいって……そういうことですか?」
「君にとっても悪い話ではないはずだ。殺し合いなどという下賎な物に参加する気がないのなら、一人よりも二人で行動したほうが安全ではないか?」
「……うーん」
ジェレミアの誘いは、正直言ってありがたいものではある。
確かに殺し合いなんてもんに乗る気はさらさらないし、一人でいるのも心細い。
目の前の男性は姿こそ怪しいものの、こうして自分に声をかけてきた事を考えると悪い人物ではないようだし……
待て、どうして自分に声をかけてきた?
「ジェレミアさん、私に声をかける前って何してました?」
「ん?私はずっとこのロビーにいたぞ、荷物の確認などをしていたからな。さすがに君が来た時は用心の為に身を隠させてもらったがな」
その返答を聞き、奈緒子は考えを巡らせる。
返答もその理由も納得できる物ではあるが……何か引っかかる。
自分がこのロビーに下りてきてからは、かなりの時間があった筈だ。
接触しても安全な人物か確認するには十分な時間……まぁ、用心には用心を重ねていた可能性もあるが。
確かロビーでの自分の行動を思い返してみる。
エレベーターから降りて、荷物の確認を始めて、中からハサミを出して、エロ本を出して、それから車を引っ張り出し―――
(……あ、もしかして)
ふと浮かんだ可能性。
「ジェレミアさん、ちょっと1つ聞きたい事があるんですけど」
「ん……何だ?」
地図を見て考え込んでいた様子のジェレミアが顔をあげた。
鋭い奈緒子の視線が正面から向けられる。
「ええ、ジェレミアさんが私に声かけてきたのって……もしかして、私に支給された車が目当てだったりします?」
――――豪奢なロビーの空気が、一気に数度下がった様な錯覚。
「……そう考えた理由を聞こうか」
「まず、あなたが私に声をかけてきたタイミングです」
まっすぐジェレミアに視線を向けたまま、奈緒子が指を一本立てる。
「私に声をかけてきたタイミングは、荷物を確認している最中でした。
荷物の中身はハサミにエロ本、それと……」
「あの車、だろう?」
「……もし私が安全だと思って声をかけてきたんなら、車を出した後に声をかけてくるのはおかしいんじゃないかと思いまして。
いきなり車を引っ張りだしてたりしたら、危険……というか、直後に話しかけてみようって気にはならないんじゃないかと」
奈緒子の言葉に、沈黙するジェレミア。
かまわず、奈緒子は自らの考えを話し続ける。
「それにさっきの話によると、ジェレミアさんの目的は『ルルーシュさんを探すこと』ですよね?
人探しをするなら、移動手段が徒歩じゃあどうにも心もとない……でも車があれば、道路沿いに各施設を回る事ができる。
参加者は自然に施設に集中すると思うから、迅速に各施設を回って人探しをする事ができる……と、思ったわけです」
「………。」
奈緒子の言葉が終わる。
しばらく無表情のまま押し黙っていたジェレミアだったが―――やがて、口を開いた。
「まったくもって、君の考えの通りだ。ルルーシュ様の捜索のため、君の所持している車を利用したいと私は考えた。
ただ、何故君はその考えを私に話した?もしかすれば……」
「あなたに殺されていたかもしれない、ですよね……けど、その可能性は低いと思ったんです。
車だけが目当てなら私を殺せば済む話ですし」
ちょうどいい凶器もあるみたいですし、と奈緒子はジェレミアの所持していた日本刀を指さす。
「あなたの考えとしては、まずはルルーシュさんを保護したい。でも積極的に殺し合いをする気はない……
いえ、可能ならあのぶいつーって子供に反逆したい、ってとこですか?」
「……本当に民間人か、君は」
関心と呆れが半々の様子でジェレミアが言う。
エヘヘヘヘ、と奇妙な声を上げながら奈緒子が笑った。
「それほどでも……ただの超天才マジシャンですよ」
◇
ホテルのロビーから車を移動させた二人は、地図で現在位置を確認していた。
ちなみにホテルの入り口は車が一台通れるほど広くはない。
そこで奈緒子の案『いったんデイパックにしまい、再び表で出す』という方法で車を外に運んだのである。
「周りの風景も殺風景ですし……このホテル、G−2のみたいですね」
「そうだな……道沿いに南に進めばカジノ、ショッピングモール、病院と施設が連なっているな。
それらを経由し、南西部の市街地に進むとしよう」
方針を示し合わせると、小型車に乗り込む。
運転席はジェレミア、奈緒子は後部座席である。
「確認しておくが、私が君と同行するのはルルーシュ様を保護するまで。
また、君が足手まといになった場合には容赦なく見捨てていくぞ」
「それで大丈夫です。私ももしもの場合はジェレミアさんを囮にして逃げたりしますから」
奈緒子の言葉を聞いて、ジェレミアは頷く。
「いいだろう……では、行くぞ」
エンジンをかけられ発進した小型車は、警戒に南へ向けて走り始める。
運転席に座る男の、忠義の心を乗せて。
(どうか無事でいてください、ルルーシュ様……
このジェレミア・ゴットバルト、亡きマリアンヌ様の遺児である貴方様を必ずやお守りしてみせましょう!)
後部座席で冷や汗を垂れ流す女性の、焦りを乗せて。
(は、ははははは……やばいぞこの人。忠義とかどこの戦国時代だ……
……早いとこ上田さん見つけて、縁切ろう)
【一日目深夜/G−2 ホテル前】
【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[装備]逆刃刀・真打@るろうに剣心、ミニクーパー@ルパン三世
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(確認済)0〜2
[状態]健康
[思考・行動]
1.ルルーシュを探し、護衛する。
2.奈緒子にしばらく同行。足手まといになる場合は切り捨てる。
3.V.V.に従う気はない。
※参戦時期はR2、18話直前から。ルルーシュの配下になっている時期です。
※奈緒子と知り合いについて簡単に情報交換しました。V.V.については話していません。
【山田奈緒子@TRICK】
[装備]なし
[所持品]支給品一式、庭師の鋏@ローゼンメイデン、エロ凡パンチ・'75年4月号@ゼロの使い魔
[状態]健康、冷や汗
[思考・行動]
1.とりあえず上田を探す。
2.ジェレミアにしばらく同行。危なくなったら逃げる。
3.デイパックの仕組みについては……後で考えよう。
※ジェレミアと知り合いについて簡単に情報交換しました。
※ジェレミアを(色々な意味で)変な人物と認識しました。
投下終了しました。
支援感謝です。
割り込んでしまってすまない、投下乙です
TRICK知らないけど面白そうだな
>>379 投下乙です。
いや、たしかにジェレミアは変な人だけど、あんただって変な人だよ
…と思ったことは内緒w
>>369 一応、事前に決まってたギアスに関する制限の範囲内だから
作者さんに修正要請出すより、制限の見直しを提案するほうがいいような…
投下乙です。なんという凸凹コンビ。
アニメとドラマの共演てのはやっぱ不思議な感じだなあ。
デイバッグはどのロワでも四次元なんすね
>>369 テンプレにある能力制限を前提に書いてるんで、
書き手一人の一存で変えてしまっていいものかどうか
ところでルルーシュの参戦時期に疑問が
opでV.V.とは会ったことがあるような反応していましたが
初めて顔をあわせたのは14話だった気がして11話の時点では
V.V.の姿は知らなかったと思うのですが
……宣言するの忘れてました。
全ルートに寄せさせてもらいます。
385 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/03(金) 06:54:07 ID:0muOw+Rv
ちょいと質問。
ハザマイデオの制限ってどうなってるのかな。制限一覧表には詳しく書いてないから予約するかどうか悩んでる。
自由の女神形態禁止ぐらいでいいんじゃないの。
自由の女神になられると半分近い参加者がまず瞬殺されるし、あまり魔法をガチガチ制限するとただのヘタレになる
おはよう投下乙!
山田いいキャラしてるなー
>>386 ハザマイデオを把握してないからよくわからないけど
空気読んで強くしすぎない感じでいけばいいんじゃないの?
自由の女神禁止してなかったっけ?ある意味巨大ロボだしw
魔法は使うごとに疲労していく、強力なのはなお更。位の制限で良いんじゃないかな?
これなら、連発もできないしかといってへたれにもならないだろうし。
>>378 おはようございました、投下乙です。
山田…とことんそういった人間と縁があるんだな
類は友を呼ぶといった感じで面白かったですw
10mを超える巨体のラスボスだからなあ、自由の女神イデヲw
まああれが魔神皇としての真の姿なんだからその威厳は当然かもしれないけど
イデオは自由の女神形態禁止で、魔法は使用すると疲労で決定でいいのかな。
ルルーシュのギアスも、「死ね」禁止だけじゃ制限緩いんじゃ
ないかって意見出てたけど、そっちはどうする?
書き手が空気読んで書けばいいことだよ
空気読んで対主催大量虐殺ですね、わかります
自分的にギアスは効果時間をかーなーり短くしようかと考えてる。
命令の内容や、キャラの意思によっては数分〜数秒でも充分だと思う。
まぁ、跪きっぱなしってわけにもいかんしねぇ。
空気を読むとカーンのイデ夫?
もともとギアスは本編でも強い意思があれば抵抗・克服できる設定のはず。
だから本気で解除したいと思えば解除できる程度に強制力が弱まる、ぐらいの制限が一番良いかもね。
ギアスの制限は「気合いがあれば解除可能」でいいとしても
>>383の指摘はどうする?
OPとの矛盾が出るし、参戦時期をずらしてもらったほうがいいのかな
11話と14話以降では、ジェレミアを仲間として認識しているか否かの違いがあるし、
直してもらうのがベターだと思う。
ルルーシュがV.V.の顔を初めて知ったのは14話で確定なのか?
確定かはどうかわからないけど、14話以降なら確実には知っている
その前の話だと曖昧なんだよな
直すってもシャーリー死亡後のルルーシュがあんなキャラだとは思えん
あんなもんじゃないの?
シャーリーのことって、途中でチョロッと思い出す程度の描写だったような気がするけど。
蒼星石、橘あすか、織田敏憲投下します
今日これで何度目になろうかという溜息を吐き、乙女は足を抱えて顔を埋めながら月を見上げていた。
彼女の外見的特長は……一言で言えば中性的であった。
蒼色を基調とした服に、短めに揃えられた髪型……被っているシルクハットは何とも言い知れぬ魅力を醸し出しており、
特に目を引くのはそのオッドアイの瞳である。
彼女――蒼星石は再び溜息を吐いて半ば諦めたように両方共に色の違うその瞳を閉じた。
どうしてこんな事になったんだろう、と考える。
昨日はいつものように翠星石と共に真紅の元を訪ね、いつものように騒ぐ翠星石達を適度に収めつつ、
いつものように時間になればマスターの元へと帰り、いつものようにご飯を食べていつものように寝ていたはずだ。
それが何故か起きた時には知らない人達の前に連れてこられていて、殺し合いを命じられた。
まるで意味がわからない。
頭を抱えながら、これからどうしたものかと更に考える。
これがアリス・ゲームというのなら――まだ、話はわかる。
自分達の姉妹とローザ・ミスティカを賭けて争い、それを集めて完璧な少女――つまりアリスとなり、自分達を作り出した父と再会をする。
いつの日か来るべきその日が来てしまったというのなら、自分は迷いながらもそれに乗るだろう。
父の願いは自分達姉妹の願いでもあるのだから、父が望むアリス・ゲームをする事を否定はしない。
例え双子の姉……翠星石と道を違う事になろうと、だ。
しかし、これはアリス・ゲームではない。
殺し合い相手は殆どが人間――少なくとも、あの大広間にいた多くの者は人間だろう――であるし、自分達の姉妹だけが相手ではないのだ。
無関係な人を巻き込む争いは、薔薇乙女の誇りを傷つける事となる。
あの主催者が言っていた何でも望みを叶えるという言葉に少しだけ突き動かされもしたが……。
彼がその約束を守るとも限らないし、そもそもそんな事でアリスになったところで父が喜ぶとも思えない。
出来る事ならばこの状況から逃げ出して、皆と一緒にいつもの日常へと戻りたいと思っていた。
先ほど名簿を確認してみた所、翠星石や真紅の名前を発見した。
ここにいるのが自分だけではないと安堵する反面、不安を覚える。
不安とは即ち――翠星石と真紅が、何か仕出かさないかという点についてだ。
翠星石にしろ真紅にしろ性根は決して悪くは無い……長い付き合いなのだから、蒼星石はそれを知っている。
だが、この場にいる他の人たちが果たしてそれをわかってくれるだろうか。
翠星石はあの通り素直になれない性格であるからして、何かと自分の本心とは違う言動を取って他人を怒らせる事が多々ある。
よく知っている蒼星石なら苦笑で済むような事だとしても、こんな状況ではそれが命取りにならないとも限らない。
真紅にしても傲慢で高飛車な態度を取って他者を怒らせてしまう可能性は多分にある。
二人ともがこの状況を鑑みて、その態度を少しでも改めるような性格であるならば蒼星石もこれほどまでに心配はしないのだが……。
「そんな事、ありえないもんね……」
薔薇乙女一の常識人と呼ばれる彼女はアッサリとその可能性を否定して、深く深く溜息を吐いた。
不安の種はまだある……というよりも、こちらの方が本題といえよう。
その不安とは即ち――薔薇乙女の第一ドール、水銀燈の名前が名簿に載っている事である。
以前真紅の腕を千切られた際の戦いにおいて彼女は自分達が倒したはずだが、しかし、彼女の名前はここに載っている。
無論あの時ローザ・ミスティカも何も奪ってはいないのだから、彼女が復活をする可能性は高かった。
しかし、だとしてもこれは一体どういう事だろうか。
彼女が復活をしていたのだとしたら、彼女は必ず自分達にちょっかいを出してくるはずである。
にも関わらず、水銀燈を破ったあの日から昨日までの日常において彼女が自分達の前に姿を現す事はなかった。
この争いに参加させられる直前に復活をしたのだろうか?
だとするならば少しばかり彼女に同情する気持ちも芽生えるが――しかし、油断は出来ない。
彼女の性格からして自分達と手を組む事などはありえないだろう。
むしろこの期を幸いとして、自分達を襲ってくる可能性の方が明らかに高い。
警戒をしておかなければと頭の片隅に記憶しながら……蒼星石は再びその目を見開いた。
自分のやるべき事は……真紅と翠星石を見つけて、一緒に帰る事だ。
早目に合流をしなければ二人とも誰の怒りを買って壊されてしまうやもしれない。
そうなる前に三人が集まり、nのフィールドを通ってこんな場所からは早々に脱出をする。
その時にもしも他に自分達の世界に帰りたいという人がいたとするならば――まあ、連れて行っても問題はないだろう。
あくまでも優先するのは自分達の身ではあるが、さりとて帰りたいという人物を放っておくほど蒼星石も無慈悲ではない。
アリス・ゲームをする為にも、出来る事ならば水銀燈も誰かに壊される前に脱出して欲しいのだがこれは彼女の判断力に任せるしかないだろう。
自分達がさっさと脱出してしまえば、後に残った水銀燈も自分達がここにいない事に気づき諦めて元の世界に戻ってくれるはずだ。
地図を見てみるとこの島がかなり大きなものである事がわかる。
その中から真紅と翠星石を探し出すのは難しい事なのだろうが、それでもやらなければならない。
全員が生きて脱出し、日常に戻る為には自分の力が必要不可欠。
自分であまり動きたがらない真紅や頭があまりいいとは言えない翠星石を迎えに行けるのは自分だけなのだから。
そうと決まれば早く移動するに限る。
こうして座り込んでいる間にも真紅や翠星石が危険な目に合っているかもしれないのだから。
しかし、蒼星石は体育座りをしたまま決して動かなかった。
動きたくない訳ではない――単に動けないのだ。
「何でこんな所に……」
ぼやく様に呟きながら蒼星石は再びその膝に顔を埋める。
それもそのはず――彼女は今、見世物となる動物が入れられる檻の中にいた。
それは不運としか言いようの無い事態であった。
あの惨劇があった場所から離れて、気づいた時にはこの檻の中にいた。
檻の鉄棒は頑丈で蒼星石が幾ら揺すってもびくともしない。
飼育員が出入りに使うのであろう奥にあった厚い扉にはしっかりと鍵がかかっており開ける事は不可能。
ならば強硬手段で、と自分の唯一の武器である庭師の鋏を呼び出そうとしたのだが……。
「レンピカ……」
何故か自分の呼びかけに、いつも共にいるはずの人工精霊は答えてくれず鋏は取り出せなかった。
レンピカもおらず庭師の鋏も呼び出せない、丸腰同然の状態である。
蒼星石は真紅や水銀燈のように薔薇や羽を使った攻撃などは出来ない。
これがもし真紅や水銀燈ならば――或いはそれらを使って鉄棒をぶち破る事も出来たのかもしれないが、それも蒼星石には無理なのである。
急がなければならないのに動けないという焦燥を感じつつ、蒼星石は再び溜息を吐く。
もしかしたらこのままずっとこの檻に閉じ込められたままなのだろうか。
当然なのだろうがこの檻の中には鏡なんて無いし、nのフィールドを使っての自力での脱出は不可能だ。
「……ううん、諦めちゃ駄目だ。 何か……何かきっと方法があるはずだよ……」
つい弱気になってしまった自分の心を奮い立たせるように呟くと、蒼星石はデイパックの中身を確認し始める。
そういえば地図や名簿は確認したものの、あの主催者が言っていた支給品というものをまだ確認していなかった。
参加者の武器をバラバラにして渡したというのだから運良く庭師の鋏が入っているかもしれないし、
仮に無かったとしても、ここから脱出出来るような役立つアイテムもあるかもしれない。
期待に胸を躍らせながら中身を確認していくが……残念な事に、その中には庭師の鋏やその代わりになりそうなものなど全く入っていなかった。
あまりの自分の不幸さに若干涙目になりつつ、蒼星石はそれらを静かにデイパックの中に戻していく。
ただ、脱出の役には立ちそうに無いものの、先ほどから感じていた夜の寒さを多少緩和出来そうなものがあったので、それだけは残しておいた。
支給品の確認も終わり、本当にどうしようかと悩み始めた時。
微かではあるものの、誰かの足音が檻の外から聞こえてきた。
空耳かと思ったものの、その足音はゆっくりと……しかし確実にこちらに近づいてきている。
思わず蒼星石は鉄棒へ駆け寄り、凄い勢いで張り付いてその音のする方向に目を向けた。
張り付いた時に勢いをつけたせいで若干顔面に痛みを感じていたが、それを押し殺して蒼星石は見る。
角度の問題で見えにくいものの、確かにそこには人がいた。
背格好は大体ジュンと同じくらいだろうか……辺りが薄暗く、距離も離れている為に顔はわからなかったが、それは間違いなく人である。
思わず頬が緩み、ほっと一息つく。
あの人に扉の鍵を開けてもらおう、探してもらえれば鍵はすぐに見つかるはずだ。
そう考えながら、蒼星石はその人物に声をかける。
「おーい! すみませーん!!」
声を張り上げ、手を鉄棒の間から伸ばして懸命に振る。
するとその人物は一瞬驚いたように身を震わせ立ち止まったが、数秒かするとこちらに再びゆっくりと近づいてきた。
やっと助かる、これで皆を探しに行けると内心喜びながら蒼星石はその様子を見守っていた。
近づくにつれてその人影は徐々にわかりやすいものとなり、その顔のつくりもようやくわかるようになる。
そしてその顔を確認すると同時に、蒼星石は一瞬ビクりとした。
その少年は――やはり、ジュンと同じくらいの背格好をしている。
服装はポピュラーな学生服であり、肩からデイパックをかけて左手でそれを支えながら右手は後ろの方へとまるで何かを隠すかのように向けていた。
そこまでなら別に蒼星石も驚きはしない、ならば何が蒼星石を驚かせたかというと――それは単純に、彼の顔が原因であった。
その少年はどことなく蛙を思い起こさせるような、そんな醜い顔をしていた。
ニキビが浮かび、唇は分厚く、目はぎょろっとしており……それは不細工というよりも、人に嫌悪感を与えるような顔。
そんな顔を見て一瞬蒼星石は驚きはしたものの、すぐに失礼だと思い直して心の中で謝罪しつつその少年に言う。
「あの、いきなりで凄く申し訳ないのですが、助けてくれませんか?
見ての通り、こんな所に閉じ込められて困っているんです。
ここの扉の鍵があれば出られると思うんですけど……あ、申し遅れました。 ボクは蒼星石って言います」
と、自分の状況を身振り手振りを交えながら話していく。
その説明の言葉が若干早口で大声になってしまったのは、どこか底知れぬ不安を感じていたからだろうか。
とにかく、あまり少年の方を見ないまま蒼星石は助けて欲しい旨を説明し続け、その話がようやく終わりかけた時。
少年が柵――動物を見ている子供が興奮して近寄り過ぎないようにする為のもの――を乗り越え、自分との距離を詰めているのを横目で見た。
ぎょっとして更に注意深く見れば、少年はその顔――とても醜悪で、出来ればあまり見たくはないと蒼星石は思った――に笑みを浮かべていた。
このままではマズいと感じ取り、咄嗟に蒼星石は鉄棒から離れようと後ろに下がる。
しかし蒼星石が奥まで行くよりも早く、少年は鉄棒へと駆け寄った。
「イヒッ、どこへ行こうと言うのかな、"ソーセーセキ"くん。 出られないと言ったのはつい先ほどの事だろうに」
更にその顔に笑みを浮かべながら――たちの悪いことに、その顔は笑みが浮かぶと更に醜悪になるように出来ているらしい――少年は言葉をかける。
そして檻の隅で震えながら少年を見る蒼星石に対して拳銃――少年の支給品で、ワルサーP−38という代物――を鉄棒越しに向ける。
如何に蒼星石といえど、銃弾を食らってはただでは済まない。
必死にそれを下ろすように、と涙ながらに訴えるものの少年にとってその訴えの声はただの雑音でしか無く煩そうにしながら顔を顰める。
「お、お願いだか――」
蒼星石が全てを言い終わる前に、ワルサーの銃口が音を立てて火を噴いた。
一発、二発、三発、と続けざまに弾丸が発射される。
その手つきはどこか手馴れている様子であった。
というのもこの少年、エアガンを集めるのが趣味という何とも"高貴"なご趣味を持っているもので。
このワルサーという銃についても、実物を扱った事はないもののそれなりの知識は得ていたのだ。
加えて言うならば、これとはタイプが違うといえど、実銃を扱った事があるという点もその命中精度に一役買っていたのかもしれない。
計三発の弾丸が蒼星石の心臓部付近へと着弾し、そうして蒼星石は後ろ向きにどうっ、と倒れた。
その様子を見て更にニヤけながら、少年は檻の後ろに回りこもうと歩みを進める。
蒼星石の持っていたデイパックを回収する為だ。
「感謝して欲しいものだなぁ"ソーセーセキ"くん。
君の望んでいた通り、鍵を開けてあげるのだから。 イヒッ イヒヒッ」
不快な笑い声を漏らしながら更に歩みを進めようとした――その時。
「待ってください、そこの君!」
少年の背後から何者かの声が聞こえ、咄嗟に振り向く。
距離にして50mほど離れた場所に、その声の主は立っていた。
肩で息をしている様子からして、走ってこの場に駆けつけたのであろう。
恐らくは銃声を聞いたから――舌打ちをして、少年は右手に持っていたワルサーをそちらに向けて発砲する。
声の主は驚いたように建物の影に滑り込み、銃弾から逃れた。
更にもう一発牽制射撃をしてから、少年は考える。
相手に武器は無いようだがあのように建物の影に隠れられては銃弾を当てる事は出来ない。
近づくにもリスクが大きすぎる。
多大なリスクを犯してまで声の主を殺す事はない、彼に武器は無いのならばここで殺さずとも何れ死ぬだろう。
無茶をしてここで死んでは元も子もないのだ。
――折角生き返ったというのに、死んでたまるものか。
そう、少年は一度死んでいた。
高性能な防具に高貴なる武器を携えて、今の状況と似たようなゲームをして死んだのだ。
あの時は油断をしていた為にゲームを途中退場してしまったが――しかし、今自分はこうしてここにいる。
はじめはあの出来事が夢かと思ったが、まさかあんなリアルな夢を見るはずもない。
ならば何故生きているのかとここに来てからずっと考えていたのだが――すぐにそれもやめた。
どちらにせよ自分は今生きている、とするならば、今はそんな事を考えるより先にやるべき事があるのだから。
やるべき事とは無論、このバトルロワイアルに優勝する事である。
両手をぎゅっと握り締め――折れていたはずの指も、何故か治っていた――少年は考える。
名簿を見た限りでは、自分と同じクラスの連中も何人か呼ばれているようである。
その中で一番注意しなければならない人物は誰かというのは、既に少年にはわかっていた。
桐山和雄――自分を殺した張本人である。
普段からの嫉妬に加え、殺されたという憎しみも多分にはあったが……しかし、それを押し殺して少年は考える。
彼にまともに立ち向かうのは無謀に過ぎる、例えこちらにどれだけ優れた武器があったとしても勝てそうにない。 ……悔しいが。
ならば、出来るだけ彼から逃げるようにすればいい……幸か不幸か、このゲームの参加者は以前の時に比べて断然に多い。
その中の一人になるのは恐らくはかなり低い確率なのだろうが――それは桐山にとっても同じ事。
これだけの人数と戦えば桐山とて無傷でいられるはずはない。
自分はなるべく桐山に会わぬように行動し、しかし参加者をなるべく減らしつつ戦力を養い――最後まで残る。
「イヒヒッ」
その為にもここで死ぬ訳にはいかない。
蒼星石の支給品は少し惜しかったが、少年――織田敏憲――は最後にもう一発牽制射撃をすると駆け出した。
何も心配する事はない、支給品に恵まれ、早速参加者を一人殺害し、そして自分には一度実戦経験があるのだ、これで優勝出来ぬはずがない。
事実、以前のゲームでは油断をしたが為に死んでしまっただけで本当ならば優勝出来るほどの頭脳と腕を持っていたのだから、今回こそきっと上手くいくはずだ。
……自分が生き返ったというのも、神というものが自分をここで死ぬには惜しい人材であると判断しての事かもしれない……何故なら。
――高貴な神は、高貴な俺の生存を望むのだから♪
【一日目深夜/B−8 道路付近】
【織田敏憲@バトルロワイアル(漫画)】
[装備]ワルサーP−38(3/9)@ルパン三世
[所持品]支給品一式、ワルサーP−38の弾薬(20/20)@ルパン三世、ランダム支給品(確認済み)0〜2
[状態]健康
[思考・行動]
1:無理の無い範囲で殺せそうな参加者を殺していく
2:出来れば桐山とは会いたくない
※死亡後からの参戦です
支援
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
織田敏憲がその場を去ってすぐ、声の主――橘あすかは静かに物陰から姿を見せた。
辺りを見回して織田がいない事を確認すると、安堵したように溜息を吐いて歩き出した。
橘あすかは、蒼星石と同じようにこの動物園に連れてこられていた。
気づいた時に居た場所は園長室。
そこに留まってこれから如何様にするかを考えていた際に銃声を聞きつけ、
拳銃を発砲する程興奮している者の前に出るべきか否か、あすかは一分ほどそこで迷ったのだが結局は駆けつける事にしたのだ。
「それにしても、参りましたね……」
頭を掻きながら、そうボヤく。
正直言って織田の鉄砲玉は、あすかに取って脅威でも何でも無かった。
確かにそれが自身の身に当たれば無事では済まされないだろうが、そうなる前にその鉄砲玉を消滅させる力をあすかは持っている。
アルターと呼ばれるその力は、物体を瞬間的に再構成させるもの。
飛んでくる弾どころか、織田の持っていた拳銃を再構成してしまえばそれだけであの場は乗り切れたのだ。
しかし何故それをあすかがしなかったかと言えば、それはあすかの性格故だろう。
アルター能力者に敵意を持つものは多いし、恐怖する者も多々いる。
無闇に使ってはあの少年の恐怖心を煽る結果となってしまうだろうと、思慮深いあすかは考えたのだ。
無論、少年が誰かを既にその拳銃で撃っている可能性というのも考えられたのだが――辺りに倒れている人影も無いというのを確認すると、あすかはすぐにその考えをやめた。
彼が銃を撃ちつくしたところで話しかけ、和解する……あすかはそう計画を立てていた。
だが、そうなる前に少年は逃げ出してしまい、その計画もおじゃんとなってしまったのだ。
こんな事なら最初からあの拳銃を再構成させていればよかったかな、と今更ながらに思ってしまう。
「ですが、どうしてあの少年は銃を……まさか試し撃ちをしていたという訳でもないでしょうし」
あの時園長室で聞こえた銃声は三発、試し撃ちにしては多すぎる。
……確かに辺りに人影は無いが、薄暗い上に少年に声をかけてすぐ建物の後ろに隠れてしまった為、ちゃんと調べた訳ではない。
「思い違いだといいんですが……」
独り言をついつい呟いてしまうのは不安の為か……とにかく、あすかは周囲を見回す。
よく整備された生垣やゴミ箱の物陰など、見つかりにくいような場所をくまなく探す。
しかし、それでも誰も出てこない所を見るとやはり自分の思い違いらしい。
安堵しつつ、あすかはこれからの事を考えた。
彼としては、やはりこのゲームには乗り気ではない。
少なくともあすかの中での"ルール"では、人に強制されて殺し合いをするという選択肢は無かった。
園長室ですぐさまこの忌々しい首輪を再構成させ、この場にいる皆と共に脱出をしようと目論んだが、しかしそれは上手くいかない。
何故かは知らないがこの首輪にはアルターの力が通用しないらしいのだ。
そんな物質があるのかとあすかは最初驚いていたが、すぐに気を取り直すと計画を練り直した。
自分のすべき事は勿論、このゲームに乗ってはいないもの達と合流し、このゲームから脱出する事である。
そしてその為には力を持つ、自分のよく知る者達の協力が必須だとあすかは考えていた。
ポケットに折りたたんで入れていた名簿を取り出し、それを眺めながら思う。
カズマ、劉鳳、クーガー、かなみ――名簿に載っている四つの名前はいずれも自分のよく知る者達。
かなみは戦う力は持っていないが、他の三人は自分を凌ぐほどの強力なアルターを持っている。
合流出来ればこれほど心強い事は無いのだが……とそこまで考え、溜息を吐いた。
彼らも恐らくはこのゲームに対して強い反感を抱いているだろう、それはきっと確かなはずだった。
だが――だからといって、そんな彼らが、手を取り合って協力する場面を、あすかは想像出来なかった。
カズマは常に喧嘩っぱやく、こんな状況でもムカつく奴がいたらすぐに殴りかかるだろう、誰かと協力するという事が出来そうには思えない。
クーガーは自分の道を最速で行く男だ、協力してくれたところで自分達に足並みを揃えてくれるものだろうか甚だ疑問である。
劉鳳はまだマシな方かもしれないが、一度こうと決めたら絶対に貫く我というものを持っている。
三人とも、心も体も強いが為に決して相容れないのはあすかにもよくわかっていた。
特にカズマと劉鳳は水と油だ。
しかしそれでも――三人には協力をしてもらわないといけない。
カズマにしろ劉鳳にしろ、かなみの言う事に弱いという共通点がある。
かなみが二人に協力をするよう言ってくれたならば、二人は渋々ながらも共に戦ってくれるかもしれない。
手を組む中で衝突は間違いなく起こるだろうが、そこはあすかがどうにか収めるしかないだろう。
とにかく、かなみと合流を急ぎ、その後三人と合流するのが自分のやらなければならない事だ。
あの三人をまとめるというのは多大な苦労だろうな、と溜息を吐きつつ。
あすかは何気なくその視線を少年の立っていた檻の方へと向け――見た。
――その檻の中で倒れこんだ、蒼星石の姿を。
それを確認した瞬間、あすかの全身は硬直したがすぐに気を取り直すと柵を乗り越えて鉄棒に近づく。
鉄棒へと手をかけるが、力を入れて押せど引けどビクともしない事を確認するとあすかは手を離して強く念じた。
すると鉄棒は音を立てて消滅すると同時に何とも形容し難い色の光が辺りを包む。
鍵を探して中に入っているほどの時間は無いと判断し、咄嗟に再構成をして鉄棒を消滅させたのだった。
アルター光を纏いながら蒼星石の元へと駆け寄ると、その体を起こして声をかける。
「もしもし、大丈夫ですか!?」
しかし蒼星石はあすかの声に全く反応をしない。
不意に胸元を見てみれば三つもの銃弾の痕が服に残っているのに気づき、愕然とした。
やはりあの少年は人に向けて銃を撃っていたのだ。
彼が撃っていた銃は三発、蒼星石の胸にある傷も三発――疑問を挟む余地などない。
辺りに人影がいない事から、彼はゲームに乗っているものではなく単に自分を見て恐怖を抱いて反射的に撃ってきたのだと思っていたが、その考えが違っていた事に愕然とする。
考えてみれば、少年がこの檻の前に立っていた事をおかしいと思うべきであった。
一々柵を乗り越えて檻へと近づく必要など普通は無い……あるとするなら、そこには何かの目的があるべきだったのだ。
自身の考えの甘さを認識しつつ、あすかは地面へとへたり込んで静かに涙を流し始める。
「僕は……僕はまた迷ってしまった……もしもあの時迷わなければ、君を助けられたのかもしれないのに……」
あすかは園長室で迷ってしまった……銃声のした方へ向かうか否かを。
もしもあの時迷って無駄な時間を消費していなければ、或いは蒼星石を助けられたのかもしれない。
幾ら悔やんでも悔やみきれない――もう二度と迷わないと思っていたというのに、またも自分は迷ってしまった。
そうして救えたかもしれない人一人の命を無残にも散らせてしまった……。
溢れる涙を拭おうともせず、あすかは嗚咽交じりに倒れこむ蒼星石にただ謝罪の言葉を並べ続けた。
こんな事をしても何の解決にはならないと知っていながらも、それでもそれを止める事は出来ない。
いつまでも終わらないあすかの謝罪は――意外な形で終わる事となる。
「あの……あまり気にしないで、ボクは大丈夫だから」
「へ……?」
突然声をかけられてあすかは面を上げる。
一体何者か……その声はすぐ近くから聞こえてきたようだが、そんなに近くにまで誰かの接近を許したのか。
あすかの疑問は、その声の主の姿を見てすぐに四散する。
――あすかが顔を上げた前には、謝り続け涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたあすかに向けて戸惑ったような顔を向けている、蒼星石の姿があった。
誰か!誰かイングラムを持ってきてくれ!
奴の股間をメッタ撃ちにしてくれるわああああ!!!!
うわっと投下来てた支援
支援
あれ?さるっちゃったかな
>>417 したらばのほうに投下されてるけど代理投下したほうがいいのかな
じゃあ
3 :苦労をするのはいつだって良識ある常識人 ◆0RbUzIT0To:2008/10/03(金) 19:50:47 ID:RFWNO9sg0
「☆×○□$#!?」
声にならぬ声を上げてあすかは瞬間的に飛び上がると、蒼星石の元へとすぐさま近寄る。
一方の蒼星石は泣き腫らしたあすかの顔が近づいてくる事に若干戸惑いつつも、しかし逃げなかった。
「あ、あ、あの、失礼ですがあなたは、ししし、死んでいたのじゃ?」
「う、うん、ボクも最初はそう思ったんだけど――そ、それよりも落ち着いて。 ボクは大丈夫だから、ホラ」
口をぱくぱくとさせ、完全に狼狽している様子のあすかに声をかけながら蒼星石は両手を広げて自身の無事をアピールする。
しかしそれでもまだあすかは納得がいっていない様子だ。
それも当然といえば当然、蒼星石は胸に銃弾を三発も受けていたのだから。
そんな状態で生きているはずなど無く、仮に奇跡的に生きていたとしてもこんなに平然としていられるはずがない。
思わずあすかは蒼星石の胸元へと手をやり、銃弾の痕を確認する。
蒼星石はあっ、と驚きの声を上げたが、あまりにもあすかが真剣な様子をしている事に気づき、頬を少々赤らめただけで特に何も言わなかった。
これが真紅や翠星石ならば怒鳴っているところだろう。
「やっぱり銃痕はついている……ん?」
その時、あすかはふとその体にごわごわとした奇妙な感触があるのに気づいた。
いや、正確にはその体ではなく――そのブラウスの下に着込んであるものの感触。
それに気づくや否や、あすかはすぐさま蒼星石の服を強引に脱がした。
流石にこの行為には蒼星石も静止の声をかけようとしたが、それよりも先に脱がされてしまいまた結局何も言えず、更にその頬を赤らめるのみだ。
そんな蒼星石の様子には全く気づかずに、あすかは上着を脱がした蒼星石の姿を見てまたも驚く。
そこには蒼星石の小柄な格好にはあまりにも不釣合いな衣服が存在していた。
「……防弾チョッキ?」
「っていうもの、らしいね……」
呆気に取られている様子のあすかを尻目に、蒼星石はいそいそと再び衣服を身に纏いはじめる。
支給品を確認していた際、蒼星石がそれをデイパックに戻さずに手元に残しておいたのは、決して自身の安全を守る為ではなかった。
蒼星石は単純に、この夜の寒さをどうにか凌ぐ為にとそれを着込んでいただけなのである。
防弾チョッキを身につけるにあたり、当初はそのごわごわ感が不快にも感じられたが、しかしそれでも唯一寒さを凌げる衣服であるという事に代わりは無かったので、蒼星石は我慢をしながらそれを纏った。
ただ、そのデザインが自分の服に合わない事は少しだけ気に入らなかったので、ブラウスの下にそれを着込む事にしたのだが……。
「あの男の子はそれに気づかずに、全部ボクの胸に撃ってきたんだね……お陰で助かったんだけど」
苦笑しながら蒼星石は語る。
もしもあの少年が蒼星石の頭などを狙っていたなら、無傷でいられたとは思えない。
だが、彼は常に蒼星石の心臓付近を狙って撃ってきていたので、蒼星石はその銃弾の全てを防弾チョッキで受け止める事が出来たのである。
4 :苦労するのはいつだって良識ある常識人:2008/10/03(金) 19:51:34 ID:RFWNO9sg0
不幸中の幸いとでも言うべきか、こうして蒼星石は難なく己の身に迫った危険を乗り越えた。
……余談ではあるがこの防弾チョッキは、蒼星石を襲った少年がかつて身につけていたものと同じタイプのものである。
少年がもう少し物事を考える力があれば、自分の身につけていたものが蒼星石に支給されている可能性も考えられたのであろうが……。
しかし、彼の"高貴"な頭に、そこまでの事を要求するというのは野暮な話であろう。
その顔にぎこちなく笑顔を浮かべて、蒼星石はあすかに無事であると伝える。
あすかはそれを聞きしばらくはほっとしたように息を吐いていたが、しかしすぐにその表情を曇らせた。
蒼星石が無事だったのは……はっきり言って、幸運だったからだ。
もしも蒼星石に防弾チョッキが支給されていなかったり、蒼星石が防寒の為にチョッキを着込んでいなければ、織田が胸を狙わなければこんな結果にはならなかっただろう。
正に紙一重――蒼星石が無事だったのは、奇跡としかいいようが無い。
「本当に申し訳ありません……」
「気にしないでったら、ボクは気にしてないんだし」
「いえ、ですが……」
頭を下げ続けるあすかに、蒼星石は困りながらも謝罪はいいと告げる。
蒼星石自身は無事だったのだし、あすかが迷いながらも助けに来てくれたというのは素直に嬉しい事だと思っていた。
その行為は決して結果には繋がらなかったものの、感謝こそすれ怒る気などというのは毛頭ない。
それにこうして謙遜合戦を繰り返している間にも、真紅や翠星石は危険な目にあっているのかもしれないのだ。
こんな事は早々に止めて、すぐに彼女達を探しに行かなければならない――と考え。
そこで蒼星石はふと疑問を持った。
あすかは檻の中にいる、何故? ――それは無論、鉄棒を消滅させたからである。
では……一体どうやってそれを消滅させたというのだろうか。
見てみれば、鉄棒は壊された訳でもなく切り取られた訳でもないようなのだ。
それはまるで最初から存在しなかったかのように、忽然と姿を消している。
「ねぇ、ちょっと質問していいかな?」
「? はい、何でしょうか?」
「あの鉄棒はどうしたの? あれがあったから出られなかったんだけど、今は無くなってるみたいだし……」
それを聞いた瞬間あすかは一瞬ギクリとした様子を見せたが、それも束の間。
先ほどの情けない顔とは一転、真剣な眼差しをして話しはじめる。
支援
5 : ◆0RbUzIT0To:2008/10/03(金) 19:52:15 ID:RFWNO9sg0
あすかが言うには、あの鉄棒を消滅させたのはアルター能力という力を行使した為らしい。
蒼星石がそのアルターというものに知らないと告げると、あすかは一瞬訝しむように蒼星石を見たが。
すぐにそれをやめると、アルター能力についての説明をする。
しかし、それらの話の中にも蒼星石の知らない単語があちらこちらに飛び交い、慌てて蒼星石は彼の説明を止めた。
アルター能力はいざ知らず、ロストグラウンドの事なども知らないというのは一体どういう事かと蒼星石に疑問を持つあすかを制し、蒼星石は逆にあすかに説明する。
あすかと蒼星石の認識が違う理由――それは容易に想像が出来た。
それは即ち、彼と彼女との世界が全く違うものだという可能性。
それを聞いた瞬間、あすかはすぐさま異を唱えたものの、蒼星石は動じない。
彼女は知っていた――nのフィールドには無限にも等しい数の世界が広がっている事を。
その事について蒼星石は懇々と説明をし、あすかは蒼星石のその発言の真剣さに若干ながらも考えを改めはじめる。
確かにそう考えるしか、この状況を説明する方法はない。
どれだけ小さな子供といえど、アルターやロストグラウンドといった単語を知らない子はいないだろう。
まだ若干の疑いを持ってはいたが、あすかは一応はその説明に納得をした――が、しかしすぐにまた別の疑問を持つ。
「しかし、あなたは驚かないのですか?」
「え、何が?」
「いえ、ですから、アルター能力に対して……ですよ」
あすかが蒼星石に持つ疑問は、ロストグラウンドに住む者ならば誰でも持つものだろう。
一般人がアルター能力者に持つ感情というのは、基本的に嫌悪されるか、恐怖されるかのどちらかである。
自分には無い特殊能力――その矛先がいつ自分達に向かうかも知れない。
一般人が恐怖をするのも、無理のない話である。
しかしながら、蒼星石はアルター能力の話を聞いても全くそういった素振りを見せていなかった。
アルター能力について知らず、更にこんな殺し合いを強制させられるという状況なら驚かずにはいられないだろうに。
そう考えるあすかに、蒼星石は両手を振って苦笑しながらそれを否定した。
鞄に乗って空を飛んだり、鏡の中に入り込んだり、人工精霊を使途して戦ったりといった事は一般的に考えて超常能力だろう。
もっと単純に言えば――蒼星石達は、動く人形だ。
その存在自体が既に超常現象。
超常能力を持つというのなら、蒼星石達薔薇乙女も同じ事なのだ。
その話を聞いて更に驚くあすかに対し、蒼星石は自身の袖を捲ってその球体関節を見せ付ける。
支援支援
携帯で自演(?)支援だぜw
6 : ◆0RbUzIT0To:2008/10/03(金) 19:52:47 ID:RFWNO9sg0
それは確かに人間には無いものであり――それがあるという事は即ち、蒼星石が人間ではないという事を示している。
一瞬、蒼星石自体もアルターで作り出された存在なのかもしれないとあすかは思うが、すぐさまそれを否定する。
自分の元同僚に、理想の女性を作り出して使途するというアルター能力を持つ者は確かに居た。
その作り出された女性は外見上は人間のそれと全く同じであり、見分けはまるでつかなかった。
しかし、蒼星石は違う。
服で隠れているとはいえ、この球体関節を見れば明らかに人間とは違う存在であるという事がわかる。
それに蒼星石はアルターの存在を知らないからして、そもそも彼女自身がアルターかもしれないという可能性は皆無なのだ。
お互いの世界観や能力についての説明が終わったところで、次に二人は今後どうするかの話をはじめた。
二人は共に探し人がいるが、その人物がどこにいるかはまだ定かではない。
故に行くあても決まっていなかった。
地図を見てみれば、ここがC−8にある動物園であるという事がわかる。
西に向かえば森に入り山へと向かう事になり、南に向かえば多数施設のある市街地に出る事になる。
人が集まる可能性が高いと思えるのは市街地であったが、かといってそう易々とそこに向かう訳にはいかない。
人が集まればそれだけ危険な人物も集まるであろうという事は容易に想像出来る。
しかし、かといって手を拱いている訳にもいかない――こうして悩んでいる間にも時間は刻々と過ぎているのだ。
「……やはり、ここは危険を承知でも南へ向かうしかないでしょう」
「うん」
「このまま南下すれば森を通る事になりますし、この闇夜と相まって森の中では周囲から見つかりにくくなるのはほぼ確実です。
そうして森を抜ければ市街地はもう目の前ですから、市街地へ向かう事自体は容易でしょう」
「市街地についたら?」
「そうですね……多数施設がある為、逆にどこへ向かうべきか迷うところですが……。
まずは一旦、図書館へと寄りましょう……北の方にあるので近いですし、そこに僕の知り合いがいるかもしれません」
「ああ、さっき言ってた人たちだね? えーっと……」
「クーガー、ストレイト=クーガーです。
彼は書物が好きな上にマイペースな人間ですから、こんな状況でも図書館でじっくり本を読んでいる可能性は多分にあります。
彼と早目に合流が出来れば人探しは格段に楽になるでしょう」
あすかと蒼星石が探さなければならない人物は合計七人。
二人で探しきるには時間も手間もかかりすぎるが――しかし、もしもクーガーが手を貸してくれればその時間は大幅に短縮出来るだろう。
彼のアルター能力――ラディカル・グッド・スピード――は、今のように時間の猶予の無い状況で人探しをするには非常に役立つ代物だ。
……乗り心地は、決していいものではないが。
「でも、本当にボクと一緒に来てくれていいの? 庭師の鋏が無いと、ボク足手まといにしかならないのに……」
「それはこちらの台詞ですよ。
あなたがこの島から脱出が出来る手段を持っているのならば、是非とも共に行動させてもらいたいです」
支援w
7 : ◆0RbUzIT0To:2008/10/03(金) 19:53:36 ID:RFWNO9sg0
蒼星石は、先ほどの話し合いにおいて自身の持つ脱出プランをあすかに説明していた。
nのフィールドを通って自分達の世界へと帰っていく――という彼女の計画。
あすかはそのあまりにも簡単といえば簡単な手段で本当に脱出が出来るのかと当初は悩んだのだが、
しかしかといって自分には明確な手段も思いつかなかった為、その計画に乗らせてもらう事にしたのだ。
二人の仲間――そして、或いは道中で会うかもしれないこのゲームに否定的な人物を集めてnのフィールドを通り脱出する。
二人の意見はそこで合致し、協力をする事と相成った。
「そうだ、これを渡しておきます」
「? 何、これ?」
さて、そろそろ出発をしようとしたその時、ふとあすかが何かを思いついたように己のデイパックから何かを取り出し蒼星石に手渡した。
それは、黒く四角いカードのデッキ。
中身を見てみると、少しグロテスクな蟹のモンスターの絵や、そのモンスターの鋏と思われる絵などが描かれてある。
一体何のつもりだろうと首を傾げていると、すぐにあすかが付属していた説明書を片手に蒼星石に言う。
「僕の支給品なのですが、それはライダーデッキというものらしいです。
鏡か、或いは水面か……とにかく、自身を映し出すものの前で翳すと腰にベルトが装着され、そこにそのデッキをセットすると違う姿に変身が出来るようです」
「変身?」
「と、ここには書かれてますがね……あなたはこのデッキの事については?」
「いや、知らないなぁ、はじめて見たよ……あすかくんも知らないんだよね?」
頷きながらあすかは説明書を蒼星石に渡すと、蒼星石は説明書に目を通していく。
話によればこのデッキを使う事により身体能力は大幅に向上し、また武器もデッキに入っているカードを使って召還する事が出来るという。
そしてこのデッキに付属している武器というのが鋏というのは、蒼星石にとって嬉しい事実だった。
形は違えど、鋏であれば自分の使い慣れた武器だ。
剣や拳銃などよりも、ずっと使いこなせる自信がある。
試しにデイパックから水の入ったペットボトルを出し、その前にデッキを掲げてみた。
すると確かにここに書かれているように突如ベルトが発生し、蒼星石の腰に装着される。
驚いてデッキを隠すとベルトは消え失せたが、それだけで確認は十分だった。
この説明書に書かれている事は、恐らくは真実だろう。
「ありがとうあすかくん、でも、貰ってもいいの? 君の支給品だったのに……」
「僕にはアルター能力がありますからね。 それよりはあなたが持っていた方がいい」
「うん、そうだね、これでボクも役に立てると思う」
支援
8 : ◆0RbUzIT0To:2008/10/03(金) 19:54:28 ID:RFWNO9sg0
この場には水銀燈をはじめとして、多くの実力者がいる事が想像される。
自分の身を守る為にも、また真紅や翠星石を守る為にも戦う力は必要不可欠であった。
「それじゃあそろそろ行こうか――ッ!」
「!? ど、どうしたんです!?」
「あ、あはは、大丈夫。 ちょっと胸が痛んだだけだから」
立ち上がろうとした瞬間に蒼星石の胸に微かな痛みが走った。
防弾チョッキをしていたとはいえ、その衝撃を完全に受け止めきる事は出来なかったのだろう。
恐らくは軽い痣が出来ているだけで、大した怪我ではないのだろうが、ついその痛みに声を上げてしまった。
大した事無いとあすかには告げるが、しかしあすかは首を振る。
「いえ、万が一という可能性もあります――見せてください」
「見せて下さいって言われても……って、ちょっ、待っ――!」
咄嗟に胸元を隠すような仕草をした蒼星石には目もくれず、再びあすかは蒼星石の服に手をかける。
あすかは良かれと思って言ってくれているのだろうが、蒼星石にしたらたまったものではない。
先ほどは上着を脱がされただけで防弾チョッキも下着もあったのだから、まだいい。
しかし、今回は違う。 傷を見ると言っているのだ。
傷を見るということは即ち――素肌を露にするという事。
しかもそれが胸の部分だというのだから、蒼星石が抵抗するのも当然といえば当然の事だった。
かつていつの日か、ジュンに下着姿を見られた事はあったがそれとは話が別だ。
下着姿を見られるのと裸体を見られるのとでは、まるで意味が違う。
「やっ、ちょっ、あすかくんやめて……心配してくれてるのは嬉しいけど、ボ、ボクは大丈夫だから……」
「何を悠長な事を言っているんです! 放っておいては悪化するかもしれません」
必死で抵抗するものの、あすかは蒼星石の静止の声を聞いてくれない。
そこには恐らく自分のせいで蒼星石が銃に撃たれてしまったという負い目もあったのだろうが……。
しかし、正直これはありがた迷惑であると蒼星石は思う。
「やめてよ、あの、恥ずかしいし……」
「何を恥ずかしがる事があるというのです!」
恐らくは真剣だったのであろう……あすかは、その後をこう大声で続けた。
「女の子ならいざ知らず、あなたは男の子でしょう!!」
……この発言の数秒後、あすかは目の前の女の子に平手を打たれた
9 : ◆0RbUzIT0To:2008/10/03(金) 19:56:43 ID:RFWNO9sg0
数十分後……あすかと蒼星石は静かに動物園を出た。
この数十分間、二人の間に会話は無い。
蒼星石はどこか申し訳ないような顔をしながらあすかの顔色を伺うと、あすかはすっかりしょげた様子で項垂れていた。
「あの……ボクは本当に気にしてないから、元気出してよ」
あまりの空気の重さに蒼星石は声をかけるが、あすかはただ謝罪の言葉を述べるだけで一向に回復しない。
その様子に重い溜息を吐きながら、蒼星石は気を取り直して歩き出す。
あの後、どうにか自分が女である旨を伝えると、あすかはおおいに狼狽して蒼星石に謝罪をした。
正直な話、自分は男の子と間違われるのは慣れているし、ああやってあすかに大声断言された事に対しては少しムッとしただけでそれほど怒ってはいない。
露になった胸を見せる前に脱がされるのを止める事は出来たのだし、蒼星石自身は既に全く気にしていなかったのだ。
だが、あすかはどうもそういう訳にもいかないらしく、先ほどからこうして落ち込んでいた。
何でもあすかには恋人がいるらしく、先ほど蒼星石にした事はその恋人への裏切り行為だとか、もう少しで犯罪になるところだったとか、
ぶつぶつと自責の念を呟きながら歩いていた。
或いはこれがあすかのよく知る三人であれば、こうはならなかったかもしれない。
カズマならばそもそも何が犯罪なのか、何で平手打ちをされたのかさえ理解しないだろうし、
劉鳳なら事務的に謝罪の意を唱えた後、すぐに気持ちを切り替える事が出来ただろう。
クーガーにしても、いつまでも引きずるようなタイプには見えない。
それらがいいのか悪いのかは別として、少なくともこのような状況にさせなかったであろう。
しかしながら彼――橘あすかは、非常に真面目で、堅物な、良識ある常識人であった。
そしてもし、あすかに服を脱がされかけたのが蒼星石でなく彼女の姉妹達であったならば――これまた、こうはならなかったかもしれない。
真紅ならば平手を一つして後は涼しい顔をし、あすかに命令の一つや二つをして償いでもさせ少しは彼の負担を和らげる事が出来ただろう。
翠星石ならば脱がされる前にあすかを罵り、あすかを怒らせてしまうかもしれない。
水銀燈ならば同じく脱がされる前に解決するだろう……恐らくは、暴力的な行為で。
それらがいいのか悪いのかは別として、少なくともこのような状況にさせなかったであろう。
しかしながら彼女――蒼星石は、非常に真面目で、お人好しで、良識ある常識人であった。
あすかにしてみればよかれと思った事が仇となった訳であり、また蒼星石にしてみれば彼を許そうと思う事が逆に彼を苦しめていた。
どちらかの性格が、もう少しだけ悪ければ――もとい、我を出すようなタイプであれば話は違ったのかもしれない。
自分達の性格を若干呪いながら、それでも二人は重い空気の中足並みを揃えて歩く。
"いい"性格をした、自由奔放な自分達の仲間を探し出す為に。
悲しいかな、いつだって苦労をするのは、彼らのような常識人なのであった。
【一日目深夜/C−8 動物園付近】
【蒼星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]防弾チョッキ@バトルロワイアル
[所持品]支給品一式、シザースのデッキ@仮面ライダー龍騎、ランダム支給品(確認済み)0〜2
[状態]健康
[思考・行動]
1:南の市街地にある図書館へと向かう
2:自分と蒼星石の仲間(カズマ、劉鳳、クーガー、かなみ、真紅、翠星石)を集めて脱出する
3:襲ってくる相手は容赦しない
※無印本編終了後〜トロイメント開始前からの参戦です
※nのフィールドにいけない事に気づいていません
【橘あすか@スクライド(アニメ)】
[装備]無し
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)0〜2
[状態]健康
[思考・行動]
1:南の市街地にある図書館へと向かう
2:自分と蒼星石の仲間(カズマ、劉鳳、クーガー、かなみ、真紅、翠星石)を集めて脱出する(出来ればかなみ優先)
3:襲ってくる相手でも、出来れば戦わずに和解したい
支援
2 : ◆0RbUzIT0To:2008/10/03(金) 19:49:59 ID:RFWNO9sg0
申し訳ありません、さるさん規制にかかったので残りをこちらに投下させてもらいます
10 : ◆0RbUzIT0To:2008/10/03(金) 19:58:10 ID:RFWNO9sg0
タイトルがブレて申し訳ありません。
「苦労をするのはいつだって良識ある常識人」でお願いします。
「盤上のトリック劇場」に寄せさせてもらいます。
代理投下完了
投下&代理投下乙!
くそ、投下に気づいたのがもうすでにさる寸前だったのが痛い
俺がちゃんと支援できてればさるさるにならなかったかもしれないのに
それにしてもすごい大作だ
GJすぎる
蒼星石とあすかのコンビ、相性がいいのか悪いのかわからんなw
で感想
◆0RbUzIT0To氏
乙です
蒼い子の平手打ちや常識人コンビと笑いどころがあったがやはり織田様のインパクトが強いw
死亡後参加だから半皮くらいは剥けて活躍してくれそうかな・・・
唯一孤高のハングリーファイターの織田様に期待してます
長いね
投下と代理投下乙!
なんという織田様
流石すぎるううううううううううう
投下いっぱい来てんなぁ、皆乙
つかさがスイーツ(笑)に見えたり、奈緒子は相変わらずだったり
橘&蒼星石コンビもなかなかいい味出してる
投下&代理投下乙です。
タイトルが真理をついてるのにフイタw
変身して戦う蒼星石、見たいな〜
投下乙です。
漂う小物臭はさすが織田だぜ。
そういえば、上でルルーシュの参戦時期について話題になってたけど
11話のルルーシュがV.V.の顔を知ってる可能性は0?
0じゃないなら、「うちのルルーシュは11話から参戦だけど、V.V.知ってます」ってことに……ダメか?
C.C.から話を聞いている可能性がない事もないが……どうだろう
ルルーシュでなくスザクだったら確実に知ってるんだけどね……。
まぁ今さらだけど。
投下乙!
中々面白いコンビだ
なんというか、和む感じだなー
445 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/03(金) 23:10:07 ID:0muOw+Rv
投下乙
織田様はやっぱりこうなるのね・・・。
またあすか蒼星石コンビもいいですね。
イデ夫投下しても大丈夫ですか?
彼――狭間偉出夫の胸には穴が空いている。
ヒノカグヅチで貫かれた傷跡は塞がっているが、心にぽっかりと穴が空いている。
人よりも優れていた為に孤独であり、同級生からはイジメにあい、教師からは冷たく扱われた。
誰も彼の穴を埋める事はなかった。穴を広げる事はあっても、埋める事はない。
ただ一人、否、二人だけが彼の悲しみを知っている。
同級生の少年と彼の妹、レイコ。
精神世界に閉じ籠り泣き叫ぶ彼は魔界を支配した魔神皇の威厳などなく、ただの子供でしかなかった。
最終決戦に破れた彼は、そのまま消える筈だった。
しかし運命の悪戯か、悪魔のゲーム、バトルロワイアルの参加者に選ばれ、彼は魔界の深淵より現界へと呼び出された。
彼の心の穴は未だ埋まっていない。
◆◆◆
「―――今から、皆に殺し合いをしてもらいたいんだ」
白髪の少年の言葉は彼の耳を流れるだけだ。
破裂音、爆発音と共に弾けた少女の遺体、流れる血、響く悲鳴。彼の澱んだ瞳にはただ映像として映るだけだ。
何もかもが現実感を伴わず、彼の興味を引かない。
――下らない。
あまりにも退屈で、滑稽で、意味がない光景に、彼は呆れた。
白髪の少年――V.V.のやっている事にある意味、同族嫌悪感に似た不快感を抱く。
彼がやった事に比べれると徹底はしているが、絶対的な恐怖が足りていない。
V.V.――殺すという行為。殺し合いを共用すること。
彼――力を誇示する事。支配を強要する事。
さほど変わりはないが、確実に違っている。
彼は無意識の内下にらない物を排除しようとした。
彼にはそれだけの力がある。それだけの力が備わっている。
「ハマオ――」
大天使ミカエルでさえ、竜王ヤマタノオロチですら一撃で屠る魔法を唱えようとした。
その時、白濁とした彼の視界の端に現実感を帯びた人物が見えた。
輕子坂高校の生徒。彼の同級生。魔界にて彼を打ち倒した少年。
「まさか、な」
不完全な詠唱の為か、原因はわからないが力が失われた為か。彼の身体を虚脱感が駆け巡る。
しかし、彼の視界は色彩を帯び始める。
憎いと言えば憎い。しかし、憎くないと言えば憎くない人物の存在に、彼の心の穴は痛みを伴って動き始める。
穴が埋まるかもしれないし、広がるかも知れない。
――ドクン、ドクン。
心臓が早く激しく鼓動を打つ。
ざわめく様に血潮が身体を流れる。
自分の顔に手を当てると、笑っている事に気付いた。
目尻を下げ、唇が歪んでいる。
込み上げてくる笑いを止められなくなった時、彼は白いもやの様な闇に包まれた。
◆◆◆
気付くと彼は見知らぬ場所にいた。
知らぬ間に手にバックパックを持ち、ただ、ただ立っていた。
「空間転移、か」
V.V.の力によるものだろうと結論付けると、自分と同等か、それ以上の力の持ち主であると見当付ける。
つまり、倒さねばならぬ敵であると認識をした。
次いで自分の持ち物、支給品を確認する。
元からの所持物は無し。支給品は当座の食料と水、照明器具、参加者名簿、地図、コンパス。
そして、白木の柄、白木の鞘の一振りの太刀。
――抜けば珠散る様な氷の刃。
使い古された賛辞が良く似合う、寒気がする程の冷たい輝きを帯びた刃は、相応の業物であると無言ではあるが雄弁に語っている。
地図と照らし合わせ地形から現在地を照らし合わせると、さほど離れていない所に研究所がある事が分かった。
「学校が無くて良かった――」
忌まわしき記憶がある学校という建造物は彼を不快にさせる。
イジメられ、馬鹿にされ、無視されたトラウマは彼の心を握りしめて話すことはない。
もしあったのならば、彼は学校を魔界へと貶めてしまうだろう。
それほど迄に不快で忌み嫌う物が無い事彼は素直に安堵の溜め息を尽く。
「――まずは奴を探すか」
荷物をバックパックにしまい、太刀をベルトに挟み、あてのない道のりを歩き始める。
親愛なる宿敵を求めさ迷い歩く。その一歩一歩は力強い。
特注の白い制服、病的に白い肌は月夜の闇に妖しく浮かび上がる。
彼は求める。穴を埋める存在を。
【一日目深夜/A−1 研究所付近】
【狭間偉出夫@真・女神転生if…】
[装備]斬鉄剣@ルパン三世
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)0〜2
[状態]軽度の疲労
[思考・行動]
1:中心部に向かって進む
2:主人公男を探す
※参加時期はレイコ編ラストバトル中
※人間形態
全ルートに寄せます。
お気に召さなければ破棄して下さい。
千草貴子、男主人公投下します
SOS
あー、もう考えるだけでイライラしてくるぜ。
明はおろか学校ごと消えちまって転校だのいろいろバタバタしてる時期の人間呼び寄せといて殺しあえだぁ?
冗談は大月のオッサンのプラズマ理論だけにしてほしいぜまったく。
……しかしあのちっちゃい子が死んじまったのは事実だ。
首がおもちゃ見てえにスポーンと飛んでいったまでは何かの冗談だと思えた。
でも、その後の赤い血が振りまかれる光景は……ありゃあマジだ。
殺し合いをさせる気は大マジらしい、しかもわけわかんねー能力みてえなのもあるみてえだしな。
あのブイツーだかなんだかいう野郎は頭がイカれてやがる、それもハザマ以上のクレイジーだ。
さて、ここで生き残れるかっていわれるとYESとも言えねえしNOとも言えねえ。
確かにガーディアンのザ・ヒーローはいねえけど、俺には一応幽閉の塔で鍛えた腕とアタマがある。
何とかなるだろう、うん、きっと何とかなる。
しかしだ、ここに呼ばれた連中が俺みてえに腕に自身のあるやつらとは思えねえ。
それに……さっきの場所であのちっちゃい女の子の名前を呼んでた子らの事も気になるしな。
ハザマみてえなクレイジー野郎が当たり構わず殺して回ってるかも知れねえ。
俺がこうやってウダウダ考え事してる間にも……あー! ムカつく! スッキリしねえ!
「ふっ、ざっ、けっ、んっ、なああああああああああああああああああああああ!!」
船内に響き渡る一つの咆哮。
少年、蒼嶋駿朔が放ったその叫びは船内に轟く。
息を切らしながら、蒼嶋は声を放った方向を見つめる。
なにやら満足した表情を浮かべながらその場に座り込むと支給のデイパックを漁り始めた。
「なーんか武器でも入ってりゃいいんだけど……な?!」
一瞬の出来事、デイパックに注意が向いていたとはいえ蒼嶋の首には気づかぬ内に一本の鉈が当てられいた。
そして、頭には銃のようなものを突きつけられる感覚。蒼嶋はその一瞬に全てを悟った。
終わった、と。
「ピー、これは警告です。ちょっとでも動いたら首を掻っ切るわよ。
分かったなら次の質問にYesかNoで答えなさい。あんたはこの場所で人を殺してまわるつもり?」
次に訪れた感覚は痛覚ではなく、聴覚。
姿こそは見えない女性は自分に質問を問いかけてきたのだ。
「ったりめえだ。何が楽しくてオッサンネーチャン達をぶっ飛ばさなきゃいけねえんだよ」
鉈が突きつけられている現状に臆していることは確かだったが、蒼嶋は臆しているそぶりも見せず一口に吐き捨てる。
蒼嶋がそういった後も鉈と銃は突きつけられたままだ、若干の疑問が彼の中に沸き上がる。
「……なあ、オメエはひょっとして殺して回ってやるぜーヒャッハハーとか考えてんのかよ」
蒼嶋はもう一度その口から言葉を搾り出す。今すぐにでも訪れるかもしれない死を見据えながら。
その後、鉈がゆっくりと蒼嶋の首から離れ。頭に突きつけられていた銃の感覚も消え去る。
蒼嶋は振り向くとそこにはメッシュの入った長髪に多数の金属アクセサリ。
由美をも超えんばかりの派手な外見の女性が立っていた。
右手に鉈、左手に銃のようなものという泣く子も黙る格好で。
「そんな訳ないじゃない、ただあんな鼓膜が破れんばかりの声で叫ぶようなバカに接近するんだから。
万が一のことを考えて更に警戒するのは当たり前でしょ?」
バカといわれてムッとするがそういえば、と思わず蒼嶋は声を漏らす。
先ほどの叫びが彼女にはしっかりと聞こえていたらしい。そうなれば断然怪しいのは自分。
疑われて当然だった状況を飲み込んだ蒼嶋はケロッと普段の表情に戻る。
「そうか……いやあ、参ったなあ。ハッハッハッハ。
いやあわりいわりい。わりかしガチでムカついてたから叫ばずにいられなかったつーか、なんつーか」
また大声で笑い飛ばす蒼嶋に対し、呆れた表情を浮かべる少女。
「あら、ホントだったのね。殺し合いに乗ってないって言うの」
へ? と間抜けな声で蒼嶋が返したのに対し、少女は思わず噴出してしまった。
状況がうまく飲み込めない蒼嶋を差し置いて彼女は一人で笑っている。
「実はまだ警戒してたんだけど……鉈をといた後に襲われるんじゃないかって。
でも、その言葉と行動見てたら……なんだか可笑しくって」
今度は蒼嶋が黙り込む番だった。目の前の女性は一向に笑い続けている。
参ったな、と内心思いつつ蒼嶋は仲間を得ることができたことを確信する。
「……オレ、蒼嶋駿朔。軽子坂高校2年D組の蒼嶋駿朔だ」
学生服を着ていたことから、学校名を添えて自己紹介をする蒼嶋。
相手が自分の学校を知っているとは思えないが、一応学校名も言っておいた。
コスプレ、と思われては気分もあまりよくない。
「城岩中学校3年B組、千草貴子よ」
何気なく聞いていた相手方の自己紹介。しかし、その言葉に蒼嶋は驚愕することになる。
「……ちゅ、中坊ォォォォォォォォォ?!」
本日二度目の咆哮。
その後に軽い破裂音が木霊した事。
蒼嶋の頬が赤くはれ上がった事。
貴子が怒りを露にしていた事。
勿論、言うまでもないだろう。
平手打ちとちょっとした言い合いの後、とりあえず情報交換をしようということで座礁船内の船長室に行くことになった。
支給品の確認をまだ済ませていなかった蒼嶋がデイパックから物を引き出した。
中身は五冊の本、六玉のスイカ、そして刃が峰についている刀。
刀とスイカ一玉を残し、蒼嶋は残りの物をデイパックに入れ、千草から鉈を拝借しスイカを切り始めた。
「まあ、スイカでも食おうぜ。今すぐにでも動き出したいが情報の整理ッツーのはやっぱ大事だしな」
貴子は差し出されたスイカを受け取った。蒼嶋は早々にスイカに齧り付き始めている。
「……で、貴子さんよ。アンタこの殺し合いをぶっ潰せそうなヤツに心当たりはあるかい?」
タネを飛ばしながら蒼嶋は問いかける。少しずつスイカをかじりながら貴子は首を横に振って答える。
実際には貴子の知り合いは四人ほどいたのだが、貴子の視点からは全員が信頼できる人物とは思っていなかったのだ。
その回答に落胆しながら蒼嶋は言葉を続ける。
「そうか……オレも狭間の野郎しか知ってるやつはいねーしなあ。
あ、このって野郎は危険だから注意しとけ。やつは間違いなくこういう殺し合いで殺しに回るタイプだ」
その後、狭間の特徴を簡潔に話す蒼嶋。
「……となると、アイツしかいないか」
「アイツ?」
考え込む様子の蒼嶋に疑問をぶつける貴子。
蒼嶋自身もあまり乗り気ではない様子だ、あまりいい話ではないのだろう。
「いや、さっきの部屋でブイツーとかなんとかに刃向かった威勢のいい兄ちゃんとセクシーダイナマイツな姉ちゃんがいただろ?
姉ちゃんのほうは名前はわかんねえけど、兄ちゃんのほう確かルルーシュっつったっけ? アイツを探してみるのもありだと思うんだ」
見ず知らずの人間に協力を求める、危険な賭けではあるがそれしか手段がないというもの現状である。
「ま、それしかないんならそうするしかないでしょ。ウダウダしてても何も起こらないわよ」
気がつけばスイカを一玉平らげていた二人。ひとまずの行動方針が固まったところでようやく腰を上げた。
「あー、そうだ。その持ってる銃っつかボウガンっつかまあ銃の事だけどな」
歩き出そうとした貴子を蒼嶋が引き止める。左手で銃の形を作り貴子の前へ突きつける。
「弾を込める必要のない、いわば魔法の銃ってヤツでな。かといって迂闊に撃ちまくるのも危険だぜ?
ハズレも時々あるが大体は一回引き金引くだけで三発四発はひねり出されるからな、気をつけとけよ」
蒼嶋は貴子の持っていた銃を知っているらしく、銃が持つ破壊力を簡潔に伝えた。
「そう、それと……」
蒼嶋はまだ何かあるらしく今にも動き出そうという貴子を再び引き止める。
「貴子さんっつーのも、なんか呼びにくいから仇名かなんかで呼んでいいか?
例えば………………」
わずかな沈黙の後、頭に電球でも浮かんだのか物凄くうれしそうに蒼嶋はその名を呼んだ。
「ちぃちゃん。っつーのはどうよ?」
流石の貴子もため息しか出てこなかったようだ。
「……あたしの仇名より、アンタの頭の心配したら?」
嘲笑を交えながら、そう言い放つと貴子は颯爽と船長室を後にした。
一方、蒼嶋は相当自信満々だったのか貴子の言葉の後、少しの間呆然としていた。
ふと、自我を取り戻した後急ぎ足で貴子を追う。
「ちょ、待、待て! ちょ、待てよ!」
慌てた彼が、何もない場所に引っかかり転倒したのは言うまでもない。
【一日目/深夜/J-1 座礁船内】
【蒼嶋駿朔(男主人公)@真女神転生if(ゲーム)】
[装備]逆刃刀@るろうに剣心
[支給品]支給品一式、どんと来い超常現象全巻セット(なぜベストを尽くさないのか付)@TRICK
スイカ(残り5玉)@スクライド
[状態]健康
[思考・行動]
基本:ブイツーだかなんだか知らんがムカつく野郎はぶっ飛ばす
1:千草とひとまず行動。ルルーシュ、セクシー姉ちゃん(C.C.)を探す。
2:狭間は相変わらずの様子ならもう一回ぶっ飛ばす
3:一緒にブイツーだかをぶっ飛ばす仲間を集める
※アキラルートED後の参戦
【千草貴子@バトルロワイアル(小説)】
[装備]ブラフマーストラ@真女神転生if、鉈@ひぐらしのなく頃に
[支給品]支給品一式、織田のバイオリン@バトルロワイアル
[状態]健康
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗るつもりはない……?
1:蒼嶋とひとまず行動。ルルーシュ、蒼嶋の言うセクシー姉ちゃん(C.C.)を探す。
2:三村と合流するべきか?
[備考]
※本編死亡後より参戦。
投下終了です
名前のネタは出られなかった実写の主役君から借りることにしました。
何かあればどうぞ。
乙。
……小説版の貴子って映画版みたいな電波めいた台詞言うようなキャラだったっけ?
電波じゃない。
ピーこれは警告ですは違和感ある。
おっと……映画版だけの台詞だったか。
>>453の
「ピー、これは警告です。ちょっとでも動いたら首を掻っ切るわよ。
を
「動かないで、ちょっとでも動いたら首を掻っ切るわよ。
に変更します。
ルート云々はあまり良くわからないのでとりあえずルートAに寄せておこうと思います。
460 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 09:36:13 ID:u6RBkyUA
乙です。
昨日の夜俺が寝た後2つ投下来てる
2人とも乙!
奇しくも同じ真女神転生ifのキャラの話か
男主人公はなんかほのぼのしちゃってるけど
ハザマイデオが命狙って付けねらってるんだな
これから先のフラグがビンビンに立ってて先が楽しみだ
投下乙!
さて、今日は休みだしwiki編集でもするか
とりあえず今まで投下された話に分岐なんてないんだから
全部Aルートってことでまとめればいいんだよな
もし分岐が来たらそこまでの話をコピーしてその分岐話を足したBルートとかつくればいいか?
お、乙です!
うーんどうだろう
よくある「投下順」と「時系列順」の2つの目次を
「投下順」と「ルート別」に変えればすっきりするのかな?
で、「ルート別」の中で各ルートごとに時系列順に並べるとか
ただ、分岐してもリレーされずに1話放置がほとんどだって聞くし
すぐにB,Cって増やすよりはA-1、A-2って番号のほうがいいかも
なるほど
今ある本編SS目次・時系列順を本編ss目次・ルート別からのリンクにしてしまうってことか
確かにいっそそのほうがまとめやすいのかな?
今は分岐ないけど確かに分岐したら
時系列順っていったいどこの時系列だよってなるしな
確かにそうか……
ちょっとwikiいじってみよう
ちょっと蒸し返す事になるかもだけど、ルルーシュの話の修正願いはどうなったんだろう…
このままだとグダグダになりかねないから聞いておきたい
俺はギアスしらないからよくわからんけど
結局参戦時期の時点でのルルーシュがvvのことを知ってるか知らないか確証が誰ももてないんだろ?
もう知ってたみたいです、でいい気もする
>>469 IDの出ない板で議論って正気か!?そこの人達
交流所はあくまで「余所」
余所の見解で自ロワの行く末を決めるもんじゃありません。
議論したいなら自ロワのしたらばで議論すべきでしょ。
どうみても荒らしなんだから放っとけ
質問なんだけど、現在の予約の中で死亡者と一緒に予約されてる、
ロロ、五ェ門、シシオって、死者発生ルートではまだ未予約って認識で良い?
いいんじゃないかな
つーかそんな面倒な予約なんて入ってたのか
>>471 しかしその余所でめちゃくちゃ言われてるなw
まあこっちが荒れなきゃいいけどw
右京、L投下します
「こんな事が、許されると思っているのですか!!」
人気がまるで無い廃洋館の一室。
そこで、杉下右京は顔を小刻みに震わせながら声を荒げた。
今、彼の怒りは頂点に達していた。
幼い少女を衆目の元殺害し、あまつさえ自分を含めた多くの者達に殺し合いを強要させる。
これは今までに対峙してきたどの事件よりも残酷であり、そして凶悪と言ってもいい。
V.V.は右京の琴線に完全に触れてしまっていたのだ。
「……V.V.さん、今あなたには私の声が聞こえている筈です。
ですからこれだけははっきりと言っておきます」
右京はしばしした後、視線を窓の外へと向ける。
気持ちが多少は落ち着いたのか、声のトーンは落ちて顔の奮えも消えている。
されど、その心中の炎は消えず。
彼は静かに、そして心強く、この殺し合いを何処かで確実に見ている、この声を確実に聞いているV.V.に向けて宣言した。
V.V.への反逆の意思表明―――宣戦布告である。
「人の命より価値のあるモノなんてないんですよ。
そしてあなたはそれを奪い、今もなお弄んでいる……僕はこの犯行を許せません。
この手で必ず止めてみせますよ」
殺し合いは絶対に止める。
そして、V.V.を追い詰めこの手で逮捕する。
はっきりそう告げると、右京は視線を部屋の中へと戻す。
とりあえずは、これからの方針を決めねばならない。
まずは状況を確認すべく、机の上に置かれたデイパックへと手を伸ばす。
「地図にメモ帳、筆記用具と……これは参加者の名簿ですね」
右京は真っ先に名簿を開き、参加者数と名前とを確認する。
親切な事に、数は総勢65人と名簿の一番下に書いてあった。
これは決して少ない数ではなく、右京は心中穏やかではなかった。
「……亀山君……」
そんな右京へと更なる揺さ振りをかけてきたのが、亀山薫の名前であった。
彼は大切な部下であり、そして相棒でもある。
最初に広場でその姿を見かけた時から覚悟はしていたが、改めて見せ付けられるとやはり辛いものがある。
しかし……同時に、不謹慎ながらも心強さも覚えた。
亀山もまた、この殺し合いを止める為に動いているに違いないからだ。
そして不幸中の幸いというべきか、彼以外には知っている名前は一つも無かった。
ならば、当面の目標は一つ―――協力者を募りながら、亀山との合流を図る事。
(そうなると、亀山君が目指しそうな場所は……ここですね)
続けて地図を開き、右京は亀山が目指すであろう場所へと目をつける。
そこは自分達に共通する職場―――警察署。
彼がここを目指す可能性は極めて高く、仮にそうでなかったとしても人はそれなりに集まるだろう。
それに上手くいけば、会場内の詳しい情報を得られるかもしれない。
この廃洋館から少々距離はあるが、それでも向かう価値は十分にある。
(さて、他には何があるでしょうか)
右京は肝心の支給品を確認しようと、デイパックに手を入れようとする。
しかし、その瞬間……不意に彼の耳へと、ある物音が聞こえてきた。
ギィッ……
「!!」
古い建物だからこそ生じる、木製廊下の軋む音。
右京は作業を中断し、入り口へと素早く視線を移した。
注意深く耳を傾けてみると、その音は断続的に聞こえてくる。
どうやら、何者かがこの洋館内を徘徊しているらしい。
そして音から察するに、相手は一人だけ……右京はしばし考えた後、背後の窓を開けて廊下の外へと声をかけた。
「すみません。
どうやらお一人のようですが、あなたはこの殺し合いに乗っていますか?」
右京の声に反応し、音がピタリと止まる。
同時に右京はすぐに外へと逃れられるよう、窓に手をかけた。
ここは幸いにも二階、飛び降りようと思えば飛び降りられる高さである。
後は相手の出方次第……右京が息を呑むと、その直後に相手が返答をしてきた。
「安心してください、私は殺し合いには乗っていません」
「む……?」
相手は右京に対し、殺し合いには乗っていないと告げてきた。
しかし、だからといってすぐに警戒心を解く様な真似はしない。
油断したところを襲うというのは、奇襲の常套手段である。
そして……更にもう一つ、右京の警戒心を煽る妙な点が相手の返答にはあった。
殺し合いに乗っているかいないかという内容以前に、明らかに異様な要素が。
「一つ、よろしいですか?」
「はい、なんでしょうか」
それは相手の声そのもの。
やけに音が篭っており、その上に声の質が何かおかしい。
はっきり言ってしまうと、明らかに肉声ではないのだ。
ならば何なのかというと……右京は既に当たりをつけている。
「もしかして、マイクを使っていらっしゃるのでしょうか?」
「ええ、私の支給品です。
使えるものは最大限使うべきだと思いまして」
「なるほど、確かにその通りです」
相手は、マイクを介して右京と会話しているのである。
そして音量が然程大きくないところから察するに、拡声用ではなく変声用だろう。
声を変える理由は分かる……互いに姿を見せていない今、声しか相手の判断材料がない。
このまま姿を見せずに離れ離れとなる可能性もある以上、これは良い手段である。
しかもこの相手、少し考えれば分かる事とは言えど、手の内を暴かれたのにまるで意に介していない。
僅かでもいいから焦りが出てくれば、付け入る隙もあるのだが……見事なものである。
「まだお姿を拝見するわけには、勿論いきませんよね?」
「ええ、それはあなたも分かっている筈です」
「その通りです。
出会い頭に銃撃なんていうことになったら、たまりませんから」
「だからこうして、手の内の探りあいと」
「ええ、だから次にお互いがやるであろうことも分かっている筈です」
「名前、ですね」
「その通りです」
ならばここは、せめてもう少し相手の情報を引き出したい。
中でも、特に知っておきたいのは相手の名前……右京は即座に行動へと移る。
「あなたのお名前を、お聞きしてもよろしいですか?」
「ええ、そちらからお先に教えていただけるのであれば」
返ってきたのは、やはり予想通りの答え。
あくまで、先手を此方に打たせるつもりらしい。
ならばここは、すっぱり言ったほうがいいだろう。
下手に会話を長引かせて相手の機嫌を損ねてしまっては、それはそれで厄介である。
右京は声の主に対し、簡単な自己紹介をする。
「僕は警視庁特命係、杉下右京と申します」
偽名を使おうとも考えたが、それは放送の時に危険が生じる。
相手にばれた場合、抱かれる不安感は並大抵のものでは無いだろう。
本名を教える事には勿論リスクもあるが、ここはこれが最善である筈。
そう判断し、一か八かの行動に移した。
―――しかし、この自己紹介は思わぬ形で功を奏する事となった。
「……分かりました。
右京さん、あなたは信用できる人のようですね」
突然、声の主の態度が変わった……警戒心が一気に消えたのだ。
自己紹介をしただけで警戒心が解けるとは到底思えない……しかし。
もしも相手がこちらの素性を知っているのであれば、話はまた別になる。
そしてこの反応は、前々から自分の事を知っていた者のそれではない。
恐らくは……『今』知ったのだ。
「どうやらあなたには、参加者のプロフィールが記された何かが支給されたようですね」
「その通りです。
おかげで、あなたが殺し合いには乗っていないという確証が取れました」
「その支給品に書かれた情報が、偽りであるという可能性はないのでしょうか?」
「それはありえません、私に関する情報は全て本物ですから」
「成る程、分かりました。
それでは、そちらのお姿をお見せしてもらって、よろしいでしょうか?」
「ええ、もう警戒する必要はなさそうですからね」
支援!
支援
お互い、相手に抱いていた警戒心は消えていた。
これでもう、姿を見せ合っても問題は無いだろう。
そう判断し、右京は窓の手すりから手を離した。
そしてそれに合わせるかのように、声の主が部屋の中へと足を踏み入れてくる。
「はじめまして、右京さん。
私はL、探偵です」
声の主―――Lは、右京に対し深々と頭を下げる。
そんなLへと、右京も同様に頭を下げて一礼をする。
一見、何てことはない普通の自己紹介である。
……が。
もしもこの場に第三者がいたならば、この光景が実はかなり異様である事にすぐ気付くだろう。
何故ならば、Lの姿があまりにも奇妙だからだ。
今にも襲い掛かってくるのではないかと言わんばかりの、極端な猫背。
そして何より、その顔に装着されたフルフェイスの黒い仮面。
こんな露骨に怪しい人物が目の前に出てくれば、普通は驚いて当然。
だが……右京は全く動じていない。
それどころか、まるでそんな怪しい要素など最初から無かったかのように、普通にLと接しているのだ。
しえん
「その仮面が、先程言っていた支給品ですね」
「ええ、拡声器とボイスチェンジャーが付いた優れものです。
強度もそれなりにある様なので、こうして防具として着けています」
「中々便利な物をお持ちで、羨ましいです。
僕はまだ、自分の支給品も確認できていませんから」
「そうでしたか、あの余裕は何か対処法があってのことだと思ったのですが。
支給品は使わずにこの場を切り抜けようとしていたとは、予想外でした。
恐れ入ります」
「こちらこそ、あなたの手腕には驚きました。
まあ、とりあえず立ち話もなんですから、どうぞお座りください」
「ありがとうございます」
二人はテーブルを挟み、椅子へと腰掛ける―――もっとも、Lは椅子の上に体育座りという方が正しいが。
非常に頭が切れ、それでいてかなりの変わり者。
どことなく似ている、そして色々な意味で常人離れした二人の出会いであった。
詩音
【一日目深夜/D−5 廃洋館】
【杉下右京@相棒(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ランダム支給品(1〜3)
[状態]健康
[思考・行動]
1:警察署を目指し、亀山と合流する
2:Lと情報を交換する
3:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する
※劇場版終了後からの参戦です。
【L@デスノート(漫画)】
[装備]ゼロの仮面@コードギアス
[支給品]支給品一式、参加者詳細名簿、ランダム支給品(確認済み)(0〜1)
[状態]健康
[思考・行動]
1:右京と情報を交換する
2:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する
支援ありがとうございました、投下終了です。
とりあえずルートに関しては、全ルートに寄せます。
投下乙
これはいい頭脳コンビw
しかしゼロの仮面はどう見ても変質者装備だな・・・
投下乙です!
予約のときからこれはいい頭脳派コンビだと思ってたけど
さらにゼロの仮面とか詳細名簿とかうまく使えそうなものが目白押し!
このコンビは情報・知略コンビとしてこの先突っ走ってほしいね
乙
腹のうちの探り合いがかっこよかった
投下乙です!
Lのあの容姿にゼロの仮面ってめちゃくちゃ不審者だなw
この頭脳派コンビは期待
投下乙。
なんという対主催二大頭脳派…。
このコンビは間違いなく期待できる……。
ところで質問なんだが分岐制の"寄せる"の意味がよくわからないから、ちょっと教えてくれ。
例えばAというSSが投下されて、それをOPに寄せるとすると、
OP→A
になるわけだろ? で、これに更にB、C、Dと続くとするよな?
で、ここで寄せ方なんだけどBはAに寄せると言い、CとDは全ルートに寄せると言うとするだろ?
この段階ではまだ。
OP→A→B→C→D になるんだよな?
で、この後のEがAが気に入らないからつって同じキャラ使って違うルートを作って、OPに寄せると、
OP→E
になるだろ?
この場合、Aとそれに寄せているBはEのルートとは別のSSとなるとして。
全ルートに寄せてるCとDはEと同じルートにもなるって解釈でいいの?
OP→E→C→D こんな感じ。
あと、この後のFが全ルートでなくDに寄せる形になった場合は、
OP→A→B→C→D→F
OP→E→C→D→F
になるって事でいいの?
分岐として剣心、ロロを投下します。
――人を救うために人を捨てた。
――数多くの人を殺めてきた。
――気がついた時、自分は既に名前ではなく一つの言葉として覚えられた。
――人斬り。
どんなに大義名分を掲げようが自分がして来た事はただ単純にそれだけ。
だからこそ、来るべき新時代の時には『不殺』の誓いを立てた。
それが、ある一人の剣客の人生。
だが、これから起こる出来事の全ては彼の誓いを嘲笑うかのようだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
――拙者は確か薫殿に使いを頼まれて大根を買いに行ってた筈でござるが?
(おろ〜…なんだか頭がぼやぼやするでござるな)
今朝の事を思い返してみるでみるでござる。
あれは門の上に上り、降りられなくなった剣路を弥彦に下ろしてもらうのと
ついでに世話も任せて晩に使う大根を買いに行っていたはずでござるが…
「おろろ?」
気がつけば拙者は、何故このような場所にいるのでござるか?
あたり一面はまるで雪景色のように真っ白でござるが、果てがまるで見えないでござる。
拙者と同じように辺りを見回している者やまだ倒れている者もいるようで…
「やあ、お目覚めかな」
…そのあとの光景はできれば思い出したくも無いでござる。
異人の少年(そういえば日本語でござったな)にぶいつぅと呼ばれていた子供。
あの子供が犯した行為。
あどけない少女の首が落ちていく光景。
それをただ見ているしかなかった拙者自身。
とりあえず今までの投下作品を全部wikiにまとめました
今まで分岐はないので全部Aルートとしてあります
今後投下する人で、今のメインルートから分岐する気が無い人はAルートに
分岐する人はどこから分岐かというのを書いてもらえればいいと思います
あの後、拙者は目も眩む閃光に包まれたと思うや、
いつのまにか先ほどの白い場所とは別な所に立っていた。
不思議な気持ちは確かにあるでござるが、それよりも
「拙者は許す事ができない」
自分でも感情が高ぶっている事を理解できる。
『不殺』の形でもある逆刃刀は弥彦に託し、既にこの手に無くとも。
最早、飛天御剣流をまともに使う事のできない拙者の身体でも。
――拙者はこの争いを止める。
殺し合いを肯定する事は拙者には如何あってもできない。
この場には拙者の他にも連れて来られた者は大勢いた様でござるが、
まずはその者達を探すのが得策でござるね。
それにしても…
「ここは阿蘭陀や亜米利加なのでござるか?」
辺り一面を派手な装飾が煌いていて、見た事もない機械がごろごろしているでござる。
確か、天井のあれはしゃんでりあとかいう西洋の灯りだったと思うでござるが、
先ほど試しに動かしてみた機械は中央の目印がぐるぐると動いて西洋の金貨らしきものを
いっぱい出したでござる、が用途がいまいち…
「おろ〜、目が回りそうでござる」
拙者はあまり西洋の文化には詳しくはないでござるから、こういった場所は苦手でござる。
取りあえず外に出るでござるか。
…その前に、
「そこに隠れている者!出て来い!」
気配を絶っているようでござるが、拙者からみればまだ未熟。
先ほどからこちらの様子を伺っていたようでござるが。
「す…すいません、あの、あなたがこの殺し合いに乗ってる人なのか分からなかったから」
柱の影から出てきた少年は見たところ、弥彦と同い年かその下くらいでござるか?
西洋の服を着た異人の少年は気弱そうな態度をとっているでござるが、
「お主、素人にしては気配の絶ち方が出来過ぎているでござる。何者でござるか?」
しえええええーん!
この少年に隙を見せる事はできない。
この者からは志々雄真実の所にいた宗次郎と似たような危うさを感じる。
無刀ではござるが、構えを取り、少年を睨む。
「…何者なのかは僕にも分かりません、僕には過去なんてありませんから。
今、僕がすることは兄さんを守る事だけです。」
気弱そうな態度を止めた少年がそう言いながら、一振りの刀を抜き放つ。
――妖刀でござるな。
少年の持つ刀、刀身は血に濡れたかのように紅く妖しいきらめきを放っている。
新井赤空殿が作ってきた物にも匹敵するような業物でござるが、何かが違うでござるな。
まるで、人の技によるものではないような。
少年がこちらに踏み出してくる。
「許してくださいとはいいません、僕の事は憎んでくれて構いません。
全ては兄さんの為ですから…」
――来る!
少年が構えは取らずに刀を片手にこちらに向かって駆けて来る。
袈裟懸け気味に放たれた一撃は身を捩り、目の前を通り過ぎていく。
間髪入れずに放たれた横薙ぎを後方に跳ぶ事で避ける。
後方に跳んだことで拙者がすぐに体勢を変える事ができないと踏んだ少年が、
距離を詰め、縦に真一文字に斬りつけようとしてくる、
「オォォォォッ!」
本来は拙者の技ではない、拙者は既に飛天御剣流を使えない。
だから、今から拙者が使うのは飛天御剣流ではない『活人剣』である、
神谷活心流の技でござる!
「奥義の防り・刃止め!!」
真一文字に放たれた一撃を両手の甲を使って受け止め、
そのまま刀身を滑る様に距離を詰め、少年の顔を殴りつける。
拙者に防がれるとは思いもよらなかったのであろう。
少年は碌に防ぐ事もできずに拙者の拳をもらい、刀を取り落として倒れた。
このまま少年にこれを持たしてはいけない。
すぐに刀を奪わなくては…
「…なっ!?」
確かに拙者の足元に落ちていたはずの刀が消えている。
それに先ほどまで倒れていたと思っていたはずの少年が立ち直り、離れた場所でこちらを見ている。
速さではない、何か別の力?
「油断しました。…でも、いくらあなたが強くても…」
少年の姿が消え…
「僕の敵ではありません」
背後から声が聞こえた。
――熱い。
拙者の身体には刀が突き立てられている。
斬られた事自体に全く気がつく事ができなかった。
ごぼり、と喉から血が漏れ出し始める。
少年が拙者の身体から刀を引き抜くのを感じる。
ある意味、刀によって支えられていた拙者の身体は力無く倒れていくしかない。
拙者が倒れるのと同時に少年が離れていく足音が聞こえる。
「…ま…つで…ござる」
少年の足音が止まった。
「お主は…兄の為に……と言っていた…」
「…えぇ。だから許してほしいとは言いません」
少年の声。
違うでござる。
「人が…誰かを……守る…為に…人を…殺めても…」
その先には、
「…ただ…血で…汚れた…自分が…いるだけで……ござるよ」
そう、その先には人斬りがいるだけ。
ただ、それだけでござる。
「………………」
少年が拙者の問いかけに答えずに離れていく。
血が流れすぎたでござるな。
薫殿、晩のお使いは買ってこれそうに……
って投下来てる支援
――心臓が激しく高鳴っている。
「…ウッ!ゲボッ…グェェッ」
嗚咽が競り上がり思わず、その場に吐き出してしまった。
自分のギアス。
他者の体感時間を停めるギアスの副作用、それは使用中は自身の心臓を止めること。
だが、それでも2回使った程度でここまでの症状を引き起こす事は今まで無かった。
「ハァ…ハァ…V.V.…何か仕掛けたのか?」
思えば、あの時、兄さんは確かにギアスを使って奴の周りの兵士に『死ね』と命じたはずだった。
なのに効果は無かった。
可能性としてはギアスキャンセラーもあるが、
今の自分の状態を考えるとそれだけとも考えられない。
「…早く、兄さんを見つけないと」
まだ、ふらつく身体を何とか保たせながらカジノの出口に向かう。
―…ただ…血で…汚れた…自分が…いるだけで……ござるよ
あの人が最後に言っていた言葉。
それでも、
「僕には兄さんしかいないから」
ギアス嚮団の暗殺者として育てられてきた僕に兄さんは思い出をくれた。
例え、それが僕を利用するためだったとしたって構わない。
でも、兄さんとの日々は…あれだけは嘘じゃない。
あの日々のおかげで僕は初めて人間になれた。
今の僕は誰の道具でもない、全て僕自身の意思だ。
返り血で汚れようと兄さんを生かすためなら僕はそれで構わない。
【一日目深夜/H−2 カジノ】
【ロロ・ランペルージ@コードギアス】
[装備]妖刀ニヒル@真女神転生if
[支給品]支給品一式、ランダム支給品(0〜1)
[状態]激しい疲労
[思考・行動]
1:ルルーシュの生存
2:他の参加者の抹殺
*19話ルルーシュ粛清前からの参戦です。
ロロの体感時間を止めるギアスは負担が増大しており、
数回の使用でも死に至る可能性があります。
【緋村剣心@るろうに剣心 死亡】
投下乙
刀無しでボロボロの剣心じゃさすがに無理ゲーだわなw
ロロもただでさえ制約多いギアスなのに更に制限かけられて長生きできそうにないな
投下終了です。
この場合はライト・ライトに寄せるという事で良いんでしょうか?
あと、剣心についてですが原作最終巻からの参戦でした。
投下乙!
えっと、このSSは「ライト・ライト」から分岐っていう形でいいのかな
>>507 おkです
じゃあAルートからライト・ライトで分岐という形でwiki収録しますね
とりあえずA-2ルートとでも名前付けるか…
投下乙です!
>>496 どういう表記で寄せるのかが混乱の原因だから
寄せるときはルートに寄せて、自分が分岐をつくるときには細かく指定でおkじゃないか?
この新ルートは、Aルートのライト・ライト以降に登場したキャラは、まだ出て無いってことでいいのかな?
>>511 その後は私がトーキョーに送ってあげる以降に戻すと言う形にしたいのですが、
他の方の意見も参考にさせてほしいです。
全ルートに寄せている作品は氏が希望せんでもそうなるよ。
細かいことですが、『以降』ということはその作品を含むと解釈してよろしいですね?
それであってます。
紛らわしい書き方をして、すみません。
あと一つ、非常に答えにくい質問かも知れませんが、今回このような形で他の方が書いたSSを強制的に破棄することを希望された理由は何でしょうか。
敢えてきつい言い方をしていますが、分岐SSを描くということは、分岐された方から見れば、自分自身を認めてもらえなかったことであり、
貴方のSSはその方のSSを破棄してほしい、と言っているに等しいと思っています。従来のリレー小説では、ここに双方の理解があると思っていますが、
今回、元のSSを書いた方への説明があるとは思えません。
念のため、この点をお伺いしてもよろしいでしょうか?
仮投下来てるようなのでPCの人、誰かお願い!
『このSSとはリレーしたくない』って意志表示だろ
11 :コードアルター 反逆のカズマ ◆ew5bR2RQj.:2008/10/04(土) 16:19:06 ID:7pAum15Y0
現在規制中なので、こちらに投下します
12 :コードアルター 反逆のカズマ ◆ew5bR2RQj.:2008/10/04(土) 16:19:39 ID:7pAum15Y0
時刻は深夜、太陽に代わりに満月が殺戮の舞台を照らしている。
が、廃洋館付近は鬱蒼と生い茂る木々に阻まれ、射す月光は微弱な物となってしまっていた。
つまり周囲は闇、たまに吹く風によって葉が擦れる以外に何も変化は無い。
いや、無いはずだった。
一人の少年が、この森に訪れるまでは。
「気にいらねぇ……」
右手にグローブを嵌めた少年―――カズマは走りながら呟く。
言葉通り、カズマは現状が全て癇に障った。
この殺し合いに参加させられる数日前、カズマは因縁の相手であった劉鳳と決着と付けた。
お互いの力を全て出し切り、出し切った後も戦い続けるという苛烈を極める喧嘩であった。
そして数日後、これから再び戦いの世界に身を投じようか
というところで、突然わけも分からぬ世界に飛ばされたのだ。
これだけでカズマにとっては、憤怒の対象に当たるのだが
さらに拍車をかけたのが、この殺し合いの主催者である白髪の子供―――V.V.だ。
他者を見下すような態度で、高圧的な発言を連発する。
挙句の果てに見せしめとして、一人の少女を殺害したのだ
「全く……気にいらねぇ!」
体内に渦巻く怒りを、右腕に込める。
同時に周囲の木や地面が削り取られたように消滅し、代わりにカズマの右腕が装甲に包まれた。
それにより一部が変色した髪が逆立ち、背中からは三本の赤い羽根が生え始める。
これがカズマの元の世界、ロストグラウンドの新生児が低確率で所持する特殊能力。
自らの精神力で周囲のあらゆる物を分解し再構成する力、アルターである。
「くそッ!」
装甲に覆われた右拳を、傍にある木に叩き込む。
カズマのアルター、シェルブリットは使用者の拳の威力を何倍にも上昇させる効果がある。
そのため普段ならどう足掻こうと絶対に倒せない大きさの木も、簡単にへし折ることが出来た。
しかし怒りは収まることは無い、それどころかさらに膨れ上がっていく。
「くそッ! くそッ!」
力任せに木を薙ぎ倒していくカズマ。
その様相を何も知らない人間が見れば、気が狂ったとでも勘違いしてしまうだろう。
事実、冷静な人間であれば真っ先に行うであろう荷物確認をまだしていない。
ここまでカズマが大暴れしている理由は至って単純。
短気で喧嘩っ早く束縛されることを嫌うカズマにとって、この状況は激昂するに値する状況だったのだ。
13 :コードアルター 反逆のカズマ ◆ew5bR2RQj.:2008/10/04(土) 16:20:20 ID:7pAum15Y0
「ハァ……ハァ……いつまでもこんなことしててもしょうがねぇか……」
倒した木が二桁に突入しようかというところで、カズマは拳を解く。
木々に対する八つ当たりが、無駄であることに気づいたのだ。
「気に入らねぇならぶっ潰すまでだ……ずっと前からこうしてきたじゃねぇか」
解いた拳を、再び拳を握り締める。
ロストグラウンドで生活していた頃から、気に入らないものはこの拳で粉砕してきた。
それならば、ここでも変わらない。
いけ好かないあの餓鬼の愉悦に歪んだ顔に、自慢の拳を叩き込む。
例えそれが、どんなに困難だったとしても関係ない。
カズマにとって、困難など問題では無いのだ。
行動方針は今ここに決定した、ならば後はただ突き進むのみである。
「そのためにはまず山を降りるとするか……こんなところには何も……ッ!?」
下山する決意を固め周囲を見渡した時、付近に誰かが倒れているのが視界に入る。
距離にしておよそ20メートル、木々が折れ若干視界が良くなったために発見することが出来たのだ。
「…………」
倒れている人間を凝視しながら、どうするかを考える。
もしかしたらあれは知り合いかもしれない。
しかし暗闇では、その人物の顔を確認するのは不可能だ。
そもそも仮にあれが知り合いだったとしても、手を借りるつもりは無い。
カズマには他者を頼るという選択肢は存在しないのだ。
だがあれが、あのいけ好かない餓鬼の関係者だったなら別だ。
情報を聞き出すことで、一歩近づくことができる。
カズマは猪突猛進ではあるが、情報の大切さくらいは理解しているし、わざわざ遠回りをする道理も無い。
そう判断したカズマは、人影に近づくことにした。
14 :コードアルター 反逆のカズマ ◆ew5bR2RQj.:2008/10/04(土) 16:21:26 ID:7pAum15Y0
倒れていたのは、一人の少女だった。
明るい緑色の髪にスレンダーな体、そして見覚えのある紅白に彩られた服装と首輪。
目立った傷も無く呼吸も満足なところを見ると、まだこの空間に送還されてから目覚めていない参加者だろう。
見た目だけではあの餓鬼の関係者か判断することは出来ないから、話を聞くしかない。
カズマは倒れている少女を起こすことにした。
「おい、起きろ!」
耳元で大声で叫びつつ、少女の肩を掴みグラグラと揺らす。
こんな乱暴に起こされれば、誰だってすぐに目を覚ます。
少女も例外では無かった。
「……ゆた…………か……」
「お目覚めか、嬢ちゃん?」
カズマは口端を吊り上げながら、少女に目覚めの一声をかける。
少女はその表情を見て、寝ぼけていた意識を完全に覚醒させた。
それと同時に、顔面が蒼白に染まっていく。
何故なら目の前の男に恐怖を抱いているのだ。
無理もない、目を覚ました瞬間に見知らぬ男が立ちはだかっているのだから。
「俺は別にあんたに何かしようだなんて思っちゃいねぇ、ただ情報が欲しいだけだ」
カズマは両腕を肩から離し、吐き捨てるように呟く。
仮にこの少女は危害を加えてきても押し負ける気は無いが、それでも抵抗されると面倒だ。
相手にこれ以上恐怖を与えないように、とカズマは対応する。
「……それは本当ですか?」
「本当だ」
「……本当に本当?」
「しつこいぞ!」
痺れを切らしたカズマは、少女に向けて怒鳴り散らす。
思わず竦み上がる少女だが、目の前の男が危害を加える気がないことは理解したようだ。
そもそも危害を加える気があったのなら、わざわざ目覚めさせる必要が無いのである。
「よかった……」
少女は心底安心したような表情を浮かべ、溜め息を吐く。
カズマもとりあえずは面倒事にはならなかったと、胸を撫で下ろした。
「ふぅ……それでよ、ちょっと聞きたいことがあるんだが……っておい!?」
カズマは冷静になった少女から情報収集をしようと切り出したが、少女の取った思わぬ行動に思わず言葉を引っ込める。
「ゆたか……ゆたかぁ……」
目の前の少女が、いきなり泣き出したのだ。
支援
15 :コードアルター 反逆のカズマ ◆ew5bR2RQj.:2008/10/04(土) 16:22:41 ID:7pAum15Y0
「ゆたかが……ゆたかが……!!」
「おい、おい!?」
少女で擦れる声で「ゆたか」と繰り返し、涙を流し続ける。
カズマの声にも応えず、ただひたすらに。
声をかけても無駄だと判断したカズマは、暫く少女を眺めていることにする。
そしてそれを続けているうちに、先ほどから引っ掛かっていた事柄に関する答えを見つけ出した。
目の前の少女が着ている服は、見せしめに殺害された少女の物と全く同じという答えを。
(そういうことか……)
この少女は見せしめに殺害された「ゆたか」と言う少女の知り合いで、「ゆたか」の死に対して悲しんでいるのだ。
それに気づいたカズマは、視線を空に浮かぶ満月に逸らし、そのまま暫く見上げ続けた。
遠い昔を思い出しているような、どこか悲しげな瞳で。
「ごめんなさい……急に泣き出してしまって」
二人が出会ってから数分が経過し、少女がようやく涙を止める。
いや、実際には会話が可能なレベルまで立ち直ったと言った方が正しいだろう。
「気にすんなよ。それで、そろそろこっちの話をしてもいいか?」
カズマは少女の傷になるべく触れないように、話題を転換する。
ぶっきらぼうかもしれないが、これがカズマなりの少女に対する気遣いだった。
「はい……何でしょうか?」
「俺はこれからあのいけ好かない餓鬼を一発殴りに行くんだが、何かあいつについて知ってることはあるか?」
ここで本来の目的である、V.V.についての情報収集を開始する。
「……すいません……私は何も……」
少女は申し訳無さそうに俯いて、一言そう告げた。
それを聞いたカズマはガックリと項垂れ、舌打ちをする。
「ハズレか、ならもう用は無ぇな」
踵を返し少女の元から立ち去ろうとするカズマ。
言葉通り情報が無い以上、これ以上ここで立ち止まる意味は無いのだ。
今気付いたorz
16 :コードアルター 反逆のカズマ ◆ew5bR2RQj.:2008/10/04(土) 16:24:27 ID:7pAum15Y0
>>15はミスです
「ゆたかが……ゆたかが……!!」
「おい、おい!?」
少女で擦れる声で「ゆたか」と繰り返し、涙を流し続ける。
カズマの声にも応えず、ただひたすらに。
声をかけても無駄だと判断したカズマは、暫く少女を眺めていることにする。
そしてそれを続けているうちに、先ほどから引っ掛かっていた事柄に関する答えを見つけ出した。
目の前の少女が着ている服は、見せしめに殺害された少女の物と全く同じという答えを。
(そういうことか……)
この少女は見せしめに殺害された「ゆたか」と言う少女の知り合いで、「ゆたか」の死に対して悲しんでいるのだ。
それに気づいたカズマは、視線を空に浮かぶ満月に逸らし、そのまま暫く見上げ続けた。
遠い昔を思い出しているような、どこか悲しげな瞳で。
「ごめんなさい……急に泣き出してしまって」
二人が出会ってから数分が経過し、少女がようやく涙を止める。
いや、実際には会話が可能なレベルまで立ち直ったと言った方が正しいだろう。
「気にすんなよ。それで、そろそろこっちの話をしてもいいか?」
カズマは少女の傷になるべく触れないように、話題を転換する。
ぶっきらぼうかもしれないが、これがカズマなりの少女に対する気遣いだった。
「はい……何でしょうか?」
「俺はこれからあのいけ好かない餓鬼を一発殴りに行くんだが、何かあいつについて知ってることはあるか?」
ここで本来の目的である、V.V.についての情報収集を開始する。
「……すいません……私は何も……」
少女は申し訳無さそうに俯いて、一言そう告げた。
それを聞いたカズマはガックリと項垂れ、舌打ちをする。
「ハズレか、ならもう用は無ぇな」
踵を返し少女の元から立ち去ろうとするカズマ。
言葉通り情報が無い以上、これ以上ここで立ち止まる意味は無いのだ。
「……待ってください」
17 :コードアルター 反逆のカズマ ◆ew5bR2RQj.:2008/10/04(土) 16:26:00 ID:7pAum15Y0
「……なんだよ?」
投げかけられた声に対し、気だるげに振り向きカズマは返事をする。
「私は……私はこの先どうすればいいのですか?」
誰かに縋るようなか細い声で、カズマに問う。
無理も無い。彼女は昨日まで普通に学校に通い、日常を謳歌していたのである。
それが今日になっていきなり別の空間に飛ばされ殺し合いをしろと言われ、無二の親友まで殺害されたのだ。
これで不安にならないはずがない。
「…………」
カズマは顔だけ少女に向けつつ、質問の答えを思案する。
普段の彼だったら、「知るかよ、自分で探せ」の一声で終わらせてしまうだろう。
しかしこの少女だけは、何故か見捨てることが出来なかった。
「……あんた、あのクソガキがムカつくんだろ?」
日常のなんでもない会話のように、カズマは少女に問い返す。
少女は数秒考えた後、小さな声で「……はい」と答えた。
「だったら簡単だ、あのクソガキをぶっ潰す。それだけだろ」
顔を怒りに歪め、右拳を強く握り締める。
この答えは、最も単純にして今までのカズマの生き方を全て凝縮したようなものだった。
「……そんなこと……私に出来るんですか?」
「出来る出来ないが問題じゃねぇ、やるんだよ」
少女の不安げな質問も、強引に押し潰すカズマ。
この答えには、カズマの今までの生き様が全て凝縮されている。
つまりこの一言もまた、カズマの全てであった。
「……分かりました……私はゆたかの仇を討ちます……」
少女は少しの間考えた後、制服の裾で涙を拭い告げる。
その表情は、決意に満ち溢れていた。
「そうかよ、最後に言っとくぜ
一度こうと決めたら、自分が選んだんなら決して迷うな。選んだら進め。進み続けろ」
こう言い残し、カズマは再び前を向いて歩き出した。
「……あ、あの……」
18 :コードアルター 反逆のカズマ ◆ew5bR2RQj.:2008/10/04(土) 16:27:34 ID:7pAum15Y0
「ったく、今度はなんだよ!?」
苛立ちを露わにし、少女へ振り向くカズマ。
少女はその顔を見て一瞬だけ踏み止まったが、意を決して言葉を紡いだ。
「その……私は岩崎みなみと言います。
お願いがあるんですが……私も一緒に連れてってもらえませんか?」
少女―――岩崎みなみはカズマへと一歩近づき、カズマと同行したいと言う意思を示す。
「ごめんだね、誰かと馴れ合うなんて」
しかしカズマは、それを無碍に断ってしまった。
「……そうですよね……やっぱり私じゃ足手まといになりますから……」
みなみは悲しそうに俯き、自身の無力さを嘆く。
別にカズマは、みなみが足手まといになるからという理由で拒否したわけではない。
ただ単純にカズマという男は、群れることを嫌う孤高な性格であった故のことだ。
そのまま二人の会話は途切れ、カズマはそのまま立ち去ろうとする。
が、彼の心の中には、釈然としないものが残っていた。
このまま少女を見捨てるのは、自分自身の意義に反するとでも言うような。
(ったく……俺も変わったな)
カズマは心の中で自嘲し、みなみにも聞こえるように大声でこう言った。
「だけどよ、あんたが勝手に付いて来るなら俺は止める気は無いぜ
ただし、自分の身は自分で守れよ」
カズマの発言を耳にしたみなみは、虚を突かれた様に顔を上げる。
そして早足でカズマの傍へと近づいた。
「あ、ありがとうございます……えっと……」
「カズマだ」
「すいません……カズマさん」
「気にすんなよ、それよりとっとと行くぞ、いつまでもこんなところに居ちゃしょうがねぇ」
振り返らずにみなみと会話を交わし、再び歩き始める。
みなみもカズマの発言に無言で賛成し、その後に続いた。
支援
支援支援
支援
支援
猿さんか
じゃあ続きいくか
19 :コードアルター 反逆のカズマ ◆ew5bR2RQj. :sage :2008/10/04(土) 16:28:25 (p)ID:7pAum15Y0(10)
―――カズマがみなみを放っておけなかった理由。
それはみなみが、大切な人の死を悲しみ涙していたからだ。
みなみの姿はかつての因縁の相手を見ているようで、かつての自分自身を見ているようで。
どうしても放っておくことが出来なかったのだ。
昔のカズマしか知らない人間が今の彼を見たら、変わったと口にするかもしれない。
しかしこれが、様々な人間との出会いや死を体験し、そして乗り越えた姿だった。
――――――――――――――――――――――――
カズマと一緒に行動するようになったみなみ。
だが彼女は、V.V.の言ったある言葉を忘れていなかった。
『んーそうだね、何か願いも叶えてあげるよ』
(もし生き残ることが出来たら、ゆたかを――――)
そう考えた瞬間、背筋に冷たい物が走る。
しかし目の前で一歩先を進むカズマを見て、何とか押さえつけた。
ゆたかの蘇生を望むということは、このゲームの参加者全員の死を願うのと同等。
このゲームには初見の自分に対し親切にしてくれたカズマや、他の友人達も参加している。
それらを天秤に賭けることは、今のみなみには出来なかった。
―――森の中を進む少年少女。この二人の行く末はまだ誰にも分からない。
【一日目/深夜/C−4 廃洋館付近】
【カズマ@スクライド(アニメ)】
[装備]シェルブリット第一段階
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1〜3)未確認
[状態]健康、主催者に対する激しい怒り
[思考・行動]
1、主催者のいけ好かない餓鬼を殴る。
2、そのためにも、とりあえずは森を抜ける。
3、少しだがみなみが心配。
※参戦時期は最終回から数日後。
【岩崎みなみ@らき☆すた(漫画)】
[装備]無し
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1〜3)未確認
[状態]健康、ゆたかを失ったことに対する深い悲しみ
[思考・行動]
1、とりあえずはカズマに付いていく。
2、ゆたかの仇を取る。
3、V.V.の言葉も頭の片隅に留めておいてある。
20 :コードアルター 反逆のカズマ ◆ew5bR2RQj. :sage :2008/10/04(土) 16:34:07 (p)ID:7pAum15Y0(10)
投下終了です。
分岐についてはよく分からないので
最後に投下された「ミスター・スプラッシュマン」に寄せさせていただきます。
投下&代理投下2人乙!
みなみちゃんとカズマのコンビか
どっちもらしくていいねー
間に一本投下されちゃったけど、書き手さんどうするのかな?
普通にAルートってことでいいと思うよ
みなみがかわいいな
親友のゆたかが見せしめだったからどうなってしまうかと思ってたけど
敵を討つという方向で立ち直ったのか
これからが楽しみ、投下乙です!
543 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 19:10:28 ID:VujxlUF9
投下乙。
2人とも頑張れ
投下乙です
投下乙!
みなみ……カズマさんに出会えて良かったなー。
ゆたか死亡があったからどうなっちゃうのかと思ってたけどこれからが楽しみな良いコンビだ。
二人のキャラの魅力が良く引き出せていたと思います!
GJ!!
それと一応質問なのですがAルートに寄せるって事でいいんですよね?
10日乙です。
投下乙です!
みなみが立ち直ってよかったー
カズマと出会わなかったら落ち込んで自殺まがいなことしてもおかしくないもんな
投下乙です。
何回もロワに出てるカズマ、スタンスは相変わらず。
みなみは暗黒面に落ちないでやっていけるのか
ルルーシュの参戦時期、このままで通りますかね?
549 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 20:00:00 ID:zITV83AA
うぜー
はやく終了しようぜ
投下乙です。
自分に対しての質問がありましたので
自分なりの回答をしたらばの議論スレに書かせて頂きました。
>>550 回答ありがとうございます。
わざわざ答えにくい質問にご回答いただきましたこと、誠に恐れ入ります。
552 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 20:17:20 ID:zITV83AA
もう終了な
>>548 どうなんでしょうね?
申し訳ありませんが自分はギアス把握してないので……どなたか詳しい人の意見を待ちますか。
俺もギアスはわからんなー
っていうかわかってる人でもこの問題はわからないんでしょ?
ならそのまま流してもいい気もする
雁塔書き手ますね
かりとうかきてますね
あ、なるほど
そういうことか
把握
14話でV.V.と顔を会わせたときに
「初めまして。お前がV.V.か」
と言っているので顔を会わせたのは14話が初めてのはず
opのV.V.を見たときの反応は明らかに1度は対面していると思うんだが
561 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 20:56:51 ID:zITV83AA
どうでもいい
気に食わない奴は分岐すればいいだろ
したらばより転載
22 ◆Q/9haBmLcc [sage] 2008/10/04(土) 20:24:51 ID:/fWoDVlYO
男主人公@真・女神転生if…投下します。
23 GROOVE ON FIGHT ◆Q/9haBmLcc [sage]
2008/10/04(土) 20:27:41 ID:/fWoDVlYO
これで本当に良かったのか、と思う。
いつものように居眠りをしていた授業中、夢の中に現れた――魔神皇ハザマイデオ。
魔界に転送された軽子坂高校。
生還できたのは俺とチャーリーだけ。
色々な物を魔界に残したまま、逃げだしてきた。
別れ際、チャーリーは“魔界へ行った”なんて言っても誰も信じないだろうから、このことは黙っていようと言った。
多分それは間違いじゃない。
ノストラダムスの大予言以上に馬鹿げた話だから下手をすれば病院に送られる。
見た事を全て忘れて生きるのが賢い生き方なんだろう。
それを解っているチャーリーは馬鹿じゃない。
――少なくとも、俺よりは。
俺はなんだか釈然としない。
みんなを助けるべきじゃなかったのか。
みんなを見捨てて逃げ出したのは正しい選択だったのか。
チャーリーだって本当に忘れたいのは魔界に残したままの仲間、そして……リュウイチとアキコを殺してしまった事実なんだろう。
それでも、現実から目を逸らしても前向きなチャーリーはタフだと思う
俺は忘れる事が出来なくて後ろ向きだ。
重い想いが帰り道の足取りを重くする。
空は青くない訳じゃない。雲が一つも無い訳じゃない。ただ、風だけが強い。
「もしもし、そこの君…実は君に折り入って話があるのだが…」
車椅子の男が俺を手招く。
「世界の文明は腐りきっている!」
誰かの演説が聞こえる。
誰かが俺を呼んでいる。誰なのか判らないけど俺を呼んでいる――。
◆
誰かが殺された。誰かが死んだ。
首から上がないセーラー服の女の子が血を撒き散らす。
綺麗な真っ赤な血は幾度となく見たけど、見慣れる物じゃない。
彼女は見せしめ。逆らえば殺される。
どうやら俺は殺し合いをしなければならないらしい。
色んな人間がいる。和服の奴やミイラみたいな包帯野郎、学生服の奴、サラリーマン。
仲間もいなきゃ仲魔もいない。
ひとりぼっちの戦争。
勝てば願いを叶えてくれるらしい。
魔界に置き去りにした仲間を助けられるかも知れない。
――のるか、そるか。
それとも主催者をブッ倒して丸ごと助けるか。
24 GROOVE ON FIGHT ◆Q/9haBmLcc [sage]
2008/10/04(土) 20:28:49 ID:/fWoDVlYO
回りの状況を窺うと、たった一人、たった一人だけ見知った奴がいた。
ハザマイデオ。俺の学校を、軽子坂高校を魔界に墜した張本人。
魔神皇を名乗る魔界の支配者――。
ヤツに飛びかかろうとした時、視界が暗転、意識を手放した。
◆
気付いたらまた別の場所にいた。壁には絵が飾られていて、彫像、石像なんかが陳列されている。
HEROの像、ケルベロスの像、ボデコニアンの像、プリンセス・クララの王冠、黒子の旗。雑多な物が沢山ある。
どうやらここは美術館らしい。
「ハァザァマァァァァァァァッ!」
俺の叫びは誰もいない廊下を虚しく木霊するだけだ。
握り締めた拳に血が滲む。
食い縛った口は鉄臭い血の味がする。
流れた涙を拭えば、血の涙だ。
苛立ち紛れにゴミ箱を蹴り飛ばすとガラン、ガランとけたたましい音と一緒にゴミを撒き散らかしながら転がっていく。
「ハザマ、テメエだけは絶対許さねぇェェェッ!」
俺の怒りは虚しく残響する。
俺達を手のひらの上で弄ぶ諸悪の元凶は嘲笑いながら俺を見てる筈だ。
軽子坂高校を魔界に墜としただけじゃ飽き足らず、殺し合いをさせて上から目線で笑ってやがる。
ハザマに比べたら俺なんか虫けらなのかも知れない。
だけど俺はハザマみたいに腐りきっちゃいねぇ。
このバトルロワイアルとかいうゲーム、いかにもアイツらしい汚いやり方だ。
V.V.とかいった餓鬼はただの三下、黒幕はハザマに違いない。
こんな狂った、大それた事ができるのも、やるのも。考え付くのもハザマだけだ。
いつだってアイツは自分の手を汚さないで上から薄ら笑いで見下ろすだけだ。
チャーリーだってアイツの汚いやり方でリュウイチとアキコを殺す羽目になったんだ。
大方、願いを叶えるとか言ってもご破算にする気だろう。
怠惰界での事を思い出せ。
皆を強制労働させて寛容のリングを発掘させてたけど、一番最初にリングを手にしたってだけで、みんなを解明するって約束をワヤにした。
もう、お前の汚いやり方はうんざりなんだよ、ハザマ。
OK。もう迷わない。
ハザマを殺して、こんな下らないゲームを終わらせて、皆を助け出す。俺の手でカタをつける。
――首を洗って待っていろよ、ハザマ――。
支援
25 GROOVE ON FIGHT ◆Q/9haBmLcc [sage] 2008/10/04(土) 20:29:52 ID:/fWoDVlYO
【一日目/深夜/B−2 美術館内】
【ノブ(男主人公)@真・女神転生if…】
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(未確認)
[状態]健康(GOOD)
[思考・行動]
1:ハザマを倒す
※参加時期はチャーリー編ED後
※ハザマを黒幕と思っている
※名前“ノブ”は漫画版ifから拝借
26 ◆Q/9haBmLcc [sage] 2008/10/04(土) 20:31:29 ID:/fWoDVlYO
規制されたのでこっちに投下です。
ミスター・スプラッシュマン以外に寄せます。
誰か代理投下お願いします。
代理投下終了です
ここから感想↓
女神転生は把握してないのですが、熱血っぽい対主催のようで見物です
ただ、分岐という事でここからどうなるのか制度自体があまりよく分からない自分には想像がつきませんが
それと、投下したいのですが、30分くらい間を開ければ大丈夫ですかね?
投下乙
個人的にはこっちの主人公の方が好きかな
でも千草との絡みの美味しさも捨てがたい・・・
>>566 次の投下のことは自分ではなんとも言えないので↓の人に任せた
代理投下お疲れ様です。
作品の感想は、
分岐前後共に主人公が熱血系になってますが、
こっちはてつを化してるしw
どうなっていくかが確かに見物ですね。
あと、こっちではどうやら主人公の名前が漫画からの様みたいですね。
>>566 さるさんにだけは気をつけてくださいw
投下乙です
代理投下ありがとうございました、ルートの件ですが問題が無ければ全ルートに寄せると言う形にさせていただきます
それと一つ質問なんですが、自分の規制に関してですがもう半年近く続いていて解除される見込みがまるでありません
一応携帯では書き込めるんですが、これからも代理投下をしていただくという形にしても大丈夫でしょうか?
それではあと20分くらいしたら投下させていただきます
そう言うことなら、これからも代理投下と言う形で執筆します
お手数おかけしてすいません、これからもよろしくお願いします
真紅投下します
真紅はすこぶる機嫌が悪かった。
いきなり妙な所に呼ばれて怪しい人間に殺し合いをしろと言われたとか。
そしたら今度は真夜中に外に放り出されたとか。
ドールには睡眠が大事だと言うのに9時を大幅に過ぎているだとか。
明日はくんくんの放送日なのに帰る方法の見当が付かないだとか。
そういう肝心な時にジュンが居ないだとか。
気が付いたらホーリエの姿も見えないだとか。
倒したはずの水銀燈の姿が見えただとか。
気に入らない要素は山ほどあった。
しかし現状を嘆いていても何も進展しない。
こんな所で油を売っている場合じゃない。
帰れないではなく、帰らなくてはいけないのだ。
帰る方法が分からなければ、あのヴイツーとか言う人間に吐かせればいい。
では、どうやって『ヴイツー』の元に行けばいいのか。
nのフィールドには行くことは出来なかった。
こんな時、くんくんだったら小さな手掛かりから大きなトリックに辿り着くだろう。
自分もそうするしか無いのだ。
「とりあえず……まずは支給品を確認するのだわ。
そこに何らかの手掛かりがあるハズ……」
真紅は周囲に人が居ないことを確認する。
そしてデイパックを開ける、が──
その瞬間、真紅は『何者』かによって押し倒されていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「なっ、何をしているのこのバカ犬は!
は、離しなさい! あっ、こら、今すぐ止めなさいと言っているのよ!」
デイパックの口を開けた瞬間に飛び出してきたそれは、精巧に出来た人形を目の前にして、興奮が最高潮に達していた。
デイパックから出て即座に真紅に飛びつくと、本能の赴くままに真紅とじゃれ始めていた。
「いい加減になさい! 汚らわしい犬ね、あっ……、だわ‥だわ‥」
真紅の長い夜は、まだまだ続く。
【一日目深夜/E−10 道端の草むら】
【真紅@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品0〜1、手鏡@現実、チェリー@らき☆すた
[状態]健康
[思考・行動]
基本思考:元の世界に帰る。
1:止めなさいこの馬鹿犬っ……
2:V.V.の元に辿り着く手掛かりを探す。
【チェリー@らき☆すた】
[思考・行動]
1:人形とスキンシップを図る。気に入ったらどこかに埋めて隠しておく。
[備考]
※普通の白い大型犬です。デイパックに入っていました。
きゃーえっち。支援
短いですが投下終了です
ルートとかはよく分からないので、とりあえずAルートに寄せさせていただきます
投下乙
支給品に犬・・・一瞬アダルトな展開を期待したが全年齢版でしたか・・・
名前欄・・・・orzブラウザ使うんじゃなかった
>>578 デイパックに犬ってww何をしろとw
チェリーってみなみの家の犬だったっけ?
何がともあれ乙でした!
投下乙!
押し倒されたってww
エッチなのはいけないと思うんだわ!
投下乙!
確かチェリーはみなみちゃんの家の飼い犬だな
まさか生きた犬が入ってるとはw
投下乙!
真紅はエロ担当ですかw
そういえばみなみの家の犬って大型犬だったよな
もしや真紅かなりのピンチ?
えっと、何故かwikiの地図が見れません。
どなたかこちらに上げてくれませんか?
状態表だけで完成なので……
>>585 ごめんなさい、それ俺だ。
いざ地図をあげようと思ったら、規制されてて無理だったから
メニューだけ残っちゃたんだったorz
でも、無闇に解除要請したら荒らされる可能性があって
管理人さんに迷惑がかかるからどうしようかと思ってた。
ありがとうございます。
延長ご迷惑おかけしました。
今からスザク・みゆき投下します。
ルルーシュ・ランペルージ。
アッシュフォード学園に通う、ブリタニア人。
頭が切れ、端正な容貌の持ち主ではあるが運動能力にやや難有り。
クラブハウスに盲目の妹・ナナリーと二人暮らし。また学園では生徒会副会長を務める。
外面は良いが、秀才故かどこか斜に構えた態度をとりがちな、しかしそれでいて本質はお人好しな、高校生。
それが、彼の一般的なプロフィールだ。
だが、枢木スザクは知っている。
彼の「親友」だからこそ、彼の真実を知っている。
ランペルージという偽りの姓。学生という立場に隠した裏の顔。そして何より―――その何気ない立ち振る舞いの中に隠された、残酷な本性。
彼はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア―――帝国の第四皇子。
またブリタニアに反旗を翻すテロ組織、黒の騎士団のリーダー・ゼロ。
そして何より―――ギアスという人の心を操る武器で大切な人を殺めた、仇―――
※
「……っ」
スザクが目を覚ましたのは、森の中だった。
「……ここは、どこだ……?」
思考をすぐに正常に戻し、今の状況を把握する。
腕を持ち上げる。異常なし。立ち上がる。やはり、問題ない。
周囲には人間の声は聞こえない。
身に纏う服がナイトオブラウンズの衣装であることを確認し、スザクは自分がここに来るまで何をしていたのか思い出す。
―――そうだ、僕は……
思い出すと少し気分が重くなる。
―――シャーリーを、救えなかった……!
シャーリー・フェネット。
アッシュフォード学園での友人である、明るく快活な女の子。
彼女はルルーシュに好意を抱いていた。……たとえギアスによって記憶を消され、父親の命を奪われても。
自分の忠告に、しかし彼女は、ルルーシュを信じるのだと言っていた。赦す、とも。
その結果が、あれだ。
ただの一般人にすぎない彼女は死んだ。殺されたのだ。……『ゼロ』に。公式的には自殺となっているが、シャーリーがそんなことをするとは思えない。
そして、頭を現在に素早く切り変える。
―――V.V.……
自らにギアスのことを教えた張本人である、V.V.。その彼が殺し合いをしろなどと言い出し、目の前で女の子の首輪を爆発させて見せたのだ。
―――何のためにこんなことを?
ギアスが関わることだろうか、そう考える。V.V.がスザクを何らかの形で巻き込むならば、その理由はギアスに違いない。
しかし、それなら疑問が残る。何せ、自分にギアスという能力の存在を教えたのはほかならぬV.V.本人なのだ。それの口封じ?……というのはさすがにおかしすぎる。
それならば、そのような理由でないなら何のために?
不死者の暇つぶしだろうか?だとしたらはた迷惑この上ない。
はあ、と息を吐いて自らの首筋に触れる。V.V.の言ったとおり、首輪がついているらしい。
だが、考えれば首輪というのもおかしい気がする。
「……何で頭使っているんだろう、僕の担当じゃないのに」
肩をすくめる。
そう、相手はV.V.だ。
どうして、不死身でギアスを人に分け与えられ、テレポートのようなことまで可能な彼がこんな首輪などという時代遅れの手段を用いるのだろう?
ここでルルーシュならば、あらゆる数の可能性を出せるかもしれない。だが本来頭を使うのは専門でないスザクには、少々難しい問題だった。
とりあえず、名簿に目を通さなければ始めらない、とそれを開き、ふうと小さく息を吐きだした。
負ける気はないものの、どうにも知り合いは自分に分の悪い連中ばかりだ。
ルルーシュの「弟」ロロ、ランペルージ兄妹の家政婦を務める篠崎咲世子、『魔女』C.C.―――そしてルルーシュ・ランペルージ。
唯一自分を敵とみなさずに済みそうなのがジェレミア・ゴッドバルトだけだが、彼は純血派でかつてスザクを処刑しようとした男。協力できるかどうかは分からない。
「……」
上官シュナイゼルや同僚、更にはルルーシュ以外の生徒会メンバーやカレン、そしてナナリーの名前は見当たらない。そのことには素直に感謝するべきだろう。
そしてそうなれば、今から自分がやることは限られてくる。
首輪を爆発させられて死んだ、幼い女の子。
唇をかみしめる。
見たところ、あの女の子は日本人―――今はイレブン、と呼ばれているが―――、しかも何の変哲もない日常を送っていたであろう女の子だ。雰囲気で何となく分かる。
そう、例えば、シャーリーのような。
V.V.はそんな子の命をあっさりと奪った。
彼にはギアスについて教わったという恩がある。しかし、だからといってスザクはV.V.の行為を認められるはずがなかった。
間違っている、と思う。
弱者を一方的にいたぶり、こんな殺し合いに引っ張り出すのは間違っている。
そしてそんな人々を、孤独に突き落とし、絶望させることなど、正しいはずがない。
それは誰に聞くまでもなく明らかだった。
しかし、とスザクの頭に一瞬違う考えがよぎる。
自分が何よりもまず目指すべきことは、ここからの脱出だ。ラウンズは何人もいるとはいえ、セブンの座を開けっ放しにしておくのはまずい。皇帝の身に何か起こったとき、知らなかったでは済まされないのだ。
そして何より、自分には目標がある。中からこの国を変える、ユフィも望んだ世界を作るためには、こんなところで殺される訳にはいかない。死ぬならもっと、別の瞬間だ。
だから頭では理解している。早く脱出するには、皆を殺して回るのが一番早い。
自分のためではない、幸せな世界のために人を殺すのだ。褒められたやり方ではないが、仕方がないことかもしれない。ランスロットがあればもっと容易だろうが、なくても鍛えられた自分なら人を殺すことくらいそう難しくもないだろう。
しかし、―――スザクは、その考えを頭から追いやった。
「……それじゃあ……ルルーシュと同じだ」
その理由は、正義漢でも良心でもなく、親友『だった』男への嫌悪感から。
ここに来るまでは確信が持てなかったが、今日あの場所でギアスを使ったことで、スザクははっきりと理解した。
やはりルルーシュは、記憶を取り戻しているのだと。また自分たちを欺いたのだということを。
ルルーシュは罪のない人々を殺した。殺し続けてきた。仲間も、妹も、友人でさえも。
もし自分がここで弱者をいたぶり殺せば、それはゼロと同じくらいの外道になってしまう。彼と同じ手段だけは、絶対にとりたくない。
だからスザクは、立ち上がった。
「……助けよう」
そして決意する。
ルルーシュにどこまでも反抗し、ユフィやシャーリーのようなひたむきで幸せで不幸な人々を死という恐怖から救い出そうと。
行くあてはないが、まずは人を探すべきだろう、そう思考する。
歩き出そうとディパックを抱えたスザクは、そこで人の姿をとらえた。
それは、桃色の柔らかそうな長髪。女性のものだ。
スザクには気づいていないらしく、真っ直ぐに北へと駆けていく。
自分とは反対方向に走り去るその姿は、まるで―――
「ユ、フィ……?」
思わず呟き、冷静な部分でそんな馬鹿な、と思う。
ユフィがこの場にいるはずがない。名簿に名前が乗っていなかったし、それ以前に―――ユフィは、既に死んでいるのだから。
自分が看取ったのだ、間違えようもない。
そう分かっているのに、反射的にスザクは駆け出していた。
そうしなければいけない気がした。
「君、待って!」
ごく普通の少女と並外れた身体能力を持つ軍人、比べるまでもなくあっと言う間にその距離は縮まる。
「えっ……いやっ……!」
少女が追いかけてくるスザクの姿を知覚し悲鳴を上げた時には既に、スザクは少女の細い腕を掴んでいた。
そして、少女の真っ青になった顔を見る。
―――違う、……に決まってるじゃないか。
そして、自らどうしようもない後悔に襲われる。
少女は雰囲気こそ似ているが、ユフィはメガネをかけていないしセーラー服を着てもいない。別人以外の何者でも、ない。
「……お、お願いします……」
ふと見ると少女はかたかたと震え出していた。無理もないだろう。殺し合いの場で突然男から追いかけられ、腕を掴まれたら。
「……わ、私は殺しても構いませんから……わ、私の友達は……」
「……ごめん、そんなつもりじゃなかった」
怖がらせてどうするんだ。スザクは内心自嘲しつつ少女から手を離した。
『友達』、その言葉がひっかかる。
彼女も、ここに知り合いがいるのだろうか?
「ただ、君の後ろ姿が知り合いに似てたから……ごめん」
まっすぐに頭を下げる。しかしこれだけでもまだ信用に値するとは思えないので、自分のディパックを彼女に差し出した。
「武器は入ってないし、もちろん持ってもいない。それでも気になるなら服を脱いでもいいけど、さすがに女の子の前ではね。……とにかく、僕はこの殺し合いに乗るつもりはない」
そして、もう一度深々と謝罪する。
「……怖がらせて、ごめん」
すると逆に少女は困ったように、おろおろと視線をさまよわせた。
「……い、いえ……あの、……そ、そのように言われると……私もどうすればよいのやら……あの……」
「……すまない」
「い、いえ、大丈夫、です」
みゆきは、申し訳なさそうに俯いた。
「そうか、それならよかった」
誤解が解け少し安心する。
スザクは少女に笑いかけようとしたが―――笑い方を忘れた彼は、どうすればいいのか分からず、口元をひきつらせるだけだった。
少女は、高良みゆきと名乗った。
突然この場所に放り出され、不安のあまりパニックを起こし早く友達を見つけようとあてもなく走りだしたところだったらしい。
やはりスザクの予想通り、彼女は平凡な日常を送るごくごく普通の高校生だった。それどころか、ブリタニアの存在を知らないという。
自分の顔を見ても何も言わなかった時点でおかしいとは思っていた。
名誉ブリタニア人から皇族の騎士という、イレブンでも異例の大出世を遂げたスザクのことは、誰もが知っていると思い込んでいたのだ。……悪い意味で。
彼女が言うには日本はブリタニアに侵略されてなどいない、もちろんエリア11などと呼ばれてもいない、平和そのものだと言う。
どうしてそのようなことが起こるのか、今までなら説明できなかっただろう。しかし今のスザクには、おぼろげながらも理由にはだいたい察しが付いている。
これもギアス、もといV.V.の持つ能力の一つなのだろう。納得はしたくないが、そう思うしかなかった。
そして詳しい状況を知るために、今こうしてスザクはみゆきと情報交換を行っていた。
「友達がいるって言ってたね」
はい、とみゆきは頷く。
「友達の名前を教えてもらっていいかな?」
「はい。……泉こなたさん、柊かがみさんとつかささん、そして岩崎みなみさんです」
初めは精神的に動揺していたようだったが、本来は外見通り利発らしい。顔色は未だに悪いが、それでも言葉に乱れはなかった。
「……枢木さんのお知り合いはいらっしゃらないのですか?」
「……いや」
言葉に詰まる。……知り合いはいるのだが、口に出すのははばかられる。
「……いないよ」
だから、嘘を吐く。嘘を吐くことはしたくなかった。
ルルーシュと、ナナリーを欺き続けたゼロと同じになってしまうから。
しかし、この状況で『仲間』としてルルーシュ達の名前を出せば、自分と別行動をすることになった際にみゆきがルルーシュを信用してしまう。そして利用されるかもしれない。
「……ただ、この男には気をつけた方がいい」
とん、とルルーシュの名前を指差す。
それは、もう耐えられない。
このユフィに似ているようで似ていない少女だけではない、他の人間があの男の思うままに操られることには。
「この男は人を操る力を持っている。用心して」
「は、はい。……でも、……お辛いのではないですか?」
「……え?」
みゆきの言葉の意味が分からず、聞き返す。
「……い、いえ、お恥ずかしい……枢木さんは私よりずっと強いでしょうからそんな心配はいらないかもしれませんが……でも、こんなところに一人というのはお辛いのでは、と…………え、で、でも……
そうですね、このようなところに友達がいてほしいはずありませんよね……申し訳ありません……私、自分が何を言っているのかよく分からないです……」
最後の言葉は本当らしく、喋りながら頭を悩ませている。無理もないだろう、彼女は人死にに縁のない一般人、軍人で殺人者の自分とは違う。
みゆきからすれば、見知らぬ場所で一人っきりというのは辛いこと。しかし、仲間を巻き込みたくないというのもまた自然な感情。
―――友達、か
みゆきが自然にそう呟いた言葉。
普通の人間なら、意識一つせず流してしまうその単語を、スザクは見逃すことができない。
「……高良さん、君のその友達は、『親友』?」
何故そんな言葉が漏れたのか、分からない。
ただスザクは、そうみゆきに尋ねていた。
自覚はしていた。自分が明らかにおかしなことを聞いていることは。
「……え?は、はい……親友、です」
みゆきの言葉に、スザクは自分の表情が硬くなるのを感じた。
『親友』。実に、便利な言葉だ。
『友達』という言葉では踏み込みにくい領域にも、『親友』なら踏み込める。
『友達』なら信じられない言葉も、『親友』なら信じてしまえる。
特に理由もないのだが、そういう感じが『する』、魔法の言葉。
だから、だからこそ、その裏切りは尋常ではない。
「……高良さん」
そしてスザクは、口にする。
後になったら、彼もおそらく何故あの時あんな言い方をしたのだろう、と思うだろう。
その場の感情、というのは思うとなかなかに恐ろしい。
「……君は、『親友』が大切な人を殺さないって信じられるかい?」
「……し、信じられます!」
みゆきは何を言うのか、と言わんばかりにすぐさま反論した。怒りこそ見えないが、どこか訝しげな様子だった。
「本当に?そうかな?」
しかし、スザクは止まらない。これも彼女を思ってのことのつもりだった。
「……こんな状況だ。何をやってもおかしくない。特にあの殺された子は、君たちの知り合いなんだろう?」
いくら日常を生きる少女でも、このような場所に来れば理性が吹き飛び精神的におかしくなりかねない。
冷静な判断力を失い、人を殺める可能性もある。
それどころか―――ルルーシュに利用されている可能性だってあるのだ。
『親友』、そんな言葉に惑わされる犠牲者をもう出したくない。
「……絶対なんてことはないんだ。覚悟は―――」
そこまで言って、スザクはみゆきが今にも泣き出しそうな顔をしているのにようやく気付いた。
さすがにまずかったか。わずかに罪悪感が湧く。しかし、撤回するつもりはなかった。
「……ごめん、そんなに困らせるつもりじゃなかった。……ただ、覚悟しておけってことを言いたかったんだ」
自分でも驚くくらいそっけなく謝罪し、みゆきから視線をそらす。
「……親友だと思っているのは、自分だけかもしれないんだから」
その言葉は、自分にしか聞こえないように呟いて。
少なくともスザクは、他人を好んで殺すつもりは全くない。
少し前の自分なら、殺人なんて間違った手段で願いを叶えるなんて間違っている、とV.V.に憤り、彼を倒そうとしていただろう。
しかし1年の歳月は、根本的な理想こそ変えなかったが、彼によりシビアな人間観と決意を与えた。
理想を行使するためには、多少の犠牲はやむをえない。
手段を間違っては意味がないことは分かっていても、時には間違った手段をとってでもなさなければならないことがある、と。
……もし、ルルーシュがこの場所においてもギアスを弱者に使うのならば。
そして、他人を操り、自分のために利用し殺す―――シャーリーやユフィのように―――ならば。
―――僕が、君をこの手で殺す。
許しは請いはしない。ルルーシュの間違った手段は、自分がこの手で終わらせる。
そして彼以外にも、弱者の心を操り利用する人間がいるならば、……殺すことも覚悟する必要がある。
―――僕は君のような悪にはならない!絶対に、絶対にだ!
その思考が己の理想と相反するものであるとは気づかずに、スザクは一人誓いを固める。
「……あ、あの……」
「……さあ、もうそろそろ行こうか。同じ場所にとどまるのは危ない」
そして不安そうな顔のみゆきに手を差し出す。
「危なくなったら僕が守るから。いいかな?」
「……は、はい」
少し不安そうな顔をしていた少女は、しかしそれでもスザクの手をとった。
しえん
※
―――どうすればいいのでしょうか……
みゆきは、自分を守ってくれると言った青年を、計りかねていた。
元より優秀で博識な彼女のこと、今の状況の理解は一般人にしては早かった。
しかしそれでも、未だにショックは拭えない。今も尚、ゆたかの首が脳内で繰り越しフラッシュバックし、倒れそうになる。吐き気もする。早く休みたい、というのが本音だった。
それを繋ぎ止めていたのは、他の知り合いに会いたいという強い願望。
『君は、『親友』が大切な人を殺さないって信じられるかい?』
先ほどのスザクの言葉が甦り、ありえません、と小さく呟く。
ありえない。そんなことはしない。絶対に。
そう力強く主張したかった。だが、スザクの表情に気圧され、言葉が出て来ずじまいだった。
正直に言うなら―――みゆきは、スザクが怖かった。
日本人と名乗った割に外見も服装も自分たちとはてんで違い、世界観も違うらしい少年。
少々愛想がないのが難点だが、考え方そのものはここから脱出したい、という自分と同じもので、みゆきを守るというその言葉に嘘偽りは感じられなかった。
しかし、スザクはどこか危うい。
親友のことを問い詰めて来た時の表情は、みゆきに質問とは別のことを聞いていた気がした。
『君の親友が人を殺したとして―――君は、彼女を許せるか?』
そんな、ことを。
そんなことを彼が口にした訳ではない。気のせいならいい。しかし―――
『親友だと思っているのは、自分だけかもしれないんだから』
スザクの言葉は、みゆきにちゃんと届いていた。
そして、その言葉が、心臓を揺さぶる。
そんなこと、ありません。
そう言い聞かせるが、心の中に残る一抹の不安。
もし、本当に自分だけだったら?
自分のことを萌え要素、などとよく分からない言葉で褒めてくれるこなたが、そしてかがみやつかさが、本当は自分に対して遠慮しているだけだとすれば?
―――違います、そんなこと……
とにかく休みたい。
こんなことを考えてしまうのは、きっと今精神的に参っているからだ。
―――泉さん、つかささん、かがみさん、岩崎さん……無事でいて下さい。
無力なみゆきは、ただ仲間の無事を祈るのだった。
ここで、みゆきが知りえるはずがなく、スザクすらも知らない事実が一つある。
それは、正義を遂行すべく進む白き騎士にかけられた一つのギアス。
『親友』が彼を救いたいあまりにかけた、後にフレイヤ被弾の引金となったはずの、
――『生きろ』という絶対遵守の命令。
それが白き騎士、否白き悪魔に何をもたらすのか―――それはまだ、神以外誰にも分からない。
【一日目深夜/D-8 山道】
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品2〜3
[状態]健康、『生きろ』ギアス継続中
[思考・行動]
基本思考:一刻も早く元の世界に帰る
1: 弱者は保護。ルルーシュなどの危険人物は殺すしか―――。
2:みゆきと行動する。みゆきの『親友』に不審
※参戦時期はシャーリー死亡直後です。
※オープニングのルルーシュを見て、ルルーシュが記憶を取り戻したと確信しました。
※『生きろ』ギアスがかかっています。主にスザクが死を覚悟した時に発動し、生きるためにあらゆる行動を起こします。
【高良みゆき@らき☆すた(漫画)】
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品2〜3
[状態]健康
[思考・行動]
基本思考:仲間に会う。皆で元の世界に帰りたい。
1:スザクと行動するが、不安
2:こなた達にわずかな疑念
597 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 23:02:03 ID:VujxlUF9
投下乙です。
こなたは病んでるし、つかさはやや危険だからな・・・。
投下終了です。
そしてルルーシュは第11皇子ですね……適当に書いておいて後で埋めようと思って忘れてました。
メインルートに寄せます。
タイトルは「BLACK&WHITE」でお願いします。
>>598 投下乙です。
このスザクは、この先どう転んでもおかしくない感じがちょっと怖い。
みゆきの方もスザクや、異常な状況に対する戸惑いが出てて、ほんとGJです。
あと、1つだけ気になったのですが
スザクはR2の8話の時点で自身にかけられている生きろギアスのことは知ってるので
シャーリー死亡直後からの参戦であれば、生きろギアスは
「スザクすらも知らない事実」ではないはず。
確認をお願いします。
スザクとみwikiが「友達」というキーワードで通じ合ったか…
いい話でした!乙
>>599 指摘ありがとうございます。
あ、そこは私の書き方に問題がありますね……
個人的には「スザク自身もいつそれが発動するか分からない」みたいなニュアンスのつもりでした。
では、
ここで、みゆきが知りえるはずがなく、スザクすらも知らない事実が一つある。
↓
ここで、みゆきが知りえるはずがなく、スザクも未だ対処できずにいる事実がある。
に変更でどうでしょうか?
602 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 23:54:16 ID:zITV83AA
面白くないからこれも分岐決定な
投下乙です!
やっぱりらきすた勢は最初落ち込んでパニクっちゃうな
一般人の女子高生だから当たり前だけど
みゆきも落ち着いたようだから、博識を生かしてがんばってほしい
あと、これ関係ないんだけど
なんとなくこのスレIEで見てみたら、キーワードとおすすめ2ちゃんねるが面白かったw
604 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 23:58:08 ID:zITV83AA
終了
>>601 回答ありがとうございます。
スザク本人が生きろギアスの発動条件などは知らないから、そういう意味かなとは思ったのですが
一応指摘させていただきました。
修正に関しては、それで問題ないと思います。
「苦労をするのはいつだって良識ある常識人」を書いた◆0RbUzIT0Toさんへ
@wikiの1ページ容量制限にひっかかりましたー
2分割しないといけないので、どこか前後編で切るところを教えてください
結構ぎりぎり引っかかってるだけなんで、切るのはどこでもいけそうです
投下乙!
スザクかっこいいですね……未把握ですが興味が湧きましたw
生きろというギアスがこれからどんな影響を及ぼしていくのかが気になりますね。
あと、みゆきさんもいい!怯えている描写は実に彼女らしいと思いました。
友達というキーワードで話が広がっていくのがまたGJ!!
では劉鳳、翠星石、南光太郎を投下します。
支援
「ぜ、全然怖くないのですぅ! こんなコト、翠星石にとってはお茶の子さいさいなのです!」
ひんやりとした冷気が漂う深夜の森林地帯。
無数の電柱が犇めき、電灯の集団が群れを成す街中とは違い目印になるようなものは殆どない。
只、辺り一面に広がるのは薄く生い茂った緑の草原、地には木々が根付き其処等中に散在している。
音を隔てるものは少なく、そのため一帯に甲高い声が響き渡るのは容易い。
周囲に響くはデイバックをしっかりと担ぎ、そろりそろりと忍び足で歩く少女の声。
威勢は良いが、時折不自然に声が大きくなる節もあり、明らかに動揺している様子がその声から感じ取れる。
声の主は異国の民族衣装を模したような緑のロングスカートとエプロンドレスを着こんだ少女、いや人形。
そう。翠星石の不安げな声は彼女自身の予想よりも辺り一帯に良く聞こえていた。
「ス、スイドリームが居ないのはちょっぴり驚いたのですが大丈夫なのですぅ……。
哀れなチビ人間とは違って、翠星石はローゼンメイデン……ど、どうにかなるに決まってやがるのですぅ! オーホッホホホホホホホホホ!!」
ローゼンメイデン。
一人の人形師、ローゼンにより造られた七体の生きとし生ける人形(ドール)達。
契約者となる人間に螺子を巻かれる事で彼女達はこの世界での命を受け貰う。
彼女らは一つずつ人口精霊と呼ばれる――ちなみに翠星石の場合はスイドリームという名前を持つ――球体状の浮遊物体を持ち、それを用いて闘いに身を投じる。
造物主ローゼンによって定められたアリスゲームというローゼンメイデン同士で闘い合う。
人間で言えばローゼンメイデン達にとって命に値するローザミスティカを賭けて、最後の一人まで勝ち残ったドールはローゼンと出会う権利を得られる。
ローゼンが求めた究極の存在、“アリス”となるには全てのローザミスティカを集める必要があるのだから。
そして翠星石はその内の三番目のドールであり、正真正銘ローゼンメイデンの一体。
下僕にしてやってもいいかもと彼女が勝手に思っている桜田ジュンへの悪口を織り交ぜながら翠星石は無駄に大きな声をあげる。
一旦立ち止まり、キョロキョロと周囲を見回して良く確認してから翠星石はしっかりとした足取りで歩き出す。
自分の言葉に自信を持たせるために、唐突に宣告された殺し合いで生き延びるために翠星石は先ず知り合いを捜す事にしていた。
闘いを好む性格ではないため、この殺し合いに乗るつもりは毛頭ない。
やるべき事はもっと別にある。
姉妹の関係にある真紅と蒼星石との合流に加えて、彼女等と同じく姉妹ではあるが敵対関係にある水銀燈への警戒。
二つの事を良く念頭に置き、翠星石は探索を続けた。
しえんしますー
「う〜……誰も居ないのですぅ……真紅ぅ〜蒼星石ぃ〜……寂しいですぅ……」
数分後、先程までの元気は既に無くなり、今にも泣き出しそうな表情を浮かべた翠星石が森林地帯をうろついていた。
見栄っ張りで、人一倍臆病な性格の持ち主である翠星石の元気がなくなるのは自然な事だろう。
スイドリームが居ない事による不安も勿論の事だが、何よりこの異質な状況が容赦なく不安を煽っている。
太陽はとっくの前に沈み切り、普段なら鞄の中で眠りに落ちている時間だが寝ようにも寝られない。
何故なら、此処は翠星石が今までジュンの家や世話になっている老夫婦の家で過ごした日常とは逸脱している。
確かな安全を確認できない内に眠るなど肝が据わった行動は翠星石にはどうしても出来なかった。
ジュンより小さな体をした女の子の首から上が無くなったあの光景はあまりにも衝撃的で、とても形容しがたい。
もし、自分があんな目に……誰か悪意を持った人間に襲われたりでもしたらと思うと涙が零れそうになる。
「そうです……人間は所詮、悪い奴らばっかなのですぅ……のりとジュン、おじじとおばばは希な奴らだったのですよ……」
幾度かの眠りを経て、数百年の時を生きてきた翠星石は様々な人間に出会った。
その中で自分と蒼星石が持つ力――夢の世界へ干渉できる力――を利用しようとした人間は何人も見かけた。
どの人間もまるで自分達を道具のように扱ったあの思い出したくもない時間の記憶。
此処に集められた人間の中にもそんな人間が居ても可笑しくはないだろう。
自分の利益や命のために他者を犠牲にする事に何も抵抗がない人間達。
そんな彼らに出会ってしまった時、自分はどうすれば良いのか。
黙って彼らが言うがままにすれば良いのだろうか……。
「そんなの……嫌、なのですぅ……」
そう。そんな事は受け入れられる筈もなかった。
未だ、誰とも薔薇の契約すらも行っていないというのに。
まだまだ大好きな姉妹達とも遊び足りていない。
何より父と呼べる存在であるローゼンとの出会いも果たす前にこんな良くわからない場所でみすみすジャンクになる事は。
真紅と蒼星石の二人と二度と出会えないような事は――
どうしても我慢出来ない。
支援
「真紅、少しの間だけど借りるです……絶対に返すので心配は要らないのですよ。翠星石はやる時はやるのですから……!
ちょっぴり怖いけど、頑張るのです! ローゼンメイデンの誇りに賭けてですぅ!」
担いでいたデイバックから徐に取り出したのはピンク色のステッキ。
自衛のためには心細いといえるような代物だ。
だが、そのステッキは翠星石の真紅が使い慣れた武器。
いつも毅然とした態度で自分達を纏めてくれた真紅の面影を思い浮かべ、彼女の力を借りるように翠星石はステッキを両手で固く握りしめる。
自分から襲うような事は絶対にしない。
あくまでも自分の身を守るためにこのステッキを使わせて貰う。
既に想いは一つ。
弱音を吐いていた自分を忘却の彼方へ飛ばし、翠星石は再び歩き出す。
先程のそれとは比べ物にはならない。
力強い歩みは翠星石の意思の強さを強調しているかのように見える。
そんな時、一つの声が聞こえた。
「そこの少女」
深夜の森であったために、視界が暗かった事もあったのだろう。
翠星石の前方数メートル先の茂みから一人の男が現れ、彼女に声を掛けた。
少し威圧感が残った声だが別に敵意を持ちわせたわけではない。
只、不器用な性格が災いしてぶっきらぼうな言葉になっただけに過ぎない。
だが、それは偶然にも――
「ひ、ひいやああああああああああああああああああ! で、出やがったですぅ! 寄るな寄るなぁー! 寄らばぶん殴ってやるのですよおおおおおおおおおおお!!」
臆病者な翠星石を大きく驚かせる事になった。
視線はやや上気味で、男が歩いてきた方向とは別の方を向いていたため、急には気がつかなかったからだ。
滅茶苦茶に腕を振り回し、ステッキで防戦しようとする翠星石。
右は赤色、左は緑色のオッドアイである瞳は固く閉じられ、けたたましく叫びながら何度も何度もステッキを振るう。
「待て! 落ち着け……おい!」
まさに暴走した翠星石を男が落ち着かせるのに割と時間が掛った。
緑色の髪を生やした青年。
強固な意志を秘めた両の瞳で喚き散らす翠星石に鋭く視線を投げかけた男。
「俺はHOLY部隊所属……劉鳳。話を聞いてくれ!」
そう。劉鳳はようやく翠星石を落ち着かせる事が出来た。
◇ ◇ ◇
支援
「まったく、話がしたいだけだったらそれならそうと早く言えってやつですぅ!
ちなみに翠星石は初めからなんとなーくそんな気がしてましたがー……ほ、ほんとですぅ!
そんな哀れな目で翠星石を見るな、コンチクショーですぅ!!
あ、そ、そそそそそそそそそれでですね! 翠星石は何が言いたいのかというと……あーうー……な、殴って悪かったですぅ」
一際大きな木の前にちょこんと腰を下ろし、翠星石は言葉を捲くし立てる。
目の前の男――劉鳳が只、情報交換をしたかったという事を聞きいれ、簡単にだが今はその情報交換も終わっている。
極めて平然な様子で振舞っているように見えるが、言葉の節々には明らかな嘘が混じっているためバツが悪い。
自分自身へのフォローを忘れずに翠星石は劉鳳へ謝罪の言葉を呟く。
何処となく不自然な口調になっているのは劉鳳への申し訳なさ、そして未だ完全に彼の事を信用してないからなのかもしれない。
「……まあ、いい。わかったから気にするな。あの位、痛みには入らない」
ぶしつけに言葉を返す劉鳳。
すっかりしょぼくれた翠星石を一瞬だけ眺め、彼なりに彼女の気が楽になるような旨を伝える。
そう。声を掛けただけなのにいきなり殴られて機嫌を損ねたわけでは決してなく、実際に劉鳳は気にしていなかった。
ロストグラウンドと呼ばれた荒廃しきった大地の治安を守るために結成された武装警察機関HOLD。
そのHOLD内でもアルターと呼ばれる異能――物質を原子レベルまで分解し、己の武器とする力――を持つ者だけ構成された部隊。
それこそがHOLYであり、劉鳳は訓練を受けているため相応の体力は備えている。
そして正義感が人一倍強い劉鳳が見るからに無力そうな翠星石に接触したのはごく当然な結果だといえるだろう。
(こんな少女……いや、ローゼンメイデンという不思議な人形か。
生きる人形とは可笑しな話だが……実際に俺と同じように生きているのだから信じるしかない。
そうだ。守るべき存在であるコトに違いはない)
翠星石と話し、劉鳳はアルターやロストグラウンドの事を教え、代わりにローゼンメイデンの事などについて知った。
その中で片方が知らない単語は何度も会話に飛び出し、その度に二人は頭を捻った。
住んでいた世界の西暦も一致しない。
これはどういう事なのか。
もしや、最早創造上の世界の産物にしか過ぎないと思われていたタイムマシンなる機械によって自分達は集められたのだろうか。
疑問は尽きずどうにも解決しないがこのまま話し合いを続けて時間を無駄にするのは惜しい。
今、この瞬間にも何処かで人が死んでいるかもしれない現状で――劉鳳が只、黙っているわけにもいかなかった。
支援
「翠星石だったな。視界も悪く、此処ではゆっくり話も出来そうにない……だからだ。一先ず何処か施設にでも移動しないか」
「移動ですか……翠星石は蒼星石達に会えればそれでいいですが……けど、悪者が待ち伏せしているかもしれないですよ?」
「ああ、その可能性もあるだろうが心配しなくて良い。こんな殺し合いに乗った毒虫は俺が必ず断罪する。
それにだ。碌に力を持たない参加者が迂闊に辺りを歩き回ると思うか?」
「お、思わないですぅ!何処かに穴があったら潜り込みたい気分なのですぅ」
「俺もそう思う。彼らの心情としては出来るだけ危険な目に遭いたくはない……そこで何処か、大きな施設にでも隠れようと思う参加者も居る筈だ。
ならば保護しなければならない……俺が絶対に……!」
つい先程、迂闊にウロウロしていたため翠星石は少し焦りながら劉鳳の問いに答えた。
だが、そんな翠星石の様子に気づくことなく劉鳳は自然に固く拳を握りしめる。
表面上は平常を装っているが、今の劉鳳の感情には大きな渦を巻いている。
渦巻く感情には後悔や悲しみといった様々な想いが籠められ、一際大きなものは怒りという感情。
言うまでもない。
自分のような異能者だけなら年端もいかない少年や少女すらもこの殺し合いとやらに巻き込んだ者達。
そう。V.V.という得体の知れない少年が率いる一団への絶やすことのできない怒りを劉鳳は必死に押さえつける。
何故なら自分はこの場に居る人間達を守る使命が、守りたいと強く願っている。
そのため、今怒りに任せて軽はずみな行動を取るわけにはいかないのだから。
(二度と繰り返させん、大事な人を失ったあの時感じた俺の悲しみはもう誰にも味あわせない……!
そして、あの赤毛の少女……今更弁解するつもりはない。
ああ、そうだ……俺の力が足りなかったからあの少女は死んだ……だが、彼女の死は無駄にはさせない!
俺がこの腐った殺し合い潰すコトで必ず証明する。俺が打ち立てる正義で……彼女の無念さを!)
思い出すのは燃え盛る炎の中の記憶。
正体不明の物体――アルター結晶体に愛犬を、そして最愛の母を殺された悲しみ。
当然、この場にも愛する人を持つ参加者も居るだろう。
相思相愛の関係である参加者達も居るかもしれない。
そんな彼らをみすみす殺させていいのか――
あの社会不適合者と言えるネイティブアルターの言葉を借りれば絶対にノゥだ。
そして自分が救えなかった赤毛の小さな少女への申し訳なさを胸に留めて、劉鳳は歩き出す。
未だ、翠星石からは了承の返事はない。
だが、劉鳳の歩みはとても力強く、翠星石は思わず不思議そうな瞳で彼の挙動を眺めている。
(なんか変わった奴なのですぅ……こいつの心の木はきっと複雑に入り組んでそうな感じがするです。
でも、あんまり悪い感じもしないような気もするです……今は未だ良くわからないですが)
ジュンとは比べものにならない力強さを感じさせる劉鳳。
更にそれでいて何処か脆く、不安定さも同時に翠星石はなんとなく感じた。
理屈ではない。只、本当になんとなくとしかいいようがない。
だが、どうやら劉鳳は危険そうではない事はわかった。
劉鳳が呟いた言葉……それがどうにも嘘には聞こえなかったせいだ。。
それにスイドリームがないため庭師の如雨露も取り出せない今、翠星石の力はほぼゼロに等しい。
取り敢えず劉鳳と共に行動しても悪くないだろうと翠星石は思い、劉鳳の後をついていく事を決めた。
「し、仕方ないですねぇ。特別に翠星石がついていってやるですぅ!」
微妙に小生意気な事を口に出して、翠星石はいそいそと歩き出す。
何しろ劉鳳の歩幅は翠星石のそれと比べてかなり大きい。
置いてきぼりを喰らう事はなさそうだが、後ろから只ついていくのも翠星石は気が向かなかった。
せめて並列、あわよくば自分が先導する形の方がなんだか自分の方が優位な立場に居るように見えるのでは、と下らない考えが浮かんだから。
支援
支援
(そういえば、この劉鳳って奴は強いんですかね。大事な事を確認してなかったですぅ……)
そんな時、翠星石は遅すぎた疑問を抱く。
自信に溢れた言葉からそれなりの力はあるのかもしれない。
だが、翠星石は未だ劉鳳の力は見てはいないため、心配にもなる。
もし、劉鳳が口だけの男で実際は碌な力を持ってないとすれば……そう思うと翠星石の不安は更に大きなものとなってゆく。
勇気を振り絞り、何処となく近寄りがたい雰囲気を漂わせて、背中を向ける劉鳳に翠星石は声を掛けようとする。
そんな時――突如として大地に穴が空いた。
「こい、絶影ッ!」
「は、はいいいいいいいいいいいいい!?」
思わず素っ頓狂な声をあげた翠星石。
そんな彼女に一目もくれず、劉鳳は只前方へ腕を突き出し、叫んでいた。
同時に劉鳳の全身が薄い虹色の発光を帯び、彼の傍に存在していた大地の一部が抉り取られ、やがて粉々に消失した。
否、それは消えたのではない。
原子レベルまで分解された大地はやがて互いに集まり、一つの型を成していく。
青と銀の二色を基調とし、下半身は蛇のような構造をし、上半身は人間を模した物体が劉鳳の前に現れる。
そう。それこそが劉鳳の力、自律稼働型アルターである絶影の第二形態“真・絶影”。
問題なく行われたアルター能力の行使だが、その時少しだけ劉鳳は違和感があった。
(普段より絶影が使いにくい気がするが……まあ、いい。俺は俺のやるコトをするまで。橘とクーガーの二人と合流。翠星石の仲間、由侘かなみの保護も必要だ。
そしてあの男……カズマは保留だ。向かってくるなら容赦はしないが……それとあの少年と少女。
確か少年の方はルルーシュといったな。明らかにV.V.とやらと面識があった少年と少女……情報を集めるためにも接触するべきか)
絶影を伏せさせながら、劉鳳は思考に耽る。
武器は没収したと言っていたため絶影にも何らかの制限が掛っているのだろうか。
その可能性はないとはいえない。
V.V達は此処まで手の込んだ仕掛けをしてこの殺し合いを仕組んだのだから。
絶影に関しては普段よりも大きな集中力を要するので、今後はなるべく第一形態で闘うべきかもしれない。
新たな発見を胸に留めておき、やがて劉鳳は真・絶大の背中に飛び移る。
大方、数人が乗る事が出来る真・絶影で移動しようと考えたのだろう。
証拠に劉鳳は翠星石に乗るように促すために彼女の方へ顔を向けるが……
「び、びっくりして腰が抜けたですぅ〜〜〜〜〜〜〜……」
其処にはペタンを尻もちをつき、涙目な翠星石が情けない声を上げていた。
恐らく真・絶影がいきなり出現した事と、禍々しい形状に度肝を抜かれたのだろう。
「ちっ……仕方ない」
予想もしなかった翠星石の行動に劉鳳は一瞬苦々しい表情を浮かべるが、絶影から降りて歩きだした。
目的は一つ。
出来るだけ無駄な時間を無くすために、速やかに次の行動へ移るための布石。
そう。それは劉鳳にとって造作もない事であるために彼は直ぐに動き出す。
だが、翠星石にとってどのような感情を抱かせるか……其処までは生憎考えが回っていなかったが。
「な、なななななななななななにしやがるですか! 勝手に乙女の柔肌に触るなんてふてぇ野郎ですぅ!!」
「馬鹿な事を言うな。こら、静かにしろ……暴れるな!」
ヒョイと翠星石の体を持ち上げて、劉鳳は彼女の体を横に担ぎ始めた。
自分が動けない事は承知しているものの、いきなり身体に触れられて翠星石は慌てふためる。
未だ劉鳳の事を完全に信用していないせいか、それとも純粋に恥じらっているせいか定かではないがその抵抗は地味に根強い。
劉鳳の方ももう少し良いやり方もあっただろうが、彼に女性の扱いに対して心得が別段あるわけでもない。
結局苦虫を潰したような表情を浮かべて、翠星石の小さな拳や蹴りをポコポコと受けながら力づくで真・絶影に連れ込んだ。
「もう駄目ですぅ〜翠星石は汚れてしまったのですよ……この! 放せ、放せですぅ!!」
「劉鳳だ、ふざけた名前で呼ぶな。それに少しの間だけだ! 我慢しろ」
大声をあげて抵抗する翠星石に対し、真・絶大の背に乗った劉鳳は大人げなく大声を返す。
やがて真・絶影に指示を飛ばし、彼らの身体は浮き上がった。
何処か適当な施設で体制を整え、他の参加者と接触するために。
真・絶影は騒がしい二人を乗せて夜の空へ消えていった。
支援
【一日目深夜/C-2 中心部】
【劉鳳@スクライド(アニメ)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式 未確認(1〜3)
[状態]健康
[思考・行動]
1:翠星石や弱者を守りながら殺し合いを潰す。
2:真紅、蒼星石、ストレイト・クーガー、橘あすか、由詫かなみとの合流。カズマは保留、水銀燈は警戒。
3:ルルーシュ・ランぺルージもしくは緑の髪の少女(C.C.)と接触し、V.V.の情報を得る。
4:殺し合いに乗った者は容赦なく断罪する。
[備考]
※参戦時期は未定。少なくとも絶影第三形態は習得していない時期です。
※絶影、真・絶影には高度低下など制限が掛けられています。また、その事に薄薄と感づいています。
※現時点では何処か施設がある場所へ向かおうと思っています。何処へ行くか、もしくは目標を変えるかは次の人にお任せします。
【一日目深夜/ C-2 中心部】
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]真紅のステッキ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式 未確認(0〜2)
[状態]健康
[思考・行動]
1: 殺し合いから脱出。
2:真紅、蒼星石、ストレイト・クーガー、橘あすか、由詫かなみとの合流(蒼星石を最優先)、水銀燈は警戒。
3:劉鳳と共に行動する
[備考]
※参戦時期は未定。少なくともジュンと契約する前です。
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
そんな時だ。
真・絶影が木々の天井を抜けて、既に姿が見えなくなった時――
「ゴルゴムの仕業か! 許さん!!」
一人の男の声が響いていた。
◇ ◇ ◇
支援
時間は少し遡る。
秘密結社ゴルゴムによって次期創世王候補として世紀王“ブラックサン”に改造された後に脱走し、彼らと闘う事を決めた男は怒りに震えていた。
その男こそ南光太郎、ブラックサンという名ではなく“仮面ライダーBLACK”という名を名乗り、この場に集められるまでも闘い続けていた戦士。
突如としてV.V.という少年が殺し合いをしろと言った時の衝撃は今でも記憶に新しい。
そして、その時光太郎は全てを理解した。
そう。見たことのない姿だがV.V.はゴルゴムの一味であり、これはゴルゴムの仕業によるという事。
理由は単純明快、ゴルゴム以外にこんな芸当を行えるわけがない。
更に今まで光太郎の身の回りで起きた不審な出来事はほぼゴルゴムの仕業だったという実体験がその自信を裏付けた。
「俺と信彦が呼ばれている……間違いない! 次期創世王を決めるために関係ない人達までも巻き込むとは許さんぞ、ゴルゴム!!」
支給された名簿に秋月信彦、いやシャドームーンの名前が書かれているのを確認した光太郎。
出来れば闘いたくない相手だが、これでますますこの殺し合いにはゴルゴムが関与している自信を得た。
自分なら兎も角シャドームーンをこの場で連れてくるなどゴルゴム……寧ろ創世王にしか出来はしない。
恐らく他に参加者が居る事はゴルゴムの仕業である事に対してのカモフラージュなのだろう。
もしくは創世王になるために条件が追加されたのだろうか。
真相はわからないが許しておけない事に変わりはない。
ブラックサンではない、仮面ライダーBLACKとして光この場で闘う事を光太郎は改めて固く心に誓った。
目的は一つ、ゴルゴムが新しく始めたこの計画――バトルロワイアルなるものの破壊。
そして罪なき人々を守る事も忘れてはならない。
――この地球はゴルゴムだけのものではなく、生きるもの全てのためにある。
決意に揺らぎなどありはしない。
そのため助けを求める者、もしくはゴルゴムと闘う意思を秘めた未だ見ぬ仲間を求めて光太郎は走った。
未だ支給品も確認せずに只、他の参加者と接触を行うために。
そんな時、光太郎は遠くの方から少女と青年のものらしき小さな声を聴いた。
『もう駄目ですぅ〜翠星石は汚れてしまったのですよ……放せ、放せですぅ! このキザ人間!!』
『劉鳳だ、ふざけた名前で呼ぶな。それに少しの間だけだ、 我慢しろ!』
なんとか聞き取れた会話の内容から光太郎は愕然とした。
声質からしてかなり幼そうに見える少女。
そんな少女がどうやら男、劉鳳という人物に襲われているようだ。
「放せ」と言っている事から恐らく体格の差を利用して、力づくで屈伏させているのだろう。
あまりにも非道な行いに思わず光太郎は怒りを覚え、更に走る速度を速める。
改造手術を受けた際に光太郎は聴力も強化されており、声の元には未だ距離が開いていた。
ライダーへ変身するのも考えたが、予備動作に掛る時間も惜しい。
兎に角この場はこのまま走り切る事を光太郎は決めていた。
(幼い少女を力づくでなど……まさに悪魔がするコトだ! やらせん!!)
下手に声をあげれば劉鳳とやらを刺激する可能性がある。
何かの弾みで少女に危険が及んでしまう事は絶対に避けなければならない。
出来るだけ密かに動き、一瞬の隙をついて少女を救出する――
そう思い、茂みの中から光太郎は勢いよく飛び出した。
「くっ! 遅かったか!」
だが、現実は非常であり声が聴こえた場所には誰も居ない。
自分が来ることを察知し、この短時間で此処までの移動を果たせたのだろうか。
だとすれば、相手はかなり手ごわい実力だろう。
只の異常性愛者ではない。
自分の甘い認識を悔やむ中、光太郎は彼らが何処へ行ったのかを確認するために辺りを見回した。
薄暗い視界の中、強化された視力をフルに活用し、右左へ視線を回すがどうにも人影は見当たらない。
ならばと思い、光太郎は徐に大空を見上げた。
「ッ!あれは……」
やや低空気味に奇妙な蛇のような物体が二人の男女を乗せて飛行している姿が光太郎の視界に入る。
発見した時には既に遅く、見失ってしまったため追いつくことは難しいだろう。
一瞬の事だったが少女が男に連れさらわれているように見えた。
恐らく先ほどの声の主達は彼らに違いない。
少女を連れ去った男への怒りを募らせながら光太郎はまた一つ確信した。
(あの銀色の飛行物体……ゴルゴムの新しい怪人に違いない! そしてあの怪人を操っていた男は只の怪人じゃない!
あそこまでゴルゴムの怪人を操れるということは三神官クラスの存在でも可笑しくはない筈だ!
なんてコトだ……まさか信彦以外にゴルゴムの手の者が紛れていたとは!
すまない、僕が遅かったせいで……本当にすまない!)
飛行物体――真・絶影をいとも容易く操った男、劉鳳を光太郎はしっかりと記憶した。
いずれ闘わなければならない強大な敵。
どんな力を持っているかすらもわからないが、それでも闘わなければならない。
何故なら光太郎はゴルゴムの野望を叩き潰すために、この場に居るのだから。
そして最早あの少女の命は刈り取られてしまったのだろう。
ゴルゴムが人間を生かしておくと到底思えない。
名も知らぬ少女――翠星石への償いの意味を込めて、光太郎は大きく口を開く。
最早、疑いようのない。
そう。この全ての惨事を仕組んだ組織への怒りを言葉に乗せて――
「ゴルゴムの仕業か! 許さん!!」
決定的な誤解を持ちながら、光太郎は改めてゴルゴムに怒りを燃やしていた。
【一日目深夜/C-3 西部】
【南光太郎@仮面ライダーBLCK(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式 未確認(1〜3)
[状態]健康
[思考・行動]
1:この殺し合いを潰し、ゴルゴムの野望を阻止する。
2:少女(翠星石)を誘拐した劉鳳を倒す。
3:信彦(シャドームーン)とは出来れば闘いたくない……。
[備考]
※V.V.はゴルゴムの一味であり、この殺し合いはゴルゴムの仕業だと思っています。
※真・絶影はゴルゴムの新怪人。劉鳳はゴルゴムの中でも特に実力者であると思っています。
また、劉鳳が少女(翠星石)を力づくで誘拐したと思い込んでいます。
※劉鳳が行った方向は見失っています
※何処へ向かうかは次の人にお任せします。
支援
投下終了しました。
支援どうもありがとうございます。
タイトルは「走れ、仮面ライダーBLACK! 少女の命が今危ない!」でお願いします。
最初のトリは忘れてくださいorz
あと、メインルート(Aルート)に寄せます。
では感想やご指摘などお待ちしています。
投下乙!
あれ?光太郎も投下って言ってるのに出てないじゃん
間違いか?と思ったらこういう構成かw
ゴルゴムの仕業勘違い吹いたw
投下乙です。
作品は面白かったです。
最初のトリは忘れてくださいとおっしゃってますが、某所でわざわざ投下しますとか言っている時点では関係ないのでは?
投下乙です!
翠星石はどこでもやっぱり翠星石だな〜
劉鳳との掛け合いがいかにも翠星石だw
そして俺も南光太郎ドコー?って思ってたw
投下GJです!
劉鳳と翠星石のペアは、なんだかバランスとれてそうでいいです。
ローゼンは数年前に漫画借りてきりだから、把握しなければ……!
どんどん気になる作品が増えてくw
光太郎さん、ゴルゴムと劉鳳のダブル勘違いッスかw
強対主催同士の勘違い。どうなってしまうのか……
乙でした!
投下乙!
このコンビは凸凹加減がなんかいいな
そして、ゴルゴムの仕業ワラタw
642 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/05(日) 11:52:39 ID:uLWkUvMw
投下乙です。
劉鳳はどんな時でもトラブルメーカーですね。
翠星石とのコンビも面白いです。
そして光太郎にも笑いました。
雁塔書き手ル
ゴルゴム大人気だなwww
そしで翠の子は相変わらずだなw
後々この性格が災いしなきゃいいけど……
それと規制くらってるので仮投下スレに投下してきました、どなたか代理投下の方よろしくお願いします
「クソっ、一体どうなってやがるんだ……!」
ドン、と傍の木を殴りつける。
何故こんなことになったのか、亀山薫にはまるで見当がつかなかった。
全てが異常な事に思える。
昨日の晩まではいつもと変わらぬ日常だった。
異常な犯罪に立ち会うことはあれど、“異常な物理法則”にお目にかかるのは初めてだ。
『朝起きたらおかしな場所にいた』ってだけなら拉致事件で済んだのだが(いや、それはそれで大問題ではあるが)そこから一歩も動いていないのに今度は気が付けば森にいた。
何を言ってるんだか自分でも分からなくなりそうな異常事態。それこそ、夢であると考えねば説明がつかぬほどの。
(いや、でもあれは確かに血の臭いだった……本当に夢だって考えていいのか!?)
あの時、女の子が殺された。
見た感じまだ小学生であろう女の子が、何の罪もないであろう女の子が殺された。
自体の把握が出来ていなかったとは言え、それを黙って見ていたのだ。
夢であるなら、それに越したことはない。
だが、刑事として長年やってきた亀山の鼻は、あの凄惨な殺人事件は現実のものだと訴えている。
切断面の肉が焼ける臭いも、流れ出た血液の臭いも、感覚が麻痺するくらい現場で嗅ぎ続けてきたのだ。
あの臭いは、間違いなく本物のそれだった。少なくとも、ドッキリの類ではないだろう。
(やっぱり右京さんに頼るしかない、か……)
あの場で起こった事の真偽や、これが何なのかについて、結局亀山は考える事を放棄した。
いや、せざるを得なかった。背後に人の気配を感じる。
頭脳労働は本来相棒である杉下右京の担当だ。
ややこしいことは右京に任せ、まず自分は目の前の事態に対処することだけを考えよう。
(それより、あっちだ……今も確かに草の揺れる音がした。
風の音かも知れないし根拠はないけど、なんとなく潜伏した人間が動いた音のような気がする)
これが悪人に闇討ちされる可能性のある危険な事件を追っている最中だとしたら、「そこにいるのは分かってるんだ、隠れてないで出てきやがれ」ぐらい言っても問題ないのだろうが、
今回はそのような口調では不味いだろうと考えた。
今自分の様子を窺っているのは犯罪者でも何でもない、自分と同じく殺し合いに巻き込まれた被害者なのだ。
不審者のように扱うのは気が引ける。
そんなわけで、ゆっくりと慎重に話しかける事にした。
「……そこに、誰かい――!?」
そして、結果から言うとその選択は失敗だった。
本当に潜んでいるか分からないため、亀山はついつい何度も視線を送ってしまっている。
ようするに、気付かれていたのだ。こちらも相手の存在に気が付いている事を。
『気の利いた言葉を考えよう』などという慣れない事をしながらだったため隙だらけとなり、
その結果逃走の計画を立てていた相手は襲撃へと選択を切り替えた。
そうして隠れていた者は刀を突き出したまま茂みを飛び出し、今に至るというわけだ。
「うお……このっ!」
しかし、亀山とて伊達に警察官をやっていない。
バランスを崩し地べたを転がるはめにはなったが、刀は無事に回避した。
視界に映る相手の足が、こちらに向かって猛スピードで近付いてくる。
刀を目で追う余裕はない。
咄嗟にそう判断し、ヘッドスライディングをするように相手の足へとタックルを食らわす。
剣の心得でもあれば軌道を少し修正して足を刺すくらいしてきたかもしれないが、襲撃者にそこまでのスキルはないらしく再び刃は空を切った。
――痛みはない。どうやら相手はまたも攻撃を外したらしい。この隙に畳みかけよう。
考えるよりも早く体がそう判断を下し、脳から発せられた命令に従って相手の腕を抑え込もうと体を捻り、上半身を相手へと向けた。
「お、女ぁ!?」
そして、見てしまった。襲撃者の正体を。
とても暴力を振るうようには見えない極々普通の少女の姿に驚いて、素っ頓狂な声を上げる。
そしてその隙を突く形で、少女の乱暴に振った肘が亀山の側頭部に叩き込まれた。
よろけた亀山を蹴り飛ばし、再び少女が刀を振る。
避けられないと判断し、咄嗟に亀山は両腕でガード。
キレもスピードもないため、腕でのガードは間に合った。
腕が吹き飛びそのまま首を刈り取られる、などということはさすがにないと信じたいが、
無防備な腕で受けた以上無傷とまではいかないだろう。
最悪動かなくなることを覚悟した方がいい。
「っぐあ!」
腕に衝撃。
しかし、殴打された痛みはあるものの切り裂かれた様子はない。
数歩よろめいた後、少女を見る。
どうやらこれは少女にとっても予想外の事だったらしく、棒立ちのままぽかんと口を開けている。
「待て、落ち着こう、落ち着こう……な?」
その隙に体勢を立て直し、何とか敵意がないということを示そうと考える。
相手は命を握られ脅されているだけの少女、出来る事なら平和的に解決したい。
それに、少女の動きはどう見ても素人。冷静に対処すれば致命傷は負わずに済むだろう。
だから、両手を上げて話しかける事にした。
「武器は何も持ってない……ほら、な?」
両手を上げたまま背を向け、ジャケットを捲り腰にも何も装備していない事をアピールする。
しかし声を掛けられたことによって、呆然としていた少女の顔に警戒の色が戻っていった。
どうやらイマイチ信用されてないらしい。
まあ、人が惨殺されるのを間近で見せられた直後なので、無理もないのかもしれないが。
「何なら調べてくれたっていい。手付かずでそこに入ってるから」
地面に転がるデイパックを顎で指す。
どうなっているかを考えるのに気を取られ、不覚にも中身の確認を忘れていた。
だがしかし、それがいい方向に働いてくれる可能性もある。
仮に拳銃なんかが入っていた場合、間違いなくデイパックには戻さずに持ち歩いていただろう。
敵意がない事を示すために放ればいいのだろうが、『拳銃に手を伸ばした』という行為が相手の恐怖心を煽ってしまう恐れがある。
その点デイパックの中身を見てもらうという形なら、同じ拳銃が出てくるにしても相手の恐怖心を煽る心配がほとんどない。
脅威的な被害妄想の末に「デイパックに時限式爆弾が仕掛けられているかも!」とデイパックを漁らせようとしただけでパニックに陥る可能性も無いわけじゃないが、
そこまで強い被害妄想はどっちにしろ上手く対処できそうにないので、この際考えないでおく。
今出来てるルートってこの3つでおk?
A-1(A) 最初の晩餐 →ミスター・スプラッシュマン
A-3 →GROOVE ON FIGHT
A-2 人斬りと暗殺者 →GROOVE ON FIGHT
「ん?」
何とか笑みを浮かべ、少しでも良い人であると思わせるよう努力しながらデイパックの調査を促す。
こちらに刃と剥き出しの警戒心を向けたまま、少女は腰を落としてデイパックのファスナーを開いた。
こちらの方が低い位置にいるうえに周りが暗いこともあって、何が入っているのかを亀山は見ることができない。
ただ、彼女が怪訝そうにデイパックを覗きこんでいる事は分かった。
「何か……あったのか?」
出来るだけ刺激しないように、ゆっくりと尋ねる。
本当なら何かおかしなものが出たのかと自ら見に行きたいのだが、未だに下ろされる気配のない刀を見る限り止めておいた方がいいだろう。
少女は右手で刀を構えたまま、少女は中に入っていたものを順番に出していく。
水の入ったペットボトルに、地図とコンパス。筆記用具と、それからコンビニで売ってそうな安っぽいパン。
更にはポテチやタオル、懐中電灯なんかがデイパックから取り出された。
(ちょっとした旅行かよ……)
心の中でぼやきながら、亀山は考える。
サバイバルに必要な必要最低限のものは、どうやら一律で支給されるらしい。
しかしそこで疑問が生じる。
三味線に使うような糸は、サバイバルに必要なものだったろうか?
「えーっと……」
名前を知らないため上手く声をかけられないが、デイパックの中を未だ見ている少女へと話しかける。
先程までは流れ作業的に中身を取り出していたというのに、今やその手は止まっていた。
中身はもうないのだと思われる。
……もしかしなくても、あの三味線糸が武器なのだろうか。
そういえば「みんなの武器をバラバラにして配った」と言っていたように思う。
現に自分の拳銃や手錠も没収されている(目覚めて最初にそれに気付き、相当焦った)
おそらくこの三味線糸を凶器に使った殺人犯でも紛れ込んでいるのだろう。
よくよく考えれば、少女の持っている日本刀のようなものを凶器にする方がずっとレアなのだ。
にも関わらず、そんな希少な犯罪者をわざわざ探してこれに参加させているというのだろうか?
その可能性もないわけじゃない。
誰の愛用品でもない物を素人に持たせるためだけに用意するなら、刀にする意味がない。
包丁でも配った方がずっと楽だし、慣れ親しんだ武器なので日本刀よりも“成果”が期待できるように思える。
にも関わらずわざわざ刀を配るという事は、何か意図があるんだろう。
ただ単に刀を愛用する殺人鬼を呼んできているからか。
はたまた強くて非日常的なイメージのある獲物をばらまく事で殺し合いに巻き込まれているという意識を強め、
そうすることで殺し合いを加速させて“この少女のように精神的に強くない者達”を戦いへと放り込むためだろうか?
それとも、もっと他に何か意味が?
……考えても答えは出ない。
右京さんなら、あっさりと答えを得てくれるかもしれないが。
割り込みごめん支援
「ああ、ごめんなさい、早とちりをしていました」
ようやく刀を下ろし、少女が口を開いてくれた。
慌ただしく支給品をデイパックに戻し、少女はそれを亀山に差し出す。
「……貴方はこの“プログラム”には乗っていないようですね」
プログラムという聞きなれない言葉に疑問符を浮かべるも、『殺し合い』と直接表現するのが躊躇われたからだろうと考え適当に流した。
それよりも、殺し合いをする気はないってこと、きちんと彼女に言っていたっけ?
支給品を放りだした事で信頼を得られたという事だろうか?
「アフラ・マズダ様がいらっしゃればこんな初歩的なミスは犯さなかったんですけど……」
苦笑いを浮かべて少女が言う。
様付けをしてはいるが、話の内容からすると友達か何かの名前だろうか?
アフロ松田だかというニックネームの友人と引き離され、一人で殺し合いの場に拉致されてきたといったところか。
まだ子供なのに、酷い話だ。
「申し訳ありません」
少女が深々と頭を下げる。
綺麗に切りそろえられた子供らしい真っ黒な髪がダラリと垂れる。
そこまでされて、許さないなどと言えるはずがなかった。
もっとも、最初から責める気などなかったのだが。
「しょうがないさ、な」
肩をポンと叩いてやる。
ああ、セクハラになるんだっけ、これ?
「それより、一緒に来てくれるかな? 武器は三味線糸だけど、君をちゃんと守るから」
些か子供扱いをしすぎてるようにも思ったが、状況が状況だ。
恐怖に苛まれている未成年は、癇癪持ちの子供を扱うぐらい慎重に扱った方がいいだろう。
「勿論、そのつもりです」
顔を上げ、少女がその顔に笑みを浮かべる。
こんなわけのわからない状況下で『殺人』という取り返しのつかない事をしかけた少女を、自分は救う事が出来た。
それだけでなく、少女は自分を信じ共に戦ってくれるという。
亀山は、胸の奥が熱くなるのを感じた。
――そうだ、俺は警察官だ。こんなふざけたこと、絶対に止めてやる。
「本来なら私がやるべきことじゃないんだけど……」
少女が、ぽつりと呟いた。
「アフラ・マズダ様に代わって、私が認めます」
急に話が変わってしまい、亀山は話についていけなくなった。
一体何の話だろうと、頭にハテナを浮かべながら黙って話を聞いている。
「貴方は今を持って『地球を救う誇り高き戦士』になる資格を得ました、おめでとう」
微笑み、少女がパチパチと手を叩く。
先程まで感じていた追い風が、急に止んだように思えた。
「えーっと……どういうこと?」
「貴方、名前は?」
質問の直後に質問で返された。
若干ムッとはしたものの、相手は子供なのだしと不満は吐かずに飲み込んでおく。
今までもっとムカつくやりとりを何度も何度もしてきたしな、伊丹とか伊丹とか伊丹とかと。
アイツとのやりとりを想うと、これくらいでムッとするのが何だか馬鹿らしくなる。
「亀山薫、だけど……そういえば、君は?」
名乗った後で話題を先程の戦士発言に戻そうとし、そこでようやく少女の名前を未だに聞いていない事を思い出す。
「ふむ、亀山……亀……薫……
やはりアフラ・マズダ様がいらっしゃらないと、戦士としての真名を与えられないわね……何も浮かばないし……」
何やらブツブツ言っている。
さっきまでと違った意味でなかなか話し合いにならない。
なんとなく、今までの事件で出会った“変わり者”の人達を思い出した。
あの人達とも、こんな感じで会話のキャッチボールがままならなかったような気がする。
「ああ、名前だったわね。私の名前は稲田瑞穂で名簿には載っているわ」
先程デイパックに戻さなかったらしく、全員に支給されたという名簿を亀山へと手渡す。
見ると、そこには確かに稲田瑞穂の名前があった。
そして、自分の名前・亀山薫と相棒・杉下右京の名前までもが記されている。
瑞穂を説得し終えたら、この場にはおらず今頃自宅で寝ているだろう右京に連絡を取る方法を模索しようと思っていたが、
どうやらその必要はないようだ。だって、彼もこの場に来てるんだもの。
摩訶不思議な現象を主観混じりに電話越しで説明するより、実際に体験している方が“真相”を暴きやすいのだろうが、相棒がこの殺し合いに参加している事をやはり素直には喜べなかった。
今頃着々とこの悪趣味なゲームを壊す計画を立てているだろうが、何せ最強の変わり者だ。
仲間なんていないだろうし、下手したら同じ『殺し合いを止めたい者』とも対立してしまうかもしれない。
そのぐらい、杉下右京という男はコミュニケーションスキルに難があるのだ。
「しかし、それは世を忍ぶ仮の姿……」
しかしどうやら、右京のような変わり者や事件で知り合ったような変人と、自分は縁があるようだ。
目の前の少女・瑞穂は、大真面目な顔でこう告げた。
「私の真名はプリーシア・ディキアン・ミズホ。光の祝福を受けし宇宙の戦士よ」
殺し合いの場で出会った少女も、十二分に“変人”だった。
☆ ★ ☆ ★ ☆
良くも悪くも、その後数十分は瑞穂に驚かされっぱなしだった。
瑞穂があまりにも突飛な事を言っているため、状況を整理しようと亀山の提案で行われた情報交換。
そこで聞かされたのは、映画か何かのストーリーのように荒唐無稽な話だった。
大まかに言えば、瑞穂が亀山に説明したのは以下の3点だ。
【その1:稲田瑞穂の正体は宇宙の戦士プリーシア・ディキアン・ミズホである】
まず最初に聞かされたのがこれだ。
瑞穂は町の占い屋で、己がいずれ地球のために悪と戦う運命にあるとお告げを受ける。
そしてその日から瑞穂は神秘の水晶を通じて光の神アフラ・マズダと交信するようになったのだ。
さらにアフラ・マズダの言うには、瑞穂は本当は聖なる部族ディキアンの生き残りとのこと。
今まではアフラ・マズダがその者に潜む戦士の血を見出して、地球を救うための仲間を集めていたらしい(何でも友人の一人は戦士ローレラだとかなんとか)
そしてその者の真名をアフラ・マズダに教えてもらい、初めて正式に新たな戦士が生まれるんだとか。
今瑞穂は亀山が拳銃や手錠をそうされたように神秘の水晶を没収され、そのうえそれが原因でアフラ・マズダの声を聞く事が出来なくなっているのだ。
そのため緊急の措置として、プリーシア・ディキアン・ミズホが正義の心を見出した亀山を仲間に引き込み、徒党を組んで神秘の水晶を取り戻そうと考えたらしい。
瑞穂曰く、「貴方が本当に戦士なのかアフラ・マズダ様に確かめないと分からないけど、私は貴方に戦士の資格を見出した……アフラ・マズダ様に戦士と認めてもらえるまでは、私の光の力で貴方に戦士の資格を一時的に付与するわ」
そうしてよく分からない内に水の戦士ということにされてしまった(まあ、仲間が出来たこと自体はものすごく有難いが)
ちなみに酷いネーミングセンスの真名とやら(「そうね、カメール。水の戦士マウンテンカメールかっこ仮でいいかしら。正式な真名はアフラ・マズダ様と合流したら聞くわね」)は謹んで辞退したかったが、それは許してもらえなかった。
水の戦士にされたことと言い、どう考えても名字の亀を前面に押し出そうとする姿勢に伊丹ズム(造語、伊丹っぽいことの意)を感じずにはいられない。
そういえば『異常なセンス』で思い出したが、妻である美和子は今どうしているのだろうか?
朝起きたら姿が見えなくなっていたわけだが……騒ぎになる前に帰りたいものだ。
(……この子のためにも、早く事件を解決しなくちゃな)
どうやらこの“勇者ごっこ”は殺し合いの恐怖からくる現実逃避ではなく、日常的に行っていたことらしい。
何が原因で勇者ごっこを本気でやり始めたのか分からないが、この妄想癖のせいで苦しんでいるのだとしたら手助けしてあげたいと思った。
ここで出会った好というやつだ。内田先生にいい医者を紹介してもらえないか聞くぐらいはしてあげたい。
(それにしてもまさか、信じてもらえた理由がこれたあねぇ……)
瑞穂が傍らに置いている刀――先程見せて貰ったが、正確には刀ではなく模擬刀だった――に目をやる。
瑞穂にはこれが悪を切り裂く光の剣に見えているらしい。
だから、その剣で斬ることができなかった亀山を、『悪ではない存在』とみなしたのだそうだ。
なお、いきなり襲いかかってきた理由は『アフラ・マズダ様の加護に守られている筈の自分を見つけられたから、てっきり上級悪魔だと思った』だとか。
最初は序盤いきなり上級悪魔と戦うより弱るのを待ってから戦った方がいいと考え戦略的撤退をしようとしていたが、こちらが隙を見せたため急きょ襲撃することにしたらしい。
(余談だが、瑞穂の中であの時居場所がバレた理由は「水晶から引き離されていたために、あの時すでに光の加護を十分に受けれていなかったから」というのが“真相”になっている)
そのうち「どうせ善人は傷つかないから攻撃してもいいや」と考え、出会い頭に模擬刀で襲いかかったりしちゃいそうだ……しっかり監督しないとな。
【その2:この殺し合いを開いているのは地球侵略を企む悪の仕業】
瑞穂曰く、これこそが地球を滅びさせようとする壮大な計画の一部で、自分はその計画を阻止して地球を救うためにここにいるんだとか。
確かに、この殺し合いを取り仕切る連中が人間じゃないと考ても、その推理にそんなに大きな穴はないように思える。
だが、それが正解とすんなり受け入れるわけにもいかなかった。
最初にこの場所に飛ばされた謎をはじめ、数多く存在する謎を「人外の者による超技術の賜物」の一言で片付けてしまっていいものだろうか。
それに何でもかんでも超技術が真相だと言われても、正直いまいち納得が出来ない。
何かトリックがあると考えるほうが自然に思える(最も、トリックがあったとしてもそれを解くのは亀山ではなく右京だろうが)
そんなわけで、この辺りから亀山は瑞穂の話を半ば聞き流す事にしていた。
疑問を全て解決してくれる便利な敵の想像図を作り上げるより、右京さんが向かいそうな所を地図上で探した方が有意義だと感じたからだ。
そう、亀山は瑞穂のことを単なる妄想少女だと完全に思い込んでしまっている。
悪意がないであろうことは分かっているので、適当ながらも極力返事はするようにしているが。
しかし、次に得た情報で亀山は瑞穂への認識を改めさせられる事になる。
【その3:バトルロワイアルと、戦闘実験第六十八番プログラム】
それは、何気なく――本当に何気なく呟かれた瑞穂の一言によって知らされた。
「それにしても、何で今回のプログラムは大人まで参加させられているのかしら」
今回のプログラム“は”――つまりそれは、他にも瑞穂の言う『プログラム』が行われていた事を示している。
人知れずこのような虐殺が過去にあったとでも言うのだろうか? それとも、これも彼女の妄言だろうか?
考えていても仕方がないので、彼女に直接聞いてみた。
「そのプログラム……ていうのは、何、つまりその……今回みたいな事件が過去にもあったってこと?」
そして、驚いた。
瑞穂の方が、「信じられない」と言わんばかりに口をあんぐり開けた事に。
「貴方……本当に知らないの? 学校でも習ったでしょ?
ほら、太字になっているのにその上からさらにマーカーで塗らされた、あの第六十八番プログラムよ」
最近は教科書の内容が変わったとは聞くが、いずれも学習内容は減っているはずだ。
自分が学生の頃に習わなかったものを、今の子供だけが習っているとは思えないが……
「ニュースとか見ないの? ……それにしてもプログラムも知らない人間がこの大東亜共和国にいるとはね」
大東亜共和国。やはり、聞いた事のない単語だ。
だが、今回ばかりは「妄言だろう」と聞き流そうとは思えなかった。
理由はないが――強いて言うなら己のカンが、この話はしっかりと聞いておいた方がいいと告げている。
だから、彼女に聞いた。プログラムについて。無知な子供に教えるよう、丁寧に説明するよう頼んで。
「…………」
そして、絶句。言葉が喉から出てこない。
瑞穂の口から出てきた言葉は、亀山の予想の斜め上をいくものだった。
稲田瑞穂の言うプログラムは、毎年行われる国家主催の恒例行事だという。
そしてそれは中学三年生の1クラスを殺し合わせるものであり、優勝者には生還の他に大した特典は用意されてない。
放送や禁止エリアのシステム、爆弾の仕込まれた首輪を巻きつけられるという辺りは今行われているこの殺し合いと同じようだ。
しかし、プログラムで付けられた首輪は今巻かれているのと外見からして別物とのことだ。
そして殺し合いを仕切っていたのも、ブイツーだかと名乗った子供でなく、坂持という中年男性だったらしい。
坂持ら瑞穂の属する政府の人間は外国と手を結ぶ事を拒む傾向が強いそうなので、単純に大東亜共和国の実験をブイツーの所属する国が引き継いだだけではないと思うというのが瑞穂の意見だ。
だとしたらこの大人数を拉致する能力に加え、大東亜共和国の首輪を解除し新たな首輪をつけるほどの技術力すら入手している事になる。
もっとも、それが分かった所で、少なくとも今の二人にはその情報を発展させ新たな収穫を得ることなど出来ないのだが。
「……とりあえず、動くことにするわ。アフラ・マズダ様にお会いできれば多少の問題くらいすぐに解決しますしね」
互いに“自分の知る常識”を知らない相手と出会い、両者共に言葉を無くして数分後。
瑞穂の方から、行動に移ろうと提案した。
考えても答えは出ないと分かっていた亀山も、「ああ」と同意し荷物を纏める。
行き先は南。
警察署や病院といった有用な施設があるため、亀山が南下を提案したのを瑞穂が承諾する形で決定した。
瑞穂は序盤から人の集まる所に行くなど愚策だと思っているが、誰かに支給されたであろう水晶を手に入れるには積極的に人を探して回るしかない。
隠れるという選択肢を捨てるなら、リターンは大きい方がいい。
いつもなら水晶越しにアフラ・マズダ様が指示して下さる事なのだが、水晶が無いなら無いで瑞穂自身がそう結論付けるだけだ。
本人は気付いていないし、勿論それが神の言葉と信じて疑わないのだが、瑞穂の言うアフラ・マズダは所詮彼女の妄想の産物である。
故にアフラ・マズダの知力が瑞穂を越えることなどなく、結果として『アフラ・マズダに指示を仰ぐプリーシア・ディキアン・ミズホ』でいる時は無意識的に本来の自分より劣った思考しかできなくしていた。
逆に言えば、アフラ・マズダに指示を仰げず自分一人で判断しないといけない時、瑞穂はアフラ・マズダと同程度の思考が単独のまま出来るという事だ。
水晶がなくともオタオタするだけの無能にはならない。冷静に、アフラ・マズダと合流し“いつも通り”になる方法を考えるだけである。
もっとも、その“いつも通り”のノリが致命的な事態を招きかねないのがバトルロワイアルと呼ばれる殺人ゲームなのだが。
(……桐山和雄、か)
プログラムの話の際に聞かされた、瑞穂のクラスメートの名前。
瑞穂の言うには、瑞穂が先程まで参加させられていたプログラムにおいて、瑞穂が見ただけでも3人を殺害したという殺人鬼だ。
更に何度もマシンガンの音が聞こえた事から、下手をしたら彼の手にかかって死んだ者は2桁を超えるのではないかという。
彼女は彼を裁こうと背後から襲いかかり、気が付いたらあの場所にいたらしい。
殺害という手段は褒められたものではないし、目の前でやられたら止めたいと思うが、彼女の気持ちはよく分かった。
級友が手を染めるのを止めてやることができず、きっと彼女も苦しんだのだろう。
そして、葛藤の末に『死という形でケリをつける』と決断したのだろう。
自分が朝倉の凶行を止められず後悔したように、彼女も後悔していたのだ、おそらくは。
(それに、三村信史と千草貴子、織田敏憲……)
そして、この場に更に3人いるという瑞穂のクラスメート達。
いずれも亡骸を拝んだわけではないそうだが、放送でしっかり死者として発表されたらしい。
そうすると、ブイツーとやらは別々の世界を行き来できるうえに死者の蘇生まで出来るという事になってしまう。
そんなことが本当に可能なのだろうか?
それならばむしろ、全て瑞穂の妄言であると断じた方が説得力がある。
ただの模擬刀を光の剣だと思い込んでいる辺り、妄想癖以外何の変哲もない女子中学生と考えた方が妥当にも思える。
しかし、妄言と切って捨てようにも、『プログラム』に纏わる話にはリアリティがあったせいで簡単にはそれも出来ない(創作だとしたら相当な腕前だ、何せ話や世界観の練り込み方がパーフェクト)
だが、プログラムの存在を認めるという事は、同時に“自身の知らない東京”を認めることである。
それはつまり異世界のようなものを認める事と等しく、自分の世界の常識に基づいて否定していたプリーシア・ディキアン・ミズホを否定できなくなることを示す。
異世界に住む本物の戦士として、頼らねばならぬときがくるかもしれないということだ。
なにより彼女が本当にプログラムの経験者なら、彼女の話には大きな価値があることになる。
もっとも、単なる妄言だった場合時間の無駄も甚だしいが。
……結局どちらとして扱うべきか、答えは出ないままだった。
(とにかく、右京さんに会おう。右京さんなら、きっと……)
瑞穂の正体も、首輪の外し方も、きっと相棒がいつものように解決してくれるはず。
ならば自分は、相棒には出来ない事をしておこう。
仲間を集め、鍛え抜いた体で守り抜く。
それが、今の自分に出来、相棒には出来なさそうな唯一のことだ。
(瑞穂ちゃんにはあまり期待しない方がいい、かな?)
仮に瑞穂の話が本当だとしたら、彼女はかなりの戦力になる。
しかし逆に全て妄言だとしたら、わずか14ばかりの少女の命が失われることになるだろう。
念には念を、安全そうな建物を探し出して拠点にし、瑞穂はそこで待たせた方がいいかもしれない。
仮に瑞穂が戦士だとしても、彼女が女子中学生で自分が警官という事に代わりはないのだから。
「……絶対帰らせてやるからな。大丈夫、右京さんと合流出来ればこんな事件くらい」
誓いの意味を込め、瑞穂に言う。同時に、自分にも言い聞かせる。
「随分信用してるのね。その人も戦士かしら」
「さあな。ま、戦士……て感じじゃないかな。ああ、でも信用していいよ。
ちょっと変わってるけど、難事件をいくつも解決してる凄い人だから」
深呼吸し、亀山は気持ちを前に向ける。
一人でも多く救うために、亀山薫は動き出す。
「……あら、探偵……なんですか?」
ああ、そう言えば言っていなかったなと思い、改めて自分の身分を明かす。
「俺と右京さんは警視庁特命係の警官でさ――といっても、匿名には二人しかいないんだけど」
一歩踏み出し、亀山の体はE-06へと侵入した。
それから、「足元気を付けて」とだけ言い、意識を前から現れるかもしれない襲撃者の探索へと傾けた。
山を抜けるまでは慎重に進む。木々のせいで奇襲が行われやすいだろうと考えてのことだ。
後ろにいる少女を確実に守り抜くためにも、慎重になるに越したことはない。
「そう、なんですか……あ、はい、足元、気をつけます」
だから、気が付かなかった。
前方に気配がない事を確認する作業に気を取られ過ぎて、違和感一つ覚えなかった。
急に堅苦しい敬語になった稲田瑞穂が、不自然に顔を強張らせた事に。
☆ ★ ☆ ★ ☆
稲田瑞穂は歩きながら考える。
亀山薫が、警察官だった事についてを。
ハッキリ言って、大東亜共和国に住んでいる人間で警察官に好感を持っている人間など0に等しい。
気まぐれで人1人を牢屋にぶち込めてしまう国家の犬。場合によっては射殺まで許されているのだ。
そんな奴らに好感を持てと言う方が無理な注文というものである。
そこに加え、先日巻き込まれたプログラムの1件。
あれは警官ではなく兵士だったとはいえ、国家の犬には変わりない。
憎悪とまではいかずとも、瑞穂が国家権力を嫌っていても何らおかしなことではないのだ。
だが、将来地球を救うためにも警官に処刑されるわけにはいかない。
プログラムの説明時も人殺しを推奨する明確な悪である兵士達へ攻撃しようなんて考えなかったし、日常生活でも警察に目をつけられるような行動は慎んでいる。
亀山が国家の犬・警察官なのだとしたら、今後は言葉使いに気をつけ、国家機密であるプログラムについてペラペラ喋らぬようにせねばなるまい。
嫌いではあっても、きちんと従っているのだ。
単なる子供・大人の関係や加害者・被害者の関係の時ならともかく、戦士という対等なはずの立場でまで敬語を使う(戦士の先輩という意味では、むしろ敬語を使われるべきだとさえ思っている)のはどうにも好かなかったが仕方あるまい。
命あっての物種なのだ。警察には下手に逆らわない方がいい。
……そういえば正体を隠されていた間にタメ口をきいてしまっていたけど、大丈夫だろうか。
後からそのことをネチネチと言われないよう祈るばかりだ。
出来れば穏便に行きたいが、今後亀山がこちらに危害を加える素振りを見せてきたら、やはり殺してしまうしかないだろう。
警官殺しの罪を背負ってしまい、殺し合いを終えたとしても帰る場所がなくなってしまうが、自分はまだこんなところで死ぬわけにはいかないのだ。
遠い未来において地球を救う戦いをするためにも、それまでは何としてでも生き残らねばならない。
悲しいが、そのためなら多少の犠牲はやむなしだ。
戦士の称号を自ら与えた相手だし、桐山との最終決戦まで共に戦えるならそれに越したことはないのだけど。
(それにしても、プログラムを知らない政府の人間だなんて……)
今までは想像もしていなかったが、居た所でそこまでおかしくはない気はする。
こちらの言葉で自由に解説させることによりプログラムにどんな感情を抱いているのか調査できたりと、無知を装うメリットもないわけではないのだ。
もしくは、政府に潜り込み大東亜共和国を征服にかかった地球の敵のスパイとか……
それなら、この国の一般常識に疎いことにも頷ける。
ただ、本当にただのバカという可能性もある。
正義の心を持っているのに頭脳が足りない故に政府の犬をやっている場合、生かしておいた方がメリットは大きい。
自身が戦士として成長しきる前に喧嘩を売るつもりはないが、大東亜共和国は紛れもない悪だ。
そのいずれ闘うべき悪の組織に、戦士仲間が潜り込んでいるといないのとでは大違い。
無知な亀山を上手く自軍に引き込んで、この殺し合いの後で警察署内でのし上がらせる――
いや、特命と言っていたし、すでにそれなりの地位にいるのかもしれない。
とにかく、立派な戦士となった亀山をスパイとして送り込む事によって、戦士としての使命をより効率的に果たせるようになるのだ。
(……これを使うかどうかの判断は、アフラ・マズダ様に委ねるべきかもしれないわね)
ポケットに入れていた小さな袋が零れ落ちてしまっていないか確かめながら歩を進める。
この袋には、シアン化カリウム――平たく言うと毒物が入っている。
そしてこれは、自分のではなく本来亀山の支給品。
あの時デイパックの中身をチェックしていて驚いたのだが、亀山のデイパックには支給品が4つも入っていた。
全ての支給品を確認しようとポテチとタオルをどけたところ、三味線糸と粉の入った透明の小さな袋――まさに薬の袋のようなやつだ――が見つかったのだ。
自身の支給品が3つであったことと、最後に取り出そうとしたこの袋に『特別付録』とラベルがしてあったこと。
この二つから瑞穂は『支給品は基本的に1人3つ』と考え、そしてそこから一つくらい拝借しても気付かれなのではないかと思い至ったのだ。
既に亀山が中を見ていたらおしまいだったが、パンやペットボトルの位置や向きが自分のそれとまったく同じだったため、
少なくともいくつか中身を動かさねば確認できない位置にあったこの毒物には気付いていないだろうと判断したのだ。
そのため、敢えて毒物以外の支給品を外に出して亀山にも確認させる事で彼の支給品は毒物以外の3つであると印象付けた。
それからカモフラージュのため慌ただしくデイパックに中身を戻している時に、袖口に袋を隠したのだ。
ちなみに、きちんとそれを伝えられたのか定かではないが、慌ただしい行動は『間違えて相手を襲ってしまった羞恥心ゆえ』という設定でやっていた。
そしてしばらく会話をし、自然なタイミングで名簿を亀山へと渡す。
亀山の視線が名簿に移ったのを確認してから、さりげなくポケットに手を入れ袋をポケット内にしまったのだ。
そうして手に入れた毒薬で、『警官』という悪の手先を討つべきか否かを迷っていたが、結局瑞穂はそれを保留することにした。
迷った時にはアフラ・マズダ様に聞くのが一番。
亀山の処遇は合流後アフラ・マズダ様に決めていただくのがベストだろう。
そんなこと(アフラ・マズダ様が正解を一発で当てて下さるようなくっだらないこと)を考える暇があるなら、周囲の警戒をしっかりしなくちゃ。
――城岩中学3年B組女子1番、稲田瑞穂。
彼女は相当イカレているが、決して愚かや無能ではない。
人に遭遇しにくい道を選ぶ判断力や、2日近く無傷のまま過ごせる程度のサバイバル能力はある。
宿敵である桐山和雄を発見しても、隙だらけになるまで(実際には全く隙がなかったわけだが)仕掛けない冷静さがある。
年中発狂状態なこともあり、大半の者の心がへし折れていく中で、最後までマイペースを貫きとおす精神力がある。
これらのスキルがアフラ・マズダというフィルターを通して、プログラムでは遺憾無く発揮された。
城岩中のプログラムにおいて、ラスト5人まで生き延びたのは伊達ではないのだ。
もっとも、彼女が得意としていたのは『戦闘を避けて生き残ること』であり、戦闘に関しては無残としか言いようのない有様なのだが……
瑞穂の知るところではないが、プログラムの時と違い、疲労や多少の怪我くらい大きな問題としない強者がこの島には何人もいる。
拳銃以上に殺傷力のある攻撃を素手で放てる者がいる。
そんな島の中で、あまりアドバンテージにならない『逃げ隠れ』に特化している光の戦士は、いつまで生き延びれるのだろうか。
答えは、アフラ・マズダ様にも分からない。
【一日目深夜/E-06北部】
【亀山薫@相棒(実写)】
[装備]なし
[支給品]三味線糸@バトル・ロワイアル、小型液晶テレビ入りポテチ@DEATH NOTE、タオル@現実、支給品一式
[状態]左腕に打撲
[思考・行動]
1:民間人を保護しながら何とか右京と合流し、この事件の解決を図る
【稲田瑞穂@バトルロワイアル(小説)】
[装備]模擬刀@現実
[支給品]シアン化カリウム@バトル・ロワイアル、本人確認済み支給品×2、支給品一式
[状態]健康。アフラ・マズダ様のお声が聞けないため若干落ち着かない(´・ω・`)
[思考・行動]
1:神秘の水晶を奪還し、アフラ・マズダ様と再び交信する。
2:悪は討つ。亀山は……
【シアン化カリウム+外れ武器三点セット】
『特別付録・シアン化カリウム』というラベルシールの貼られた透明の袋に入った毒薬。
毒薬の存在を隠すための外れ支給品が他に3つも付いてきた。
亀山薫の支給品だが、現在は稲田瑞穂が隠し持っている。
【小型液晶テレビ入りポテチ@DEATH NOTE】
シアン化カリウムのおまけとして付いてきた外れ品のひとつ。
中に入っている小型液晶テレビがきちんと映るのかは不明。
【模擬刀@現実】
床の間に飾るようの切れない刀剣。
先端が尖っているため、首・腹部・心臓などの部位を突き刺せば殺傷も可能。
金属なので打撃武器として使えるが、逆刃刀と比べるとその威力は見劣りする。
代理終了
乙
乙です。
こいつはやべえ・・・プリーシアの本領発揮じゃねえか・・・
バトロワ世界だと警官はそういう認識なんだよなあ・・・
GJでした。
ところで、瑞穂の参戦時期は桐山の討伐とか言ってますし死亡後でいいんですか?
乙です。
バトロワも相棒も未把握なんだけど、2人ともいいキャラしてるな〜。
投下&代理投下乙です!
稲田瑞穂怖いよww
疑心暗鬼フラグも立っちゃったりしていい話でした、GJ!
ただ、セットで全然違うもの4つを1つ扱いっていうのはどうなのかな
タオルあたり抜いて3つでもいいと思うけど
>>673 了解です
じゃあwiki収録してきます
>>672 原作の伝統だよ。
特殊警棒+青酸カリのオマージュだろうし。
今まで投下されたSSのwiki収録完了しました
>>675 そうなのか、ならおkだね
原作まだ読めてないんだよなー
近所の古本屋のどこにもないしこれは取り寄せて買えということか
その辺の古本屋で一発で見つかった俺は運がいいって事か・・・
>>676 wiki収録、乙です。
ところで、今ガンソード見てるんだけど
どうやってヨロイ呼び出してるのか、仕組みが分からないんだが……特にレイが謎。
知ってる人いたら教えてほしい。
ところでルルーシュのギアスの制限はもう決まった?
>>679 こんな感じじゃなかったか
・「死ね」とか直接死にかかわる命令はできない
・精神力で抵抗すれば解除可能
そろそろ現在地図が欲しい。前スレかなんかで、誰かが張ってくれたやつなかった?
現在地図って今まで投下されたSSのキャラがどこにいるか示した地図?
うん、過去ログにそのための奴があったと思うんだけど
それは確かにあったけど、あくまで現在地を作るツールであって
ちょうど覗いてた人が誰も使い方が分からなかったから放置されてた筈。
せっかく引っ張ってきてくれたんだから、誰かそれを過去ログからサルベージしてくれ。
どこかの誰かが使い方分かるかもしれんし
これのことかな? 自分は分からなかったんだが……
332 名前: やってられない名無しさん [sage] 投稿日: 2008/09/27(土) 23:43:08 ???0
誤爆
離婚した前妻とやってた懐かしのゲームが通った。しかし1キャラだけな上、他の作品は漫画以外全部知らない。
そんな俺にできる支援といったらこれぐらいだ。受け取ってほしい。
1.
ttp://upsurusuru.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/src/up2877.zip.html に行ってzipファイルを落としてくる。
2.atpagesまたはiswebなどのperlが使えるHPを取得してくる。
3.1のzipファイルを解凍してmap.pngを変更する。
4.2で取得したHPに3で書き換えたファイルをアップロードする。
5.4でアップロードしたファイルのうちcgi-binいかにあるファイルの権限を755に設定する。
6.使ってみる。
7.不具合があっても知らない
普通に地図の上にキャラの番号をそのキャラがいる場所に置いていくんじゃダメなの?
投下&代理投下乙です!
初っ端から光の戦士が色々とぶっちぎってるwさすがだwww
亀山も警官らしく頼りがいがあっていですね〜。取り敢えず右京さんならなんとかしてくれるかもという発想もまた彼らしいw
何かと先行きが不安な気もしますが今後が気になりますね。あと状態票がw
GJ!!
それとちょっと質問が一つだけ。特にルート指定がないですけどAルートに寄せるって事でいいんですよね?
>>678 申し訳ない。ガンソードは把握してないのでわからない……自分もその内把握しようw
キャラの現在位置がわかる地図はあったら便利ですね。
しかし、自分は
>>686のやり方は技術的、知識的にどうにも出来そうにない……。
どなたか時間がある時にやってくだされば嬉しいですが……。
分岐なしのルートがAルートって事で良いのかな?
すみません、すっかり忘れてました
ルート分岐はよく分からないので、分岐なしのルート(Aルート?)に寄せさせていただきます
それと支給品の毒セットは
>>675にある通り原作の特殊警棒+毒を意識した結果ああなりました
それと遅くなりましたが代理投下ありがとうございました
素敵な物語をくれる職人さん達に何か出来ないかと思う自分…
頑張ってください!
分岐で疑問なんだが、分岐後のssでもルートに整合性が取れてるものは共通ssにした方がよくないか?
紛らわしくなにそうだし
大幅に遅れて申し訳ありません。
かなり短いですが、これより投下します。
今、かがみの周囲には建物もなく、木々もなく、ただ夜空が広がっていた。
はるか下に地面、殺戮の舞台となる島が。
つまり彼女は…………空にいた。
強くはためく衣服の音、そして、その身に受ける風により目を覚ましたその時、
彼女は何故か上空にいて、あの世へと直行ダイブの真っ最中という状況であった。
何の手違いで起こってしまったのかは不明だが、現在、猛スピードで落下中なのは間違いのない事実である。
「なああああああああああっ!!」
彼女には悠長に状況を整理している暇などなかった。
リミットはおそらくあと十数秒程度。
このまま地面に激突すれば、目を背けたくなるような悲惨な最期は明らかだ。
かがみは必死に手足をばたつかせるが、もちろん何の効果もなく、無駄な抵抗に終わる。
ふと気付く。この左手に握られているのはなんだろうと。
それは、見た目は何の変哲もないデイパックであった。
「ぱっ、パラシュートとかっ」
わずかな期待を込め、突っ込んだ手で掴んだ『なにか』を引っ張り出す。
だが、期待もむなしく、出て来たのはサーフボードのような板きれであった。
『なんでこんな物が? つーか、どう考えてもデイパックより大きいだろ』
普段の彼女ならそんなつっこみを入れる所だが、今はそれどころではない。
「もう、ダメっ」
もはやこれまで、というその時、ボードの後部、左右についた一対の小さな翼が羽ばたきだした。
錬金術によって生み出されたフライングボード。
その不思議な力が発揮され、地面への激突をギリギリの所で回避。そのまま地上を悠然と滑空する。
「うそ…………助かっ……た?」
だが、九死に一生と気が緩んだ彼女は、バランスを崩してボードから落っこちてしまう。
低空飛行であったため、落下による怪我はなかったが、その場所が傾斜になっている草原であったため、ごろごろと転がり、陸地の終点を越えて海へと落水してしまった。
「ぷはっ、げほっ」
しばらく打ち寄せる波と格闘していたが、なんとか無事に岸に上がると、気の抜けたようにその場に突っ伏した。
海水でぬれた制服が、べしゃっ、と音を立てる。
「もう、なにがなんだか」
しばしぐったりしていたが、ふと脳裏にゆたかの姿がフラッシュバックし、閉じかけた目をカッと見開いた。
そして、茫然自失の妹や、叫び声を上げる親友たちの姿が脳裏に映ると、勢いよく上体を起こし、立ち上がった。
(こんなことしてる場合じゃない……私がしっかりしなきゃいけないのに)
「みんな無事でいてよ! すぐ行くから!」
【一日目深夜/F-5 岸辺】
【柊かがみ@らき☆すた】
[装備]なし
[支給品]支給品一式 、ランダム支給品0〜2
[状態]健康
[思考・行動]
1:つかさ達を捜す。
2:あれ? そう言えばなんか色々不可思議な現象が……。
[備考]
※フライングボード@ヴィオラートのアトリエ、の所在は以降の書き手に任せます。
以上で投下終了です。
指摘等あればお願いします。
メインルートに寄せる、でお願いします。
702 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/06(月) 16:33:56 ID:1rTgoNht
投下乙!
上空にいきなり出るとかあり得るんだw
>>696 自分のSSをどこに寄せるかは書き手の意思表示
矛盾がないとかそういう問題じゃない
分岐した話がルートとして続くのは後続書き手達がそのSSに寄せる意思表示をしないかぎりありえないよ
>>698 投下乙!
かがみんそりゃ驚くわw
新鮮でおもしろかったです。
ではこちらも、田宮良子と水銀燈投下します。
良子は、喉元を一周する金属製の首輪を指の腹で撫で、軽く叩いてみた。
一見なんの変哲も無いこの首輪には爆弾が仕掛けられているという。
実際に、いつの間にか立っていたあの白い空間の中で、一人の少女が首輪の爆発によって死亡したのを見た。
中には顔を塞いだり目をそむける者の姿が見えたが、良子は少女が男に束縛され、首輪がボンッという至ってシンプルな音を発し、少女の頭が床に転がるまで一度たりとも目を離すことはなかった。
それはずっと見ていたからこそわかることだが、一秒も掛かったか掛からないかというほど一瞬の出来事だった。少女は抵抗する間も無く死んだ。
「ふむ、となるとこの首輪は邪魔になるな」
良子たちパラサイトとて、首と胴が別離すれば生を失う。この首輪は良子たちにとっても非常に危険なものだった。
しかし外すにも大きなリスクを背負うこととなる。仕組みを把握できていない今、下手に触れるのは避けたほうが良い。
ならば先ずはサンプル………つまり他者の首輪を奪い、慎重に中身を知った後に自分の首輪を外す。それしかない。
些か面倒ではあるが仕方あるまい。常に命を握られた状態で居るよりはマシだろう。
「あの白髪の少年は確実に我々の敵だ。ゲームに乗るかどうかはさて置き、首輪を解除した後であの少年は食おう。だが…」
もう一つ、良子には興味があることがあった。
あの空間に居た人間ではない、『その他』の者たち。そして人間の中に居た、『痛がり屋』ではない者たち。
彼らがこの制限された島の中でどのような感情を持ちどう行動するのか。それを観察して、研究材料の素質があるならば連れて帰りたいと考えていた。
万が一パラサイトの敵となるようであれば喰らうか殺せばいい。そんなやつらに用は無いのだから。
「どうせ首輪を外すにも時間が必要になる。それまでの暇潰しにでも研究材料の探索を―――」
良子の視界の隅に、黒い羽が一枚舞い落ちた。
+ + + +
元々彼女、水銀燈を含むローゼンメイデンは誕生と共に、父が欲するアリスを目指すために、姉妹同士でローザミスティカ――人間で言う魂のようなもの――を掛けて戦うという運命を背負っていた。
父への思いが強い水銀燈はこの宿命を受け止め、忠実にその定めに従い生きようとしていた。
そのため突然殺し合えと言われても、特別に驚くことも無く、平静状態を保つことは簡単だった。
『消さなければならないものが増えた、同時に消される危険が増えた』
このゲームが示す意味を考え、導き出した結論がこれだ。水銀燈は一連の出来事とこのゲームのことをを軽く見ていた。
人間は脆くて儚い。ドールとは違って、すぐに壊れてしまう。だからそれ以上の力を持っている自分は有利な位置に立っていると考えた。
つまり水銀燈はこう考えていたのだ。………あの空間に居た全員が、“人間”である、と。
ならば一人を、媒体……ミーディアムとして側に置けば話は早い。
二人で協力して人間を消し、姉妹からはローザミスティカを奪う。もちろん最終的にそのミーディアムも殺す。
あとは元の世界で新しいミーディアムと共に残りの姉妹を片付ければ良い。
そこまで思考すると水銀燈は木の枝に腰を据えたまま、支給品であるS&W M36の銃口を、先程からそこに佇んでいる“人間の形をした”人物に持ち上げて……。
「まきますか、まきませんか?」
+ + + +
目標にされた側、田宮良子は悠長にも緩慢な速度で声の出所へ顔を向けた。
数寸ほどの身の丈。悪魔を連想させるような黒い翼。紫に近い瞳の色。
明らかにこちらは人間ではないことが伝わってくる。しかし当然ながら、良子の仏頂面が崩れることはなかった。
「あの空間に居た“その他”の部類…人形か。貴様は人語が理解でき、話すことができるのか?」
「質問をしているのは私なんだけどぉ。まくの、まかないの?」
一方水銀燈は外面的には冷静であるが、内心では一欠けらの動揺もみせない相手にやや驚愕していた。
こちらが銃の引き金をワンプッシュするだけで自分は死ぬ。そのことは理解できているはずなのに、なぜああも落ち着いていられるのか。
通常であれば武器を構え戦闘態勢に入るとか、即座に逃げるとか、腰を抜かしたり恐怖に声を震わしたりするはずだ。
「まく、まかない。この二つの言語にいったいどういう意味がある?」
「つまり貴方が私を欲するか欲さないか、ということよおばかさぁん」
「なるほどな。ならばわたしは、『まく』方を選択しよう」
水銀燈の質問に対して、良子が決断するのに僅か一秒も掛からなかった。
わざわざ銃を突きつけるという脅迫的行為をしてまで質問してくるということは、相手は二つの選択肢のどちらか一方を望んでいるということになる。
相手の望みが後者であるならば問い掛けたところで無意味。ならば前者の回答を、つまり協力者を求めていると判断したのだ。
無論、こんな回りくどいことをしなくとも、研究熱心な良子は相手の欲求に応えるつもりでいたが。
「随分簡単ねぇ。いいのかしらぁ、そんなにあっさり決めちゃって…」
「ただし条件がある」
「なぁに?」
「貴様らの情報が欲しい」
「それだけでいいのぉ?」
「ああ」
「ふぅん……」
あまりにも淡白な様子を怪訝に思いながらも、目標に照らし合わせていた銃口を慎重に降ろす。
何か企んでいるのか、それともただ単に深く思慮しない性格というだけなのか。
いずれにせよ、水銀燈は良子に対しても常に警戒しておく必要があると考えた。
「それじゃあ早速質問させてもらうが…」
良子は、やはり真剣な面持ちを貼り付けたまま、一つの質問をぶつけた。
「貴様らが人間や我々とセックスをしたどうなる?」
【C-5 森 / 深夜】
【田宮良子@寄生獣(漫画)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式 未確認(1〜3)
[状態]健康
[思考・行動]
1水銀燈や『その他』、『痛がり屋』でないものの観察
2首輪のサンプルを入手する(死体からか、生きたままかは未定)
3首輪を解除した後に主催者を食う(ゲームに乗るか否かは未定)
【水銀燈@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]S&W M36
[支給品]支給品一式 未確認(1〜3)
[状態]健康
[思考・行動]
1………。
2自分以外の全ての人間を殺し優勝する
投下終了です。
ルートはA-2に寄せます。
>>702 逆じゃないのか?
今後ルートが細分化された場合に書き手に「○○と○○に寄せる」だと手間掛かるから
○○以外の全ルート寄せるとか言わない場合基本全ルート共通ssとなるはずだろ
真紅やスザクの登場話とか共通ルートにした方が自然だし
投下乙!
最後の質問はwww
>>710 普通はメインAルートに寄せますとか分岐のA-2ルートに寄せますとか言う
○○以外に寄せるとかは自分が新しい分岐つくるときぐらいしか言わないだろ
できるだけ既存のルートでやっていって、分岐を増やさないという書き手の意思は無視か?
>>711 でもそうなると分岐の数だけキャラの登場話も増えるから、似通った内容が増えて
「パクリだろ」的な問題が発展する恐れがあるのだけど
713 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/06(月) 17:50:19 ID:fIeOxCXm
投下乙!
良子がどんなキャラなのか知らんがセックスて・・
水銀燈これから大変そうw
>>712 したらば行けよ。迷惑すぎ。
感想も無しにここでgdgd言ってるって事は荒らしか
投下乙です
>>698 いきなり上空ってw前途多難すぎw
今度のかがみんはどう動くのか…
>>709 銀様の今後の苦労が目に見えるようだ…
奇妙なコンビになりそうで楽しみです
毒吐きで話題になったから確認だけど、ここの分岐は自分で勝手にルート混ぜ合わせて
別ルート作るの禁止?
葉鍵3の分岐ルールとは別?
>>ID:T5+Abs0T
少し静かにして下さいね
どうしても議論したいのならしたらばでお願いします
さて、今日はルイズが来る予感。
予言しておくと絶対に死なないと思われ、マンセー確率95%と出ております
あれ?龍騎から予言の人って参戦してたっけ?
58 名前: ◆.GoCzhsmFw [sage] 投稿日: 2008/10/04(土) 01:50:09 YCioNuuY0
石川五ェ門、ルイズで予約します
59 名前: ◆.GoCzhsmFw [sage] 投稿日: 2008/10/04(土) 01:52:50 YCioNuuY0
すいません。書き忘れました
>>58に志々雄真実を追加で予約します
---
投下期限が迫ってます。ご連絡いただけないでしょうか?
ギリギリセーフ?今から投下します
満月が照らす木々が生い茂る緑豊かな森の中。一人の男が首をかしげていた
「………ここは何処だ?」
男は気が付いたら、いきなり見覚えの無い部屋に連れられており、しかも不思議な衣服の少女が爆殺されていた。
そしていきなり殺し合いを命令されて、しかも自身にまで首輪をつけ今度は森の中だ。
「ちっ、わけがわからねえ。しかも俺の刀まで奪いやがって……だが何故だ?身体……おかしい。直ってやがるのか?」
男は腕を組みながら、怒りと惑いの混ざった言葉を吐く。
そしてその後、おもむろに名簿を取りながら呟く。
「宗次郎の奴と斉藤一。そして緋村抜刀斎。他の名前は……無いか。他に武器は……」
名簿をバッグに戻すと次に武器を取り出す。
「これは……西洋の剣だな?だがこれは……」
『おい?もう少し丁寧に扱えってんだ』
「…………しゃべった?」
『当たり前だろ。おれっちはデルフリンガーってんだ。お前さんの名前は』
「……志々雄真実だ。………変わった剣だな」
志々雄は最初は僅かばかり戸惑うが、すぐに落ち着いてデルフとコミュニケーションを図りだす。
一方こちらはやはり木々の生い茂る森。
そこで一人の少女が木にもたれながら、考えていた。
「はあ、どうしよう。才人とタバサを探さないと駄目だけど………やっぱり杖が無いと落ち着かないわ」
少女は右手に友人の一人が愛用する造花を持ちながら呟いた。
一応これでも魔法行使には支障は無い。しかし杖とは感触の大きく異なる造花では気分的な違和感を拭え切れるわけではない。
「………やっぱりどこか建物があるほうに行くしかないわよね」
ルイズは少しだけ間を空けて後、胸に手を当てて心拍数が正常に戻るまで深呼吸をして後、ゆっくりと歩き出す。
そしてどれだけ経っただろうか。
しばらく歩くと聞き覚えのある声が耳に届く。
「声?これって……片方は知らない声だけどもう一つは………デルフ!?」
ルイズは声を頼りにその声の方角へと向かう。
しえん
「ほう。つまりお前の世界は魔法使いの貴族が支配する世界なのか」
『ああ。でも俺の使い手は凄いんだぜ。なんたって魔法使えねえのに貴族の称号得たんだからよ』
「面白いな。だが一人も殺してないというのは気にくわねえ」
『まあな。おれっちも正直あいつの性格は甘すぎると思ってんだよ』
「抜刀斎の野郎と甘さでは良い勝負かもしれねえな。一度顔を見てえぜ」
志々雄とデルフがしゃべっていると、そこにある気配を感じ取った。
「んっ!敵さんのおでましか」
言うが早い。志々雄は一瞬で気配の元まで詰め寄り、一息に切りつける。
「はあっ!」
『んっっっっ!!!!!ちょっと待てぇっ!」
「ちいっ!」
だがそれは寸での所で止められた。
剣が大声で静止を掛けたので思わず顔面を切る寸前で止められたのだ。
「えっ?ちょっと………えっ、なにちょっと」
『貴族の娘っ子じゃねえか。もう少しで死んでたぞ』
「なっ!デルフあんたいったい!?」
「ふっ、お前ルイズという名か」
「あんた?私の名前知ってるの」
「ああ、俺は志々雄真実だ。お前この剣の持ち主の主なんだって」
「そうよ。それがなに」
「なあに。もし会ったら伝えてくれたらいい。お前の剣は俺が預かっている。お前が俺の無限刃を持ってくれば剣は返す。
だからその時は俺と戦えとな。少々性格が俺と会いそうにないんでな。抜刀斎と戦う前の前座にちょうどいい」
「前座?残念ね。それならあんたは前座で終わるわよ。あんたが才人に勝てると思ってるの」
「勝てるさ。不殺なんて甘い考えの奴に俺が負けるわけがねえ」
「なっ!あんたそれ本気で……」
「ああ、じゃあな。これ以上お前としゃべってる暇も無いんでな」
志々雄は話を強引に終わらせ、そのまま踵を返してるルイズの元から離れていった。
そしてその場にはルイズが一人残された。
「…………あったまきた。あいつ……絶対に後悔させてやるんだからっ!」
ルイズは頭が瞬間湯沸かし器のように沸騰すると杖を振りかざし、周囲の木を爆破させた。完全に八つ当たりだ。
「あいつもこの木みたいに破壊してやるんだから。次にあったら覚悟しなさいっ!」
一方その頃。
白い着物を着た侍、石川五ェ門は金属バットを持ちながら森を彷徨っている。
「さて、どうしたものか。ルパンと次元は大丈夫ではあると思うが……しかし某の斬鉄剣を奪うとはあの者只者では無い。
しかしこれからどう動く。やはりこのような物でなく、刀がほしいが……」
五ェ門が今後を考えていると、耳に爆音が届いた。
「爆発?近い。一体何がっ!」
五ェ門は森を駆け抜け爆音の元へと駆け出した。
【一日目 深夜 E-9 森】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
[装備]デルフリンガーの剣@ゼロの使い魔
[所持品]支給品一式 確認済支給品0〜2
[状態]健康
[思考・行動]
1:とりあえず無限刃を探す。
2:抜刀斎を見つけ決着をつける。宗次郎も一応探す
3:機会があれば平賀才人という男に興味有り
[備考]
デルフを通じて平賀才人、ルイズ、タバサの情報を入手しました。
登場時期は剣心と戦い死んだ直後。全身火傷が完治した状態です。
【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔@小説】
[装備]ギーシュの造花@ゼロの使い魔
[所持品]支給品一式 確認済支給品0〜2
[状態]健康 怒り心頭
[思考・行動]
1:さっさと才人を見つける
2:次にあったら志々雄真実を爆破する
【石川五ェ門@ルパン三世@アニメ】
[装備]金属バット@ひぐらしのなく頃に
[所持品]支給品一式 確認済支給品0〜2
[状態]健康
[思考・行動]
1:爆発音の元に向かう
2:斬鉄剣を見つける。
[備考]
ルイズが起こした爆発音はそれほど大きい音ではありません。
三者が今後殺し合いに乗るかは現時点では未定です
この状態だと3つの奥義も使えないのか・・・
支援
投下終了します
ルート分岐の意味が分かりにくいのでとりあえず全ルートに寄せておきます
投下乙です。
CCOはミイラじゃないのか・・・しかし金属バットを持って駆ける五ェ門・・・絵にするとかなりシュールだなwwwww
メインルートでルイズが死んでるのに全ルートに寄せるなんて出来るのか?
投下乙
五ェ門www
ルートはこうなるか?
006→007→008→014 A-1
→018 A-3
→025→018 A-4
. →016→008→018 A-2
→025→018 A-5
やけど完治ってことは、時間制限なしで奥義使えないわけか
>>729 分かりやすく言うとメインの008が自分の話に置き換わっただけと考えてくれたら良いと思います。
置き換わる?
後藤のを消すってこと?
それは要するに新ルートの発足ってことだよ
既存のルートは全部ルイズ死亡として進んでるんだから
そこまでしてルイズを生き返らせたいか……
煽ってんのは何の為に分規制にしたのかわかってんのか
>>709 投下乙です。
ママン相変わらずだよママンw
研究熱心なのは良いがそれをやったってダッt(ry
>>727 投下乙。
志々雄は何気に弱体化してる?
火傷前の技が原作だと一つもないから、
今後どうなっていくのか分かりませんね。
ルイズ生存ルートはBルートとかになるのかな?
投下乙です
分岐制の是非を議論する上で非常に価値ある一作だと思います。
SSの価値はクオリティによって決まるものではないと思い知らされなした。
意味なく登場した五右衛門もシュールで面白すぎます。
>>741 是非も何もここは最初から分岐性だから。
つまらない嫌味
新規ルートを作らないのならば、このSSはどのルートに対しても
「死んだキャラが出てくる」という明らかな矛盾点があるのでNGになりますね。分岐以前の問題ですね。
まあ、それ以前の問題でもあるんですけどね。
「ちっ、わけがわからねえ」「はあ、どうしよう」「んっ!敵さんのおでましか」
「はあっ!」 『んっっっっ!!!!!ちょっと待てぇっ!」 「ちいっ!」 「えっ?ちょっと………えっ、なにちょっと」
「なっ!」 「ふっ、」 「なっ!」 「……」
>>744 あのぉ、おもしろくないのでやめてもらえますか?
やはり見沢は如何なる場合でも害悪だな
まぁCっぽいとは思うけどね。
つうかCなんだろうな。
ハカロワみたいに、投下された話はその話に矛盾がないルート全部に乗せるんじゃないの?
矛盾がないルートがない場合は自分で今まで投下された作品を取捨選択して、矛盾が出ない新しいルートを作ってそこに入れると。
>>749 違う。
メインルートで死んだキャラを復活させた時点でそれは既に新ルート扱いになるってのは決定済み。
スザク、高良みゆきの話は他ルートにも矛盾がないから、他ルートにも入るものかと思っていた。
要するに、分岐作品が投下されると、分岐した時点からの新しいロワが生まれると考えればいいの?
そう
つまり、分岐話書いただけで満足か、他の書き手が続いてくれる自信がないかぎり安易に分岐させるべきじゃないってこった
>>752の言うような感じかな。
荒らし対策のために分岐制を導入したんだから出来るだけ分岐はつくらない方が良い。
書いた本人がメインルートに寄せると意思表示してるなら、それを尊重しようという事だね。
>>754 それは認められないでしょう。
幾ら本人が希望しようが最低限のルールは守ってもらわないと収集がつきませんし。
>>755 認められないって……。
あなたちゃんと読んでる?
>>754は分岐後の話について言ってて
>>755は分岐する話について言っている
という勘違いな予感
あ、なんか食い違ってるなと思ったらそういうことか
メインルートに矛盾するSSがあるSSをその矛盾するSSを抜いて
メインルートに入れるなんてのはいくら希望しても無理だし
逆に分岐後に書かれたSSはその書き手がどのルートに寄せるか選べるもんな
>>756 分岐後の話でしたか。
それならこちらの勘違いです、申し訳ありません。
今回の分岐話で作者が「メインルートに寄せます」と言ってましたのでその事についての話かと思ってました。
>>757-758 お騒がせして申し訳ないです。
こちらも勘違いさせたようで申し訳ないです。
自分の発言は上に出てたスザクみゆきの話にあてたものです。
誤解が解けてよかったね
タバサの人はどうした?
今日じゃなかったっけ
統一の見解としては、
・今回の話は新ルートとして成立
・続きが書かれなければそのまま放置
・この話の続きを書きたければそう明言して投下すること
こんな感じ?
764 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/07(火) 21:56:49 ID:eRrfKBKG
765 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/07(火) 23:07:35 ID:Macild6P
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:: i へ___ ヽゝ=-'"/ _,,> ヽ
:: ./ / > ='''"  ̄ ̄ ̄ ヽ
:: / .<_ ノ''" ヽ i
:: / i 人_ ノ .l
:: ,' ' ,_,,ノエエエェェ了 /
i じエ='='='" ', / ::
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/ ヽ:: d⌒) ./| _ノ __ノ
真紅、レナ投下します。
犬とは何とも愛嬌があり、賢い存在だと思う。
例えば、彼らは尻の先に生やした尻尾の振り方で他の動物に意思を知らせる。
小刻みに振れば機嫌がいい。大きく振れば相手を威嚇している。
そして尻尾を股に挟んでいれば怯えている様子という風に。
あまりにも当然過ぎる事だが、彼らも今や地球を我が物顔に蹂躙している人間と同じように生きているのだから。
そこには何らかの手段が必要となってくるのは言うまでもない。
彼らが生活の上で感じた想い――感情を伝えるために。
その事は今、この場に居る“彼”にも同じ事が言える。
彼は尻尾を小刻みに振り続け、ご機嫌な様子で一人の少女――人形に自分と遊んでくれるように願っていた。
悪意はない。
只、本来の飼い主である岩崎みなみと接するようにじゃれているだけ。
だが、彼は見落としている。
それはとても単純な事であり、且つかなり重要な事と言える。
唾液に塗れた桃色の下を縦横無尽に動かすのに夢中な彼は一向に気づかない。
何故なら、いつも遊んでもらえたみなみの身長は高く、その点での心配は要らなかったから。
そう。彼が奇しくも押し倒す形になっており、今も彼の下でもがいている少女、いや人形には――
決定的に身長が足りなかったからだ。
「ちょっとやめなさい! そ、そこは……ん、あ…………」
真紅の色で統一されたワンピース、ヘッドレス、ケープコートを纏った人形が形容しがたい喘ぎを洩らす。
顔立ちは綺麗に整えられ、蒼く煌めく両の瞳はどことなく西欧の雰囲気を漂わせる。
彼女の名は真紅。
服装の色彩が現すものと同じ名を持つローゼンメイデン第五ドール。
そして彼女こそアリスゲームと呼ばれる宿命の決めごとで、闘い続ける事を運命づけられた一体の人形。
だが、生憎今の彼女はそれどころではなかった。
頭を左右に振る度に同じように揺れた金髪のツインテールが必死さを窺わせている。
浮かべる表情は真剣そのもの。
兎に角、真紅は無礼にも自分の上に圧し掛かっている犬を――チェリーという犬をどけようと悪戦苦闘していた。
「この……いい加減に――」
その場に流れていた空気が変わり、真紅が低い声で唸るように口を開く。
両目に映るものはまさに怒りの炎が渦巻いているといった感じだ。
あまり温厚とはいえず、気に入らない事があれば手を出す事は珍しくない。
右の拳を握り、軽く腕を引いた様子から察するに忍耐の限界が既にきたのだろう。
何が楽しくて見ず知らずの犬に押し倒され、身体中を舐め回さなければならないのか。
幾ら犬が真紅にとって高貴な生き物であっても、流石にここまでやられて黙っているわけにもいかない。
(そうなのだわ、ここで時間を使うわけにはいかない。
一刻も早くこの状況の把握を……そして水銀燈の名前が何故名簿に載っていたのかを突き止めないと……)
以前、自分が倒した筈の水銀燈がこの場に居るかもしれないという謎。
水銀燈の身体を燃やしつくした事のショックからは既には立ち直っているが、それでも無視は出来ない。
今さら言える立場ではないかもしれないが、水銀燈に一言……ジャンクと言ってしまった事への詫びくらいはと真紅は考えていた。
そのため、一秒でも早くこの状況から脱しなければならないのは明白。
名探偵くんくん――真紅が憧れてやまない人形劇の主役――に押し倒されるなら悪くもない気がするが、それは所詮仮定の話にしか過ぎない。
意を決し、チェリーの大きな腹に一発、拳を喰らわせようと真紅は右の拳を振り上げようと力を込めるが――
「ひっ! っ……あ、ああ…………」
再び気が抜けたような叫びを上げ、真紅の全身から力が抜けていく。
そう。チェリーの舌が際どい箇所に滑り込み、真紅は沈黙を余儀なくされた。
服には其処等じゅうにねっとりとした液体が纏わりつき、それらは確かな不快感を催して
いる。
しかし、苦悶の声に何故か少しずつ微妙な感情が混じり溶けたような喘ぎが見え始めた。
そして心なしか真紅の両の頬がほんのりと桃色に染まってゆく。
(悔しいのだわ……! この真紅が何も出来ないなんて……)
それはまさに真紅のローゼンメイデンとして、いや淑女としてのプライドが音を立てて崩れさる瞬間。
抵抗しようにも全身を走る奇妙な感覚がその思考を中断させ、真紅は碌な行動を取れはしない。
だが、このまま大人しくしているわけにもいかないのも事実。
この状況で殺し合いとやらに乗った人物に襲われては一巻の終わりだろう。
何か打開策はないかと考え、真紅は助けを求めるように辺りを見渡す。
その時、何処からか聞き覚えのない音が響いた。
支援だぜ!
パシャ!
音と共に白色の閃光が生まれ、
思わず音がした方向へ頭をぐるりと回す真紅。
自分達が立てた音を聞きつけて誰かがやってきたのかもしれない。
害がないか、それとも危害を齎す存在か。
それを確認するために真紅は大きく両目を見開き――そして固まった。
「はううう〜〜〜〜〜かぁいいいいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
フラッシュをたく度に少女の顔が深夜に浮かび上がるのを真紅はしっかりとその目に焼き付ける。
とてつもなく恍惚な表情を浮かべて、カメラのシャッターを何度もきる少女。
彼女こそ真紅とチェリーの戯れを一心不乱に撮影し続けていた。
そう。其処には竜宮レナがカメラを構えながら立っていた。
◇ ◇ ◇
支援
「殺し合いだなんて……信じられない」
少し遡った話をしよう。
一人の少女の最期を見届ける羽目になり、いきなり殺し合いに放り込まれたレナが思い立った事は一つ。
それは先ずは仲間達と合流しようという事。
最初の場でレナは自分の友達を何人か見かけた。
彼等はレナにとって掛け替えのない仲間であり、親友と呼ぶに相応しい関係にある。
「取り敢えず、圭一君達と会おう。それしかないよ……」
雛見沢と呼ばれる小さな田舎村に一つだけ存在する学校。
全校生徒数は少なく、小学生と中学生もごちゃ混ぜになってクラスが形成されている。
そんないかにも田舎らしい学校に一つの“部活”があった。
そう。サッカー部や野球部といったような何処の中学校、高校にもあるあの部活だ。
但し、雛見沢の学校にたった一つだけあるその部活は一味違う。
部員数は少なく、10人以下。勿論、教師に部活設立の届け出など面倒な事はすっ飛ばし。
テニス部ならテニスというように普通は一つの事をするものだが、生憎一つに決まっていない。
ある時はトランプ、またある時は近所の山で探検の真似事、またまたある時はデザートの早食い競争といったように多種多様である。
更にその敗者には罰ゲームという名目の一種の決まり事があって、内容は割と濃い。
猫耳メイドや、スクール水着を着用する事などが日常的であり、その事から恥じらいを覚えるものは多く逃げ出したくなるかもしれない。
だが、その部活に在籍するレナは罰ゲームの過酷さから部活を辞めたいと思った事はなかった。
「絶対に壊させないよ。皆との楽しい思い出……これからもレナは一杯作ってみせるんだから」
理由は単純にして明快。
何故ならレナは楽しかったから。
笑えたから。大好きな仲間達と部活で遊び、心の底から笑いあえたから。
その両手で持ち切れない嬉しさと罰ゲームでちょっぴり恥ずかしい目に遭う事を比べて、一体どちらがレナにとって重要なのか。
言うまでもない、部活で仲間達と面白可笑しく馬鹿騒ぎをする方が何十倍も良い。
だからレナの決断が早かったのは必定の定理といえたのだろう。
果たして自分がこの殺し合いに生き残れるか、どこまでやれるかはわからない。
しかし、仲間達と協力すればこの異常な事態をどうにか出来るかもしれないとレナは思った。
所詮、レナ達は田舎暮らしのため少し体力があるだけの只の学生。
なんとか出来ると思うのは儚い希望だと言われても仕方ない。
だが、それでもレナは信じる事にした……部活メンバーの結束の力を。
支援
「それにこの名簿を信用する限り、悟史君も居るみたい……あの日、急に居なくなった悟史君……絶対に捜さなきゃ。
沙都子ちゃんもきっと捜してるハズ……」
そしてレナが特に気を掛けた人物、それは北条悟史という少年。
部活メンバーの一人である北条沙都子の実兄であり、数年前に突然行方知れずになった友達。
そんな悟史が何故こんな場所に居るかはわからない。
だが、この機会を逃すわけにはいかず、レナは悟史との合流を特に優先するべきだと考えた。
行方不明になる数日前に悟史に相談を持ちかけられたが、当時のレナは結果として力にはなれなかった。
あの時出来なかった事――悟史の助けになる事を固く心に誓い、レナは歩き出した。
悟史を含む部活の仲間達、そしてこの殺し合いに異を唱える者と接触するために。
「う〜ん、誰も居ないな……」
数分歩いたところで誰にも出会えず、レナは路頭に迷った。
手に持ったものは支給されたインスタントカメラと、護身用のサタンサーベルという赤い刀身の一本の剣。
フラッシュでもたいて、誰かに自分の位置を知らせようかと思い始めた矢先、レナは声を聞いた。
何かと何かが身体を擦りつけ合い、互いに息絶え絶えに喘いでいるような声。
その声の主が気になり、レナはその方向へ駆け出し――両目を見開いた。
其処にはまるでバックに無数の薔薇の花弁が舞っているような扇情的な光景が広がっていた。
金髪の、とても可愛らしい洋服を着こんだ少女が顔を赤らめながら、これまた可愛らしい――ちなみにレナ主観――犬と楽しそうに触れ合っている。
勿論、こんな場所で不謹慎な!と思う気持ちはレナにはあった。
だが、咎める思いよりも目の前の少女の愛くるしさにレナの思考は一旦停止。
何よりも可愛いものを好むレナがやるべき事は一つ。
レナは素早く手に持っていたカメラを構え、被写体をレンズに収めた。
カメラを操るレナの挙動には一切の無駄はなく、抽象的な言い方をすればまさに神速の域に達している。
この場に部活の仲間が、特に前原圭一が居たなら「凄いぜ、レナ!もっとだ!もっと取れええええええ!」と称賛してくれただろう。
そして考える暇も惜しみ、フラッシュをたいて、シャッターをきりまくった。
只、もう二度とお目にかかれないかもしれない、目の前で繰り広げられる天国。
それを思い出の一枚、いや一枚どころか数十枚程に留めておきたい。
そう思い立ち、レナは鬼気迫る勢いでシャッターをきっていた。
「はううう〜〜〜〜〜かぁいいいいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
自分を驚いたような眼で見つめてくる少女の視線に気づかない様子で――
レナは只、雄叫びをあげるかのように声を張り上げ、喜びを見せていた。
◇ ◇ ◇
「ちょっと! そこの人間! 見てないでなんとかしなさい!!」
そして再び時間は巻き戻る。
数メートル離れた場所から自分をカメラで写真撮影していたレナを見て、言葉を失った真紅。
こんな情けない姿を他人に見られるなんて……流石の真紅も恥ずかしさでより一層頬の赤みが増した。
だが、転んでも只では起きない性格の持ち主である真紅がこのまま引っ込むわけにもいかない。
直ぐにさも当然の如く名前も知らないレナに向かって、真紅は自分を助けるように言葉を飛ばす。
「う〜〜〜良い写真取れたかなぁ、楽しみ――」
「さっさとしなさい!!」
「え!? う、うんわかった!」
カメラをまるで宝物のように頬ずりするレナは真紅の言葉に気づいていない。
その態度を見て既に我慢の限界を突き抜けた真紅は、更に大声で叫ぶ。
ようやく我に返ったのだろう。
驚きのあまり思わずカメラを取り落としそうになるレナだが、なんとか死守し、少し反射的に返事をする。
睨み殺さんとばかりの形相を向けてくる真紅の気迫に飲まれる形となり、レナは取り敢えず駈け出した。
真紅一人ではどける事は出来なかったチェリーも、レナの力が加われば話は変わってくる。
傷つけないようにレナは丁寧な手つきでチェリーの身体を抱えて、どけてやった。
また、当のチェリーもそろそろ真紅への興味が尽きたのだろう。
レナによって真紅の身体から引き離された後、何処かへ歩き出し、夜の草原地帯へ消えていってしまった。
「ふぅ……礼を言っておくのだわ」
そして、ようやく一息つけた真紅が倒れていた身体を半分程起こす。
発する言葉の旨はレナへの感謝の意を含むもの。
多少ぶしつけな要求をする事にはなったが、レナに対して感謝の気持ちが全くないわけではない。
まあ、そっちのけでシャッターをきったなど少々気に入らない行動はあったのは確かだが、取り敢えず危機は去った。
そう考え、真紅は立ち上がって改めてレナと話をしようと身体を起こそうとするが――
真紅は未だ脅威が去っていない事に気づいていなかった。
最早、真紅からの印象では魔犬と称するに相応しいチェリーは何処かへ歩いて行ったため、此処には居ない。
ならば、一体何があるというのか。もしや、今度こそ殺し合いに乗った人物が現れたというのだろうか。
否。そうではない。既にその脅威は真紅の目の前に迫っている。
そう。チェリーの所業により衣服が乱れてしまった真紅の直ぐ近くに――
「か、かぁいいい〜〜〜! お持ち帰りいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
顔を輝かせながら真紅に抱きつく影が一つ。
言うまでもない、勿論レナだ。
真紅が人間にしては異様に小さい事にも特に気にしている様子もない。
重要なのは真紅一点のみ。
チェリーによって隠されていた真紅の姿はレナにかつてない衝撃を齎す。
可愛らしいドレス風未な服装を纏った小さな少女が尻もちをつき、此方を見上げている。
そんな光景を見て、レナは衝動的に飛びかかっていたという訳だ。
可愛いものに目がないレナが黙って見ているわけもある筈がない。
「ち、ちょっと! 離れな――――あ、熱っ!!」
再び身体の自由を奪われた真紅。
先程のように身体中を舐められるのではなく、今度はレナが自らの頬を擦りつけてきている。
そして、そのままレナは真紅の柔肌を楽しみかのように全力で頬ずりを開始。
ローゼンメイデン第二ドール、金糸雀のマスターの愛情表現、通称“まさちゅーせっちゅ”に酷似した動きを見せる。
嬉しさで緩み切った表情を浮かべながら、真紅の小さな身体を満喫する。
やがて何度も何度もレナと真紅の頬が擦れ合い、やがてほんの少しだが摩擦熱を帯びる程までにもなった。
頬に走る熱を感知し、真紅は思わず声を上げるがレナは一向に止まらない。
支援
「レナ、感激だよ! こんなに可愛い女の子が居たなんて……うううーやっぱりかぁいいいいいいいいい〜〜〜〜〜!!」
寧ろ更に速度が増したような気配さえ見受けられるレナ。
そんなレナを見かねて、真紅の目つきが変わり始める。
その目つきはまさしく、怒りが最高潮まで上り詰めた証。
強引に首を回し、真紅の髪の毛がフワリと揺れて――
「いい加減にしなさい!」
強烈なしなりを経て、真紅のツインテールの片方がまるで鞭のようにレナの頬を殴りつける。
そう。それこそが真紅の奥の手であり、同じローゼンメイデンの仲間から恐れられている打撃技。
ある一人の姉妹は何やら日夜進化していると踏んでいるがこの場では関係ない事なので省略する。
兎に角、巻き毛を応用した反撃により、レナの身体はいとも容易く横へ吹っ飛ばされた。
その時、衝撃により飛んで行ったレナは何故か恍惚な表情を浮かべていた。
恐らく、直撃の瞬間まで気づいていなかったのだろう。
笑顔を浮かべながらレナの身体はほんの数秒間宙を舞い……そして、ドサっという音を立てて地面に身体を打ちつけた。
「……先行きが不安なのだわ」
倒れ伏したレナを見て、真紅は憔悴しきった様子で重苦しい声を洩らす。
一方レナの方は見た目よりは衝撃は軽かったらしく、直ぐにでも起き上がれそうな様子だ。
そう。この数分間で起きた出来事の一部始終こそが出会い。
真紅にとっては最悪な、レナにとっては最高な――
二人の出会いだった。
【一日目深夜/E−10 道端の草むら】
【真紅@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品0〜1、手鏡@現実、
[状態] 疲労 不機嫌
[思考・行動]
基本思考:元の世界に帰る。
1:取り敢えずレナと話をする
2:V.V.の元に辿り着く手掛かりを探す。
3:翠星石、蒼星石との合流。水銀燈には謝りたい。
[備考]
※チェリーは何処かへ行きました。
【竜宮レナ@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]インスタントカメラ@現実 サタンサーベル@仮面ライダーBLACK
[所持品]支給品一式、ランダム支給品0〜1
[状態] 健康 ご機嫌
[思考・行動]
基本思考:元の世界に帰る。
1:真紅と話す。
2:圭一、魅音、詩音、沙都子、悟史と合流する。
[備考]
※参加時期は未定です。
投下終了しました。支援嬉しかったです!
ルートは「深夜の狂気」の続きということでメインルートに寄せます。
それでは感想などお待ちしています〜。
投下乙!
エロ!エロいぞ!
だがそれがまたよし!
よくやったGJ!
投下乙、実にけしからんな
いいぞ、もっとやれ
乙、これはマジでGJだ。
しかし、メインルートってどれ?
A-1ルートに決まってるだろ
メインルート=Aルート=A-1ルートだな
てか他のルートは全部分岐なんだからA-1しかメインはないと思うが
感想どうもです。
メインルートはA-1ルートです。
それと状態表のレナがローゼン出典になっていたので、wikiに収録され次第修正しますね。
とりあえず今まで登場したキャラの現在位置をまとめてみました
A−1ルート
A−3 美術館前 田村令子
A−10 研究所付近 狭間偉出夫
B−2 ホテル前 泉新一
B−6 山小屋 ルルーシュ・ランペルージ 柊つかさ 浅倉威
B−8 道路付近 織田敏憲
C−2 中心部 劉鳳 翠星石
C−3 西部 南光太郎
C−4 廃洋館 杉下右京 L
C−4 廃洋館付近 カズマ 岩崎みなみ
C−8 動物園付近 蒼星石 橘あすか
D−7 森 ルパン三世 夜神月
D−8 山道 枢木スザク 高良みゆき
E−6 北部 亀山薫 稲田瑞穂
E−10 草むら 真紅 竜宮レナ
F−5 岸辺 柊かがみ
F−7 図書館 シャドームーン
F−10 民家の前 後藤
G−2 ホテル前 ジェレミア・ゴットバルト 山田奈緒子
G−4 森 北条沙都子 東条悟
G−6 水族館 上田次郎 由詫かなみ
G−10 遊園地付近 泉こなた
H−9 警察署内 園崎詩音
J−1 座礁船内 蒼嶋駿朔 千草貴子
A−2ルート
C−5 森 田宮良子 水銀燈
H−2 カジノ ロロ・ランペルージ
A−3ルート
B−3 美術館内 ノブ(男主人公)
A−4ルート
E−9 森 志々雄真実 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 石川五ェ門
A-4ルートはもうCルートでいいよ
シャドームーンと銭形のとっつぁんが抜けてますねorz
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あーやっぱ確実に奴なんだなあ。
したらば管理人さーん、アク禁出来てないですよー?
遅ればせながら投下乙
レナも真紅も原作に忠実で生き生きとしてました
この盛り下がりようは過疎まっしぐらだな
現在位置まとめ&地図乙です!
後藤の周りってメインヒロインが多いね……。
こなたスーパーピンチ!
心配しなくてもこなたは死なないと思うよ。
つい先ほど正式に過疎ロワ認定がなされたので恐らくこのまま忘れ去られて終わりだと思う。
ルイズと後藤の対決はドキドキした。
殺し合いしてるなーって
あのSSは好きだったけど書き手が嫌いだった
ねがきゃんおつ
ネガキャンの意味調べておいで
809 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 20:43:34 ID:53eEjG6G
偉そうな荒らしが書き手追放を宣言するなんて末期も良いとこだな
あぁ、それと何が書き手追放宣言と等価だってことぐらい説明させるなよ
自分的には分岐制撤廃してもいいと思うけどなぁ。
やっぱシンプルなほうが分かりやすいし。
修正すれば良くなるなら、分岐するより直した方が書き手のスキルアップにもなると思う。
で、NG議論連発ってわけかい?
従来のロワどおりになるだけだろ
分岐制撤廃……やってみるか?
確かに分かりづらいし、それでいいかもしれないな。
撤廃するとしたら、A-2ルートでOKか?
分岐制撤廃って既に分岐したssをメイン以外強制NGだろ
後付NGって酷くね?
だったらこれから新ルート作るのを禁止でいいんじゃないか?
既に分岐されたルート(A-2とか)の続きは書くのはOKで。
議論スレに持ち込むべきか否か
いい加減夢から覚めろ。
この状態は、分岐制があろうが無かろうが大差無い。
過疎は過疎だ。
まともなロワスレなら分岐だろうがそうじゃなかろうが進展する。
最初のスレ立てでまず× 立て逃げの乱立厨
作品決定で× 「今からロワします。投票は0時まで」人気投票スレですか?
これで集まるのは交流所経由のロワ慣れした奴らぐらいのもん。
そこでありきたりな「とりあえず支給品を確認しておくか→主催、絶対倒す!」なつまらない開幕話を量産すりゃあ、そりゃあ過疎る。
盛況ロワしか知らない可哀想な子が騒いでるのは分かった
失敗する理由は分かったけど、一々本スレにまできて騒ぎ立ててる理由は何?
まだ何とかしたいとは思うし、序盤なら改善出来そう、って思うのは間違いなんだろうか。
せっかく好きな作品が出てるから、もうちょい足掻いてみたいけどね。
現在予約ゼロ
よやくきた
ルイズ生存ルートはC(キャプ)ルートで間違いなさそうですか?
これまでに分岐された分を理由投票でまとめてこれから一切分岐無しでいいんじゃない?
そして修正破棄の話がスルーされた時だけその人の作品を別ルートに置くとか
まぁ現状を見るに一本化に賛成だな
はっきり言ってネタの分散化になってるだけだし。
その際、修正要求と議論はしたらばですることに徹底すりゃいい。
議論が紛糾してきた場合は書き手陣の発言に優先権を持たせりゃ万全だろ。
これで分岐制止めたらNG議論で完膚無きまでに荒れてgdgdになると思うけどねえ。
Cルートで書く彼はまだまだ頑張るみたいだし、彼を隔離しないことには進まないし。
したらば管理人さんはアク禁してくれないのかしら
--あらすじ--
かがみ、織田に襲われる。
↓
才人、颯爽と登場。織田を撃退。
↓
かがみと才人、対主催チーム結成。
多分こんな感じだろうな。
したらば管理人はすでに逃亡している
実はCがしたらば管理人である。
好きな方を選べ
ネガキャンきめえ
ネガキャンというか実際に何回もあったからなぁ
もうしたらばも新しくしたがいいんじゃね?
833 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 11:54:35 ID:k0UWwzGu
勝者:ksk・オールジャンル
敗者:○・多ジャンル・ゲームキャラ
敗因について一言
その勝者と敗者のロワにはそれぞれ共通点がある
気付いている奴はいるかな?
ヒントは書き手
当事者達は気付いてるだろうな
書き手が小学生とか?
敗因?読み手の民度だよ。」
良く考えたら、分岐させた書き手はメインルート書き辛いんじゃないか?
「おいおい、分岐させたの放ったらかしかよ」とかなってさ。
結局、同じロワ内で書き手が分散してしまうわけだ。
ハカロワ見てみたらほとんど名無しだし、最初から分岐に抵抗感を持たれない環境だったんだな。
つまり分岐制で行くならトリ無し進行がベストと言うことだ。
平日の昼からここまで必死に自演するとは
>>827 それが自演で分岐制やめようぜ!なんて言ってる荒らしの狙いでしょ?
論理性0の馬鹿を装うのは逆効果だから笑って見てられるけど
いちいち○○ルートに寄せます〜ってのを書き手に言わせてる時点で分岐制を勘違いしてる気が
荒らしを根絶するために取った方法で荒れたら元も子も無いと思うんだが
全く根絶できてない荒らし
最初は期待感を持たせたがいつの間にか消えていた管理人
このスレにあるまともなモノってなんだ?
荒れてると言うより、論理性のない自演をしてる人が約一人居るってだけだと思う。
そもそも今まともな予約は無いんだし。
今、まともな予約がないと判断した理由は?
おや、したらば見たら予約が削除されてるよ。
しかし何の事前連絡もなしに削除とかどういう事?
>>843 そういう言い方が煽ることを覚えておいて欲しい。
展開予想で決めつけるなんてもってのほか、そんな事するから書き手が離れていくんだ。
原因は読み手だよ。
>>845 何があったのか詳しく説明しな
何も説明してないと、気味が悪いだけだ
849 :
845:2008/10/10(金) 21:05:55 ID:ZGegUJD6
すまん、知らぬ間に予約が来ていた。確認しなかった俺が悪い。
しかし、確認したらしたで謎の予約削除とかあってよく分からん。
削除したのは単なる宣伝とかかもしれんだろ
一々連絡入れんよそんなもん
少なくともルイズ生存ルート書いた◆.GoCzhsmFwが かがみ、織田、才人で予約してたよ。
マジか……そりゃ、勝手に削除するのはどうかと思うな……
どうせCなんだろうけど、一応報告ぐらい……
確かにあんたの言うとおり少しおかしいかもしれん
今は忙しいからとりあえず削除だけでもしといたとか?
とりあえずで削除権行使するのか、ここの管理人は?
なんにしても管理人ぐるみでルイズ殺しを認め(そりゃ認めない方が普通のロワとしておかしいとは思うが)
何の議論もなしに、今のところおかしなことを一つもしてなかった ◆.GoCzhsmFw を追放したって事か……
こりゃ荒れそうだ
荒れるわけねぇだろ
いや、十分おかしなことはしてたと思うよ。
ルイズ死亡SSを全部入れ替えろとか言いだしてるし。
しかもその後は弁解も何もなし。
いや、ルイズ死亡SSを全部入れ替えろって死亡SSは一個しかないだろ?
まあ可能性としちゃ本人が管理人宛に直接メールして消してもらったってこともなくはないし
問題視したいなら本人がここで追及するだろ
>>858 ルイズ死亡話と自分が書いた生存話を入れ替えろって言ってたよ。
しかしまだ目に見えた悪事を働いてない荒らしを追い出すため色々とやるなら分岐性は邪魔なような
議論が不要なうえ『無視することで実質破棄にできる』からってことで採用したけど、逆に言えば基本的に荒らしまがいのだろうが通すことは通しますってルールなわけだし
分岐性なのにNG(参加拒否)し出すとわけわからんくなるよ
>>860 いやそれ、新しいルートを発生させろって意味だろ?
分岐制本来の使い方じゃん
>>862 メインルートの話と入れ換えて、死亡話はwikiからも削除しろとでも言ったんだと思うよ
あと予約スレに管理人氏のレスがある、どうやらCだったらしい
分岐じゃなくてメインルートに入れてほしいっていってたよ
マジか……
>>732を読んだ時には、単にメインの008を自分のに置き換えたルートを新しく発足させろって意味だと思ってた
やっぱり、人間のクズだな
新しく分岐ルートを作るんじゃなくて自分がメインルートに居座るつもりかよw
マジで屑だな。
そら擁護の余地なくアホだな
ハカロワと同じ分岐制にして、メインルートなんて概念をなしにしよう。
伸びるところは伸びるし。