1 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
サイバーパンクな世界観を考えよう
そして創作しよう
>>1 先ずはお前が見本に創作しろ。話はそれからだ。
中二病ん時にサイバーパンク設定考えて原稿用紙換算二百枚に及ぶ屑作書いてたわ
サイバー設定の説明でパンクする
サイバーパーツで邪気眼を埋めこむんですね、わかります
>>1 サイバーパンクな世界観を考えようって言うけれど、ゼロから考えるのは難しいぞ
こんな世界観で、こういう話を考えてるってのを提示して欲しいな
スレ立てたからには、ある程度思い浮かべてるんでしょ?
なんかこう、199X年に核ミサイルが落ちてだな
6 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 00:12:57 ID:80F6WaLu
舞台は西暦2500年辺り
2300年辺りから「モータルゲート」と呼ばれる別次元とのチャンネルが世界各地で開き出す
ゲートを潜って別次元の住人である「イモータル」が出現し、人類への無差別攻撃を開始
イモータルは多種多様な形状と能力を持った、獰猛で残虐な異形の怪物。意思の疎通は不可能
生命力及び戦闘能力が極めて高く、ゲートから無尽蔵に出現する
人類はこれに対抗すべく技術力を高め、急速に文明を発展させた
高周波振動兵器やレーザー兵器、遺伝子操作のドーピングにサイボーグアーマー(体を機械化)、無人機動兵器や高度なAI等
数々のシステムが作られ、次々に配備・投入されていく
それから200年間、人類VSイモータルの戦いは決着を見ぬまま慢性化
この間に国家は疲弊・弱体化し、代わって新製品を世に送り出し続ける民間企業や、『安全』という商品提供で人心を獲得した警備会社が勢力を拡大
イモータルを討伐する専門職「スレイヤー」の需要が高まり、強力なスレイヤー部隊を有する企業・警備会社による討伐競争が巻き起こる
スレイヤーとなるキャラを中心に、彼等の戦いや仲間との交流や私生活、対立企業・警備会社保有部隊との競争や共同作戦等
この世界で各キャラが辿る生き方を描く
と、いった感じか
SFは設定を作るのは難しくない、過去の多数の作品から拝借すればいいのだから
しかし設定にリアリティを与えるのが大変に難しいのだ
とりあえずニューロマンサー読んでくる
9 :
ルナ:2008/09/25(木) 03:04:49 ID:NAci+BHh
・・・2300年辺りから「モータルゲート」と呼ばれる別次元とのチャンネルが世界各地で開き出す
ゲートを潜って別次元の住人である「イモータル」が出現し、人類への無差別攻撃を開始
イモータルは多種多様な形状と能力を持った、獰猛で残虐な異形の怪物。意思の疎通は不可能
生命力及び戦闘能力が極めて高く、ゲートから無尽蔵に出現する
人類はこれに対抗すべく技術力を高め、急速に文明を発展させた
高周波振動兵器やレーザー兵器、遺伝子操作のドーピングにサイボーグアーマー(体を機械化)、無人機動兵器や高度なAI等
数々のシステムが作られ、次々に配備・投入されていく
それから200年間、人類VSイモータルの戦いは決着を見ぬまま慢性化
この間に国家は疲弊・弱体化し、代わって新製品を世に送り出し続ける民間企業や、『安全』という商品提供で人心を獲得した警備会社が勢力を拡大
イモータルを討伐する専門職「スレイヤー」の需要が高まり、強力なスレイヤー部隊を有する企業・警備会社による討伐競争が巻き起こった・・・
操作卓の小さな画面に映し出されていた文章が急に薄れて消えた。調節ボタンに指が
触れるより早く、別の文章が浮かび上がる。
「ヤン准将、司令官がお呼びです。指揮官席へ至急おいでください」
読書の途中を邪魔されたヤン・ウェンリー准将は、軍用ベレーを取って
収まりの悪い黒い頭髪をかき回した・・・
こんなんしか思い浮かばん
銀英伝w
パンクが足りねぇえ
壮大なスケール感とかは不要だよな
もうちょい泥臭い錆だらけの工業地帯みたいな空気の中で
アンドロイドとか反政府軍とか閉塞感出したい
とりあえずクズ鉄街で頭部だけで冬眠してる女性サイボーグを拾うところから
12 :
追加:2008/09/25(木) 15:12:35 ID:2rC2UIl5
『イモータル』
姿形は多種多様。大きさ、ポテンシャルも個体別にまちまち
身体構造は生物的だが、中には無機物と融合して自己進化するものも
知能は低く、破壊衝動と闘争本能の塊
イモータル同士、固有の生体パルスを送受信しあい、同種体と敵勢体を判別する
生命活動が停止すると体は粒子状に分解し消滅。核と呼ばれる物質だけが残る
核は高純度なエネルギーの結晶体で、資源価値がすこぶる高い
強いイモータル、巨大なイモータル程、核は大きくなり、大きさに比例して価値も高まる
『スレイヤー』
イモータルを狩る専門職。年齢、性別、人種、国籍、経歴一切不問
ただ実力のみが問われる
企業や警備会社に属す者、軍に寄る者、何処にも属さない者に分かれる
戦歴によってランク付けされる
Eクラス…年間500体撃破者
Dクラス…年間1000体撃破者
Cクラス…年間1500体撃破者
Bクラス…年間2000体撃破者
Aクラス…年間3000体撃破者
AAクラス…年間5000体撃破者
AAAクラス…年間10000体撃破者
Sクラス…年間撃破数10000体を3年連続達成
企業・警備会社・軍所属者は雇用側が計測してくれるが、無所属者は自身で記録を付けねばなら
13 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 16:46:18 ID:J8pOuoEN
小中学生かよ
>>11 重税やら治安維持名目で行う軍部の横暴やら、政府による住民締め付けのキツそうなのを妄想
街の奥の方に建ってるプラントみたいな所で、人工的に人間造ってそう
電脳コイルの変形版というか
そこいらじゅうにネット内から立体映像が出てくる世界で
虚構と現実の境界が曖昧になっていく話なら以前書いたことが
>12そのやり方中二病な小説設定っていうスレに今日書かれてたぞ
今日も陽の光は遠い。
ただでさえ遠いのに、その恩恵を妨げるように黒煙が天を覆う。
此処の空気は何時も淀んでいる。風は変わらず濁っている。
目に映る物は錆と共にあり、煤けた粉埃が肌にまとわりつく。
歩く度に陰鬱となるのも、何時もの事。
此処は地下の更に下へ築かれた「地球最終都市」最下層区。地上は遥か上方だ。
此処に在るのは複雑怪奇な機物の群と、皆が住居代わりに使っている横倒れた塔の残骸。
元々は旧大戦で用済みとなった兵器や機器を破棄する為に作られた、巨大なゴミ捨て場らしい。
僕等の先祖は投棄されたそれを選別し、再利用出来そうな部品を回収する「盤離屋」なのだと教えられた。
集めた部品を再加工して製品を作り、上層の市民階級へ提供する事で日々の糧を得ていたという。
けれどそれも遠い過去の話。
今じゃ上の連中は誰も、この街になんか興味を示さない。僕の見た記録では、誰かが降りてくるなんて事、この200年近く一度もなかった。
上がっていく命知らずは今もたまに居るけれど。
でも彼等は決まって、半時としないで死体になって降ってくる。
大昔の防衛装置が今も稼動していて、上との境界で番をしているからだ。許可無く近付く者を無差別に攻撃し、高出力のレーザーで侵入者を容赦なく撃ち抜いてしまう。
生身の人間にそれを防ぐ術はない。
僕等の先祖がまだ「盤離屋」をやっていた頃は上から降りてきた行商の者と一緒に、ある程度は上がっていけたらしいけど。
何に使うのか意味の判らないガラクタが、雑多に散らばり積み上げられた中央通路。
通路を始め街の要所には、恐ろしく頑丈な巨大構造物が、天空の果てまで延々と伸び建っている。
断定は出来ないけれど、上層を支える支柱の一部なのだろう、と、僕の祖父は言っていた。
見慣れた光景を瞳に映し、歩き慣れた道を30分程進めば、一際大きな広場へ出る。
其処がこの街「最下街」の中心部。定期的に上から色んな物が降ってくる、街と全住民の生命線のような場所。
僕たち工業師は、此処に集まる上の廃物を漁って、使えそうな部品を見繕い、持って帰って組み立て直すのが仕事だ。
僕等が主に作るのは、人造蛋白質精製プラントの交換部品と、浄化流製水システム及び供給管の整備部品になる。
もう何百年も起動し続けている生命維持機関の内で、環境調整用ナノマシンの補修システムと並んで重要な装置。もしこれ等が故障して、尚且つ修理出来なければ「最下街」の住民は例外なく死に絶えるだろう。
精製プラントの停止は食料の栽育を終わらせ、製水システムの障害は飲料水・生活水の枯渇を招く。水も食料もなしに人は生きられない。
中央広場で何時ものように廃材を掻き分けて、何時ものように使えそうな物を引っ張り出してから、僕は何時ものように帰路へついた。
今日の収穫は四角形の黒い箱と、妙な形に捻れた配線の塊。それから十字型の溝を持つ掌大の球体だ。
どういう用途で使われていたかは判らない。けれど分解して中身を弄くる僕にとってはどうでもいい。
僕は必要な物を必要なだけ作るだけだから。
「あっ」
手に入れた物品を両手に抱え来た道を戻る途中、持っていた球体が手から滑り落ちた。
折角見付けた商売道具が、コロコロと転がっていく。
追わなくては。
それまでの進行経路とは異なる方向へ行ってしまう球体を追い、僕は中央通路の脇道へ入った。
道が傾斜している訳でもないのに、例の球体はどこまでも転がっていく。
しかも中々に速い。
必死にそれへ続くうち、どんどん見慣れない場所へ入り込んでいるようだ。
けれど退く訳にはいかない。何としても取り戻すんだ。
もう意地になって、小走りで球を追う。それなのに距離が縮まらない。
まるで僕の歩調に合わせてスピードを上げているかのよう。
そうこうしているうち、僕の幾らか前方で唐突に球体が止まった。
独りでにではなく、何かにぶつかった為に。
兎に角、これでようやく追いつける。
僕は速めた足のまま、球体へ駆け寄った。
だがそこで気付いてしまう。球体が何にぶつかって止まったかを。
顔だ。
いや、正確には頭と言うべきか。
あろう事か、路上から頭が生えている。それも女性のもの。
眠っているのだろうか、それとも死んでいるのだろうか。瞼は固く閉じられていた。
何とも言えない光景を前に、僕は成す術無く立ち尽くす。ただじっと、見知らぬ女性の顔を見詰めたまま。
>>11の意見から作ってみた
世界観としては、何か凄い大戦争からン百年後
多層構造の超巨大物体「地球最終都市」が舞台
閉鎖空間ってのをイメージしたら最下層になった
たぶん埋まってた女の頭は、旧大戦期の遺物?
銃夢だろ
銃夢だろx2
個人的には二瓶世界をイメージしてみたんだが
調べてみたら確かに銃夢ね
恐ろしい程に銃夢ね
知らないままでいたかった、ショック
魔剣XとかBLAMEは?
23 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 19:59:42 ID:NaW7BNo8
浮上するぞー!みんな伏せろ!
ここまでシャドウランなし
「JM」「ブレードランナー」「ニルヴァーナ」もなし
シャドウランとギャランドゥって似てる
サイバーパンクな世界ってアキラみたいな世界?
機械生物的な拡張、インプラントやサイバーデッキ、マシーンと人体の融合
頭のてっぺんから足のつま先まで機械と混じっている、サイバネティクス技術
そこに住む人間も無感情でハードボイルド的な作風が根底にある
……ということなので超能力だったり、主人公が激情的なアキラは
サイバーパンクの世界観とは少し作風が違う
最近でサイバーパンクな作品て何かあったっけ?
バイオメガぐらい?
30 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/10/05(日) 13:25:36 ID:fR2Pllwz
31 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/10/05(日) 13:34:22 ID:fR2Pllwz
>>29 「銃夢ラストオーダー」連載中だぞ。
ラスボスはナノマシーンでサイボーグの体をハッキングしてくるおっさん。
ギブソン臭がしないとサイバーパンクじゃないのかな
難しいね!
主人公がナノマシンのせいで半永久的に再生するせいで殺せないorz
ナノマシンは便利過ぎるから個人的に禁じ手w
約60兆個のナノマシン群体で出来た主人公
ナノマシン一つ一つに別個の意思がある
その所為で約60兆人格
一行毎に性格が変わる
書く方も読む方も試練
ナノマシンは電磁波浴びると死ぬよ
>>37 mjd?じゃあナノマシンあんま役に立たねえじゃん
39 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 22:37:17 ID:2ROIuEdS
このスレはいつ来ても止まってるな
だってサイバーパンクってよくわからんの
サイバーがパンクってんだろ
そもそもSFスレあるしな
SFめったに見ないけどな
変なリンクは見るけど
電磁発勁と聞いて飛んできました
電磁……何?
46 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 23:07:49 ID:cjTq33ri
age
天意もなく、神仏もなく、我はこの一刀に賭ける修羅
48 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/04(火) 09:06:36 ID:GhGYqHmQ
サイバーパンクは古臭い
よし、本格的にサイバーパンクのショートショートをひとつ作り上げるぞ。
まず、サイボーグと生命工学が普及した未来。
ネットが街を覆い、情報が常に歩く人々にまで行き渡っている。
そんな社会で、何か新現象は起きるか。
新しい現象を思い浮かんだら書きこんでくれ。
思い浮かんだ。選挙だ。直接民主制が行われる未来社会を描くことにした。
俺も、俺も
西暦3016 東京メガフロート T−3区画
下水をブチけたかような濁った空から、赤黒い雲が裂けてゆく。
行き過ぎた環境破壊と土壌汚染により、行き場所を失った人類は
海にちっぽけな島を浮かべ、そこで生活するはめとなった、ここは元”東京メガフロート”
降りしきる酸の雨がコンクリートを崩し、あらかた廃墟の様相を呈したビル街で
男は羽織ったコートの中からイコライザーを取り出し、弾倉の残弾を確かめる。
「聞こえてんのかッ! アーミテイジッ!」
「すいません局長、どうも電離層の影響で通信の調子が悪いようで」
「弁解は聞いとらんッ! ナマモノの処分は済んだのかッ!」
皮膚下に埋め込んだインプラント通信、耳小骨に直接振動を加え
携帯する必要も無く相手と会話でき、暇な時にはENKAも聞けるオコサマ製。
もっともブローカーから買い付けた安物では電波の通りがすこぶる悪い。
文字通り耳元でガナリ散らす上司に適当に相槌を加え、男は周囲に目を凝らす。
「そちらへ数人向かっているッ! 逃がすなよッ!」
「スモッグが酷くて視界が悪い、”ピット”を使うか」
手元に持った端末を扱い、視覚センサーにフィード、プログラムを起動すると
熱源探査視覚により、周囲の瓦礫の見通す、瓦礫に隠れる人型の熱源。
男は振り上げたイコライザーを始動し、電磁力により加速された質量弾を放つ。
「FUCK OFF(失せろ)」
放たれた質量弾がハリボテコンクリートをブチ破り、隠れていたドブネズミをミンチにする。
今となっちゃ純粋な人間など細菌をバラ撒く病原体でしかない、産まれて処置を受けられない、
貧乏人のセガレの行き先は2つ、ドブに頭から突っ込んでキャリアー(感染者)になって死ぬか
駆除係のイカレ野郎どもにミンチにされるか、2つに1つ。
麻薬をやってイカレたジャンキーが手に持った小銃で反撃を加えると、
筋肉を覆うように着込んだプレートに遮られ、男は正面から銃弾を受け止めた。
放たれる質量弾により、敵の体は木っ端微塵に吹き飛ばす。舞い上がる埃を焦がしながら唸る、
イラコイザーの電力供給を断ち。懐から取り出したGAMを腕の余熱で焼くと、口の中へと放り込む。
「終わりましたよ局長」
「よしッ! 帰還しろッ! 報告書は明日までに提出しろよッ!」
「YAA」
”ナマモノ”で素で生まれるなど快楽や苦痛マニアでもなけりゃ御免被る、この時代。
次から次へとネズミ算的に増えてゆく、これらの駆除はお役所仕事。
男は経済地区へと向かう、オートローダーの車内で端末から必要書類にアクセスし
手早く事務作業を済ませると、懐からクスリを取り出し首元の動脈に打ち込む。
たちまちクリアになる思考、明るく染まる景色。ドス黒い街の光景を車窓から眺めながら、
男はお気に入りのENKAを口ずさむ、腐ったドブ色の街並みは今日も美しく七色の光を放ち。
感情や欲を失ったサラリーマン(社畜)達が処刑台の丘を登るようにビルを昇っていく。
アリは今日もちっぽけなビスケットを海に浮かべ、今日も太平洋を漂い続ける。
そこは怒りも悲しみも絶望すらも存在しない夢の島、夢の未来だ。
>>52 すまん。読解力不足で、わかりにくい。読みとれなかった。
主人公たちはナマモノではないようだが、ロボットなのか。遺伝子改良された何かなのか、生まれながらのサイボーグなのか。
54 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/04(火) 17:10:49 ID:BTZhBrUC
おーい、
>>52 書き逃げか?
質問に答えてくれよ。
あと、おれの作品にも感想おくれ。
続きが気になって仕方がないという意味ですね、わかります
56 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 01:55:09 ID:kNMPD/Nl
つづきは気にならないよ。厳しい言い方だけどね。独創性に乏しい。
遺伝子のプールで人工結合されたバクテリアが主人公の小説って他にあるの?
ミトコンドリアなら。
うん、それだと感染して死ぬね
60 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 02:22:56 ID:kNMPD/Nl
>他にあるの?
って、まず最初の一個はどこにあるのだ。
いいから選挙してろ
62 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 02:27:21 ID:kNMPD/Nl
なんだよ。
また不評なのかよ。
おれの小説、面白くないかなあ。自信なくすぞ。
起承転結にすらなってないし、ただの説明書だろ
実用書とか会社の新製品のパンフに書いてある紹介文みたいな感じだな
「裏面まで香ばしく焼きあがります」
「この性能で納得のお値段」
「脅威の新技術」
緻密に書き込みすぎて読者の創造力が阻害される
全て説明して謎を残していないから続きが気にならない
漫画でいうなら「次のページではどうなるんだ?」という引きが足りない
手にとってパラッと読んで、1n目でバタンと閉じて元に戻す
そういうお話
65 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 02:49:39 ID:kNMPD/Nl
>>63 起承転結とかの形式にこだわるのは良くない。
>>64 だが、
>>52のような答えのわからない書き方をされると、消化不良な気がする。
あなたたちは物語の形式にとらわれすぎている保守的な作風のようだ。
>>51 読んだよ
いきなしパブロフって名前を一般人として出すのはなんの意図があんのかと
勘ぐっても物語的に何もないのは意味不明
・テーマについて
消化不足。というか消化する気がない設定語り未満。
国家解体って広がるテーマなのになんで脇役語りで終わらせてんの?
・最後に可決されたのに非合法で暮らす点。
伏線ないし説明不足。なんでそうなんのか五回読んでも判らんわ
配慮不足ってレベルじゃねーぞっていう
・で、この物語だか陳述だか判らん文章が面白いのかっていうと。
「で?」っていう。
これ(に限らずあなたの作品全部)、
ドラマの欠片もないただの陳述でしょ。
陳述なんて仕事や所用で官報確認する時くらいにしか
読みたくないもんです。
総合評価:「中二病のこじれた代表例」
世にある作品は全部消化不良
ウケた時に続きが書けなくなるから、あえて消化不良で終わらす
>>52 お、これはいい意味で中二病展開なサイバーパンクなんじゃね
「ほほう。次どうなんの」って感じで、腕組みして読み切った
雰囲気流しつつ展開に伏線の風を流してるバランスはあると思うよ
問題は完結も一段落もしてない点かな
続くなら続き物だと示して欲しい
ここで評価したら雰囲気評価で終わってしまう
というか現状で雰囲気評価したら酷評せざるを得ない
話題の記憶氏と並べて語る事は、現段階では避けさせていただきますよ
ここっていつから感想の代わりに評価するスレになったの―?
都合の悪い感想は全部評価かよ、おめでてーな
俺書いた人じゃないですけどwww
深夜に一個だけ伸びてたから見に来てみればwww
別に感想が「つまらん」の一言でもいいんならそう書くけど
慌てて読み返したんだけど
感想いけない評価いけないとかの話題もなく
そもそも感想と評価の区分説明もないようなんですが……
現状で評価とか言ってる時点でどうでもいいわw
そう、創作すれば?
創作しようぜって書いてあるし
感想書くスレだとも評価書くスレだともスレのどこにも書いてねーよ
まあ止まってたスレ動かしてるんだしいいんじゃね?
動かしたのは投下した奴だけどな
77 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 03:16:01 ID:kNMPD/Nl
>>73 つまらんのひとことでも、ないよりマシ。
面白かったか、つまらなかったかは、とりあえず知りたい。
悪意あるつまらないは御免だが、善意のつまらないは歓迎。
書いてる途中で横槍入れるようなアホのいるスレじゃ書かないだろ
話がひっくり返るまで待てない早漏多すぎ
LRにもないよな
申し訳ないがスルーします
>>67 消化不良それ自体に罪はないですな。失礼。
完結作品だと読後に「で?」で首捻るだけで
なんらかのドラマがないと困る訳ですよ。
読者に「ドラマを想像して!」って請うのもパターンですが、
十分な筆力がないとそこに誘導できなくて第三者の失笑を買う。
サイバーパンクな世界観を短編で伝える難しさとか舐めてる訳じゃないですけど。
俺もSF SSスレ及びその派生の新都社漫画に於いて、
「コルチゾールの輪唱」って稚拙作にて同じ批判を受けてますし。
>>77 ほえ? 俺の感想スルーしないでくださいよ
氏らしくもない
なんでいちいちID変ってるんだよw
昨日ファンタで会ったっけか?
81 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 03:21:34 ID:kNMPD/Nl
>書いてる途中で横槍入れるようなアホ
って何のこと?
おれのことじゃないよね。
※よくある流れ
A「頼んでもいねーのに批評(笑)なんてされてもねえw」
↓
B「叩かれるのが嫌なら、2chになんて書き込むなよw」
↓
A「批評するならするで、もっと的を射た指摘をしてくれや。レヴェル低杉w」
↓
B「はいはい、そうやってオナニーに浸ってろよw」
↓
過疎
↓
へ /
ヽ('A`)ノ エサハドコカナ
( )
ノω|
>>79 あ、いやすみません……
完成作品でなければ混乱防ぐための「続く」の印や
投下番号(※[x/1]とかの)が欲しいというだけで、
焦る云々の他意はないのですが。。
続く意図が判断できない投下作品に対する
コメント付けていいのか判りかねますし。
>>79 >コルチゾールの輪唱
犯人が誰か直接明言せずに死ぬ話ね、
あぁいう終わらせかたの方がいいんですよ
読み終わった後に読者があれこれ創造するのも面白い部分ですからね
86 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 03:25:39 ID:kNMPD/Nl
>>66 最後に非常食を非合法に食ったのは、よくなかったな。反省。
87 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 03:30:10 ID:kNMPD/Nl
>>85 結末をはっきり書くことにこんなに批判が多いのは、いかがなものか。
物語を断定する度胸がないためではないのか。
物語がはっきりしてしまうと、その結末が批判にさらされるというのを恐れているように見える。
「コルチゾールの輪唱」はそうでもないが、
>>52などはそれだ。
>>86 今度は人間を中心に書いてみればいいと思うよ
四角くて真っ白な出口の無い部屋に二人の人間だけがいる、SFな
89 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 03:34:41 ID:kNMPD/Nl
>>88 アイデアが思いつけば書くが、
>>51が人間が描けてないということであろうか。
必要最小限の描写はしたつもりだが。
もっと心理描写を増やすべきか。
記憶さんはSFに対する蓄積と造詣は深いと思うんだ
一旦、中二病的な濃い(深いじゃなく)人間ドラマを考察した上で
さらっとその造詣乗せたら化けるんじゃないか。
冗談でも皮肉でもなく、この人とSF話題で名無しで談義しても圧倒されて逃げるしかないんw
91 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 03:39:20 ID:kNMPD/Nl
>>89 >もっと心理描写を増やすべきか。
設定0で、物語を書く練習としてはいいんでないの
専門的な用語が一切出ないということは、予備知識0でも読めるということ
老若男女全員が読めるという意味では効果があるのでは?
>物語がはっきりしてしまうと、その結末が批判にさらされるというのを恐れているように見える。
結末が批判に晒されるというよりは、キャラクターが複数存在する場合
「これが正しい」と言えるような答えを出すと独善的になる。
自己を主張したい、宗教的な小説を書きたいんならそれでも良いと思う。
>>91 URLが赤かった。もう一度言う、URLが赤かった。
>>89 年上であること承知で若造が吠えますが
人間も社会も描けてないっすよ
95 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 03:47:18 ID:kNMPD/Nl
>>92 自己を主張する=宗教的になる、という価値観は捨てるべきでは。
自己の主張を描くことは良いことだと思う。テーマのはっきりした作品といえる。
>>93 すまんね。同じところばかりのせちゃって。
>>94 社会も描けてないかね。短く作りすぎたかな。
かといって、長く書くと読んでもらえないし。
テーマははっきりしてても劇中の登場人物が全員同じとは限らない
97 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 03:54:41 ID:kNMPD/Nl
>>96 よく意味がわからない。
テーマのあるなしと、登場人物の書き分けは関係ないと思う。
98 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 03:55:54 ID:kNMPD/Nl
テーマが「世の中には色んな考えの人がいる」だったらどう纏めるんだ
>>98 ようするに君は人間の嫌いな部分や汚い所を避けて書いてる
102 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 03:59:09 ID:kNMPD/Nl
(;^_^) <感涙。
やっと、誉められた。
一ぱげ目のサヤ=サチコ?
104 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 04:01:30 ID:kNMPD/Nl
>>99 いろんな価値観の人を登場させますが。
>>101 そうでもないけど。ほんわかした優しい作風を目指しているところがあります。
ただ、残酷すぎるともいわれています。
105 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 04:03:47 ID:kNMPD/Nl
>>103 サヤはサチコの誤字です。十年間で、主人公の名前が、
アキコからサチコに至るまで、いろいろと変わっているので、
こういう書きまちがいが起こったのです。
ガス爆発を起こしたのが父親でサチコが死ぬと
資金援助が受けられない設定にするともっと良かった
107 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 04:07:13 ID:kNMPD/Nl
子供を犠牲にして金を稼ぐ死ぬ死ぬ詐欺みたいなもんだなw
現実の方がよほど刺激的ですよw
>>102 いや「やっと」って、別におれがあなた褒めたの初めてじゃないんですけどw
このスレじゃないけど。
曲がった言い方すると「良くある角度」ですおね
人物が描けてるかというと人物描写舐めんなって話だけど、
これは淡白にやって正解な箱庭を描いてるんじゃね
>104にある発言は疑問
ほとんどが価値観の対比を説明するに留まってませんか?
登場人物のぶつけ合いが足りないというか、下手したら全く無いし。
>>105の発言は失笑どころじゃねえw
読み手の本音:書き間違いは言を持たね。
書き手の体裁:読み手はその場の文章からしか判断できません。がんばりましょう。
俺に失笑
>>104 の「ほとんどが」は、記憶氏がこれまで乱投してきた作品に対する発言です。
ご了承下さい。
111 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 04:16:56 ID:kNMPD/Nl
でも、おれは価値観の逆転とかが好きで、好んでそういうのを書くけどなあ。
>>107 嫁死んじゃった、子供の脳だけ残った、負担になるから安楽死させよう
↑これが一般的な考え方
「そんなことは絶対にない」と言い切れるのは
汚い人間が書けないからです
あー
逆転しっぱなしでなんのドラマもない奴ね。
115 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 04:27:29 ID:kNMPD/Nl
>>112 断じてそれは一般的な考え方ではない。
人命救助を至高命題に掲げるのは、現代文明の常識。
>>115 別に人間的に不徳なキャラが作中に出たからって、書いてる奴も悪いって訳でもないだろ
要するに悪役不在なんだよお前さんの小説は
>>113ではただの煽り文面になってすみません
記憶氏の短編は「価値観の逆転」 と や ら をした所から、
読む側としてはなんらかの物語的な発展させて欲しいのに
それが(記憶氏の読書量比的に)致命的に物足りない訳です。
SF読んでないも同然な厨房作品が、あなたの名義で大量にSF SSスレに投下されてる訳です
仕舞いにゃ他スレから「ヘンなURLしかないスレ」扱いされる始末
記憶さんが物語性を熱く語るなら、そのSF素養で
物語を展開させる糸口の広さの見せ所でしょ、ってところで
素人未満のドラマ以前を並べ立ててるようなもんで。
まだあなたの作品よりは、視聴率やらの煽り食らってるテレビドラマ作品や
少年漫画誌でも見てた方が「その場しのぎの」意外性を堪能できます。
テレビドラマや漫画誌を否定する訳じゃないけど、時間効率的に記憶氏の作品読むよりはマシって意味ね
>>114 言葉汚くてスマソ
「もたねえ」の「え」削っただけだお
ヒーローの定義におけるシャドウの存在が、うんたら
よい行いをする主人公ほどその影は濃い、かんたら
自己の心を投影したシャドウを打ち破ることで感動が、なんたら
まぁそんな感じ
119 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 04:39:58 ID:kNMPD/Nl
うーん、基本的に悪役にも正義があることを描こうとしているからなあ。
絶対な悪いやつというのは、ほとんど書いた記憶がないなあ。
ユング心理学のアーキタイプ使って、いっぺん長編でも書いてみれば良いんでね?
>>119 違うだろ、本当の悪役は主人公自身なんだよ
それぞれのキャラクターの深層心理の中にある不徳なシャドーが悪なわけ
123 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 04:46:17 ID:kNMPD/Nl
>>122 主人公には目的があるのだなあ。
目的を達成させる人物は尊敬に値するなあ。
しいていえば、
>>51のパブロフは働かない悪人かな。
自らの欲望の為に目的を達成するのは悪徳です
125 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 04:48:47 ID:kNMPD/Nl
すべてのことばは嘘をついている。
できるだけ良い嘘で世の中が満ちるといい。
へげぞ
というのが創作理念だから、悪を描くよりは、正しいことを描きたいのだなあ。
正義の模索を行っているのだなあ。
126 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 04:50:08 ID:kNMPD/Nl
>>124 夢を描いて、それを成し遂げることが悪だと申すか。
納得できぬ。
へいし 「せめて……その……典型の……描写を……
ぐふっ」
おうさま「おおへいし しんでしまうとは なにごと じゃ」
おうさま「まあよい へげぞよ てきとうに びょうしゃ するがよい」
>はい
>いいえ
129 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 04:56:23 ID:kNMPD/Nl
>>117 だ、か、ら、「またない」だって。「もたない」って何www
>>126 頑張るのも人の勝手だが、少なくともそれは正しくない
サクリフェイスの精神で他人の為に頑張るのもまた正しくない
悪だと認めない場合は典型的な独善
132 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 04:58:33 ID:kNMPD/Nl
>>129 人間、何か欲を満たした所で、「なんだこんなもんか」で終わる
>>130 おお、なるほどw
これは恥ずかしいww
あー記憶さん俺の発言全部ボッシュートでー
てぃるるるるる
おやすむ
135 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:03:11 ID:kNMPD/Nl
>>133 幻覚譫妄状態の話ですまないが、欲を満たすと大爆笑の歓喜がやってくる。
あなたのようなことをいうのは人生経験が足りない。
>>135 満たされていないから欲を求めているだけで
全くもって意味のないこと、簡単に言うなら本末転倒だな
世の中に満たされている奴がいるならそいつは既に無欲だろ
わかる?この辺?
欲しい物が沢山あるから欲しがるだけで
何も欲しくない奴は最初から満たされてるんだよ
わかりやすく説明してやったぞ
138 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:05:25 ID:kNMPD/Nl
幻覚譫妄状態を言い出したのは無茶があった。
おれはSF小説を読んでいて、むっちゃすげえ、と感激したことが何度かある。
欲を満たすことは良いことだ。
139 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:08:12 ID:kNMPD/Nl
生きることは偏ることである。
無欲は、偏らないことであり、生きるという生命の素晴らしさを台無しにしているのである。
幸いなことに、未来への発展は無限につづき、満たされた後は自分で作るという作業が待っている。
140 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:11:04 ID:kNMPD/Nl
今さら、携帯もネットもない時代には戻りたくないだろ。
たった十数年前には、もう戻りたくないんだよ。
ブラウン管のパソコンに戻るなんて死んでも御免だ。
時代は進んでいる。それを意識すれば、無欲が良い、欲が悪いなどとは思わないはずだ。
だから欲を満たす悪は誰にでもあるから受け入れろってことだろ
知ったことか
生を充実させようと思うのも飽きた
それを受け入れん内は駄目だな
人間は悪と上手いこと付き合って生きてんの
欲望が悪じゃないという事は起こりえないし
幸福を不幸は対象に存在するんだよ
禍福は糾える縄の如し
144 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:19:40 ID:kNMPD/Nl
>>141 >>142 >>143 この議論は終了する。
目的を達成することを悪だというやつらとは考え方がまったく合わん。
おれの人生の生きがいを否定されたようなものだ。自殺してしまうよ。
まぁ、それだったら目的の為に手段を選ばない奴が圧勝するんですけどねw
146 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:23:56 ID:kNMPD/Nl
>>145 圧勝しない。世の中をなめるな。ぎりぎりのせめぎ合いじゃ。
成功する方法は真似される。
>>146 仮に君が小説家になって入選するわな
君の代わりに落選した奴が1人いるわな
その人は君が原因で落ちたんだがこれは悪じゃないの?
148 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:27:47 ID:kNMPD/Nl
悪じゃない。競争が悪などという考えは資本主義に反する。
良い作品をつくることが目的。
良い作品をつくったやつが入選するべき。
弱肉強食が悪じゃないなら強盗殺人だって悪じゃないってことになるが?
資本主義が神様ww
資本主義関係ねーよ
多分資本主義も迷惑だろうよww
適者生存と淘汰がすべてのダーウィン君乙w
152 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:36:02 ID:kNMPD/Nl
ある程度悪を許容できるハードボイルド的な物も
サイバーパンクには必要だと思いますね
終
154 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:41:08 ID:kNMPD/Nl
>>153 おれの読んだハードボイルド代表作「長いお別れ」「深夜プラスワン」は
どちらも主人公は、自分が正しいのかを悩むやつらだぞ。
155 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:43:11 ID:kNMPD/Nl
法律に反していても、警察を敵にまわしても、正しいことをするというのがハードボイルド。
感傷は必要ないだろ、目の前で人が死んで眉一つ動かさない
冷酷非情な男であるべき
ハリーキャラハンでもあるまいしw
158 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:46:02 ID:kNMPD/Nl
そして、おれの
>>51は働かない悪人だということでパンク。
「深夜プラスワン」はおすすめ。
取るに足らないつまらんことを思い悩む奴はみんなカッコ悪い
161 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:49:42 ID:kNMPD/Nl
>>156 ハードボイルドのプロは警察を気にする。
「そんなことは警察の仕事だ」といったりする。
>>161 ハードボイルドのプロは君子危うきに近付かず
誰も助けないw
つか、基本利己的な連中で、死ぬならさっさと死ねってタイプだぞ
自分が得する時に動くだけ
164 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 05:57:19 ID:kNMPD/Nl
金の為にやってるんだよ、刑事は事件解決のために護ってるだけ
166 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 06:01:17 ID:kNMPD/Nl
>>165 「長いお別れ」はお金より友情をとる。
「深夜プラスワン」にはお金より、依頼人を助ける義侠心を感じる。
167 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 06:03:41 ID:kNMPD/Nl
ハードボイルドは、気に入らない仕事は引き受けない。
>>166 金と情を秤にかけなきゃカッコよくならんだろ
金の為には手段を選ばないプロが、情にほだされて「仕方ねぇな」で折れて
「追加料金払えよ」で誤魔化すから良いんだよ
要するに男版ツンデレだ
最初からデレてる女をツンデレとか言ってるが
あれはただのデレデレ
170 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 06:14:55 ID:kNMPD/Nl
「攻殻機動隊」の素子は高額な仕事ばかりしている感じがするが、
正義についての自分の意見で仕事を選んでいるように思える。
171 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 06:15:44 ID:kNMPD/Nl
強引に話をサイバーパンクに戻してみました。
ニルヴァーナの主人公はAIプログラムの為に命賭けてたぞ
173 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 06:21:07 ID:kNMPD/Nl
みんなブレードランナーとかシャドウランとかぶっ飛ばして
攻殻機動隊は見てるのが不思議、底浅いのに
175 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 06:35:00 ID:kNMPD/Nl
>>174 「ブレードランナー」は完全版と最終版の両方を見ているが(完全版のが好き)、
「シャドウラン」はありなのか。面白いのか、そのゲーム?
サイバーパンクな上に魔法とか魔物とか出てくるみたいなんだけど。
176 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 06:38:42 ID:kNMPD/Nl
>>174 「攻殻機動隊」は漫画で読むものだ。1巻2巻を読むべし。
1.5巻はいらない。
企業の犬として使われる、個人識別IDを持たない人材がシャドウランナーということで
特別な存在としては扱われてない、人間の屑が主人公になる
>>176 特別な存在とか嫌いなんすわ、俺
178 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 06:45:06 ID:kNMPD/Nl
>>147 しかし、おれが働かないことによって、別の一人が職を得ることができる。
これは正しい行為である。
伝説の勇者をあっさり殺すのが俺式
180 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 06:46:18 ID:kNMPD/Nl
>>177 そうですか。おれは圧倒的な高みが好きです。
181 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 06:47:36 ID:kNMPD/Nl
>>179 おまいがそれを実際に書いたことがないことに、腹筋一回をかける。
普通に死ぬだろ
後に続く人間がいなくて死んだらそれで終わる人生ってくだらないよね
184 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 07:16:22 ID:kNMPD/Nl
例えば、活躍した登場人物を簡単に殺すのが「この神は脆弱だ」であり、
活躍した登場人物が都合よく死なないのが「トキノマ」だ。
そろそろレスやめて次回作書きなさい
既に一話分は文章打ってるぞ、へげそよ
186 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 07:26:56 ID:kNMPD/Nl
アイデアがない。読書と2ちゃんで今日を過ごすよ。
アイデアがないからSS書けないってのもそれはそれで嫌だな
適当にキャラ並べて寸劇でもすれば
188 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 07:41:28 ID:kNMPD/Nl
なら、伝説の勇者があっさり殺される話ってのを考えてみるかな。
189 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 07:59:59 ID:kNMPD/Nl
ひろゆきは世界の危機を救った凄腕の2ちゃんねらーだった。
彼は困っている人々を2ちゃんねるで見つけると、どこにでも出かけて人助けをしていた。
ひろゆきに適う暗殺者はいない。ひろゆきの暗殺七つ道具で殺されない者はいなかった。
そんなある日、ひろゆきがいつものように2ちゃんねるで激しい論争を眺めていると、
多数派が少数派の一人の住所を特定し、殺人予告をした。まずい。事件だ。
さっそく、ひろゆきは動いた。2ちゃんにさらされた住所に出かけ、
面白がってオチに集まった有象無象の愉快犯と戦うことになった。
まず、ひろゆきは特定された一人に会い、「必ず守ってやる」と約束した。
特定された一人は、ネットで男のふりをしていた少女だった。
ひろゆきは集まってくる多数派たちから逃がすため、少女を街外れの喫茶店に移動させた。
そして、多数派を迎え撃つ。
やってきた多数派は、金属バットやモデルガンをもっていた。笑止。
本物の暗殺術を使うひろゆきにそんな玩具は通じない。ひろゆきは、
金属バットをもった男に近づいた。
「誰だ、てめえは」近づいてくるひろゆきを不自然に思ったのか、
金属バットの男が吠える。そして、金属バットを振りあげた。
金属バットはひろゆきの頭に直撃した。痛い。ひろゆきの暗殺術で、
この場を逃れようとするが、間に合わない。袋叩きにされる。
モデルガンがひろゆきの肌を撃った。激痛だ。酷い。
「もう、やめてください」必死に謝るひろゆきの声もむなしく、
ひろゆきは叩きのめされて死亡したのだった。多数派はひろゆきの死体を確実に隠蔽し、
事件は表に現れなかった。以後、ひろゆきの姿を見たものは誰もいない。
190 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 08:01:22 ID:kNMPD/Nl
書いてから思ったけど、サイバーパンクでも何でもねえな。
いや、2ちゃんがサイバーで乱闘がパンクかもしれん。
なんか個人的な恨みでもあるのかw
192 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 08:43:43 ID:kNMPD/Nl
伝説の勇者にふさわしいと。そっちの方で。
ブラム的なサイバーパンクやらんの?
あのメガロマニアな建物とか統治を機械任せにしすぎて統治できなくなってる感じが好きなんだが
デカイ規模のSFなら
ビッグバンから熱的死を迎えるまでの間の宇宙に
→ → → →
宇宙の収束―――――――――熱的死を迎えた宇宙
← ← ← ←
→ → → →
宇宙の収束―↑―――――↓―熱的死を迎えた宇宙
← ← ← ←
穴を開けて行き来すれば人類は滅びないという
世界観なら考えたことがある、メビウスの輪に2箇所の穴を開ける感じで
ゲートを作った世界
定常宇宙論と宇宙終焉論て「定常宇宙論」の方がマイノリティで良いんだよな
最終的にサイバーパンク世界の住人は脳のクロック周波数が増大し
実世界の1秒が体感時間1万年にまで延長され
サイバースペースの鳥籠の中で人間が生きる感じになるぜ
197 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 13:37:45 ID:kNMPD/Nl
宗教と混ぜるなよ
つか、みたいに1秒=1万年になる世界だから「順列都市」とは違うだろ
VR世界で一万年経って起きて現実世界の時計みたら1秒しか立ってない世界
>>197 火葬戦記みたいな妄想本読むよか、wikiでも読んだ方が良いんじゃね?
201 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 14:15:59 ID:kNMPD/Nl
>>199 ちがうけど、発想として「順列都市」のが上だろ。塵理論だよ。
>>200 「順列都市」は火葬千期ではないわ。
塵理論があればビッグリップで宇宙が
素粒子レベルに分解されても生き残れるのか、よく分からん
203 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/05(水) 15:15:11 ID:kNMPD/Nl
>>202 生き残れるよ。
というか、ビッグリップする時間帯には時間を発生させないんじゃないか。
ビッグバンの時点に時間を発生させているとも思えない。
ビックバンの発生原因である重力子があるなら時間は発生前から存在するんだが
どうでもいいがブラムの宇宙飲み込む巨大建造物とか必要なエントロピーは
どこから得てるんだろうな、何も無いとこから鉱石が湧いたりすんのかね
あれってダイソン球なんじゃなかったっけ?
207 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/06(木) 03:37:56 ID:QqWo4lBz
太陽系を覆うくらいにはデカいダイソン球だな。
そういや外殻の中身はスカスカだったな
209 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/06(木) 04:26:26 ID:QqWo4lBz
いや、ぎっちり詰まってるんじゃないか。
ブラムは肥大しすぎたダイソン球がブラックホールに飲まれるって話だろ
廃棄区画を潰したりしてたから中身ギチギチじゃねぇよ
211 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/06(木) 05:19:05 ID:QqWo4lBz
そうだっけ? 宇宙は有限なのに無限に広がるのは無理だろ
213 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/08(土) 04:38:32 ID:AGBM1COO
サイバーパンクとSFの区別もつかんけど、こういう近未来系のエンタメ
てどこに持ち込めばいいんだろか?
ああ、創作発表板てそういう意味なのか・・・
すまん迷い込んできたもので 近未来もの書いて持ち込める出版社
を探してました。 SFならハヤカワとかなんだろうけど設定がSF、あるいは
サイバーパンクぽいてだけで、エンタメなんです どこが得意なんだろうか
216 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/08(土) 05:00:52 ID:FWQOdl42
公募の話なら、350枚書いてラノベかSF新人賞にでも送るのが一番いいぞ。
JPNG賞やガガガ大賞は350枚以下でも応募可能なのが嬉しい。
100枚以下ならホラー大賞短編部門という手もあるが難しい。
おれは今、きらら携帯メール小説大賞に応募してるけど受かるかどうか知らん。
枚数的には300前後かな ラノベは・・・普段まったく読まないのでこないだ勉強
かねてそっち系の本棚を見てまわったんだが、ペラペラと何冊か読んで吐き気が
してきてしまった ああいうのが流行りなんだな 比較的まともなのが角川と講談社
て印象でしたけど
ガガガで来年9月ですか
JPNGは検索したら日本パプアニューギニア協会が出てきましたが・・・
もうちょいリサーチしてみます どうもです
218 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/08(土) 05:19:31 ID:FWQOdl42
JNGPだった。元ジャンプノベル大賞。
219 :
記憶喪失した男 ◆cnhIMeWufo :2008/11/08(土) 05:21:51 ID:FWQOdl42
小説すばる新人賞も枚数が少なくても応募可能だ。
記憶男にお任せだな
ここで発表するわけでないんだったら……そうだねえ
文芸板にはそれ系のスレがあったかと記憶するが定かではない
個人的にはニューロマンサーの黒丸尚の翻訳文体が理想だな
そういう文体で書いてる人いる?
翻訳調を? 意外に結構難しいかもだ
それはなっち
真似しようとしたことあるけど、オリジナルのルビ振り語が面倒くさい割に全然かっこよくないことに気づいて
とりあえず「?」を全部「……」に置き換えるだけであきらめた。
村上春樹、黒丸尚、クランチ文体あたりは誰もが一度は真似する文体だと思うけど、
自分の場合形だけ真似しようとしても全然中身がついてこないのが悲しくてすぐやめる。
だよなあ
俺もやってみたんだがさっぱりうまくいかんw
普通の訳文体が好きだなあ
感覚が近いというか
226 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 20:30:59 ID:D8KQokYb
ところで、サイバーパンクな世界には、どんな職業があるのか?
・凶悪犯罪者や、それに類するものを抹殺して報酬を受け取る賞金稼ぎ(ありがち)
・超過激な格闘技やスポーツの試合を行うサイボーグ選手
・犯罪組織や基地外科学者と戦う美少女サイボーグ
・人体実験大好きの基地外科学者
・・・書いてるうちに気が付いたけど、
銃夢というのは、サイバーパンクのいろいろな要素を含んでいるのだね。
ところで、何か新しいサイバーな職業は・・・
私のサイバーパンクの脇役のイメージは、
戸籍のないスラム街の住人とか、
アホみたいに巨大化した企業のエグゼクティブとか、
無感情で無感動で無個性な企業の犬とか、
高性能ドラッグor違法ブレインチップでいい感じにフッ飛んでる人間のクズとか、
アニメ色の髪とか目とか異常な精神的・身体的能力を持ったコーディネイテッド・チルドレンとか
そんな感じ
228 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 23:04:13 ID:ef4QlJnX
サイバーパンクの世界には、
普通のサラリーマンとか普通の公務員とか普通の学校の先生とかいった
まともな職業のまともな人はいないのかっ。
いてもそいつらの生活を普通に書いたらただの未来モノだよね
普通の奴らがいたとしても、社会の闇に蹂躙される役とかかな
サラリーマンはいるよ、大企業の社畜
企業から身の安全を保障される代わりに感情を薬で殺している
なんだかんだで社員も機械化したほうが楽だろうしな
脳や脊髄にプラグ挿してネットに潜る情報屋みたいなのも入れてください
カウボーイとかデッキヘッドとかハッカーとか色々呼び方あるけど
甲殻とか見ると兼業スキルっぽい気がしないでもない
232 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 20:09:15 ID:TKhJy/MW
脳や脊髄にプラグ挿してネットに潜る情報屋・・・の大脳を狙う
ブレイン・ハンター、というのを考えた。
もちろん、情報屋の持つ情報を横取りするため。
ブレイン・ハンターが仕事をしたあとは、首なし死体がごろごろ。
敵対する者を、誰がやったかがハッキリわかり、尚且決定的な証拠を掴まれないように暗殺する企業のお抱えチームとか。
そんな最中に敢えて電脳化(及び類似技術)などの流行技術を一切断って生きる着流しの風来坊とか主人公に据えたら、逆に世界観引き立つかもな
そういうサイバーパンクって既にあるかな?
個人的にはむしろサイバージャンクが書きたいかも……
236 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 22:09:08 ID:D0Pj+LFT
>>235 >個人的にはむしろサイバージャンクが書きたいかも……
説明よろ
電脳世界のなんたらかんたらみたいな?
そう、綺麗なサイバー世界&パンクライクなものより
データと基盤と回路のゴミくずの世界
書けばいいじゃない
ええ^^
というかサイバーパンクのイメージって元々そういうものじゃないの?
ウィリアム・ギブスンなんかも九龍城と夢の島が大好きみたいだし
行政区はコンピューターで完全に自動化
工業区や居住区はほとんどスラム
商業区だけは清潔感があり、まともに人が生活できる
なんか産業革命期のイギリスみたいだな
244 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 22:28:48 ID:hcxukwtK
そ……それってサイバーなの?
だからスチームパンクがあるでしょ
サイバーパンクって元々最先端の技術と汚濁が共存してるよな。
ディックとかさ。
そう、だからパンク
250 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 21:37:24 ID:+N/OeozC
あげ
251 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 20:41:11 ID:6vPwAXfw
252 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 00:30:35 ID:qNrUnScl
ほ
「あなたも同じ症例ですか」
彼女は流暢な日本語で、そう訊ねて来た。
栗色の髪に青い目の、二十代前半に見える美人だった。
外人女性と話したのは、この時が初めてだったかもしれない。
僕が笑顔で頷くと、彼女は少し涙をにじませた。
「不安です。あなたは強いんですね」
僕だってそうだ。
世界中で謎の脳疾患が広まったのが、先月の事だった。
その方面の権威が、長期的な研究が必要と判断してコールド・スリープ装置の利用による患者の時期別保存を訴えかけたのが先週の事。
数十年に渡って床ずれの壊死を起こさない新型だというが、人間での臨床実験はもちろん世界でも初めてである。
その意味もあって、学術研究費はアメリカ合衆国の研究予算で負担されるらしい。
日本で第一号患者と推定されていた僕は、その権威の計画に同調する形で僕にロサンゼルスへの転院を進めた。両親は泣いたが、このままでは僕が日常生活できない事も知っているため、承諾してくれた。
――それにしたって、何年掛かるのか、目論見が全く経っていない。
「死ぬよりはいいさ」
僕が青目の彼女にそう言うと、彼女は頷いた。
「でも、起きたらリューグーでしょう? 起きた時に周りに誰も知ってる人がいなくなってたら、私、怖い……」
僕は笑った。竜宮城が出てくるとは、この日本語達者な外人さん、よほど日本マニアらしい。
「起こされる時は一緒でしょう。丁度いいや、僕がその『誰か知ってる人』になりますよ」
彼女はようやく笑った。
彼女の名前はマリーと言い、聞けば、日本語学校で先生を務めているほどらしい。
第一号のコールド・スリープ実験対象は、男女組で僕ら二人だけとの事だ。
スリープ装置の準備が整い、僕らは別々の機械に収納された。
僕の不安も、いつしか消えていた。
今の友達や両親は多少老けてるかもしれないが、その分僕らは若さを楽しめると思えばいいんだ。
「それでは、睡眠ガスを注入いたします。不安はありません。すべて、お任せ下さい。どうか、良い夢を――」
――起きたら、彼女に英語を教えてもらおう。
とても心地良い眠気に任せて、僕は長い長い欠伸をした。
――寒い。
寒い。
寒過ぎる。
暖房をつけてくれ――
半覚醒状態のまま、僕は薄目の先で視界が治り始めている事を知る。
長い夢が続いていた気がする。それは気のせいかもしれないが、視界に映る外の様子は僕に微妙に警鐘を鳴らしていた。
……天井が、崩壊しているのだ。
口はまだ開かない。冬眠からゆっくり醒めているような感覚だ。まだるっこしい。
意識は幾度となく睡魔に足を絡めとられたが、僕の興味は天井が崩壊していることに釘付けになっていた。
冷や汗のような感覚がずっと続いている。ようやく呼吸を急げるようになった。僕は肺と喉をゆっくりと叩き起こしながら、酸素の吸収を急かし続けた。
突如、装置のフタが開いて、僕はまぶしさに目を閉じた。
暖かい。日光があたっているようだ。日光――なんでだ。
ここは、地下じゃなかったのか。
誰かの手が伸びる。医師の手だろうか。彼もしくは彼女は、僕の耳に何かを埋め込んだ。僕はまだ抗議の声を上げられるほどには、四肢が覚醒していない。
体温が少しずつ戻っていく。四肢の神経が萎縮しきっている。
指先に力が戻るまで、五分くらい冷や汗を流し続けた。
耳に埋め込まれた装置から、なんらかの言葉が聞こえる。
何かの単語のようだ。外国語。さまざまなイントネーション。
ひとつだけ、明瞭に聞き取れる言葉があった。――「hello」と。
僕はようやく目を開ける。
僕は冷えきった体に鞭を打って、ようやく身を起こした。
それから、周囲を見回した。
――何もかもが、荒れ果てていた。
部屋の壁にはびっしりと苔が生えている。
……マリー。
マリーも起きたのかい。
これは竜宮の玉手箱どころじゃないみたいだよ――
そう語りかけようと振り向いて、僕は悲鳴を上げた。
マリーの入っていた装置は、崩れた天井にフタを貫かれていた。
その隙間には、朝日を受けた白骨が覗いていた。
255 :
タイトル未定:2009/04/22(水) 15:22:10 ID:/Ss1i6SV
つづく
書きかけ見切り発車で投下でした
夜頃に第一話分まとめて投下ます
そのうちサイバーパンク臭くなる予定
僕は今、ホットコーヒーを呑んでいる。
彼女は喋り続けている。
――僕の耳に翻訳装置を設置した人物で、名前はレマというらしい。
「まあ、ルームメイトさんはお気の毒だったけど。あんな杜撰な装置で冬眠させられて生きていたんだから、神様と私に感謝した方がいいわよ」
現実味がない。
僕の思考回路はまだ解凍され切っていないようだ。
何か、感情を表現する事がとても気怠い。頭蓋の裏側がひしひしと痛む。
彼女が言うには、今は二千五十四年。――四十四年も寝ていた事になる。
それ以上に受け止め難い事実がある。
その間に、戦争が勃発したというのだ。
「自立型の電源装置が幸いしたわね。あと十年は持ちそうな数字よ。なんならもう十年寝とく?」
彼女はさっきも同じジョークを言った。あと十年、この土地が無事で、解凍ボタンを押してくれる人が現れる可能性はないって話だったはずだ。
動悸はだいぶ収まった。
僕は聞いてみた。
「なあ」
彼女、レマは小柄ながら運動選手のように肉付きが良く、茶色の髪が肩にかかるあたりで縛られている。
「君は――なんで僕を起こした?」
「研究所跡地の探索中にね、生きてる装置を見つけたから助けてみたのよ。ま、小遣い稼ぎかな」
化粧っ気はなく、肌からすると成人女性くらいか。左の頬にすこし染みとホクロがあるくらいで、整った顔立ちではある。
始終、無責任そうな笑顔を絶やさない。もしくはそれが、彼女の素の表情なのだろう。
「機器の状況データを纏め上げて、取れそうなチップを頂くだけでも金になるのよ。
あとは写真ね。空白の二十年を補填する資料としても重要なの」
空白。二十年。僕にはよく判らない。
「あ、これ。ARサングラス」
彼女はサングラスを取り出して、僕に放り投げた。
「AR?」
「拡張現実(Augmented Reality)。あげる。持っとけ。今時じゃ、そいつがなきゃ売店でドリンクさえ買えないからね」
僕は礼を言って、戸惑いながらかけてみた。
少なからず驚いた。
サングラスの向こう側には、彼女の傍らにあるバイクや彼女の持っている工具などの上にオーバーレイされる形で、名前や各種の数字情報のような文字が表示されていた。
少なくとも、僕の時代にはなかった技術だ。サングラス上に映像が投影されているだけではなく、実際に見ている「現実」をトレスする形で、追加情報を表示する。
レマの持つ端末に焦点を合わせる事で、記号の羅列がポップアップされる。――おそらく名前なのだろうが、僕には読めない。
その記号はアルファベットに近似すれば「VOODIE」と読めなくもない。
「文字が読めない。英語、ではないのかい」
「この辺じゃラグノートしか使われてないよ。――英語が先祖ではあるけど。まぁ、街に出れば日本語の翻訳キットくらい入手できると思うよ」
「便利な時代だな」
「ARをハックする奴もいるからね、迂闊に何でも開こうとすんなよ」
「何でも? 開く?」
「名前に視点を合わせて、まばたき二回で『公開情報』を開ける」
改めてARと共にレマを見る。彼女の頭上にも、名前欄がポップアップしている。
そこを見つめると、文字色が強調される。
――どうやらこのサングラスは、目の焦点をトレスしているらしい。
僕は試しにレマの公開情報とやらを『開いて』みた。
それから笑った。
「失礼ながら、とてもそんな体格には見えないね」
彼女の胸、腰、尻周りにマリリン・モンローのスリーサイズと同じ値がポップアップされていた。
「嘘付き放題ってことさ。認証ロゴとかである程度見分けられるから、詳しくは役所で聞くんだね」
頭がすこしだけすっきりしてきた気がする。
状況については、少なからず混乱しているものの――
僕はとりあえず、目の前の命の恩人の事に興味を絞ろうと思った。
「レマ、君は何歳なんだい?」
「二十一。年より若く見えるだろ」
彼女は僕のベッドにケーブルを繋いでは切り、なにか小型の電子端末のボタンを押しまくっていた。
レマの太腿も二の腕も、細いなりに筋肉の形が判るほどに逞しい。一見熟練のエンジニアのようにも見えるが、体育会系の部活に嵩じる女子高校生が悪ふざけをしているようにも見える。
「僕より年下とは思えないな。この時代の女性はみんな、――そう、なのかい」
我ながら、なにを『そう』と表現したかったのかが判らない。
レマは手を止めて、僕の目を覗き込む。
レマはポシェットから双眼鏡を引っ張り出した。
僕は手渡されるまま、その双眼鏡で彼女が指し示す方向を見た。
「見える?」
「塔、かな。建設中のようだけど、やたら巨大――」
「軌道エレベーターだとさ」
彼女は憎々しげに口調を口先を尖らせた。
「あの周辺には選ばれた人間しか済んでない。人口穀物の利権で栄えた一帯なんだけどね――私兵まで雇って領土を作ってる。周りじゃ毎日飢えて死んでる奴が出てるってのにさ」
僕は嘆息した。何についての嘆息かは自分でもわからない。
ただ、この時代が相当厳しいという事だけは理解した。
やがて漠然とした不安が募る。
日常的に餓死者が出るような社会に、僕は属した経験がない。
「あの辺には、君の言う『そう』ではない女性も居るかもね。この辺じゃ、自活したけりゃ素手で泥浚うところから始めなきゃならない」
批難されてるのかどうかよく判らないので、僕は肩を竦めた。
「――格差社会もここまで来たか」
「聞き慣れない単語だね。翻訳機のエラーランプ点いてない?」
そのとき、遠くから、断続的な機械音が響いた。
「政府か」
レマは、僕から双眼鏡を奪うと、伏せるように指示した。
僕がそれに従うと、彼女は再び双眼鏡を押し付けて来た。
「見てみな。あんたの置かれてる状況を知る助けになると思うよ」
彼女が差す先は、目と鼻の先の広場だった。
荒れ地の中に、肉眼でも確認できる不穏な存在が点在している。
双眼鏡を通すと、その姿はなおはっきり見えた。
――ロボットだ。身長二メートルほどだろうか。人間の形を模しており、スリープ前の時代にあったロボットとは比べ物にならない機敏さで動き回っている。
両足は足首から膝までがキャタピラにもなるようだ。一体は正座しながらあたりを散策している。
その両腕は、なにやら物騒なものが取り付けられている。素人目には、機銃とかショットガンとかそういった類いの火器だろうと感じた。
「あいつらは世界政府の所有するロボット。この時代の嫌われ者さ」
世界政府。言葉だけ聞けば、国連のような超国境の機関のようにも感じる。だが、続くレマの説明は俺の印象をあっさりと打ち砕いてくれた。
「今は、世界統一機構が七つほどあるのかな。キリスト教系の世界政府と、仏教系の総合協会。他は地域密着型だからこの辺じゃ聞かないけど」
宗教と結びついた権力団体の呼称にすぎないのだろう。
「で、あのロボット達は、いったい何を?」
「粛正中」
「粛正?」
「この辺に済んでる『人間』は、奴らにとって敵なのさ。判る?」
僕は頷いた。
「なるほど」
「判るのかい?」
「多分ね。つまり、四十年経っても、社会の複雑さは何も変わっていない。違う?」
レマがにやりと笑う。
「――多分ね。技術だけは伸びたけど」
彼女は立ち上がり、急ぎ目に工具を片付けてバイクに乗った。
その物音に気付いたのだろうか。ロボット達がこちらに向かい始めて来た。
「生き延びたけりゃ、後ろに乗って。
安バイオ燃料だけど、あいつらから逃げるくらいなら楽勝だから」
僕は頷いた。
「あなたには二つの選択肢があるわ」
彼女は寂れた街角にバイクを隠し、ネオンと埃に塗れた『街』へと歩きながらそう呟いた。
一人取り残されたらたまったもんじゃないので、僕も無言のうちに彼女の後に着いていた。
「選択肢?」
「総合協会の支部に行って事情を話すこと。『ならず者によってコールド・スリープ機器をこじ開けられたんです。ひとりぼっちです』ってね。彼らは保護してくれるでしょう」
総合協会――さっきの話でも出て来た組織名だったな。
そう思い返しているうちにも、レマはどんどん歩き進めていく。
街の様子はよくわからない。狭い道を他人とすれ違っている感覚はあるが、ARサングラス越しでも砂埃に塗れてしまう。
喋るにも口元を袖口で抑えなくてはならなかった。それでも口の中に砂が混ざる。
ARが表示し続けるマリリン・モンローのスリーサイズを目安に、僕は執拗にレマを追った。
「保護されたらどうなる」
「戦前のシェルターやコールド・スリープ機器が回収された前例は結構話に聞くわ。たとえば、あんな生活ね」
彼女が指を差した先には、吹きだまりでゴミ捨て場のようになっていた。そこを漁り続ける男達が数人いる。
僕は改めて自分の境遇を悟る。
この時代は、社会的な保障なんてものは望めないのだろう――
「もう一つの選択肢を聞こうか」
「ドクター・クロムという人物を紹介するわ。あなたは当面、その人の小間使いになりなさい」
ドクター・クロムという人物は眉間に深く皺が刻み込まれた、難しそうな顔の老人であった。
紹介されるや否や、僕は熱湯のシャワーを命じられた上に各種の衛生検査を命じられた。
全ての検査が別室からのリモートに寄った。その中には、いくらか性的に不快な検査も含まれた。
検疫の終了まで三時間、ようやく僕はドクター・クロムとまともな挨拶を取り交わす事ができた。
話してみると、彼は顔つきほど難しい人物ではなかった。良く話しを聞いてくれたし、時折ジョークを混ぜた返事を行う。
彼は、翻訳機越しでも通じるジョークは限られる、と締めた上で、衿を正した。
「だが、申し訳ないが、君が将来の治療のためにコールド・スリープを受けていたなんて話は正直考えにくい。
あの施設は当時、超能力者研究で人体実験を行っていたという事が記録に残っているものでな」
僕には彼の説明の方が信じ難い。
でも僕はその疑問を口には出さなかった。
信じる、信じないの前に、もっと沢山の説明が欲しかった。
「恐らく、君は騙されたと考えた方が都合が良い気がするな」
それじゃあ、マリーと僕はどこかの段階で騙されて、あの装置に就かされたという事になるのだろうか。
「もう一度、君があの施設に入った経緯を説明してくれ」
「当時、僕は世界的に流行していた奇病『ハリー・ヤコブマン症』にかかり、最後の頼みの綱としてその方面の世界的権威とされていたあの大学病院に収納されました」
「『その方面』というのは?」
言われてみると、どの方面の世界的権威だったのかを僕は知らない。
事件の前後ではテレビでもよく顔が紹介されていた――そう言った情報を受け取ったという形でしか、僕はその権威についての保障ができなかったのだ。
その事を正直に言うと、ドクターは叱責するでも呆れるでもなく、真摯な表情で頷いてくれた。
「もう少し遡れないか。そうだな……いつごろその病気にかかったのか。どのような症状だったのか。どれくらいの病院を当たった結果、あの施設に至ったのか」
僕は思い出す。
「初めは、不意に歩けなくなるほどの突発的な人事不省を繰り返してました。血液が沸騰するような感覚に襲われるんです。それで、幾度目か街中で倒れてしまい、救急車で運ばれました」
あの奇病とはなんだったのかを思い出し、早急にこの時代の技術で直してもらわなければいけない。
「症状から、脳梗塞が疑われましたが融解壊死の兆候は見出されてませんでした。大きな病院で精密検査を受ける事を勧められました」
そうだ。あの奇病。あの奇病についての手当をしてもらわないと。
「世界中で同様の症状が報告されている事を知りました。それで僕は――」
僕は。
僕は。
死にたくない――
「検疫に立ち会った医師として断定させてもらうが、君は健康だよ」
今日、あの装置から起きてから、この言葉に最も驚いたと思う。
ただ、驚いた結果の僕の反応はというと、「うへ?」という情けない言葉を漏らす事で表現されるに留まった。
「脳検査機器も随分進化してるからのう。まずそのような症状は発症すまい」
彼はコーヒーのおかわりを進めてくれた。
だが僕はというと、コーヒーカップを手に持っていたら取り落としてしまうんじゃないかというほどに、呆然としていた。
「こんなシナリオはどうだい。当時、表面上大学病院を演じていた超能力者研究所が、ある日ウィルスをばらまいた。そいつは超能力の素質がある者にかかり、『血液が沸騰するような感覚』に襲われて倒れるような発症の仕方をする――」
医師は満足げにそこまで呟いて、言葉を止めた。
僕は失望の色を隠せなかった。
「ドクター・クロム、でしたっけ」
「ああ」
「あなたご自身は、そんな与太を聞かされて鵜呑みにできますか?」
「全然」
僕は失望の色を勤めて強調した。具体的には口を半開きにして顔を少し傾けて、無表情に睨みつけてみた事になる。
「……ま、適当にやれや。金に困ったら言ってくれ、健康な臓器は需要が高いからな」
「臓器を売れと?」
「機械の体もいいもんだぜ。肝臓気にせず酒を呑める。差額で酒を買える。一石二鳥だ。
まあ、すぐに検討する必要があるかもしれんがね。検疫料、まけてやってもそれなりにかかる。来週までにこの金額だ」
僕は、おそらく請求書であろう紙を渡された。
幸い、数字は読める。
しかし、僕にはこの七桁の金額がどれくらいの貨幣価値なのかを知らない。
僕はそこで、レマの言付けを思い出した。
「レマには、『当面あなたの小間使いになれ』と言われました。その意図はよく判らないのですが――」
ドクター・クロムの双眸がぎょろりと僕を見た。
「――ああ、そう言う事か――畜生、レマのやつ、厄介ごとを増やしやがって。
だが、半年で翻訳機なしでラグノート喋れるようにならなかったら追い出すからな。まあ雑用ならいくらでもあるから、掃除でもやってもらうとするか」
僕は戸惑いながら
「すみませんが、あなたとレマの関係は?」
「育て親じゃい」
僕は、何故だか少しだけ安心した。
西暦二千四十年ほどに戦争があり、その戦争には資源戦争という通称がつけられた。
核は使われなかったが、BC兵器の類いが濫用されたらしい。自然を痛めつけるテロも多い。
レマが用意してくれた電子書籍を、逐一日本語音声に通しながら解釈を進めた。僕が寝る前の時代より、自動翻訳の技術は随分高まったようなのが幸いだ。
第三次世界大戦という名称でない理由が語られていた。
テロに次ぐテロ、その抑圧のための軍隊行動、疑心暗鬼な政治応酬――
「なんだって」
僕はつい声を上げた。
石油の枯渇。
この時代は、石油が枯渇しているらしい。
僕は慌てて、あたりを見回した。
僕にあてがわれた部屋は文字通り物置であり、中の棚に寝るだけのスペースが急ごしらえされたような部屋だった。
身を起こすとすぐ目の前が扉だ。そんな狭い部屋ではあるが、電子機器はいくらかある。ライト、空調、もちろんARサングラスだって同じことだ、電気でなくてなんで動いているというのか。
「電気はどうやって?」
「発電のこと? 石油がなくても風力、水力発電はできるし、原子力発電装置も稼働できる」
「君の乗っていたバイク――」
「合成燃料よ。ガソリン時代にくらべたらチンケな速度だったでしょ?」
代替燃料の登場と普及が間に合ったということだろうか。それにしても――僕の時代では、石油の枯渇はもっと先だと予測されていた気がする。
「資源戦争はね、石油を奪い合って浪費し合う、滑稽な戦争だった」
彼女は部屋に身を乗り出して、僕の隣に腰掛けた。
――どうやら彼女は風呂上がりらしい。
「今、完全に枯渇したのかどうかは別にしても、実際に採掘できる油田なんてないわ。
それどころか、どんな組織や国家も、ここ十年ほど石油を採掘しようともしていないはず」
二、三畳ほどとも思える部屋一杯に、彼女の湯上がりの香りが充満した。
「皮肉だけど、戦争は技術の進歩も加速させるのよね。
核融合って、あなたの時代には絵物語だったでしょう」
彼女は僕の横顔に顔を近づける――
「れ、レマ? どうしたの?」
彼女は僕の耳元に唇を近づけて、ごはんだよ、と呟いた。
それから彼女は勢いよく部屋から飛び出した。
どうやらからかわれたらしい。
リビングとは言い難い狭さに、食事が一列に並べられていた。
天井には配管が唸っている。二階からは赤子の泣き声が漏れて響いていた。
人の住める場所というのが、いかに少ないかを物語っている。
夕餉の内容は、パンのようなものと肉のようなもの、そして申し訳程度の生野菜が入ったスープで構成されていた。
「どちらも人工穀物ブレイクファスト、通称BFの種類違い。小麦の七百倍の効率で生産できるという触れ込みの食材よ」
空腹に促されるまま、僕はまず肉の方にとりかかった。
味は悪くない。焼いた際にどういった調理を加えたのかは判らないが、パリっとした食感の中から、肉汁に似た旨味が広がる。
香りも食欲をそそる種類のものだ。潮の香りが混ざったクッキーのようなものだろうか。
香辛料には困っていないらしく、胡椒がふんだんに使われている上に香草が添えられている。
「美味しいじゃないか。これが人工だって?」
「ええ」
人工パンの方は味わいが少なかった。量も多くて閉口する――主食ということなのだろうが、正直米食が欲しいと思うが、我慢できないほどでもない。フランスパンの内側に塩を降って食べているような感じだ。
バターかマーガリンが欲しくなるが、この簡素な食卓に要求を加えるのは早過ぎると思って口には出さなかった。僕は闖入者であり、乳製品が存在しているのかどうかも判らない。
人工肉の旨さは普通に喜ばしい。
「ふうむ。BFを旨そうに食う奴、久々にみたわい」
振り返るとドクが立っていた。
彼はつかつかと彼の椅子に座り、パンを頬張り始める。
「家畜を育てられる土壌さえ確保できりゃ、酪農でも初めてみたいもんだ」
「露天にゴキブリの唐揚げが並んでましたよ。今度、買ってきましょうか」
そう言ってレマが笑った。正直、食事中にされると不快な話題である――が、思い直してみればレマが生まれた頃には既に戦時中か戦後だった事になる。彼女には日常だったのかもしれない。
そう言えば、ウーパールーパーさえ食用になるという話を聞いた事がある。その気になれば、ゴキブリだって衛生面の問題さえどうにかなるなら食えるのかもしれないな。
「どうじゃ、初めてのBFは」
「悪くない、というのが正直な感想ですが、製法が気になりました」
「肉の方は栄養満たしたでっかい樽の中で、人工筋肉を回し続けるんだとさ。そこまではメーカーがバラしてるが、それ以上は当然企業機密さね」
僕はフォークで持ち上げた肉を眺めてみた。
脂肪の線が規則正しく並んでいる。
小麦の七百倍の効率というのはどれほどなのだろうか。こんな技術が完成しているのであれば、街の痩せこけた難民たちを救えるんじゃなかろうか――
「そいつの利権がこの街の存続を許しとるようなもんだ。それをあろう事か、H.I.Cって企業はその企業秘密を南側に売りやがった」
「……その話、決定したの?」
レマが驚きの声を上げた。
「ネットで早速話題だよ。節操なく核武装始めやがった――あっちの食料問題が解決しちまった訳だからな」
僕は食事の手を止めた。
なにやら、不穏な会話になってきた。
レマは不機嫌そうにドクターを睨んでいた。
「レマ。それ食ったらこいつを連れてモンドと合流してこい」
「わかった」
彼女が食事を再開したので、僕も慌てて食事をスープで流し込んだ。
最後に気付いたが、スープだけはどうしようもなくマズい。
塩水と胡椒で野菜を茹でただけなのかもしれない。
日は完全に落ちていた。
砂埃は相変わらず街中に吹き荒れていた。
僕は、この新しい日常に困惑し始めていた。
食事が済んで、余計な事を考える余裕ができたせいかもしれない。
はたまた、レマのバイクに乗る際は彼女に抱きつかないといけないせいかもしれない。
作業服の上からではレマの体を触っているという感じはしないのだけれど、それでも今日初めて出会った、それなりに可愛い女性に密着しているという意識はいささか心の平穏を奪う。
彼女はやがてバイクを止める。
荒れ放題の土地のど真ん中である。
そこに、バイク乗りが集まっていた。
――三十人以上はいるだろうか。
彼女は他のバイク乗りに手で合図した。仲間だろうか。
彼女はその仲間に挨拶もせず僕に向き直って言った。
「アメリカという国家は管轄区を縮小して、このロスのような廃墟街を無数に放置した――悪く言えば、手が回らないから見捨てた、勝手にやってくれって状態ね」
ああ。
これはどうやら、これから起こる事の説明だ。
聞かないと。
「ところで、帰り道は判る?」
僕は首を横に振る。
「でしょうね。良かった。――まあ、万一の時はどうせまた住処を変えるんだけどね」
僕が何かを質問しようと口を開ける度に、彼女は静止するかのように言葉を重ねて来た。
「『世界政府』も『統合協会』も、本部を持たないネットワーク型組織。形骸化した国家主権に寄生する形で勢力を伸ばした」
想像で補うしかない。
そういえば。
彼女の最初の二択は、なんだったんだろうか。
あれは、――明らかな誘導尋問ではなかったか。
「私たちはこれから、『統合協会』の支部を襲う。狙いは、そこの地下にある人工穀物生成プラント」
ああ。
僕はどうやら。
「――例の二択、もう一度だけ選ばせてあげる。
『私たちの仲間になる』か、『権力にひれ伏す』か。
この時代、ひとりぼっちのあなたの生き方は、その二つしかない」
レマは僕に、錆びた自動小銃を横にもって突き出した。
受け取れば。
この時代で、テロリストとして生きることになる――
僕は
「いやだ」
僕はしばらく、頭の中が真っ白になっていたんだろう。
ふと周りを見回すと、レマもレマの仲間達も、誰も、いない。
そうだ。確かレマはこう言ったんだ。
『そう。残念ね――それじゃ、今から私たちとあなたは敵同士ね』と。
そこまでは、一語一句漏らさずに、覚えている。
あれから何分経っただろうか。
「日本に……帰りたい……」
唐突に、全身の毛が逆立つほどの寒気に襲われた。
帰る?
帰るって、どこに。
日本に帰って、どうする。
日本という土地は、どうなっているのだろう。
どうやって帰るというのか。
僕は、もしかしたら、今の今まで『まだ帰る場所がある』と、勘違いしていたのか。
そうか。
どこかで、夢物語でも見ているかのような、そんな気分だったんだろうか。
そうか。
よく判らないけど可愛い女に翻弄されて、薄汚いけど新しい世界に今の今まで違和感を覚えずに。
なんとなく、レマの後ろ姿に付いて来て、一日が終わったのだ。
父さん。
母さん。
あなた達は、何歳まで生きてましたか。
仮に二千五十四年の今に生きていたら、どちらも百十歳を超えている事になるのですね。
十四年前の戦争とやらを経験せずにすみましたか。それとも。
考えれば考えるほど、
何もかもが空しくなる。
考えれば考えるほど、
今、自分が何故ここに立っているのか判らなくなる。
周囲には誰もいない。
どちらに歩けばいいのかも判らない。
どちらに歩いても、廃墟ばかりが続く社会。
僕は、体全体で雄叫びを上げた。
第一話「セカンドライフ」:完
266 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 17:21:44 ID:/Ss1i6SV
タイトル未だ未定ですが、いかがでしたでしょうか。
お楽しみ頂ければ幸いですが、無駄な描写多くて詰まらんかも判りません。
感想などお気軽にどぞ
GJ!ラストでぞくっとしたわ
これから主人公がどうなるのか気になる
感想thx!励みになるお
>これから主人公がどうなるのか気になる
主人公は次回死にます。すみません嘘です。乞うご期待。
オモロいっす。マジで続き希望
どもども。励むるです
次話は一応週末までを目標にします
サイ
誤字が気になるかな
面白いから終わってから推敲でもいいけど
話の運び方が上手
でもこれサイバーパンクか?
ウーパールーパーもゴキブリも食べたくないです><
感想沢山で感涙です;ω;
サイバーパンク度は次回で楽しんで貰えるよう推敲練って来ますお
おやすー
――今撃って、なんになるというのだ。
「大統領、ご決断ください」
大統領と呼ばれた男は、机の上に積み上げられた七百枚ほどの紙の山と、同じく机の上に放り出されている一丁の拳銃を交互に眺めた。
核兵器の利用を促す、七百人分の署名。
――核を撃てば、容易に「南」を殲滅できるだろう。
核を確保してしまった「南」に対する牽制がなければ、この国は不安で仕方がないのだろう。
この国は、しばらくの安寧を取り戻せるかもしれない。
――そもそも、采配を間違えたのだ。
勝つために、石油を使い過ぎた。
もちろん、我が国には多少の備蓄が残ってはいる。
そしてそれは、恐らく他国も同じことの筈だ。
旧式の戦車に最後の華を持たせる程度の燃料は、どこも多少は残している筈だ。
――すでに、国家と国家の戦争ではなくなった。
特に「東の二大国」は、一昨年に火星のテラ・フォーミング検証実験に成功した。石油依存のない宇宙離脱の研究は続けているだろうが――一度か二度くらいは宇宙を利用した作戦を実行できる程度の備蓄は備えていなければおかしい――
大統領の手が、一瞬だけ拳銃に向く。
しかし、
彼の手は印鑑を掴む。
「……大統領。正気ですか?」
「正気だとも。大統領権限で、この七百枚を否決するのだ」
「構いませんがね。明日は八百枚になるだけです。明後日にはなんとか千枚ご用意いたしましょう」
大統領は応えない。
「例の件は遂行しますよ。議会決議のうち、あれはあなたが否決できない件だ」
側近は、そう言い残して去った。
ドアの音の後に残るのは、一定のリズムで押される印鑑の空しい音だけだった。
大統領は思う。
――軍の判断を大統領権限で否決するには、一週間が必要となる。
それさえも形骸化した。
側近が不満を訴え続ければ、私の命令は通らない。
だが一つだけ――
この最高権限だけは、未だクリアな法律で守られている。
だから死ねないのだ。
私が自殺を選べば、代役が現れる。
その代役は、あの腐った爆竹を世界中に撒き散らすことだろう。
だから私は、死んだつもりで、この国の、最後の愚行を止め続けるのだ――
彼は、眼鏡を噴いた。
噴き終えるとまた、一定のリズムで、トン、トン、という音が鳴り続けた。
「平和そうなリージョンだな。みろよ、牧場まである」
「ステーキにありつけそうだな」
「人工穀物パテントのおかげで、余裕を取り戻した廃墟が増えたってところか」
「でも潰す」
三人の兵隊の背後から、若者が歩み寄ってそう言った。
三人の兵隊は敬礼のポーズを取った。だがその所作そのものには全く経緯は現れていない――三人揃って、おざなりの姿勢である。
若者もまた、肩を竦めて首を傾げた。
「女子供は犯して生かせ。今や不要となったアメリカという国家が存在し続けている事に、憎しみを持たせて逃す、のだそうだ」
語尾を聞いて一人が噴き出した。
若者もまた、つられて笑う。
他の一人が相好を崩して溜息を吐いた。
「アメリカが『統合協会』への支援を打ち切った途端にこんな作戦が命じられるとはね」
「妥当だと思うしかないさ」
若者はそう言うと、軽く曲げた人差し指を高く掲げて頭上で回しながら、大声で号令をかけた。
「10:30にサイボーグ三人を突撃させるぞ。お前らは先にARを片付けとけ。毎度の通り、まず奴らの情報を潰す」
「隊長、毎回同じ命令を叫ぶだけでよく飽きないな」
「とっくに飽きてるさ。おたく、次から叫んでみるかい?
別にだれが号令かけても統一できりゃいいんだ」
彼は干したナッツを三人に分け与えてから、その場を後にした。
隊が慌ただしく動く。彼ら三人も小走りに所定の用意に走る――
――AR(拡張現実)による情報管理を撹乱するのが、彼らの役割だ。
「けっ。板に付いた発言しやがって。あいつ、隊長何日目だっけ」
ARは、戦前から存在するRFIDと大差ない仕組みで実装されている。
定番のプロトコルが普及し、洗練されたくらいだ。
「まだ二週間だな。まあ、珍しい事じゃない。それに奴の待遇も俺らと大差ない」
兵士の一人はそう呟きながら、微弱な電磁波を洗い出す装置を調整する。
あの街内で使われるAR情報は、前哨兵からのデータによりほぼ確認済みだった。
ARの撹乱にはいくつもの方法がある。彼がもっとも有効と判断している策の一つが、ゴミ情報を撒き散らす事だった。
広域ネットに繋げれば、いまでもそれなりに信頼できる第三者認証機関に問い合わせる方法はいくらか確立されている。
それでも非認証の情報は、常に街中に溢れ帰っている。
この時代に生きるものは、皆、そのような非認証情報の危険性を知っている。
それでも、多くの人は惑うのだ。
――タスケテ! タスケテ!
――その角を曲がると、たくさんの子供が死んでいます。ええ、沢山の子供が!
――二回振り返らないでください。今、我々に危険が迫っています。
――私の子供を殺さないで!
――ママ。ママ。どこにいるの。僕はここだよ。はやく。ねえ。
――この先はもう、皆死んだ。
街中に、急に不穏な情報が溢れ帰ったら、誰もが平静を「少しだけ」失うのだった。
そして、だれか一人でもその圧力に耐えかねて叫び声をあげたとすれば――
かくして、街の統率は、なかった事になるのだ。
固まった分まで投下でした。小刻みですみません。
続きは明日以降になると思いますが、プロットは進めております故ご期待乞えれば頂ければ幸いです。
投下忘れてたこれまでのあらすじ
【第一話のまとめ】
・病気でコールドスリープしたら戦争挟んで退廃的な未来にきちゃったよ!
場所はロサンゼルス、アメリカ西海岸だ!
ロサンゼルスの人ごめんね!
・とりあえずお約束のボーイミーツガール展開だよ! ヒロインはレマっていうんだ!
可愛い系だってさ! 誰か萌え絵描いてあげて!
・近場に『人工穀物』利権を牛耳る一角があるんだよ!
その辺は格差社会の上って感じの生活だよ! 銃夢でいうとザレムだね!
・未来のロスは、『世界政府』って組織に敵視されてるらしいよ!
主人公達も攻撃されたので逃げて来たよ!
・レマは主人公を街に連れて来て、「ドクター・クロム」に押し付けて衛生検査させるよ!
なんと主人公は病気じゃないって! じゃあなんなんだろうね!
主人公がいた病院は、この時代では「元超能力研究所」として認知されてるんだって!
・人工穀物でお食事。ウーパールーパー。
・食事中の会話で、H.I.Cって企業が人工穀物のパテントを「南」に売ったんだって!
そしたらその「南」が核武装したんだって!
・レマは主人公に選択を強いるよ!
『私たちの仲間になる』か、『権力にひれ伏す』か。
主人公、断っちゃった!
・レマにフられちゃった!
主人公、ひとりぼっちで泣き始めちゃったよ!
どうなるの!
・どうでもいいけど、まだ主人公の名前さえ出て来てないよ!
「誰も叫ばなかったら?」
悪態を吐いた兵の方が、唇を尖らせた。
「適宜、狙撃銃で『事実』を作る」
同僚はいとも冷静にそう言い放った。さらに彼は続ける。
「あの隊長は凄いよ。ARハックが『原則的には無意味』なこと、そして『心情的には効果が高い』ことを理解している」
最初に悪態を吐いた方の兵は、彼の言葉を聞きながら押し黙り続けていた。
AR工作のスペシャリストに隊長を支持されたら、余興でからかう事もできやしない。
彼も面倒なケーブル接続の作業に没頭した。
――彼も、今の隊長の存在に疑問を抱いている訳ではない。
このご時世、新入りには事欠かないので、死の危険が高い作戦にはしばしば新入りを投入する。
そういった作戦を生き延びてしまえば、その場で副隊長待遇に格上げも珍しくはない。あとは隊長が死んでしまえば――珍しい事じゃない。
隊長の仕事はメンバーの管理と命令伝達役に過ぎない。
「あの若い隊長も俺達も、支部から飛んできた指示をこなして糧食を獲得し続けているだけだ」
「だけ? 一応、ドルが貰えるだろう」
「俺ら、そのドルを発行してる国を潰しに向かってるんだぜ?」
「……隊長、前の工場で何人殺したっけな」
「さあな。最後のあの掃射の印象が強過ぎて――」
「『あの掃射』が、隊長をやれる理由かね」
「そんな事は判らん」
兵の一人が立ち上がって、額の脂汗を噴いた。
あのとき「隊長」は、埃臭い地下室の中、
我々の目の前で、五十人ほどの捕虜を目隠しで並べて、
一人で処刑したのだ。
「『統合協会』の奴ら、弱体化したアメリカにゲリラを仕掛けています」
予期していた事だ。彼女はそう呟きかけて、口ごもる。
醒めたコーヒーが、やる気のない香りを放ち続けている。
彼女はコーヒーカップを手に取って、スライドを睨みつけた。
スライドが切り替わる。プレゼンテーションを行っているのは白髪の軍服の男。
「Fブロック以降は『世界政府』が撤退の模様。引き続き監視を続けています。また、この場を借りて我々『釘』の英雄として、無人機撃破数最多の栄誉を得たミス・レマの活躍を賞賛致します」
レマはまばらな拍手を受けながら、面白く無さそうな表情でコーヒーを呑み干した。
「腐った奴らだ」
「ん? なんだい、レマ」
「協会の奴らだよ。世界政府の無人機を個別撃破したところで、ゲリラや略奪を繰り返されたら意味がない」
場が嘆息で包まれる。
彼女の指摘は、現実だった。
戦況は、トータルで見れば悪化している。
――統合協会が確保した拠点数は、所詮少数精鋭に過ぎない『釘』の十倍ほどに至る。
「奴らの理論からすれば、アメリカ政府が無意味にのさばってる事こそが罪なのさ」
器量の整った金髪の男が、レマの肩を叩いた。
「お飾りの政府さえなくなったら、こんな国、ただの荒野だ」
レマは振り返る。
男は喋り続ける。
「資源が尽きて、船や戦闘機の姿が無くなった」
レマは思う。
――この男との、昨晩のセックスは最低だった。
「誰が何のために戦ってるのか、判らなくなっている――」
「今日は不機嫌だな、レマ。生理か?」
「さあ、どうかしら。なんなら今晩、確かめてみる?」
「……いや。今日は、遠慮しとくよ」
レマはニヤリと笑ってから、椅子から飛び起きて伸びをした。
「今日はここまで?」
「ああ。むしろレマから何かあれば言ってくれ」
「兵卒にエロ本は行き渡ってる?
今日はお酒飲んで寝させてもらうからね。鍵壊した奴は豚の餌」
――全ての女のために、反省すればいい。
男なんて屑だ。
「何か言ったかい? レマ」
「なにも」
彼女は『釘』の士官二十三名のうち紅一点であり、
育て親を除く全ての男と関係を持っていた。
「男なんて……皆、死ねば良い」
会議室を出て開口一番、彼女はそう呟いた。
282 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 09:06:30 ID:0ITOIiJ6
要するに、アメリカを舞台にしたサイバーな戦国時代、という理解でおk?
今のところそんな流れです
284 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 23:13:32 ID:0ITOIiJ6
石油が枯渇した世界では、エネルギーは石炭が主流になるだろうね。
2054年の世界は、蒸気機関車や石炭自動車や蒸気船が活躍する世界になってるかもしれん。
・・・『世界政府』とか『統合教会』とかが、新エネルギーを開発した、
という設定にしないと、サイバーな世界は難しいんじゃないか?
まあ俺の頭ではどっかで妥協するしかないのですがw
代替燃料の登場が間に合ったという描写がある点から適当にご容赦いただけると幸い
「……核、使いますかね」
軍服の男が、報告のあとでそう感想を述べた。
「少なくともこっちには飛んで来ないさ」
白衣の男が振り向いて応えた。
彼は続ける。
「アメリカ大陸の紛争は戦争というより内紛だ。
一度掲げた拳の収め方を知らないんだろう」
軍服の男は頷いた。
「我々は総力をあげて、人工穀物の製法を世界中に満たす。その際、核の放棄を条件に交渉し続けた」
「大失敗でしたね。南米のパテント先は、どこもかしこも裏工作に走ってしまった。むしろ核の準備に意気揚々としています」
白衣の男は、口元に笑みを浮かべながらかぶりを振った。
「いや。この事業が成功すれば、爆発的普及を促すかも判らんぞ」
彼は窓の外に目を向けた。
「今実用化されている物は制御炉に大量の水が要るが、それでも画期的なクリーンエネルギーには違いがない」
軍服の男もまた、外を覗く。
「この中露を通して実績が積み上がれば、人工穀物技術と合わせて、一挙に『本当の新時代』が来るぞ」
――窓から見える広大な風景は、この中国大陸全体から見ると、ごく一部に過ぎない。
軍実験用特区。
柊インターナショナルという会社を立ち上げて世界を揺るがせたこの科学者は、この広大な大地に腰を据えて、今、自社パテントとして証明した技術の実験を行っているのだ。
「常温核融合――」
「皆そう呼ぶな。我がH.I.C内では金属内連続核反応と呼んでいるが、やはり長いのか?」
大差ない。
柊という科学者は、その事をまるきり考慮していない。
核融合発電設備自体は既に余力のある各国が試験運用まで漕ぎ着けている。
しかし、どれもこれも調整装置の複雑化が壁となり、原子力発電設備よりも効率が見出せていない。
H.I.Cがパテントを掻き集めてまとめあげた常温核融合システムは、運搬できるサイズまで小型化できるというインパクトを示したのだ。
軍服の男は再び川を見た。
細い川に、紫色の水が流れていた。
川岸では泡立った水泡が積み上げられては消えていく。
二ヶ月前まで存在していたやせこけた木々は、今や姿形もない。
当然、生物など棲んではいないだろう。いや、突然変異種などが現れて適応しはじめるのかもしれぬ。
軍服の男は嘆息した。
――悲惨な光景だが、初めてではない。
この大陸では、無理な開発が祟った結果、過去にも何度も似たような光景は存在した。
だが、最初からこのような地獄絵図を想定し、それ故にこの土地を求めた男は、かつてない――
別の大陸では無意味な内紛が続いている。
その土地では、人工穀物で飢えを凌げる者達が強者となり、派閥を作り、睨み合っている。
この国で常温核融合実験の実績が安定すれば、――どうなるだろう。
ロシアとは協力できるが、お互いに軍事力は足りていない。石油がなくなったからといって、全てを電気自動車や代替ガスエネルギーに切り替えられるような生産はできない。生産工場自体が石油に大きく依存していたのだ、電気のみに代替していくにしても無理がある――
自然と、他国に狙われる事になるだろう。
彼の目には、人類の払う犠牲と自然に強いる負担が大き過ぎるように思えた。
その科学者は、この光景を眺めながら、笑顔を浮かべている。
「柊博士。いま、何を考えておいでです?」
「爆縮装置の主慣性モーメントと主軸テンソルを解いていた。第四世代ではかなり小型化できるかもしれんな。なんとかしてバイオ燃料依存も切り離したいところだ――」
この男は、悪魔でもない。
もちろん神でもない。
ただの、軍需という水を得た魚だ。
丁度良く(悪くw)燃料の話が出て来てたので投下しときました
続きは明日かも。乞うご期待
乙。
これからの主人公に期待。
あまり期待しようがないな
止めはせんが
こういうのは完結までageないでくれ
290 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/27(月) 21:43:07 ID:NKd3pYn3
だけど、アメリカを舞台にしたサイバー戦国時代、というのはおもしろい。
なんで俺は狂わないんだろう。
僕はアルコール入りの珈琲牛乳を呑みながら、あの日の事を思い出した。
初めて人を殺したのはいつだっただろう。
ああ、あの日だ。
カレンダーを見る。――あれからまだ、四ヶ月しか経っていない。
翻訳機なしでラグ・ノート話せるようになるのに、時間はかからなかった。
ARと翻訳機のバッテリーが一週間しか保たないためだ。補充にかかる金は二食分にもなった。僕はARの充電池しか充電しなかった。
レマに見捨てられたあの日のうちに、僕は、空腹に急かされるまま浮浪者を襲った。
力が残っているうちに行動を起こさねばいけない。そう確信し、強迫観念に襲われていた。
強盗という行為が敵わなければ、僕も明日から浮浪者達の仲間入りだ――
腐ったパンを握りしめた浮浪者は思いのほか貧弱で、苔にまみれたコンクリートブロックを頭蓋に落とすだけで死んだ。
僕は彼の握りしめていたパンを食べて、満足に至らぬまま、周囲を見回していた。
そのうち、老人の一人が僕に近づいて来て、こう言ったのだ。
「旦那。まだ、人の食べ方をご存じない?」
僕はそのとき、なんと応えたのだろうか。
それから、どうしたんだろうか。
覚えていない。
――思い出したくもない――。
「隊長、お食事です」
給仕係の少女が、食事の乗った盆を持って来た。
僕は彼女に礼を言って、その盆を受け取った。
――盆の上に、強奪したばかりの羊肉が供されていた。
少女は未だ、僕の傍に立っている。
見ると、茶の用意を整えていつでも継げるように身構えていたらしい。
「君は、人を食った事があるかい?」
「はい」
僕は、この十代前半に見える少女の即答に驚きは感じない。
「食わなくて済むなら、食うべきではなかったと反省しているかい?」
「……質問の意図が判りかねます」
「それでいい」
僕は彼女から食事の乗ったプレートを受け取って、それから箸を受け取った。
正直、箸が似合う弁当とは思えない。それでも味には関与しないから、別に構わない。
手慣れた食器も不慣れな食器も、不味さというファクターの前では無力だ。
不意に、腹の音が聞こえた。
僕の腹は今しがた満たされつつある状態で、今更鳴るほどの卑屈さは持ち合わせてはいない。
ふと振り返ると、給仕係の女の子が恥ずかしそうに俯いていた。
顔立ちは悪くない。むしろレマを思い返す。
しかし、この子には頭頂から後頭部にかけての傷痕が残っている――どんなに櫛を入れても整わない、痛々しい皮膚上の断絶があった。
彼女の笑顔は顎下の火傷によって引き攣っており、お世辞にも愛し合いたいとは思えない。
それでも彼女は火傷の目立つ顔で笑い、日ごと兵士に愛される事で、食事を確保し、守られる権利を得たのだ。
「茶はもういい。生きよう」
「はい」
彼女は僕に向かって敬礼をして、足早に去った。
なぜ僕は隊長になんかなったんだろう。
――初めての行軍で、敵を三人殺した。
糧食が足りないので、三人とも食った。
あの時の老人の教えの通りに血を抜き、湯がき、焼いた。
皮膚の剥がし方を知り、どの骨を折れば随を吸えるのかを知った。
五人ほどいた先輩達は、新米の僕の手際を恐れた。
だが、彼らも食べた。
今は皆、僕の忠実な部下となっている。
改めて思えば、あの時の僕は、努めて狂おうとしていた。
そうしてやっと、悲しい事実を思い知ったんだ。
人を食べても、人を殺しても、人を犯しても。
たとえ狂っても。
我々は善悪の概念から逃れる事はできないのだ。
あの少女を毎晩犯し続けていた元隊長を殺した時も。
あとで犯される事が確実な、泣き叫ぶ幼女を射殺した時も。
僕の行動に、基準らしい基準はない。
生きたいからか。そりゃ、死にたくはない。だが、死んだら、死んだ時だ。
本当に死にたくないだけなら、こんな硬質樹脂粘土製の銃弾を世の中に撒き散らす必要はない。
なぜ僕は、時代にそぐわない浮浪者として生きる事を選んだんだろう。
「なんで、僕は狂わないんだ?」
狂人の真似でもすれば、いいのかもしれない。
一生、狂った振りをする覚悟があれば――
――生きる目的はある。
レマに会いたい。もう一度でいいから。
会ってどうしたいのかは、自分でも判らない。
あと。
既に国家という体裁さえ失われた企業集合体地域「日本」を見てみたい。
故郷がどんなことになっているのか。
聞けば、人工穀物といいポータブル核融合発電機といい、この時代の火種はどちらも日本初の技術だと言う。
いま、故郷はユートピアになったのか。それとも伏魔殿となっているのか。
海を渡る機会など訪れるとは思えないが――日本を見てみたいという衝動は、今ここで人殺しをやっている後付けの理由として比較的説得力があるように感じる。
未だ火の燻る村を一望しながら、僕は最後の羊肉を噛み締めた。
老いた羊肉はの筋張った動物臭さは、なによりも美味に思えた。
続きはまた後日ぬ
オチから固めてってるのでちょっと投下ペースモタりますご容赦
「私たちは勝てる」
彼女は負傷した右足を庇うようにして暗い階段を降りた。
「弱体化したアメリカを正すには、私たちが示さなきゃいけない――アメリカ国民が、逆境に負けない強者であるということを」
彼女は呟き続ける。
まるで、自分自身に言い聞かせるかのように。
「世界政府の施設から奪ったこの『守り神』のお陰で、私たちは鉛弾だって鋳造できる――『統合協会』の奴らには真似出来ない」
巨大な変圧器の傍らで、家庭用冷蔵庫大の装置がうなりをあげていた。
「常温核融合装置のプロトタイプ――三年間、膨大な電力を発し続けているのに、まだ燃料メーターの一割も消費していない――」
レマは発電機に寄り添って、しゃがみ込んだ。
「私たちの守り神――どうか、我々に幸運を」
「レマ。またここに居たのか。歩き回ると傷口が開くぞ」
同僚が、レマを追って階段を降りてきた。
彼がレマの隣に立つと、やにわにレマは同僚の足に抱きつくように寄り縋った。
彼女は、涙を流していた。
「――レマ?」
「何が……少数精鋭よ……何が……」
同僚は、言葉を失ってかぶりを振った。
『世界政府』のロボットに仲間をやられたのが三日前。
――あの金髪は、レマと特に仲の良いお相手だった。
レマは『釘』の誇る女傑であるが、仲間の死の前では年相応の弱さを見せる。
少数精鋭と言えば聞こえが良いが、人が足りないからこそ均質なチームワークが組めるというだけの事だ。
対抗勢力へのアクションは、いつもゲリラ的かつテロリズムによる効果を狙わざるを得ない。
廃墟暮らしを脱するためだけに『世界政府』や『統合協会』に身を委ねる人間が多い。
虐殺の連鎖を止めるには、いったいどうしたらいいのだろう。
「人が……足りない」
レマの呟きに、同僚は頷いて考え込んだ。
人は居るのだ。
この国の復活を願う人は、沢山いるのだ。
「今、俺達は潜伏中だ。
強いアメリカを取り戻すために、また街宣を行おう」
「また、廃墟で街宣?」
レマが涙を拭かずに嘲笑した。
「乞食の中から強い人間を探す方法なんてないわ」
同僚は頷いた。
だが彼は、方法がある事を知っている。
それは、既に他の組織が取っている憎むべき手法そのものだが――いずれは、提案する必要があるのかもしれない。
乞食を集めて前線に立たせる事を。
「第三発電所停止。第四発電所停止――切り替え制御問題ありません――」
中国式の礼装に身を包んだ女性と、白髪の士官姿の老人が、実験室を見守っていた。
「信じられん」
女が嘆息とともに呟いた。
「あんなに小さい発電機一台で……今、この施設の電力を全て賄っているというのですか」
「開発に要した電力は非常に嵩みましたがね。石炭が豊富で助かった」
柊が、肩を竦めてそう応えた。
白髪の士官は窓の外を一望してから、咳払いして衿を正した。
「いや、素晴らしい。環境の犠牲さえ、長期的に見れば許される発明だ」
士官は、女と柊に順に握手を求めた。
「どうやら我々は、世界の覇者になったようですな」
「――その事でひとつ、お耳に入れておくべき事件が昨日報告されました」
柊が握手に応じながら、そう呟いた。
「ふむ。言ってみろ」
「半年前、私はアメリカの支社で同じ研究を行っていたのですが、そのとき施設が賊に攻撃されて避難した経緯があります。
昨日の報告によると、その施設で作った第一世代のプロトタイプが、賊に奪われていたとの事です」
士官と女は、息を呑んだ。それから女は、ガラス越しの異常な発電機に目を向ける。
こんな装置が第三者の手に渡っているなど、彼らに取っては寝耳に水であった。
「それは、この第三世代の正式版と比べてどう違うんだ?」
「カートリッジの交換が効きません。また、第二世代最大の発明である起動ロジック部分が含まれていないため、起動時には大量の貴重な残存石油を消費するという体たらくです」
士官は煙草に火を点けて、椅子に座ってうめき声をあげた。
「起動時、と言ったな」
「はい」
「それは、盗難時に起動していたというのか?」
「はい」
一同は顔を見合わせる。
「恐らくは『世界政府』が所持しているものと思われます。鉄の鋳造・加工には十分な熱量が得られるはずですから」
「『世界政府』――相変わらず、本体の見えない組織だ」
「中東の方でも確認されているとか」
礼装の女性が頷いた。
「焦る事はありません。中国、ロシアともに『第三世代』を三基ずつお持ち帰り頂ける訳ですから。
生産が間に合えば、来月から一基ずつお譲りできることでしょう。
――この次世代のクリーン・エネルギーの効果的な運用に期待しております」
士官が頷いて、煙草の火を消した。
「で……貴様の要求は、なんだったかな」
柊は、口元を微かに釣り上げた。
「第四世代の設計に入らせて頂きたいと思います。継続して研究費および人手をお支え頂けますかな」
「第四世代か……まだ改良の余地があると?」
「まだ実証できておりませんが、起動にバイオ燃料を必要とせず、より量産しやすくできるようにしたいと思っています」
窓の外の光景は、相変わらずの地獄絵図である。
――窓を開ければ、悪い病気にかからざるを得ない。
「引き続き、この公害を垂れ流し続けるつもりという訳だな?」
「はい。全ては、次代の発展のために」
女性と士官は、目を見合わせてからこの科学者の狂気に頷き返した。
皆殺しの指示がなくて助かった。
そうでなくとも、この一週間ほどは人を殺し過ぎた。
しばらくはそんな心配は不要になる。
既に街の占領は完了し、不穏な動きもない。
全くない訳ではないが
――ある一点を覗いては、全く問題がない。
あとは後続の隊に統治を引き継ぐ仕事が続く。
平和だ。
平和だと思うことにしよう――
――売春宿の窓から、汚い街並を一望しつつ一服していると、あの女が背中から抱きついてきた。
胸の感触を誇示するかのように、不自然な姿勢で両腕を僕の体に絡めてくる。
正直、不快だった。
「あなた、初めてでしょ?」
僕は彼女の顔を振り返る。
「なぜ?」
彼女は両の目尻に皺があった。それは化粧でも隠せないようだ。
暗い部屋であっても、近くで見ると、三十代は過ぎているように見える。
不快さが募る。
「私くらい売女やってると、判っちゃうんだよね。
でも、まあ悪くなかったよ。良かったらお姉さんがもっと上手なヤりかたを教えてあげようか――」
部屋を出ると、遠巻きに兵が集まっていた。
僕が立ち去ろうとすると、兵の一人が背中越しに叫びつけてきた。
「隊長、どうしてあの女を撃ち殺したんですか?」
僕は苛立たしく振り返ってから、用意していた言い訳を発した。
「……ああ、序盤で女減らすのはマナー違反だったな。すまない。
お前ら、この金で酒でも呑めばいい」
兵達は、まだぽかんとした表情を崩さない。
「殺していいんだよ。ああいう無礼なのは」
俺はそう部下達に笑いかけてから、売春宿を後にした。
これで俺も偽善者ではなくなる。
殺さなければ、今後の体裁が保てないから――。
――我ながら、テロリストと変わりがない。いや、むしろハリウッド映画の悪役という所だろうか。
最後は、正義のヒーローに倒されたいものだ。
そのとき夜空に、東の空へ向けて不自然な灯りが煌めいた。
「……ミサイル……」
「アメリカ? それとも?」
「だれが、どこに?」
多分、アメリカだろう。
まだ核を飛ばせるだけの燃料を確保している、という意思表示か。
それとも、件の大統領暗殺作戦が成功したか。
南に核弾頭を打ち込んだのかもしれない。
効果があるかどうか、末端の兵にははなはだ疑問だが。
諸悪の根元というものが居れば、話は早くなるのだが――こうも戦局が入り乱れると、関わる全ての者に理由がある。
どんな悪を叩くために、僕らは毎日を戦っているんだ。
――いや。
糧食の供給を得るためだけに、僕らは戦っているんだ。
駒は考えるなって事なんだろう。
それでも考えてしまう。
いや、考えなくてはならない。
僕は、丘の上に上がって、街の外周に規則正しく並ぶ例のロボットを一望した。
三十台ほどの『世界政府』のロボットが、外側に銃口を向けて、この街を守っている。
多分、考えなくてはならない。
――どうして『世界政府』が僕らに味方し始めたのか――。
ここまで第二話投下となります。お楽しみ頂ければ幸い。
やっとタイトルが固まりました。
4、5話ほどでプロットを消化できると思いますので、お暇な方はぜひとも最後までお付き合い頂けると幸いです。
GW中に完結できるといいな
湿気のある、いやな朝だった。
濡れタオルで頭を拭き、そのついでで寝汗を拭う。
あの街を出てから一週間、シャワーさえ浴びていない。汗臭さには慣れたが、衛生面は気を抜くとすぐに健康上の問題に繋がる。替えのタオルはカビていた。困った状況ではあるが、水の濫用は不衛生さよりも困った問題に繋がるので我慢する。
朝番の兵士の点呼に応えてから、テントに戻って無線端末をオンにした。
今日もまた士官連中からの指令が届いている。
指紋認証した後、AR上に大量の文字が流れ始める。
「どうですか、隊長」
横から、この隊で最年少の少年兵が訊ねてきた。
隊長と副隊長以外には、この士官の連絡情報は閲覧できないことになっている。
だが口頭で全てを伝えることは問題ないらしい。効率を下げる不条理さは現場にとってジョークにもならない。
俺は少年兵に向き直り、サングラスを外した。
「見るかい」
「規律は守りましょうよ、隊長。それで、例の件は?」
「全くだ。一言も触れられていない――こっちからは何度も報告してるってのにな」
例の件とは、『世界政府』のロボットが急に我々に味方し始めた事についてである。
そのお陰で、この行軍はとても気楽なものになった。命令せずとも、率先して露払いに走ってくれるのだ――野犬との諍いさえないまま次の拠点候補に進軍できそうである。
もちろん、いつこのロボット達が叛旗を翻すか判った物ではない。
なにせ、三日前に一度だけ、『状況を確認中』という有り難い言葉の他には連絡が皆無なのである。
「誰か、世界政府の人員を実際に見た事ある奴はいるかい?」
「あんたが入隊する前に、一応ね」
スキンヘッドの兵が応えた。三人いる分隊長格の一人で、この紛争に参加して七年目だという。
僕からすれば大先輩もいいところだ。彼が僕に敬語を使わないのは当然であり、むしろその方が気が楽である。
「へえ。そいつはどんな奴だった?」
「俺らと同じさ。そこらの支部で雇われて、仕事が終われば食い物や薬物を貰えるって格好だ。
士官連中はネットの繋がるどこかで左うちわじゃねえのかな」
「後払いなのか」
「隊を組まない場合はそうらしい。日ごとに減ってたけどな。その変わりに、あのタカアシガニが増えた」
「まるで、コンピューターに戦争ゲームを指示されてるかのような気分だな。
――今日は、あの丘を越えたあたりで晩飯といくか」
「また近いな」
「雨が心配だ。無理に歩みを進めて周りが見回せないと、結構不快な事になると思う」
スキンは空を見上げて、東西南北を見回した。
「良く判らんが、隊長の天気予報は当たるからな。了解だよ」
「隊長、まるで予知能力でもあるかのようですね」
少年兵が言った冗談に、僕は内心で頷いた。
その兆候は感じていた。
あの超能力研究所で、俺が何をされたのかは判らないが。
「……隊長。追加の伝令が届いています」
「追加? 珍しいな」
スキンの言う通りで、朝一番の伝令以外が届く事は今までになかった。
でも僕は、どこかでそれを予期していた気がする。
情報を受け取って、既視感に満たされた。
突飛な指令だ。普通なら驚いて然るべきだろう。
なんだろう。この奇妙な既視感は。
もしかしたら、夢で見ていたのかもしれない――
僕は副隊長を集めて号令をかけた。
「全軍、方向転換だ。急いで全員に伝えてほしい」
「ほう。何かあったか? 援軍要請か?」
「目的地は最寄りの『統合協会』の拠点。なんでも、お偉いさんがご馳走してくれるらしいよ」
一同は顔を見合わせて、怪訝な顔をした。
僕もまた、既視感の正体が予想できない事に不安が募った。
もし僕に予知能力があるのならふんだんに利用したい所だが、その『使い方』となると、いまいち良く判らないのだ。
『統合協会』の拠点の姿を見て、始めて僕は『統一教会』の存在に実態感を見出した。
十重二十重ものバリケードの中に立派な洋館が位置し、目に見える範囲で十数人の兵士が石膏像のように立っている。
厳重な警備というよりは、威圧感の表現手法であると言えそうだ。
「あなたは?」
彼は、日本語で応えた。
「柊と呼んでくれ。それ以上は名乗れない」
日本人だ。
久々に聞く日本語。
「あの、H.I.Cの、関係者?」
久々に喋る日本語は、ひどく調子がおかしい喋り方になっていたと思う。
柊は口元に笑みを浮かべてから、かぶりを振った。
「そうだ。それ以上は聞くな。――ここからはラグノートで話そうか」
部屋には、士官も一人佇んでいた。白人であり、日本語に精通している様子は感じられない。
柊が椅子につくように勧めた。僕は従った。
テーブルの上には、食事とワインが並んでいる。
食事はどうやら天然の食材ばかりのようだ。人工穀物を加工した類いの物は見当たらない。
ここで和食が並んでいれば泣いて喜んだところだが、並んでいたのは料理名もよくわからない洒落た洋食ばかりである。
柊と士官がワインを掲げるので僕も真似をした。彼らが一口飲むので、僕はまた一拍遅れてから真似をする。乾杯の音頭くらいあってもいいと思うのだが。
ワインには詳しくないが、少なくとも本物のブドウから作られたものに間違いあるまい。合成品でこんな複雑な酸味と苦みを表現する必要はない。美味いかどうかで言えば、微妙だ。
人工穀物に慣れた味蕾というのは、ファースト・フードに慣れた味蕾と大差ない。
そして、慣れというのは恐ろしい物で、僕の味覚は今食べている生ハムの美味しさを理解していながらも、いつも食べている塩味の人工穀物を欲してしまうのだ。
恐らく、目の前にいる柊という人物が、あの世界的な飢饉から難民を救った人工穀物の発明者に相違ないのだ。
「君たちには、『釘』が持っているはずのある装置を奪還してほしい」
柊は乱暴な作法でディッシュ二枚を平らげてから、そう云った。
僕はやっと理解した。そうか、これは作戦依頼のための会合だったのか。
釘という組織の名前を聞く度に、レマを思い出す。
思い出してから僕は、彼女の笑顔を脳裏から追い出しながら訊ねた。
「装置――小型核融合発電機、ですか?」
正直、H.I.Cが私兵を雇って奪還してほしい装置となると、それくらいしか思い当たらない。
「人の耳が心配だ。コードネーム『リンクス』と呼んでくれ」
「リンクス?」
「筐体にも記してある。見つける時の参考になるだろう」
柊はそういって、現物の映る写真を取り出した。
大きさが判らないが、台車に乗っているところを見ると――本当に移動可能なサイズらしい。
「弊社の小型発電機のうち、最初期のプロトタイプにあたる。起動が困難なため量産には至らなかったが、『世界政府』の襲撃を受けた際に奪われた」
「『釘』がこれを確保しているという証拠が出た訳ですね?」
柊は二枚目の写真を取り出した。
その航空写真には、一人の女性が、先ほどの写真と同じ発電機を台車で押している姿が映っていた。
レマ。
叫び出したいほどの激情が背筋に奔る。多分僕は、目の色を変えてしまっただろう。呼吸を落ち着けてから、改めて柊に視線を戻す。
「お知り合いかね」
僕は少し逡巡してから、頷いた。
顔に出ていたのであれば、士官の前で隠すことは望ましくない。
「命の恩人で、かつ――僕を捨てた人です」
柊と士官が目を見合わせた。
「殺せるか?」
「必要があれば」
吐息とともに士官が立ち上がり、始めて口を開いた。
「君には断る権利がある。この作戦は、事実上『釘』との一騎打ちだ。拠点制圧に比べて、危険性は格段に高い。
もし受けてくれるのであれば、H.I.Cの支援のもと、それなりの願いに応える事ができる」
彼は一気に捲し立ててから、僕を睨みつけた。
「報酬は、他の兵にも?」
「この作戦、君の隊に一任するものではない」
士官はかつ、かつと偉そうに軍靴の音を響かせながら、僕の傍らに歩み寄った。
「普段の十倍の額で、複数の隊から志願者を募る。我々は、君を最も優秀な隊長と評価し、君に最初に提案することにしたのだよ」
――ふむ。
大した出世だ。
これまで『統合協会』に命じられるまま百人以上――隊で見れば千人は行くだろうか――それだけ殺したというのに、僕の身分は何も変わらないという訳だ。
危険度の高い仕事の斡旋が来るだけとは。
大した出世だ。
「なにか夢はあるかね?」
身分に何かを期待できる社会ではない。
「僕は、日本で生まれました」
僕は、僕の夢を告げよう――
レマと戦ったら、目標の一つが完了するだろう。
その後で、もう一つの目標を。
「それからコールド・スリープ難民の一人として、今ここで戦いを糧にしています――
――既に国という体裁がなくなったという日本を、見てみたい」
「観光かね」
「いい響きです。案内人をつけて頂けると尚良いですね」
「承諾してくれたものと看做す。
それでは、作戦内容を説明しよう」
僕は作戦内容を聞きながら、漠然とした不安が背筋を這い上がってくるのを感じた。
――もし、日本に帰ったら。
それからの僕の目標は、何もなくなるだろう。
多分、生きる意味を見失うんだろうな。
左目から涙が溢れかけた。
すぐに拭き取ったため、二人のお偉いさんは気付かなかったようである。
やっちまったorz
無意識に某教会名を打ってしまいましたが、もちろん『統合協会』の間違いです。
〜′ミ,,゚Д゚彡 <まだ第三話の途中でございますが、今日はここまでです。
〜′ミ,,゚Д゚彡 <ついでにここまでのあらすじを投下させていただきます。
〜′ミ,,゚Д゚彡 <
>>279と合わせて読めば、三話最初まですっ飛ばしても筋書きくらいは判るかもだよ!
【第二話まとめ】
・月日は流れ、なにやら主人公は『統合協会』の隊長に収まった!
いろいろひどい経験積んじゃったみたいだ。かわいそう!
・日本発のH.I.Cって企業が『人工穀物』と『常温核融合装置』を発明したんだって!
まあ実用化と普及に貢献した第一人者って事なんじゃないか。
・そこの科学者、ちょっと狂ってる感じ!
・レマの所属するテロ組織『釘』は、H.I.Cの施設からプロトタイプの常温核融合装置を奪ってたみたいだよ!
なあるほど! 少数精鋭が成り立つ訳だね!
・あと主人公が童貞喪失。童貞だったのかよ!
・『世界政府』のロボット群が、『統合教会』に味方し始めた!? 対立組織じゃなかったの!?
乙。
イイカンジで予想を裏切った展開になってきてるよー。
ご拝読どもども、励みになります。
日が明けてから、行軍が始まった。
昨日予想した通り、雨に見舞われた。
『世界政府』のロボット達の姿がない。
みんな不思議がったし、それが当然だと思う。
でも僕には驚きが生じなかった。
いなくなるだろう、という気がしていた。
本当に、予知能力があるのかもしれない。
むしろ、この予想が当たったことから一つの着想を得た。だが、それは言葉には出さなかった。
分隊が六隊に倍増した。その指揮を取っているという気分は悪くない。
副隊長には僕のよく知るスキンヘッドの彼が就いた。大声で号令をかけるのにも、凄んで兵たちを纏め上げる能力も彼の方が上だ。安心感は上々である。
驚いた事に、この行軍ではガソリンが支給された。
『釘』の一掃を、士官連中がいかに重く見ているかが伺える。
バイオ燃料互換エンジンでもガソリンはよく働く。さすがに車の馬力が違う。
不思議なもので、久々に感じたガソリンの香りは良い匂いに感じられた。
「隊長。この行軍、俺には意味がわからんね」
「そうかい」
「隊長の見解では、あいつがH.I.Cのトップなんだろう?」
「確証はないよ。まあ、少なくとも地位のある関係者なのは確かだ」
「なんでそんなお偉いさんが、前線に立ってるんだ?」
僕は助手席から身を乗り出して、前を行く分隊の中央を眺めた。
埃と雨で曇った視界の中、トラックの荷台で仁王立ちの柊の姿が確認できる。
僕は不思議と、それが当然なようにも感じた。
「前の分隊は、新製品の実験を行う事になっているらしいよ」
「どんな新製品だかね。
ガソリンが支給されているのも意味判らん。
H.I.Cと組んだなら、噂に聞く核融合発電装置を使わせろって言うんだ。なにも貴重な残存資源を使い切る必要はないだろうに――」
僕は彼の喋りを右手で制した。
「バイクの音だ」
「だな。俺にも聞こえたぜ。指示は変わらないか?」
「ああ」
スキンは無線機を取り、全軍に散開の指示を出した。
今通っている道は、左右が枯れ木で、視界が悪い。
『釘』の連中は少数と言われているが、全員分のハイブリッド・バイクが揃っているとも言われているため、行動半径が広い。
僕らが彼らの基地に向かっていることにすぐ気付くだろう。
となると、当然この道の進行中に攻撃してくるはずだ。
「作戦通り、俺達はあの酔狂な科学者の援護に入る訳だな」
「第四分隊以降が迂回して、間に合えば『釘』を挟み撃ち」
「いまさら聞くのもなんだが、誰の作戦だ?」
「柊だよ」
スキンは舌打ちしながら、銃を点検する。
僕も運転を交代する前に、泥まみれのアサルトライフル二丁の清掃状況を確認した。
いくら点検したところで腐食した部品が治る訳じゃない。
いつ暴発してもおかしくない銃火器が、頼みの綱なのだ。
「僕らが死んだら、即座に次の隊長候補分隊に指揮が移る」
「気張れよ、王将。使い捨てられる事を考えるな」
銃弾カートを一パック使い切ったあたりで、物音が止んだ。
屍体の焼ける匂いが充満している。
「損害は」
「ほぼゼロだ。いったいなんだ、この雑魚共は」
「……最後に聞いた物音は、バイクのエンジン音が去って行く音だったな」
どうやら『釘』は方針を変えたらしい。
浮浪者上がりの弱々しい連中にお情け程度の銃器を握らせて、けしかけてきたようだ。
柊が、哀れな浮浪者達の間をうろついていた。
まるで、何かを待っているかのように。
その時、死に切れない敵の一人が半身を起こし、拳銃を柊に向けた。
僕よりも先に、スキンが敵を撃った。
しかし、それよりも先に柊は撃たれてしまった。
頭を撃たれたはずの柊は、何故か下腹部を押さえながら倒れた。
「畜生」
僕は慌てて駆け寄った。
彼の傍まで行くと、なにかパチパチという音とともに静電気のような痛みを感じた。
違和感のせいで、彼を助け起こそうと伸びかけた手が止まる。
――柊は驚いた事に、無傷で立ち上がった。
僕はかぶりを振る。
「新製品のテストは、完了しましたか」
「分隊の兵も無事なようだ。まあ、この状況下でこれだけの実績を出せれば上々だろうな」
彼はズボンの中に仕込んでいた、小さめのラグビー・ボールのような装置を取り出してみせた。
「電磁フィールドという試作品だ。事の次第によっては、人工穀物よりも、金属内連続核反応炉よりも世界を変える発明になるかも知れん」
僕は反応に困って、スキンを振り返った。
彼も肩を竦めた。
車に戻り、行軍を再開した。
柊は僕らの車に乗り、説明を続けた。
「この発明で、銃弾の意味が変わる。今出回ってる硬質樹脂粘土、金属片を含む事でかろうじて殺傷力を確保しているものしかないからな」
その装置自体は、開封厳禁の張り紙とともに全兵士分が用意されていた。
実験成功が通達され、僕のベルトにも一つ括りつけられる事になった。
「人工筋で強化したサイボーグに殴られても、圧力の分散が可能だから死ぬ事はなくなるだろうな」
「あなたは――」
言葉が出て来ない。
雨が晴れない。このままだと、迂回した分隊と合流する前に攻撃があってもおかしくなさそうだ。
「――死ぬ気で参加した訳ですか」
「然り」
彼はバックミラーの向こうで、飄然と頷いた。
「第四世代が完成した今、あとは後継の科学者に任せた方が伸びる」
彼の喋りは演説家のそれである。いささか芝居臭いイントネーションが鼻につく。
「私は、この発明の効果を信じて、この目で確認するために来たのさ」
スキンは不機嫌そうな表情で外を眺めていた。
柊が同乗してから、一言も口を聞いていない。
- - -
『釘』は確かに精鋭揃いだった。
雑魚の襲撃の合間から、正確な狙撃が繰り返されては貴重なガソリンに引火した。
僕の分隊は二時間後には、全ての車を捨てる決断をした。敵の拠点まで半日かかる事になるが、そんな事を躊躇える状況ではなくなった。
実践以外で訓練を積んだ兵なんて、『統合教会』には一人もいない。僕だってご多分に漏れず、遠くの敵を撃っても当たった試しがない。
雨はまだ止まない。
「まずは雑魚だ。雑魚を潰して、『釘』のやり方を炙り出すぞ」
僕らの分隊は、そのスキンの言葉を合図にARを完全にオフにして、散開した。
すでに、柊を守れるような状況でさえなくなっていた。僕はアサルトライフルの一丁を柊に渡す。
心なしか彼は笑っていた。
三人殺したところで、僕はどこから飛んでくるのか判らない銃弾の隙間で孤立した。
僕は、逃げながら、確実に殺せる方法を摸索して、潜伏して、罠を張って、執拗に敵の罠を警戒して――生き延びただけだ。
追い込まれたらどうすべきか。怯えながら死を待つだけか。
退路が欲しい。
僕は戦争の仕方なんて、結局欠片も判っちゃいないんだ。
ブッシュに隠れながら深呼吸をすると、無意識のうちに涙が溢れて雨と混ざった。
正直、生きて帰れる気がしない。
もし僕に予知能力があるのなら、ここでどうすべきかを教えて欲しいものだ。
風上で爆音が轟いた。
枯れ木が燃え、いやな煙が押し寄せる。
僕は即座にブッシュから飛び出して、安全を確保できる場所を求めて走った。
――今、敵の視界に補足されていたら終わりだ。
一か八かで走り抜けた先で、俺は人影に銃を向けた。
「生きてたか、隊長」
スキンだ。
僕は安堵の溜息を隠せなかった。
「状況は」
「同じさ。追い込まれっぱなしだよ。さすがテロリスト、いい爆弾をお持ちのようだ」
加えて、使う場所も適切すぎる。
僕らは今、敵を炙り出すどころか、ものの見事に炙り出されているという訳だ。
銃弾が足下を跳ねた。
安堵の溜息をつく暇なんか、どこにもないという事だ。
どこから狙われているのかさえ判断がつかない。
そもそもテロリストとして名高い『釘』が、ゲリラ戦に長けているのは当然だ。
僕は怖気だった。
枯れ木の山に追い込まれた時点で、勝ち目がないのかもしれない。
「これまでの死傷者数は判るかい」
「……無線報告によれば、一人、らしい……」
「一人?」
「引火に巻き込まれた奴が一人、多分死んだと報告が上がってる」
僕が聞きたいのは、そんな事じゃない。
この泥沼の中、何人居るか判らない精鋭達に狙撃され続けているんだ。
十や二十でも少な過ぎるはずだ。
無線系統が乱れたのであれば、この進軍はここで終わりという事だ。
「君たち、隠れる必要なんかあるのか?」
柊の声が響く。
彼は、銃弾の雨の中で、両手を広げて戦場を見渡していた。
――神にでもなったつもりか。
僕は、電磁フィールドの効果を改めて傍観した。
銃弾は確かに柊に到達せず、軌道を曲げて跳弾する。
「跳弾した分の運動エネルギーがフィールド装置に伝わってしまうのが弾に傷だな。だが、距離があると十分我慢できるようだ」
柊は自ら銃を構えて、素人の撃ち方で掃射した。
銃弾が止む。
「隊長さんは、私の発明品がまだ信じられない様子ですな」
僕は、我慢し切れずに叫んだ。
「柊博士。あなたは、この紛争を楽しんでいるのですか?」
スキンが立ち上がる。
銃弾が彼を霞める。
「隊長。俺ら、もしかして」
散弾が彼の足下にばらまかれた。
スキンは下腹部を抑えて体制を崩したが、すぐに立ち上がった。
「とんでもない茶番劇をやらされているんじゃないか?」
スキンがそう呟きながら、ライフルを構える。
「隠れずに撃てりゃ、追い詰められたことにもなっちゃいない。同士討ちもない」
僕もまた、いつしか銃弾を気にせずに歩き始めた。
頭の中が、考える事をやめてしまったかのようだ。
現実味のない発明品を持たされた時点で、僕らは虚構の中に引き摺り込まれたのかもしれない。
「隊長。こんなの、すでに戦争じゃねえよ」
僕は草を掻き分けて、正面から敵に近づいて、銃弾を流し込んだ。
『釘』の精鋭達は手榴弾も備えていた。
距離を取りながら迂回して、弾を節約しながらトリガーを引けば、そのうち悲鳴が響く。
銃声がなくなったところで、僕はスキンの呟きに応えた。
「同感だよ。これは、ただの虐殺だ」
「君はさっき、こう訊ねたね。『この紛争を楽しんでいるのか』と」
残っている車に戻り、僕たちは行軍を再開した。
溢れた人員は徒歩なので、後続の隊の合流を待たせる事になった。
「……少なくとも愉快ではない――そうだな」
柊は喋り続けた。
彼の演説口調は、比較的どうでもいいものとして僕の耳に届いた。
それよりも。
「時代の分岐点に関われた事を、喜んでいるのかもしれない」
その言葉で僕は、『彼』について、ある事を確信した。
根拠はない。
ないのだけど。
これまでの紛争で僕が予知能力を発揮出来ていたのであれば、
――間違いは、ないはずだ。
- - -
正直なところ、これまでのどんな拠点制圧よりもあっけなかったと思う。
僕は、遠目に火事を見物していた。
廃工場を改造したらしいその拠点のそこかしこから、既に煙が上がっている。
こちらの損害は三名だ。
電磁フィールドが、名前の通り爆発物には効果がないのが災いした。
また、電磁フィールドの効果を知って兵達がはしゃぎすぎているのも問題だ。
『釘』の拠点近くでは、混じりっけなしの銃弾が飛んできた。
本来であれば初速が桁違いな恐るべき素材だが、電磁フィールドの前では合成素材の銃弾よりも分が悪い。
柊の演説の通り、この発明品は今後の紛争史において、銃弾の意味を変える事になるだろう。
鉄を使わない銃弾が研究されるのか。それともカーボンのナイフや弓が発達するかもしれない。
「隊長。例の女が確認できたそうだぜ」
「捕らえられそうなら捕らえてくれ。家捜しして出て来なかった時のために、発電機の場所を聞かなきゃいけないからな」
僕の言葉が終わるのを待たずに、立て続けに爆音が響く。
報告を聞いて、僕はすこし感銘を受けた。
レマと数人の精鋭が、銃を捨て、爆薬中心で反撃しているという。
ホームグラウンドないを駆け回り、確執迂路を駆使し、僕の部下を五人も殺したという。
本当に、戦争のプロなんだろう。
もし僕が彼女の立場だったらどうしただろう。
銃の通用しない兵隊数十名に襲われたら、僕はどうしただろう。
――たぶんそれは、どんなホラー映画よりも恐ろしい不条理のはずだ。
「隊長、手こずってる。作戦の指示を」
「ARだ。用意は」
「一応ね。でも、通用するか?」
「多分ね」
- - -
観念した彼女は、ARの制御を解いて投降した。
驚いた事に、彼女は未だにマリリン・モンローのスリーサイズを公開情報として背負っていた。
あの出会った日から、何も変わっていないのだろう。
彼女の何もかもを諦めたような表情は、とても愛おしく感じた。
三話ここまで。続きはまた明日かもー
第三話のあらすじ!
・主人公の名前が未だに出てきてない!
次回、恐らく最終話。乞うご期待!
カビ臭い監獄の中で、両手を釣り上げられた彼女はとても艶かしく感じられた。
「久しぶりだね、レマ」
「あんた、誰よ」
彼女は僕の事を忘れていた。
彼女と接したのは一日しかなかった。――覚えてないのは当然だと思う。
魅力的な彼女の事だ。彼女と接した男なんて、数え切れないほどいるに違いない。
テログループ『釘』は、身内を増やすきっかけを逃さないという。
「ラブコールを送った本人さ」
「あの狂ったARは、あなたの仕業なのね」
「殺したくなかったんだ」
彼女は僕の顔を睨みつける。
施設中に、文字通りレマへのラブコールを含めたARを設置したのだ。
散弾や手榴弾で撒き散らせるタイプのARも残っていたので、ふんだんに使い切らせた。
得体の知れない兵隊に囲まれた中で、その情報はさぞかしおぞましい物だった事だろう。
彼女達はあっけなく、そのARが少ない方に誘導されてしまった。
人間は弱い。尚かつ、極限状態で通じない訳がない。
捕らえた直後のレマは、狂人そのものだった。
今、彼女は獣の目で僕を睨みつけている。
僕は部屋の傍らにあった埃だらけの椅子に息を噴きかけてから、背もたれに両腕をかける格好でまたがった。
「何がラブコールよ。リンクスの場所を聞き出したいだけでしょう」
「それだけじゃない。君には命を救われたからな」
「ふざけんな。協会のお偉いさんの命を救った記憶なんかない」
「僕は、君に見捨てられて、統合協会に縋るしかなかったんだよ」
僕は、彼女に会いたかったはずだ。
でも、会ってどうしたかったんだろう。
僕と彼女は敵同士。
僕は士官から、命令を受けている身。
――拷問して、プロトタイプの核融合炉『リンクス』の在処を聞き出さないと。
「何の話をしてるの? 人違いじゃないの?」
「君はあの日、こう言ったんだ。『核融合なんて、あなたの時代には夢物語だったでしょう?』ってね」
そうだ、
こうしよう。
レマが、僕の事を思い出してくれたら、助けよう。
思い出してくれなかったら、殺そう。
そうだ。
それでいい。
「なんであんた、勃起してんの?」
言われるまで気付かなかった。
僕は、彼女を殺す事を想像して、少なからず昂奮していた。
それは半ば、自棄に近い方の昂奮だ。
あまり自然な感情とは言えないだろう――
「犯すなら犯せば」
彼女もまた、下衆な笑みを口元に浮かべている。
眉間の皺が、彼女もまた不自然な感情に流されている事を示している。
「良い提案だ。もしもの時には、そうする事にしよう」
「これは尋問じゃないの? あなた達は、リンクスの場所を知りたいんでしょう?」
「尋問にもならない。君は僕と会ったあの日に、自分で証言しちゃっているからね。
『核融合って、あなたの時代には絵物語だったでしょう』――って」
レマは応えない。
惚けたような表情で、僕の両目を覗き込むばかりだ。
僕は、銃の撃鉄を起こした。
筋書きはこうだ。
リンクスの場所を応えろ。嫌よ。じゃあ死ね。
――完璧だ。
僕は椅子から立ち上がり、レマに一歩歩み寄った。
「――思い出した」
僕は立ち止まる。
嘘かもしれない。
「あの、コールドスリープの」
レマ。どうか。
どうか僕を、
期待させないでくれ――
「生きてたんだね」
彼女は、何故か涙を流した。
僕は拳銃を取り落とした。
僕は、無意識のうちに彼女を抱きしめていた。
「ずっと、君の事を考え続けていた。それだけが糧だった」
彼女は目を背けた。
「ひとりぼっちの人をたらし込んで、兵隊として引き込むのが仕事だったわ」
謝罪のつもりだろうか。
「判ってる」
僕は、彼女を許したい――
次の瞬間、僕は一瞬意識を失いかけて、しりもちをついていた。
どうやらこめかみに頭突きされたらしい。
「生き方が違いすぎる」
彼女は僕の足下に唾を吐き捨てた。
「あなたは、私の仲間を殺した」
「レマ。君や君の仲間もまた、僕の仲間を殺したんだ」
「あなたが何を言おうと、どう思おうと」
彼女は僕の言葉を遮るかのように、声を張り上げた。
「少なくとも、あなたが『統合協会』の兵士として辿った道を、私は絶対に受け入れられないわよ」
レマの双眸には、憎しみの色は感じられなかった。
次第に彼女の涙の跡は薄れ、兵士の無表情さに戻っていった。
「……リンクスの隠し場所を教えるわ。だから、殺して」
僕が銃を構え直すと、彼女は洗いざらいを喋り始めた。
死を選ぶ事が、彼女の筋書きなのだろう。
彼女は、僕の筋書きには乗ってくれない。
仕方がないだろう。
あのときイエスと応えなかった瞬間から、僕と彼女は敵同士なのだ。
僕は彼女を殺さずに、部下達に託した。
犯しても良いかと聞く部下には、何も応えなかった。
犯したければ犯せば良い。
そうとも。
僕と彼女は、敵同士なのだから――。
完勝を祝うパーティーの最中、僕は別室に招かれた。
そこには、士官が並んでいた。
士官というのはこんなにいたのかと、改めて驚いた。
十人以上が、豪勢なテーブルを囲っている。よく肥えた人物も目立つ。
壁際には時代物のサーベルを携帯した兵士が、銅像のように直立して十人ほど並んでいた。
この席で、無礼な発言は難しそうだ。
「悪い話ではなかろう。君の指揮力、応用力は現場には相応しくない」
士官の一人が僕に説明を続けている。
彼の声は、まるで、悪い耳鳴りのように甲高く響く。
「我々は、『世界政府』を追い詰めて、アメリカ政府との協力を密にし、この国を建て直さなくてはならない」
アメリカを牛耳る、の間違いだろう。
資金援助を打ち切られた時に、弱体化したアメリカを追い詰め、核を発射させたのはこいつらなのだ。
「そのために、君を福士官としての教育課程にだな」
「お断りします」
士官連中は、一様に僕の顔を睨みつけていた。
驚きの色も、怒りや呆れを表現している表情もあった。
「何故かね。君は、戦う事のみが生き甲斐なのかね?」
「やり残している事があります」
「なんだね」
僕はかぶりを振った。
元々この国の人間でさえない僕が、たまたまこの国の情勢に闖入しただけの事だ。
そんな僕が出世すると言うのも滑稽な話だ。
「……とても、個人的で、下らない事です」
「次の機会は、無いかも知れんぞ」
「構いません」
僕は儀礼的に非を詫びてから、格差の扉を開けて、俗世の廊下を踏んだ。
- - -
あれから二日になる。
休暇は今日までだ。
今日中に調べないといけない。
――ここだ。
ここで、僕は――レマに拾われたんだ。
近場で紛争があったのだろうか、研究所跡地は随分と崩壊具合を増しているように感じた。
もっとも、僕の記憶がどれだけ確かなのかは知るべくもないが。
マリーの白骨屍体は変わっていない。
影になっている建物跡で、崩れたコンクリートの隙間から日が差し込んでいる。
いくらか幻想的な光景だと思う。
僕もまた、本来こうなるべきだったのだろう。
「生きてしまったなら仕方がない」
言葉に出すと、微かに残っていたやる気がいくらか沸き起こってくる。
理由を探そう。
「……理由を、探そう」
僕は、土の積もった研究所の床をスコップで掘り始めた。
ここには、証拠があるはずだ。
例の予感だ。
ここに残っているという予感がしていた。
その予感は、僕にどこを掘ればいいのかまで指示していた。
こんなにも朧げで、確証のない予知しかできないのか。
それでも、参考くらいにはなる。
掘り進むうちに、どこまで掘れば良いのかという不安がなくなった。
あと七十二回、土砂を書き上げれば、生きているフロアの天井に当たるはずだから。
気付かないものだ。
これは確かに予知能力だ。
昨日まで良く判らなかった使い方さえ、判ってしまえば単純なものだ。
勘がよくなるだけの事だ。
何も意識せず、ただなんとなく気付く。それだけの能力だ。
具体的に考え過ぎれば、言語に支配されて予知は認識できなくなる。
それだけの事だった。
「才能なんて、大衆の言い訳に過ぎないんだね」
マリーは応えない。
もっと早く気付いていたら、何か変わっただろうか。
僕も、時代の分岐点に立っていたのだろうか。
無駄な紛争や茶番劇を、もう少し減らせたんだろうか――
「大衆は、どんなに努力しても大衆なんだ」
やっとで、天井の板に突き当たる。
「大衆にできる仕事をしよう」
僕は、超能力研究室だった場所の天井を、スコップの先で思い切り貫いた。
ドクは両足を失っていた。――しかし、神経信号を補う義足が正常に機能していた。
ドクター・クロムという闇サイバネスティック医師の技量を物語っている。
「僕を覚えてますか?」
「ああ……レマが連れ込んだ男のうちの一人だろ。確か、南部のコールドスリープ難民だったか」
「ロスの施設でした」
「そうか。悪いな、実はよく覚えていない。まあ見覚えはあるぜ。独裁政党が反逆者の負け犬になんの用だい?」
「この紛争を起こした人間を特定しました」
ドクター・クロムの表情は動かない。
「その人物を、殺そうと思います」
ドクター・クロムの表情は動かない。
彼は無感動に――何も聞こえていないかのような表情のまま、口を開いた。
「なんで儂に、そんな話をする?」
「興味ありませんか」
「興味はあるよ」
興味があるような表情はまったく示していなかった。
いま僕が喋った事を、絵物語でも評価しているかのようだ。
「だが……なんで儂みたいな、老いた場末のサイバネスティック医師に、そんな話をする?」
「あなたは僕と始めて会った日に、臓器を売れと言いました。差額で機械の体を得ても尚、金になる、と」
「誰にでも言うとるよ。それで?」
「機材があれば、ここでも作業できますか」
ドクター・クロムの目が、急に開かれた。
老いた老人の目が、再び社会に焦点を合わせて輝き始めていた。
「可能だよ」
「電磁フィールドに守られている人間に一瞬で近づける脚力、そして手づかみで殺せる握力。その二つを僕に仕込んでください」
「……まずは、詳しく話を聞かせて貰おうか」
彼はついに表情を取り戻し、口元をにやりと釣り上げた。
――柊は約束を守ってくれた。
僕を、日本に連れてきてくれたのだ。
「案内人に美人でも用意した方が良かったかね」
「いえ。むしろ博士自らH.I.C本社を案内してくれるなんて光栄ですよ」
「だろう」
「これが、今の日本、ですか」
日本という土地は、水没していた。
変わりに、海面に浮上する形の人工島が無数に浮いている。
「君が故郷と呼ぶ土地自体は沈んでしまったことになるが、どうだい。悪くないだろう」
H.I.C本社ビルの屋上からの長めは雄大で、水平線の際までビルの生えた巨大な船が点在していた。
その合間合間に、海面に反射した夕日が輝いている。
「これから社会が変わる。紛争も形骸化するだろうし、エネルギー問題も解決し、食料問題も中期的解決になる。資源戦争以降増えなかった人口は、瞬く間に回復するだろう」
僕は頷いた。
「あとは、あの得体の知れない『世界政府』を、世界が一丸となって殲滅すれば――新時代が訪れる」
「素晴らしい事です」
僕は柊に笑いかけて、
――そのまま殴りつけた。
柊は顔を腕で庇ったが、僕は構わず殴り倒すつもりで腕を振り切った。
柊は尻餅をつき、腕の合間から僕を睨みつけていた。
彼の右腕は肘の先で間違った方向に曲がっていた。
「電磁フィールドの効力が出ない、ファイバ製の人工筋です。金属フリーのため一時期流行りましたが、摩耗が早いため、前世代の技術だそうです」
「いつ気付いたのか、聞かせて貰って良いかな」
「あなたは、あの超能力研究所の残党ですね?」
彼は立ち上がる。どうやら、左腕も十分おかしくしたらしい。
彼は両腕をだらりとさげたまま、笑みを浮かべて頷いた。
「僕が殺さずとも、あなたの寿命は残りわずかでしょう」
彼は頷き続ける。
「あなたは自ら、知能を加速させる実験の被験者となりましたね」
「そうとも」
彼は僕に歩み寄ってきた。
「……そうか。合点が言ったよ君も被験者か?」
「被験者番号は、B七十二番でした」
「『予知能力』のカテゴリか。しかし二桁とは、ずいぶん古いな……私の記憶にないようだ」
僕は、超能力研究所で拾った文書を示しながら、肩を竦めた。
どうやら僕は、色んな人の記憶からすっぽぬける存在らしい。
むしろ嘆く事ではない。かくあるべきだ。
僕はこの次代の闖入者なのだから。
闖入者は闖入者らしく、こそこそと嗅ぎ回るのが相応しい。
僕は柊に一歩歩み寄って、言った。
「『世界政府』のスポンサーは、あなたですね?」
「その表現は、正確ではないな」
彼は立ち止まり、笑う。
それは、狂人の笑い方としか形容しようがない物だ。
「H.I.Cの全力を挙げて、本当の意味での『世界政府』の地盤になろうとしたのだよ」
柊の口調は、いつにもまして演説調になっていく。
「人工穀物と事実上のフリーエネルギー、そして銃弾の無力化。私が着想できた事、そしてその成果物、次代への大きな足掛かりになるだろう」
彼はそこまで言うと横を向き、夕日に向かって両腕をひろげようとした。
折れた右腕が、彼をカリカチュアライズしていた。
「凡人には理解できない点があります」
「なんだい」
「『世界政府』が各地で紛争を誘導し続けなければ、それらの技術は普及しなかったとでも?」
「人工穀物発表時に、資源戦争が起こったのだよ」
狂った科学者のエゴで、今も沢山の人が死んでいる。
「あの戦争で、当時勤めていた会社が襲われ、妻が殺された。子供は探しても見つからなかった」
無意味な死なら、止める価値はあるだろう。
「私は助かったが、生き延びたことそれ自体を呪った。自棄になった私は酒に溺れた。そんな折、左遷の形であの研究所に転属した」
この科学者がなんと言おうと、僕は。
「そこで脊椎と脳への改造技術が俎上に上っていた。
知能の劇的な向上が確実で、かつ、『アルジャーノンに花束を』になる事が判り切っていた」
「なんですか、それは」
「知能の劇的な向上と、その後の末路を語ったお伽噺だよ。
人体実験をやりたがっていた研究所に対して、私はその被験者になることを申し出たんだ」
天才が歴史を動かすのもまた一興かもしれないが、僕は別に作られた天才の愚行には興味はない。
「すぐに私はH.I.Cを設立、核融合系の技術パテントを買い漁って、実用性を跳ね上げる研究に没頭した」
世界中で紛争をけしかけている『世界政府』の存在理由が判らないのだ。
「――『世界政府』を、撤収してください」
柊は、僕に向き直った。
夕日を浴びながら、彼は常人の笑顔に戻る。
「幕引きが必要だな。君、僕を殺してくれ」
ああ。
つまり彼は、
「指令がなければ三日で止まるようになっている」
もう、彼の全ての目的を、敢行してしまったんだな――
支援
支援
支援
支援
支援
支援
支援
他人のレールで全てが終わり、世の中は平和になるのか。
先の戦争の悲劇の上で、柊はつまらない茶番を始めてしまった訳だ。
彼の作った技術は確かに素晴らしく、今後の復興のために無くてはならないものだろう。
――僕の意味はなんだろう。
僕はなぜ、ここにいる?
考えれば考えるほど、
何もかもが空しくなる。
考えれば考えるほど、
今、自分が何故ここに立っているのか判らなくなる。
僕が存在する必要は、なにも、なかったのかもしれないな――
「博士」
僕は涙と鳴き声を隠さずに、柊の両目を覗き込んだ。
「なんだ」
「あなたを殺す前に、伺いたい事があります。――僕の寿命は、あとどれくらいですか?」
「『予知能力』、使ったんだろう?」
僕は、頷いた。
「『予知能力』と意識できるレベルで覚醒したかい?」
「はい。この資料を探す際に、確かに」
彼は頭を振った。
「それじゃ無理だ。半年持つまい――君もあの『ハリー・ヤコブマン症』の患者として死ぬだけさ」
目眩が、僕を襲う。
あの目眩だ。
「超能力の時代は人類には早過ぎる。あと百年は後回しにすべきかもな」
コールド・スリープ前に陥った、あの不快な――人事不省に陥るほどの目眩――
僕は堪えた。
「共にあの忌まわしい研究成果を墓場に持ち込んで、超能力の歴史を消そうじゃないか。
人類はまず、立ち直らないといけない」
仕事を――終えなくては。
僕は、人工筋が千切れる限界まで力を込めて、柊の頭蓋を殴りつけた。
「おう。ごうふ」
柊は転がって血を吐いた。
まだ死んでいない。
彼は僕に顔を向けた。
僕は、傍らに転がっていた木材の切れ端を掴み、槍の要領で柊の頭蓋の上に構えた。
「それでいい。きっと、これで新時代が訪れる」
僕の視界は、すでに何も映ってはいない。
「『世界政府』なんてものが不要だという事に、きっと人は気付けるだろう」
微かに聴力が残っている。
「『世界政府』こそが、私が次代に送る、最大限の皮肉さ――」
頭蓋が潰れる音と共に、柊の声は聞こえなくなった。
目眩が去り、四肢から力が抜ける。
- - -
寒い。
寒い。
寒過ぎる。
――誰か――
暖房を、つけてくれ――
支援
いまさら生死の意味を訊ねられても、困るというのが正直な感想だ。
もともと、意味を背負って生まれてくる訳じゃない。
僕らはなんらかの歯車でも、何かを示す記号でもない。
そう考えると、すこしだけ気分がラクになる――
傍らで、レマが泣いてくれている。
僕のために。
信じられない事だ。
なぜ彼女が今、僕を理由に据えて涙を流しているのか、僕は知らない。
このカビ臭い一室のベッドに括りつけられてから、何ヶ月が経っただろう。
三日も経っていないのかもしれない。
僕の意識は、ろくに戻らない。
僕の一生に、価値があっただろうか。
隣で泣かれると、まるで、僕の一生に意味があるかのように感じる。
――意味か。
集団幻想。
僕には、英雄という記号が背負わされたのか。それとも、偉大なる科学者を暗殺した戦犯として独房に入れられているのか。
「レマ。君は、なんで泣いているんだい」
僕はそう呟いたつもりだ。
彼女はただ、喋らないで、と言った。
改めて眺めると、レマはやはり美人……だと……思……
血が……
目眩が
視界はまだ明瞭だ
あれは医師か
ドクター・クロムかな
誰かが レマに
なにかを告げている
あれは、医師か
医師
白衣
あれ
どうして
みんな
真っ白だ
- - -
支援
「アメリカが、新らしい政府体制を打ち立てました」
「非常に良く出来ています。他の大国もまた、我々を支持してくれています」
「世界はまた、整うでしょう」
「私もまた、アメリカを建て直す事だけを目標に、働き尽くしたと思います」
「あとはもう全て、次代に託せることでしょう」
老いた女性が、墓前に花束を添えた。
「あなたは、売国奴として裁かれました」
「あなたの事も、柊博士の事も、私と今は亡き育て親クロムしか知りません」
「クロムに全てを聞いてからしばらくの間、私は正気を失っていました。でも――」
「あなたが歴史に事実が刻まれる事を避けたのであれば、私はその遺志を尊重したいと思います」
「きっとあなたは、一生を賭して、ただ、正直に生きたのだと思います」
錆びた空に、小鳥の歌声が響く。
彼女は、空を見上げた。
「その結果、罪を負った」
花束が、風にそよぐ。
――せめて、小鳥の歌声が鎮魂歌とならん事を。
「生前に受け入れられなかった事をお詫びします」
拳銃の戟鉄が、ゆっくりと引き上げられる。
「――今、改めて、あなたに尊敬の意を表明させて頂きます」
花束が、硝煙の香りに揺れた。
[end]
最後までの流れがちょっと唐突だったかな?
でも世界観はいい感じでした
乙!
支援感謝ー
無事、完結しました。見切り発車でしたがなんとかまとまった……かな……。まとまってるといいな……。
至らないところも多々あると思いますが、お楽しみ頂けたら光栄です。
また後日、テキスト推敲し直してコソーリ.txtでうpりに来るかもです。
ご拝読どうもありがとうございました。
乙!
おもしろかったよー、txtも楽しみにしてる
重ねてご拝読どもですー。楽しんでいただけて幸いです。
オチがメタルギア3と4の混合パクリ過ぎで噴いたw
見覚えあるIDだと思ったらGで支援乞食してやがる
Gでやれ
>>333氏の投稿も完結したところで、おまいらの望むサイバーパンクを教えてほしい。
俺はパワードスーツとかがメインの話を希望。
サイボーグははずせないと思う
340 :
創る名無しに見る名無し:2009/05/06(水) 12:05:29 ID:XEbNEAT0
サイバー戦国時代パンクを・・・
サイボーグ武将同士の一騎討ちとか。
銃夢LOのノリで舞台がスペースオペラ戦争ものとかかな
342 :
創る名無しに見る名無し:2009/05/06(水) 22:37:02 ID:XEbNEAT0
『キャプテン・ムバティ』
○ 主人公はいわずと知れたキャプテン・ムバティ
○ ヒロインは、金髪でムチムチプリンのたまご攻め
○ パイロットは金星出身の四頭身
○ メカニックは木星出身のサイボーグ
○ その他、地球出身とかアステロイド・ベルト出身とか。
ニューロマンサーちっくなものにすると攻殻臭がするから不思議だねっ!
『ナノテク幼女 ミームさん』
サイボーグA「おらおら、俺達は凄いメタリックな世紀末サイボーグだぜェ!」
ミーム「おたすけー」
サイボーグB「ヒャッハー! ガキは撃ち殺せーッ!」
ダダダダダッ!
ミーム「アイタタタタ」
サイボーグC「ウヒョーッ! 全弾命中だァ! ……あ?」
サイボーグA「気のせいか、幼女がデカクなったように見えるぜ!?」
ミーム「きのせいでう」
サイボーグC「なぁんだ気のせいか……おんみょうだんをくらえェーッ!」
ドカーン!
ミーム「げーッぷ」
サイボーグB「……ひょっとしてコイツ、質量攻撃を吸収してるんじゃねぇか?」
サイボーグA「なんかさっきよりサイズが大きくなったような……」
サイボーグB「うぉぉぉッ!? いつの間にかビルよりデカイ幼女にッ!」
ミーム「きのせいでう」
サイボーグC「なぁんだ、気のせいかぁ……」
ミームさんは周囲の物質を分解し、体内に取り込むことで
見る見る内に地球サイズを越え、宇宙を飲み込み、銀河系より巨大化。
ブラックホールを飲み込まれるギリギリまで、質量を増大させることが可能なのだ!
サイボーグA「うべらばッ! デケーッ!!」
ミーム「みーむデコピン!」
ズゴゴゴゴゴッ!! カッ!!
こうして、宇宙よりデカイミームさんのデコピンによる
超巨大質量攻撃により、地球は崩壊したのであった。
完
サイバーパンクは奥が深い…w
346 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/16(木) 10:40:52 ID:Kb8Zjcf0
349 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/21(火) 11:54:38 ID:QBZ0+XOe
メタルヘッドとかでみんな遊んだ?
ルールブック買っただけ止まりでした
351 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/26(日) 13:52:54 ID:b0kW/DIM
>>333 亀レスだけど、導入部は良かった
それ以降は微塵もサイバーパンクじゃないね
屁理屈で武装したラノベって感じ
あら、感想thxです。投下から随分経っとるのにw
序盤の空気だけで書いてたらSFになっちゃったですわ
また機会があれば、今度はもっとマッドな科学者や嘘科学塗れな世界を検討してみたいでうす
>>344 俺のサイバーパンク観がいかに矮小だったか思い知らされた気がしたが、やっぱりきのせいでう
――黒野、今何をしている?
「超野か。今はウパ太郎の世話をしているところだ」
――そうか。
「で、何の用だ」
――仲間を増やすことにした。ターゲットは09-28A35DF1号、名前は只野だ。
「分かった。“向こう”で落ち合おう」
通信を終えた俺は、ウーパールーパーのウパ太郎のエサを水槽に放り込んでから、ジャケットを着た。
別にこれから行く“場所”にジャケットなど必要無いのだがな。気分の問題だ。
机の引き出しから携帯端末を取り出す。
ふと、ガラスの無い窓の外を覗く。人っ子一人いない世界。クソ食らえだ。
それにしても、ずいぶん長く拠点にしたこの廃墟だが、もうそろそろ政府に感づかれるだろう。
今日の……只野? だっけ? ……の救出を最後に、ここは去るとするか。
思考を一段落させた俺は、外から見えない部屋に移動した。
椅子に腰掛け、携帯端末を頭に接続。意識が“中”に吸い込まれていく……。
「よう、黒野。久しぶりだな」
「ふっ、お前こそ、よく生きてたな」
挨拶はそこそこに、だ。無駄口を叩いてる暇は無い。
「只野はどこにいる?」
「K-48地区のマンション『グレートサラマンダー』だ。政府の追っ手が来る前にさっさと片付けないとな」
侵入者はすぐにバレる。早く只野にたどり着かないと。
「二手に分かれるぞ」
ああ、頼りにしてるぜ、相棒。
355 :
創る名無しに見る名無し:2010/01/28(木) 23:46:23 ID:hIcy5bJB
俺たちは同時に例のマンションに到着した。
超野があらかじめハッキングして特定した只野の部屋に入る。
「邪魔するぞ」
「な、な、なんだ、お前たちは!」
驚くのも無理はない。俺たちは鍵の掛かった扉をすり抜けてきたのだから。
だが俺たちは冷静に奴を諭す。
「ここは現実世界じゃない。こういうことも可能だ」
「今や、一般市民は電脳世界に閉じ込められ、すべて政府の監視下にあるんだ」
「な……」
「気づいてるんだろう? 理屈じゃなく、感性では」
「そんな話! 信じるわけが!」
「大丈夫、俺たちは君を助けるために来たんだよ」
「そうだ。お前がこの窮屈な世界を脱出する力を貸そう」
「やめろ! やめてくれ!」
「心は知っている。お前が完全に“理解”したときがお前の解放されるときだ」
俺の声に呼応して、奴の体が反応を示した。
「なんだこれは! 体が……透けていく!」
「おめでとう、お前は間もなく解放される」
「冗談じゃない! 俺は……俺は……」
そこで奴の姿はこの電脳世界から消え去った。
「さて、俺たちも戻るか。さっさと奴を見つけないとな」
「黒野、君の話し方は恐怖を与えすぎだ」
何を言い出すかと思えば。小言は帰ってから現実世界で聞いてやる。
「それより、お前、只野を仲間にするとか言ってたな」
「ああ、彼には適正がある」
「じゃあこれからは3人組ってこったな。どうだ、これを機にチーム名でもつけてみるか」
俺のくだらない冗談に、超野はやけに乗り気で答えた。
「そうだな……携帯端末を持つ者、モバイラーズというのはどうだ」
「なんだそりゃ」
ま、悪くはないかな。
おわり
ウパかwウパなのかww
5人揃えば超無敵
でも4人しかいないので比較的普通です
そのフレーズ懐かしいw
只野さんがこれからどうなるのか気になっちゃうぞw