医龍・コード・救命etc inパラレルワールド

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1名無しさん@お腹いっぱい。
救命病棟24時
白い巨塔
ER緊急救命室
医龍-Team Medical Dragon-
コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-
ハンドク!!!
ナースマン
サイコドクターetc

数ある医療ドラマが一つの病院に集まったとして、パラレルワールドを創作するスレです。
後日談、過去話、共演話、長編、短編などを考えてみよう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 14:45:12 ID:S6andypr
2ゲト
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 14:46:56 ID:S6andypr
財前死後の浪速大学病院さんに朝田がやってくるとか
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 15:44:44 ID:2w+kgwym
振り返れば奴がいるって医療ドラマだったっけ
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 16:02:49 ID:S6andypr
振り返れば奴がいるも医療ドラマ
織田裕二と石黒賢二人の外科医の対立を軸に話を展開最終回で二人とも死亡
6名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 16:08:02 ID:S6andypr
ちなみに外科部長役の鹿賀丈史は同じ役で古畑任三郎に出演(脚本がどちらも三谷)当然殺人犯として逮捕された
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 18:56:24 ID:EzLrZ8WX
白い巨塔のがんセンターと医龍の明真の建物って一緒だったらしいw
今日はじめて知ったw
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 20:26:42 ID:CHOs65vR
一番は朝田率いるチーム・ドラゴンの手術を受け、今もどこかで医者をしている
9名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 21:40:42 ID:a0ZCEvQW
ブラック・ジャックも実写ドラマ化されてたよな
入れるのか?
10名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 23:48:49 ID:kI6lJ/V+
病院名は明真メディカルシティーって名前にしましょか
割と最近だし世界最先端医療らしいから。

以下 追加とかお願いします。
濃いメンツですね。
オーナー
片岡一美
院長    副院長
鬼頭笙子  善田秀樹

外科
霧島軍司 司馬江太郎 石川玄 財前五郎 進藤一生

心臓外科 朝田龍太郎 加藤晶 野口賢雄 外山誠二

消化器外科 松平幸太郎

整形外科 森本忠士

産婦人科 三井環奈

脳外科 西条章

内科 藤吉圭介 里見脩二

循環器内科 高樹源太

麻酔科 荒瀬門次 小高七海 大槻沢子

救命救急 鬼頭笙子(院長と兼務?) 進藤一生 小島楓 黒木春正

ドクターヘリ科 藍沢耕作 白石恵 緋山美帆子 藤川 一男

臨床工学技師 野村博人

看護師 里原ミキ 冴島はるか 村田香織 美空あおい 小峰響子 桜井ゆき

研修医 伊集院登 江藤誠 峰春美

所属無し
ブラックジャック?
11名無しさん@お腹いっぱい:2008/09/25(木) 14:05:45 ID:ub4gOSaA
裁判で証人となったため浪速大学病院を辞めることになり、千成病院
にいた里見脩二。その研究成果に目をつけた明真メディカルシティー
のオーナー片岡一美がスカウトする。
最初は断った里見だが片岡の理想の医療への熱意にうたれて了承する。
明真メディカルシティーの内科で同僚となった藤吉圭介が浪速大学第
一内科医局員だった竹内雄太にそっくりで驚く里見。

肺癌、胸膜播種、脳転移で生命の危機にさらされていた財前五郎は、
明真メディカルシティーに転院し、朝田龍太郎率いるチームドラゴ
ンと脳外科医西条章の手術のおかげで奇跡的に命を救われる。(こ
こに無理あるのは許して。)しかし最高裁でも裁判に負けた財前は
教授から失脚する。やはり片岡がめをつけて明真メディカルシティ
ーにスカウトする。思う存分腕を振るえる環境に承諾する財前。

一方翔陽大学附属北部病院救命救急センターは翔陽大学の経営改善
の一環として廃止が決定する。明真メディカルシティーが後を引き
継ぐこととなり、移籍してくる藍沢耕作らフェロー達。黒田脩二の
腕切断により弱体化していたセンターをてこ入れするために、救急
救命医の進藤一生、小島楓を片岡はスカウトした。

なんて設定でどう?
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 14:09:02 ID:xua/DnK7
>>10
医龍2の伊集院登は研修医じゃないよ
13名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 16:14:20 ID:ks8saR3b
ブラック・ジャックは無免許医だから正式なスタッフにはなれないよな
これだけのメンバーがいると出番ないかも
14 [―{}@{}@{}-] 名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 18:20:00 ID:JFCnsW6O
でも実際これでSSかけって言われても困るスレだな
15名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 18:20:43 ID:BJcRebre
>>10
外山は血管外科医です
16名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 22:51:32 ID:E/n/t5Ry
試しに私が
コードブルーの人物の立場から、この病院の視点を書いてみようと思います。
かなり長くなるかもですが良いですかね?
まずは序章

「理想の医療を実現する!!」
鬼頭笙子が目を付けたのは、救急救急部門の強化である。
さらに言えばこれからの時代、救急車で患者をただ待っているだけでは駄目だ。
こちらから患者を迎えに行くくらいの気で居なければ成らない。
それが結果的には明日の100人を救うことに繋がる。
笙子はそこでドクターヘリに目を付け、シニアドクターの三井環奈と森本忠士…
さらには藍沢耕作らフェロー達とフライトナースの冴島はるかをヘッドハンティングした。
「貴方達も今日からチーム鬼頭の一員よ。」
途惑う6人を病院の入り口で迎える鬼頭はそう宣言した。
攻めるだけでなく守りも徹底しなければ…。
さらに、オーナーと朝田龍太郎のアメリカ時代のコネクションを頼りに
既に救急救命医として実績を評価されている進藤一生と小島楓をも手に入れたのである。
最強の矛と盾を手に入れた明真メディカルシティー
この物語はそんな世界最高の医療を目指すフライトドクターの物語である。

人物が多いので共演話と長編になるかも?
不評でなければ明日から書き始めます。
17名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 22:57:13 ID:v79Yng1J
>>16
がんがれ!
18名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 01:50:41 ID:/trMaQwd
>>16
ぜひ続きが読みたい!
待ってます
19名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 09:20:43 ID:tOp1EImZ
期待してるよ
20名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 14:38:50 ID:wcKZWNCM
ブラックジャックは、ジョ−カー的ポジションでいいんじゃね?
病院に縛られずに独自行動できるって点は動かしやすいと思う
21名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 19:55:12 ID:Ixz/Uw0L
伊集院もどっかに入れてあげてください。
2216:2008/09/26(金) 22:06:14 ID:JiV+R+cZ
「ここが今日から私達の職場なのね。それにしても大きな更衣室ね。」
フライトドクター見習い(フェロー)の緋山美帆子は、自分のロッカーを探しがてら更衣室を見学している。
シャワールームだけではなく、大浴場・サウナ・マッサージチェア・果ては授乳室までありここが病院であるということを忘れてしまいそうである。
院長が目指す世界最高の医療というのは、医療者の環境も最高という意味なのだろうか?
さ迷う事5分…自分のロッカーを探し当てた美帆子は仕事支度を始める。

「おはよう。あれ?貴方見慣れない顔ね?青い服着てるってことは救命の人?」
隣のロッカーの所有者の姿はドアに隠れて見えないが、声は落ち着いた雰囲気を感じさせる。
「きょ・今日からドクターヘリ科で働く緋山美帆子です。」
一瞬驚きながらも慌てて自己紹介する。
「緋山先生かぁ、いくつ?」
「27ですけど・・・。」
「27?若っいなぁ」
「あの…」
「ああ私?麻酔科の小高七海…よろしくね。」
七海は白衣のポケットからチョコレートを取り出し口に投げ込んだ。
「よろしくお願いします。」
差し出されるチョコを遠慮がちに断りながら、美帆子はもう一度丁寧に挨拶をした。

「ふ〜ん、じゃぁヘリが飛ばないときは救急を手伝うんだ。」
「はい。この病院の救急ってどんな先生が居るんですか?」
「院長の鬼頭先生は知ってるわよね。あとの三人は詳しくは知らないなぁ。」
「そうですか…。ちょっと緊張してるんです。」
「あ・救急じゃないんだけど、よく救急に顔を出す麻酔医には気をつけたほうがいいわよ。危険だから」
「え?危険って?」
「古い知り合いなんだけどね、体重を一目で見抜くから…。男性は基本体重で呼ばれるわ。」
「ど・どんな人なんですか?」
美帆子は首を傾げながら尋ねる。
「金髪ですぐお立ちだ〜いって言うから分かると思うわ。」
七海はクスクス笑いながら答えた。
お立ち台?金髪?体重で呼ばれる?不慣れな言葉が美帆子の頭の中で動き回る。
2316:2008/09/26(金) 22:10:17 ID:JiV+R+cZ
「あとそうだなぁ。血管外科医の外山先生もよく救急に居るみたいねぇ。」
「その方はどんな先生なんですか?」
「うう〜ん、腕と顔は良いから看護師から人気みたいよ。ちなみに独身…。後は本人に聞いたら?」
「そ・そうですね。」
七海と別れた美帆子は医局へと向かいながら期待と不安で足が重くなった。

「おはよう。」
医局の前で同じくフェローの白石恵が合流した。
「私は早く来たから見学してたんだけど、患者さんの遺族に土下座してる先生見かけたよ。」
「土下座?変わった先生の多い病院なのね。」
そこへ同期の藤川一男も混ざってきた。
「土下座ってマジかよ。」
どうやらこの病院には一癖も二癖もあるドクターが集まっているようである。
一男は土下座という言葉にまだ反応しているようである。
まさか患者が死ぬたびに土下座する病院などあるはずないのだが…。

医局にはまばらながら医師が談笑している。
三人の緊張がにわかに高まる。
「そこの頬の丸い女と、のっぽの女と眼鏡。見かけない顔だが医者か?」
頬の丸い女??美帆子の顔が凍りつく。
恵と二人が並んでいて美帆子をのっぽというはずが無い…。
「意地悪しちゃ駄目ですよ。怖がってますよ。進藤先生っ!」
「はじめまして、救急救命医の小島楓です。今日からくるフライトドクターの方よね?
 こっちは救急救命医の進藤一生先生。仲良くやりましょうね。」
三人は自己紹介すると、それぞれと握手を交わした。
2416:2008/09/26(金) 22:12:16 ID:JiV+R+cZ
やっぱり長編になりそうだなぁ。
あと出る人物偏りそうです。
他の作者さんも出てくると良いなぁ
25名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 07:10:29 ID:rE1QfbyF
乙です
続きも楽しみです
26名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 09:15:15 ID:mCX7del9
>>11
里見と遠藤も似てるよ?w
27名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 09:16:26 ID:mCX7del9
>>26
ゴメン
進藤の間違いw
28名無しさん@お腹いっぱい:2008/09/27(土) 09:42:39 ID:QqedGCg2
>>27 
忘れてた

柳葉敏郎はNs'あおいとコードにでてるし
伊藤英明は救命病棟24時と白い巨塔にでてたな

他にもいろいろあるんだろうな
29名無しさん@お腹いっぱい:2008/09/27(土) 09:47:36 ID:QqedGCg2
>>24

乙です

違うドラマの人物がからむのは呼んでて新鮮で楽しいです
キャストは無理にたくさん出すことはないと思うので話の流れで
必要なメンバーでいいと思いますよ。

里原ミキと冴島はるかが看護学校で知り合いだったという設定で
何か書こうと考えてますが、こういう創作はじめてなので時間が
かかりそうです


 
3016:2008/09/27(土) 23:01:31 ID:dDnG299P
「もうこの病院には慣れた?」
ある日医局で一人サプリメントを見つめていると、肩越しに七海の声がした。
「小高先生……それに三井先生!」
美帆子が慌てて立ち上がって挨拶をする。
三井環奈とは前の病院でも指導医として面倒を見てもらった関係である。
「あら、二人知り合い?バツイチ男の子持ち同士気が合うのよ。」
「貴方も結婚したら仲間に入れてあげるわ。」
二人の仲間になりたいような……なりたくないような複雑な感情がわいてくる。
「しばらくは遠慮しておきます。」
「いつでも相談に乗るわ。」
「まぁそんな相手がいればの話だけど。」
嵐のような二人が医局から出て行く
そろそろ結婚の年頃だということは重々承知している。
実家に帰ったときの両親の目(特に母親)もだんだん真剣になっていた。
この病院に来て早3ヶ月だいたいの仕事のペースもつかんでいたが、
合コンだとかそういう美帆子にとって出会いが期待できそうなときに限って、急患が運び込まれるのである、
この際贅沢を言わず院内でも良いので結婚まではいかないまでも、少し深い人間関係の一つも欲しいものであった。

「よぉドクターピアス。そんな怖い顔で腕組みしてるから男運がなくなるんだぜ。」
いつの間にか医局にはもう一人医師が存在していた。
「今は男なんてどうでも良いんですよ!」
「よく言うぜ。結婚とかブツブツ言ってたくせに」
しまった思わず独り言で喋ってしまっていたようである。
美帆子をからかったこの男、名を外山誠二といい
態度はふざけているが東都大学医学部教授の父親、兄姉と共に自身も東都大学医学部を卒業しているエリートで
頭脳だけでなく手技の方も心臓外科医の登竜門フレッシュマンズライブで優勝する程の天才である。
先日の七海から聞いたとおり看護師からは将来性抜群の玉の輿として人気の的である。

「医師家系の末っ子ってのは、どうしてみんなああなのかしらね。」
美帆子達移籍組が久しぶりに集まった飲み会での評価は一致していたが、
ただ一人看護師の冴島はるかだけはウンウンと共感しているようであった。
3116:2008/09/27(土) 23:02:03 ID:dDnG299P
そんなこともあり美帆子は誠二がどうも苦手である。
もっとも一男に言わせると、美帆子と意気投合できる男性医師などいないのではないかとの話である。
その一男本人はと言えば誰とでも仲良くやっているらしく
特に楓とは指導医に救命に向いていないと言われた経験を共有できるとかで、色々面倒をみて貰っているようである。
楓の研修医時代の指導医で、現在救急のエースである一生はその光景を見て
「俺が見た中で最悪な医者を何年かぶりに更新することになるかもしれん」
と言ったとか言わなかったとか……。

「ドクターのび太は一緒じゃないのか?」
一男が除細動に通電したという失敗談をどこからか聞きつけ命名したようである。
「私達だっていつも一緒のシフトなわけじゃないんですよ。」
「そりゃそうだ。さっきの話だがお前どんなのがタイプなんだ?」
「なんでそんな話外山先生としないといけないんですか?」
「お前あんまり聞かれたこと無さそうだから聞いてやろうと思って」
「どういう意味ですか?」
「そんなにツンツンしてるとモテねぇぞ。」

腕の良い医者ってみんな口が悪いのだろうか?
自分は絶対そうはならないでいようと固く誓う美帆子であった。

「何を話してるの?今日はこの3人で当直かぁ。」
そこへ救急の良心と一部からは評判の楓がやってきた。
「いえねぇ、緋山先生の将来への展望について聞いてたんです。」
誠二が両手をあげて楓の方を見る。
「将来への展望?ようやく外山先生も指導医らしくなってきたじゃない。で?で?」
楓が一男の新しい指導医になったように、実はこの誠二こそが美帆子の新しい指導医なのである。
女医には女医を付けるのがセオリーだが、タイプが違う医者同士のチームの方が良いだろうという一生の提案だ。
「どうなんだよ?」
二人の視線が美帆子の顔に向けられた。
3216:2008/09/27(土) 23:09:27 ID:dDnG299P
>>29
お互い頑張りましょう。
こっちもスローペースですが頑張ります。
33名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/28(日) 00:04:25 ID:gN8jdy2l
乙です
佐々木蔵之介も医龍と白い巨塔(伊藤英明の友達?)
で出てた
34名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/28(日) 10:09:04 ID:fsZhxtGl
最初にこのスレ見たときこのシチュエーションで書くとか無理だろって思ったけど
ちゃんとSS買いて投下してる人がいるんだ
考えが甘かったな
3516:2008/09/28(日) 20:52:21 ID:p3XGBIn9
美帆子が将来の希望等を楓に語るのを聞きながら、誠二は3ヶ月前のことを思い出していた。
それは3ヶ月前、笙子からの「11:00に院長室に来るように」とのメールから始まった。
幸い今日はオペの予定等は入っていない。もちろん笙子のことだからそれを見越してのことだろう。
院長室に呼び出されるような事をしでかしたのだろうか?
最近の誠二の記憶では特にトラブルを起こした記憶はない。
5分前に院長室の前に到着すると、白衣をパンパン叩き念入りに身支度を調える。
良し!と覚悟を決めドアをノックし入室する。
院長室には顔なじみで心臓外科の朝田龍太郎、
第一外科で食道外科の若き権威者と呼ばれる財前五郎、それに救命の一生が打ち合わせをしている。
「失礼しました。」
時間も少し早かったため、慌ててドアを閉める。
「ちょうどいい所に来たわ。外山先生座って。」
「え?」
笙子は誠二に椅子に座るように指示した。
外科の三大巨頭が揃った場に何故自分が呼ばれたのか?
急に胸騒ぎがした。
もしかして、またどこかの系列病院に飛ばされるのだろうか?
それならこんな回りくどいやり方などせずとも、辞令一つ流してくれれば良いものを……
椅子に座った誠二は笙子の顔を見ることはせず俯いていた。
「顔色が悪いな。体には気をつけなさい。私のときもそうだったが癌は……」
五郎は完治不能な癌と診断され大学病院を追われたところ、
笙子が周囲の反対を押し切り明真メディカルシティーでのオペを決行し奇跡の回復をした過去がある。
「健康診断は問題ありませんでした。」
何でもかんでも癌に結び付けられてはたまらない。昨日も当直で寝不足なだけである。
「それを聞いて安心したわ。貴方には将来この病院を引っ張って行って貰いたいと思っているのだから」
そういう告げ方できたか。
誠二の緊張が一気に高まる。
3616:2008/09/28(日) 20:52:59 ID:p3XGBIn9
だから一度外で見聞を広めて欲しいとか、若い頃は冒険が必要とか、もっともらしいことを言って飛ばすのだろう。
「そこで貴方にやって貰いたいことがあるのよ。」
ん?やって貰いたい?言葉違わないか?
誠二が顔をあげる。
「まずはこれを見てくれ。」
一生は机の上のファイルを誠二に手渡す。
ファイルには恵と美帆子と藍沢耕作の写真が貼られている。
「彼等が今度ウチに来る。フライトドクターの卵よ。」
誠二も噂では聞いたことがある。
救急車では間に合わない患者をヘリで搬送するそれがドクターヘリである。
まさか自分にヘリに乗れというのか?たしかに救命は好きだが、自分はあくまで血管外科医である。
「この病院では誰でも救命に入ることが出来る。逆に言うと救命以外にも何か専門性があるのが好ましい。」
「そこで貴方に指導医になってもらいたいの。問題ないわね?」
「……」
唐突なことに誠二がとまどった。
心臓外科の伊集院登に手技を教えたことはあったが、それはあくまで龍太郎の代わりである。
もともと自分はあまり社交的ではない。指導医など出来るのだろうか?
「何も4人全員とは言わないわ。全員バラバラのことを教えて層を厚くしたいのよ。」
「小島先生が藤川。香坂先生が白石。松平先生が藍沢の指導医になる。」
こういう場合、年長者から見所のありそうな医師を取っていくのが通常である。
「よりにもよって残りは女医かよ……。しかも気が強そうな顔してるぜ」
腕組をした美帆子の写真を見ながら誠二は頭を抱えた。
「今の失言は聞かなかったことにしておいてあげるわ。」
笙子はジロリと誠二をにらむ。
明真メディカルシティーは院長が女医の笙子ということも関係あるのか
気の強い女医の比率がかなり高い。
うっかり外で今のような発言をしようものなら、あっという間に干されてしまう。
そんなわけで男性医師は女医の扱いに細心の注意を必要とするのである。
「一人で出来ることは限りがある。医者は人を育てて初めて一人前だ。」
今までずっと黙っていた龍太郎の鋭い眼光が誠二をとらえる。
「手取り足取り教えろとは言わないわ。貴方のやり方で教えれば良いのよ。」
拒否できる状況ではない。既に外堀は埋められている。
「やれば良いんだろ!やれば。」
「期待してるわよ。」
3716:2008/09/28(日) 20:53:35 ID:p3XGBIn9
誠二は院長室を後にすると、ブラブラと廊下を歩いていた。
「外山先生、院長室に呼び出しですって?送別会が必要かしら?」
耳の早い七海が寄ってくる。
「たく誰に聞いたんだよ。呼び出しは朝だぞ。」
「野村君と伊集院先生が嬉しそうにしてたわよ。」
野村というのは臨床工学技師のことである。
「でどこに飛ばされるの?国内?海外?確か最高記録はサウジアラビアだけど更新できそう?」
「そんなんじゃね〜よ。今度来る医者の指導医やれってさ。」
「なんだ、つまらないの。でその人いつから来るの?」
七海はチョコレートを白衣から取り出す。
「今日!それもこれから!院長が学会で忘れてたらしい。」
「ふぅーん。どんな子なの?」
「さぁ?女医だよ。」
「案外これが運命の出会いになったりして〜」

これだから女医は苦手なんだ。
誠二の周りには笙子といい、七海といい変わった女医しかいない。

「んなことねぇよ。写真見たが全然興味なしだ。」
「写真あるの?見せて見せて?あれこの先生……」
「知り合いか?」
耳が早いのは知っていたが、まさかもうチェック済みとは思わなかった。
「さっき更衣室で会ったわよ。医局に行くって言ってたけど?」
「そうか。サンキュー」
「素直そうな子だったわよ。写真写りは悪いけど、実物は可愛かったわよ。ちなみに独身だって!じゃ頑張ってね。」
興味ないと言おうとしたが、エレベータのドアが閉まったのでやめた。

「ちょっとちゃんと聞いてますか?」
思い出に浸っている誠二を美帆子の甲高い声が現実に引き戻す。
「そうよ、外山先生ちゃんと聞いてあげないと」
こんなに自己主張が強いと知っていたら、どんな事をしてでも断っていたのに。
もっとよく前の病院での評価シートなどを見ておけば良かったと今更ながら誠二は後悔していた。
3816:2008/09/28(日) 21:07:50 ID:p3XGBIn9
「緋山先生はずっと救命やっていくの?」
美帆子がフライトドクターになるという夢を語り終えると楓が質問する。
「まだ決めてません。小島先生はどうなんですか?」
「私は続けれる限り救命にいるわ。」
「ちなみにそれっていつ頃決めました?」
「アナタくらいのときかなぁ。当時は研修医で指導医は進藤先生だったわ。」
「指導医ですかぁ。」とため息を吐きながら横目でソファーで眠ってしまった外山を見る。
「あんまり上手くいってないみたいね。」
前の病院では環奈に面倒を見てもらったがその頃が懐かしい。
最終日に記念に撮影したヘリの前での集合写真にスクリーンセイバーが流れ始める。
先日相談事をしようと産婦人科を訪れたのだが、忙しそうに働く環奈の姿を見て諦めた。
恵も指導医のたまきと何やら難しい論文をまとめているし、
はるかでさえも救急認定を得るために日夜頑張っているようである。
同性ということもあり、二人には負けたくないのだが…。
「そ…そんなことないですよ…」
「藤川先生も心配してたわよ。」
お菓子の手がピタっと止まる。
前の病院では同期4人の中で一番出遅れていたのに、今や美帆子との立場は逆転しようとしていた。
3916:2008/09/28(日) 21:24:06 ID:p3XGBIn9
物語の都合上
小島ー藤川。最初は全然駄目でした臨床ペア
香坂ー白石。論文が大好きなのに何故か救急にいますペア
松平ー藍沢。名医ってなんですか哲学ペア

としました。
多分出番が0の人もいますが、気にしないで下さい。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 00:10:11 ID:7Aen5YJn
>>16さん
これ最高ですね!ある程度まとまったら原作をテレビ局とかに出してドラマ化してほしい〜。
医療ドラマオタクの人はたいてい、色んな種類の医療ドラマチェックしてるだろうから、
こういう統合続編ドラマやったら絶対ウケると思う。
ちなみに私は荒瀬ファンです。
4116:2008/09/29(月) 22:48:41 ID:njxO+pxv
ずっと救命でやっていくのかという
楓の言葉がずっと美帆子の頭に重く残っていた。
「どうしたの?考え事?」
食堂で昼食をとっていると恵が正面の席に腰を下ろす。
「これで48時間連続勤務、しかもずっと外山先生とね。さらに言うと今日は朝田先生とヘリ当番」
不機嫌そうに美帆子は答えた。
あんなに乗りたかったヘリも(誠二はあまりヘリが好きでないため離れられる)今日は少し気が重い。
龍太郎が誠二の指導医(とは言っても指導したのはわずからしい)ということもあり、
毎回迷惑を掛けるなと必要以上に言われるからである。
「ヘリ当番良いなぁ。でも私はこれから財前先生のオペの第一助手〜」
「アンタ最近オペ多くない?」
「香坂先生が出来るだけオペに入って勉強しなさいって♪」
外科の主任ナース尾崎翔子にたまたま通勤の際に聞いた話では、
プライドの高いたまきが「気軽に使ってやってください。」と頭を下げ、ちょっとした事件だったようである。
「それでご機嫌なわけね、アンタはどうなのよ」
遅れてきた一男にも一応尋ねておく。
「俺は今日は救急外来。患者の搬送お待ちしてま〜す。」
一男の一言に恵は眉をしかめている。
相変わらず考え方が固い。
「何が不満よ?患者が来なきゃ病院潰れちゃうじゃない。」
2人が楽しそうに働いてるのを聞くと思わずイライラしてしまう。
以前は自分も同じようにイキイキとしていたはずである。
「ところでそっちはどうなんだよ?」
「別に何も変化無しよ。相変わらず何も教えてくれないわ。横で治療してても見てるだけ。」
「緋山先生何かしたんじゃないの?」
「心当たりないわね。どうせならもっと経験豊富な先生に指導医して欲しかったわよ。」
「いっそ聞いてみたらどうだ?」
「進藤先生に。」
「なんて?」
「どうやって指導医決めたのかって。」

望みどおりの設備の良い充実した病院で、どうしてこうも変わってしまったのだろうか?
本当にこのままこの病院に居て良いのだろうか?
美帆子は一人取り残されていくことが不安だった。
4216:2008/09/29(月) 22:49:05 ID:njxO+pxv
「眠そうねぇ」
医局で誠二がソファーに転がっていると、ぬっと楓の顔が現れる。
「お疲れ様です。最近なんだか疲れやすいんですよ。気が休まる暇がないっていうか」
「少し気負いすぎじゃない?あれだけピリピリ神経尖らせてたら疲れるわよ。
 アナタの目にはどう映ってるか知らないけど、緋山先生の腕は悪くないと思うわよ。」
そんなこと今更言われなくてもわかっていた。
ドクターヘリや災害場所へのドクター派遣での処置を見ている。
誠二の悩みの種は腕の問題ではない。
「それより小島先生のとこの、のび……いや、藤川はどうなんですか?」
思わずいつもの呼び名を口にしかける。
「あの子に関しては長い目で見るよう言われてるから」
「今の方が計算違いってとこですか。たいした指導力ですね。」
「朝田先生は知らないけど、進藤先生は無理なことをやらせようとはしない人よ。
 初めての指導医で途惑うのもわかるけど少し心にゆとりを持ったら?」
龍太郎と一生は二人とも達観したところがあり、誠二が尊敬する数少ない医者である。
「患者と喧嘩するわ、レスキューの制止は無視するわ…現場ではどうしようもない患者のことを諦めないわ。」
思い出したらキリがない。
そのたびに笙子・一生・龍太郎に救命とは〜というお小言を頂戴しているのである。
尻拭いするのも指導医の仕事の一つらしい。
治療に行って患者を増やしたら本末転倒だと何度か言ったが改まる気配がない。
あの三人にお小言を貰う自分の身にもなって欲しい。
「感情の変化に正直なのよ。そっかぁ、それで心配だからずっと見てるわけか。」
楓はクスリと笑うと誠二の横に腰掛ける。
誠二が美帆子のシフトに合わせていることに楓は気がついていた。
「お姉さんがアドバイスしてあげようか?」
甘い匂いが漂ってくる。
「教えるときは妹に教えるようなつもりで教えてあげると良いわよ。」
「あの俺末っ子なんですけど」
申し訳無さそうに楓を見る。
「じゃぁ、ヒントだけあげる。外山先生は朝田先生のように。私は進藤先生のようになりたい。
 さて緋山先生の憧れの先生は誰でしょう?」
「誰なんですか?」
「ん〜ん、大事なところはそこじゃないんだけどなぁ……。まぁ考えてみてよ。」
妹?憧れ?楓の言葉の意味はまだよくわからない。
わかっているのは、誠二の頭痛の種はもう少し解消しそうにないということだけであった。
4316:2008/09/29(月) 22:53:31 ID:njxO+pxv
>>40
脇役だけ集めても一個ドラマできそうですよね。
他の作者さんの作品も読みたいなぁ
44名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 14:53:17 ID:y/uAGbpP
意外と盛り上がってて驚いた
45名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 17:58:04 ID:tovScqTT
俺もびっくりした
最初スレたって1見たとき絶対こりゃ無理だと思ったのに
なにがいけるかとかわからんもんだね
46名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 12:29:54 ID:OLQMtjzw
白い巨塔みたいに婦人会あるんだろうか
47名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/02(木) 06:51:02 ID:Xgkqk/+8
追加
何気に男女の人数が同じくらいの人数になってて
恋愛要素とか話膨らませやすそうだな。
俺は地味に外科の権力争い話でも書いてみるかな
48名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/02(木) 12:45:57 ID:hgAFtRBJ
楽しみにしてるぞー
49名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/03(金) 11:30:29 ID:F9yKeyhM
いいれす
5016:2008/10/03(金) 23:39:04 ID:Y6zDMjVC
「アメリカと日本の救急はそんなに違うんですか…」
今日のヘリ当番の美帆子と龍太郎は患者を近場の病院に搬送し、
緊張が解けホッとしたのか珍しく帰路で談笑を始めた。

「……ところで外山先生のことなんですけど…」
「どうかしたか?」
「先生のことを尊敬してるんですね。」
「ああ」
理想的な上司と部下の関係である。
その後も当たり障りない会話を繰り返していると、ヘリポートへと到着した。
美帆子は今日こそ環奈に相談するべく、急いで産婦人科の医局へと向かう。
医局ではちょうど環奈がサマリーを記入していた。
「三井先生!」
「あら、珍しい。どうしたの?妊娠の相談かしら?」
「はい?」
「やっぱり相手は救命救急?それとも全然違う課?」
「そんなんじゃないです。」
「大丈夫よ。守秘義務あるから。」
冷静沈着な環奈が言うだけにここは笑うところなのか迷ってしまう。
「そんなんじゃないです。相談に乗って欲しくて……」
「相談?どんな?」
「今から産婦人科に移ることって可能なんでしょうか?」
美帆子の突然の提案に環奈の手が止まる。
「冗談でもそういうことは言わないものよ。」
「これは冗談じゃないです。私は三井先生にもう一度教えて欲しいです。」
「帰りなさい。ここはアナタの居場所じゃないわ。」
環奈は美帆子の背中をグイグイ押し医局から追い出しドアに鍵をかける。
「三井先生?どうしてですか?」
「過去は誰だってすがりたいものよ。でもアナタは今を生きている。」
新しい指導医の誠二と美帆子があまりうまくいっていないことも
美帆子がそのことで悩んでいることも七海から聞いて知っていた。
本当は抱きしめて泣き言を聞いてやりたかった。
でもそれは本当に美帆子にとって良いことなのだろうか?
七海は医局を訪れた美帆子の顔を見たときから悩んでいた。
「産婦人科は救急で駄目だったから行きますってところじゃないのよ。」
話を聞いて欲しいだけというのは痛い程わかっている。
だが美帆子の相談に今自分が乗ってしまうと、楽しかった過去にいつまでもすがってしまう。

美帆子が誠二と向き合わない限り、いつまでもこの状態が続くのである。
環奈は自分を尊敬してやまない美帆子に前を向いて欲しかった。
その尊敬が強すぎるため自分以外からの指導を受けなくなっていることは前の病院にときから心配だった。
誠二と触れ合うことでもっと広い世界があることをしり、一回り大きな存在になって欲しいのである。

「確かに指導医はしていた……しかしそれは以前の話よ。いつまでもアナタの指導医じゃないの」
あまりに冷たい言葉に美帆子は言葉を失う。
「わかりました……」
美帆子はトボトボと廊下を歩き始めた。
5116:2008/10/03(金) 23:40:45 ID:Y6zDMjVC
更新遅くてすみません。
改めてパラレルの難しさを実感。
>>47
お互い頑張りましょう
5216:2008/10/05(日) 00:24:55 ID:xMHg99dj
(尊敬する人って言われてもねぇ。)
医局のソファーで雑誌をめくるフリをしながら、楓と一男の様子にチラリと目をやる。
二人はいつものようにオペのDVDを見ているようである。
「出血箇所はどこでしょう?」
たまに患部がアップになる部分で一時停止される。
「え〜と……」
一男の指すポインターが自信無さそうに震えている。
「遅い!藤川先生が迷っている間に患者は死ぬわよ。」

最初にこの光景を見たとき、
「映像を見ることに何か意味があるのか?」と楓に尋ねたら、「反復練習で私は救命医になったから」との事であった。
楓曰く医者には2種類のタイプがあるんだとか、
一つは現場で積極的に治療することで同時に成長するタイプ、
二つ目は現場では治療の引き出しを捜すだけで、その後引き出しを増やすことで成長するタイプだそうだ。
結果的には成長するのだから同じように見えるのだが、長い目で見ると成長の仕方が大きく違ってくるらしい。
身近な救命で言うと、前者が笙子と誠二で、後者が一生と楓なんだとか。
一生は一見前者に見えるが、実は引き出しを捜すのが異常に早いだけで治療中は成長はしていないらしい。
ちなみに龍太郎はNGOという特殊な環境で、本来は後者だったのだが前者の傾向が強くなったのだという。
オペ前の入念な準備とイメトレがその証拠だという。
そんな楓の持論から昔の自分とどこか似た雰囲気のある一男には、
今は一見遠回りに見えるかもしれないが、自分も実践してきたこの方法が向いているのだという。
「ビデオ見てて腕がよくなりゃ、俺はとっくに朝田を超えてるよ。」
誠二が小声で茶化すと楓は一男に見えないようにジロリと睨みつけた。
「外は寒いなぁ。やっぱり喫煙室欲しいよ。」
一生がタバコを胸ポケットにしまいながら医局へ入ってくる。
「アンタも飴にしたらどうだ?これならどこでも怒られないぜ。」
「医局に司馬先生と大槻先生以外にもう少しスモーカーがいればな。
 そうだ。藤川タバコ吸えば名医になれるぞ。」
医局から珍しく笑い声が漏れたそのとき…
トゥルルルー♪
医局の外線電話がなる。
「明真救命救急センター。」
一生がすばやく電話を取った。
「救急患者の受け入れをお願いします。」
「どんな患者さんですか?」
「三次の患者2名です。」
「良いですよ。搬送お願いします。」
一生が電話を切ると、三人も続いて走り出す。
「症状は?」
「カーブで減速しようとして、アクセルとブレーキを間違えて歩道に突っ込んだらしい。」
「輸血あるだけ用意しといてくれ!」
誠二がテキパキと看護師の美空と冴島に指示を出す。
救急隊員はストレッチャーを押しながら答える。
「移すぞ〜」
「3…2…1」
「小島と藤川は向こうの治療。外山はこっちを手伝ってくれ。」
「わかった。」
それぞれが治療を始める。
5316:2008/10/05(日) 00:26:50 ID:xMHg99dj
10分後
「3次の患者一人があと5分で到着するそうです。。」
「こっちは俺だけで大丈夫だ。外山行け」
「藤川先生アナタも行きなさい。」
二人の治療は8割方完了しており、もう峠は越していた。
「佐藤さん聞こえますか?病院ですよ。」
「血ガス、血算・生化モニター!オペ室と麻酔科に連絡しろ。緊急オペだ。」
「外山先生手伝います。」
白衣を着た登が駆けつけてきた。
「伊集院助手を頼む。藤川は第二助手だ。気抜くなよ。」
「はい。」
「1つ……2つ…3つ………7つ。はい落ちた。」
洗浄を終えた三人がオペ室に入ると
麻酔科医の荒瀬門次が患者に麻酔をかけていた。
「いつでも大丈夫だぞ。61kg 59kg 58kg」
「これより大動脈弁狭窄症による大動脈弁置換術を行う。メス。」
誠二は素早く石灰化した箇所を剥離していく。
「早えぇ。もう剥離に入った」
一男があまりの速さに驚く。
そういえば、以前「この病院で一番腕の良い医者は誰か?」と楓に尋ねたことがあった。
楓の答えは「一番・二番・三番は殆ど差がなくて朝田先生と進藤先生と財前先生。
      だけど今その三人を猛追してるのが外山先生。その下に私と院長かな」
控えめな楓の謙遜だろうとそのときは思っていた。
「藤川先生落ち着いて。」
「電メス。ん?」
順調に剥離を続けていた誠二の顔が強張る。
「どうしました?」
「右冠動脈もおかしい。伊集院心臓の右側おかしくないか?」
「え?」
登は首をかしげながら心臓に手を当てる。
「これは……」
「伊集院。大動脈弁置換術を引き継げできるか?」
登は力強く頷く。
「これより右冠動脈バイパス手術を行う。」
一男が美帆子から聞いていたのとは全く違う様子。
登にだけではなく、一男にも的確に声をかける。
楓のように丁寧ではない、乱暴な言葉遣いだがこれはこれでアリだと思った。
パチンという縫合の糸を切る音がオペ室に響く。
「オペ終了……」
看護師の拍手に照れくさそうに誠二が頭をクイっと下げた。
5416:2008/10/05(日) 00:38:32 ID:xMHg99dj
「伊集院、久しぶりにオペ一緒になったが腕あがったなぁ。」
「ありがとうございます。外山先生の助手なんで緊張しました。
 そういえば、朝田先生も心配してましたよ。
 指導医やってるんですよね?僕は外山先生に手技を習えて感謝してます。今度も上手くやってください。」
登はそういうと心臓外科病棟の方へ歩いていった。

「お前も悪くなかったぞ。ウチのもお前くらい素直ならなぁ。」
一男の頭の中に美帆子の顔が浮かぶ。
「緋山のことそんなに気に入らないんですか?」
「向こうが嫌ってるんだよ。そんなに前の病院が良かったのか?」
「前の病院というか、指導医の三井先生がアイツと馬合ってたんですよ。」
「それで?」
一男は美帆子の前の病院でのことを話すことにした。
嘘をついてヘリに乗ったこと。医者であることから逃げないと涙を流したこと。など全てを……。
「ふ〜ん、そんなもんかねぇ。まぁありがとな。」
誠二は一男と別れ医局へと向かおうとした。
「外山!」
一生の声がする。
「そっちもうまくいったみたいだな。」
「ちょうど良かった。アンタに聞きたいことがある。」
「どうかしたのか?怖い顔して」
「何で俺を緋山の指導医にしたんだ?もっと適任者は居たはずだろ?」
「まだわからないのか。お前は確かに優秀な外科医で救命医だ。だがお前は一人だ。」
「どういう意味だ?」
「救命はチームワークだ。救命だけじゃないオペだってそうだ。
 お前の力を120%発揮するためにもチームが必要だ。お前はまだ若い。人ともっと向き合え。」
一生が誠二の肩を叩く。
「人を育てるという事は、育てる側も一回り成長するチャンスだ。
 お前なら出来ると思ったから俺達はお前を指導医にした。
 それだけは一応知っておいてくれ。」
今度少し緋山と腹を割って話してみるか……。
窓から漏れる朝日が歩き出した誠二の背中を照らした。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/05(日) 12:33:58 ID:ESKWNA54
小児救急とかはないの?
今話題だよね
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/05(日) 17:48:14 ID:pawKUiYe
ナースのお仕事も医療ドラマかな
57名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/05(日) 21:10:49 ID:qHcycmGb
29です

今看護師とは別の話を考えてますが、10/19にケアマネの国家試験があり、まとめるのはその後になりそうです

勉強しなきゃいけない時ほどこういうほかごとを考えちゃうんですよね
名医達は勉強の集中力もすごいんでしょうね
5816:2008/10/05(日) 21:24:53 ID:xMHg99dj
「ああ…しんどい。二日酔いだわ。」
美帆子はおでこを押さえながら医局へ急いだ。
昨日は久しぶりに早く帰れたこともあり、恵と食事に行って飲みすぎてしまったのである。
出勤時間ギリギリに医局へと駆け込む。
「おはようございま〜す。」
楓と誠二が何やら紙を見ながら談笑している横をすり抜け自分の席へと向かった。
PCを立ち上げている間に、回覧資料をチェックする。
「懇親会のお知らせ?しかも来週?」
救命救急で懇親会があるとの知らせが目に入る。
「よぉドクターピアス。そういえば、お前とのび太の歓迎会まだやってなかったよな?」
誠二が美帆子の椅子の背中に肘を乗せる。
「ええ、歓迎されていないのかと心配してましたよ。」
耕作と恵は配属になってすぐ、外科全体で歓迎会をやってもらったと聞いている。
ちなみにたまきの顔が利く屋形船であったらしい。
「ウチに来て3ヶ月もったわけだし、歓迎会も兼ねてやるよ。リクエストを聞いてやろうか?」
とって付けたように美帆子と一男の歓迎会もしてくれるというのである。
「外山先生のセンスにお任せします。」
「お前何気にプレッシャーかけてるよな?」
考えてみると美帆子は外山が普段どんな食事をしているのか知らない。
ちょっと怖いような、でも楽しみでもある。
楓は「素直じゃないんだから」と言いながらクスクスと笑っている。
どういう意味だろうか?と美帆子が首を傾げる。
「本当は歓迎会をやりたかったんだけど、時期がずれてたから懇親会することにしたのよ。」
「外山先生が言い出したんですか?」
「そうよ。驚いたでしょ。」
誠二が歓迎会とはどういう風の吹き回しだろうか。
「熱でもあるんじゃないですかね。」
手帳に日程を記入しながら美帆子は悪態をつく。
「冴島さん今度の金曜日の夜空いてますか?」
「特に当直等は入っておりません。」
「今度救命で懇親会と歓迎会をやるんだけど良かったら来ない?」
「歓迎会って???誰のですか?」
「緋山と藤川だよ。」
「まだやってなかったんですか?」
はるかが呆れたように尋ねた。
「伊集院の奴がねぇ。全く困ったもんだよ。看護師さんの歓迎会はいつ頃あったの?」
「初日にありましたよ。皆さん歓迎していただきました。」
「手早いねぇ。まぁそういうわけだから冴島さんも参加ね。」
「わかりました。」
はるかはとても嬉しそうである。
「冴島……お前もか。」
普段の誠二を知る美帆子にしてみれば、どこが良いのか理解できない。
そして一週間後
5916:2008/10/05(日) 21:25:50 ID:xMHg99dj
「先に行ってるからね。」
一人また一人と医局を後にしていく。
「私このカルテ書いてから行くから先に行っていいわよ。」
美帆子が一男に促す。
「じゃぁ俺はお先に失礼するよ。」
「お疲れ〜」
入れ違いに七海が医局へやってきた。
「お疲れ様です。」
「あら緋山先生、主賓がまだ行かなくて大丈夫なの?」
「ええ…」
「どうかしたの?」
「このままこの病院に居て良いのかなって。」
あれから環奈とも会えていない。
誠二との関係も現状維持のままである。
「初めての部下ってことで結構向こうもあれで気を使ってるみたいよ。」
「それは分かってるんですけど……。」
「そろそろ行きなさい。残りは明日で良いから」
七海に急かされ医局を後にした。
しかし更衣室に向かう足取りは重い。
「誰か来て!」
美帆子の足が止まる。
「誰かドクターを!」
気のせいではない。あおいが叫んでいる。

急いで声のする方へ向かう。
「どうしたの?」
「緋山先生、患者さんが急に苦しみだして」
「どうした?」
たまたま通りがかったのか誠二も現れる。
「処置室は?」
「それがさっき近所で事故があったとかで一杯です。」
「呼吸止まりました。」
「緋山心臓マッサージしろ!誰かAED持って来い」
美帆子は心臓マッサージを開始する。
「下がって。」
バンという音ともに患者の体が浮き上がる。
「脈拍戻りません。」
「300でチャージ。」
再びバンという音と共に患者の体が浮き上がる。
「ピッピピ」
「脈拍戻りました。」
「よしこのままオペ室に搬送して緊急オペだ。」
患者はストレッチャーに乗せられオペ室へと運ばれていった。
6016:2008/10/05(日) 21:26:26 ID:xMHg99dj
「外山先生、私にやらせてもらえませんか?」
手を洗浄しながら美帆子が尋ねた。
誠二は手袋をしながら美帆子の方を見る。
「緊急オペだ。そんなゆとりは無い。」
「患者さんが実験台じゃないというのは分かってます。でもいつになったら私は認めてもらえるんですか?」
美帆子は誠二を睨みつけながら尋ねる。
「切れるだけの腕になれば必然的にだな。」
「みんなドンドン成長していく。私だけが何も進歩していない。」
「だからなんだ?」
「私だって成長したいです。」
「何が言いたい?」
「今までの先生はちゃんと教えてくれました。指導医ならちゃんと指導してください。」
「手取り足取り教えて欲しいなら指導医を変えてもらえ、俺から進藤と院長には言っておく。」
「外科医は切らないと成長しないでしょ。何事も経験のはずです。」
珍しく食い下がる美帆子に根負けした誠二は呆れたように答える。
「そんなに執刀したいか?好きにしろ。その代わりにここまで言ったんだ。
 万が一のときは責任取れよ。」
「わかりました。」
6116:2008/10/05(日) 21:28:23 ID:xMHg99dj
「遅かったわね。準備は出来てるわよ。あら珍しい緋山先生が執刀なの?」
オペ室では七海が患者に麻酔をかけている。
「はい。レントゲン見せて貰えますか?」
あおいはすぐに手元にレントゲンを差し出す。
「マルファン症候群?それも胸腹部大動脈瘤と大動脈弁閉鎖不全症を併発してる?」
「早くしないと患者死ぬぞ。」
「わ……わかってます。」
こんな複雑な症例を美帆子はまだ経験したことがない。
助手はおろか執刀医の経験もない。
本当に出来るのだろうか?
「緋山先生。大丈夫アナタは一人じゃない。」
二人の雰囲気がいつもと何か違うことを敏感に察知する。
「これより人工弁と人工血管置換術を行う。よろしくお願いします。メス。」
美帆子が開胸すると切り口から血がドクドクと噴き出す。
誠二が黙って吸引をしながら状況を確認する。
「ME 人工心肺の準備は出来てるか?」
「大丈夫です。」
美帆子は順調に拡大した解離部分を切除している。
思ったより簡単だ。と一瞬油断したその瞬間
グラっと手元が揺れる?
「え?」
揺れはそんなに激しくないが美帆子の手元を狂わせるには充分だったようである。
メスが正常な血管に傷を付けてしまったのである。
ゴーグルが赤く染まり、手元が見えなくなる。
「え?え?」
美帆子の頭が一瞬パニック状態になった。
「ど・どうしよう……。わ…私のせいだ。」
「小高先生、バイタルは?」
「乱れてるわ。急いで血管を縫合しないと出血多量で死ぬわ。」
「ほ・縫合…吸引……」
ただでさぇ、経験のないオペであるこれからどうしたら良いのかも浮かばない。
6216:2008/10/05(日) 21:29:35 ID:xMHg99dj
「外山先生?」
「なんだ?」
「助けてください。私にはもう無理です。」
美帆子の目には涙がたまっている。
悔しくてたまらないといった顔をしている。
「お前がやらせろと言ったんだが?」
「外山先生今はそんなこと言ってる場合じゃないわ!」
「生意気な口を利いた上に出しゃばったことして、本当に申し訳ありませんでした。」
美帆子の目からはポタポタと涙がこぼれ始めた。
「泣いても何も解決しないだろ。これから俺に絶対服従な。」
「はい……」
「誰か汗を拭いてやってくれ。位置はこのままで執刀医を交代する。
 これより破れた縫合しそのまま置換術に入る。」
誠二はガーゼを大量に当て出血した箇所を見つけると、すばやく縫合した。
見事な手さばきである。
「バイタル戻ったわ。お見事。」
「どうする?またお前またやるか?」
「見てるだけで良いです。勉強させてもらいます。」
「ちなみにさっき地震が起きるまではちゃんと出来てたぞ。
 いつもそうなんだが何も言わないのは出来てるからだ。」
「私のこと嫌いだからじゃ???」
「嫌いだぜ。生意気だし気が強いし、性格悪いし言うこと聞かないし友達紹介しないし。」
「すみません。最後のは誰のことですか?」
「俺も似たようなもんだから、じゃじゃ馬の気持ちはわからんでもない。」
そういえば七海から昔、誠二が荒れていた頃の話を聞いたことがある。
「俺みたいにむかつく上司殴って干されたりすんじゃねぇぞ。」
「そんなことしたんですか?」
美帆子が驚いて聞き返す。
「理不尽なこというもんだからな。殴っちまったんだよ。」
「全然知りませんでした。」
「院長とか昔から明真に居る奴は知ってるはずだぜ。お前も背伸びは程々にしとけよ。」
「昔 干されるだけでは飽き足らず、朝田先生に張り合ってた医者居たわよね。」
七海が外山の顔を見る。
6316:2008/10/05(日) 21:30:11 ID:xMHg99dj
「外山先生を殴ろうと思ったことは3回くらいありますが、実行してないので大丈夫です。」
「コラコラ本人前にしてそういうこと言わないの。」
「なんにせよ。ココに来てお前が成長してないってのは事実だ。
 オペが終わったら指導医変えてもらえ、前の指導医と馬があってたんだろ?」
「三井先生ですか?凄く尊敬できる先生です。」
「オペ終了。だったらまた見てもらえ」
「バイタル・脈拍共に異常なし。お見事ね。」
三人がオペ室を出るとあたりは真っ暗である。
「そういえば今日懇親会じゃなかったの?」
「良いんだよ。どうせ年配に小間使いにされるだけなんだから」
誠二が企画者とは思えないような発言をする。
「あの〜指導医の件なんですけど、このまま外山先生にしてもらうことは無理なんでしょうか?」
「俺がこのまま?柄じゃない。お前も3ヶ月居て合わないと思ったろ?」
「私頑張ります。今日の話聞いて頑張れそうな気がするんです。後ろを勝手についてきますから。」
「また泣かすかもしれないぜ?」
「外山先生以外の人前で泣かないように涙枯れるまで泣くことにします。」
美帆子はハンカチで目を拭うフリをする。
「嘘とかハッタリを頼りにして、後から泣かなくて済む様にしてやるよ。ドクター泣き虫ピアス。」
「そのニックネーム二人のときだけにしてくださいよ?」
「ああ。二人一緒に名医の階段上るか。」
「よろしくお願いします。」
「名医になっても麻酔が必要なときは声掛けてね。」
誠二と美帆子が握手をしている上から手を重ねながら七海が笑いながらつぶやいた。
64明真メディカルシティー更新版:2008/10/05(日) 21:54:51 ID:xMHg99dj

以下 随時追加とかお願いします。

オーナー
片岡一美
院長    副院長
鬼頭笙子  善田秀樹

第一外科
霧島軍司 司馬江太郎 石川玄 財前五郎 神林千春

心臓外科 朝田龍太郎 香坂たまき 加藤晶 野口賢雄 外山誠二 伊集院登

消化器外科 松平幸太郎

整形外科 森本忠士 馬場武蔵

産婦人科 三井環奈

脳外科 西条章 堺慎一

内科 藤吉圭介 里見脩二 落合雅人

循環器内科 高樹源太 夏目彬

麻酔科 荒瀬門次 小高七海 大槻沢子

救命救急 鬼頭笙子(院長と兼務) 進藤一生 小島楓 黒木春正 日比谷学

ドクターヘリ科 藍沢耕作 白石恵 緋山美帆子 藤川一男

臨床工学技師 野村博人

精神科 楷恭介

看護師 冴島はるか(フライトナース) 山城紗江子(救急認定ナース)里原ミキ
    小峰響子 桜井ゆき
    大島冴子 朝倉いずみ 尾崎翔子 村田香織 美空あおい 根本雅子 佐倉亮太
研修医 江藤誠 峰春美

所属無し
ブラックジャック?
65名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/05(日) 22:09:36 ID:iRSYWfKw
>>16
すごくリアリティーのある話だね。
自分も放置プレイな人に仕事教えてもらう事があり、美帆子みたく思う事がよくあるよ。
でも、お互いに腹割って話せる状況にないから、
いまだにこの2人のように本心から打ち解けてはいないけどね。
66名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/06(月) 01:44:54 ID:PzSd3P7U
どの人が何のドラマに出演していたか分からないのがあります。
どなたか教えて下さい。
67名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/06(月) 01:48:17 ID:VNE6DC84
>>16
いつも楽しみにしてます
外山イイ!指導医としては未熟かもしれんけど丸くなったなぁ
友達紹介しないしワロスw
68名無しさん@お腹いっぱい:2008/10/06(月) 10:59:32 ID:wf1bDdlM
オーナー
片岡一美  (医龍2・内田有紀)
院長
鬼頭笙子  (医龍1、2・夏木マリ)
副院長
善田秀樹  (医龍2・志賀廣太郎)
第一外科
霧島軍司  (医龍1、2・北村一輝)
司馬江太郎 (振り返れば奴がいる・織田裕二)
石川玄   (振り返れば奴がいる・石黒賢)
財前五郎  (白い巨塔・唐沢寿明)
神林千春  (救命病棟24時2部・小日向文世)
心臓外科
朝田龍太郎 (医龍1、2・坂口憲二)
香坂たまき (救命病棟24時2部・松雪泰子)
加藤晶   (医龍1・稲森いずみ)
野口賢雄  (医龍1、2・岸部一徳)
外山誠二  (医龍2・高橋一生)
伊集院登  (医龍1、2・小池徹平)
消化器外科
松平幸太郎 (医龍2・佐藤二朗)  
整形外科
森本忠士  (コードブルー・勝村政信)
馬場武蔵  (救命病棟24時2部・宮迫博之)
産婦人科
三井環奈  (コードブルー・りょう)
脳外科
西条章   (コードブルー・杉本哲太)
堺慎一   (救命病棟24時1部・杉本哲太)
内科
藤吉圭介  (医龍1、2・佐々木蔵之介)
里見脩二  (白い巨塔・江口洋介)
落合雅人  (救命病棟24時1部・沢村一樹)
循環器内科
高樹源太  (Ns'あおい・柳葉敏郎)
夏目彬   (Ns'あおい・石田ゆり子)
麻酔科
荒瀬門次  (医龍1、2・阿部サダヲ)
小高七海  (医龍2・大塚寧々)
大槻沢子  (振り返れば奴がいる・千堂あきほ)
救命救急
鬼頭笙子  (医龍1、2・夏木マリ)
進藤一生  (救命病棟24時1、2、3部・江口洋介)
小島楓   (救命病棟24時1、3部・松嶋菜々子)
黒木春正  (救命病棟24時3部・香川照之)
日比谷学  (救命病棟24時3部・小市慢太郎)
ドクターヘリ科
藍沢耕作  (コードブルー・山下智久)
白石恵   (コードブルー・新垣結衣)
緋山美帆子 (コードブルー・戸田恵梨香)
藤川一男  (コードブルー・浅利陽介)
臨床工学技師
野村博人  (医龍2・中村靖日)
精神科
楷恭介   (サイコドクター・竹野内豊)
69名無しさん@お腹いっぱい:2008/10/06(月) 11:01:00 ID:wf1bDdlM
看護師
冴島はるか (コードブルー・比嘉愛未)
山城紗江子 (救命病棟24時2部・木村多江)
里原ミキ  (医龍1、2・水川あさみ)
小峰響子  (Ns'あおい・杉田かおる)
桜井ゆき  (救命病棟24時1、2部・須藤理彩)
大島冴子  (ナースのお仕事2、3、4・伊藤かずえ)
朝倉いずみ (ナースのお仕事1、2、3、4・観月ありさ)
尾崎翔子  (ナースのお仕事1、2、3、4・松下由紀)
村田香織  (コードブルー・金田美香)
美空あおい (Ns'あおい・石原さとみ)
根本雅子  (ナースのお仕事2、3、4・吉行和子)
佐倉亮太  (救命病棟24時3部・大泉洋)
研修医
江藤誠   (Ns'あおい・八嶋智人)
峰春美   (振り返れば奴がいる・松下由紀)


一応ドラマ名と俳優名をまとめてみました
間違いなどあればご指摘よろしくです

松下由紀さんがなにげに医師とナース両方やってるんですね
脳外科は杉本哲太さんのワンペアとなっております
7016:2008/10/06(月) 22:34:08 ID:Mvm0vD5r
「明真救命救急センター」
「道で倒れた男性受け入れをお願いします。」
「わかりました。運んでください。」
一生が丁寧に電話を切ると医局を見渡す。
「いいっすよ。俺行くんで。緋山行くぞ。」
「わかりました。」
誠二が美帆子を連れて医局を飛び出す。
珍しい光景に医局がざわめく。
「外山先生が率先していくなんて。」
「しかも緋山先生をまた呼んでたわよ。」
久しぶりにERの当番になった
たまきが高級サンドイッチをつまみながら、もう慣れたという顔をしている一生の方を見た。
「俺も最初は驚いてたよ。何かあったのか?」
たまきと楓は両手をあげそれに答える。
「香坂先生。小島先生お茶どうぞ。」
「白石先生気が利くわね。アナタ緋山先生とは同期でしょ?何か聞いてないの?」
たまきが恵に尋ねる。
「すみません。特には何も聞いてないんです。」
恵も驚いたように目を丸くしていた。
飲みに行くたびに聞かされていた誠二への不満が減っていること気はしていたが……。
「あの年頃ってすぐ気が変わるからねぇ。」
自分も30を過ぎると若い女医をそんな風に見てしまうのだろうかと恵は少し心配になった。
「白石先生どうかした?サンドイッチ食べたいの?」
たまきがサンドイッチを差し出す。
「そんなんじゃないです。ただ……」
「ただ?」
「緋山先生この病院に来てからあんまり元気なかったのに、最近前みたいに笑うようになったなって」
美帆子が医局から出るときの顔を見て、恵がちょっと安心したのは事実だ。
「私達あんまりERに来ないから知らないけど、どんな感じで指導しているのかしら?」
ERの面々も知らないのだが、たまきはそれすらも知らないようである。
「私ちょっと様子見てきますね。香坂先生は休んでてください。」
誠二には助言した縁もある楓は影から少し見てくることにした。
見つかって機嫌を損ねたら、先輩のたまきに逆らえなかったことにするつもりである。
「悪いわね、小島先生。白石先生も必要なら連れてって。」
「流石に治療中喧嘩はないと思うんで大丈夫です。白石先生お茶は後で頂くわね。」
楓が白衣を脱いで治療室へと向かっている頃オペ室では
7116:2008/10/06(月) 22:34:54 ID:Mvm0vD5r
「レントゲン届きました。」
認定看護師の資格を持つ山城紗江子が忙しく動き回っている。
「高橋さん服切りますよ〜。」
里原ミキが慣れた手つきで服を切った。
そこへ誠二と美帆子が現れる。
「出来るだけやってみます。」
「任せる!」
誠二はシャーカステンに貼り付けられたレントゲンを見に行く。
「挿管チューブください。」
ミキには美帆子がリラックスして治療に当たっているように感じられた。
「緋山先生何か良いことあったんですか?」
「ううん、別に何も無いですよ。」
言葉とは裏腹に美帆子は、自分がイキイキと治療できていることを実感していた。
誠二が口を出さないということは正しい処置であるということ。
万一手に負えなくなっても、誠二が後ろに控えていて助け舟を出してくれる。
誠二に助けを求めることは恥ずかしいことではない。
3ヶ月間一緒に仕事をしてそれは充分理解できた。
今出来る精一杯のことをしてそれで駄目だったら誠二に助けを求めよう。
それで笑う奴がいたら笑わせておけば良い。誠二程の腕を理解できない医者ということである。
自分なりに精一杯やることで彼の信頼に答えよう。
その結果がどうでても誠二は助けてくれるはずである。
それがわかっただけで、こんなにも安心できるものなのだろうか
今までよりもスムーズに手が動く。
考えてみると、恵や一男のように丁寧に教わって自分が素直に聞き入れただろうか?
むしろ窮屈に感じてしまったのではないだろうか?

「心拍弱くなっています。どうしましょう?」
焦ったように美帆子が誠二を見た。
「開胸セット用意だ。」
ゴム手袋をする誠二の顔が引きしまる。
自分と似てプライドの高いところがある美帆子は、頭から押さえつけるときっと反発するだろう。
だから困ったときに手を差し伸べてやればいい。
その発想自体は間違っていなかった。
ただそれはお互いが信頼しあって初めて成立する関係であった。
今までは無責任だったのかもしれない。しかしこれからは違う。
自分が信頼して欲しければ、美帆子を信頼しなければならない。
この3ヶ月あまり収穫は無かったが、ある程度の腕があることはわかった。
美帆子が出来る範囲の事は、彼女に任せてしまえば良いのである。
万が一、その範囲で失敗すれば怒ればいい。それは彼女の責任であるから。
そして美帆子から助けを求められたら失敗など許されないし、目を背けるなどもってのほかである。
信頼関係とは築くのは難しいが、失うときは一瞬で崩れ去ってしまうものだから。
「呼吸管理と麻酔はやってあげるわ。」
駆けつけた楓が呼吸管理を始める。
「メス。緋山よく見ておけ。」
このやり方なら自分にも指導医が可能かもしれない。
7216:2008/10/06(月) 22:49:19 ID:Mvm0vD5r
「お疲れ様でした。相変わらずなメス捌きでしたね。患者さんICUに運びますね。」
紗江子は簡単に感想を述べ、ミキに片付けを任せICUへと向かっていった。
「ああ疲れた。お先に。」
「お疲れ様でした。」
(上手に出来たら褒めてあげるといいわよ。)
何かを感じたのだろうか楓がすれ違いざまに誠二の耳元で囁いた。
美帆子は何かコメントが欲しそうに自分を見ているが、
親にも褒められた経験の少ないため正直どうやって褒めたら良いのかわからない。
「……。」
「……。」
二人が視線で会話を始め終わりそうがないので、仕方なくミキは助け舟を出すことにした。
「緋山先生今日は落ち着いてましたね。」
「わ…私はいつもそのつもりですよ!」
「それは良いとして朝田に伝言頼めるかな?」
誠二が真剣な眼差しでミキを見つめた。
「何をですか?」
「俺は朝田のチームを抜ける。」
「どうしたんですか?急に?」
「俺はこの病院でチームドラゴンを超えるチームを作る。」
チームドラゴンとはバチスタチームの通称で、
龍太郎、登、門次、ミキ、そして内科医の藤吉圭介、心臓外科医の加藤晶で構成されるチームである。
(ちなみに心臓外科には臨床の加藤、研究の香坂という言葉があるがそれはまた別のお話。)
「外……外山先生?どうしたんですか?」
「それじゃ、よろしく。行くぞ」
誠二は美帆子の首根っこを掴むと引きずるようにオペ室を後にする。
「朝田が伊集院を育てたように、俺もお前を育てることにしたんだよ。」
「チームって何のチームですか?」
「お前はとりあえず常に第一助手だ。ん?涙が出るほど嬉しいか。そうだろう。」
「ち…違います。首が絞まって。」
誠二が手を離すと、美帆子はゲホゲホと咳をする。
「だいたいチーム作るってなんですか?私聞いてませんよ?」
「さっき思いついた。朝田を超えるチームを作って
 この病院を東都大学病院もひれ伏すような世界最高の病院にする。」
「東都大?何かあるんですか?」
「先に医局に戻る。」
誠二は急に不機嫌になりエレベーターに乗ってしまった。
「チームか……」
期待には応えたいがもう少し詳細に教えて欲しいものである。
7316:2008/10/06(月) 23:00:26 ID:Mvm0vD5r
勝手に作った相関図(あくまで勝手に)
師弟コンビ
小島ー藤川。最初は全然駄目でした臨床ペア
香坂ー白石。論文が大好きなのに何故か救急にいますペア
松平ー藍沢。名医ってなんですか哲学ペア
山城ー冴島。救急認定目指してます
桜井−里原。救急認定目指してます

先輩ー後輩
香坂ー小島

同級生
小高ー三井
里見ー藤吉

ライバル
香坂ー加藤
財前ー霧島
山城ー桜井
元恋人
司馬ー大槻
7416:2008/10/06(月) 23:08:43 ID:Mvm0vD5r
救命救急は格好良くERに名称変更しました。(汗)
新聞にも出てたから日本でも呼ばれるんだね。
以後気をつけます。

>>68-69
丁寧な補完ありがとうございました。
外山が血管外科医に変更するの忘れてたから、次回は修正しましょう。
登場人物が増えてきたので、少し相関図作ってみた。
これ以外もあるけどぱっと考えてたのだけ。
どんだけ使うかは未定。他の方も短編とかで使いたかったらどうぞ。

>>65
ようやく打ち解け始めました。
これから2章といったところでしょうか。

>>67
本当丸くなりましたよね。
誰のことを言ってるかはそのうちわかります。
75名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/06(月) 23:57:08 ID:8PAOzOxF
チーム名はどうするんだろう
76名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/07(火) 00:31:51 ID:GbD0KX1p
人物表を見て、馬場先生と森本先生のキャラ設定が被ってることに気がついたw
チーム・ドラゴンVSチーム・バチスタとか読んでみたいなあ
77名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/07(火) 00:38:58 ID:ekGrXXqX
16番さんのお話は 緋山先生と外山先生 周辺に焦点当てているけど、16番さんと同じ舞台で、
他の人に焦点当てた物語作ってもおもしろそうだね。
ミックスさせると「渡る世間は鬼ばかり」みたく同時進行で何人もの登場人物の現在の状況がわかるみたいな。
話 思いついたら書きますね。
78名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/07(火) 12:07:21 ID:YLgTbRPN
ミックス俺も考えてみるわ。
女医の世界がおもしろそうだ。
7916:2008/10/07(火) 21:21:14 ID:5pi7q9In
ピ ピ ピ ピという一定のリズムで刻まれる音が静かなオペ室に響いている。
誠二は久しぶりに龍太郎のオペの第一助手に指名されたのである。
チームを抜けることが伝わって居なかったのとも思ったのだが
「患者がお前の腕を必要としている。」と言われると悪い気はせず助手をすることにしたのである。
いつも以上に冴えわたるメスを見ながら、誠二は自分の原点を感じるのであった。
最初にチームの事を聞いたときには、一人でオペ出来ない奴が群れているだけだから自分には関係ないと思っていた。
しかし気がつけば自分もその一員に加わっていた。
それも自分から志願して……。
チラッと横目で上を見ると、見学室では圭介が見ている。
口の動きから察するに横にいる美帆子に術式の説明でもしているのだろう。
あれほど予習してこいと言ったのに。思わず小さくチッと舌打ちしてしまう。
そんな解説癖のある彼はオペに入ることはないが、
術前・術後の検査・アフターケアを任されるチームの一員で縁の下の力持ちとはまさに彼のことである。
麻酔の門次、第二助手の登、機械出しのミキ。
患者の患部を通じて、執刀医の龍太郎と繋がっている。
登は助手を務めることに慣れてきたのか、以心伝心といった感じで吸引や術野を確保している。
初めてあったときの自信の無さそうな手つきは、相変わらずだが成長の度合いが伺える。
「縫合終了。心臓移植終了。」
龍太郎はハサミを静かに下ろしてから門次を見る。
「脈拍正常・呼吸数異常なし。」
そういうと門次は龍太郎とガッチリ握手を交わし労をねぎらう。
ミキは嬉しそうにそれを見つめている。
改めてこんなチームを自分も作ってみたいと誠二は改めて感じていた。

「朝田!」
誠二は屋上で体操?をしている龍太郎を見つける。
龍太郎も誠二に気がついたのか体操をやめこちらに近づいてきた。
「俺がアンタのチームでオペをするのもこれが最後だ。」
「ああ……」
「アンタには色々なことを教えてもらった。これでも感謝してるんだぜ。」
誠二が照れくさそうに喋るのを龍太郎は黙って話を聞いている。
「俺も自分のチームを作ってみようと思うんだ。」
「良いんじゃないか?」
「もしアンタと出会って居なかったら、全然違った人生になってたと思う。今までありがとな。
 俺もそんな出会いを緋山にさせてやりたい。」
「今日の前立ちは実に見事だった。元々お前は一流の外科医だ。自信を持て」
龍太郎には珍しく誠二を褒めた。
「未来の100人も今、目の前の患者も両方救えるようなそんな医者になれ!
 今日からはお前が中心になるんだ。」
明真メディカルシティーがまだ明真大学付属病院と北洋病院だった頃、笙子と龍太郎はそれで口論になったことがあった。
「アンタの聴診器貰えないか?今日の決意を忘れないでおきたいんだ。」
「ああ!」
龍太郎は聴診器を渡しながら誠二とガッチリ握手しながら低い声で呟いた。
「バトンタッチだ。」
「今まで世話になった。」
師から弟子へ思いは受け継がれ繋がっていく。
8016:2008/10/07(火) 21:22:22 ID:5pi7q9In
誠二と別れた龍太郎がストレッチの続きをしようとしていると、物陰から笙子が現れる。
「ようやく外山も独り立ちしてくれたようね。」
「ああ……」
「貴方が外山を指導医にしたいと言った時は驚いたわ、私だけじゃなく財前も進藤も驚いてたわね。」

3ヶ月前の院長室
「これが今度ウチに来るドクターよ。」
「若いですね。」
龍太郎は一生から写真を受け取った。
「彼等はフライトドクターとして、ドクターヘリに乗ることになるわ。」
「それで?」
「彼等はまだ若い。ヘリの飛ばない日にはERで働いて貰う。
 ついでだから何か専門を身につけさせたい。」
「それで我々に何をしろと?」
五郎が写真を受け取りながら尋ねた。
「それぞれの科から指導医を出しなさい。」
「俺は外山に指導医をやらせてみたい。」
「アナタでも冗談を言うのね。」
笙子が苦笑いを浮かべると、「外山ってあの血管外科のか?」と五郎が驚いたように尋ねる。
「たまにERにも顔を出してるが、とても教えるってタイプじゃないぞ。朝田先生正気か?」
一生も首をかしげて龍太郎を見た。
「ああ……。外山は明真大学付属時代からの生え抜きだ。近い将来病院を代表する存在になる。
 それまでに人の上に立つということを体験させたい。」
「腕が良いのは認める。俺がアイツくらいのときにあれだけの腕があったかどうか……」
一生は腕組みをしながら呟く。
笙子が優秀な医師を引き抜いたおかげで、確かに医療水準は高くなった。
しかしその一方で活躍の場を奪われた若い医師のモチベーションが下がっているのも事実である。
「外山がその器だというのかしら?」
「ああ、口は悪いが伊集院に手技を教えたりしているようだ。」
「しかし若いドクター同士うまく行くのだろうか?」
五郎はまだ賛成しかねているようである。
「俺達だって世間では名医だと言われているが、最初からそうではなかったはずだ。
 医師としてだけでなく、人としても色々なことを経験したからこそ今こうしている。」
「アナタは誰の指導医にしたいのかしら?」
「緋山美帆子…コイツしかいない。」
龍太郎は美帆子の写真を机におく。
「してその心は?」
一生は写真を横目で眺めながら尋ねた。
「同性より異性の指導の方が難しいからだ。
 それにERならミキを始めとする女性も多いからフォローできる。」
「特に報告書に専門も書いていないですし、外山先生次第で名医にもヤブにもなりますな。」
五郎が環奈からの報告書を読みながらうなづく。
「ERの責任者として進藤先生は大丈夫かしら?」
「小島にも指導医をさせてフォローを入れさせます。 小島なら何度も指導医をしているからアドバイスもできるでしょう。」
「では次は小島先生に誰を指導させるかね……。」

実はあの日、誠二が入室する前にこんなやりとりが行われていたのである。
「ERで青ざめた顔をした緋山を見たときは、あの娘はもう駄目だ(脱落した)と思ったわ。」
「小高の話によると緊急オペでお互い向き合ったようだ。」
「緊急オペねぇ……。
 確かアナタと外山が認め合うようになったのも確か緊急オペって聞いてるわよ。」
「ああ……」
龍太郎は空を見上げると目を細めた。
あの停電の中でのオペを思い出しているのだろう。
「外山がチームを作ると言い出したのもアナタの思惑通りかしら?」
「さあな。外山は……ピーポーピーポー」
龍太郎が何かを言いかけたとき、救急車の音が病院の前で止まる。
気がつけば二人とも走り始めていた。
8116:2008/10/07(火) 21:36:59 ID:5pi7q9In
外山・緋山のチーム作りに入る予定です。
一応、司馬と桜井と小高を考えていますがまだ詳細は未定です。

>>75
救急でブルー。尊敬する朝田のドラゴン。
安っぽいので、あんまり考えてません。
名案募集します。

>>76
それを言ったら外山と冴島も家族構成似てますね。
一応師弟コンビはどこか似てる組み合わせにしたつもりです。
チーム・ドラゴンVSチーム・バチスタどうやって対戦するんだろう。


>>77
是非読みたいです。
他のフライトドクターの成長振りが謎なんで、話に絡ませにくくて(マテ)
まぁそれは冗談にしても期待してます。
ネタはたくさんあると思います。

>>78
女医に限らず女の世界はわからんわ。
82名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/08(水) 06:27:59 ID:TbC5WsgM
ドクター泣き虫ピアス可愛いよドクター泣き虫ピアスw

緋山先生にぴったりじゃまいか
83名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/08(水) 12:11:37 ID:3S9cmxBl
いつも楽しく読んでます。パラレルっておもしろいですよねぇ、ところで人物紹介でwikiとかいりますかね?
84名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/08(水) 23:57:54 ID:2FHCvrMd
>>77
期待してます。
85名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 12:13:07 ID:P6WQltYj
四つの嘘にも脳外科でてましたよ
86名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 14:56:31 ID:VVsbIqgO
8716:2008/10/09(木) 23:03:38 ID:7I+5Ypk8
「どうせ自殺未遂の患者だろ?死にたがってるやつを助ける必要はない。それにもう俺はオフなんだよ。」
今日は誠二が学会で出張で不在ということで、
美帆子と一男は見学がてら、先日失恋のショックにより自殺をはかり救命にて治療した際、癌が発見され第一外科に搬送された患者の様子を見に来たのである。
自分が癌であることを知りショックを受け再び自殺未遂を図ったことを聞いた美帆子が、
主治医である司馬江太郎を問い詰めたところ帰ってきた言葉がこれだった。
「それが医者の言うこと?」
「ドクターにも休息は必要なんだよ。それにこの患者が死ねばベット空いて新しい患者が入院できる。」
どうしてオペをしながら、こんな発言が出来るのだろうか?
「それにこの患者の癌はもうどうしようもない。安らかに死なせてやるのもドクターの仕事だ。」
美帆子に無理やりオペ室に連れてこられたにしても、耳を疑う言葉である。
「まさか患者にそんな言い方してませんよね?」
「告知は当然した。家族も面会には来ていないようだ。とりあえずオペ終了。後はよろしく。」
江太郎はさっさとゴム手袋を外すとオペ室を後にした。
「何なのよ?アレでも医者なの?」
美帆子は憤慨しながらゴム手袋を外す。
「お疲れ様でした。司馬先生はオンとオフがハッキリした方なんですよ。」
翔子は苦笑いを浮かべながら患者を病室へと運んでいった。
医者が24時間365日患者のことを考えるなんて無理なことくらいわかっている。
美帆子だって一男と救命で時に励ましあい、時に愚痴りあっているのだ。
しかし何も患者の前でそんなことを言う必要はないはずである。
「どうなってるの?ここはあんな医者が野放しなの?誰も何も言わないの?」
「緋山先生!」
不満そうにまだ看護師達が後片付けをするオペ室を出ると背後から呼び声がした。
「えっと……。確か……」
名前がすぐに思い出せない。
「麻酔科の大槻沢子です。ちょっと良いですか?」
名前を聞いてようやく思い出した。
確か主に第一外科と整形外科と脳外科のオペの麻酔を担当する麻酔医だと聞いている。
「大丈夫ですけど……」
「こっちです。」
沢子は美帆子の手を取ると喫煙ルームのドアを閉める。
「タバコ失礼しても良いかしら?」
「いいですけど、話ってなんですか?」
「司馬のことなの。」
沢子はタバコに火をつけるとフッと煙を吐く。
「司馬先生がどうかしたんですか?」
江太郎の名前を聞き、美帆子は少し不機嫌そうになる。
「彼は前の大学病院で少なくとも6人の患者を殺しているわ。」
8816:2008/10/09(木) 23:05:10 ID:7I+5Ypk8
「6人?嘘でしょ?」
沢子の突然の告白に美帆子が戸惑う。
「本当よ。その後別の病院でも一人は殺しかけて、もう一人は殺してるわ。」
「何でそんな医者がこの病院にいるんですか?」
美帆子が思わず声を荒げた。
「彼をとある人がナイフで刺してね。」
「ナイフで?どういうことですか?」
どうも肝心なところをぼかされている様な気がしてならない。
「背中からで出血も多かった
 その上長時間雨にうたれて極度の衰弱状態だったから、救急隊員も諦めていたそうよ。
 何より彼自身もう駄目だと思ったの。でも奇跡は起きた。
 若い頃の院長のいた救急病院に運び込まれ助けられたの。」
「院長が?」
「前の病院を追われた彼は、院長の下に転がり込んだというわけよ。」
江太郎がこの病院に来た経緯は理解できた。
「何でそんなに詳しいんですか?」
「司馬とは大学の同期なのよ。その後も付き合い長くてね。」
「本当にそれだけですか?」
美帆子が不思議がる。
「どうして?」
「同期ってだけで大学病院も一緒に辞めて、前の病院に行って、そしてこの病院でしょ。
 ちょっと私には考えにくくて」
「実は結婚寸前までいったのよ。昔に話だけどね。」
沢子は再び煙をふっと吐く。
「本当はまだ好きなんじゃないですか?」
「愛の形は人それぞれなのよ、緋山先生もいつかわかるわ。」
「そんなもんでしょうか。」
確かに美帆子には「愛」といわれても、いまいちまだわからない。
「司馬を誤解しないであげて欲しいの。医局にも親しい人は居ないようだし。」
ちょっと待って欲しい。
自分だってあんな江太郎と仲良くはなれそうにない。
「どうして私にこの話を?」
「似てたのよ。人を殺してしまう前の司馬のまっすぐな目が……」
「わ…私はあんな医者にはなりません。」
「昔は司馬もそんな目をしてたの。」
「今は大槻先生から見てどうなんですか?」
美帆子がマジマジと沢子を見つめる。
「力不足で殺した患者と安楽死させるしかなかった患者への償いのために生きてる気がする。」
8916:2008/10/09(木) 23:07:02 ID:7I+5Ypk8
「どうしてそんな風になってしまったんですか?」
ここまで聞くと聞かざるを得なくなった。
「彼……父親を膵臓癌でなくしているの。だから大学の助教授を父親のように慕っていたの。
 そんな助教授にオペのミスを押し付けられてね。」
「まさか……」
「患者を殺したのは彼じゃなかったの。助手はしていたけど執刀医は彼ではなかった。
 私がそれに気がついたのも随分後になってからだった。
 でもそれからよ。彼が苦しむ患者を安楽死させるようになったのは……」
「どうして?」
「尊敬する助教授でもオペでミスして患者を死なせるんだから、どうせなら安らかに眠らせてやりたい。
 そう考えるようになったみたい。」
「その助教授は今は?」
「それから4人も連続でオペに失敗してショックでメスが握れなくなったわ。
 4人は司馬のミスで死んだことにされて内密にされてね。
 それから司馬の周りで末期の患者が死ぬ事件が相次いで。司馬はその責任を取らされて大学を去ったわ。」
大学病院とは教授の権威が第一であるというのは噂では聞いたことがある。
事実、明真にもそういう時代があったと聞いている。
「そんなの……医者のする事じゃな…い。司馬先生もその助教授も……。
 私の成りたかった医者はもっと崇高なもので…す。」
100%否定は出来ないが、かといって絶対に認めたくないそんなジレンマが美帆子を襲った。
「お前いつからそんなお喋りになったんだ?」
半開きになっていたドアが開き江太郎が喫煙ルームへと入ってくる。
「あらもう帰ったのかと思ってたわ。」
沢子が目を細めて尋ねる。
「外が騒がしくてな。静かになるまでここで休憩しようと思ってきたんだ。」
江太郎は不満そうに沢子を睨みつける。
「わ…私が無理やり聞いたんです。大槻先生を責めないでください。」
「コイツがお節介な女なことはよく知ってる。女の口にとは立てられないこともな。」
「私は別に言いふらしたりなんてしません。絶対……。」
「人がなんと言おうと俺は人殺しじゃない!俺はドクターだ。」
「ドクターを馬鹿にしないでください!」
そう言い放つと喫煙ルームから出ようとした。
そのとき……
外からキャーという声やワーという叫び声がした。
9016:2008/10/09(木) 23:08:07 ID:7I+5Ypk8
美帆子が何事かと外に出ると、そこには先程の患者がナイフを持って暴れている。
「俺はどうせ死ぬんだ!死なせてくれよ!」
患者はそう喚き散らしながらナイフを振り回している。
「止めて下さい。」
翔子や他の看護師達が必死に押さえようとするが、ナイフで近づけない。
「キャ……」
翔子が患者に捕まった。もはや患者ではなく暴漢と呼ぶべきかもしれない。
錯乱状態なのだろうか目の焦点があっていない。
「女性を人質に取るなら俺が変わるよ。」
一人の白衣を着た医師が暴漢の前に立ちはだかる。
「藤川止めないよ。アンタ弱いんだから」
なんと一男だった。
「なんだ?チビ?」
「俺の方が小さいから人質にしやすいですよ。」
一男はドンドン暴漢へと近づく。
「く・来るな。」
暴漢は後ずさりするも壁に背中がぶつかった。
「ち・ちくしょ。こうなったら……」
翔子をドンっと床に突き飛ばす。
「お前を人質にしてやる!」
逆上した暴漢が一男の白衣をつかんだ…。
ポタポタという何かが床にたれるような音が聞こえる。
「キャー…」
一男の胸の中央にナイフが突き刺さっている。
ガクッと一男が地面に膝をつき崩れ落ちる。
「お…おれはそんなつもりじゃ。」
暴漢は呆然としている。
「警備員早く捕まえて」
翔子が叫ぶと我に返った警備員が暴漢を取り押さえた。
「ちょっと藤川?大丈夫?」
頭が地面にぶつかりそうな所で、美帆子が一男を抱え込む。
「格好つけたんじゃないぜ。ただ俺の前で誰かが悲しむの見たくなく……」
一男の唇がドンドン青ざめていく。
「ちょちょっと……」
美帆子が刺さったナイフを引き抜こうとした。
「今ナイフを抜いたら出血多量でそれこそ死ぬぞ!」
声の主は江太郎であった。
「でもどうしたら?」
「さぁな、俺はもうオフだしお前はドクターなんだろ?治してやれよ。」
江太郎に言われるまでもない。
9116:2008/10/09(木) 23:09:29 ID:7I+5Ypk8
「ストレッチャー早く!」
美帆子が翔子を急かす。
「藤川すぐ助けるから待っててね。とりあえず痛み止め打つから。」
鎮痛剤を投与された一男はコクっと頷くと静かに目をつぶる。
「大槻先生麻酔お願いできますか?」
「わかった。すぐに行く。司馬君は本当に行ってあげないの?」
「しつこいな。俺はオフなんだよ。」
「もし藤川先生に何か会ったら縁を切るからね。」
「切るような縁あったか?」
江太郎は無表情に尋ねた。
だが現実問題、美帆子一人でなんとかなる症状ではない。
他の医者を待っている時間もない。
「手伝ってくれませんか?司馬先生も。」
「嫌だね。」
美帆子は地面に両膝をついたまま振り返り、一度江太郎の目を見てからゆっくり頭を下げる。
「助けたいんです。藤川を……。手伝ってください。私一人では無理です。」
「どうしてそこまでする?」
「藤川は良い奴なんです。
 私が指導医とうまくいかず悩んでたときも相談に乗ってくれたし、何か失敗したときは励ましてくれるし……。
 今は腕はたいしたこと無いけど、いつかきっと立派な救命医になるし、何より大事なのは心だって……
 医者は患者を支える存在ってことを教えてくれたんです。
 司馬先生にだって大切な人いるでしょ?」
「俺の大切な人はみんな死ぬか、俺から離れていったよ」
江太郎はどこか寂しそうに吐き捨てた。
9216:2008/10/09(木) 23:28:58 ID:7I+5Ypk8
うまく次の章につなげれるよう頑張ります。

>>82
ピッタリでしょ。(自画自賛)

>>83
wikiってよくゲーム板とかで見るけど、どうやって作るんでしょう。
専門知識が無いからよくわかりません。
ドラマ見てない人への紹介とか時系列とかしやすくなりそうですね。
93名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 23:37:36 ID:VuX862fE
>>92
>>16さんハイペースで嬉しい!
振り奴組はドラマから何年くらいたった設定なんですかね?
94名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 00:52:49 ID:rqJFw/Uh
「振り返ればヤツがいる」は見てなかったのですが、司馬先生って暗い過去があって、荒瀬を
思い起こさせますね。読んでて胸が痛くなりました。悪人のふりしてるけど、
きっと本当はすごく患者思いのいい先生なんだろうな。興味津々。
9516:2008/10/10(金) 22:21:05 ID:mkfjV8Js
オペ室では慌しく翔子達が準備している。
「霧島先生も財前先生もオペで手が離せないそうよ。」
他の医者を待っている時間はない。
沢子は美帆子を見ると黙って首を横に振った。
「私がやります。」
このまま黙って応援を待っていたら、脳に障害が起こらないとも限らない。
自分は江太郎とは違う。
美帆子は目を閉じた一男の顔をもう一度見るとメスを握る。
「まず開胸して血管を縫合し出血箇所をふさぎます。」
切り口から血がドクドクと漏れ出る。
いったいどれだけ出血しているのだろうか?
胸部は文字通り血の海である。
「吸引!」
翔子が言われたとおりに出血の吸引を始めた。
「輸血多めに用意してください。」
「人工心肺の用意は出来てるわ。」
美帆子は血管をクランプしながら頷く。
長時間は持たないが、人工心肺があればナイフを抜いて止血するくらいの時間は稼げるはずである。
美帆子は人工心肺の接続を終えると、ゆっくりナイフを引き抜こうとした。
「お前がそれ抜いたら誰が血管縫合するんだ?」
オペ室の自動ドアが開き江太郎が入室する。
沢子も驚いたように手が止まっている。
「……」
「質問に答えろ。ナイフを抜いて予想以上の出血だったらどうするつもりだったんだ?」
「それは……その……」
「ナイフは動脈がクッションになって辛うじて心臓には届いていないようだな。」
江太郎が一男を挟んで、美帆子の前に立つ。
「司馬先生……来てくれたんですね。」
「何を勘違いしている?お前が執刀医だ。」
美帆子の背中にゾクリと冷たい汗が流れた。
「必ず助けると約束したんだろ?藤川はお前を信じて命を預けたんだ。」
「で……でも……」
「一時の感情移入がドクターの仕事ではない。
 患者のクオリティ・オブ・ライフを最優先に考え、的確に行動するのがドクターだ。」
江太郎は険しい表情で美帆子の目を見る。
「司馬先生にはそれが出来るんですか?」
「15年もドクターをしていれば、誰だって出来るようになる。」
ゆっくりと慎重にナイフを引き抜いた江太郎が翔子にナイフを渡す。
傷口からはすぐに激しく出血した。
「俺は心臓に損傷が無いか確認するから縫合しろ。」
美帆子はハッと顔を赤らめると、慌てて血管縫合を始める。
9616:2008/10/10(金) 22:21:59 ID:mkfjV8Js
「それにしても、コイツはどういう奴なんだ?」
「無理したんです。腕相撲で私にすら勝てないくせに……」
「そういう意味じゃない……」
美帆子の手が一瞬止まりすぐに再び動き出す。
「コイツがなんであんなことしたかわかるか?」
「今は止しなさい!」
沢子が江太郎を制止する。
どういうことだろうか?
そういわれてみれば、一男らしくない行動である。
「あのとき、コイツが患者に近寄らなかったら、お前飛び掛るつもりだったろ?」
美帆子はドキリとする。
確かにあの時、相手との距離を目で測った。
「まさか!」
思わず言葉を失ってしまう。
「いい加減にしなさい。緋山先生もオペに集中して」
沢子は呆れたように江太郎をみる。
「コイツは良い性格してるよ。お前はもっと周りを見るんだな。」
「どうして?」
一男の顔を見ると、先程より少し顔色が良くなっている気がした。
「ナイフを持って錯乱してたからな、万が一失敗して顔に傷でもついたらと思ったんだろ。」
「もう止めなさい!」
「心配しなくても全部縫合終わった。後はコイツに聞け。」
江太郎は首をクイっとやる。
「終わった??」
美帆子が手元を見ると、最後の縫合以外は殆ど終わっている。
「いつの間に?」
これほどの腕を持っていたの?
よくよく考えれば、こんな勤務態度の悪い医者を笙子がタダで置いておくわけがないのである。
それも外科の顔とも言える第一外科にである。
「後は病室ででも抜けた分の血を入れてやれば大丈夫だ。」
「オペ終了。」
最後の縫合を終えると、美帆子はフウッとため息をつき汗を拭った。
9716:2008/10/10(金) 22:22:39 ID:mkfjV8Js
「ありがとうございました。」
一男がICUに運ばれるのを見届けると、美帆子は江太郎に礼を言い握手を求める。
「もう良いだろう?もうオフなんだよ。」
しかし江太郎は素っ気なくオペ室を出ていってしまった。
「司馬をドクターと認めたくないならそれで良いの。
 ただわかってやってほしいの。」
沢子がポンと美帆子の背中を叩く。
「患者の親身になることは間違いなんでしょうか?生きてさえ居れば…という考えは甘いんでしょうか?」
「悩み続けなさい。それを止めたドクターのメスは凶器でしかないわ。」
「司馬先生が来てくれなかったら助けられたかどうか……。本当は良い人なんですね。普段は最低だけど。」
沢子はウーンと首を大きくかしげる。
「残された患者の悲しみも、家族の負担になることを自覚した患者の辛さも司馬が一番良くわかってる。
 だから彼は最低でありつづけるのかもしれない。
 緋山先生はまっすぐで明るくて白い道を歩き続けなさい。
 そんな貴方に責められることを司馬も望んでるのよ。」
「私にはそんな資格ありません。医者って何なのかすらわからなくなりそうで……」
「それならもっと腕を磨きなさい。もっと多くの患者に触れて悩みなさい。
 そして自分の答えを見つけなさい。見つけたらその答えが正しいのか悩みなさい。」
「大槻先生は見つけたんですか?」
「さぁね、ただ私がこの世で一番信頼しているドクターはそうしてるわ。
 緋山先生がどんな答えを出すのか楽しみにしてるわ。」
そういうと沢子は再び美帆子の背中をポンッと叩いた。
9816:2008/10/10(金) 22:23:30 ID:mkfjV8Js
沢子と別れ美帆子は一男のベッドの横に腰をかけた。
意識が戻ったときに誰も周囲に人がいないというのは不憫である。
「どうして私のことなんて心配するのよ。」
同期4人の中で一番不器用な一男だが、ここ一番で頼りになるのも彼である。
誠二のことを同期に相談したとき、一番親身になってくれたのは他ならぬ一男であった。
別に何か特別なアドバイスをくれるわけではないのだが、話していると心が晴れるのである。
「……ん…ん…」
一男が苦しそうに身悶える。
「藤川?藤川?もう大丈夫よ。しっかりして」
「緋…山……?」
一男はまだ意識がハッキリしないようである。
「怪我……ない…か……?」
「私は大丈夫、アンタのおかげでピンピンしているわ。」
「良かった……。一応女の子だもんな。あんまり無茶しようとするなよ。」
ニコリと笑う。
「ここは?」
「第一外科のICUよ。落ち着いたらすぐ個室にしてもらえるわよ。」
どうやら刺されたときの記憶はあまり残っていないらしい。
『ドクターヘリスタンバイ ドクターヘリスタンバイ』
所持品袋の中のトランシーバーがなり始める。
一男は必死に手を伸ばし起き上がろうとする。
「その体じゃ無理よ!」
「離してくれ。」
美帆子が必死に体を押さえつける。
こんな状態では一男が倒れて、どっちが救助者だかわからなくなる。
「離さない。」
幼少の頃から病弱だった一男は、病気のたびに母親におんぶされて通院していたそうである。
田舎に住んでいた彼は病院の方から来てくれればどんなに救われるだろう?と幼心に考えながら成長し、
そして彼はドクターヘリという結論にたどり着いたのだった。
9916:2008/10/10(金) 22:25:59 ID:mkfjV8Js
「俺はフライトドクターになったんだ。助けを呼ぶ声を……」
「今は駄目!!!絶対行かせないわよ。」
「痛い…痛い……」
押さえつける手に力が入ったのか、一男が傷口を押さえる。
「ほら、傷口開いちゃうよ。良いの?二度とヘリに乗れなくなるよ。」
『ドクターヘリ出動3分前 ドクターヘリ出動3分前』
一男は観念したのだろうか、血のついたトランシーバーをギュッと握り締めている。
「今日は朝田先生だし、後で説明すれば分かってくれるわよ。」
「俺は一人でも多く救いたくてココに居るんだ。寝るためじゃない。」
一男の目は赤く充血している。
「………」
「藤川?」
一男は赤く染まったトランシーバーを美帆子にゆっくりと手渡す。
「代わりに飛んでくれ……患者を救ってくれ。」
美帆子は黙って頷きしっかりと手を握る。手の甲を一男の涙が濡らす。
「任せて!私が引き受けるから!フライトも担当患者も!
 だからアンタは今はゆっくり休むのよ。」
自分の状態がこんなときでも患者のことを気にかけるなんて……
江太郎や沢子と少し話しただけで揺らいでいた自分が恥ずかしかった。
彼らとは経験やキャリアが違うのだからしょうがない。
一男と共に一歩一歩自分の足で進もう。
まずは今,目の前で自分を必要とする患者から真剣に向き合おう。

決意を新たにした美帆子は急いでヘリポートへと向かった。
10016:2008/10/10(金) 22:35:48 ID:mkfjV8Js
>>93
10年後くらいと考えてます。
だからちょっと丸くなってるんですね。(どこが)
こういう質問がエネルギーになります。

>>94
必要悪みたいなそんな葛藤を与えてみたいなと思ってます。
これからどう動くんでしょうか。

チーム出来るのか我ながら心配です。
101名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/11(土) 10:51:14 ID:qi5Yz5ox
ハイペースだから読みやすいな
ガンガレ
102名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/11(土) 11:44:07 ID:TJazgHb6
QOL…クオリティーオブライフ

朝田の出番が少ないのが残念orz
10316:2008/10/11(土) 22:51:28 ID:WGyQJ/Py
「よう、ドクターピアス。頑張ってるかぁ。」
三ヶ月ぶりに誠二が明真メディカルシティーへ戻ってきた。
「外科医の世界選手権優勝だそうで、おめでとうございます。」
美帆子が無愛想に応える。
「何キレてんだよ?
 選手権自体も良い思い出になったが、
 そこで知り合ったカウンティ総合病院で救命医のカーターって奴と意気投合してな。
 MSFに一緒に行ってきたんだ。」
「二ヶ月も休みとってアフリカの難民キャンプに行ってたんですか?」
誠二はアメリカで学会後、
フレッシュマンズライブ世界大会に出場し、その後急に二ヶ月の長期休暇を取ったのである。
「カーターが責任者やってるからって、カウンティ総合病院の救命見学したりもしたぜ。
 ちなみに残念ながらカーターは既婚者だ。」
「聞いてません。聞きたくもありません。」
美帆子が頬を膨らませた。
おかげで一男と二人の欠員が突然出来たため
こちらは大混乱し、遂には笙子までかり出されたのである。
「よく2ヶ月も休み取れましたよね。」
「何だ?妬いてるのか?
 悔しかったらお前も国内大会優勝するんだな。まぁ予選突破も難しいだろうが……。」
「そうじゃなくて、よく根回しもなく休めましたよね。」
「後輩が優秀だからな、俺一人居なくても大丈夫だったろ?」
誠二がポンと美帆子の肩を叩く。
「でどうだったんですか?」
「銃で撃たれた患者の治療したのが印象的だったな。
 あと医療格差が激しいってことだな。」
「ふ〜ん。」
いつかは自分も海外の病院に研修に行ってみたいものである。
「ところでお前は三ヶ月間どうだったんだ?」
「私は小島先生に教えてもらってました。誰かと違ってとても丁寧に教えてくれます。」
美帆子はプイっとそっぽを向きながら答えた。
「お前も呼んで欲しかったのか?」
「そんなこと言ってません。」
突然何の前触れも無く休むものだから、見捨てられたと思って泣いたなんて口が裂けてもいえない。
10416:2008/10/11(土) 22:52:49 ID:WGyQJ/Py
「外山先生じゃない〜。いつ戻ったの?」
誠二がお土産を渡すと、ちょうどいい所に七海がやってきた。
「昨日だよ。ん?一昨日だったか。」
まだ時差ぼけが治っていないようである。
「さっき進藤先生に聞いたわ。MSFに行ってたんだって?てっきり飛ばされたのかと思ったわ。」
七海はなんとしてでも誠二をどこに飛ばしたいようである。
「アフリカには麻酔という概念もあんまりなくてバタバタだったぜ。」
「まぁパッときって治す世界でしょうしねぇ。」
「また宜しく頼むよ。ところで不在の間、アイツどうでした?」
小声で誠二が包み紙を開けている美帆子を親指で指す。
「大活躍だったわよ。」
「どんな風に?」
誠二が疑い深く尋ねる。
「私も直接は見てなくて、大槻先生に聞いた話なんだけどね。」
::::::
一男の事件の話を七海がしている。
::::::
「それで緋山の奴キレてたのか。」
「不在の間、頑張ってたわ。褒めてあげて。」
誠二はポリポリと眉間をかく。
「なんか大活躍だったんだって?」
「が…頑張りました。」
「そんな大活躍滅多に無い事だから褒めてやる。」
照れ臭そうに美帆子の頭を撫でた。
「滅多にってヒドイです!」
美帆子は嬉しそうに誠二を叩く。
「ウガ……」
突然誠二がみぞおちを押さえて蹲った。
「ちょっと大袈裟ですよ〜。」
「だらしないわねぇ〜」
美帆子が慌てて誠二を助けおこす。
誠二はヨロヨロと椅子に腰かけた。
「大丈夫?」
七海が心配そうに顔をのぞきこむ。
よく見ると誠二は脂汗をかいていた。
「緋山悪い。ちょっと巡回に行ってくるわ。」
七海と美帆子が顔を見合わせている間に、誠二は医局を出て行ってしまった。
10516:2008/10/11(土) 22:54:40 ID:WGyQJ/Py
「藤吉先生いるか?」
尋常ではない腹痛に襲われた誠二はその足で内科の医局へと向かった。
「藤吉先生なら今、診察中だ。お前血管外科の……」
「アンタは?」
「里見脩二だ。外科のホープが内科に何かようか?」
脩二がPCから目を離し尋ねる。
「そうか、今日は気分が優れなくてな、藤吉が居ないなら出直すとしよう。」
誠二は軽く頭を下げ、医局を出ようとした。
「おい、ちょっと待て。顔色悪いぞ。これでも飲んでちょっと横になれ」
脩二はコップに紅茶をいれる。
「大丈夫だ。」
誠二が脩二の手を振りほどく。
「大丈夫なら診察しても問題ないな。横になれ」
ここで押し問答してもしょうがないと判断した誠二が横になると、脩二は診察を始めた。
「ウグ…」
「これはどうだ?」
ときどき誠二の顔が苦痛にゆがむ。
「問題ない。」
そのたびに脩二は細かく触診を行った。
「早期の虫垂炎だ。」
「オペするわけにはいかない。これ以上仕事を休めない。」
まさか自分以外にも長期休暇を取っている人間がいるとは想像していなかった。
これ以上病院に迷惑を掛けることは出来ない。
「わかった。患者の意思が最優先だ。薬を出してやる。」
「外科の連中には内緒で頼む。特に救命の連中にはな。」
「医者には守秘義務がある。安心しろ。」
「助かるよ。」
誠二が素直に礼を言う。
「内緒にするが、一日3回これを必ず食後に飲め。
 薬が切れたら連絡しろ。」
「わかった。」
病名が発覚し誠二の顔が幾分か晴れる。
先日までアフリカに居たこともあり、もしかしたらとんでもない病気かと内心ビクビクしていたのだ。
「カルテが誰かの目に触れる可能性は?」
看護師は外科…内科…救急を行ききする。
目に触れてしまうことが無いとも限らない。
「俺が個人で管理する。これでいいな。」
誠二は頷きながら印刷された処方箋を受け取る。
「この近くでウチの患者や医師が寄り付きそうに無い薬局はどこだ?」
「家の近所の薬局で貰え。そんなに心配なら」
少し呆れたように脩二は答える。
10616:2008/10/11(土) 23:03:33 ID:WGyQJ/Py
「外山じゃないか。珍しいどうしたんだ?」
診察を終えた圭介が戻ってきたのだ。
「久しぶりだな。少し痩せたんじゃないか?」
相変わらず白衣姿がよく似合っている。
「しばらく顔が見えなかったが、元気にしてるか?」
「実は三ヶ月ほどアメリカに行ってたんだ。」
「アメリカ?何で?今流行の自分探しってやつか?」
「そんなところだ。」
救命と内科はあまりからみが無いので、
オペ室の窓越しに見て以来こうして顔を合わたのは久しぶりである。
「朝田のチームから抜けたのもその自分探しか?」
「指導医をやるようになって、自分の力がどこまで通用するか確かめたくなった。」
「お前が指導医とは丸くなったもんだ。」
「俺もそう思ってるよ。」
「ところで今日はこんな所に何しきたんだ?」
「朝田のチームにアンタが居るように、外科医だけでなく内科医も必要だと思ってスカウトに来た。」
慌てて出まかせをいう。
「外山にしては頭を使ったな。」
「まあな。」
「里見先生は優秀な病理学の専門医だ。」
先程の診察の手際の良さと診断の早さでそれを実感していた。
「それでスカウトに来たんですよね。」
「あ……ああ…」
誠二が目で口裏を合わせるように合図する。
先程誠二の他の医師に知られたくないという希望を聞いていた脩二も慌てて合わせた。
「というわけでこれからよろしく!」
脩二と握手を交わすのを圭介は不審そうに見ている。
握手を終えた長いは無用と誠二はそそくさと医局を後にした。
10716:2008/10/11(土) 23:24:12 ID:WGyQJ/Py
よくある少年漫画パワーアップパターンみたいとか言わないで。

>>102
ドラマの朝田って雑談しなさそうなイメージがあって……
想像力が乏しいせいか、談笑させる相手が思いつかない……
108名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 09:30:52 ID:G/QtuDCK
まさかERまで出てくるとは思わなかったです。
お坊ちゃん同士気があったのかな
109名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 16:19:27 ID:C+IQ4K1W
16のおかげで緋山×外山というフィルターを通して読んでいます。
本当に素敵なカッポーだv
110名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 21:32:45 ID:kVvqwu2J
もしかしてこの病院江口洋介と杉本哲太が二人いる?
11116:2008/10/12(日) 22:28:46 ID:/bAX+/M7
<所変わって一男の病室>
「もう退院して大丈夫だ。さっさとベットを空けてくれ。」
江太郎は聴診器を外す。
「ありがとうございました。」
楓も安心したように会釈した。
「緋山に言え。俺はドクターの仕事をしただけだ。」
「本来ならもっと早くお礼にお伺いするべきだったんですけど、遅くなってすみませんでした。」
「仕事ですから。」
ワザワザ楓がお礼に来たにも関わらず素っ気ない対応である。
「そういえば、緋山先生忙しいのに毎日お見舞いなんて隅に置けないわ。」
「そんなんじゃないですよ。俺と緋山は……。」
一男が即座に否定する。
「お前等毎日そんな事してたのか。ここは神聖な戦場だ。即刻ベットを空けてくれ。」
「だから違いますって……」
「まぁ良い。今度は同じドクターとして会いたいものだ。」
そういうと、江太郎は病室を後にする。
しばらくして美帆子とはるかが見舞いにやってきた。
「あら女の子が二人も!!モテモテね!」
楓が嬉しそうに手を叩く。
「たまたまそこで会っただけです。」
「さっき聞きました。退院されるそうですね。」
「冴島さんは一度もお見舞い来てくれなかったよな。」
「だから今日来ておいて良かったです。
 一度も来なかったら後が怖いですし。」
美帆子は苦笑いを浮かべている。
確かに一男のことだから
もし一度も見舞いに来なければ、変わってしまったとか触れ回るはずである。
「第一外科の看護師さんは、みんな大人で優しかったなぁ。」
一男がフッと笑いながら視線を外へ移す。
「アンタ馬鹿?」
腕組みをして話を聞いていた美帆子があきれると
「私も同感です。外科の看護師は仕事として接しただけだと思います。」
はるかも美帆子に同調して冷笑する。
「そんなことねぇよ。」
「私だって仕事のときは笑顔ですもの。」
「愛嬌はないけどな。」
「悪かったですね。私のスマイルはマクドナルドとは違うんです。」
きっと一男は自分にだけは違う笑顔だったとか言うタイプである。
「ところでアンタにこれ返しておくわ。」
美帆子がちょっと血がこびりついたトランシーバーを一男に渡す。
「何で緋山が持ってるんだ?」
一男が首をかしげながらそれを受け取る。
麻酔の関係で覚えていないようである。
11216:2008/10/12(日) 22:29:50 ID:/bAX+/M7
「明日からまた頑張ってね。」
微笑ましくやりとりを見ていた楓が真面目な顔をする。
「三ヶ月も休んだんだから、二人ともこき使われるわよ。」
ニヤニヤしながら美帆子が告げる。
「二人?」
一男が驚いて聞き返す。
「外山先生よ。」
美帆子は腕組みの手を交換しながら、誠二の海外逃亡の話をする。
「戻られたんですね。良かったぁ。心配してたんです。」
「アンタ嬉しそうね。確かに忙しかったけど……。」
「指導医が戻ってきて緋山先生もこれで安心ね。」
「私は特に心配とかしてません。」
美帆子は頬をプーと膨らませている。
「外山先生海外ってどこに行ってたんだ?」
「藤川先生が心配するといけないから内緒にしてたんだけど、アフリカに行ってたらしいわ。」
「小島先生知ってたんですか?」
美帆子が驚き尋ねる。
「上級スタッフドクター以上はみんな知ってるわよ。」

明真メディカルシティーは、
研修医・レジデント・スタッフドクター・上級スタッフドクター・チーフドクターという分類がある。
研修を一通り終えている一男と美帆子はレジデントに属し、楓と誠二は上級スタッフドクターに属する。
年齢と共に試験を受け階層は上がっていくのが通例だが、論文やオペの功績を院外で評価されると上がることもある。
ちなみに上級スタッフドクターの平均年齢は52歳であることからも、まだ30代前半の楓と誠二が高く評価されていることが伺える。
チーフドクターになると一生のように科の責任者として運営を任される。

「私達レジデントは仲間はずれですか。」
美帆子はちょっと拗ねたようである。
「緋山先生も早くスタッフドクター目指すしかないですよ。」
気の毒そうにはるかが慰める。
「目指すといえばアンタ救急認定の試験どうだったの?」
救急認定看護師になるため、はるかが寝る間を惜しんでいたことは同期の中では有名な話である。
「駄目でした。」
はるかがガックリと肩を落とした。
あまりの落ち込みぶりに美帆子は気の毒になった。
「悪いこと聞いちゃったわね。本当に知らなかったのよ。
 でも安心したアンタでも失敗するのね。」
どうやって慰めていいのか戸惑い、話題を変えろと一男に視線を送る。
11316:2008/10/12(日) 22:30:38 ID:/bAX+/M7
「指導係の山城さんに申し訳ない。それに皆さんドクターとして成長してるのに情けない。」
「コイツなんて三ヶ月寝て患者さんと談笑してただけだから大丈夫よ。」
「そ……そうだぜ!」
「せっかく期待して貰ったのに応えることができなかった。
 私は看護師に向いていないのかもしれません。」
はるかは頭を抱え始めた。
美帆子が助けを求めるように楓を見る。
「誰かが責めたの?」
すがる様な二人の視線を感じたのか、楓が尋ねる。
「いえ、今までと変わらず熱心に教えてくれます。逆に辛いんです。」
「まだ若いんだし、フライトナースってだけでも立派だと思うわよ。
 それに山城さんだって何回か受けて合格したって聞いたことあるし普通なんじゃない?
 自分なら一回で楽に受かるとでも思ってたの?」
「そんな事無いです。ただ桜井さんに教わってて一緒に受けた里原さんは合格したので
 山城さんの顔に泥を塗ってしまったかと思うと申し訳なくて……。」
「あのねぇ、冴島さん。指導する人はね、教えた人の結果がうまく行かなくても恥かいたとは思わないわよ。
 そりゃぁ、結果は良いに超したことはないわよ。
 でも結果が全てじゃないと思うな。」
さすが楓言うことが深いと感心する。
誠二に爪のアカを煎じて飲ませたいくらいである。
「それにしても、私から見ると山城さんとそんなに悪いかというとそうは思えないんだけど、
 試験で何か失敗でもしたの?学科は大丈夫そうだし……。」
美帆子が言うのも変な話だが、紗江子とはるか、それにミキとはるか、そんなに大きな差があるとは思えない。
「実は……。ここだけの話ですよ?別にもう気にしてませんから。
 試験の前夜、大きな列車事故があって、ほら進藤先生が初めてスタットコールかけた日です。」
その日のことなら、美帆子もよく覚えている。
笙子と副院長の善田秀樹が初めてメスを握るのを見た日である。
それほどまでにERはてんてこ舞いだった。
前日も夜勤だったはるかは48時間連続勤務後、仮眠もとらずに試験会場へと向かったのである。
「言ってくれれば良かったのに。」
先輩の楓はともかくとして、付き合いの長い自分くらいは教えてくれればフォローくらい出来たのに……。
そんなに自分は当てにならないのだろうか?
「看護師もドクターもみんな大忙しでした。私だけ我儘は言えません。」
「それは我儘じゃないよ。」
「もう後悔はしてません。私は山城さんみたいな立派な看護師になりたいんです。」
はるかはようやく顔をあげハッキリと宣言した。
11416:2008/10/12(日) 22:31:30 ID:/bAX+/M7
「相変わらず冴島さんは自分に厳しいねぇ。俺も見習わなきゃ。」
一男はチラッと横目で楓を見る。
「外山先生がいればそんなことにはなってなかった。」
「緋山先生!救命にたらればはないの!!」
思わず出た言葉を楓が珍しくたしなめた。
「外山先生は関係ないです。私の努力が足りなかったんです。」
集中砲火を浴びた緋山は納得がいかない。
「どうしてみんなアイツの肩持つんですか?」
「肩を持ってるわけじゃないです。
 ただ私も前の病院でそうだったからわかるんですけど、
 同年代で同じくらいの技量がある人がいないって凄く孤独なんです。」
確かにはるかの言うとおり、誠二が天才だというのはよくわかる。
だがそれが何の関係があるのだろうか?
「カーター先生だっけ?珍しいじゃない。外山先生が意気投合するなんて……。
 だから院長も長期休暇許可したの。休暇って言っても出張みたいなものだったみたいよ。」
分かったような、わからないような美帆子は不満そうな顔をしている。
「試験は次がまたありますけど、出会いはタイミングです。だから外山先生には言わないで下さい。」
はるかが口の軽い一男と美帆子に釘をさす。
「緋山先生には藤川先生と外山先生や三井先生がいるでしょ。それってとても幸運なことなのよ。」
「コイツが?」
何で自分と一男が同じ扱いなのか。楓からみると同程度の技量ということなのだろう。
「外山先生は一人で走り続けないといけない。朝田先生という境地に向かって。」
「小島先生はどうなんですか?」
一男が不意に尋ねる。
「私はそうねぇ、同年代で優秀で尊敬できる医師はたくさんいるし、退屈することはないかな。
 目標の進藤先生までは遠いけどね。」
「そういえば、外山先生と小島先生ってどんな関係なんですか?」
「藤川先生、女性にそういうことは聞かないものよ。」
「すみません。」
そのやりとりを見たはるかがクスっと笑う。
楓はゴホンと咳払いした。
「以後気をつけるように、年は同い年だけど学年は私が一個上なのよ。」
「それなら小島先生と一緒に走ればいいじゃないですか。海外なんて行かないで」
「藤川先生は外山先生のオペと私のオペ助手をしたわけどどう思った?」
「えっとですね。それはですね。医者っていうのは手技だけではないわけで。患者のケアとか……」
美帆子はまだ搬送された患者の手当て以外で楓の助手をしたことがない。
「分かってることだからハッキリ言いなさい。」
一男はまだ口ごもっている。
「看護師の視点から申してもいいですか?」
はるかが小さく手をあげる。
「良いわよ。」
「手技のことまではわかりませんが、機械出しやサポートをして疲れるのは外山先生です。」
「どうして?早いから?」
美帆子が不思議そうに尋ねる。
「どんな時でも全力疾走だから一瞬も気を抜けないんです。
 もちろん気を抜くといっても手は抜きませんが……」
はるかは申し訳無さそうに楓を見る。
「常に全力疾走できるって事は凄いことよ。私には無理ね。
 ようは私には外山先生がいるけど、外山先生には私は居ないって感じかな。」
はるかの説明と楓の話によると、やっぱり誠二は凄いということになるのだろう。
納得は今ひとつできないが、はるかが内緒にしてくれというのなら仕方が無い。
そういえば誠二に自分の評価を詳しく聞いたことがない。
今度機嫌の良さそうな面談のときにでも聞いてみよう。
酷評されるのはわかっているが、どんな言葉が出てくるか少し楽しみである。
11516:2008/10/12(日) 22:53:12 ID:/bAX+/M7
勝手に役職とか作ってしまった。
中には出世に興味の無い医師もいるということで、多めに見てください。

院長 鬼頭笙子
チーフドクター 財前五郎 朝田龍太郎 藤吉圭介 里見脩二 進藤一生 荒瀬門次 小高七海
上級スタッフドクター 霧島軍司 司馬江太郎 外山誠二 香坂たまき 加藤晶 小島楓
           松平幸太郎 森本忠士 馬場武蔵 三井環奈 西条章
スタッフドクター 神林千春 伊集院登 高樹源太 夏目彬 大槻沢子 黒木春正 日比谷学 堺慎一
レジデント 藍沢耕作 白石恵 緋山美帆子 藤川一男

頭の中でこんな分類にしてます。

>>108
いつか彼は来日するかもね。

>>109
気に入ってもらって嬉しいです。
ただ恋愛の要素では違うカップルになるかも

>>110
いるけど、そこは流して欲しいな
116名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 14:22:17 ID:RDagLVSM
麻酔医ってあんまり居ないんだな
117名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 15:21:22 ID:L1YIGs/A
財前先生と朝田先生が並んでるwwww
118名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 21:35:39 ID:QHJIbCEP
神林先生も黒木先生も日比谷先生も堺先生も
上級スタッフドクターでいいと思うんだけど。
でもそれだとスタッフドクターが少なくなっちゃうかな。

江口が二人並んでるwww
11916:2008/10/13(月) 21:53:06 ID:b6cVywH8
「クール宅急便でアフリカの土産が届いたぞ。ドクターピアスお前にやろう。」
誠二が両手でダンボール箱を抱えながら背中でドアを開けながら医局へと入ってくる。
「アフリカからって一ヶ月も掛かるんですか?」
美帆子は慌てて上の方のダンボール箱を受け取る。
「外にも何箱かあるから全部やる。」
「あ……ありがとうございます。中身なんですか?」
箱を開けると中にはビニール袋に入った豚の心臓が何個か出てきた。
「どう見ても日本国内で買ったものですよね?生ものだし……。」
「一応言っておくがこれは食用ではない。」
誠二が普段どんな風に自分を見ているのか少し気になる美帆子……
「さっきもエレベーターで腹をグーグー鳴らしてたろ。」
「え?聞こえてました……。」
美帆子は思わずパアっと赤らめた顔を手で押さえながら
このデリカシーの無さを何とかしないと、誠二に春が来ることはないと確信した。
「何か言ったか?」
小声だったので誠二には聞こえなかったようである。
「名医の階段一緒に上がろうって言った癖に放置プレーだったって言ったんです。」
美帆子が口を尖らせながら答える。
「仕方ないだろ!俺だってどんな階段か知らないんだから!」
「頼りないですねぇ。本当に大丈夫なんですか?」
「名医は知ってるがそのなり方は知らない。自己顕示欲が無いのも名医の特徴のようだぜ。」
「外山先生とは正反対ですね!」
「自分だって将来はテレビ出演するか本出版するタイプだろ!分かったことから教えてやるから待て」
「それでこれは何ですか?心臓手術の練習ですか?」
今更こんなことしてもという顔で針と糸とメスを取り出しながら美帆子が誠二の方を見る。
「一人のときは音楽かけながら練習だ。
 本当はストレッチャー揺らしたり魚焼きながらやりたいところだ。」
「気が散りそうですね。」
「腕の良い医者の共通点はどんな小さな異変も見逃さない集中力がポイントだ。
 朝田や進藤の集中力の原点は爆音の中でのオペの経験とみたね。」
「外山先生もオペ中動揺しなくなりましたよね。」
「誰かと喋りながらやると良いぞ。ほれ。」
五感を刺激する練習というのは新鮮で面白いものである。
美帆子は糸を受け取りながら、今度一男ともやってみようと思った。
12016:2008/10/13(月) 21:54:38 ID:b6cVywH8
「そういえば、俺の不在中何か面白いことはあったか?」
「藤川が刺されて第一外科の司馬先生とオペしました。」
「それで?」
美帆子は司馬の医師としての姿勢について誠二に尋ねる。
「QOLか、大事だな。」
「先生は名医ってどんな医者になりたいんですか?」
「ずっとそれを考えてたんだが、アフリカに行ってなんとなくわかった。
 今日救った患者の1人が医者にでもなって、
 人を救うようになれば結果的に明日の100万人を救うことになると考えるようになったぜ。
 だから外科だけなく救命も続けることにしたんだ。
 朝田の背中を追うのはもう止めだ。」
珍しく真面目な顔して誠二が答えた。
「その気持ちをいつまでも忘れないでください。じゃないと冴島が報われないですから。」
「どういう意味だ?」
「一緒に階段を上がろうと言ってくれたとき嬉しかったんですよ。
 でも女の時間には限りがあるんです。
 だから冴島はもう良いと言っていたけど知っておいて欲しかったんです。」
これは女医に限ったことではない。
女性には結婚・出産・育児などいくつのも関門がある。
「今の話を聞いて私もそんな医者になりたいと思いました。
 でもなれないかもしれません。いつかは結婚するだろうし子供だって欲しいですから」
珍しく弱音を吐く美帆子を心配そうに誠二が見つめている。
「失敗ばかりだし今もこんなに迷ってばかりだし……。将来も不安です。」
一人娘の美帆子はいつかこの病院を巣立ち、婿養子をとって実家の病院を継ぐのである。
今朝も母親から見合いの電話があった。
「実家帰ってから困らないように、自分の前で迷ったり恥をたくさんかいておけよ。」
「もう私を一人にしないでください。
 不在のときだって、小島先生ではなく先生に指導して欲しかったです。」
二人の視線が交差する。
「大丈夫だ。もうどこにも行く必要がないからな。」
「一人っ子だからよくわかんないですけど、お兄さんってこんな感じなんですか?
 そういえば、私昔兄か姉が欲しいと思ってました。」
「それは奇遇だな、俺は末っ子だったから下が欲しかったんだ。」
誠二がフッと笑ったので、美帆子もつられて笑ってしまった。
「明後日の大動脈解離のオペの助手もしっかりやれよ。」
「帰国してから休みなしで大丈夫ですか?」
そこへ見回りを終えた恵と楓が帰ってくる。
12116:2008/10/13(月) 21:55:47 ID:b6cVywH8
「あら練習?懐かしいわね。」
ソファーに腰を下ろした楓が無造作に置かれた箱の中身を見る。
「ピアスちょっと休憩するか。」
「はぁ〜い。」
美帆子に後片付けをさせつつ、誠二は先に向かいのソファーに腰掛ける。
「お茶どうぞ。」
恵が楓と誠二にお茶を持ってきた。
「レジデントの鏡だ!」
ワザと大袈裟に驚いたように誠二が横目で美帆子を見る。
「あら?藤川先生もいつも入れてくれるわよ?」
それを見た楓がクスっと笑う。
溜まりかねた美帆子は慌ててコーヒーを持ってきた。
「気が利かなくてすみませんでした。外山先生飲んでください。」
「いや、これまだボコボコ沸騰してるぜ?」
「せっかく入れたのに飲んでくれないんですか?白石のお茶は飲んだのに……」
美帆子が白衣からハンカチを取り出し泣きまねをすると、恵と楓は面白そうにからかい始めた。
「緋山先生大丈夫?ショックよね。」
「外山先生酷いです。」
「猫舌なんだよ。ピアス知ってんだろうが……。」

のどかなやりとりを終え、恵と美帆子は後片付けを始める。
「随分仲良くなったみたいね。」
「気のせいだよ。」
「ところでどこが悪いの?」
楓が声を潜めて誠二の顔を見る。
「何のこと?」
誠二は慌てて顔を逸らす。
「気のせいなら良いのよ。ただ内科に行くときは気をつけなさい。」
12216:2008/10/13(月) 21:56:28 ID:b6cVywH8
♪♪♪♪
電話をすばやく楓がとる。
「救急患者の受け入れをお願いします。」
「何人ですか?」
「二人です。」
「運んでください。」
患者はすぐに運ばれてくる。
「緋山こっち手伝え」
「わかりました。」
「第一、二肋骨骨折してます。」
美帆子は触診の結果を伝える。
「血ガス、血算・生化モニター! 」
「上縦隔拡大だ。CTは……」
誠二が辺りを見回す。
楓の患者も重傷なのか慌しい。

「緋山時間がない。ここで開胸する。」
「ここでですか?」
「患者は高齢だ。胸部大動脈損傷の可能性が高い以上今オペするしかない。」
ピピピピ
「サチュレーション下がってます。」
看護師達が誠二の顔を見る。
「まずい。破裂したか?」
「二人じゃ無理です。早く小島先生呼んで!」
美帆子が紗江子に指示を出す。
「挿管チューブもってこい。」
「外山先生?」
誠二の様子が何かおかしい。
そういえば汗の量が異常に多い。
「どうかしたんですか?」
「何でもないやるぞ。」
処置中誠二の表情が何度か歪んだ気がした。
誠二は終わると同時に膝を地面につく。
「大丈夫ですか?」
美帆子が心配そうに尋ねたが、誠二は答える事無く処置室を出て行ってしまった。
12316:2008/10/13(月) 21:57:38 ID:b6cVywH8
「薬はちゃんと飲んでたのか?」
「たまに忘れたこともあったが基本的には飲んでたぜ。」
誠二は千鳥足でなんとか内科の医局へとたどり着いていた。
「虫垂炎が悪化して腹膜炎になってる。もう薬では根本的は治療できない。」
脩二はレントゲンやCTを見せながら説明する。
「オペを受ける時間はないぜ。」
「放っておくと死ぬことくらいお前も分かってるだろ?」
「その時はその時だ。」
「命を救うべき医者が命を粗末にするな。
 お前は患者のためと言いながら自分に酔っているだけだ。
 自己満足に患者を巻き込むな。」
脩二の厳しい口調に思わず誠二がたじろいだ。
「オペするにしても、明後日のオペが終わってからだ。これは譲れない。」
「わかった。それまで何とか持たせるよう努力しよう。
 執刀医は誰に頼みたい?」
「朝田に頼むほどの症例でもないし、上級の奴にでもスパッときって貰いたい。」
「藤吉から聞いている。尊敬しているんだってな。
 噂に聞く限りでは患者が望むなら盲腸でも切るタイプだと思うぞ。」
「そうなんだよな。だがそれは気が引けるからスタッフ以上で手が空いてる奴でいいよ。」
誠二が希望を述べていると、講義資料を探しに資料室へ行っていた圭介が戻ってくる。
「顔色悪いぞ。」
「実は腹膜炎でな。」
誠二が圭介にレントゲンやCTを見せながら説明する。
「朝田は切るだろうだが……。」
「どうかしたかよ。怖い顔して……」
「お前は指導医だろう?」
「関係あるのか?」
誠二が首をかしげた。
「もし朝田が病気になって、執刀医にお前や伊集院以外なら誰でも良いと言ったらどうする?」
「怒り狂うな。」
「お前のしようとしていることは、そういうことだ。」
圭介が諭すように誠二を諌める。
「患者として選ぶか、指導医として選びか。それは外山先生が決めるべきだ。」
脩二も続けて諌めた。
「あんまり面倒も見れてないし、緋山に切らせるか。
 助手は第一外科の司馬。麻酔は小高に頼みたい。」
不思議そうに圭介が尋ねる。
「何故司馬先生なんだ?小高は知り合いだから分かるが……。」
「前にちょっと有ったらしくてな、緋山に名誉挽回のチャンスを与えてやることにした。
 アイツには誰とでも気さくに話せるようになって欲しいんだ。」
「明後日のオペが終わったらすぐに再検査だ。それまでこれでも飲んでおけ。気休めだがな。」
脩二は机の引き出しから錠剤を取り出す。
「緋山には今日の話は内緒だからな。」
薬を受け取った誠二は医局を後にした。
12416:2008/10/13(月) 22:34:51 ID:b6cVywH8
うわ、何でこんなところに?」
柱を背にして楓が白衣のポケットに右手を突っ込み、左手で携帯メールをしている。
「オペも無事終わったし、また見回りがてらフラフラしてたの。」
救命のICUと内科の医局は見回りがてらで回る距離にはない。
「尾けてたのか?」
「まさか〜。前に内科の医局で見たって話を聞いたから来てみたの。」
「どこから聞いてた?」
「執刀医がどうのこうのって辺りよ。」
ほとんど全部ではないか。
ちょっと眉をしかめる。
「指導医って難しいな。アンタは悩まないのか?」
誠二が歩きながら楓に尋ねる。
「いつも悩んでるわよ。進藤先生が教えてくれたように私も教えられてるかどうか。」
「今まで教えた中で印象に残った医者は?」
「兄弟で私が指導医した子達がいたわ。優等生でドライな兄と比べられることを嫌う弟君ね。」
「複雑だなそれって。」
我が事のように誠二が呟く。
「色々あって二人仲良く今も医師をやってるわ。」
「兄弟か。さしずめ俺にとって緋山はお転婆な妹ってところか。」
「私も腕白なお兄ちゃんが心配だから助手に入るわ。心細いでしょ?」
実は江太郎のオペを直接見たことがない誠二は苦笑いを浮かべる。
「前から思ってたんだが、アンタといい小高といい何でそんなに俺に関わろうとする?」
「迷惑かしら?」
楓が指を頬に当てて首を傾げる。
迷惑ではない。
むしろ管理職研修等は殆ど寝ていて、部下の扱い方などを聞いていない誠二としては大助かりである。
初めての部下はキャリア志向の強い女。
楓や七海のアドバイスが無ければ、果たして緋山とうまくやっていけるようになっていただろうか?
「そんなに緋山が心配ならいつ指導医やってもらっても……。」
「やってみたわよ。貴方の外遊中に。あれ緋山先生から聞いてない?」
そういえば、そんな話を聞いたような気がする。
「藤川と比べてどうでした?」
「出来るだけ比べまいと思って接したんだけどね……。」
救命どころか病院一の人格者と呼ばれ医師や看護師は勿論のこと患者にもファンが多い楓がさじを投げるとは、
いったい美帆子はどんな態度を取ったのだろうか?
誠二はこの先を聞くのが怖かった。
「途中で拗ねられちゃった。やっぱり人には相性ってあるから。
 案外、香坂先生や日比谷先生の方が相性いいかもね。あの先生達も我関せずだから。」
要は面倒見の良い楓が口うるさく感じてしまったようだ。
「あのじゃじゃ馬が……。」
「あ・外山先生?別に言うこと聞かないわけじゃないのよ?
 ただシックリこないみたいなのよ。」
「腕組してました?あれ本人は癖だって言うんですけどね。」
「そういえば気づいてるかなぁ?外山先生の前で腕組みしないように意識してるみたい。
 彼女なりに敬意の表れだと思うから認めてあげて。本人の前でそういうこと言っちゃ駄目よ。」
どこまでも大人な対応である。
昔、婚約者が病死してそれから特に出会いはないらしい。
どんな人間と結ばれるにしても幸せになって欲しい。
誠二は楓の笑顔を見ながらそんなことを考えていた。
「とにかくオペまで無駄な体力使っちゃ駄目よ。できるだけ寝てなさい。」
寝れるときには寝る。救命医の基本である。
誠二は素直に仮眠室へと足を運んだ。
12516:2008/10/13(月) 22:51:28 ID:b6cVywH8
チーム作りあんまり進んでません(汗)
もう少し色々な先生を絡ませるよう頑張ります。


>>118
あんまり出世欲なさそうなのと、他を目立たせたかったので(汗)
126名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 12:08:57 ID:oQHRDlmy
16のおかげですんなり世界観に馴染めました
127名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 12:42:27 ID:c1iT3dZp
藤吉先生のお嬢さんや小高先生の息子さんは登場させる予定はないのですか?
12816:2008/10/14(火) 22:58:53 ID:A9WvLU9Y
「いつも医局でお茶いれてるの?」
「当然よ。先輩だもの」
洗い物に飽きた美帆子は残りに恵に押し付けてソファーへと腰掛ける。
「アンタに任せるわ。人は適材適所に配置するべきだわ。」
「緋山先生に適した場所って例えば?」
談笑していると楓が医局へと戻ってきた。
「外山先生は?」
一緒だと思っていた楓が一人で帰ってきたので心配そうに尋ねる。
「仮眠室に行かせたわ。ところで香坂先生とはうまくいってるの?」
「よく面倒見てくれてます。そういえば、医大時代からの先輩後輩なんですよね?」
洗い物を終えた恵が美帆子の隣に座りながら尋ねた。
「どんな先輩だったんですか?」
「人気は高かったわよ。自分をオマエって呼んだ彼氏とはその日に別れたりしたみたい。」
「格好良いですねぇ。出来る女って感じで私の憧れです。」
どこが格好良いのか美帆子には理解できない。
「白石先生と香坂先生は私から見ると性格ま逆なんだけど憧れるの?」
「私が買ってきた雑誌の恋占いのコーナーとか
 一人になったときにこっそり見てるんですよ。可愛いですよねぇ。」
「確か昔一夜を過ごす相手と結ばれるって書いてあって、
 進藤先生かと思ったらICUの患者さんだったって話聞いたことあるわねぇ。」
たまきの意外な一面に美帆子は目を丸くしている。
「心臓外科には加藤先生と香坂先生のファンの派閥があるんですよ。」
「アンタ空気読めないから苦労しそうね。」
「うう〜ん、本人同士は仕事へのスタンスが似てるから仲良いのよ。
 ストイックって言うのかなぁ。
 よく二人の食事にも連れてってもらうし。お姉さんが一気に二人できた気分。」
「周りはそういうの勝手に想像するのよ。ちゃんと面倒見てるようで安心したわ。」
楓は安心したように夜食のリンゴを口に頬張る。
「でもお二人を見てると結婚出来ないような気がしてくる。
 あれだけの才色兼備なのに……性格は確かに最初はキツイですけど……」
恵が大きなため息をついた。
ため息の大きさが心配の大きさを感じさせる。
「加藤先生は知らないけど、香坂先生は仕事より好きな男が出来るまで結婚しないそうよ。」
ちなみに院内で一番有名なオシドリ夫婦といえば、第一外科の直江庸介と看護師の倫子夫婦である。
看護師の間では恋愛で困ったときには倫子に相談しろという言葉があるらしい。
「アンタ結婚したい人でも居るの?」
「いないよ。でもやっぱりそういうこと考えておきたいじゃん!」
「緋山先生と白石先生はどんな人が好みなの?」
女同士の他愛も無い話は、
その後病院で誰が一番良い男かという話にまで発展し、朝まで続いたのであった。
12916:2008/10/14(火) 22:59:45 ID:A9WvLU9Y
2日後
「オペ終〜了〜。」
誠二がカンシをカチッと置く。
「お疲れ様でした。」
助手の美帆子は見事なメスさばきに拍手を送った。
誠二は少し照れながら応える。
「近いうちにお前に執刀医をやらせてやる。」
「本当ですか?私で良いんですか?」
「患者の希望だ。症例は腹膜炎だからお前なら大丈夫だろう。」
腹膜炎だろうがなんだろうが、美帆子にとっては久しぶりの執刀医である。
「頑張ります!」
嬉しくてしょうがない様子である。
「俺は立ち会えないが近くで見てる。」
「またですか?」
「色々あってな。助手には司馬と小島が付いてくれる。」
「ただの腹膜炎なんですよね?」
上級スタッフが二人も助手に付くことに流石の美帆子も少し疑問を感じる。
「ああ……。」
「腹膜炎だって言って実は手の施しようが無い状態とか……」
「テレビドラマの見すぎだ。」
「実は特殊な血液型で輸血が出来ないとか。」
「そんなリスキーなオペさせてもらえると思うか?」
「じゃぁなんで?腹膜炎なんですよね?パッときって縫って終わりじゃないですか。」
「侮るな。病気に大きさは関係ない。」
昔、誠二もよく言われた言葉である。
「上級スタッフが二人も……。それに司馬先生って……。」
「患者の希望だ。名誉挽回の機会だと思え。」
「わかりました。」
まだ納得してはいないようだが、オペ室を出て行く。
誠二は美帆子に悟られずに場をしのぎホッとする。
「本当に大丈夫なの?司馬先生ってあんまり評判良くないわよ。」
そのやり取りを見ていた七海が誠二に尋ねる。
「昨日オペ見学したついでに挨拶もしてきた。仕事ならしょうがないって感じだったぜ。」
「腕の心配じゃないわよ。緋山先生に悪影響じゃないかって心配よ。」
「アンタ最近緋山の保護者みたいになってきたな。」
「三井先生からも彼女のこと頼まれてるのよ。」
「ふぅーん。母性本能くすぐるタイプか?」
「真面目な話。大丈夫なの?」
「司馬に助手をしてもらうのは、名誉挽回のためだけじゃない。」
直接の面識は無かったが、江太郎の冷静なオペぶりは以前より耳に入っていたのである。
「オペになればわかると思うぜ。じゃ、後のことはよろしく。」
13016:2008/10/14(火) 23:01:30 ID:A9WvLU9Y
「よ、ドクターピアス。」
そこには点滴に繋がれ横になっている誠二の姿があった。
「外山先生?」
「ああ、明日よろしくな。」
美帆子にはまだ事態が飲み込めないのか。キョロキョロしている。
「患者って外山先生なんですか?」
「そうだ。」
美帆子にはまだ信じられない。
昼間あれ程のオペをした誠二とCTから予測していた患者の様子とが結びつかないのである。
「さ…さてはドッキリですね?」
「現実から目を逸らさないで」
楓がポンと美帆子の肩を叩く。
「どうして私なんですか?」
「パッときって縫って終わりなんだろ?頼もしい限りだよ。」
どんな気持ちで自分の軽口を聞いていたのだろうか?
それを思うと胸が締め付けられる。
「ごめんなさい。ごめんなさい……。」
美帆子は俯いて謝罪の言葉を述べた。
「私のことヤブだって言ってたのにどうして?」
「暇だろ?どうせ」
美帆子は椅子に座ると誠二の手を握った。
「私じゃなくても他にいくらでもいるでしょう?何で私なんかを……」
「患者の前で泣くなって言ってるだろう。」
誠二が美帆子の目頭に指先を当てると指先が濡れる。
「だってだって……」
次第に目から落ちる涙が大粒になる。
「不思議だな。」
誠二が窓を見上げながら呟く。
「医者として見てた時は涙を見せるなんて患者に入りすぎてて心配だったが、
 実際患者になってみるとその涙が心強く見える。自分のために泣いてくれるなんてな。」
「外山先生……」
「大丈夫だ。自信を持てお前なら出来る。
 お前に必要なのは本当の自信だ。簡単なオペから積み上げていけ」
右手で美帆子の頭をソッと撫でる。
「でもでも……」
「オペ中困ったらみんなが助けてくれる。みんなお前が心配で集まった。」
「……ヒック…」
まだ泣き止む様子がない美帆子に少し呆れたように誠二が尋ねる。
「おい!いくらなんでも泣きすぎだろ。誰がお前に教えてると思ってんだ?ドクター泣き虫ピアス」
「わかってますよ。がんばりますよ。早く良くなってくださいね。」
「そう思うなら最速でオペ終わらせてくれ。そろそろお前中間発表会だろ?」
レジデントは半年に一回、自分の行動報告を医師全員に前で発表しなければならない。
一年を通じて発表し選ばれた者だけが、スタッフドクターへとなれるのである。
その後は年齢や実績に応じて、随時スタッフドクターD1ーD2というように職階が上がっていくのである。
「自分だけ取り残されてまた泣くのか?」
「もう泣きませんよ!!」
美帆子の声が思わず裏返る。
突然のことで驚いたが、誠二の期待に応えよう。
そう決心する美帆子であった。
13116:2008/10/14(火) 23:04:37 ID:A9WvLU9Y
白い影の直江先生が生きていて結婚した事にしてみました。
たまには恋話もいいよね。(安易?)

関係追加

第一外科 看護師
直江庸介ー志村倫子

職場ではケジメをつけるため、敢えて自分達は旧姓で呼び合っている夫婦



>>127
無いです。

132名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 07:26:32 ID:nPVrYMi1
白い影も確か天才外科医の物語だったよね。
私も恋愛相談のって欲しいわw
133名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 08:47:00 ID:hCy+VWwd
進藤先生と里見先生は実は双子で離婚した両親にそれぞれ引き取られて
別姓名乗ってるんじゃないの

とか言う噂が病院内に流れて財前先生と司馬先生が声そろえて
「「いや俺あいつがロン毛だったころからの付き合いだけど双子だなんて話聞いたことないぞナイナイそれはナイ」」
と否定したら「進藤センセと里見センセ昔ロン毛だったんだって!」という
噂(というか真実)が流れて2人が司馬センセと財前センセを病院中追い掛け回すという
スーパードクターたちのお茶目な日常があればいいと思います(作文
134名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 21:39:58 ID:r74JXtNb
16さんは今出てきているキャラのドラマは
全部みているんですか?


13516:2008/10/15(水) 22:55:08 ID:dKMEsURd
「汗拭いてもらえますか!」
美帆子が滝のように汗を流しながら再びメスを握る。
外科医は身内を切りたがらないというが、こういうことだったのか。
自分の体では無い様である。体が重くて思うように動けない。
てっきり腕に自信がな医者の逃げ台詞だと思っていたが、どうやらそういうわけではなかったようである。
いつの間にか美帆子の中で誠二がこんなにも大きな存在になっていたのである。
「どうした?」
江太郎が静かに語りかける。
「私には無理です。もし失敗したらと思うと怖くて……。」
美帆子は心細そうに呟いた。
「俺の親父が膵臓癌で死んだのはアイツが喋ったんだったな。
 そのとき、6歳だった俺は自分がドクターだったらと悔しがった。」
「今なら助けられるんですか?」
「わからない。ただ俺のような人間を増やさないために俺はこの病院に来た。」
「格好の良いこと言う割にはオフにこだわりますよね?」
「より多くの人間を治療するためにも、気力を充実させなければならない。」
「無茶苦茶ですね。」
美帆子はピタっと手を止めた。
「ドクターは神じゃない。もしドクターが万能なら親父は死なずに済んだ。
 俺は自分の力を発揮するために精一杯やりたいだけだ。」
「私も婚約者が死んだとき同じようなことを考えたわ。確かに医者は万能じゃない。
 お医者様て呼ばれるものじゃないわ。」
楓が横から口を挟む。
「ちょっと待ってください。外山先生はこれからも患者を救う人です。」
「見ず知らずの自分にいきなり命を預ける馬鹿か、それとも未来の名医を信じてるのか。
 いずれにしろ面白い奴だな。」
「助けたらまだまだ楽しめそうね。」
気がつけば美帆子の体から重さが消えていた。
冷静で無駄の無い江太郎のメスと楓の救命医らしい柔軟なフォローが背中を押す。
いつまでもこの時間が続けばいいのに……。
先程とは一変して手が軽快に動く。
誠二の自分は一人じゃないというのはこういう意味だったのか。
「勉強になりました。」
「遅すぎる。時間の掛けすぎだ。この程度なら1/3の時間で充分だ。」
「まぁまぁ。」
七海が江太郎をなだめる。
「疲れたの?」
横から楓が声をかけた。
「こんなに疲れるオペは初めてです。メスが重かったです。」
「今感じてるのが命の重さだ。ドクターはそれを軽んじても重圧に感じてもいけない。
 お先に失礼。また何かあれば呼んでくれ。」
「命の話は緋色先生にはまだ難しいわよ。目をさまさせて抜管してくるわね。」
江太郎と七海が一足先にオペ室を後にする。
「私もそろそろ行こうかな。緋山先生はどうするの?」
「病室へ行ってみます。元気な顔も見たいし。」
「主治医だもんね。じゃまた後でね。よろしく言っておいて」
そういうと楓は颯爽と白衣を身にまとう。
13616:2008/10/15(水) 22:55:43 ID:dKMEsURd
美帆子が遅れて病室に入ると、意識を覚醒させたところのようである。
「オペは完璧だったぞ。」
「アンタにも礼をいうよ。面倒かけたな。」
「医者として当然の仕事をしたまでだ。」
「また何か頼むことがあるかもな。」
「今度はお前のオペの患者の術前管理をさせてくれよ。」
「よろしく頼む。」
二人は固く握手を交わした。
「それじゃ俺は失礼するよ。」
すれ違い様に軽く頭を下げられ、美帆子もあわてて会釈する。
「オペお疲れ様でした。緋山先生。今度内科にも遊びに来てください。」
「は…はい!」
脩二が出て行き、後には誠二と美帆子が残される。
「ドクター泣き虫ピアス、今度はオペ中泣いたんだってな。」
「泣いてません。ギリギリ踏みとどまりました。」
「それになんだ?炎症がひどかったらブルったんだって?」
どんな風に自分のオペの様子を聞いたのだろうか。
「患者がモンスターなんでちょっとでもミスすると、
 医療過誤で訴えられかねないと心配しただけです。」
「にしても時間が掛かりすぎだぞ?」
誠二がチラッと時計を見る。
「す…すいません。」
「まぁ今日はこの辺にしておいてやる。」
「早く元気になってくださいね。私今日色々勉強しました。」
「今度のオペで見せてくれ。」
「はい。」
美帆子はコクンと頷く。
「俺の休みの間に発表内容まとめておけよ。」
「ちゃんと事前に見てくださいね。」
「…ああ……」
突然美帆子の白衣のポケットの携帯が静かな病室に響く。
「急患か?行け。救ってこい。俺もすぐに行く。」
誠二の声に反応するように美帆子が駆け出した。

伊集院・白石編に続く
13716:2008/10/15(水) 22:56:28 ID:dKMEsURd
舞台は遡ること6ヶ月前

登は白衣姿の見慣れない女医を廊下で見つけた。
「あの失礼ですけど、何かお探しですか?」
「あ……、私今日からここでお世話になる白石恵といいます。」
「今日から?もしかしてフライトドクターの?」
今朝から医局はその話題で持ちきりである。
積極的世界最先端医療の攻撃的展開
それは笙子の悲願であるから無理も無い話しである。
「この病院広いんで見学してたら迷ってしまって……。」
恵が恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「慣れないうちは一人で出歩かないほうが良いですよ。」
優しく恵を慰める。
「それでどこに行きたいんですか?良ければ案内しますよ。」
「10時に心臓外科の医局へ来るように指示を受けてます。」
「心臓外科?僕もちょうど医局に戻るところです。」
「あの……お名前は?」
「伊集院……伊集院登です。大変だ。あと10分しかない。歩きながら話しましょう。」
こっちですと登が恵を案内する。
「心臓外科にはどんな先生がいらっしゃるんですか?」
「チーフドクターの朝田先生、その下に上級スタッフの香坂先生 加藤先生 野口先生がいて、
 あと血管外科医の外山先生もたまに……その下にスタッフの僕が居ます。麻酔の荒瀬先生。」
「私はレジデントってことらしいんですけど?」
「ウチで言うレジデントっていうのは、専門を決めていない若い医師のことなんです。
 年に二回発表してそれで専門と認められればスタッフになれます。」
「発表ですか?」
「僕はバチスタ手術を執刀したことについて発表しました。」
登はちょっと得意げである。
「失礼ですけどおいくつなんですか?」
「29ですけど、白石先生は?」
「27です。年齢も近いですしこれから仲良くしてください。」
ペコリと恵が頭を下げる。
ちょっと恥ずかしそうに登も頭を下げた。
「わからないことがあったら、何でも聞いてください。」
登が得意げにドンと胸を叩いた。
13816:2008/10/15(水) 22:56:58 ID:dKMEsURd
「お前でも人に教えることができるとは知らなかったよ。ドクター真ん中分け」
登の白衣は影で黒くなる。
「と……外山先生…なんでこんな所へ?」
オドオドしながら尋ねる。
「お前を探してた。」
「え?僕ですか?」
「テメェ、鬼頭に呼び出されたこと言い触らしたろ?」
登は誠二に羽交い絞めにされる。
「どこに飛ばされるんですか?」
「生憎そんなんじゃなかったよ。ところでオマエ見慣れない顔だな」
タップする登を無視して恵の顔を見つめる。
「きょ……今日からお世話になります。白石恵です。」
「今日から?オマエ緋山ってのと友達か?」
「友達というか……。なんというか……」
恵は小声で呟いた。
「あああぁ?聞こえねぇんだよ。一度も見たこと無いのか、それとも知り合いかハッキリしやがれ。」
「と…外山先生落ち着いて、初対面なんですから。」
詰め寄る誠二を慌てて登が止める。
「その先生がどうかしたんですか?」
「朝田に指導医教えつけられたんだよ。」
「し…し……指導医??外山先生が??」
登は思わず絶句する。
「あ……あの〜。時間が……」
恵が恐る恐る時計を指す。
時計の針は10時30分をとうに過ぎていた。
「さっき小高に聞いたとおり真直ぐ向かったのか。
 俺は忙しいからまた今度な。ドクター真ん中わけ、ドクターカンガルー。」
誠二はそういうと嵐のように去っていった。
「僕達も急ぎましょう。」
二人の足が自然と早くなる。
13916:2008/10/15(水) 22:57:32 ID:dKMEsURd
「今の先生は?」
「血管外科の外山先生です。口は悪いけど腕は確かでこの病院でも5本の指に入ります。」
「個性的な先生ですね。カンガルーって言われちゃいました。」
「言われましたね。でもなんでカンガルーなんだろ?背が高いからですかね?」
登は首を傾げているが、恵には心あたりがある。
前の病院でもカンガルーと言われたことが一度だけあったのである。
「僕もよく可愛がって貰ってますから面倒見は良いですよ。
 なんて言いましたっけ。友達の先生…」
「緋山先生?」
「上手くやれますかねぇ?」
「やれると思います。似てるもの発想が……。」
「外山先生とは仲良いんですね。」
「若い医者少ないですから、腕の良い年配の医者は外から来てますし。」
「着きました。とりあえず入りましょう。」
遅刻した事もあり、コッソリと医局のドアをあけ静かに入室する。
誰も居ないようだとホッと息をしようとしたとき、奥の方で話し声がした。
14016:2008/10/15(水) 22:59:06 ID:dKMEsURd
奥では龍太郎と晶そして、賢雄とたまきが打ち合わせをしている。
「香坂ちゃんが指導医するんだってね。頑張ってね。」
「初めての部下だ。みんなフォローしてやってくれ」
「僕はてっきり加藤ちゃんかと思ったよ。」
「私はそんなのに構ってる時間はありませんわ。野口先生もご存知でしょ。
 心臓外科に失敗は許されません。」
「私だって無いわよ!」
奥では張り詰めた空気が漂っている。
「だいたい何で私なのよ?」
「良いじゃない。人が増えれば予算も増えるし。彼女の成功はそのまま君の成功になるんだよ。
 そうすれば、欲しがっていた実験器具も思いのままに買えるよ。」
賢雄が両手でピースしながら、伸ばした指を曲げる。
「フライトドクターでしょ?ERで引き取りなさいよ!」
「進藤が言うにはERはババを引いたようだ。
 それに香坂には救命医としての経験があり、進藤もそれを高く評価していた。」
「何よ?おだてようっての?アナタだってERの経験あるじゃない……」
たまきが面倒そうに天を仰ぐ。
しかし一生の名前が出てきたことで顔が緩んでいる。
「伊集院君どうしたの?はいってらっしゃい。」
「し・失礼します。あ・こちら今日から…」
慌てて恵が挨拶する。
「今日からお世話になります。白石恵です。若輩者ですのでこき使ってください。」
「あれあれ、加藤ちゃん、集合時間は何時だっけ?」
「10時です。野口先生。大物ですね。」
「アナタ初日から遅刻なんて大した度胸してるわね。先が思いやられるわ。」
「道に迷ってたんです。たまたま出会って走ってきたんです。」
登が慌てて説明する。
「確かに最初は迷うかもね。
 どうだろう香坂ちゃん・加藤ちゃん、今日は多めに見てあげたら?」
「以後気をつけなさい。10分前行動は新人の基本よ。」
晶はそういうと自分の席につきパソコンを操作し始める。
「白石……今日からお前の指導医をしてもらう事に成った香坂先生だ。」
今までずっと黙っていた龍太郎が初めて口を開く。
「よ…よろしくお願いします……。遅刻してすみませんでした。もう二度と遅刻しません。」
「当然よ。もう良いからこっち来なさい。」
たまきは恵を手招きする。
「ここがアナタの席、私は隣、左隣が野口先生。正面が伊集院君。伊集院君の右隣が朝田先生。」
慌てて恵はポケットからメモを取り出す。
「あ……あと、野口先生は院長以外の女性なら誰でもちゃんづけだから。特に気にしないこと。」
第一印象は遅刻のせいで最悪なものになってしまった。
14116:2008/10/15(水) 23:04:28 ID:dKMEsURd
いずれは外山・緋山編に戻る予定です。
なんで伊集院・白石編かはまぁちょっとパラレルしてみようかなって……
もう少し長くなりますがお付き合いください。

>>134
一応全部見ました。
でも口癖が違うとかこんなのキャラじゃないとか言わないで下さいね。

142名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 09:44:37 ID:lwEj5jVu
加藤ちゃんが出てきて嬉しいな。
救命2シリーズみたいな女らしいの期待してます。
143名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 16:08:47 ID:1VQXQPHz
16さん、連日お疲れ様です
野口がでてきてますね

医龍2の最後アメリカで大怪我した野口をたまたま渡米した片岡が保護した

行き場所の無くなった野口に救いの手を差し延べ現場の医師として雇ったみたいな解釈でいいでしょうか
14416:2008/10/16(木) 22:34:50 ID:Mq80NOTW
心臓外科の一通りの医師に挨拶が終えた恵にたまきが声を掛ける。
「白石先生ついてらっしゃい。」
休むまもなく連れ出される。
「香坂先生どこに行くんですか?」
「アナタ何を言ってるの……。挨拶回りは社会人の基本よ。
 総勢300人近い先生がいるけどキーマン以外覚えなくても良いから」
たまきはポケットに手を突っ込んでいる。
ハイヒールのコツコツという音が廊下に響く。
「ここが有名な第一外科。まぁ言わばウチの顔ね。」
明真メディカルシティーの第一外科といえば、
チーフの五郎は言うに及ばず、チーム霧島や江太郎や庸介など優秀な人材が多いことで世界的にも有名である。
たまきがそんな第一外科の医局へサッサと入っていくので慌ててついていく。
「あら霧島先生と財前先生だけ?少ないわね。」
「司馬先生ならタバコを買いに行ったよ。」
二人は将棋を指している。
「ウチに一人新しいドクターが来たので挨拶に来ました。」
「今日から心臓外科でお世話になります。白石恵です。よろしくお願いします。」
「心臓外科ってことは晶の下かい?」
「晶??」
「加藤先生よ。」
なんでも二人は恋人同士なのだとか……
一度は別れたのだが色々あってよりが戻ったんだらしい……。
よく職場恋愛は内密にと聞くが、この病院ではオープンなようである。
「私が指導医だそうです。」
他人事のようである。
「香坂先生の言うことをキチンと聞けば、立派な医者になれますよ。」
「が…が…頑張ります。」
テレビで何度も見たことがある霧島に温かい言葉に思わず体が震えた。
「いつでも気軽に助手に使ってやってください。」
たまきはそういうと丁寧にお辞儀した。
「今度ゆっくり遊びに来なさい。」
五郎はそういうと恵と握手する。
「晶は人見知りなんだ。慣れるまで辛抱してあげてくれ。」
続けて軍司ともガッチリ握手した。
「司馬先生によろしくお伝えください。いくわよ!」
「は…は…い!!」
気のせいだろうか?
たまきが怒っているような気がした。
14516:2008/10/16(木) 22:35:43 ID:Mq80NOTW
「白石先生?ちょっと良いかしら?」
「はい……」
恵がピタッと足を止めると、たまきが近づいてくる。
「す……すみま…」
思わず謝ろうとしたがたまきの手が恵の背中に触れた。
「挨拶するときはキチンと背筋を伸ばしなさい。
 例え二人しか居なくても胸を張って大きい声で挨拶するのよ。
 緊張するのは分かるけど最初が肝心よ。笑顔でハキハキとね。」
たまきは先程の恵の挨拶がお気に召さなかったようである。
「迷惑ばかり掛けてすみません。」
「またそうやってすぐ暗くなる!
 それからERの担当じゃない日はもっとオシャレすること。
 今の貴方じゃ職場の花になるくらいしか仕事はないでしょ?」
これは笑うところなのか。恵がとまどう。
「それも女医の仕事よ。医者が暗くてどうして患者が明るくなれるの?
 患者には私達しか会えない日だってあるんだから。」
なるほど、確かにそれは一理ある。
恵が頷きながらメモを取る。
「あのねぇ、これはメモ取らなくていいから」
たまきはようやく機嫌が直ったのか再び歩き始める。
「あら?」
向こうから、はるかを引き連れた紗江子が歩いてくるのが見える。
「お疲れ様です。さっき心臓外科の医局にもお邪魔したんですよ。」
「今日から赴任しました。冴島はるかと申します。」
紗江子に促されはるかが自己紹介をした。
「彼女はフライトナースなんですよ。ERでお世話になると思います。
 こちらはミスERでセクハラされたとき特に頼りになる香坂先生よ。」
たまきはコンプライアンス委員会の委員長を務めている。
「よろしくお願いします。」
はるかはペコリと頭を下げる。
「こちら救急認定看護師の山城さん。ワークステーションの裏番よ。」
「白石恵です。よろしくお願いします。」
「今度ゆっくり話しましょう。まだいくつか回らないといけないのよ。」
「大変ですね。科が多いってのも」
紗江子達と別れた二人は麻酔科の医局へと向かう
「さっきの冴島さんだっけ?医者ならあれくらい堂々と挨拶しなさい。」
いつもの2倍は元気よく挨拶した恵だったが、まだお気に召さないらしい。
麻酔科の途中にある消化器外科・整形外科・産婦人科・脳外科・内科・循環器内科での挨拶でも
たまきのチェックは厳しく入れられ注意がされた。
「次の麻酔科で最後だからちゃんとやってね。」
恵はスッカリ落ち込んでしまっている。
まさか挨拶一つでこんなに言われるとは思っていなかった。
麻酔科の医局に入ると、たまたま一男と美帆子が挨拶をしていた。
それを横から見守る楓と退屈そうに飴を舐めながら窓から外を見ている誠二の姿もある。
面倒くさがり屋の誠二を楓が無理やり同行させているのだろう。
14616:2008/10/16(木) 22:36:26 ID:Mq80NOTW
たまきにはすぐに察しがつく。
「あら楓のところにも新しい先生?」
「たまき先生のところもですか?」
二人は10年代の先輩後輩ということもあり、名前で呼び合う仲である。
「こちらが私の尊敬するたまき先生よ。女医組合の組合長よ。」
楓は続いて一男と美帆子を紹介した。
「アナタなんか伊集院君と雰囲気が似てるわね。頑張りなさい。」
確かに登と一男は恵も雰囲気は同じ気がしていた。
14716:2008/10/16(木) 22:38:29 ID:Mq80NOTW
「こちらERのマドンナこと小島先生、男性医師に楓の後輩だといえば食事には困らないはずよ。
 窓辺で不貞腐れてんのは、若き天才外科医で神の手を持つといわれる外山先生。
 確かあれでも東都大学の教授の息子で、本人も東都大卒のエリートお坊ちゃん。」
楓には朝一番に同期でERの設備説明を聞きに行ったときに顔は合わせていた。
たまきの紹介には何か棘があるような気がするのは気のせいだろうか?
「親なんか関係ないだろ。外科医は腕一本で勝負するもんだ。
 よう!誰かと思えばドクターカンガルーじゃないか。
 ドクターハイヒールの言うことなんか真に受けるなよ。」
「もう変なあだ名ついてるのね。どうしてこう天才って変わり者が多いのかしら。」
自分の親が大学教授だと聞いても、たまきが特に何の反応も示さなかった理由が段々分かってきた。
この病院には元教授で定年後再雇用され講師として働いている東貞蔵や鵜飼雅行や船尾徹だけでなく、
誠二のように親は教授で本人はスーパードクターというサラブレットもいるのである。
「教授」という言葉に慣れているのであろう。

今までの病院なら親が教授と言っただけで、羨ましがられたり何故か優遇されたりだった。

ここでなら今度こそ自分の足で地面を歩き、道を選ぶ医者になれるかもしれない。

(あんな風に親ではなく、まず自分を見てもらえるようになりたい。)

恵の熱い視線を感じたのか誠二が首を傾げる。
「ドクターピアスどういうこった?」
「ドクターピアス??」
たまきが呆れて眉をしかめる。
「アナタの初めての部下でしょ。ちゃんと呼んであげなさいよ。」
「こっちの方が呼びやすいんだよ。」
間に挟まれた美帆子は珍しく困っているようである。
「まぁいいや、次行くぞ。」
たまきとやり合うのは面倒なのか誠二がさっさと医局を出て行く。
「待ちなさいよ。たまき先生また今度。」
慌てて三人も出て行ってしまった。
「全く。アナタは付き合う人考えて行動しなさい。」
なんとなく美帆子が心配になったが、今はそれどころではない。
今朝から散々注意されてきた挨拶である。
「白石恵です!よろしくお願いします。」
「何張り切ってんだ。4…キロ」
門次は七海からげん骨を受け金髪の頭をさする。
「ごめんなさいね。荒瀬先生たまに寝言言うのよ。」
「本当天才ってなんでみんなこうなの?」
恵には何が起こったのかよくわからなかった。
ただ、たまきの様子から天才ならではの発言がストップされたことは感じ取れる。
「あの〜どうかしたんですか?」
「この先生体重を一発で見破れるのよ。」
「ごめんね、無意識に言っちゃうみたいなの。」
麻酔科医は患者の体重に応じて投薬量を調整するのが仕事である。
職業病のようなものだろうか?
それなら別に気にすること無いのに……
のんきな恵が門次の本当の凄さを知るのは、もう少し先のお話。
「そういうわけだから、何かあったらよろしく。」
「よろしくお願いいたします。」
たまきはドアを出ると、心臓外科の医局へと向かう。
「私はちょっと医局に戻るけど、アナタどうする?」
「どうするって??」
「何かやりたい事あるなら好きにしていいわよ。
 一応指導医だけどアナタだって今更研修医みたいなことしたくないでしょ?、
 何をやったかメールなり口頭で伝えてくれれば良いから」
たまきはそういうと颯爽と廊下を歩き出しだ。
挨拶がやはり駄目だったのだろうか?
スッカリ落ち込んだ恵は
コツンコツンとヒールが床をとらえる音をただ聞いていた。
14816:2008/10/16(木) 22:42:01 ID:Mq80NOTW
>>142
霧島と寄りを戻しました。
確かドラマでは恋人だったよね。

>>143
再雇用で心臓外科の講師をしていて、医局に席があります。
ちなみに助けられたことで医者としての心を取り戻したようです。
149名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 02:28:18 ID:PwB0RdYu
わーい。大好きな門次がでてきた!門次元気そうでヨカッタ。。
門次っていつか黒髪に戻るのかな?医龍無印でチームドラゴンに入る事が決定して以降、
大切な仲間も出来て、ラリるほど精神的に辛い日もなさそうなので、自分は近い将来、
黒髪に戻るんじゃないかなあと想像しています。でもやっぱり、過去に治験の為に
死なせてしまった患者さん達の十字架を一生背負って金髪の悪党は貫き続けるのかな?
16番さんはどんな想像をしているのか、今後の物語の展開とともに楽しみにしています。
150名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 12:10:08 ID:uwQdN0xL
外山モテまくりじゃないですかw

ドラマでもオペ後にみんなが噂してるシーンあったよな
151名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 22:04:01 ID:IIxfTRyS
私は大好きな香坂先生がいっぱい出てきたから嬉しいです。
15216:2008/10/17(金) 23:18:46 ID:eVQ7xPJ5
       翌日
たまきはブックカバーを確認しながら、宅急便の箱から本を取り出す。
出された本の1ページ目には「女性社員の取り説」と書かれている。
突然恵の指導医の話が振ってわいたので、若者の生態を知るためにネットショッピングで購入してみたのである。
(参考になると良いんだけど)
ペラペラとページをめくる。
@上司の思ったことは伝わらない。
A部下は悪いほうに取る。
B女性には腰掛とキャリア志向が居る。
C新入社員は一生最初の指導係を教科書にします。
D部下に語らせましょう。
要約するとこんな内容である。
所詮はHOW TO 本であった。
とりあえず最後まで読んでみるかとページをめくろうとすると、医局の前がザワザワと騒がしくなる。
慌てて引き出しに本をしまう。
するとそこへ晶と賢雄が入ってくる。
「あら香坂先生、今日も早いですね。」
「研究棟で夜を過ごしたのよ。」
「香坂ちゃんは今何の論文書いてるの?」
「遺伝子操作関係です。」
このテーマはたまきがずっと研究しているテーマである。
「ところで全然話は変わるのですが白石先生はどうですか?」
「自分に自信が無さそうよ。」
「加藤ちゃんも昔はオドオドしてたよね。」
賢雄が懐かしそうに呟いた。
「もうしばらく様子を見てみようと思います。」
「前の病院でもパッとしなかったみたいだけど、案外白石ちゃんも大器晩成かもしれないよ。」
そのとき医局のドアがガタンと開く。
「お・おはようございます。」
恵がヨロヨロのしながら入ってきた。
「白石先生アナタどうしたの?」
「香坂先生に言われたとおり、オシャレしようとは思ったんですけど
 私そういうの服あんまり持ってなくて、靴から始めてみたんですけど慣れてなくて……」
右にフラフラ左にフラフラと不安定である。
「患者さんにぶつからないように気をつけなさい。」
「香坂ちゃん〜、どんなアドバイスしたのかなぁ?」
よく見るとスカートから出た恵の細い足に痣が出来ている。
ココまで来るのに苦労したのだろう。
自分は軽い冗談のつもりだったが、実は素直ないい子なのかもしれない。
たまきは少し反省した。
15316:2008/10/17(金) 23:20:41 ID:eVQ7xPJ5
午後
恵はたまきのオペの助手を命じられていた。
無難にオペを終えるとたまきが恵に尋ねる。
「どう思ったのかしら?」
「冷静なオペだったと思います。」
「あらこの程度で感心するの?私は研究の方が得意なのよね。」
「でもERでも活躍されてるんですよね?お昼に伊集院先生に聞きました。
 能ある鷹は爪隠すって」
「活躍?大きな勘違いね。ERにいるのは成り行きよ。何も志願しているわけじゃないわ。
 貴方も気の毒ね。名医はたくさんいるのに、よりにもよって私が指導医なんて」
「オペだけで名医が決まるんでしょうか?」
「もちろん違うわよ。でも貴方オペが好きだからフライトドクターになったんじゃないの?」
「私は地元にドクターヘリのノウハウを持ち帰るように父に言われて……。」
恵が恥ずかしそうに俯く。
「良いんじゃない?自分を捨てて目的のためにひた走るも有りだと思うわ。」
「初めてそんなこと言われました。いつも親の言いなりとか七光って馬鹿にされてたので……」
たまきの思わぬ言葉に恵はちょっと嬉しそうである。
「まだ若いんだし色々な先生と話して勉強なさい。何か私に用があるときは研究棟に来なさい。」
たまきはいつもの様に研究棟へと向かおうとした。そのとき向こうから晶が走ってくる。
「あら加藤先生どうしたの?」
「患者さんの容態が急変したので緊急オペです。」
「ちょうど良いわ。加藤先生頼まれてくれないかしら?」
「何をですか?」
「白石先生に名医の腕を見せてあげてくれないかしら?」
晶は頷くと恵と共にオペ室へと入っていく。
「白石先生落ち着いてね。」
「はい。」
マスク越しに返事をする。
15416:2008/10/17(金) 23:21:19 ID:eVQ7xPJ5
「1…2…3・・・4・・・・5・・・・6・・・・7」
門次は先程と同じように患者に麻酔を掛けている。
(これって緊急オペよね。)
二人の落ち着きぶりが恵には理解が出来ない。
「あの始めなくて良いんでしょうか?」
「白石だったか?黙ってろ。」
晶は目を閉じると精神を集中している。
「メス!」
カッと目を開くと一気に開胸した。
「早い。それに無駄な出血がない。正確なんだわ。」
恵は始めてみる晶のオペに目を奪われている。
今までみた自称名医や腕自慢のオペが研修医のオペに見えるほどである。
たまきが名医と言っていたのも納得した。
自分にこれを見せたかったのだ。
「吸引!」
恵はハッとして吸引を開始する。
思わず見とれてしまっていた。
成りたいなぁこんな風に……。
気がつけばあとは縫合だけである。
「まだ2時間しか経ってないの。」
見とれるあまり時間の感覚が薄れる。
「白石先生最後の縫合やってみる?」
「は……はい!」
恵は緊張しながら縫合を始めた。
15516:2008/10/17(金) 23:22:15 ID:eVQ7xPJ5
「貴方の今考えていること当ててあげましょうか?」
晶は何を考えているのか突然恵に尋ねる。
「え?」
「自分もこんな風になりたいとか思ってるでしょ?」
「いけませんか?」
「そこもっと間隔つめなさい。無理よ貴方には。」
「どうしてですか?」
「貴方には論文のために患者を見捨てるようになって欲しくないのよ。」
「患者を見捨てる?」
「私は昔の恩人をバチスタ論文のために見捨てようとした冷徹な女」
バチスタ論文はチームドラゴン結成のきっかけとなった論文である。
「それと腕とどういう関係があるんですか?」
「難しい症例だけど成功率の高い患者を優先してオペしたのよ。」
患者を選り好みすることで、成功に成功を重ね自信を付けていったのだという。
「私も昔は論文を読んで幸せを感じていたわ。
 けど次第にそれが自分もそれを試してみたいに変わり、最後には患者のことは頭から消えていたわ。
 あったのは自分の論文のことだけ。
 あと一歩で完全に道を踏み外すところで朝田先生や伊集院君に引き止められたわ。」
朝まで論文を読むのが何よりの幸せだと自己紹介した恵に晶は昔の自分を重ねていたのである。
「加藤先生はもう論文を書かないんですか?」
「今は香坂先生と一緒に書いているわ。一蓮托生ってところね。」
「どういうことですか?」
「オペのように成功・失敗がすぐ分かるものと違って論文は下手したら、10年費やしても一瞬で価値がなくなってしまうこともある。
 だから彼女は自分が一緒に書くから、一人でも多くの患者を一緒に救おうと言ってくれた。
 敵の多い私の唯一の女医の友達なのよ。」
オペを見るまで恵は、たまきと晶は仲が悪いのかと思っていた。
お互いを認め合っているから必要以上に干渉しないだけなのである。
いつかは美帆子と自分もこんな関係になりたいものである。
彼女の方はどう思っているかわからないが、恵は美帆子の素直なところが好きである。

「仮に10年費やした論文が認められても、
 俺みたいに犠牲にしたものに潰されて、ラリっちまったら後は生き地獄だぜ。」
門次はバイタルを確認しながら小声で呟いた。
登から門次の過去を聞いていた恵は思わず眉をしかめる。
「それでもアナタは私みたいになりたいの?」
「……。でも論文だけの医者には……」
「確かにそんな医者は最低、それは正論よ。でも正論を言うには資格がいるの。腕だけでは駄目、頭や心も鍛えなければいけない。」
「成りたいです。正論を堂々といえるようなそんな医者に…」
同期の美帆子や、はるかにいつも「キレイごと」「優等生」とからかわれているのを見透かされたような気になる。
どうして本心なのにそんなことを言われるのだろうか?
恵にはよくわからなかった。
「聞こえないわねぇ。」
「成りたいです。」
「声が小さいなぁ。」
「おいおいいじめすぎだぞ。」
「わかったわよ。オペの手技は私が教えても良いわ。その代わり香坂先生に許可を貰ってきなさい。
 話はそれから……。じゃ頑張ってね。」
晶はそういうとゴム手袋を外す。
「いつか俺の腕とつり合う腕になってくれ。」
そんな日は本当に来るのだろうか?
恵は不安になりながらも、たまきのいる研究棟へと向かった。
15616:2008/10/17(金) 23:24:14 ID:eVQ7xPJ5
>>149
黒髪にはしないと思うなぁ。
全部ひっくるめて門次だと思う。
また彼には光を当てるからもう少し待っててね。

157名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 13:09:45 ID:YTDBPSZo
晶とたまきはどんな会話を普段してるんだろう?
158名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 16:34:08 ID:eIUTd0/x
ドクターカンガルーというあだ名が可愛い過ぎる件w
おかげで新垣結衣ちゃんがカンガルーにしか見えなくなりましたw
15916:2008/10/18(土) 23:21:39 ID:pCdg0eUQ
「そっちもオペですか?」
自分を呼ぶ声に思わず足を求める。
「私はお手伝いしただけですけど……。」
「僕もです。」
登は手帳で予定を確認している。
「白石先生はこの後のご予定は?」
「年下なんですから敬語は止めてください。」
「癖なんです。すみません。」
「私は香坂先生に業務報告をして今日は帰ります。」
「僕も今日はこれで終わりです。良かったら食事にでも行きませんか?」
「香坂先生とどのくらい話すかわかりませんよ?」
恵も満更では無さそうである。
「ブラブラしてるんで携帯に電話ください。」
登はサラサラと何かを書くと手帳から1ページ破り取り恵の手に渡す。
「伊集院先生、手馴れてますけどいつもこんな事してるんですか?」
ちょっと意外そうに恵が尋ねた。
「そ…そ…んなことしてませんよ。」
汗を拭きながら慌てて登が否定する。
「また後で電話しますね。」
 食事に誘われるなんてどのくらいぶりだろうか。
ずっと勉強を理由に断っていたら誘われなくなってしまっていた。
少なくとも前の病院で、一男や耕作と個人的に食事なんてことは一度も無かった。
これはたまきの言うとおり、オシャレの効果だろうか?
ハイヒールにはまだ慣れていないせいか脚は少し痛いがこれからも続けてみよう。
素敵な出会いが増えるかもしれない。
ちょっとウキウキしながら研究棟へと向かう足を早める。 
 研究棟のエレベーターにはIDカードをかざす箇所があった。
「香坂先生何階にいるのかしら?」
レジデントの恵のIDで入室権限のあるフロアはまだ少ない。
とりあえずランプが点灯している中での最上階のフロアから回ることにした。
「失礼しま〜す。」
白衣の医師が黙々と研究に勤しんでいる。
全員が白衣なので遠くからだと見分けがつかない。
(香坂先生どこいるんだろ……)
たまきの姿を探すが見当たらない。
「誰かお探しですか?」
ポンッと肩を叩かれる。
「うわ!」
驚いた恵が思わず声を上げる。
医師の視線が一斉に向けられる。
「すみません……。」
振り向くとそこには脩二が立っていた。
「あ…あの……」
「内科の里見です。誰かお探しかと」
「心臓外科の香坂先生を探してるんですけど見当たらなくて……。」
「香坂先生ならカフェフロアでカツサンド食べてましたよ。」
「あ・・・ありがとうございました。」
恵はペコリとお辞儀をするとエレベーターへ向かう。
研究棟では飲食物の持ち込める階が限られているのである。
16016:2008/10/18(土) 23:22:57 ID:pCdg0eUQ
「嫌あねぇ、雨が降ってきたわ。」
食堂のお気に入りの窓辺の席で、たまきが紅茶を飲みながらフッと一息つく。
「いた!香坂先生〜」
たまきの至福のひと時を切り裂く甲高い声
振り返らずとも不規則な靴音で声の主がわかる。
「大きい声ださないの。みっともないわ。」
「すみません。」
別に謝る程の事ではないのだが…。
「貴方もう今日は終わりでしょ?早く帰りなさい。」
「香坂先生にお話があって……。」
「あら?何かしら?」
恵は晶に手技を教えてもらいたいという希望を述べた。
「良いんじゃない?彼女は女医の見本のような存在よ。勉強させてもらいなさい。」
たまきは厄介ごとが片付いて幸運という様子である。
「何でそんなに嬉しそうなんですか?」
「気のせいね。」
「手技は加藤先生に習うんですけど、その他の事は香坂先生に教えて欲しいんです。」
それを聞いたたまきは、明らかに肩を落としている。
「その他って例えば?」
「私は親にも周囲にも甘やかされてきたので挨拶もまともに出来ません。
 美味しくお茶も入れれません。
 香坂先生には私を一人の女医として、女として指導して欲しいんです。」
言い終わると同時に最敬礼する。
「そんなの周りが見たら、お局みたいに思うでしょ!!絶っ対に嫌よ!!!」
恵の願いはアッサリ却下されてしまった。
「お局なんて誰も思いませんよ〜。」
「思うに決まってるでしょ!」
「先生がうんと言ってくれないと、加藤先生に手技教えてもらえないんですよ!」
「じゃぁ諦めなさい。残念だったわね。」
「そんなぁ…。」
予想外に難色を示される。
「加藤先生は名医だって言ってたじゃないですか!」
「名医よ。だからもったいぶらずに全部教えてもらいなさいよ。」
「でも加藤先生はERの経験ないからって……。」
「何度も言うけど私はあんな野蛮なところ成り行きで行ってるだけ。
 ここには世界でも有数の研究設備がある。それを使うためにやむを得ないのよ。
 指導医変えて貰えるように言ってあげましょうか?」
成り行きの一つにも加えて貰えそうにない。
「わかりました……。諦めます……。」
トボトボと恵が引き下がる。
「どうせいずれは地元に戻るんでしょ?
 あの人にもこの人にもって教わっている時間はないんじゃないの。」
「戻るんじゃなくて戻ってきてくれって言われたいと言いますか……。」
「ようは腰掛けでしょ?」
「そ……そんなつもりは……。」
「だったら形振り構わず頼んでみれば?」
「だから頼んでるじゃないですか!」
「白石先生には医者としてやっていく覚悟が感じられないのよ。」
16116:2008/10/18(土) 23:24:47 ID:pCdg0eUQ
恵がキョトンとしているとたまきは続ける。
「自分をみんなに見て欲しいって言ってたわよね?」
「だったら自分の殻を破って私に頼んでみなさいよ!」
たまきはクルリと椅子を回す。
「自分の殻?」
「プライドとか意地とかそんなものは、一人前になるまで今ココで捨てていきなさい。」
「一人前になったら正論言っても笑われなくなりますか?馬鹿にされなくなりますか?」
「頑張り次第じゃない?」
たまきは座ったまま腕組して話を聞いている。
ポーカーフェイスで顔から表情が読み取れない。
「ちょっと待っててください。」
恵は食堂の奥に引っ込むとすぐに戻ってくる。
「どうかしたのかしら?」
「これでも認めてもらえませんか?」
ポケットからハサミを取り出す。
「落ち着きなさい。冷静に……」
ハサミを持つ手を震わせながら首の辺りに当てる。
「馬鹿な真似は止めなさい。そんなことしても何もならないじゃない。
 ここのERに運び込まれるなんて冗談じゃないわよ。」
どうせなら家で一人のときにやって欲しいものである。
たまきが諭すが効果はない。
「殻を破るんで見ててください。」
チョキンチョキンと静かな食堂に音が響く。
床には髪の束がバサッと落ちた。

「白石先生?」
髪を切り終えた恵が床にへたり込む。
落ちた髪の束を拾い集める。
自慢の長い黒髪だった。
「泣くなら最初から止めときなさいよね。」
「私馬鹿だからこんなことしか思いつかなくて……。」
たまきは恵のまだ震える手からハサミを奪うと、グシャグシャになった髪の長さを整えていく。
「ショートカットも似合ってるわ。あとは美容院で美人にしてもらいなさい。」
「香坂先生……。正論を言える女医になりたいんです。大人の女にして貰えませんか?」
「わかったわ。加藤先生に迷惑かけるんじゃないわよ。」
たまきが恵の頭を撫でる。
「頑張ります。」
「涙は女の武器よ。でもそれを駆使するようになったら終わりね。」
涙に頼らない強い女医になろう。
「私がお局って言われたらちゃんと全力で否定しなさいよ。」
「お局って仕事が出来ない人のことだから、香坂先生は当てはまりません。
 若さへの嫉妬くらいです。」
「全くアナタでも嫌味言うのね。」
「いいえ、本心です。」
ちょっとだけ自分の殻を破れたような気がした恵であった。
16216:2008/10/18(土) 23:38:16 ID:pCdg0eUQ
大人の女って難しいなぁ。
女が髪を切るってもう一大イベントではないのかなぁ。

>>157
白石先生に聞いてくださいw

>>158
ニックネーム考えるの大変です。
163名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/19(日) 00:09:30 ID:Kl806kiG
>>162

>いつもお疲れ様です

> ニックネーム考えるの大ですよね 2ちゃんで書いてる事をいかしてここでニックネームのアイデアを募集する手もありますよ
164名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/19(日) 00:39:59 ID:e1MWEHs1
>>16さん乙です

>>162
ロングヘアの人が髪を切るのは、毎日のケア、また伸ばすのに
何年もかかるってことを考えると相当な決意だと思います
ドラマ見ながら白石の前髪が鬱陶しくて仕方なかったので
スッキリしましたw
165名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/19(日) 01:57:39 ID:Ywz3VTH3
どこの世界でもある、女性が女性を指導する時特有の、キーっていうドロドロした戦い、っ期待してまーすwww
166名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/19(日) 10:18:29 ID:g/Uc9hiH
パワハラとかって後から問題になったりしてw
小島先生と冴島ナースのニックネーム考えてみた
ドクターエンジェルと
無愛想ナース
微妙難しいなあ
16716:2008/10/19(日) 21:40:27 ID:Py8NSbgq
「し……白石先生その髪どうしたんですか?」
「遅くなってすみません。身支度に手間取ってしまいました。」
息を切らしながら恵が席に着く。
ちょっと驚きながらも登はウエイターを呼んだ。
「白石先生は何か好きな食べ物ありますか?」
「クリームシチューが好きなんですけど、今日は伊集院先生にお任せします。」
「可愛らしいですね。じゃ僕が適当に頼みますね。」
登はメニューを指差し注文を始める。
「飲み物はこの料理合いそうなモノを……」
「それでしたら赤が宜しいかと。」
「じゃそれでお願いします。」
注文を終えると登がメニューをパタンと閉じた。
「ショートカットも似合ってますよ。」
「さっきしてきたばっかりなんです。」
美容院で整えたとはいえ、久しぶりのショートカットなので少し不安だった。
「明日みんなも驚くと思いますよ。」
登は水をがぶ飲みしている。
「何か恥ずかしいです。」
恥ずかしそうに恵は顔を俯ける。
「今日はハイヒールにチャレンジされてましたよね。白石先生ってオシャレなんですね。」
「あ…あれは香坂先生に言われて……。」
恵がたまきに言われたことを登に説明する。
「確かに白石先生は職場の花って感じですよね。
 今日も医局で話題でしたよ。」
「ど…どんな風に言われました?」
聞くのが怖いような…聞いてみたいような…恵はモゴモゴと尋ねる。
「野口先生が加藤先生も昔はあんな感じだったとか
 初日は猫をかぶっていたのかとか」
「猫をかぶってたわけじゃなく、初日が本当の私で今日が猫をかぶってたというか。」
「僕は分かってますよ。」
登は口を滑らせたことを反省しているようである。
「そういえば、伊集院先生よくこのお店には来るんですか?」
「たまに来ますよ。病院からも近いので僕の隠れスポットです。」
「彼女と来るんですか?」
一人では入りにくいオシャレな雰囲気である。
「僕はフリーです。この店奥はスターバックスみたいにソファーがあるんですよ。」
「え?フリーなんですか?伊集院先生優しいからモテそうなのに……。」
慣れた風だったので少し意外そうに恵が首を傾げる。
16816:2008/10/19(日) 21:41:45 ID:Py8NSbgq
「し…白石先生はどうなんですか?」
「私は今まで勉強で忙しくて彼氏とか居たことないんです。」
恥ずかしそうに小声で呟く。
「ぼ……僕もです。」
『お待たせいたしました。ワインはこちらで』
「乾杯♪♪」
ワイングラスがチリーンと音を奏でた。
「ところで心臓外科の先生と私まだあまりお話したことないんですけど……。
 皆さん私のことどう思ってるんでしょうか?
 朝田先生には嫌われちゃったみたいです。」
ここだけの話だと念を押す。
ついでに他の科の医師のことも聴いてみる事にした。
「朝田先生が仏頂面なのはいつもなんで気にしなくて大丈夫ですよ。
 他に僕の知っている先生は、第一外科の霧島先生……
 ウチの野口先生 血管外科の外山先生、消火器外科の松平先生、
 内科の藤吉先生と麻酔科の荒瀬先生くらいですかね。」
「外山先生と荒瀬先生は今日お会いしました。
 カンガルーって言われちゃいました。」
「あの先生はなんというか……。」
登が申し訳無さそうに頭を下げる。
「何で伊集院先生が謝るんですか??」
「癖でつい。」
「伊集院先生おもしろ〜い。それでそれで」
「霧島先生と松平先生は名手です。堅実で安心して助手ができます。
 朝田先生は次元が一つ違うというか……。奇想天外というか。
 フライトドクターの皆さんはどうなんですか?」
「緋山先生は意地っ張り
 藤川君はお調子者。
 藍沢先生は無表情です。」
実はあまり親しくないのでタンタンと恵は説明する。
16916:2008/10/19(日) 21:43:47 ID:Py8NSbgq
「伊集院先生ももっと飲んでください。」
空いたグラスに恵がワインを注ぐ。
「あれ?もうない。すいませ〜ん。」
「え?もう?」
思わず登の目が点になる。
気がつけばボトルが空になっている。
『お客様いかがいたしましたか?』
「飲み物のメニュー下さい。」
『こちらになります。』
「日本酒好きなんですけど、越後さむらいって飲んだ事無いんですが頼んで見ませんか?」
飲酒すると性格が変わる人が居るというのは、聞いたことがあるが恵の場合どうなるのだろうか
「良いですよ。」
「じゃ一番大きい瓶でストレートでお願いします。」
『か…かしこまりました……。」
初めて聞く名前だったが
ウエイターの驚いたような顔が登には気がかりである。
「今度緋山先生と看護師の冴島さんも誘っていいですか?」
「是非誘ってください。」
思わず登の声が上ずる。
「嬉しそうですね。さては早くも目を付けた子がいるんですか?」
「い…いえ……。僕は白石先生とまた食事に来れるかと思うと……」
そこへ注文したボトルとグラスがテーブルに到着したので、グラスに注ぎ一気に飲み干す。
「美味しいですね。口当たり良くて。」
「伊集院先生、飲みっぷりいいですね。どうぞどうぞ」
「あ…ありがとうございます。白石先生もどうぞ。」
登もお礼に恵のグラスに注ぐ。
「伊集院先生いつもこうやって女性を口説いてるでしょう?」
「こんな風に病院の女性を誘ったのは初めてです。白石先生だから誘いました。」
アルコールのせいか、普段はシャイな二人が雄弁になる。
「そ…そんなストレートすぎます。返事は香坂先生と加藤先生に一人前って認めて貰ってからでいいですか?」
恵は顔を赤らめている。
「いつまででも待ちますけど、加藤先生には霧島先生がいるし、
 香坂先生だって進藤先生と良い雰囲気みたいだから
 内緒にしておけば大丈夫ですよ。」
「またまた上手に口説きますねぇ。」
「僕のことどう思います?」
今日の自分はどうしたのだろうか?登は自分がわからなくなっていた。
たまらず空になったグラスに酒を注ぐ。
17016:2008/10/19(日) 21:44:44 ID:Py8NSbgq
「病院で初めて話しかけて貰ったのときは嬉しかったです。迷ってて不安だったから」
「あのときはとても緊張しました。」
登が恥ずかしそうに汗を拭く。
「こ〜いうのが一目惚れって言うんでしょうねぇ。」
「私も伊集院先生のこと好きです。でも今は自信がないのでもう少し待ってもらえませんか?」
「自信がないって?」
「私不器用なんで仕事と恋愛を両立できる自信がなくて……。すみません。」
「すみません。変な話してしまって。」
「断ってるわけじゃないんです。これで仕事に集中できるって思ってます。
 だから他の人に浮気しないでくださいね!」
「け…結婚……。そうですね。僕も実家に帰るたびに親に彼女は?とか聞かれるの困ってました。」
ふと恵の顔を見ると顔が少し赤い。
視線に気がついたのか恵が首をかしげる。
「改めて見ると白石先生可愛いから不安になって。」
「心配ですか?それなら誓いの口付けだけ先にしちゃいます?」
鼻先まで顔を近づけ登に尋ねる。
「とりあえず口を消毒しましょう。」
「照れてるんですか?」
嬉しそうに恵がはしゃぐ。
「乾杯♪」
グラスに注いだ日本酒を一気に飲み干すと、今度は登の方から恵に顔を近づけた……。
17116:2008/10/19(日) 21:45:27 ID:Py8NSbgq
ピピピピピピ
「んん〜。」
恵が目覚まし時計のアラームで目を覚ます。
辺りを見回すと自分の部屋ではない。
気がつけば自分は服を着ていない全裸の状態である。
(ここドコ?)
目を閉じてもう一度開けてみた。
しかし当然風景は変わる事はなかった。
どうやらこれは現実の世界のようである。
(昨日あれからどうしたんだっけ?)
思い出そうとするも記憶がない。
登の唇が自分の唇に触れたところまでは覚えているのだが……。
確か恵の終電が無くなったのでホテルへ行こうという話になったのである。
「ううう。」
隣で同じく全裸で寝ていた登も目が覚めたようである。
「おはようございます。昨日はお疲れ様でした。あ……頭イタイ。」
登が頭を押さえているが、倍以上は飲んだはずの恵はケロンとしている。
「白石先生は平気なんですか?お酒強いんですね。」
「ええ…まぁ…。」
ところで二人とも何故裸なのか?と野暮なことを聞くのは止めにする。
昨日は酒のせいもあってか確かにそういう雰囲気だったし、自分と登は相思相愛だと思ったから……。
でもあまり覚えていないので、感触を確かめるために登にキスしようとしたそのとき……。
8時を過ぎた時計が目に入った。
「いけない!!遅刻だ!!伊集院先生、先に行ってますね。」
パッパと下着を身に着け、衣服を集めた。

「タクシー使っちゃおう。」
ホテルと病院の位置関係がわからないので、取り急ぎフロントでタクシーを呼んでもらう。
幸いなことに病院からはそんなに離れていないようであった。
病院に到着した恵は急いで更衣室に向かい白衣を身に着ける。
そこへ出勤してきたたまきが現れた。
「あらおはよう。アナタ昨日と同じ服じゃない?」
「そ…それはその……。」
「お盛んねぇ。予備の服とかないの?清潔感がないわその服は脱ぎなさい。」
「予備の服まだ持ってきてないんです。」
「だらしないわねぇ。これ着なさい。サイズが合えば良いんだけど。」
上品なニットとブラウスを恵に手渡す。
「ありがとうございます。」
恵はお礼を言いながら着替えを始める。
「Tシャツはこっちにしなさい。」
ロングスリーブのTシャツを渡す。
「え?」
「朝帰りも程ほどにしなさい。仕事に影響しなければ、とやかく言うつもりはないわ。
 キスマークついてるから気をつけなさい……」
たまきは少し呆れたようである。
着替えをすませた恵とたまきが医局へと向かった。
「おはようございます。」
ショートカットの恵に医局が少しざわめく。
「香坂先生から許可を貰ってきました。」
「加藤先生そういうことなんで、白石先生の指導よろしくお願いしますね。」
「わかりました。白石先生ショートカット似合うわね。」
「ありがとうございます。」
「今日のオペ本当なら伊集院君に助手やって貰おうと思ったんだけど、
 風邪で休みらしいからアナタやりなさい。」

恵が『香坂改』とか『加藤2号機』と言われるようになるのはもう少し先のお話。
それから毎日たまきの女医の心得と晶のOJT指導は続き、めまぐるしく月日は流れた。
17216:2008/10/19(日) 21:46:00 ID:Py8NSbgq
そんなある日
たまきが楓と晶と食事をするということで恵もくっついていた。
「白石先生もう病院には慣れた?」
楓が優しく尋ねる。
「はい。だいぶん慣れました。」
「もう6ヶ月だっけ?アナタがウチに来てから」
恵が指を折って数える。
「たまにはERにも顔見せてね。女手が少なくて寂しいわ。」
「香坂先生に言ってくださいよ。」
たまきは相変わらず研究棟と心臓外科の往復である。
「私にはあんな野蛮なとこ似合わないのよ。」
「ミス救命がよく言いますねぇ。加藤先生もいらしてくださいね!」
そういえば晶がERに行ったというのは、まだ聞いたことが無い。
本人曰く正確さを重んじる自分はERには不適格なんだとか
「ところで白石先生聞いても良い?」
楓が隣に座っている恵の顔を覗き込む。
「図書館で伊集院先生てキスしてたって本当?」
「だ……誰がそんなことを……」
恵が顔を真っ赤にして否定する。
「看護師さんから聞いたわよ。」
「で……どうなの?」
「あ……あれは彼がコンタクトを落として……それで探してたら……」
たまきと楓の声がきれいにハモった。
「彼??」
恵を顔を隠す。
「同期のみんなには内緒にしておいてください。」
「長すぎた春にならないようにね。人間いつどうなるかわかんないんだから」
すると晶が呟く。
「それにしても伊集院君って意外とやる子なのね。
 てっきり朝田みたいな修行僧にでもなるのかと思ってたわ。」
「たまき先生は進藤先生とどうなんですか?」
「私達はそういうんじゃないのよ。お生憎様。」
たまきが両手を挙げる。
聞けば最近まったく連絡が無いんだとか。
「白石先生がERに行けば、進藤先生と香坂先生が会う口実が出来るわ。」
「指導医を口実にすれば一緒にヘリにも乗ってくれるかもしれませんよ!役得ですね!」
ERへ行きたければ一人で行けというのには、そういう裏があったのかと恵は驚いていた。
「そういう楓こそ進藤先生とどうなのよ?」
「進藤先生とは年齢差もありますしお兄さんだと思ってます。」
「そういえば、藤川君は元気にやってますか?最近メールの返事もなくて」
「あら第一外科に入院したの知らなかったの?この前退院したわ。」
そういえば美帆子からそんなメールが来ていた気がする。
異性と二人っきりで会うのは、なんとなく気が引けて放ったらかしにしていた。
「あの子は楓の話を聞いてる限りだと母性本能は擽られるけど、愛情じゃないわね。」
楓もウンウンと頷く。
17316:2008/10/19(日) 22:10:47 ID:Py8NSbgq
たまきの言葉にはいちいち説得力がある。
「白石先生と伊集院君が飲み会を開けば、それなりに集まるんじゃないですか?」
「院内は別れたあとが大変じゃないですか。」
楓はちょっと顔を強張らせる。
「楓〜真面目な話よ?婚約者の事は残念だったわ。
 でもそろそろアナタも踏み出して良いんじゃない?
 少なくとも今まで喪に服したわけだし」
婚約者が東京大地震に巻き込まれた話は恵も知っている。
それから特に恋人も作らず頑張ってきたのである。
「でもまた仕事と迷うのは……」
「商社マンは転勤が多いのよ。結婚するなら地に足がついた弁護士か医者にしなさい。」
この光景を見ていた恵は小さい声で晶に尋ねる。
「香坂先生は将来院長みたいになるんでしょうか?」
「そういえば、面倒見の良い所とか性格がキツイところは似てるわよね。」
「そこの二人聞こえてるのよ!私はまだ結婚を諦めたわけではないの。勘違いしないで。
 こうなったのも楓のせいよ。ERにはめぼしいの居ないの?」
「外山先生くらいですかねぇ、でも看護師からも人気みたいですし。」
「第一外科はどうですか?軍司に紹介させれますけど。」
「あんまり絡みがなくて誰が誰だかすみません。」
楓がすまなさそうに頭を下げる。
「それなら外山にしなさい。看護師に負けるわけ無いでしょ。」
たまきは何だか楽しそうである。
「いつもこんな感じよ。」
晶は恵にヒソヒソと語りかける。
「伊集院君は弟みたいな存在だから悪い虫がつかないか心配だった。アナタなら安心ね。」
「か……加藤先生…。当分ず〜〜〜と先の話です。まだお互い勉強中ですし。」
恵は慌てたように否定する。
「そこの二人なに盛り上がってんのよ。」
たまきは恵と晶のグラスに酒を注ぐ、
こうして宴は2軒目・3軒目と朝まで続けられた。
17416:2008/10/19(日) 22:12:19 ID:Py8NSbgq
 数週間後
たまきと恵にとって久しぶりにERでの当直である。
「白石先生お久しぶりです。あまり見掛けないので、実家に帰られたのかと思ってました。」
以前ならはるかの棘のある一言一言で心折られそうになっていたが
たまきで慣れたのか特に気にならない。
「あれ藤川君は?」
今日の当番は江太郎と庸介と一男とたまきのはずであるが、男性陣の姿が見えない。
「藤川先生は司馬先生に連れて行かれました。」
なんでも談話室での麻雀のメンツが足りないらしい。
「最近悪い遊びを覚えたみたいです。」
はるかが心配そうに呟く。
江太郎・庸介・五郎を第一外科の三悪人と呼ぶ者もいるくらいである。
今日は楓も居ないことで一男もスッカリ気を抜いているのであろう。
「救急患者が来てもなかなか来てくれないことがあるんです。」
どうやら今夜はただの当直では済みそうにない。
後からたまきがそれを聞いてただで収まるはずがない。
恵は言い知れない胸騒ぎを感じた。
一方談話室ではもはや恒例行事とかした麻雀大会が行われていた。    
「ロン!」
「国士無双!」
「二人とも強いですねぇ。」
一男は不思議そうに呟く。
ここのところ、当直のたびにやっているのだが一向に腕が上がらない。
「医者は洞察力がないと駄目だからな。」
庸介はさも当然と言わんばかりに答える。
「患者はドクターに嘘をつくし、ドクターも患者に嘘をつく。ってな。」
江太郎の言葉に庸介も頷く。
「嘘が苦手なんですよね。」
「ERでは告知はしないのか?」
「なかなかそういう機会もなくて。」
嘘である。下半身麻痺の患者や植物状態の患者など告知はいくらでもある。
「逃げてるだけだろ?」
カチンと牌を江太郎が置いたそのとき。
談話室の電話が鳴り響きすぐに切れる。
一男が席を立とうとすると、「二人居れば大丈夫だろ」と庸介が止めた。
17516:2008/10/19(日) 22:13:36 ID:Py8NSbgq
        その頃
「バイタルは?」
「正常です。」
たまきとはるかが治療に当たっている。
「白石先生そっちは大丈夫?」
「ちょっと私一人では厳しいです。」
「こっちはもう大丈夫だから、アナタこっちをお願い。」
たまきと恵が入れ替わる。
そのとき処置室の電話が鳴り響く。
「重症患者2名だそうです。」
電話を受けたはるかが、たまきに指示を仰ぐ。
「白石先生。司馬先生たちすぐに呼んできなさい。」
恵は頷くと談話室へと走る。
「私もちょっと見てきます。」
恵を心配したのか、はるかも追いかける。
17616:2008/10/19(日) 22:14:23 ID:Py8NSbgq
「司馬先生!患者さんです。来て下さい」
恵が声を掛けるが麻雀を止める気配は無い。
それどころかタバコに火をつけ始めた。
はるかにとっては見慣れた光景である。
そこに一男が居ること以外はだが……。
「容態は?」
「2次の患者です。5分後に来ます。」
「10分後に行くよ。それまで二人で頑張ってくれ。」
庸介の信じられない言葉に恵は言葉を失っている。
「お前が行ったら三人打ちにならないだろ。」
「は…は…はぁ……」
一男が二人から目を逸らす。
そのとき談話室のドアが乱暴に開けられる。
たまきが眉間にしわを寄せたまま入ってくる。
サンダルの足音が麻雀卓の前で止まる。
「どうかしましたか?」
「……。」
恵が耳をふさぐ。
こういう顔をしているときのたまきは、だいたい大声で怒鳴るのだ。
経験上もう分かっていた。
しかし今日はどうも様子が違う。
「あと7分したら行きますよ。」
「7分ですか……。」
たまきは何を思ったか麻雀卓に手をやり、ガシャガシャと牌を混ぜる。
「ちょ…何やってんだよ!」
江太郎が抗議する。
それを無視してツカツカと恵の前に立ちはだかる。
「あ……あの香坂先生私は……」
バチンパチンという乾いた音が談話室に鳴り響き恵の両頬が赤く染まる。
「私はアナタにすぐに呼んで来いと指示したはずだけど?」
「すみません……。」
「遅いと思ってきてみればこういうこと!」
「すみませんでした。」
恵は俯きながら謝る。
はるかには何故恵が往復ビンタまでされなければならないかわからなかった……。
「それでは7分後に処置室でお待ちしております。
 治療が終わってから最初からやったほうが宜しいのでは?」
そういい残すとたまきは颯爽と談話室を後にする。
はるかと恵もイソイソと出て行く。
「やっぱり香坂先生は格好良いなぁ。冴島さんもそう思わない?」
「白石先生……頭は叩かれてませんよね?」
「私もあんな風にビシッとできるようになりたいなぁ。」
確かに牌をグシャグシャにするところはドキッとした。
でも成りたいとは思えないし、自分達がやっても騒ぎが大きくなるだけのような気がする。
「言われたことは即実行。出来なかったなぁ。」
恵がポケット手帳の女医心得を見ながらため息をついたとき患者が運び込まれた。

外山・藤川編に続く
17716:2008/10/19(日) 22:35:22 ID:Py8NSbgq
伊集院&白石先生暴走?
順調と思われていた藤川先生にまさかのダークサイドの誘惑が…ヒントは入院中?
そのとき外山先生は?緋山先生は?
次回予告にするとこんな感じかなぁ。
違ってても怒らないでね。

で最近話題のあだ名募集しましょうか。
小島先生
加藤先生
司馬先生
小高先生
看護師の皆さん。をとり急ぎ募集してみようかな
それ以外も勿論可
第一外科の三悪人みたいな通称も募集

ちなみに基本的に外山専用の呼び方です。
現在のあだ名一覧(決定済み)
緋山…ドクター泣き虫ピアス
白石…ドクターカンガルー
藤川…ドクターのび太
香坂…ドクターハイヒール
荒瀬…ドクター虎猫
伊集院…ドクター真ん中分け

>>163
さっそくやってみた。
考えてちょ

>>164
そう。医者っぽくない髪型を何とかしたかった。
気に入ってもらえてよかった。

>>165
期待に応えれずすみません。

>>166
無愛想ナースとドクターエンジェルかぁ。
候補には入れておくね。
178名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/20(月) 01:01:15 ID:2tZuioLS
香坂先生、たたくんだぁ〜。こわい。。白石先生、がんばれ〜!
ところで、小高先生のあだな「ドクターお色気チョコレート」はいかがでしょうか?
色っぽくて、いつもチョコレート食べてるから。
179名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/20(月) 09:47:21 ID:67RrSJsH
藤川先生どうなるんだろう?
いよいよブラックジャクの出番か?
180名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/20(月) 21:37:45 ID:5oMPUnOn
俺が個人的に好きな進藤先生は出てこないの?
18116:2008/10/20(月) 23:09:14 ID:S0CuJRAO
「病院食ってのはどうしてあんなにまずいんだろうなぁ?」
「食べてばっかりいないので、ちゃんと発表資料みてください。」
美帆子が誠二が入院している間に作成した発表資料を見せる。
「良いんじゃないか。完璧だよ。もう俺に教えることはないかもなぁ。」
「ちゃんと見てください。」
美帆子が紙を目の前に持っていく。
「ERで一人でも多く救って未来の100万人を救いたい。
 そのためには命の重さをいつまでも忘れないようにしたい。だろ?」
「どうですか?」
「どうですかって言われてもなぁ。どう批評したら良いんだ?」
誠二は両手を挙げると、顔を横に向ける。
「救命医の心構えとしてどうですか?」
「良いんじゃないか。」
気のない返事に美帆子が頬を膨らませる。
「お前はリスか。」
「それじゃぁ、去年の発表はどうでしたか?」
「知らん!寝てたからな。
 俺が最後に聞いた発表は2-3年前に伊集院が発表したのを聞いたのだな。」
「どんな発表だったんですか?」
「理想の医者とはとか話してたぞ。6ヶ月発表は中間だからそんなに気にしなくて良い筈だ。
 むしろ問題は1年後のスタッフになる試験だぜ。」
前々から美帆子が感じていた疑問を尋ねる。
「仮にですよ。万が一ですよ。試験にパスしなかったらどうなるんですか?」
「どうなると思う?」
誠二はニヤニヤ笑いながら尋ねた。
「またもう一年レジデントですか?」
「俺は晴れて自由の身になれる!」
「それってまさか……。」
「バイバイだな。毎年3/4はそれで居なくなってるはずだぜ。
 系列に飛ばされて戻ってくることは無いだろうな。
 達者でな。年賀状とか気を使わなくてもいいからな。」
そう言われてみれば、レジデント割合が高すぎると以前から思っていた。
例えば美帆子の代のレジデントだけでも、外科・内科を合わせると60人はいる。
そこにはそんなカラクリが隠されていたのである。
「まぁウチで駄目だったから、じゃあ他所へとのも簡単じゃないらしいからな。」
軽い冗談で聞いたつもりがとんでもない事を聞いてしまった。
美帆子の顔が青くなる。
「ちなみに雰囲気と質問に押しつぶされて、泣く女医も毎年出るらしいから
 ドクター泣き虫ピアスそれだけは勘弁してくれよ。
 後で俺が笑いものになるから。」
こんなことなら聞かなければ良かった。
美帆子は心底後悔する。
医局に誰か戻ってきた。
「レジデント準備出来てるんだろうなぁ。」
今日は美帆子と日比谷学がヘリ当番である。
「日比谷先生。ちゃんと名前で呼んでくれませんか?」
美帆子が不機嫌そうに尋ねると
「レジデントはレジデントだろう。一年間ならそれで充分だろう。」という冷たい声が返ってきた。
そんなわけで学のことが何となく苦手である。
腕はあるのだが出世欲が無いというか、やる気が無いというか。機械的というか淡白な医師なのである。
18216:2008/10/20(月) 23:10:05 ID:S0CuJRAO
美帆子と恵は夜食を売店で帰って医局へと戻る。
今日は誠二と美帆子と庸介と江太郎それに学が当直についている。
誠二達はいつものように談話室に麻雀をしに行ってしまった。
談話室で早番だった一男を待たせているんだとか。
ガラーンとなった医局には紅茶をズズっとすすりながらソファーで寝転がって本を読む学と
資料作成に余念の無い美帆子と恵のキーボードをパチパチと叩く音がするだけである。
「発表の準備どのくらい出来た?」
「アンタはどうなのよ?」
美帆子がディスプレイを覗き込む。
「ちょっと緋山先生!自分のも見せてよ。」
正直見せるほどの内容ではない美帆子は慌ててノートパソコンを閉じる。
「電池切れちゃった。暇だから見せて。」
「ずるいなぁ。」
そういうと、ノートパソコンを二人の真ん中へ移動させた。
「強い信念を持った出来る女医になって正論を堂々と言えるようになるんだ。」
「アンタ正論好きだもんね。」
美帆子が鼻で笑う。
「今は笑われてもしょうがないもん。」
恵は特に気にせずという様子である。
「冗談よ。具体的で良いんじゃない?」
「本当?香坂先生も加藤先生も相談に乗ってくれなくて不安なんだよね。」
「意外ねぁ、あの二人も乗ってくれないの?」
「うん、これは私が自分で答えを見つけ出すもので正解なんてないから当日まで口は出さないって……。
 でも変な発表して二人に恥をかかせたら、後でどうなっても知らないって言われてるの。」
港北医科大学病院の医局育ちのたまきは、
明真で一番上下関係や仁義に厳しく礼儀礼節を重んじることで有名であり、後輩の女医からは姉御とか姉さんと呼ばれる程である。
下手な発表をすると本当にどうなるかわからない所がある。
「アンタも苦労してんのねぇ。」
「ううん苦労とは違うよ。私もカリスマ性というか存在感あるようになりたいの。
 お二人に指導医になって貰って本当に良かった。」
はるかに聞いた話では相当厳しくされているようだという話だったが、どうやら勘違いだったようである。
本人が満足しているようだしそれに越したことは無い。
恵とカリスマ性というのがイマイチ結びつかないが……。
「緋……明真救命救急センターです。」
今電話が鳴ったかと首を傾げる。
「状態を教えてください。」
「一次の患者二名受け入れお願いします。」
「わかりました。運んでください。」
恵は静かに電話を受話器に置く。
「電話はワンコールで全部取れ。って言われてるの。」
それも女医の心得なのだろうか?
「外山先生呼んでくるわ。」
「おいおい、レジデント!外山先生に甘えすぎだろ。一次の患者くらい二人で何とかしろよ。」
「わかりましたよ。いこう白石!」
学の発言はカチンと来たが、確かに一次の患者くらいは自分と恵でも充分対応出来る気がした。
18316:2008/10/20(月) 23:10:53 ID:S0CuJRAO
「わかりますか?ここ病院ですよ。」
倫子とはるかが患者に話しかけている。
「どうですか?」
「意識レベル2ですが酔っているみたいでどこを怪我したのかわかりません。」
「そっちは?」
聴診器を耳に当てている恵の方を見る。
「こっちは意識レベル2だけど、酔ってるしどこか出血してる。」
二人ともかなり酔っ払っているようである。
とても女二人で何とかなりそうもない。
そこへもう一人患者が運び込まれる。
「こっちは一人でなんとかなるから、そっちに集中していいぞ。」
学は的確に看護師に指示を出す。
唯一期待できる男手が無くなってしまった。
「白石!他の男の先生呼びにいこう!」
恵も同じ意識なのかすぐに走り出す。
談話室では麻雀大会が行われている。
その横では門次がアイマスクをして眠っていた。

「一次の患者くらい診れるだろ?」
「それロンです。」
二人を無視するように麻雀は続けられている。
「もう二人患者さんです。誰か来て下さい。」
はるかが慌てたように呼びに来た。
「容態は?」
庸介が無愛想に尋ねる。
「二次と三次ですけど?」
「時間は?」
「4分後です。」
「じゃぁ10分後に行くよ。」
「それまでそっちでやっといてよ。」
「俺は今日オペが5件も続いててね。」
江太郎も面倒そうに答えた。
「私だってヘリ当番でした。」
「ヘリなんか実際飛んでる時間の方が長いだろ?
 15時間も立ちっ放しとかないだろ?」
「そりゃそうだ。ドクターピアスお前の負けだな。」
誠二も手伝う様子はない。
そのとき恵はツカツカと歩くと、恐る恐る卓上の牌に手を当てる。
しかし牌はピクリとも動かない。
先日のたまきのときと何か違う。
「ああ…買い換えたんだ。マグネット機能付きに……。」
一男が得意気に笑いながら恵の顔を見る。
「やり直しには時間が掛かるんだよ。わかったらさっさと治療にもどれ」
「10分後には行くから」
江太郎や庸介の言葉にショックを受けたのか恵は顔を俯けてしまった。
「また香坂先生でも呼ぶかい?」
庸介の耳をふさぎたくなるような野次が飛ぶ。
恵は顔を俯けたまま悔しそうに白衣の裾をギュッと握り締めている。
18416:2008/10/20(月) 23:11:32 ID:S0CuJRAO
「俺は今日はオフだから行かないよ。」
一男が冷たく言い放ったその瞬間、恵の背中を見ていた美帆子の中で何かがブチンと切れる。
「お…選手交代か?」
誠二は冷やかすように美帆子に尋ねる。
「いい加減にしてください!白石困らせて楽しいですか?」
そういうと麻雀卓の下に潜り込み、一気に机をひっくり返す。
床に散らばる牌。
突然の思いもしない事に言葉を失う一同……
門次も大きな音で目を覚ます。
「私に感謝させてみなさいよ!白石に自慢させてよ!先生達が指導医だって胸を晴らせてよ!
 発表だって恥かかせないように思わせてよ!」
目を真っ赤にして江太郎と誠二を睨みつける。
「わかったよ。行けばいいんだろ?泣くなよ。なぁ」
「俺は指導医のなった覚えはないぞ。勝手についてくるのは自由だと言ったが……」
誠二があやす様に美帆子の白衣のほこりを払う。
「冴島さん!今の音なんなの?早く持ち場に戻って」
「は……はぁ……」
急な出来事に頭が付いていかないようである。
全自動麻雀卓をひっくり返す光景などそうそうある光景ではない。
騒ぎを聞きつけた倫子が談話室に入ってくる。
「何があったの?」
「直江先生達が白石先生をからかって、それで緋山先生が怒っちゃってそれで……」
「俺かよ!」
「直江先生?また若い女医さんからかってたんですか?」
倫子は庸介の耳を引っ張ると無理やり診療室へと連れて行った。
「俺達も行くか。」
「最初から素直にそうしてくれれば良かったんです。」
誠二と江太郎はヤレヤレといった様子である。
「行こう。」
美帆子はポンポンと恵の肩を叩く。
「強くなるって誓って髪まで切ったのに……。私は結局駄目なの?香坂先生の名前まで出されてるのに何も言い返せなかった!!」
地面に恵の涙がこぼれる。
「そんな事ないって…。アンタは最初に行動した。それって勇気が居ることよ。」
「そ……そうですよ。」
はるかも慌てて声をかける。
「自信なくしちゃうよ。」
恵は目をこすりながらポツリと呟いた。

「55kgお前は行かなくていいのか?」
それを部屋の隅で見ていた門次がアイマスクをずらしながら一男に尋ねる。
「俺は今日オフなんですよ。メロドラマ始まりそうなんでそろそろ帰ります。」
「お疲れ。もう一眠りするわ。危ない患者来たら誰か起こすだろう。」
「風邪引くか首痛めますよ。そんな寝方してると。」
一男はそういうと席を立ち、談話室を出ようとする。
「藤川先生どうしちゃったんですか?」
「俺は今日は早番なんだよ。暇だから付き合ってただけ。」
「藤川先生変わりました!前なら一目散に行ってたのに!」
はるかが一男の肩をグラグラ揺らす。
「離せよ!!帰るって言ってだろ!!」
一男ははるかを突き飛ばすと走り去ってしまう。
「藤川先生!!」
はるかの呼び声は空しく響くだけだった。
18516:2008/10/20(月) 23:18:47 ID:S0CuJRAO
藤川君どうしちゃったん?

全自動麻雀卓って70Kg近くするんですよね。
怒らせるの止めようね。

あだ名募集
小島先生
加藤先生
司馬先生
鬼頭先生

ちなみに基本的に外山専用の呼び方です。
現在のあだ名一覧(決定済み)
緋山…ドクター泣き虫ピアス
白石…ドクターカンガルー
藤川…ドクターのび太
香坂…ドクターハイヒール
荒瀬…ドクター虎猫
伊集院…ドクター真ん中分け
小高…ドクターチョコレート

>>178
ドクターチョコレートにしようか。語呂がそっちの方が呼びやすい
というわけで追加しました。
また是非考えてください。

>>179
どうしちゃったんでしょ?

>>180
そろそろ彼は出てくるよ。
一応ERの責任者ですから。
186名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 01:03:55 ID:FCSXYr9U
178です。
「ドクターチョコレート」了解でーす。考えたあだ名が採用されてうれしいです!
藤川先生の心境の変化、心配です。
187名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 12:10:37 ID:444wPTTa
香坂親分は抗議しないのかな
医者も体育会系なんだねぇ
188名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 21:35:08 ID:ME/tyQ2N
下の名前だと誰だかわからないです。
18916:2008/10/21(火) 23:45:07 ID:8ky0kT5h
数日後
「オペ終了。」
美帆子と一男は救急患者の緊急オペを二人で行った。
鮮やかなクーパー捌きを見た一男の顔が曇る。
「二人でオペなんてどのくらい振りかしら?」
ERの人数が少なかったこともあり、二人も戦力として腕をふるっていた前の病院を美帆子が懐かしがる。
「……」
呆然としている一男…
「藤川?」
ハッとした一男は不満そうにオペ室を出て行ってしまう。
慌てて美帆子が追いかける。
「どうしちゃったのよ?アンタおかしいわよ。」
「うるさいなぁ。」
「入院中何かあったの?」
「お前に何の関係があるんだよ!!」
珍しく一男が声を荒げる。
美帆子が思わずたじろぐのを見ると、クルっと背を向けて再び歩き出してしまった。
「たく?どうしたのかしら?」
楓に聞いてもみたのだがサッパリ要領えなかった。
「♪…♪…」
頭を掻きながら携帯を見ると、待ち受け画面には『外山』の文字が……。
「緋山です。」
「次お前の番だからな。」
忘れていた今日は年3回ある上司面談の日である。
「あ」から順番に一生と最近の近況などを話すのである。

「失礼します。」
「どうぞ」
会議室のドアをコンコンとノックすると、一生の声が中からした。
「次は緋山と……。なぁタバコ吸って良いか?」
一生はヘビースモーカーなので、一日会議室というのが辛いようである。
「良いですよ。」
「悪いな!」
そういうと、カチッとライターでタバコに火をつける。
「フウー。やっと一息つけた……」
タバコの匂いが美帆子の鼻をくすぐる。
19016:2008/10/21(火) 23:46:13 ID:8ky0kT5h
「でどうなんだ、最近?確か前回の面談では…」
一生はPCから前回の面談記録を呼び出して美帆子に見せる。
「自分はこの病院に不要なんじゃないか。指導医が何も話してくれない。ってことだったな。」
そういえば、一番最悪のときに前回面談があったのである。
そのときは溜まっていたものを一気に吐き出してしまった。
「今はどうだ?」
「もう大丈夫です。外山先生にも慣れました。」
「今後の仕事の希望はあるか?」
「一回でも多く外山先生や他の先生とヘリに乗って色々盗みたいです。」
「上司として外山をどう思う?」
ああ…前回もこの質問はあったなぁ。と美帆子は思い出してくる。
(確かボロクソに言ったんだよね。)
あの頃はまだ良く理解できていなかった。
「尊敬してます。ツンってしてるけどよく面倒見てもくれます。」
「そうか、変われば変わるもんだな。」
「はい。今は心の底から尊敬してます。」
「外山も緋山に期待していると言っていたぞ。」
「本当ですか?」
誠二は相変わらず美帆子を直接褒めないので少し嬉しくなった。
「ああ本当だ。みんな期待してるから頑張ってくれ。」
「はい!!!」
美帆子が席を立つ。
「次藤川呼んどいてくれるか?」
「わかりました。」
「進藤先生からみて最近藤川はどうですか?」
率直に尋ねてみる。
「小島からも聞いてるよ。反抗期なんだって?」
「反抗期って言うのかはわかりませんけど……なんか変なんですよね。」
「談話室では麻雀禁止になったし、もう大丈夫だと思うぞ。」
先日の事件で、たまきと晶が笙子に抗議し談話室から麻雀卓は撤去されたのである。
もし自分が同じ目にあったら、誠二は抗議してくれたのだろうか?
それを考えると恵が少し羨ましい。
「だと良いんですけど……。」
最近時折見せる悲しそうな目…
「心配か?」
「そ……そんなんじゃないです。ただ付き合い長いし…。それじゃ失礼します。」
美帆子は一男にいつも笑っていて欲しいだけであった。
「あ……藤川?次アンタの番よ!」
会議室を出ると携帯をダイヤルする。
「わかった……」
風の音と低い声が聞こえる。
「今ど……むっかつく!」
美帆子がまだ話そうとしていたが電話はブツっと切られてしまった。
19116:2008/10/21(火) 23:47:12 ID:8ky0kT5h
「最近どうだ?」
「特に普通です。」
一男は無表情に答える。
「今後の希望は何かあるか?」
一瞬、一男の顔が曇ったのを一生は見逃さない。
「特に無いです。」
「何も無いってことは無いだろ?」
「ERに居て良いものか迷ってます。」
一男が視線を逸らそうとする。
「小島と何かあったのか?」
一生はそれを許さない。
「小島先生はよく教えてくれました。
 そして分かったんです。俺は小島先生とは違う……。」
「誰もお前が小島になることなんて望んではいないぞ。」
「そういう意味じゃありません。失礼します。」
一男は話を一方的に打ち切ると部屋を出て行ってしまった。
ポリポリと頭をかく一生。
「年寄りを心配させるのが若い奴の役目なのかねぇ。」
ようやく美帆子が落ち着いたと思ったら、今度は一男がこれである。
一生の悩みは当分つきそうに無い。

「あ……藤川君……。」
一男が会議室を出ると、向かいの第二会議室から恵が出てきた。
何も言わず通り過ぎようとする。
「ちょっと待って。」
すると案の定、恵に呼び止められる。
「ごめんなさい。お見舞い行けなくて。怒ってるよね。」
恵はペコリと頭を下げる。
「別に俺なんかに構うことはないんだよ。」
「ご機嫌斜めだね。何かあったの?」
「うるさいんだよ!」
先程と同じように思わず声を荒げてしまう。
キョトンとする恵…
「じゃあな。」
八つ当たりしてしまった。
こういうときは屋上に限る。
一男は気晴らしに屋上へと向かった。
(雲は良いなぁ、自由自在で……)
19216:2008/10/21(火) 23:47:53 ID:8ky0kT5h
金網越しに遠く離れた地面を見る。
「馬鹿な真似は止めときな。ボウズ。」
自分を呼ぶ声に反応して顔を向けると、そこには背の高い医師がペットボトルを持って立っている。
「名前も知らない仲だ。まぁ話してみろや。俺は消化器外科の松平幸太郎ってもんだ。」
どこかで聞いたような気がするが思い出せない…。
「ERの藤川です。」
二人でベンチに腰掛ける。
「俺はもともと落ちこぼれでした。前の病院でもなかなかヘリに乗れませんでしたし、
 指導医の先生にも他の病院探すように言われたほどです。」
「そうか…。クイ」
「この病院にきて新しい環境になって頑張りました。
 幸い指導医の先生もよくしてくれて、同じ部門に配属になった同期がまごついてた間に
 差を詰める事ができました。」
「良かったじゃねぇか。」
幸太郎は再びペットボトルに口を当てている。
「最初は良かったんです。でも同期が慣れたらあっという間に抜き返されて結局元通りです。
 元通りどころか前よりずっと差をつけられてしまいました。
 才能ってやっぱりあるんですかねぇ。
 頑張るのが馬鹿らしくなりました。」
一男は自嘲気味に話す。
「才能かぁ、俺も昔それに憧れていたことがあったよ。」
「俺はこんな世界最高の病院に相応しいドクターにはなれない。」
「確かにこの病院は名医揃いだ。だがこれから、食道がんと肝臓移植のオペがある。
 辞めるのはそれを見学してからにしてみろ。」
幸太郎はペットボトルの中を飲み干す。
「今更見て何になるんですか?俺は……。」
「世の中の99%は凡人だ。凡人には凡人の戦い方がある。
 それを見せてやろう。じゃぁ後でな。」
幸太郎が白衣を翻して颯爽と屋上を後にする。
「なんだよ?何が見れるんだよ?」
仕方なく一男は見学室へと向かう。

見学室は思いのほか見学者は少なかった。
「お前こんなところで何してんだ?」
同期の耕作が話しかけてくる。
「松平って医者に見に来いって言われたんだよ!お前こそ何してるんだ?」
「指導医のオペを見学するのが、そんなに不思議か?」
耕作が一男をジーっと見る。
「指導医?」
どこかで聞いた名前だと思ったのはそういうわけだったのである。
「お前こそERは良いのか?」
「……別に見学は自由だろ……。」
一男は不機嫌そうに答える。
「助手には入らないのか?」
「今日のオペに俺は要らない。チーム霧島のオペだ。聞いたことくらいあるだろ?」
生体肝移植などの移植を得意とする外科チームである。
「またスーパードクターの話かよ。もうウンザリなんだよ!」
一男が吐き捨てるように呟く。
「食道がんの切除と肝臓移植……心臓外科医と消化器外科医のチームワークが鍵になる。」
「悪い。俺帰るわ!もう名医はウンザリだ。ERにも何人かいるんだ。
 俺に向いてないってのは言われなくても分かってるんだよ。」
見学室を出ようとすると、耕作に腕を掴まれた。
「あのチームは単なるエリートチームじゃない。」
「どういう意味だ?」
「見ればわかる。」
無理やり一男を椅子に座らせる。
「お前そんなにお喋りだったか?」
耕作もまた成長しているということなのだろうか?
視線の先ではオペが始まったようである。
19316:2008/10/22(水) 00:01:51 ID:L87/+KLG

>>188
オーナー
片岡一美
院長    副院長
鬼頭笙子  善田秀樹

第一外科
霧島軍司 司馬江太郎 石川玄 財前五郎 神林千春 直江庸介

心臓外科 朝田龍太郎 香坂たまき 加藤晶 野口賢雄 伊集院登

血管外科 外山誠二

消化器外科 松平幸太郎

整形外科 森本忠士 馬場武蔵

産婦人科 三井環奈

脳外科 西条章 堺慎一

内科 藤吉圭介 里見脩二 落合雅人

循環器内科 高樹源太 夏目彬

麻酔科 荒瀬門次 小高七海 大槻沢子

救命救急 鬼頭笙子(院長と兼務) 進藤一生 小島楓 黒木春正 日比谷学

ドクターヘリ科 藍沢耕作 白石恵 緋山美帆子 藤川一男

臨床工学技師 野村博人

精神科 楷恭介

看護師 冴島はるか(フライトナース) 山城紗江子(救急認定ナース)里原ミキ
    小峰響子 桜井ゆき 志村倫子
    大島冴子 朝倉いずみ 尾崎翔子 村田香織 美空あおい 根本雅子 佐倉亮太
研修医 江藤誠 峰春美

所属無し
ブラックジャック?

院長 鬼頭笙子
チーフドクター 財前五郎 朝田龍太郎 藤吉圭介 里見脩二 進藤一生 荒瀬門次 小高七海
上級スタッフドクター 霧島軍司 司馬江太郎 外山誠二 香坂たまき 加藤晶 小島楓
           松平幸太郎 森本忠士 馬場武蔵 三井環奈 西条章
スタッフドクター 神林千春 伊集院登 高樹源太 夏目彬 大槻沢子 黒木春正 日比谷学 堺慎一
レジデント 藍沢耕作 白石恵 緋山美帆子 藤川一男
19416:2008/10/22(水) 00:07:24 ID:L87/+KLG
あくまで物語で出てきた関係ね。

>>188
師弟コンビ
外山・司馬ー緋山 目指せゴッドハンドペア
香坂・加藤ー白石。目指せ未来のドクタークイーンペア
小島ー藤川。不器用だけど頑張り屋さん臨床ペア
松平ー藍沢。哲学ペア
山城ー冴島。救急認定目指してて落ちました
桜井−里原。救急認定目指してて合格しました


交際
直江庸介ー志村倫子 (夫婦)
馬場武蔵ー桜井ゆき(夫婦)
伊集院登ー白石恵(交際)


先輩ー後輩
香坂たまきー小島楓(先輩ー後輩)

苦手
緋山ー日比谷

同級生
小高ー三井
里見ー藤吉

ライバル
香坂ー加藤
財前ー霧島
山城ー桜井
元恋人
司馬ー大槻
195名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 07:51:42 ID:Rop8b5Xs
チームドラゴンは出てこないのかなぁ
好きなんだけど
196名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 08:38:22 ID:boMPNgVu
>>193-194
分かりやすい!dです
197名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 18:07:47 ID:Fgqcdbgt
MEの野村さんは出てきてないのですが…
198188:2008/10/22(水) 21:05:15 ID:LBhBFRun
>>193-194
ありがとうございます。
19916:2008/10/22(水) 23:03:17 ID:L87/+KLG
「霧島ってのはどんな医者なんだ?」
ふと一男が尋ねる。
「心臓外科の朝田先生のライバルだが俺から見ると真逆のスタイルだ。」
「藍沢お前詳しいな。」
「6ヶ月も第三外科に居れば嫌でも詳しくなる。」
心臓外科は人数と力の関係もあり第二外科と呼ばれていて
その他の外科はまとめて第三外科と呼ばれる。
「あの第二助手の先生は?」
「整形外科の馬場武蔵先生だ。アフリカ帰りだそうだ。」
出たよ。またスーパードクターが……という顔を一男がする。
「あの人もそういう類ではないと思う。」
耕作は小声で呟くのが聞こえた。
「丁寧なオペだな。」
ERの荒々しい緊急オペとは大違いである。
難易度の高いオペとはとても思えない。
軍司と幸太郎の正確な手技を武蔵が臨機応変なサポートで緩急をつける。
「これがチーム霧島だ。」
誰か一人が圧倒的力でチームを引っ張るのではなく、一人一人が自分の仕事を確実にこなしていく。
一男には、前者は確かにとにかく強いが一度崩れると脆いという欠点があるのに比べて、
後者の方が確実で安定しているような気がした。
「一番出ない医者に用はない。だが俺は単なるスーパードクターになるつもりもない……」
「頑張れよ。草葉の陰から応援してるよ。」
「今すぐじゃなくても良い。いつかだ……。」
人間変われば変わるものである。
前の病院での耕作はどちらかというと、龍太郎のようなタイプだったのに……。
20016:2008/10/22(水) 23:03:52 ID:L87/+KLG
オペ室から拍手が聞こえる。
耕作も拍手しているのが目に入る。
「今のオペちゃんと見てたか。」
幸太郎が一男を呼び止める。
「名前なんだっけ?」
「ERの藤川です。」
「藤川は同期なんです。」
「それでか、名前に聞き覚えがあったのは……。」
「知らなかったんですか?」
「悪いなぁ。オペの事で頭が一杯だった。」
ポリポリと幸太郎が頭を掻く。
「確かにこの病院スーパードクターばかりだ。信じられない!
 だがなぁ、藤川…スーパードクターだけが名医じゃないぞ。」
「松平先生に聞いたよ。凡人なんだって?」
武蔵が一男の前に立つ。
「俺達はみんなスーパードクターに憧れてた。」
「俺なんか論文の改竄なんてやっちまって、敗戦処理やらされて一度メスが握れなくなってる。」
幸太郎はそのときから、何か飲んでいないと口が寂しいらしい。
「俺は若い頃、朝田の腕に嫉妬して手術ミスを押し付けて日本でメスを握れなくした。」
「俺はこっちに戻ってきて今の嫁さんめぐって進藤先生と勝手に張り合ってな。」
口々に自分の過去の過ちを告白する。
「それでも俺達は今も医者をやっている。
 スーパードクターでなくても人は救えるからな。」
「ま、コイツみたいにひたすらスーパードクター目指す奴のブレーキにもならにゃならんしな。」
武蔵が耕作の頭をはたく。
「ドクターの仕事は傷を治すだけじゃない。患者さんと一緒に戦うそれがドクターだ。」
幸太郎が耕作からペットボトルを受け取りながら説明する。
「はぁ……。」
様々な経験を経て至った結論なのであろう。
言葉の一つ一つに重さを感じた。
「藤川君だったか?良かったらこれからオペだ。助手をしてみないか?」
「え……俺が??」
チラッと耕作の方を見る。
耕作は指悪さをしている。
「ボウズはこれからこっちのオペがあるんだよな。」
「しっかりやれよ。」
武蔵は再び耕作の頭をはたいた。
「わかってます。」
耕作は乱れ髪を戻しながら頷き、幸太郎と武蔵の後を付いていく。
20116:2008/10/22(水) 23:04:48 ID:L87/+KLG
「我々も行くとしようか。」
軍司に導かれるようにオペ室へと向かう。
名医とスーパードクター何が違うというのだろうか?
ERで誠二や一生や龍太郎の起こす奇跡を何度も見せられた。
それどころか最近では、果敢に挑戦する美帆子にもその傾向が出てきたのである。
自分が3ヶ月現場を離れている間に差は大きくついてしまった。
「クーパー。」
先程外からも感じたが軍司のオペは静かなオペである。
危ない橋を渡る事無く、細心の注意を払いながら確実に治療を続けていく。
その早さはスーパードクター達と比べても全く遜色ない早さであった。
違うのは一男が少しミスをしても、挽回できるだけのゆとりが感じられるところである。
どこかで感じたことがあるような懐かしい優しい視線を感じた。
「オペ終了。」
「お疲れ様でした。」
時計を見て驚いた3時間を越すオペだったのである。
時間の流れを全く感じることはなかった。
それほど心地良かったのである。
「これが名医か……。」
やはり自分には無理そうである。
独り言が聞こえたのか軍司は何か言いたそうである。
しかしもう一男の腹は決まっていた。
「藤川先生!」
ゴム手袋をゴミ箱に片付け、白衣を探しているとミキが話しかけてくる。
20216:2008/10/22(水) 23:07:35 ID:L87/+KLG
「お疲れ様です。」
はるかに聞いた話では軍司とは義兄妹らしい。
「何か?」
「藤川先生は確か兄さんの助手初めてでしたよね?」
ミキは箱から白衣を取り出しながら尋ねる。
「ええ…まぁ……それが何か?」
「どうでした?感想は?」
(感想って言われてもなぁ。)
一男はポリポリと鼻をかく。
「凄かったです。霧島先生だけでなく皆さんが……。
 さっきチーム霧島のオペも見てきましたけどあちらも凄かった。
 とても俺には無理です。医者を続けていく自信なくなりました。」
「凄いのなんて当たり前じゃないですか!」
ミキはクスリと笑う。
「チーム霧島のメンバーの経歴知ってますか?
 兄さんはコロンビア大学胸部心臓外科の客員教授……
 松平先生だって西南大学医学部付属病院・消化器外科のエースで、日本初の非適合生体肝移植に成功し、准教授にまで上り詰めていた人です。」
「エリートなんですね。」
「それでも過ちをおかした。
 今は年をとって落ち着いてるけど、若気の至りって奴かしら。失礼ですけど藤川先生今おいくつ?」
「28です。」
「彼らはその倍近く生きてる。その分経験があるわけ。何を比べてるんですか?」
「そうだよなぁ。凄くて当たり前だよな。俺まだレジデントなんだよな。
 駄目で当たり前じゃないか。」
一男はボロボロと涙を流し始める。
「どうぞ。」
それを見たミキはハンカチを差し出す。
「失敗してもやり直せば良いんだ。凡人でも出来ることから始めれば良いんだ。」
「藤川先生のこと心配している人は多いんですよ。」
「そうなんですか?」
「凡人は悪いことじゃないですよ。
 そういう凡庸さが良いって人いるはずです。」
「患者さんから頼られるようになれるんでしょうか?」
「スーパードクター達の全部真似しようとするから無理なんです。
 彼らを同じ人間だと思わなければ良いんです。
 悪いところはみず、良い所だけ吸収して自分なりに活かせば良いんです。」
背丈も年も殆ど変わらないミキの言葉なのに随分落ち着いた言葉である。
20316:2008/10/22(水) 23:08:45 ID:L87/+KLG
「ところで何でこんなに俺に優しくしてくるんですか?」
一男は不意に足を止めて尋ねる。
殆ど初対面に等しい自分にどうしてこんなにしてくれるのだろうか?
「困るんですよ。」
「は?」
「早くはるかが元気になってくれないと退屈なんですよ。」
「お二人はどういう関係なんですか?」
「好敵手です。年は同じだけど私が学年は上、医療一家でただ一人看護師ってとこも一緒で……。
 お互いに意識しない方が不自然です。
 先輩達だっていつも比べてます。」
「嫌いなんですか?」
「お互い刺激しあってます。向こうはどうかは知りませんが……」
はるかは前の病院でも年の近い一男達には冷たく接していた。
もしかしたら、そういう距離感の取り方が苦手なのかもしれない。
「あら?はるかじゃない?」
エレベーターに乗ると、そこにははるかが立っている。
「ミキさん……。」
はるかが慌てて目を逸らす。
「どうしたの?救急認定落ちたから第一外科担当にされたのが気にくわない?
 それともフライトナースを外されて、私がなったのが納得できないのかしら?」
「そ…そんなことは……。」
唇をグッと噛んでいる。
はるかがフライトナースを外されたことは初耳である。
「ウチはドクターだけじゃなくて、
 ナースも優秀な人ばかりだから結果が出なきゃ
 居場所が無くなるのはしょうがないわよね。」
「そ……そうです……。」
先程好敵手と言っていたはずなのだが、これだはただの言葉の暴力にしか見えない。
「はるか知ってる?第一外科って確か看護師の墓場って言われてるのよ。
 そこで朽ち果てると良いわ。」
ミキは冷たく薄ら笑いを浮かべて言い放った。
確か配属になったレジデントも全員辞めてしまったと聞いている。
配置換えを希望する気力すらも奪われてしまったらしい。
入院していたときから、若い看護師や医師が少ないことは気がついていたが……。
まさか看護師の中で墓場とまで称されている思ってもみなかった。
よく見るとはるかの体が小さく震えている。
あのいつも勝気なはるかが、一男にも分かるほど不安になっているようである。
「期待されてるんだね。冴島さんって。」
「どういう意味ですか?」
「第一外科に入院してただろ?
 志村さんや尾崎さんが嘆いていたよ。
 最近の若い看護師はすぐ辞めちゃうから教え甲斐がないって……。」
一男は精一杯励ますが、はるかの顔色は冴えない。
20416:2008/10/22(水) 23:13:15 ID:L87/+KLG
「はるか……いつまで終わったことでメソメソしてんの?
 虐めるのにももう飽きちゃったわ。」
一男の話を黙って聞いていたミキが突如口を挟む。
「メソメソなんてそんな……。」
こういう姿は、はるからしくない。
一男も同感である。
「緋山先生達の前で格好良いことを言ってみても結局悔しがってんじゃん。いい加減切り替えたら?」
「わかってます。言われなくても……。」
はるかがミキを睨みつける。
「全然わかってないわよ。
 アンタが第一外科に移されるのは別に干されたわけじゃないわ。
 藤川先生の言うとおり、若い看護師が居つかなくてね。
 もともとERから誰か回される予定だったのよ。
 山城さんはアンタなら耐えられると信じて送り出したの。
 あとERしか知らないアンタの成長も期待してね。」
呆れたようにミキははるかの目をみている。
 「私が期待されてる?」
 「そうよ。第一外科が墓場でも地獄でも、なりふり構わず這い上がってきなさい。
  無能なおばさん達が何て言おうとアンタはERに必要なのよ。
  次でもその次でも良いから諦めず受け続けて、必ず試験合格して戻ってらっしゃい。
  それまで私がアンタから奪ったシートは絶対に誰にも渡さないから。
  まぁ戻ってきても譲るつもりはないからね。」
朽ち果てろと言ったり這い上がって来いと言ったり面白い人である。
最初から励ますつもりだったようである。
 「ありがとうございました。ようやく目が覚めました。」
はるかの顔にようやく笑顔が戻る。
まぁ笑顔とはいっても、いつもの愛嬌の無い作り笑顔だが……。
「最後に良いこと教えてあげようか?」
「何ですか?」
「私も山城さんも3回目で受かってる。逆にいうと2回落ちてる。」
「山城さんもですか?」
「そ……だいたいERにいて万全の状態で受けれる方がどうかしてるわ。
 だから気にしなくて良いってわけでもないけど、アンタみたいに病む必要はないの。
 第一外科で気分転換してらっしゃい。」
ミキはエレベーターの開を押すと、はるかを送り出す。
「藤川先生も一緒に気分転換してきたらどうです?麻雀友達もいるんでしょ。」
一男はドキリとする。
美帆子の事件は緘口令が敷かれたはずだったのだが……。
「兄さんによろしく。」
そういうと、ミキはエレベータのドアを閉めた。
205名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 12:03:51 ID:r+U0fGvC
女同士のやりとりが怖い
206名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 13:59:12 ID:vgA/F1S7
またクソスレ立てやがって

さっさとスレの削除出しとけ
207名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 19:33:22 ID:gv+XLJ6Z
藤吉はどうなったの?
208名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 20:58:08 ID:yEkoEXDI
スレ違い

スレ違い

テレビドラマ板でやれ

テレビドラマ板でやれ
209名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 21:00:18 ID:yEkoEXDI
   *'``・* 。
        |     `*。  創作発表板は作家志望者の集う場所
       ,。∩      *  スレ違いのシナリオライター志望は消えろ〜〜
      + (´・ω・`) *。+゚
      `*。 ヽ、  つ *゚*
       `・+。*・' ゚⊃ +゚
       ☆   ∪~ 。*゚
        `・+。*・ ゚
210名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 21:36:44 ID:xB2ppYzt
それ創作文芸板じゃね?とマジレスしておく
211名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 22:02:52 ID:jkWc3sbm
>>210

内容見るとスレ違いですね。
テレビドラマ板でどうぞ。
21210/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/23(木) 22:11:20 ID:xB2ppYzt
ここは料理でも手芸でも絵でもゲームでもシナリオでも
SSでも漢文でも詩・短歌・俳句でも台詞系でもキャラ創作でも音楽でも動画でも

創作系ならなんでも発表してもいい創作発表板だよん
21316:2008/10/23(木) 23:16:21 ID:LUmCqgzN
「一緒に出直しましょう!」
はるかがポンっと一男の背中を叩く。
「あの冴島さん、笑わずに聞いてくれるか。」
「何ですか?」
「入院中暇だったから考えてたんだけど、ERってさぁ基本的に治したら他の科に移すだろ?」
「まぁ、救急ですからねぇ。」
はるかは何を今更と言った顔をしている。
「一人でも多くの命を救いたいと思ってたんだけど、それだと一人にかける時間は逆に短くなる。
 本当にそれでいいのかなぁ?」
「そんなことで悩んでたんですか?白石先生と緋山先生が気の毒です。」
一男自身今度謝ろうと思っている。
でもこれは切実な悩みなのであった。
「私はそんな藤川先生の悩みを支持します。医者はみんな悩んでるんじゃないですか?
 看護師の私にはこんな事しかいえません。」

はるかと別れた一男は軍司のいる医局へと向かうとしたそのとき
喫煙所から出てきた庸介と江太郎がバッタリと鉢合わせる。
「こんなところで何してるんだ?サボりには10年早いぞ。」
「その節はお世話になりました。ちょっと第一外科の見学に来ました。」
「そうか。僕についていた最後のレジテントが辞めてしまったんでね。
 手が足りないところだったんだ。というわけでよろしく。」
庸介は脇に抱えていたカルテを一男に手渡した。
「胃癌だが胃潰瘍と説明している。告知してオペを受けるように説得してくれ」
「このままだとどうなるんですか?」
「死ぬな。」
「それじゃぁ、何故胃潰瘍と?」
一男が首を傾げる。
「手術が成功する可能性が10%以下だ。」
「そんなオペするんですか?無謀すぎます。」
「確かに無謀だ。だが可能性は0じゃない。」
屁理屈にしか聞こえなかった。
「大事なことは患者が納得した最後を迎えさせてやることだ。
 ここにいるのはそういう患者ばかりだ。
 じゃぁ任せた。」
そういうと二人は病棟の方へと歩いていってしまった。
一人残された一男はココに居ても仕方がないと考え、医局へと再び歩き始める。
医局では軍司がレントゲンを見ながらノートに何か書き留めている。
「ん?藤川先生だったか?どうした?入りなさい。」
眼鏡をずらしながら手招きする。
「失礼します。見学に来たら手伝うことになりました。」
カルテをブラブラしてみせた。
「直江先生に気に入られてるだ。ついでにこの患者も頼もうかな。」
「告知とかあんまり経験ないんですけど、どうしたら良いんでしょうか?」
「まずは患者に会ってみたらどうだ?」
いきなり高い難関である。
「どんな顔して会えばいいんでしょ?」
「普通に医者として、いつものように患者と会えば良いんだ。」
一男にはその医者がどういう存在なのかが分からなくなっていた……。
不安そうな顔を浮かべる。
21416:2008/10/23(木) 23:18:02 ID:LUmCqgzN
何はともあれ病室へと向かう。
廊下では倫子が花瓶の花を変えている。
「あら藤川先生!また入院じゃないんですよね?」
倫子は一男が入院していたとき、身の回りの世話をしてくれた人である。
「勿論!507号室の西郷さんを担当する事になりました。」
「507号室ってあの人…じゃなかった直江先生 また若い先生に押し付けたのね!
 懲りないんだから!」
「何でもレジデントが居なくなっちゃって、手が回らないって仰ってました。」
忙しくなると若い医師にも難解な患者が回る可能性も高くなる。
若い医師はまだ不慣れなためとまどう。
そして辞めてしまうこれの悪循環である。
「くれぐれも言葉には気をつけてくださいね。」
一男の顔が自然と引き締まった。
「怖い怖い。リラックスリラックス。」
「ここです。」
「失礼します。」
「西郷さん夕方なんでそろそろカーテンしますね。」
「お願いします。ところでそちらの先生は?」
「今日から西郷さんを担当する藤川です。
 よろしくお願いします。」
「直江先生は?」
「何かあればすぐ来てくれますから。」
倫子が点滴を変えながら微笑む。
「俺は今死ぬわけにはいかないんです。女房とまだ小さい子供居るんです。」
ポツリと患者が呟く。
「すぐ良くなります。」
「もう半年も入院してるんです。自分の体のことくらい分かります。」
「オペを受けてみませんか?」
一男がしっかりと目を合わせる。
「オペが成功すれば……」
これが日常なのか?こんなにも辛いとは……。
「末期の癌なんでしょ?本で読んだんです。」
「目の前の先生と本どっちを信じるんですか?」
倫子が本を取り上げる。
「そうですね……。変な事聞いてすみませんでした。」
「最近そういうの多いんですよね。私達看護師にまで質問する患者さんもいて。」
「便利な世の中になったもんですねぇ。」
俄かに病室に活気が出る。
庸介からはオペを受けるよう説得するように言われている。
「成功の確率は?」
「10%と聞いています。」
「低いですね。」
「全力を尽くします!一緒に病気と闘いましょう。」
「宜しくお願いします。」
これで告知といえるのだろうか?
ただ今は握手のぬくもりを忘れないで居よう。
これが生きる意志をもった人間の温かさである。
21510/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/23(木) 23:21:02 ID:xB2ppYzt
 
21610/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/23(木) 23:23:20 ID:5Gz/rn6q
創作ならば歓迎っすよええ。
21716:2008/10/23(木) 23:23:48 ID:LUmCqgzN
病室を出るとはるかと江太郎の口論が聞こえる。
「待ってください。それでも医者ですか?」
「病院は慈善事業じゃない。」
「だからって患者さんの前で手術代や治療費の話なんて……。」
「何がそんなに気にくわない?あの患者が金を払わなければ、次の患者が見れなくなるんだぞ?」
「そんな無茶苦茶な!」
いったいどういう患者を担当しているのだろうか?
「残された家族の負担になることも考えろ!」
江太郎が声を荒げる。
「若い看護師はあれに耐え切れなくなって辞めてくんです。
 どうして表面的にしか言葉を見ないんでしょう?
 言葉の裏を読めないというか…」
倫子は寂しそうに呟く。
はるかの事も心配だが、今は自分の事の方がもっと大事である。

一男は白衣を正すと次の患者を向かっていった。
 「次の患者さんは食道癌で告知は済んでるんですね。」
 「ええ…。」
倫子の顔が再び暗くなる。
「中村さん、今日もご飯残したんでですってね。」
「良いでしょう。どうせ死ぬんだから。早く死なせてちょうだい」
患者の目は暗くよどんでいる。
「そんな事無いですよ。オペを執刀する霧島先生は有名な先生なんですよ。」
「それでその大先生は今日は来ないの?」
「今日からオペの日まで僕が担当します。藤川といいます。」
「そう……」
全く心を開いてもらえそうにない。
病室を出たあと倫子に患者について詳しく尋ねた。
「身よりも無く天涯孤独な患者さんなんです。」
症状は確かに深刻である。
だがオペをすればまだ生きられるレベルであり、充分成功する可能性はあった。
何とか希望を与えることは出来ないだろうか……。
その願いも空しく一週間後、その患者は無くなった。
オペの一週間前のことである。
一男が駆けつけたときには、全てが終わった後だった。
あまりに無力だった自分が情けなくなる。
「生きる意志の人間を助けるのは難しい。」
218名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 23:30:59 ID:XiwrW5pZ
スレ違い

スレ違い

テレビドラマ板でやれ

テレビドラマ板でやれ
219名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 23:31:54 ID:XiwrW5pZ
スレ違い

スレ違い

テレビドラマ板でやれ

テレビドラマ板でやれ

スレ違い

スレ違い

テレビドラマ板でやれ

テレビドラマ板でやれ
22016:2008/10/23(木) 23:33:46 ID:LUmCqgzN
そんなとき…
西郷のオペの日程が決まった。
「オペは明日になります。急な話ですが早い方が体への負担を考えると……。」
庸介が優しい口調で説明する。
「藤川先生もオペには参加してくれるんですか?」
西郷はベッドの脇に立っている一男を見ながら尋ねる。
「ええ、第二助手ですが……。執刀は私が助手には霧島先生が入ってくれます。」
「お任せします。藤川先生……色々ありがとうございました。
 この病院に来て良かった。貴方に会えてよかった。」
「何言ってるんですか?オペ終わってから聞きますよ。」
一男が元気に励ます。
今度こそ助けたい。一男は力強く西郷と握手し病室を後にした。

「正直ここまでやってくれるとは思わなかった。」
庸介が医局の椅子に腰を掛ける。
「君は私と同じで腕は凡庸だが、一つだけどんな名医も兼ね備えているものがあるようだ。」
軍司はコーヒーにミルクと砂糖を入れながら一男を見る。
「患者の信頼を得られるのも名医の条件の一つだ。」
「そんなことですか?」
不満そうに一男がする。
「患者と仲良くするだけでは信頼は得られない。腕が良いだけでは信頼は得られない。
 西郷さんがあんなに落ち着いて、明日のオペを迎えるのはお前への安心感だよ。」
「そう。一番大切なモノを君は持ってるじゃないか。自信を持ちなさい。
 そしてこのオペが終わったらERに帰りなさい。
 君は自分には同期と違って才能がないと言っていたが私達から見れば、レジデントなんてどれも同じレベルだ。
 そんな低い次元で争うのではなく、自分に出来ることを精一杯やれば良い。」
「僅かな時間でも患者に生きる希望を与えられるそんな医者を目指せ。
 そのためにはERで色んな死や生を見るんだ。」
量より質、それが出来るようになるためにはもっと経験が必要である。
ふと楓のことを思い出す。
心で治す医師…一番最初に思い浮かんだ顔である。
なんだ答えはすぐ傍にあったんじゃないか。
救命医はどんなときでも笑顔を欠かしてはならない。
何故なら笑顔とは人を勇気付けるから、楓に一番最初に習ったことである。
ようやく意味がわかった。灯台の下暗しである。
「どうかしたのか?」
庸介が顔を覗き込む。
「小島先生の笑顔は人を勇気付けるって口癖を思い出して……。」
「論文で笑顔の人間は回復が早いという説を唱えている医者もいる。」
「いつでも笑える凡庸だけど頼もしい医者になって欲しいんだろうな。」
親の心子知らずであった。
「明日の朝オペ終わったらその足でERに戻ります。
 ここにはもう戻りません。
 一人でも多くの笑顔を助けて、悲しみの涙を減らすために俺は救命医になります。」
医療者として生きていく覚悟をした一男の顔がようやく医師の顔になった。

伊集院編に続く
22110/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/23(木) 23:34:41 ID:5Gz/rn6q
22216:2008/10/23(木) 23:36:57 ID:LUmCqgzN
暗い話が続いたので、ちょっと明るい雰囲気変えます。
誰かこの世界で小話でも書いてくれないかなぁ。
>>197
彼は次の話に少し出てくるだけかなぁ。
223名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 23:55:18 ID:XiwrW5pZ
スレ違い

スレ違い

テレビドラマ板でやれ

テレビドラマ板でやれ

スレ違い

スレ違い

テレビドラマ板でやれ

テレビドラマ板でやれ
224名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 23:59:24 ID:XiwrW5pZ
>>216
創作というより、このスレはドラマの雑談スレだろw
創作というにはレベルが低すぎるわけよ、おばさんよ
225名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 00:08:00 ID:EaaxvITZ
言われてみれば‥‥‥なるほど、それは一理ある。
226名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 00:19:59 ID:joTbfL49
なにやら香ばしいのう
227名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 00:21:48 ID:Ewuvy8ro
>>226
しーっ!!静かに!
多分IDもう一回変えてきますから!
228名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 00:32:01 ID:EaaxvITZ
>>226=>>227

基地外乙
229名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 00:50:40 ID:EaaxvITZ

>後日談、過去話、共演話、長編、短編など

どう見ても雑談的ですね。
テレビドラマ板へどうぞ。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 10:20:49 ID:ssAuQ5MB
>ただのドラママニアじゃんw
いまどきテレビドラマを真面目に見てるなんて珍しいな



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231名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 12:04:49 ID:vz9Yx5Do
喧嘩せず楽しくやりましょうよ
二次創作エロなしなら良いとTOPにもあるわけだし
自治厨は無視しましょ
23210/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/24(金) 12:09:00 ID:EWUwmDD0
自治厨ですらないからね
この板の他のスレ見てみればわかるよ
233名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 13:34:29 ID:ssAuQ5MB
232

自演はやめろカス
23416:2008/10/24(金) 21:38:53 ID:xU529fZu
「ドクター真ん中分けどうした?この世の終わりみたいなため息吐くなよ。」
「実は先日彼女の家に行ったんですよ。」
登は再びため息をつく。
「彼女なんか居たのか?」
誠二が驚いたように尋ねる。
恵と登の交際は一部の医師しかしらない内緒の話である。
もちろん誠二には話していない。
「と……外山先生だっているでしょ?彼女なんてめんどくさいだけですねぇ。」
「何だその上から目線は?」
誠二が登の首を絞めようとする。
「んで何があったんだ?」
「実は……。」
昨日恵の家に泊まりに行くと、机の上に結婚情報雑誌が数冊置かれていたのである。
「向こうはいくつなんだ?」
誠二がニヤニヤしながら尋ねる。
「27です。」
「若い若いとはいえ、結婚を意識しても不思議ではないよなぁ。」
「医者としては若いですけど、世間的には中堅ですもんねぇ。」
新聞を丸めながら誠二も頷く。
「お前はどうなんだ?」
それをカルテを書いている美帆子にぶつける。
「ちょっと邪魔しないで下さい!明日の朝までに書かないと怒られるんですよ!」
「書くのは手だろ?口は暇なはずだろ。」
「誰の担当患者のカルテ書いてると思ってるんですか!」
山積みにされたカルテをプンプンと美帆子が指差す。
「先生を助けるのも生徒の役目だろ。」
「助けるんじゃなくて、押し付けてるだけでしょ。」
「何事も勉強だ。それはそうとどうなんだ?」
「私にはそんな相手居ません。一人前になってから考えます。」
「僕もまだスタッフですし……。」
それを聞いた誠二が驚いたように尋ねる。
「なんだお前ら、上級になる気でいたのか?」
「一応ですけど……」
「私だっていつかは……。」
「それと恋愛と何の関係が有るんだ?そんなの待ってたらジジイになるぞ?」
誠二がフウッと遠い目をした。
23516:2008/10/24(金) 21:39:46 ID:xU529fZu
「彼女のお父さん偉い人なんですよ。」
「偉いって社長とかか?」
「白石のお父さんは明宝医大の教授ですからね。」
「そうそう……ってええええええ」
登が思わず水を噴出す。
「ひ…ひ……緋山先生どうして?」
恵からは美帆子とは前の病院からの仲で今でも一番の親友だが、
付き合っていることは内緒にしていると聞いていたのであった。
「お酒無茶苦茶強いけど飲むと多弁になるんですよねぇ……。」
恵と初めて食事行った次の日、二日酔いで登は動けなった。
「お前の彼女ってドクターカンガルーだったのか。何で隠してたんだ?ええ?」
「そ…そういうわけじゃぁ。」
「最近コンタクトにしたりして、色気ついてきたと思ってたがそういうことか!」
「色気付いてるなんてそんなことないですよ……。」
だが実際コンタクトにするように提案したのは恵である。
「かたや医局でカルテ整理、かたや青春を謳歌する同期、ドクターピアス泣くなよ?」
「別に泣きませんよ。」
美帆子は作業がひと段落したのか腕組をしながら二人の方を見る。
「お前にもそういう青春みたいなのは無いのか?」
「生憎指導医が仕事をたくさんくれるので、休日は洗濯物と寝ることで潰れてます。」
「たまには息抜きしないと、ドクタークイーンみたいになるぞ。」
「ドクタークイーン??誰の事ですか?」
首をかしげながら登を見る。
「院長のことみたいですよ。僕も最近分かりました。」
言われて見れば確かに女王様といった雰囲気ではある。
「そういえば、外山先生は彼女とか居るんですか?」
「当然だ。お前に居て俺に居ないなんてそんなことはありえない。」
どこからその自信が湧いてくるのかサッパリわからない。
「嘘だ!」
思わず美帆子が椅子から立ち上がる。
23616:2008/10/24(金) 21:52:16 ID:xU529fZu
「私と同じシフトでいつ遊んでるんですか!」
「自分が女としての魅力のなさを時間のせいにするなよ。」
誠二が笑いながら手を叩く。
「まさかまた看護師ですか?」
「また?」
驚いて登が美帆子の方を向く。
カルテなどの雑務を自分に押し付けて、一人でよくナースステーションに遊びに行くのだという。
「今度はどの子ですか?」
「内緒だ。邪魔するだろ?」
「もちろん!女癖が悪いことばらします。」
美帆子は当然そうに力強く頷く。
「そんなに悪いか?」
「よくもまぁ、とっかえひっかえ付き合えますよね。それも職場内で……。」
登は誠二の意外な一面に驚いている。
「美人の患者さんの担当のときは目が輝いてるし。
 今日だってなんですか。交通事故で運ばれてきた子のお姉さんに
 僕は医者として当然のことをしたまでです。とか言っちゃって。」
「緋山先生どうしたんですか?」
「二人とも目の前にこんないい女がいるのに何とも思わないんですか?」
エヘンと美帆子が両腰に手を当てる。
「ドクター真ん中分けどこにいるんだ?」
「外山先生……僕もコンタクトがずれたみたいで見えません。」
美帆子が手元にあったモノを手当たり次第、誠二に投げつける。
「馬鹿、ハサミは危ないからマジで!」
「当たったら治してあげます!」
「ところで緋山先生。白石先生他に何か言ってましたか?」
登は思い切って尋ねてみることにした。
酔うと本性が現れるという。
恵は美帆子にどんな風に自分の話しをしたのだろうか?
23716:2008/10/24(金) 21:58:15 ID:xU529fZu
http://www28.atwiki.jp/doctorblue/
作ってみたよ。
みんなで創作していきましょう
23810/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/25(土) 07:46:52 ID:E/BrrBYv
おつ!
239名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 10:59:12 ID:rY329oRw
スレ違い

スレ違い

テレビドラマ板でやれ

テレビドラマ板でやれ

スレ違い

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テレビドラマ板でやれ

テレビドラマ板でやれ
240名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 13:23:52 ID:hbLaFPeO
wiki便利そうだね
ネタを思いついたら投稿してみます
24116:2008/10/25(土) 22:26:03 ID:hgjwUDXv
「白石は酔うと性格変わるんですよね。普段は優等生の反動か積極的になるというか…」
「そ……それは知ってます。最初はとても驚きました。」
普段はどちらかというと物静かな恵が、アルコールが入ると途端に雄弁になる。
雄弁になるとはいっても、登と食事するときは気を使っているのか
『加藤先生は大人の女性だ。患者にセクハラされたときの対処法を教えてくれた。』とか
『香坂先生は今まで恵が読んだ論文が全部頭に入っているのかどんな質問にも答えてくれる。』とか
そういう褒め言葉を口にするところが、恵らしいといえば恵らしい……。
「なんていうか。もう少し本心を見せて欲しいんですよね。」
「オマエはそういうとき俺の悪口言うのか?」
「もちろん!外山先生を褒めるなんて!」
美帆子が首をブンブンと横に振る。
「白石の場合、あれが本心みたいなんですよね。」
親しくなるまでは美帆子もなんでコイツはこういうときに人を褒めるんだ?
もしかして褒め殺しにしているのか?と感じていた。
特に語ることが無いときには美帆子を前にして、
「自分に正直なことは凄いことだ」とか何の照れも無く本人を褒めまくったこともある。
恵の手に掛かれば口の悪い学や誠二ですらも、
「緊張しいの自分をからかう事でリラックスさせてくれる面倒見の良い先輩」となってしまう。
「どこかのレジデントと違ってよく分かってるじゃねぇか。」
ホーと誠二が感嘆の拍手をする。
悪口には慣れているが、褒められるのには慣れていないのか照れくさそうである。
「それで肝心の僕の事は?」
「伊集院先生の事は…。んんん〜んん。」
美帆子が眉をしかめながら首を傾げる。
ゴクっと喉を鳴らす音が医局に響く。
「んんん…んん…んんん?」
「ど…どうしました?」
「特に何も……。あのとき私も結構酔ってたし……
 伊集院先生と白石が付き合ってるってだけでビックリしてたから……」
「そりゃそうだよな。俺だって驚いてるんだ。」
誠二もウンウンと頷く。
「この話は内緒ですよ?」
半ば諦めながらも登が手を合わせた。
24216:2008/10/25(土) 22:26:25 ID:hgjwUDXv
「心臓外科の奴等は知らないのか?」
「も…もちろんです。白石先生は香坂先生と加藤先生を尊敬してますから…!」
「浮ついた気持ちで働いてんじゃないわよ!とか言いそうですよね。」
美帆子は突然金切り声を出した。
「今のモノマネか?」
「加藤先生はそんな大声出しませんよ。」
「香坂先生は言うでしょ。たまにERの医局でも暴れるし。」
「ああ…俺も麻雀してて暴れられたありゃあ一生独身だな。」
「僕は何も言ってませんからね。知りませんよ。白石先生に怒られても……。」
「カンガルーが何で怒るんだ?」
「別に白石なんで怖くないですけど……。」
誠二と美帆子は不思議そうに顔を見合わせる。
二人は知らないのである。
 登が酔った勢いでたまきは医者ではなく学者のようだ。と言ったときの恵の物凄い剣幕を……。
そしてその後2週間口を利いてくれないだけでなく、メールや電話もことごとく無視されてしまった。
そのまま自然消滅かと思っていたら、突然屋上へと呼び出され
 『自分はたまきと晶を尊敬しているし、二人も妹の様に可愛がってくれている。
  本来ならば自分のような未熟者が指導をしてもらえるような人ではない。
  腕も頭も悪いし、さらに器量も悪い自分が馬鹿にされるのは仕方ない。
  仲間内での席では場の空気によって、自分の事を悪く言ってくれて構わない。
  だからこれからも自分の彼氏で居てくれるなら、二人のことを悪く言わないで欲しい!!!』
と懇願されたのである。
恵から登への最初で最後の(今のところ)お願いであった。
「ほ……ほら普段温厚な人を怒らせると後が怖いって言うじゃないですか!」
「それはそうなんですけど……。何で白石が怒るんですか?」
「緋山先生だって外山先生悪く言われたら気分良くないでしょ?」
「え?別に?人間として最低だし。医者としてもちょっとなぁって思ってますし……
 まぁ日ごろの素行不良振りを身近で見てる私としては自業自得なのでないかと」
美帆子は真面目な顔をして頷く。
「あのなぁ、最低っていうのはあらゆるカテゴリーで最も低いという意味だぞ。
 医者としてってオマエだって泣き虫じゃないかよ!」
こういうフランクな師弟関係とは違うようである。
恵の場合はどうやらもっと体育会系というかキチンとした関係のようである。

24316:2008/10/25(土) 22:27:50 ID:hgjwUDXv
>>240
みんなで創作していけると良いねぇ
いろいろな角度から小説読みたいなぁ
244名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 20:54:21 ID:ohxvGJ6D
勝手にしろ
24516:2008/10/26(日) 21:34:44 ID:86zzv/h9
「白石幸せそうだしそんなに気にしなくて良いと思いますよ。」
「彼女が出来たんなら合コンセッティングよろしくな!」
「白石先生は友達少ないみたいなんで期待されると……。」
「私と冴島が精一杯じゃないですかね?」
誠二が分かりやすく肩を落とす。
「そういえば前から聞こうと思ってたんですけど、男性陣の中では誰かが人気あるんですか?」
「そんな格付け聞いてどうするつもりだ?」
「僕も聞いたこと無いですよ。」
「それなら今考えてみてください。」
興味津々な様子の美帆子
「一番は小島だろうな。」
「そうですね。次は看護師の志村さんですかね。よく大人な雰囲気だって話題になります。」
順調に名前が上がっていく。
「で私はまだ出てきませんか?」
「え?」
「オマエ自分がモテテルと思ってるのか?」
誠二は少し呆れているようである。
「モデル体系でもなければ、性格も男を立てるなんてことはまずない。人気があるわけないだろ。」
この病院に来てから一度も異性から食事に誘われたことが無い。
今まではそういうものなんだろうと思っていたが、恵の例からするとそういうわけでもないらしい。
「私って誘いにくいですか?」
美帆子がマジマジと二人を見つめる。
「誘っても高い店しか行ってくれなさそうですよね……。」
「その上先に店を出てまってそうだな。」
トホホと言わざるを得ない散々な評価であった。
「とりあえず同棲で手を打ったらどうだ?」
「ど…同棲って……」
登が顔を真っ赤にする。
「お互い初めての恋人なんだろ。無意識に幻想抱いてるぜ。」
「初恋は甘酸っぱいっていいますもんね。」
「珍しく気が合ったな。」
「でも……あの堅物の白石が結婚前に同棲とはねぇ。」
「緋…緋山先生まだすると決まったわけじゃないですよ。」
「善は急げだ。今メール送っておいたから!」
いつのまにか誠二がソファーに掛けられた登の白衣から携帯を手元に手繰り寄せていた……。
24616:2008/10/26(日) 21:35:10 ID:86zzv/h9
「午後から口頭試験ね。」
午前中のプレゼンテーションを何とか切り抜けた美帆子と一男が食堂へと向かう。
「お……いたぞ。」
「そっちはどうだったよ?」
「まぁまぁかなぁ。」
恵と耕作は午前中が口頭試験で、午後がプレゼンテーションのため情報交換が出来るのである。
「私もまぁまぁかな。」
「口答試験ってどんなこと聞かれるんだ?」
一男は必死な様子である。
「私の場合はねぇ、司馬先生と進藤先生と院長が質問してきたよ。」
「それでそれで?」
美帆子もサプリメントを箱から出しながら尋ねる。

『どんなキャリアを築いていきたいか。』
『今まで6ヶ月間で一番辛かったことは何か?』
『もし身近な人が病に倒れたら誰に主治医を頼むか』

時間にして15分だが答えはどこまででも広がる質問である。
参考までに恵の回答を聞いてみることにした。

「1問目は才色兼備な大人の女医に答えたたら院長には鼻で笑われた。
 2問目には受け持った患者が死んだときに泣いたら、
 香坂先生に泣く暇があるならもっと出来ることは無かったか考えろって怒られたとき
 3問目はわからないって答えた。」

「わからないって大丈夫なのか?」
「そんな大事な事人任せにしたくないけど、専門もあると思うし……」
「馬鹿ねぇ。そういうときは指導医の名前出しておけば良いのよ。」
「そんな単純な話かなぁ?」
確かにこの質問といい答えなんてあるのだろうか?
そうこうしていると、口答試験の順番がやってきた。
「そっちも頑張りなさいよ。」
隣の部屋で同時に試験を行う一男はコクンと力強く頷く。
移籍当初は100人近く居たレジデントも30人にまで減っていた。
もうこれ以上減って欲しくないものである。
24716:2008/10/26(日) 21:35:34 ID:86zzv/h9
「失礼しま〜す。」
二回ノックをしてから美帆子が入室する。
「座りなさい。」
机の向かいには笙子と五郎とたまきの姿がある。
「昼休みに午前中のメンバーにどんなこと聞かれたか聞いたのかしら?」
「い……一応聞きました……。」
「それは楽しみだ。」
五郎はニヤリと笑みを浮かべるのをみて背筋をゾクっとする。
「では最初の質問……。これからどんなキャリアビジョンを描いているのかしら?」
「外山先生に教えて貰っていることもあって、
 救命医と血管外科医の二足の草鞋を履きたいと考えています。」
「何故かしら?」
「ウチは移植認定施設ですし、血管疾患には緊急手術が必要な疾患が多いし
 ERに来る患者さんのより多くを助けることで出来ると思うからです。」
三人は紙にカリカリと何か記入している。
「アナタは本当にオペが好きなのね。嫌いじゃないわ。楓から聞いてたとおり正直なのね。」
「この6ヶ月で一番嬉しかったことは何かね?」
「嬉しかったことですか?」
思わず聞き返してしまった。
「嬉しかったこと……。嬉しかったこと……。」
小声でブツブツ唱えながら思い出してみる。
病院に出勤しようとすると吐き気がしていた最初の3ヶ月……。
誠二が外遊に出てしまった3ヶ月……。
「この前外山先生をオペしました。」
「それで?」
「いつも藪医者だって助手のたびに怒られてました。
 でも私を執刀医にしてくれたと知ったときは嬉しかったです。」
「まぁ外山先生から見れば、ほとんどの医者が藪医者になるんでしょうけどね……。」
たまきは苦笑いを浮かべながら記入を始めた。
「何で緋山先生に執刀を頼んだと思うかね?」
「さ…さぁ……そこまでは……。」
「じゃぁ逆に貴方なら外山に執刀を頼んだかしら?」
誠二のことは尊敬もしているし腕も確かだ。
だがオペをしてもらえるなら龍太郎のように特殊な縫合で傷が残らないようにして欲しい。
「一応これでも嫁入り前なんで……。」
美帆子が小さく口ごもった。
「まぁいいわ。
 最後の質問。恋人と親がヘリで出動した現場に倒れてたらアナタどうするのかしら?
 考えちゃ駄目よ。すぐ答えて」
恋人と親…答えなんてあるんだろうか?
「答えなさい。」
たまきが急かす。
「選べません。そんなの……。どっちも大切な人ですよね?」
「貴方がさっさと選ばないと二人とも死ぬわよ。」
美帆子は頭を抱えた。
24816:2008/10/26(日) 21:36:30 ID:86zzv/h9
wiki順調に?更新されてるみたいで安心した。
有効利用してもらえると嬉しいな。
249本日23:59まで予備投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 21:36:49 ID:c0zEw9ud
支援
250本日23:59まで投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 21:37:12 ID:c0zEw9ud
って…遅かったかorz
251名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 23:30:26 ID:oNDncvUZ
鬼頭先生のお話きぼんぬ。
252名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 12:03:56 ID:LrFERdpb
どっちも選びたくないなぁ
253名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 13:16:48 ID:kN9ppk1O
しかし、アクビがでるようなストーリーぱかりだな
254名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 21:45:04 ID:7ngJ/Suy
マターリがいいよ
255名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 12:17:02 ID:JhYlJaS8
妊婦のたらい回し話題になってんね
256名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:40:28 ID:lOFVGzcY
流れぶった切って投稿してみます。
16さんの設定を少し借りようと思ってます。
タイトルとかは特に無いです。

「今日からERでお世話になります。冴島はるかと申します。」
看護師達の拍手する音がワーキングステーションを賑わせた。
(また女の看護師か。)
佐倉亮太がつまらなさそうに小さく呟く。
看護婦から看護師へ、時代の流れで呼び名は変われど、構成比率は一向に相変わらずである。
大病院と呼ばれる明真メディカルシティーも例外ではなく、男性の看護師は彼一人である。
男性医師や患者からは、まるでハーレムのようだと羨ましがられるのだが、
意外と話が合わなかったりして気苦労がたえない職場なのである。
「佐倉さん何か言いました?」
同僚の里原ミキが不思議そうに佐倉を見た。
「別に!里原さん後輩出来てよかったじゃないか!」
「ええ……まぁ……。」
「どした?社会人なんだから1日でも入社が早ければ先輩だよ!」
「そうかなぁ。ERに来るみたいだから、佐倉さんの後輩でもあるじゃない。」
「俺は早く男性看護師の後輩もって雑用から解放されたいんだよ。」
佐倉が大袈裟に羨ましがる。
「そこの二人!ちゃんと話を聞いてますか?」
総看護師長の尾崎翔子がゴホンと咳払いをする。
二人は慌てて首をすくめた。
「メールでも事前に告知してあります通り、歓迎会は来週行いますので可能な限り参加してください。
 出欠席の連絡がまだの方は幹事の志村さんに連絡してあげてください。
 申し送りは以上です。
 では今日もみなさん頑張りましょう。
 山城さんちょっと良いかしら?」
「はい。先に行っててください。」
ER看護師長の山城紗江子は尾崎と共に奥の部屋へと入っていった。
257名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:41:12 ID:lOFVGzcY
「お疲れ様でした。」
更衣室から出てきた佐倉の背中を里原が叩く。
佐倉はウワっと慌ててイヤホンを外した。
「通り魔かと思ったよ!」
「ここ病院ですよ。」
「よく言うじゃない。帰宅途中のサラリーマンが……とか。」
「くだんないわねぇ。」
「ところでさぁ、今日これから空いてるかい?」
「特に何もありませんけど?」
「日比谷先生と飲みに行くんだけど花が無くてね。良かったら来ない?」
「ん〜ん。」
里原が財布を振ってみせる。
「給料日前なんでお金無いですよ。」
「大丈夫だよ。」
こういうときは誘った男が払うものである。
誘っておいて割り勘にした日には、次の日には看護師ネットワークで広がっていることだろう。
店に入ると救命医の日比谷学もちょうど来たばかりであった。
「お疲れ様です。」
「里原さんも来るんなら小島先生も誘えばよかったな。」
「今日は誘うって言ってたじゃないですか!」
前々から佐倉が前の病院からの付き合いである日比谷に同じく救命医の小島楓との食事を希望しているのであった。
「誘う予定ではあったんだよ。野暮用だったんだよ。」
「お二人って本当に仲が良いんですね。」
フン!っと日比谷が鼻で笑う。
「ところで今日ERに新しい看護師が来たじゃないですか。そのときふと思ったんですけど……
 佐倉さんはどうして看護師になったんですか?佐倉さんの頃って男性看護師珍しかったはずですよね。」
「医者や看護師だけでなく患者からも馬鹿にされるだろ?」
「俺ね。高校のとき盲腸で入院したんです。そのときの看護婦さんが凄く優しかったんですよ。」
「まさかそれで?」
「うん。そうだよ!」
佐倉は呆気らかんとしている。
258名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:41:38 ID:lOFVGzcY
「単純ですね。」
「看護師だけじゃないぞ。フライトドクターも四人来たぞ。ERの常勤は二人だそうだ。」
「フライトドクターってこの前テレビでやってたヘリに乗るんですよね?
 俺は高所恐怖症なんだよなぁ。」
「佐倉さんには乗れとは誰も言わないと思いますよ?」
里原はシメシメといった顔をしている。
「余計な仕事が増えたよ!」
「またすぐそうやって愚痴るんですから。」
「進藤チーフは何でも引き受けすぎる。下の事が全く分かってない!!!」
ビールジョッキがテーブルにガタンと置かれた。
「まぁ進藤先生はみんな自分と同じように行動するべきだと思ってるところ有りますからねぇ。」
佐倉がマァマァとなだめる。
「これ以上ERを忙しくして患者をフォローしきれると思ってるのかなぁ。」
「でもその分四人も増員されるんですよね?」
「フライトドクターって言っても経験ほとんど無いに等しいんだよ。
 院長はドクターではなく、ノウハウが欲しかっただけなんだ。
 だからレジデントからスタートするんだ。」
「レジデントと言えば、今年は何人スタッフになりますかね?」
「去年も一昨年も設立以来ERは0だからな。」
二十四時間患者の容態問わずの受け入れと入院患者のケア……
その上給料も他の科とほとんど変わらないのである。
このためERは若い医師には不人気であった。
「今年こそはと積年の反省を踏まえて。
 ERに常勤二人、あとの二人は心臓外科と第二外科と兼務なんだとさ。」
枝豆を摘みながら佐倉が尋ねる。
「日比谷先生が指導医なんですか?」
「無意識にレジデント苛める癖無くした方がいいですよ。」
「俺の研修医の頃はもっと厳しかったんだよ。
 三日間完徹とか当たり前だったんだ!」
「そんな事言ってると、今度のレジデントにも嫌われちゃいますよ。」
里原が日比谷を心配する。
というのもERのレジデントが長続きしない理由の一つに医局で休めない。というのもあるからである。
259名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:43:16 ID:lOFVGzcY
「ところで今度のレジデントは可愛い女の子いますか?」
唐突に佐倉が日比谷を見る。
「常勤の一人は女医だったぞ。」
「可愛かったですか?」
佐倉は興味津々のようである。
「最っっっっ低!!!!私達の事もそんな目で見てたんですね!」
里原は軽蔑の眼差しで佐倉に向けた。
「佐倉君はまだ独身なんだから良いじゃないか。」
「指導医は誰なんですか?看護師として知っておかないと…。」
若い医師が誤った指示を出したときは、こっそり指導医に確認するするのも看護師の仕事である。
「女医の方は外山先生で、男の方は小島先生だ。」
どこか自分というか看護師全体を見下した所があり、苦手な外山誠二が指導医と聞いた佐倉は落胆を隠せない。
「普通逆じゃないですか?」
「俺は何も知らん。進藤チーフに聞いてくれ。そっちの看護師はどうなの?」
「大卒らしいですよ。」
最近看護師の高学歴化が顕著になってきてはいるが、まだその割合はそんなに高くない。
「学歴は良いよ。問題はERで使えるかだ。」
最もな意見である。
学歴は立派だが現場で使えない医師がいるように、看護師だってその例は今後増えてくるのであろう。
「看護学校では手際は良かったですよ。最も彼女は卒業後看護大学に編入して、
 私は朝田先生とNGOに行ったのでその後は知りませんが……。」
「同級生だったの?何で内緒にしてたの?」
佐倉は不思議そうにしている。
「そんなに仲が良くなったので、自信がなかったというか確証がなかったというか。
 名前を聞いてどこかで見た気がするなぁって考えてたんです。」
「それじゃぁ、常勤二人と新人看護師の三人が一年間で何人残るか賭けようか。」
さも当然といわんばかりに日比谷が持ち出す。
「またですか」
「去年みたいに賭けに勝つために冷たくするのは無しですよ。」
三人は去年も賭けをしていて結果は日比谷の0が正解であった。
里原が問題にしているのはそのプロセスである。
最後に一人しぶとい医師が居たのだが……。
「あれは我ながら少し大人気なかったと反省してるよ。」
「少し?」
佐倉が苦笑いを浮かべた。
「まぁ俺は毎年どおり、一人も残らないに……細かいのないから一万で良いや。」
「大きくでましたね。俺はじゃぁ。全員残るに一万!!」
机の上に二枚の福沢諭吉が置かれている。
「二人とも宜しいんですか?一万円も出しちゃって。日比谷先生家のローンあるんでしょ?」
「生憎金はあれど使う時間が無いんでね。ささやかな楽しみなんだ。」
「私は冴島さんくらいは残ると思うから。一人に……一万円……。」
名残惜しそうに財布から一万円を取り出すと机に置いた。
「二人残ったらどうします?引き分けですかね?」
佐倉が二人を見る。
「キャリーオーバーで来年かな。」
「大丈夫。医者は残らないと思うから。」
日比谷がニヤリと笑う。
「日比谷先生!」
こうして毎年恒例の賭けが始まった。
260名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:45:42 ID:lOFVGzcY
モジャモジャが主人公です。
頑張りますので宜しくです。
モジャモジャ観察日記みたいな感じで病院を見ていく予定です。
261名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 21:46:55 ID:lOFVGzcY
すみません。日記じゃなかった。
262名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 08:16:43 ID:e9PGCzCB
これから誰が絡んでくるのか楽しみです。
期待してます
263名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 09:45:50 ID:Nt9lZD/I
256さん乙です

看護師も個性派ぞろいですからねー、楽しみにしてます

これから16さんと256さんが投稿していくとなると混乱しそうなのでハンドルネームで投稿するというのはどうでしょう

私も書き始めてるのですが構想が二転三転して収拾つかなくなってます
最初は里原と冴島の話だったのが里見の話にかわり今は東佐枝子の話になってしまってます
はじめて書くんですが難しいですね
264モジャモジャ物語:2008/10/29(水) 21:36:11 ID:SqHgoZSF
「佐倉さんちょっと!」
翌朝、出勤した佐倉がメールを確認していると山城の呼び声がする。
会議室へと連れて行かれる。
そこには冴島の姿もあった。
「こちらがさっきお話ししたアナタの指導看護師の佐倉さんよ。」
「ハァァァ?聞いてませんよ!!!」
「メールで里原さんのときと同じようにって流しました。
 新卒でもないわけだし分からなければ彼に聞いてください。それでは。」
佐倉の抗議を無視して山城はサッサと会議室を出て行ってしまう。
後に残された二人の間に気まずい空気が流れる。
「ええ…っと…。
 ER副看護師長の佐倉です。って言っても年齢が上だからってだけだから、
 みんなからは昼行灯って影で言われてるよ。」
「冴島はるかです。これからご指導よろしくお願いいたします。」
冴島は丁寧にお辞儀した、
「それじゃぁ、まずは病院の説明からするんで座ってください。」
「よろしくお願いします。」
再びお辞儀をしてから冴島が椅子に腰を下ろす。
佐倉は慣れた手つきでホワイトボードに組織図を描いていく。
 http://www28.atwiki.jp/doctorblue/pages/26.html
「全体としてこんな感じで、僕達がいるのはここERだ。」
佐倉はERの部分を大きく丸で囲む。
「常勤以外でERによく居る先生はというと…。」
第一外科の直江庸介 神林千春
心臓外科の朝田龍太郎 香坂たまき
血管外科の外山誠二
整形外科の馬場武蔵の名前を丸で囲む。
265モジャモジャ物語:2008/10/29(水) 21:37:35 ID:SqHgoZSF
「ああメモ取らなくても、これ後で印刷してあげるから大丈夫だよ。」
凄い勢いで動いていた冴島の右手がピタッと止まる。
「他にもたくさん先生は居るんだけど、これだけ覚えておけば充分だね。
 そして気になる看護師なんだけど…。
 こっちも多いから仕事の出来る主要人物だけ記載するよ。」
実は佐倉自身全員を把握しているわけでは無かったりする。
「一度には全部覚えられないと思うから、最初はネームプレート見て確認するといいよ。」
「明日までに全員覚えてみせます。」
気のせいだろうか?冴島の目が一瞬ギラっと輝いたような気がするのは……
「真面目すぎると疲れちゃうよ。」
「早く職場に慣れたいんです。」
「そっかぁ。それじゃあついでにドクターの職階についても説明しておくね。
 http://www28.atwiki.jp/doctorblue/pages/16.html
 院長を頂点にしてこんな風になってるんだ。
 冴島さんと一緒に来た若い先生はレジデントになるらしいよ。」
冴島の顔をチラッと見るがあまり関心は無さそうである。
「あの〜質問しても宜しいでしょうか?」
「何でも聞いて。どこだい?独身の先生かい??」
しらっとした空気が漂ってしまった。
「スタッフと上級の指示が違い場合どうするんでしょうか?」
渋い顔をする佐倉を無視して冴島が尋ねる。
「本来あってはならないんだけどね。そういうときは職階が上の人に従って。
 レジデントの場合は少しでも指示に疑問を感じたら指導医に確認して。
 指導医以外には聞かないこと。これはルールだから守ってね。」
誰でも間違いを指摘されるのは気分が良いものではない。
基本的に怒るのは指導医の仕事である。
「余計な騒動は起こさないでね。」
「了解しました。」
仕事の説明を終えると急に話題がなくなってしまう。
「他に質問は?」
「……」
冴島はジーと考え込んでいる。
(そんなに無理に質問しなくても良いのに……)
「では佐倉さんは救命認定の資格をお持ちですか?」
「ううん。取る時間がなくてさぁ。
 でも確かウチの看護師は殆どみんな持ってるんじゃないかぁ。
 この中だと、師長と桜井さんと美空は確実に持ってるはずだよ。
 冴島さんも目指してるのかい?」
ホワイトボードの名前の所に丸をつけながら尋ねる。
「はい。」
「頑張りなよ。」
(慣れてくるとオマエも頑張れよって彼女も言うのかなぁ)
266モジャモジャ物語:2008/10/29(水) 21:39:51 ID:SqHgoZSF
「他に何か質問は?」
「あの〜仕事とあまり関係なさそうな事でも宜しいですか?」
「独身だよ。」
「そうじゃなくて、里原さんの指導看護師もされてるんですか?」
佐倉はなかなか人の話をよく聞いている冴島に感心した。
「新卒のときは師長が直々に教育するんだけど、ある程度経験がある看護師は僕が教育するんだ。
 まぁ、すぐに上なのは年齢だけになって人生相談だけになるんだけど……。」
「そ…そ…そうなんですか。」
「里原さんがどうかしたの?」
「看護学校でよく同じペアだったような気がするんです。
 ペアってだいたいあいうえお順じゃないですか。」
どこかで聞いたような話だ。
二日酔いの頭を整理してみる。
「そういえば、昨日里原さんも同じようなこと言ってたなぁ。
 今度聞いてみたら?どんな学生時代どうだったの?」
「私は普通の学生でしたけど、彼女は確か看護実習で行った病院の先生が好きになって
 卒業後一緒に外国に行ったとか聞いてますけど……。」
「朝田先生のことだね。今も一緒にいるよ。」
「い…今もですか…。本気だったんだ……。」
なんでも当時は周りからずいぶん冷やかされていたらしい。
「彼女は腕は良いんだけど、それで妬まれることも多いから仲良くしてあげてよ。」
「私もよく生意気だって言われます。」
冴島が初めて不安そうな表情を浮かべる。
「そうならないようにするのが僕の仕事なんだけど……・
 女性の世界って複雑なんだよねぇ。」
先日もやれあの医師と付き合ってるのは自分だとか向こうだとかの喧嘩に巻き込まれたばかりである。
「まぁいわゆる名ばかり管理職なんだよねぇ……。他に何か質問あるかい?」
だんだん打ち解けてきてきたのか言葉が雑になる。
「特に無いです。」
「そしたら今度は僕から質問して良いかな?」
「ど…どうぞ……。」
鋭い視線が佐倉を捉えた。
267モジャモジャ物語:2008/10/29(水) 21:41:31 ID:SqHgoZSF
「ドクターヘリについて聞いても良いかな?」
「答えれる範囲ならですけど。」
「僕も乗るらしいだけど、移動中って外とか見えるの?」
「ひょっとして怖いんですか?」
クスリと一瞬笑って冴島が聞き返す。
「飛行機でも通路側なんだよね。」
「外は見えないと思います。ドアが閉まってますから。」
「良かったぁ!!高さより景色が問題だと思うんだよなぁ。」
「ただ……」
喜ぶ佐倉に冴島が続ける。
「揺れは凄いです。私も慣れるまで大変でした。シートベルトと簡易椅子ですから。」
「実はさぁ、来月からウチでもドクターヘリ運用するって言うんで今日から僕乗るらしいんだよ。」
佐倉は冴島にすがる様にみる。
「師長がさぁ、男として先陣を切れって言うんだ。これってパワハラにはならないのかなぁ?」
「期待されてるんじゃないですか?」
「まずは師長が乗るべきだよ!慣れるまで毎日でも乗らせるって言うんだよ。僕が慣れたら次の人なんだって」
「案ずるより産むが易しですよ。」
「男の看護師って珍しいでしょ?先生と間違えられないかなぁ?」
「前の病院にも男性のフライトナースの先輩いらっしゃいましたが、
 私の知る限りではそんなトラブル聞いたことありません!」
冴島が少し呆れたように語尾を強める。
「ちょっと安心したよ。乗る前は空腹が良いのかなぁ、満腹がいいのかなぁ。
 酔い止めは車ので大丈夫かな?」
「さ…さぁ…」
言葉を失っている。
副看護師長の威厳は完全に失われてしまった。
「私の初フライトのときは先輩から前日は早く寝るように言われました。」
「僕なんかさっきメールで一行だよ。午後13:00へリポートに来るように。だよ?
 それも受信時間朝の四時だよ。寝てるよ!
 下の方まで見るとさぁ、そのメール院長から進藤チーフと師長に五日前に来てるんだ。
 一日一回は見ろよな!メールを……」
「師長もお忙しいのでは……。」
これではどっちが指導看護師なのかわからない。
「こうなったら当たって砕けろだな。」
「砕けちゃ駄目だと思います。」
冴島がボソリと突っ込んだ。
268モジャモジャ物語:2008/10/29(水) 21:44:20 ID:SqHgoZSF
>>262
ERが舞台になります。
>>263
ハンドルネーム考えたことないや。
みんなどうやって決めてるんでしょ。
期待に応えられるよう頑張ります。
269名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/30(木) 09:55:29 ID:meBGAJrp
スレ違いかも知れないけど今白い影の再放送やってるね
270名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/30(木) 12:07:36 ID:sBCbnSwn
ヘリ乗るの確かに怖いよなぁ
271名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/30(木) 22:44:54 ID:qN6n4h9O
>>268
モジャモジャ面白いw
メールのくだりわろたです。

期待してます〜
272モジャモジャ物語:2008/10/30(木) 23:00:28 ID:EIcYGmPr
ちょっと早いが午後一番でヘリに乗るということで、佐倉は早めに昼食をと考え食堂へと向かった。
「冴島さんもおいでよ。」
食事をしながら話すというのはリラックスできると、看護学校の教科書に書いてあった気がする。
「副看護師長!こっちこっち!」
トレイを持って席を探していると、自分を呼ぶ声がした佐倉があたりをキョロキョロと見回す。
「こっちですよ。」
声の主は後輩の美空あおいと里原ミキであった。
「おお…もうお昼かい?」
時計をチラッと見る。
「副看護師長も今日ヘリに乗るんですよね?」
「そうだよ。」
「何でも看護師長メールした気になってたみたいですよ。」
「この職場八分感どう思うよ!」
佐倉が水をがぶ飲みする。
「一番最初に乗れるなんて役得ですよね。」
高所恐怖症のことを知っている里原がニヤニヤ笑う。
「昔は素直ないい子だったのにこんな風に……。冴島さんは見習っちゃ駄目だよ。」
冴島はひたすらズルズルとうどんを啜っている。
「里原さんはNGOに居たとき、ヘリには乗らなかったの?」
「乗りましたよ。」
「適任者いるじゃん!もしかしてこれはパワハラか?苛めか?」
やりとりを聞いていた冴島が美空に尋ねる。
「佐倉さんはいつもこうなんですか?」
「そうよ。からかうと楽しいわよ。冴島さんだっけ?アナタもやってみるといいわ。」
「は……はぁ……。」
あっけに取られている冴島に今度は里原が話しかけてくる。
「私も最初の頃はこんな副ならすぐに私がなれると思ってたのよねぇ。」
「どういう意味ですか?」
「まぁそのうちわかるわよ。
 影でおばさん達に昼行灯なんて言われてるけど、これでも一応私達の上司なんだよねぇ。」
「最後の晩餐はカレーライスか……。」
佐倉は窓の外を見ている。
273モジャモジャ物語:2008/10/30(木) 23:03:36 ID:EIcYGmPr
「今日は風も程良くあって絶好のフライト日和ですねぇ。」
ヘリポートには二機が待機している。
五分前に四人でやってきたのだが誰も居ない。
「あれ?時間間違えたかしら?」
「佐倉さんが騙されるのはいつものことですが、美空さんまで騙されるとは思えないですよね。」
「毎年恒例の病院のスタッフを総動員して、佐倉さんを騙すエイプリルフールはまだ先だし……。」
冴島はもはや突っ込む気すら起きない。
そこへ白衣を身に纏った外山と小島それに緋山と藤川の四人もやってきた。
「モジャモジャナースも今日ヘリか?」
「外山先生もですか?よろしくお願いします!」
「あの中で男二人はむさ苦しいな。次の組は華やかだな。」
後発のヘリは小島・藤川・美空とおっとりとしたペアのようである。
「ドクターのび太こっちと交代だ!」
藤川は戸惑って小島の顔色を見ている。
小島は耳をふさいで聞こえないフリをしている。
「ところでそちらの先生は?レジデントの先生ですか?」
「ドクターピアス…」
「レジデントの緋山です!よろしくお願いします。」
外山の声を遮って緋山が挨拶する。
「ER副看護師長のモジャモジャ…」
「佐倉です!」
外山は少し不機嫌そうである。
「なぁ、モジャモジャは今日の事いつ聞いた?」
「四時間前です。」
「ウチの連絡網はどうなってんだ?俺なんか一時間前だぞ。」
上には上が居るものである。
それで今日はご機嫌斜めなのであった。
「まぁ誰にも邪魔されずオペが出来るっては悪くないがな。」
「相変わらずオペとか急患とか好きですね。」
「しょうがないだろ、意識のある患者は朝田や進藤や財前をご指名なんだから。」
外山がドクター派遣や急患のときの熱意を日常業務にも向けていれば、
史上最年少チーフは間違いないのにと日比谷のように評価する者もいる。
そのくらい落差が激しいのである。
274モジャモジャ物語:2008/10/30(木) 23:05:34 ID:EIcYGmPr
「そういえば、新しい看護師入ったんだって?
 あれか?結構可愛いじゃないか。和風というかなんというか。」
藤川とじゃれあっている冴島を顎で指す。
「チェック早いなぁ。」
佐倉が感心したように外山の顔を見る。
「当然だ。オペはチームワークだからな。」
真面目な顔しているがサッパリ意味が分からない。
この男……実は女性患者や看護師を口説く常習犯なのである。
ただ本人は完全に遊んでいるだけである。もちろんその気はない。
本人曰く外見が気に入っても、結局中身がないと分かると興味がなくなるんだとか。
大切な後輩の失恋話を聞くのはもうウンザリであった。
「外山先生、冴島はフライトナースなんでドクターヘリでいつか会えますよ。」
「そうか。ピアスお前は仲良いのか?」
「普通ですね。あれでお嬢様なんですよ。」
「お嬢様?」
「親が大学教授で兄姉は医者。お嬢様でしょ?」
「意外と苦労してそうだな。」
「苦労??」
(この様子じゃまだ知らないんだな。)
両手を挙げている緋山はまだ外山の実家については知らないようである。
これはかなり親しい者にしか話していない秘密の話で、まだ信用できるか見定めているといったところか……。
「ところで何で僕と目を合わせてくれないの?」
「き…気のせいじゃないですか。」
「いや目をあわさない。」
顔をこわばらせる緋山。
「去年女医のレジデントにチョッカイ出して泣かしたんですよね?
 それで小島先生に厳重注意されたとか
 看護実習の学生を会議室に呼び出して採用して欲しければって脅したとか
 女性患者100人切りだとか」
誰がそんなことを?
佐倉の顔が青ざめる。
まさか小島の耳には入っていないだろうか?
「だから気をつけろって外山先生が……」
外山は口笛を吹きながらヘリの方へ歩き始める。
「ち…ちがうよ。最初のは小島先生と後姿似てたから肩を揉んじゃったの……。
 でも厳重注意はデマ。
 呼び出したのはみんなの前で注意したくなかったからで下心なんてない。
 100人切りっていうのは、夜勤が多いのには理由があるって里原さんが言ったのが間違って伝わったの。」
所々に本当の箇所があるので性質が悪い。
否定すれば否定するほど泥沼にはまりそうである。
275モジャモジャ物語:2008/10/30(木) 23:08:30 ID:EIcYGmPr
「外山先生だって凄いんだよ!」
「小島先生から聞きました。
 初対面で口説かれず、あだ名を付けられた女医は私が始めてなんだとか。
 女扱いせず他の先生と同じように呼んでくれるのは嬉しいけど、
 同期の白石はカンガルーと呼ばれながらも、口説かれているので女としては屈辱の極みです。」
この二人本当にやっていけるのだろうか?
それにカンガルーとあだ名をつけられるとはどんな人物なのだろうか?
「一応俺指導医だぜ?少しは敬意を払えよ。」
「それならもっと指導してください。ちゃんと教えてください。」
「んなこと言われも、俺今まで部下持ったこと無いんだわ。」
そういわれてみれば、外山が指導医という話は聞いたことがない。
上級ドクターでは珍しい話である。
「部下の面倒の見方教えてあげましょうか?この佐倉再生工場にお任せを。」
「モジャモジャのは参考にならん。部下の器械出しとトルネードの方が優秀じゃないか。」
「誰の事ですか?」
緋山が佐倉に尋ねる。
「あそこにいる里原さんと美空さんのことだよ。」

どうして二人程の正看護師がいつまでも自分の下にいるのかサッパリわからない。
美空に至っては山城からそろそろ次の段階に進もうという話があっても固辞しているらしい。
何でもまだまだ自分の下で勉強していたいんだとか。
嬉しいようなプレッシャーのような複雑な心境である。
最初に指導看護師に指名されたときは
オペでグラフトを採取したとか、急患に気管挿管をしたとか
二人ともトラブルの総合商社という評判だったので、かなり不安にだったのが嘘のようである。

「おい。ピアス呼んでるから行くぞ。」
パイロットが手招きしているのが見える。
「ああ……。近くで見ると狭いなぁ。まるで空飛ぶ棺桶だ。」
「縁起でもないこと言わないで下さい!」
「全くだ。俺が居る以上棺桶にはならない。」
自信たっぷりに外山が笑う。
ガシャッとドアが閉められる。
「こんなのが毎日続くのかよ〜。」
「下向いてると吐きますよ?」
緋山は念のためにと外山と佐倉にビニール袋を手渡した。
276モジャモジャ物語:2008/10/30(木) 23:12:37 ID:EIcYGmPr
>>269
やってますねぇ。
一応wikiの人物表のメンバーにはもう入ってるね。

>>270
揺れが凄いらしいね。

>>271
大きい会社だとよくあることだよね。
一番最初のメールは2週間前とかw

期待に応えられるよう頑張ります
277名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/31(金) 01:40:41 ID:gIvrgKdp
最近、16番さんの書き込みがなくて残念です。
16番さんの書き込みも楽しみに待っています!!
278名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/31(金) 13:22:22 ID:7JR4ELil
モジャモジャ受けるなぁ
中間管理職の哀愁を感じる
279モジャモジャ物語:2008/10/31(金) 21:35:33 ID:guz6K6hl
(ヘリに乗る前日はアルコールを控えよう。)
ヘリ着陸の瞬間、佐倉は固く心に誓った。
看護師としてだけではなく、男としてのプライドを支えに辛うじて乗り切った。
まるでジェットコースターのように感じた。
(なのに何故だ?)
フライトドクターの緋山は慣れているにしても、同じくヘリ初体験の外山までもケロリとしている。
「思ってた程じゃないな。」
「そうですね。」
思わず強がってしまう。
「聞こえますか?ここ病院ですよ。名前と住所と職場の好きな人の名前二人言って貰えますか?」
ヘリから降りた三人を里原が出迎える。
「佐倉亮太です。住所は……。」
「あ……大丈夫みたいですね!良かった。」
「振ったら最後まで聞ぃてよ。」
「副看護師長の好きな人なんてバレバレでつまんないです。」
じゃぁ逆に誰のが聞きたいんだと言い掛けたがやめた。
「ちょっと上空が寒かったからトイレ行って来るよ。」
「ピアス 耳が何か変なんだが?」
外山が耳を掌に当てて何かしている。
「気圧の変化のせいじゃないですか?トンネルと一緒です。
 というかちゃんとヘッドホンしてました?」
「ああ……一応な。」
280モジャモジャ物語:2008/10/31(金) 21:36:21 ID:guz6K6hl
そんなやりとりを聞きながら、ふらつく足でなんとかトイレへ駆け込んだ。
「やっぱり高いところは嫌いだなぁ。」
いつでも吐けると思ったら、気分が少し落ち着いてきた。
(外山先生は本当に平気なのか)
水道の蛇口を捻り顔を水で洗いながら考える。
ホッと一息もう大丈夫だ。
外に出ると自動販売機が目に入ったので飲むことにした。
ミネラルウォーターがガタンと出てくる。
キンキンに冷えた水が心地よく乾いた喉を潤す。
「ここにいらしたんですか」
振り向くと冴島が立っている。
「遅いから倒れたのかと思いまして……。」
「ごめんごめん。ちょっと考え事しててね。」
「考え事ですか?」
「午後から冴島さんに何やってもらおうかと思って。」
「何でもやります!小間使いにしてください。」
シャキンと背筋を伸ばす。
「まぁ美空さん帰ってきてから考えようか。」
「はい。」
二人がヘリポートに戻ると里原がこちらに寄ってくる。
281モジャモジャ物語:2008/10/31(金) 21:37:04 ID:guz6K6hl
「あれ外山先生と緋山先生は?」
すぐに二人の姿がないことに気がつく。
「外来の先生が足りないようです。」
「よく考えたら今4人居なかったんだよね。」
「外山先生はサボる気満々だったのですが、緋山先生に無理やり連れて行かれました。」
院長や山城が言っても全く聞き耳を持たない外山に仕事をさせるとは只者ではない。
彼女には猛獣使いの称号を……。
「最近の子はしっかりしてるんだね。
 僕もサボろうと思ったけど、三人への教育上やっぱり良くないよねぇ。」
「良いですよ。存分に休んでください。
 冴島さんに看護師長への『報告書の書き方』教育する良い機会になりますから。」
「ところであの外山先生がアッサリ従うなんて彼女に何者?」
佐倉がチラッと冴島を見る。
「さぁ……。そんなに凄い人という認識は……。」
冴島はすかさす首を傾げた。
「自分が外山先生のフリをして、診察しておくから任せてくれっておっしゃってました。」
「そしたら?」
「髪の結び目を引っ張って止めてました。馬が合ってるのかもしれませんね。」
「緋山先生はどんな先生なの?」
再び冴島に尋ねる。
「性格は明るいです。負けず嫌いだし失敗しても懲りないし。オペが好きみたいです。」
「似てるねぇ。」
「確かに似てますねぇ。」
佐倉と里原が顔を見合わせて笑う。
「理由がどうあれ外山先生がやる気を出してくれたら良かったね。ところでさぁ。」
「はい。」
「ヘリって一日何回くらい乗るの?」
「多いときで五回くらいですかね。夕方までですし」
五回と聞いて佐倉の顔が凍りつく。
「早く慣れてくださいよ〜。」
「珍しい励ましてくれるんだ?」
驚いて里原を見る。
「違いますよ。早く慣れてくれないと私の番が来ないんですよ。」
「僕は本番に強いタイプなんだ。知ってるでしょ?」
「緋山先生は同じことを言ってて現場でフリーズしました。」
「そうなの?」
「はい。」
「冴島さん今言葉に棘を感じたけど仲悪いの?」
「いえ……。そんなことは…。」
冴島が慌てて謝る。
282モジャモジャ物語:2008/10/31(金) 21:37:48 ID:guz6K6hl
「緋山先生といえばピアスは見ればわかるけど、何でのび太なのかしら?」
(ん〜ん。あの話して良いのかしら?
 でもこの病院では心機一転頑張りたいみたいだし〜)
ちょうど良い頃合で話題がそれ一安心した冴島が考え込む。
「冴島さん心当たりあるみたいだよ。」
「え?」
「何々?」
二人が冴島の顔を覗き込んだ。
「実は藤川先生は前の病院で除細動に通電したことあるんです……。
 私自身見た瞬間驚いたんですけど……。」
「医者が…」
「除細動に通電…。」
里原は笑いを堪えきれず思わずふきだす。
佐倉は口を手で押さえている。
(藤川先生…ごめんなさい!)
「眼鏡もかけてるし、このあだ名は考えたもんだねぇ。」
佐倉は目から涙を浮かべながら感心する。
「掛詞みたいになってるんですね。とんちが聞いてますね。私ものび太先生って呼ぼうかしら。」
(もしかして、とんでもないことを私はしてしまったんだろうか)
今更ながら藤川の今後を心配し冴島は深く後悔した。
こんなことならいつものように見ざる言わざる聞かざるでいれば良かった。
後悔先に立たずである。
「モジャモジャは捻りがないですよね。」
「機械出しだって意味不明じゃない?」
「それを言ったら美空さんのトルネードだって独特ですよ。 
 美空さんは気に入ってるみたいですけど。」
「トルネード?」
目をパチパチさせて冴島が尋ねる。
「いろいろな人を巻き込んでいくからなんだって!」
「なんか本質を突いてますよね。」
とても心配になってくる。
「私は何て呼ばれるんでしょうか?あ!帰ってきました!」
宙を見上げたその先にヘリの姿が小さく見えた。 
283モジャモジャ物語:2008/10/31(金) 21:41:34 ID:guz6K6hl
>>278
中間管理職とはちょっと違うけど、男一人で扱いにくいのかもね。
28416=吾輩は医師である。:2008/11/01(土) 20:17:55 ID:984pqXjn
吾輩は医師である。名を誠二という。
今日は吾輩の書生をしているピアスの試験結果が出る日である。
書生とは言ったが、決して一緒に住んでいるわけではないので念のため。
吾輩とピアスとの関係については、>>16-247を見て欲しい。
ちなみにピアスというのは名前ではなく、いつもピアスをしているからである。

「ああ……落ちつかない。」
ピアスが机の上の書類をグシャグシャと丸めている。
何でも口答試験で回答が上手に出来なかったらしい。
「まだ6ヶ月あるんだから、あくまで中間発表だぞ。」
「もしどんなに次頑張っても、スタッフになれないような評価だったらどうするんですか!」
そんなに出来なかったのか?と聞くのが怖い。
プレゼンテーションは発表のときに見たが、可も無く不可もなくという内容であった。
「試験結果だけでなく普段の評価も加算されるんだろう。」
「それが一番問題なんですよ!」
吾輩とピアスの上司の事を吾輩はゴットハンドと呼ぶことにしている。
何故?かというと、どんなときでも冷静沈着かつ的確な指示を出し奇跡を起こす男だからだ。
ただあまりに冷静なので、吾輩が一度人の死に慣れすぎてると言ったこともある。
確かにピアスが困っているからといって、温情で評価を良くするということは考えにくい。
むしろ冷静に評価した結果、駄目押しになる可能性の方が高そうだ。
「結果はWebで発表なんだろ?」
「そうですよ。」
ピアスはマウスを連打している。
そこへ医局のドアがバタンと開く。
慌ててピアスは画面を切り替えている。
まるでアダルトサイトを見ていたら、突然自室に母親が入ってきた男子高校生だ。
28516=吾輩は医師である。:2008/11/01(土) 20:19:03 ID:984pqXjn
「緋山発表まだか?」
「そんなに自信があるの?」
入ってきたのはのび太とその指導医のマドンナである。
吾輩とマドンナは年も近いこともあって、ちょっとしたライバル関係である。
指導医同士がライバルなのだから、
書生同士もライバルであるべきなのだが、ピアスとのび太にこの緊張感は感じられない。
緊張感どころかちょっと良い雰囲気なくらいである。
全く、真ん中分けとカンガルーといい、まだレジデントの癖に生意気である。
レジデントがスタッフになったときの文句はそのとき考えよう。
『若い癖に!!』が有力候補である。

「あらもう出てるじゃない!ほら!」
マドンナがノートパソコンの画面をこちらに向ける。
「点数順になってるみたいですね。」
のび太が吾輩の背後からディスプレイを覗き込む。
ん?ピアスの声がしない。
吾輩もそうだが攻め一辺倒のタイプは一度躓くと、土台からグラついてしまうので心配である。
「緋山も見ろよ。」
「まだ6ヶ月でしょ。大事なのは本番よ!」
さっきまであんなに確認していたのに、全く興味が無い素振りである。
全く世話が焼ける。
逆さの新聞が読めるわけ無いではないか。
「変わりに見ておいてやろう。」
ピアスの名前を探すため画面をスクロールした。
「お、白石の名前だ。」
「あらTOPだわ。」
確かカンガルーはハイヒールの書生のはずである。
鼻高々のハイヒールの顔が目に浮かぶ。
「あった俺の名前だ!」
「耳元で大きい声だすな ウルサイ!」
「藤川君次も頑張ってね。」
ない…。ピアスの名前はここ(TOP10)にはない。
「あれ?緋山の名前どこだ?」
「次のページかしら?」
のび太とマドンナがピアスに聞こえるように大声で話す。
カサカサと新聞が小さく揺れる音が聞こえる。
気のせいか?音が近づいた気がするのは…。
「良いんですよ。口答試験で失敗したんですから。」
ピアスがようやく諦めたのか吾輩の隣に腰掛けた。
286吾輩は医師である。:2008/11/01(土) 20:20:02 ID:984pqXjn
「現状をちゃんと見るのも大切なことよ。」
マドンナよ。いつも言ってるだろう。ピアスにはそれでは駄目なのだ。
こいつは自分に都合良い所しか耳に入らない女なのだ。
「自分で探せ。そして何が拙かったのか言ってみろ。」
吾輩はマウスをピアスに握らせる。
「はぁ〜い。」
「外科医は腕だけで伸し上がれるが、スーパードクターになりたきゃ教養も必要だ。」
吾輩もピアスもスーパードクターとか、名医とかその手の言葉にめっぽう弱い。
逆にそれ以外にあまり興味がない。

「あ……もしもし白石?」
のび太よ。芝居ならもっと自然にしてくれ。
気を使ったのび太が携帯で話すフリをしながら医局を出て行く。
「あああ……。たまき先生から電話だわ。自慢話ね、ちょっと話てくるわ。」
棒読みである。
白衣のポケットから携帯を取り出しながら、マドンナも医局を出て行く。
お前ら師弟は揃いも揃ってなんだその演技力の無さは……。
もっと自然にしてくれないと、残された吾輩のハードルが上がるではないか。
吾輩は慰めるより傷口に塩を塗ったり、死人に鞭を打ったり、火に油を注ぐのが好きなのである。
こういう役目はマドンナもしくはチョコレートの役目のはずだ。
「あ…あった!」
ピアスがピタっとマウスの手を止める。
「あ…タバコが切れた。」
吾輩も今のうちに避難しておこう。
「外山先生はタバコ吸わないでしょ……。」
白衣の袖をギュッと引っ張られた。
その声は既に鼻声である。
ピアスは自信過剰で気が強い癖に泣き虫なのだ。
だから吾輩と2人のときは泣き虫ピアスと呼ぶことにしている。
「どれどれ?」
一応順位の方を見てみる。
困った。予想以上に悪い。
流石の吾輩もここまで予想していなかった。
同期4人の中でダントツの最下位なだけでなく、全体でも後ろから数えた方が早いくらいである。
プライドだけは既に世界最高峰のピアスには耐え難い現実だろう。
泣くなら吾輩を解放してからにしては貰えないだろうか?
そんな捨てられた子犬のようすがり付くような目で吾輩を見ないで欲しい。
「ぶ……無様だな……。のび太からも随分と引き離されてるなぁ。」
し…しまった。ついいつもの癖が出てしまった。
287吾輩は医師である。:2008/11/01(土) 20:20:35 ID:984pqXjn
「今のなし!もう1回だ。」
「……。」
ピアスの涙腺は決壊寸前である。
「まぁ6ヶ月の積み重ねの結果なわけだから、泣いてもしょうがないじゃないか?」
「私だって6ヶ月間がんばりましたよぉ……。」
「同じ頑張ったでも他の奴とお前とでは違いがあるんだ。」
「何ですか?」
まずいもう半分泣いてるではないか。
マドンナはまだ戻らないのか?
「それはだなぁ…。指導医の差だ。」
「外山先生に力が無いってことですか。」
吾輩の辞書に不可能などないわ!この戯けが!
げんこつを落とす。
「痛いなぁ、じゃあ何ですか?」
「二人三脚でやってきた奴と1人で頑張る奴差が出るのは当然だ。」
「そんな事言われても……。」
「今度こそ俺がちゃんと面倒みてやる。」
「もう何回も聞きましたよ。
 初めて先生とあったとき、私がここに来て泣いたとき。
 最初の3ヶ月はほとんどお互いシカトだったし、泣いた後はアフリカ行っちゃうし……。」
それは言われると身も蓋も無い。
「3度目の正直って言葉があるだろう。」
吾輩は有限実行の男なのである。
「次もこんな調子だと私だけサヨナラですよね。」
「そうだろうなぁ。」
まずいぞ、まだ泣きそうである。
「今回のお前の不振には1000万分の1くらいは責任を感じてる。」
「寒っむ……。」
ピアスが真顔で引いている。
慰めてやってるのがわからんのか!この阿呆が!
「自分でも本番が大事だと言ってただろ?」
「それはそうですけど……。限度があるというか…。」
とうとう泣き出してしまった。
「わかった。わかった。もうドコにも行かず、病気にもならずちゃんと面倒見てやるから。」
「約束ですよ?」
吾輩は約束を守る男である、
288吾輩は医師である。:2008/11/01(土) 20:25:01 ID:984pqXjn
「それにしても、一体何を失敗したんだ?」
「え?」
ピアスの顔がサッとくもる。
「思い出すのは嫌だろうが、反省しないと前には進めないぞ。」
「だ…誰にも内緒ですよ……。」
そしてピアスは泣きながら吾輩に口答試験の様子を説明し始める。
もう面倒なのでいっそ涙枯れるまで泣かせることにした。
「でなんて答えたんだ?」
「それはその…選べませんって……。」
「馬鹿だな〜。何で容態を聞かないんだ?」
「あ……。」
トリアーズはERの基本である。
おおかたゴットハンド辺りが仕組んだことだろう。
感情に流されることがあるとでも報告したに違いない。
「進藤先生がですか?」
「そうだ。俺にはわかる。」
すまんゴットハンド、吾輩にはこれしか思いつかない。
「ちなみに外山先生ならなんて答えました?」
「恋人だな。家族とはあんまり仲良くないしな。」
「即答ですね。」
「外科医は判断力が大事だからな。でも人によって答えは違うから色々な奴に聞いてみ。」
「はい…。本当にまだスタッフになれますか?」
確かに悲惨な結果であることは否めないしかし、吾輩が教えるのだなれない訳が無いではないか。
「俺も初めての指導医でよくわかんなかったがもう大丈夫だ。」
吾輩は名選手にして名監督なのである。
「私…悪いところは直しますから。」
それを全部直せということになりそうだが、今日のところは言うのはやめておこう。
不意に医局のドアが開く。
「あら?お邪魔だったかしら……。」
入ってきたのは泣き女であった。
吾輩の指導医だった医師である。
そして吾輩が唯一逆らえない女医である。
289吾輩は医師である。:2008/11/01(土) 20:28:20 ID:984pqXjn
16です。
ちょっと間が空いてすみませんでした。
休暇中に新しい方が連載初めてらっしゃったので、タイトルを付けてみました。
ちなみに泣き女ってのは加藤先生です。
過去に何があったかはこうご期待。
290名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/01(土) 21:46:56 ID:pDDMsLVm
複雑な人間関係になってきましたね。
291名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/02(日) 01:56:33 ID:G4LExMfD
医龍では加藤(稲森いづみさん)は泣きの演技がうまいなあといつも感心していました。
すぐにふっと目を赤らめて涙ぐむあの演技が、出世のため冷酷な女を演じてても実はとても
患者思いの優しい医者だという、加藤の性格を表現していて魅力的でした。
パラレルワールドの中でも、そんな加藤の魅力が炸裂する事 期待してます。
292名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/02(日) 17:01:49 ID:CpU5FK5g
一人称で読みやすくなったね
293吾輩は医師である。:2008/11/02(日) 19:39:01 ID:hAKOjZ1P
吾輩は医師である。名を誠二という。
吾輩の書生をしているピアスの試験結果が振るわず慰めていたら、昔指導医だった泣き女が現れる。
ちなみに泣き女というのは、患者が亡くなるといつも瞳に涙をためていたからである。
本人は泣いてない!と言っていた。

「あら、外山君久しぶりね。」
「ERに何の用だ?」
吾輩は泣き女が苦手である。
そもそも泣き女は心臓外科のくせに何故ERに来たのだろうか。
「理由がないとかつての教え子に会いに来ちゃいけないのかしら?」
どういう風の吹き回しだろうか。胸騒ぎがする。
「今取り込んでるんだ。」
「そのようね。」
泣き女は冷めた目でピアスをみている。
吾輩が泣かしたと誤解してはいないだろか。
「あ……私……お茶入れますね。」
何も知らないピアスは泣いている顔を見られたのが、恥ずかしいのか給湯室へと隠れてしまった。
吾輩に茶を入れたことなど、片手で数えられるほどではないか。
「8年ぶりかしら?」
「そうだったか。」
「貴方に殴られて以来ね。」
「そうだな。あんときはまだ講師だったよな。」
ガシャガシャという何かが割れる音がする。
おおかたピアスが聞き耳を立てていて驚いたのだろう。
吾輩が講師を殴って干されたことは、前に話したはずなのだが……。
「そのせいで血管外科で干されたと聞いてたわ。」
「自分の出世のために俺を利用したアンタが悪い。
 やってもないオペや見てもない患者の責任をかぶせられる筋合いはない!
 でも感謝してるよ。アンタのおかげで朝田に会えた。
 そして今の俺がある。」
「それが貴方がERにこだわる理由かしら?」
「別にこだわっちゃいねぇよ。ここなら自由に患者を切れるからな。」
「それでまだ発展途上の血管外科医になったわけね。
 確かに血管外科ならERでもどこでも使える。」
「アンタの腕なら昔の俺なんか利用する必要なかったろ?」
泣き女の腕をオペに立ち会った者は、口を揃えて精密機械のようだと例える。
血管1センチ幅に10針などなかなか出来ることではない。
今の吾輩ならやろうと思えばできるだろうが、それはスピードを犠牲にすればの話である。
294吾輩は医師である。:2008/11/02(日) 19:42:15 ID:hAKOjZ1P
「あのやんちゃなお坊ちゃんが、今や私と肩を並べる上級ドクターとは時が経つのは早いわ。」
「また殴られに来たのか?」
相変わらず吾輩を小馬鹿にしたような口ぶりである。
「そんなにいきり立たないでよ。」
「アンタとはもう二度と会うことはないと思ってた……。」
「心臓外科の医局も避けてるようねぇ」
「誰が頼まれてもあんなとこ行くか!」
吾輩が苛立ちながら悪態をつく。
「朝田と会って更生したと聞いてたけど相変わらずねぇ。」
泣き女がため息をついた。
「何の用だ?まさか昔話をしに来たわけじゃあるまい?」
「そうねぇ、今更貴方と話す事もないわ。
 心臓外科に一人女医のレジデントが居てね。
 その子が先日、貴方に大変お世話になったらしくてね。」
吾輩が世話?それも心臓外科医?はて何のことだ?
「急患が来ても麻雀をやってて注意したら逆ギレしたそうね。」
はて、いつの事を言っているのだろう?
「それだけじゃないわ。若い看護師とは随分仲良くやってるようね。」
自分だって赤眼鏡とよろしくやってるではないか。
「何か言ったかしら?」
「別に……で?生活態度の指導にでもワザワザきたのか?」
「まさか!そんなの時間の無駄でしょ。今日来たのはこれよ。」
泣き女は目を細めながら、右手に持っていたクリアファイルを手渡した。
中身は先程まで吾輩達が見ていた試験結果順位表が印刷されたもののようだ。
「TOPはウチの子よ。」
結局のところ自慢しに来たのか?
昔から部下の手柄は上司の手柄、上司の失敗は部下の失敗、
   自分の手柄は自分の手柄というのが口癖だったが……。
「優秀なレジデントで良かったな。さっさと帰れ。
 ここは心臓外科みたいに暇な時間が有るわけじゃない!」
今この医局でこの話題はまずい。
ようやく泣き止んだピアスが、また泣き出したらどうするつもりだ。
吾輩にはもうどうしようもなくなる。
295吾輩は医師である。:2008/11/02(日) 19:43:28 ID:hAKOjZ1P
「伊集院君とか藤川君とか男の医者とは上手くやってるのに
 女医とはいつもトラブル起こすのは私のせいかしら?」
「トラブルなんて起こしたことねぇな。」
「じゃぁこれはどういうことかしら?」
蛍光ペンで印のついたページを見せる。
ああ…ピアスの名前のところに印がついている。
「どういうことってどういう意味だ?」
「見解を聞かせてもらえるかしら……。」
無表情な泣き女の意図が読めない。
いったい何を企んでいる?ひょっとしてピアスを引き抜きに来たのか。
吾輩にそんな人事権が無いことくらい知ってるだろうに……。
ゴッドハンドに聞いてくれと言ってやろう。
「見解も何も試験なんか所詮水物だろ。」
だいたいピアスが吾輩の思い通りに動いたことなど無いではないか。
「もし貴方が私への復讐として、同じ女医である彼女に接しているのなら止めなさい。
 貴方が私を恨むのはわかる。でも彼女には関係ないでしょ?」
「それがこれとどういう関係があるんだ?」
プリントを付き返す。
「ウチの白石がこんな事は有り得ないっていうから確認に来たのよ。」
泣き女は険しい表情をしている。
「貴方の指導力不足かしら?ただでさぇ医局は出る杭は打たれるところよ。
 油断してたらあっという間にまた潰されるわよ。」
そんなこと言われなくてもわかっている。
吾輩が年配の講師や他の上級ドクターから疎まれていることくらい。
そういう連中は吾輩の失敗を心待ちにしているのだ。
今回の件も連中には格好の材料なのは明白である。
「本当に出た杭ってのは打てねぇんだよ。」
「どうかしらねぇ。部下に一人もまともに育てられないとなるとねぇ……。
 ドクターヘリは院長の肝いりよ。」
もしかして吾輩の事を心配しているのか?
泣き女の癖に小癪な真似を…
296吾輩は医師である。:2008/11/02(日) 19:44:46 ID:hAKOjZ1P
「心配御無用。俺がシブトイのは知ってるだろ?
 飛ばされても結局ここにこれた。」
「貴方の心配はこれくらいよ。」
泣き女は親指と人差し指でCを作って見せる。
どうやら吾輩の心配をしているわけではないようである。
「彼女をスタッフに出来るのかしら?ちゃんと指導してあげられるの?
 この様子じゃ、まともな指導をしたとはとても思えないんだけど?」
う〜む。非常に困った。
泣き女は昔から吾輩の言うことを聞こうとしない。
師弟関係のときは、教授の指示は安請負するくせに、吾輩には抗議などの発言権は一切なかった。
そして吾輩が途中までやったところを良いとこ取りして、自分の功績として報告していたのだ。
泣き女が講師から助教授になるとき、
それを知った吾輩は泣き女を殴って心臓外科から血管外科と移った。
もちろん、そんなことをしてタダで済むわけがなく、不遇の数年を過ごすことになる。
「指導力に関してアンタに言われたくないな。」
吾輩だって指導医らしいことをしてもらっていないのだから、指導医というものが分からなかったのだ。
元を正せば泣き女が諸悪の根源と言っても過言ではない。
いや…それは過言だったか……。
「確かに私は指導医として最低だったかもね。」
そうだ。駄目な指導医についていたのだから、吾輩が駄目な指導医でもしょうがないではないか。
「もう6ヶ月経つはよ?」
「分かってる。あと6ヶ月でピアスをスタッフにする。」
「大丈夫なの?この点数じゃ次回TOPでも取らない限り無理よ?
 貴方が受けるわけじゃないでしょ。」
相変わらず白々しい女である。
ピアスが奥で耳をダンボにしているのを知っていて、ワザと大声でプレッシャーを掛けているのだ。
297吾輩は医師である。:2008/11/02(日) 19:52:16 ID:hAKOjZ1P

>>290
ごめんなさい
登場人物は極力減らしたつもりなんですけど、何とか付いてきてください
>>291
誠二にはあんまり伝わってなかったみたいです。
これから伝わるかな。
自分がやってみてわかることってあるし
多分誠二みたいに初めての部下だったと思うし。

>>292
ありがとうございます。
受け入れてもらえるか心配でした
298名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 01:04:39 ID:QU+75W51
我輩は誠二である…www
299名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 18:01:07 ID:GhqSG7Oy
面白くなってきたな
300吾輩は医師である。:2008/11/03(月) 20:34:33 ID:60KfPayd
吾輩は医師である。名を誠二という。
吾輩の書生をしているピアスの試験結果が振るわず慰めていたら、昔指導医だった泣き女が現れる。
泣き女は吾輩の指導力を疑問視していた。

「良かったのか?あんなこと言って……。」
余程怖かったのか、ピアスはまだちょっと震えている。
「わ……私……なんて事を……。」
嗚呼…とピアスが床に崩れペタンと座り込む。
「お前もあれだな。カッとなって干されるタイプだな。」
吾輩はポンポンと揺れている肩を叩いて慰めた。
「い…今から謝って来ます。」
「無駄だろ。あんな啖呵を切ってどの面下げていく気だ!」
ピアスがですよね……と蚊の鳴くような声で呟き、ガクッと肩を落とす。
「まぁ、どうせスタッフになれなきゃ、もう会わないわけだし良いんじゃないか?
 泣き女はERにも来ないわけだし……。」
「それにお前にはスタッフになってもらわんと困る!!」
まさか泣き女もカンガルーの面倒を見ているとは知らなかった。
ピアスがスタッフになれないということは、
最初の技量は同じ以上、吾輩が泣き女やハイヒールに劣っているということではないか。
冗談ではない!泣き女の下というのは耐えられん!
吾輩が女医の下などと屈辱の極みである!

それにさっき知ったが泣き女の中で吾輩と位置づけが、
『自分の厳しい指導に付いて来れず逃げ出した軟弱者』という認識であることがわかったのである。
確かに殴ったときに『もうアンタにはついてけねぇよ!』とは言ったが、
そういう意味では断じて無かったのだが……。
出世すると目が耄碌するというが、耳まで遠くなるというのは初耳である。

吾輩が本気を出すと、どうなるか見せつけてくれる!
301吾輩は医師である。:2008/11/03(月) 20:35:31 ID:60KfPayd
「あ…あの…外山先生?何か怖いですよ。」
「ああ…すまん。それにしてもよくあんな啖呵切れたな!」
「言わないでください……。」
まさかピアスにあんな度胸があると思わなかった。
「きっと小娘の戯言だとすぐ忘れてくれますよね?」
それは多分無理な相談だろう。
無表情な泣き女があんなに顔をしかめていた。
散々な泣き女の来襲だったが唯一の収穫であった。

「普通は一年でやることを半年でやるんだ。
 あのくらいの意気込みは必要だろ。」
「え?」
「今日から寝る間も無いと思えよ。」
ピアスはポカンと口を開けている。
本当にさっきと同一人物か?何か乗り移ってたのではないか?
「何がそんなに楽しんですか?」
「ん…ん?」
「こっちは人生の問題なんですよ!」
「悪い悪い!」
楽しそう?吾輩が?
確かにこれからどう教えていこうか考えると楽しみである。

「ところで加藤先生が指導医だったなんて初耳ですよ。
 そういえば、朝田先生と出会う前の話ってしてくれたことないですよね。」
「聞きたいのか?」
「自分の指導医がどんな経歴かって結構重要じゃないですか!」
もしかしてピアスも派閥とかに興味があるのか。
ちょっと意外である。
安心しろ!もう先程本流から外れることは決定したではないか。
さては今更ながら泣き女に啖呵をきって焦っているのだな。
302吾輩は医師である。:2008/11/03(月) 20:36:58 ID:60KfPayd
「そんなに知りたいか。」
「どんな風だったんですか?」
「親父達がいる東都大付属病院だけは避けたくてな。とりあえず片っ端から見学してたんだ。」
「どうしてですか勿体無い!」
東都大学と言えばエリートコースである。
しかも吾輩の父親はその第一外科の教授である。
「兄貴も、姉貴もいるんだぞ?」
「良いじゃなですか!」
兄はその助教授、姉は講師をしている。
「どこが不満なんですか?」
「昔から変な家でな。テストで90点とっても怒られるんだぜ?
 なんか疲れちゃってな。」
「でも東都大には入ったんですよね?」
「日本で一番の難関に行っておけば、将来の選択肢も増えるからな。」
吾輩は何事も計画的なのである。
学生時代は来たるべき日に備えて、ひたすら修練の毎日であった。
「意外ですね。てっきり遊んでたのかと。」
「ピアスの居た三流私大とは違うんだよ。」
プクーと頬をピアスが膨らませる。
丸い頬をさらに丸くしている。
まるでリスである。
「それでそれで?」
「風の噂で泣き女の噂を聞いた。」
「噂って?」
明真大学に丸メガネの懐刀で、出世街道をひたはしる凄腕の女医がいるという噂であった。
その噂に興味を持った吾輩は早速知人の伝手を頼り見学室へと潜り込んだのである。
「そこで腕にほれ込んだと……。」
「いや。別に……。」
吾輩はそんなに浅はかではない。
そのときはまぁ調子が良い日だったのかも知れないと思い。
そのまま帰路についたのである。
「わかった!その後何回か見て弟子入りしたんだ!」
ピアスは人の話を聞く気はないのだろうか?
ちょっと鬱陶しくなってきた。
「いや、確かに凄いとは思ったがまぁ……。」
「じゃぁどうやって出会ったんですか?」
「黙って聞かないなら面倒だからここまでするぞ。」
ピアスが慌てて自分の口を手でふさぐ。
「何度も見学してたら落ち武者に顔を覚えられてな。
 君は見かけない顔だがドコの医局の者だい?って感じでだな。
 最初は面倒はごめんだから適当に話し合わせてたんだ。
 そしたら、今度夕飯でも食おうという話になったんだ。その時はそれで別れた。」
吾輩と泣き女との出会いはそれから一週間後の話である。
303吾輩は医師である。:2008/11/03(月) 20:39:07 ID:60KfPayd
落ち武者は木原のことです。
あしからず。
丸メガネは若き日の野口です。
http://www28.atwiki.jp/doctorblue/
に追加してみました。

304名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 21:20:18 ID:ml5oVb6g
緋山が切った啖呵ってなんですか?
私が読み飛ばしてるだけだったらすみません。
305名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/04(火) 11:35:58 ID:OjaTK0py
GJ!!おもしろくなってきた!
306名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/04(火) 17:46:43 ID:3FnkPfuM
どんな啖呵を切ったんだろう
307吾輩は医師である。:2008/11/04(火) 20:24:00 ID:9+3NaoQg
吾輩は医師である。名は誠二という。
書生のピアスが吾輩と泣き女との関係を知りたがるので…
少し昔話をしているところである。

「君が外山君かい?」
「アンタ誰だ?」
吾輩は目を疑った。
落ち武者に誘われた店がスーツ着用を義務付けるような店であったこともあるが、
さらに驚いたのは落ち武者が居るべきはずの場所には、
何故か見慣れない丸メガネと泣き女が仲良く座っていたからである。
「木原ちゃんから興味深い話を聞いてね。悪いんだけど変わって貰ったよ。」
「東都大学医学部教授の息子さんが私のオペを見学かしら?」
どうやら吾輩の正体については、ある程度下調べをしているようであった。
まさか名前だけでここまでたどり着くとは思っていなかった。
「ああちょっと風の噂で聞いてね。」
「加藤ちゃんは有名人だからねぇ。」
「野口先生のご指導があればこそですわ。」
この二人が師弟関係だということを知ったのはこのときである。
思えば不思議な組み合わせではある。
「で俺に何か用ですか?」
「外山教授に……まぁ所謂お父上に聞いたよ。今年主席で卒業なんだって?」
なんだ。そんな事まで調べてたのか。手回しが良いというかなんというか。
「血管外科が専門だそうねぇ。学生時代で何か思い出に残ったことはあるのかしら?」
「救命救急センターでERの研修をしてたときに
 医者になる資格ないって言われたくらいからかな。」
「何それ?」
泣き女は吾輩を見つめる。
308吾輩は医師である。:2008/11/04(火) 20:25:05 ID:9+3NaoQg
「強盗が運び込まれてね。それで犯人に同情したんですよ。
 親とかにむかつく気持ちがわかるって言ったらそう言われたんだ。」
「落ち込んだ?」
「別に外科医は腕一本で勝負できる。気にする必要がどこにある?」
「気に入ったわ。それならウチにいらっしゃい。」
「は?」
「腕を磨くのに良い方法を教えてあげる。腕の良い医者の下で学ぶことよ。」
「加藤ちゃんはまだ若いけど、こう見えてウチの心臓外科のエースなんだよ。」
丸メガネは少し自慢気であった。
流石の吾輩も少し戸惑った。
何しろ急な話だったから……。
「ちなみに医局特有の先輩・後輩関係はないわよ。
 私は指導医やったことないから。
 そういう体育会系のノリ女の私には理解できないのよ。」
吾輩としては大助かりである。
腕の無い医師が威張り散らすのをみるのは気分が悪くなる。
「加藤ちゃんにはもう講師をやってもらってるからねぇ。
 でもそろそろ部下を持たせようと思ってたところで、木原ちゃんから君の事を聞いてね。
 名前を聞いてどこかで聞いた名前だと思ってね。
 学会の名簿で捜したよ。 
 お父上にお伺いしたら君に任せると仰ってたよ。」
当たり前である!元々聞くつもりなど無い!
それにしても、吾輩の知らないところで話が進んでいる気がして面白くない。
ただこれ以上兄姉に習うのは絶対に嫌だったので
色々な病院を研修医として渡り歩いてみたが、
民間の病院の方が腕を磨くという点においては、設備が充実してない分適しているような気がしていた。
「アンタ腕には自信あるのか?」
「何度も見学した貴方はどう思ったのかしら?」
「精密機械のようなオペだった。。
 アンタについていけば、いつか兄貴達の鼻を明かせるか?」
「精密機械とまで言われるとは思わなかったわ。
 鼻を明かせるかどうか貴方次第じゃない?」
こうして吾輩は東都大を卒業後、明真の泣き女の下へついたのである。
309吾輩は医師である。:2008/11/04(火) 20:27:57 ID:9+3NaoQg
「その後は?その後は?」
「そこからは前にも話したろ。
 4〜5年くらいしてかな、泣き女が助教授になる直前だったかなぁ
 理不尽なこというから殴ってやった。
 一発でクビかと覚悟してたが、
 徐々に干されて心臓外科から本来の血管外科に移ったんだが
 そこでも丸メガネの影響で干されて、最後には北洋病院に飛ばされた。」
吾輩も驚いたことにかなり執念深いのである。
真綿で首を絞めるようにジワジワといたぶってきたのである。
執念深いというかもはや蛇である。
「やっぱり私謝ってきます。なんだったら土下座の一つもして!
 あ…冷蔵庫に患者さんからの差し入れに羊羹ありましたよね!
 加藤先生甘いモノお好きですかね?」
「何今更ビビッてんだよ。」
ピアスの髪をグイっと掴む。
「離してください!私飛ばされたくないんです!」
「飛ばされるもなにも、スタッフになれなきゃお前クビだから。」
「でも再就職先とかにも圧力掛けられたら……。」
「泣き女と丸メガネはもうそんな濃密な関係じゃねぇよ。」
丸メガネが後継者を選ぶときに、オシャレメガネと泣き女の間でひと悶着あったのは知っている。
恋人同士を競わせる等という悪趣味な真似は、漫画や小説の世界だけだと思っていた。
ちなみに吾輩の知るところによると、
泣き女はそのときクイーンに幾度と無く世話になり、
それ以来クイーンに師事していて、海外に留学後もちょくちょく連絡を取り合っていたらしい。
その縁もありメディカルシティー設立の際には、すぐさまクイーンの下に駆けつけたのである。
情報源が落ち武者と真ん中分けなので、正直どこまで本当かわからない……。
ただ二人がよく話しているのは目にするので仲は良いのだろう。

正直丸メガネを敵に回すより、もっと大変なことになっても不思議ではないが、
ピアスには内緒にしておこう。面倒である。
「そうなんですかねぇ?」
「まぁ丸くなったってことじゃないか?」
「だと良いんですけど……。」
ピアスがホッとため息をつく。
310吾輩は医師である。:2008/11/04(火) 20:29:25 ID:9+3NaoQg
『白石如きならこの程度の差はハンデにもなりません。
 むしろ全然足りないくらいです。
 TOPが白石なんてみんな流したんじゃないですか。
 まだ折り返し地点ですし……。
 応用の利かない秀才と1%のひらめきを活かす天才の差をお見せいたしましょう。
 私にだって外山先生と司馬先生というこの病院では5本の指に入る先生がついています。
 二兎を追う者は一兎を得ずという言葉があるように、
 私は手技で同期の誰にも負けるつもりはありません。
 むしろ白石優等生だから逆にTOPが負担になったりして……』

こんな啖呵をあの泣き女に向かって切った威勢の良さはどこに消えたのだろうか?
自分を天才なんて吾輩でも言わない。
それにしても、この場に居ないのに名前を出されたスモーカーはとんだ災難である。

「加藤先生が嬉しそうに出て行ったが何かあったのか?」
入れ違いにゴットハンドが医局へやってきた。
どうせハイヒール経由で後から分かる話なので、吾輩はとぼけておく事にする。
それにしても嬉しそうだった?何かの間違いじゃないか?
もしやまた吾輩を痛めつける計画でも思いついたのだろうか?
ピアスの道連れにされた感がある。
311吾輩は医師である。:2008/11/04(火) 20:30:06 ID:9+3NaoQg
「チーフミーティング荒れてるぞ。」
そういうと、ゴットハンドはジロリと吾輩とピアスに視線を送った。
「悪かったなぁ。俺達のせいで……。ロクに面倒みてなかったからな。」
だいたいの察しはつくので、素直に頭を下げた。
「吊るし上げでもくらったのか?」
「まぁな。特に院長がおかんむりだった。」
「進藤先生、私も前の病院での良かったことが忘れられず、
 引きずってて話聞こうとしませんでした。」
ピアスにしては珍しくシュンとして吾輩の隣に来て頭を下げる。
「おいおい、お前らどうしたんだ熱でもあるのか?
 他の科の先生に皮肉られるのもERチーフの仕事の一つだ。
 外山がアフリカに緋山を連れて行こうとして、STOPが掛かったことも知ってるし
 緋山が毎日辛くて辛くてしょうがなかったのも知ってる。」
流石はゴットハンドなんでもお見通しなのだ。
まさか吾輩がアフリカにピアスを連れて行こうとして、
諸々の事情でNGになったことまで知っていたとは驚きである。
「人の目がどうして前に有るかしってるか?
 どんな時でも前に進むためにある。」
「私はもう迷いません。」
「別に迷うことは悪いことじゃない。
 この6ヶ月悩んだことで、二人とも一皮向けたみたいだから、
 俺はそれで良かったと思ってる。」
「いろいろ上に行くと大変なんだな。」 
「あれだけいたレジデントも緋山と藤川だけになってしまった。
 確かにERは激務で割に合わないかもしれない。
 でもERは医療の原点なんだ。それをお前らには忘れないで欲しい。」
何度聞いても良い話である。
他の科(特に第二外科と内科)からは赤字部門と揶揄されるER
でもだからこそ大切なのかもしれない。
ピアスは感動したのか、またシクシク泣きはじめた。
「私も原点に戻って……また一から……出直します。
 そして必ずスタッフになります……。」
泣き声でもはや文章になっていない。
「人は何度だってやり直せる。何度躓いても立ち上がれば良い。」
吾輩は神妙な面持ちでゴットハンドの話を聞いていた。
「もう大丈夫なら外で心配そうにしてる。小島達を呼んでやれ。」
忘れていた。そういえば、あの2人随分長い電話だったな。
ピアスが2人を呼びに行く。
ふとゴットハンドが小声で吾輩に話しかける。
「ところで賭けはまだ0のままなのか?」
ギクリと後ろを振り返る。
モジャモジャの賭けに、吾輩は今誰も残らないに掛けているのだ。
ちなみにゴットハンドとマドンナは、4人全員とフライトナースが残るに掛けている。
「ん〜ん、全員残るでいいか?」
「期待してるぞ!さて会議に戻るか。」
吾輩の背中をバシッと叩き、ゴットハンドは医局を出て行った。
312吾輩は医師である。:2008/11/04(火) 20:32:50 ID:9+3NaoQg
看護師の設定がおかしかったので、モジャモジャさんのに合わせてみました。
冴島は一時的に配置転換ということでお願いします。

あだ名徐々に増やしてます。
>>304
想像してもらおうと思ってました。
わかりにくくてすみませんでした。

>>305
これからもよろしくです。

>>306
肩透かしですみません。
313名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/05(水) 10:07:21 ID:SQ2oXqZf
我が輩面白いなぁ
314吾輩は医師である。:2008/11/05(水) 20:44:34 ID:1yYa2gPB
吾輩は医師である。名は誠二という。
今日は救急外来で治療した患者に初期の癌が発見されたので
書生のピアスと第一外科へと引渡しにきたのである。

「じゃ後はお願いしま〜す。」
「外山先生……もっと厳粛にお願いします。
 そういう軽口は緋山先生の教育上宜しくないのでは?」
カーディガンのお小言を聞き流す。
まったく年を取るとみんなぁ口煩くなるのか?
ピアスもああなるのだろうか。
横に居るピアスが不思議そうに首を傾げる。
「どうかしました?」
「いんや。別に。」
とりあえず、もうしばらくは大丈夫そうである。
今でも充分口煩いので少し黙るくらいがちょうど良い。
「お…あれは?」
廊下の反対側からスモーカーとフライトナースが歩いてくるのが見える。
そういえば、この前ERでメッキリ見かけないので、とうとう辞めたのかとピアスに聞いたら
最近第一外科でスモーカーやオールバックと組まされてるという話をしていた。
看護師の最高機関である小陸軍省での会議で、
外科の若手看護師が定着しない原因の一端が、彼らにあるのではないかという説が出たからなんだとか。
まぁ吾輩がいうのもあれなのだが、やりすぎたんだな。
明日は我が身にならないように気をつけなければ……。
315吾輩は医師である。:2008/11/05(水) 20:46:10 ID:1yYa2gPB
「この前の試験の結果聞きましたよ。」
「同期3人に惨敗だったんだって?」
ああ…とてもイキイキした顔をしている。
よっぽどストレスが溜まっているのだろう。
吾輩の見立ててでも
『不真面目医師』と『真面目看護師』で、
プラマイ0のちょうど良い組み合わせだと思うのだが……。
「6ヶ月の勤務態度も評価の範囲だったんで……。」
ピアスは笑いながらそれに答えた。
「俺には勤務態度をどうこう言えねぇなぁ。
 コイツが来て全然サボれなくなったんだよ。」
スモーカーがフライトナースを顎で指す。
「コイツって言わないで下さい。大槻先生に悪いですから。」
「スッカリ馴染んでるようだし、ずっと外科に居てくれて良いぞ。」
おかげで吾輩はピアスに雑用を押し付けサボり放題である。
「生憎先日受けた試験に合格したので、近いうちにERに戻ります。」
「ゆっくりしてけよ。スモーカーが悲しんでるじゃないか!」
吾輩にとって僅か3ヶ月という短い安息だった。
「いやいや、未来のER看護師長をいつまでも働かせるのは申し訳ないじゃないか。」
なんだこのグダグダな譲り合いは?
「認定取れたんだ?良かったじゃない!!!アンタ頑張ってたもんね!」
ピアスがフライトナースを抱きしめる。
ちょっと意外な光景であった。
「次は緋山先生の番です。白石先生の鼻をへし折って下さい。
 思いっきり苛める相手がTOPだと不便なんです。」
「そうよね、白石がTOPなんて許せない!」
なんとなく同期の中でのカンガルーの位置づけを理解し気の毒になった。
「ちょっと長くなりそうだからタバコ吸ってきて良いか?」
「回診が終わるまで駄目です。1本が2本になって気がつけばオペの時間です。」
吾輩の気のせいだろうか、以前よりパワーアップしているような気がするのは……。
「アンタなんか変わったわね?」
「そんなことないですよ。」
「何か威圧感は無くなったけどドッシリとした迫力が出たというか。貫禄が出たというか。」
「そうですか?」
「アンタも一皮剥けたのねぇ。」
この2人こんなに仲良かったか?むしろ会えばにらみ合ってる狂犬のようなイメージだったのだが……
316吾輩は医師である。:2008/11/05(水) 20:47:22 ID:1yYa2gPB
「ところでスモーカーこれからオペなのか?」
「ああそうだ。」
「じゃこれをよろしく。」
吾輩がピアスの背中を押す。
「そういえば、加藤先生に何か言ったか?」
「俺は何も言ってないぜ。」
先日泣き女が医局にやってきて、この病院で5本の指に入るらしいとからかわれたらしい。
「まぁ否定はしないが、ドクターは腕をひけらかすものじゃない。」
自信家なのか謙虚なのか…今だにこの男をつかめない。
「良かったですね。司馬先生の助手やり手がないじゃないですか!」
「そうなのか?」
「オペ中手間取ると怒鳴るんですよね。」
吾輩は怒鳴るだけでなく、後からこっそり蹴るタイプだ。
流石にピアスを蹴ったことは……。いや5回くらいあったかなぁ。
あれは夢の中の話だったか。深くは気にすまい。
「怒鳴られても私は気にしませんよ。」
お前の場合は吾輩に怒鳴られすぎてて慣れてるだけじゃないか。
それは果たして胸を張って自慢して良いことなのか?
「終わったら寄り道せず帰って来い。」
「小学生みたいに言わないでください!」
どうせ今日はオペの予定もない事だし、この間に帰ってやろう。
「私の居ない間に日報の返事書いておいてくださいね。」
日報??そんなものあったか??
少し考えてみる。
………
すっかり忘れていた。
そういえば、最近になってピアスはどんな風に吾輩の指導に感動しているのか知りたかったので
何でも良いから今日有ったことや感じたことを本音で書けとノートを渡している。
マドンナに交換日記とからかわれてから、
吾輩は読むのを控えていたが、ピアスは几帳面に書いていたようである。
「ちゃんと書いてあるんだろうな?」
「見てのお楽しみです。頑張って左手で書きました。」
嗚呼そういえば読むのを控えた理由に読みにくさもあった。
はたして今度はどんな内容が書いてあるのだろうか?
317名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/05(水) 20:47:47 ID:zhSr1AIr
日本の土人国並の政治レベルは世界の笑われ者
(日本人はいつまで顔面身体障害者の麻生を総理大臣にしておくつもり?????)
アメリカで史上初の黒人大統領が誕生した!
人種差別が今なお色濃く残るアメリカだがそれでも現状を打破するために有権者は民主党への政権交代を選択した。
アメリカの民主主義の底力を世界に知らしめたと思う。

ところが日本では長年に渡って自民党が政権の座につき、
政官業が癒着していてもまともな改革が行なわれることは期待薄というお寒い政治状況だ。
それでも金と権力にまみれ顔面が麻痺した麻生は脳も侵されているのか国民の審判(解散総選挙)を仰ごうとしない。

日本の民主主義のあまりの低レベルぶりに世界中の人が失笑している!あ〜情けない!!
さあ!今こそ日本の民主主義の底力を世界に示すため草の根からの政権交代の声をあげるんだ!!!

日本の民主主義の底力を世界に示そう!!! 草の根からの政権交代の声をあげるんだ!!! 民主党にチェ〜ンジ!!!
日本の民主主義の底力を世界に示そう!!! 草の根からの政権交代の声をあげるんだ!!! 民主党にチェ〜ンジ!!!
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日本の民主主義の底力を世界に示そう!!! 草の根からの政権交代の声をあげるんだ!!! 民主党にチェ〜ンジ!!!
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日本の民主主義の底力を世界に示そう!!! 草の根からの政権交代の声をあげるんだ!!! 民主党にチェ〜ンジ!!!

318名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 12:15:55 ID:8cKaWDW1
一人称がしっくりくるな
今後に期待しよう
319名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 22:12:13 ID:5fja3ba+
内科の地味な話とか想像して良い?
320名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/07(金) 00:54:13 ID:GN+v+IFC
>>319
内科の話、いいですねえ。
世の中 外科に焦点当ててる物語、ドラマが多いので、内科の話、とても興味あります。
321名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/07(金) 12:08:54 ID:AJjsVX2U
緋山はなんであんなことを言ったのだろう
何か大事なことが隠されてる気がするのは考えすぎ?
322名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/07(金) 16:34:38 ID:E4bE01GI
このスレ見て、
昔ロンブーがやってた救急車のドラマ思い出した。
スピードのなんとかっていうのが超絶の棒で吹いた。
323創る名無しに見る名無し:2008/11/08(土) 13:21:27 ID:NwrUIgI3
患者視点でみると我が輩はどう見えるんだろう
324創る名無しに見る名無し:2008/11/09(日) 16:16:59 ID:o7DvPX93
小児救急期待はずれだね
325吾輩は医師である。:2008/11/09(日) 20:19:19 ID:m87KhVDn
吾輩は医師である。名を誠二という。
書生のピアスを第一外科のスモーカーに押し付け、ERへと戻ってきたのである。
世間で言うところの部下とのキャッチボールというやつである。

「単〜純」
「そっちだったか…」
医局ではカンガルーとのび太、それにマドンナがトランプに興じている。
いつ見ても気の抜けた医局だ。
まぁやることさぇやれば、特に問題はないのだが……。
「あれ?緋山先生は?」
カンガルーが珍しく話しかけてきた。
「フライトナースやスモーカーと話したそうだったから置いてきた。」
「最近避けられてる気がするんですよね。」
なかなか勘が鋭いではないか。
その通り!試験以来ピアスはカンガルーを避けているのである。
別にカンガルーだけではない、のび太ともあまり会話をしないようにしているようである。
ピアスの話ではもう切り替えたとはいえ、
同期との会話の話題が次の試験の話題になるから嫌なんだとか……。
「気のせいじゃないか?」
触らぬ神には祟りなしである。
そういうことは、当人同士で解決して欲しい。
カンガルーを適当にあしらい席につく。
(さてどこに入れたんだろうか?)
ピアスにはいつも書いたら、吾輩のデスクの引き出しにいれるよう言ってある。
ガラガラと下の引き出しから探す。
(さてさて何が書いてあるやら。)
パラパラと最後に見たページまでめくった。
326吾輩は医師である。:2008/11/09(日) 20:20:23 ID:m87KhVDn
『11月23日そろそろ忘年会の準備らしい。噂ではレジデントは芸をやるみたいなんですが。
 瓦割っても引きませんか?』

そういえば、ピアスは少林寺拳法が特技である。
「外科医は手が命だから止めておけ。他のを期待している」と…

『11月24日外山先生のオペで拡大した心臓の変性部位を触られせて
 貰いましたが実はまったく違いが分かりませんでした。』
誰も一度に分かるとは思っていない。

次々と1ページづつコメントを書き込んでいく。
字は体を表すとは言うが、ピアスの場合特に分かりやすい。
吾輩に限らず納得がいかない指示のときは、極端に字が荒れている。
例えば12月4日
『日比谷先生にパッパとそんな患者処理しろと言われました。
 確かに患者は2次でしたが意識が戻った患者さんの前で言うことでしょうか?』
ああ……多分言われてすぐ書いたのだろう。
分かりやすく字が荒れている。
流石にこれだけではわからん。
少し様子を聞いてみよう。
「オイ!のび太最近ピアスとマシーンとやりあってたか?」
「あの二人いつも仲悪いじゃないですか。」
確かにその通りである。
「12月4日の当直ってのび太もいたか?」
「急になんですか?」
「ちょっと気になってなぁ。」
「う〜んと、」
のび太はトランプの手を止めて首を傾げる。
「確か初雪が降った日じゃない?」
「ああ…そういえばそうですねぇ。心臓外科の医局から見る夜景は綺麗でした。」
「初雪……ああ…あの日か」
のび太が何かを思い出したようにポンと手を叩く。
「確かその日は玉突き事故があって、久しぶりにスタッドコールが出たくらいですよ。」
「そういうことか。」
結局いつもの事だったようである。
(TPOを考えて行動せよ。っと。)

『12月11日 忘年会の出欠の返事がまだです。面倒なので出席にしておきました。』
うむそれにしても、一行とは舐めてるのか?
それとも本人に書く気が無いのか?
「のび太と二人で頑張れ」とノートに書き込む。
たまにはロングセンテンスの日報も読みたいものである。

『12月15日 内科の里見先生が診せたい患者さんがいるので
      今度時間が空いたら相談に乗ってほしいとのことです。」
ん?そういえば、朝の朝礼のときにもそんな話を聞いた気がする。
吾輩は人に頼られるのが大好きである。
ピアスが戻ったらさっそく内科に顔を出すとしよう。
327吾輩は医師である。:2008/11/09(日) 20:21:59 ID:m87KhVDn
だいぶん間が空いてすみませんでした。
>>321
緋山と白石は、影と光なのです
328創る名無しに見る名無し:2008/11/09(日) 23:56:43 ID:Ag/ipzJp
>>324
同感。小児救命、期待してたよりつまんなくて残念。
でも、バチスタが期待してたよりおもしろいからいいや。
329創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 12:11:39 ID:AiRAwrBg
夏目漱石以外にもナイチンゲールとか出てくればいいのに
330吾輩は医師である。:2008/11/10(月) 22:33:01 ID:tcOkcHUk
吾輩は医師である。名を美帆子という。
今は縁あってエリートの下で書生をしている。
最近の悩みは師であるエリートが、書生と小間使いを勘違いしてる気がすることである。

スモーカーの胃癌のオペの助手を終えた吾輩とフライトナースがエレベータに乗り込む。
「あら珍しい組み合わせが珍しい階から乗ってきたわね。」
物珍しそうな声の主は…
吾輩の師の師の泣き女である。
つまり泣き女から見ると、吾輩は孫弟子にあたる。
ちなみに今はカンガルー白石の指導医をしているらしい。
「お疲れ様です。それでは私は次の仕事がありますので……」
フライトナースはリラクゼーションフロアーのボタンを押しながら会釈した。
「ちょっとずるいじゃない。二人にしないでよ。」
小声で話しかける。
「ずるいと言われても困ります。」
困ったこの分だと食堂まで泣き女と一緒である。
正直話題が無い。
「貴方達もう食事は済んだのかしら?」
ほら来た。
「わ……私……今ダイエット中なんで。バナナしか食べないんです。」
「私は今日は当直ですのでこれから仮眠して、少し早めに夕飯を食べる予定です。」
「まだ二人とも済んでないわけね。一緒に食べましょ。」
確かに要約するとそうなのだが、人の話を聞いていないのか。
バナナダイエットなど方便である。
今日は当直であるこれでは意志の弱い人間だと思われてしまうではないか。
「緋山先生どうしたんですか?」
フライトナースが吾輩の顔を覗き込む。
どうやらコイツは既に睡眠を諦めたようである。
相変わらず上には従順な奴だ。
331吾輩は医師である。:2008/11/10(月) 22:33:41 ID:tcOkcHUk
「ちょっとオペの疲れが出たみたい。」
「バナナの栄養は2〜3時間しか効力が無いから、
 規則正しいリズムで食事を取らないと意味ないわよ。
 それに緋山先生……貴方これ以上貧相になってどうするの?」
大きなお世話である。
別にこれはダイエットの効果ではない!
断固抗議する!
確かのこの病院の20代〜30代の女性職員は吾輩を除いてスタイルが良い。
悔しいことに同性の吾輩ですら、更衣室で少しウットリすることもあるくらいである。
「気にすること無いですよ。女は体じゃないですから。」
フライトナースに慰められても説得力というものがない。
このモデル体型が!何が来年の病院案内の表紙だ!
「女は男の3倍働いて初めて同等の評価が得られるの。
 1回のオペで疲れたなんて言ってる様じゃ、先が思いやられるわね。」
泣き女の冷たい視線を感じて背中に嫌な汗が流れる。
どこが泣き女だこれでは般若ではないか。
「外山先生の3倍ならもう働いてますよ……。」
吾輩の師は雑用や簡単な治療は、OJTという錦の御旗の下、全て吾輩に押し付けてくる。
ちなみに他の医師達にはスパルタと見えているらしい。
前々から言われてるなら諦めもつくが、突然言われることも珍しくなく
おかげで合コンをドタキャンすることなんてしょっちゅうである。
カンガルー白石によると、それなら院内で見つければ良いじゃん!というご指摘はごもっとも。
横に居るフライトナースは苦笑いを浮かべている。
「量より質が大事よ?100人切っても100人死なせてたら意味無いでしょ。」
また背筋に冷たい汗が流れた。
この雰囲気何とかならないのだろうか?
そのときエレベーターのドアが開いた。
332吾輩は医師である。:2008/11/10(月) 22:37:42 ID:tcOkcHUk
>>329
歴史上の人物追加しろって?w
口癖とか言葉遣いとか難しいんだよなぁ。
333創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 13:47:34 ID:kiS9CVfQ
パラレルワールドガールズサイド
ご興味ありますか?
334創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 15:33:01 ID:1hl+YTfp
「振り返れば奴がいる」が本日25:00よりフジテレビ739にて連日放送開始です
スカパー加入者の方は必見ですよ

司馬江太郎(織田裕二)と石川玄(石黒賢)の二人の医師が私立総合病院「天真楼病院」を舞台に、同じ医療クルーとして深く関わり始める。
すさまじいまでのせめぎあいによって、お互いが反面教師としてわかりあえた瞬間、二人は決別を迎える。

<脚本> 三谷幸喜
<出演> 織田裕二・石黒賢・千堂あきほ・松下由樹・中村あずさ・鹿賀丈史・相原勇・貴島サリオ・川上たけし・西村雅彦ほか


335創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 16:28:37 ID:1hl+YTfp
>>333
パラレルワールドガールズサイドとだけいわれてもどんなものですか?
336創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 21:39:59 ID:W9evqOFE
>>335
女性職員の世界では?それか患者とか?
337創る名無しに見る名無し:2008/11/12(水) 07:25:25 ID:2jh8HLiA
今日初めて読みました。ドラマのパラレルということでしたので少し不安だったのですが
知らなくても充分読めました。これからも頑張ってくださ〜い

看護師さんの話も続き期待してます。
338創る名無しに見る名無し:2008/11/12(水) 20:23:45 ID:YvLU+ALo
wikiもっと活用出来ないか
339創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 22:56:08 ID:C1S+gm4a
>>338
ほんとにね
340創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 13:08:08 ID:jrer3xtj
たまには小説の感想でも書いてやれよ
341モジャモジャ物語:2008/11/14(金) 22:15:13 ID:jA0TDG+9
(もうヘリはコリゴリだよ。)
初フライトから早一ヶ月が経過していた。
既に本格的なドクターヘリの運用はスタートしているのだが
相変わらずドクターヘリには慣れていない。
 自分と同じスタートだった美空はとっくに慣れて里原と交代している。
若い世代は順応が早いからだ。という主張もワークステーションでは誰も聞いてくれない。
女性陣に年齢の話題はNGだということをスッカリ忘れていた。
ちなみに同年代?のアラフォー世代の看護師達はヘリに乗ることはないらしい。
男女平等な年功序列の廃止された世の中にこんな不条理が許されるのだろうか?
日本はいつから独裁国家になってしまったのだろうか?
 「どうかされたんですか?」
耳元で冴島が囁く。
「うわぁ!!!ビックリしたぁ!!!近くに居るときは近くに居るって言ってよ!」
三歩下がって師の影を踏まずなんだとか。
最近の自由奔放な若い看護師には、珍しく冴島は古風なのである。
歓迎会の席では三つ指をついて挨拶をしていた。
こんな彼女もいつかは自分に幻滅して里原のように振舞うのだろうか?
ときどき後輩であるということを忘れさせてくれる程である。
「ちなみにヘリってさぁ、どのくらいでみんな慣れるもんなのかな?」
「……」
ノーコメントがこれほど応えるとは思わなかった。
「冴島さんはどのくらいから自信持って乗り始めたの?」
「どのくらい……」
「僕は明日もヘリかと思うと有休取りたくなるんだよね。」
これは冗談ではない。
だが有休休暇には上司の承認が必要である。
つまり俺の場合には看護師長である山城の許可が必要なのである。
彼女が俺の有休を求めてくれたことは……ない……。
自分は参観日だの保護者会だの結婚記念日だので結構気軽に休んでいるくせに……。
まぁそれは良いとして…。
返答に窮しているところをみると、彼女は意識せずに慣れていったようである。
342モジャモジャ物語:2008/11/14(金) 22:16:30 ID:jA0TDG+9
「話は全然変わるんだけどもう病院は慣れたかい?」
「お蔭様でなれました。」
「それは良かったぁ〜。
 前の病院では看護師の中で浮いちゃってたって藤川君から聞いてたからさぁ。」
いつも思うのだが「藤川」という言葉に一瞬ピクっと頬を引きつらせている気がする。
他のレジデントの名前のときには無い反応である。
「前にもお話ししましたとおり、藤川先生の話は3-5割引きで聞いてください。」
「そんなに仲悪いの?」
この前、日比谷先生に連れてこられた彼と食事に行った時に聞いた様子では、
むしろ向こうは好意を持っているように感じられたが……。
ちなみにその席で次は小島先生を連れてくるよう強要したのは内緒だ。
その代わりに自分は彼女を連れて行くことになっている。
「今は興味がありません。」
今はというのはどういう意味なのだろうか。
照れ隠しだろうか。
彼とはお調子者同士気があうので頑張って欲しいものである。
 ちなみにもう一人のレジデントの緋山は根が人見知りなのか
とても警戒されていたが当直で困っているところを助けて以来心を開いてくれるようになった。
今では副看護師長としての自分に敬意を払う数少ない医師の一人である。
「藤川君のどこが嫌いなの?」
「嫌いなんて一言も言ってません。」
うん。確かに言ってない。
でもなにも口を尖らせてまで抗議することだろうか。
冴島と藤川がくっついてくれれば、自分も外山を出し抜いて小島に近づけると企んでいるのだが
この様子では気が遠くなりそうな話であった。
343創る名無しに見る名無し:2008/11/15(土) 17:24:04 ID:/Y5B05KW
パラレルワールド楽しいな
344創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 16:00:49 ID:OPbd2NSz
読書の秋だし誰か短編でも書いてくんないかな
345創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 22:56:17 ID:jugrDvTW
>>342
久しぶりに見たら腹黒いキャラやね
346創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:52:12 ID:hzhYwFVM
なんだ、このスレまだあったのか
347創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 22:32:25 ID:jyK28Fzj
止まっちゃったね
348創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 23:42:25 ID:jFJxkldB
死名染
349創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 13:30:35 ID:0Jedo2n8
男の看護士ってリアルにいるん?
350創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 17:47:08 ID:R/4XKATS
いるよ
今は正式には看護婦や看護士という言葉はなく男女とも看護師だけどね
351創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:51:58 ID:FogcYJjz
我が輩は医師である。名を誠二という。

最近、我が輩に気になるオナゴが出来た。
名をドクターピア…いや、間違えた。名を緋山美穂子という。

今日もピアス女は元気に仕事をしている。
一見クールで聡明に見える容姿とは裏腹に、彼女は情に脆く優しい一面を持っている。
そう…人形の様に整った顔の下で、仕事に対する情熱の炎を燃やしているのだ。

そういう女、なんて言うんだっけ…
そうだ、アレだ。「ツンデレ」だ。
うわっ!モロ我が輩の好みのタイプではないか…!

・・・・萌え〜

可愛いよ…美穂子タン可愛いよ…!ああっ!美穂子タ〜ン!

美穂子タンと付き合いたい…我が輩は美穂子タンと付き合いたいのだ。
いや!付き合うだけではダメだ!結婚せねば!
そして結婚して我が輩の子供を産んでもらってそれで…

ああ、出来れば結婚しても仕事は続けてもらいたいな。
だってドクターピアスでこそ美穂子タンだもん。

…あ、今美穂子タンが我が輩を見た。…嬉しいww
あれ?どうして行っちゃうの?

そうだ、今日も帰りは美穂子タンを送って行かないと。
もちろん本人には言わずに尾行して見守るだけだけどね!

だって悪い虫が付いたら困るじゃん?美穂子タン可愛いからさ。

そうして我が輩の一日は終わっていく。

皆さん、こんな我が輩、キモいデスカ??

『完』
352創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 14:57:48 ID:C64hDL6E
海猿vs医龍はまだですか?
353創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 21:15:38 ID:f9ecdvqN
にん
354創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 21:17:52 ID:aVMoZ7A1
にん?
355創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 12:04:45 ID:pSrxeCF9
二次創作は難しいよな
356創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 18:38:07 ID:SP5BaMub
ジリリリリン
目覚まし時計が鳴り響く。
(うう〜ん。)
手探りで音の発信源を探す。
「あと…5分……。」
まだ早いじゃないか。
っていかん!今日は週に一度のスタッフミーティングの日だ。
指導医の進藤先生にまた怒られてしまう。
慌ててスーツに着替え、家を後にする。
病院へは車で15分
だが…昨日同僚の高杉達としこたま酒を飲んだため
今日は電車で通勤だから早めに時計をセットしたんだった。
(確かそんな気がする。)

電車はラッシュで混みあっているが、幸い2駅だから特に座れなくても問題ない。
逆に次の駅で奥に押し込まれて降りられなくなる方が心配だ。

「おはよう。」
「お二人さん、あれから二人でどこか行ってたのかい?」
「ちがうって先そこであったんだよ!変な勘違いするな。」

病院の最寄り駅で、同僚の血管外科医 高杉夏美と胸部心臓外科医 坂本純一を発見する。
(多分朝帰りだな。)
その証拠に高杉のオシャレな赤い服が昨日と一緒だ。
坂本はどうせコンビニででも慌てて揃えたのだろう。
この二人とは同時期に明真にヘッドハンティングされて来たことと、
ERの医局によく顔を見せることもあり仲が良い。
別に付き合ってても、お互い年頃の独身なんだし何とも思わないのだが……。
小島先生曰く、『結婚は出来るときにしとかないと一生出来ないもの』らしいぞ。
357創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 19:39:07 ID:SP5BaMub
「これはこれは中田大先生……昇進早々遅刻とは余裕だね。」
「からかわないで下さいよ〜。」
丸いメガネがチャームポイントの藤川先生……彼はフライトドクターである。
ドクターヘリに乗り患者を現場で治療するのだ。
救急車のドクター派遣をイメージして貰えればわかりやすいかもしれない。
彼はERのムードメーカーだ。
なんとか時間通り医局にはついたのだが、
それでは社会人としては失格であった。
腕組した進藤先生がホワイトボードの前に立っている。
「いつも言っていることだが、集合時間に開始できるよう5分前行動を心得てくれ」
「すみません。」
「特に今日から上級スタッフなのだから…」
お小言が長い。正論なだけに手短に願いたいものだ
358創る名無しに見る名無し:2009/01/04(日) 20:21:35 ID:fY+VYCkL
ドラマ版チームバチスタの栄光の酒井先生をと田口先生と藤原さんを登場させてみたら?
359創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 21:58:35 ID:qi00ZD8J
ドクターKを入れたら面白そうだと思ったがカオス化するだけか。
360創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 22:59:26 ID:i9eiOkwd
誰か書かないかな
361創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 19:32:09 ID:WJBDsnQ/
書いてみてもよい?
362創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 21:02:01 ID:roAGthNU
書いて書いて!
363創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 19:00:23 ID:1ATNvhuH
357の続きで良ければ書こうかな。
ちなみにリレーにしませんか?
364創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 22:30:10 ID:xCvNslsy
リレーか。難しくないか?
365創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 22:55:09 ID:6SBlp3t0
リレーか
短いレスでリレーのネタスレならよくあるけどちゃんとしたのはロワ系以外見たことないな
366創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 00:43:45 ID:kQFYfrqY
木原の出番はないのですか?
367創る名無しに見る名無し:2009/03/20(金) 18:58:21 ID:xqUMk0q+
>>366
書けば?
368創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 21:52:55 ID:xcAY4B+d
新しく赴任してきた医師ということで書いてみる。
ただライバルキャラとか考えるのに協力して干す良い
369創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 19:37:54 ID:L3tYWId5
誰か書けよ
370創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 11:35:09 ID:TaI4PJSF
救命救急また放送らしいね
371創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 11:53:22 ID:+wcvD2c4
救命救急ってなんスか?
372創る名無しに見る名無し:2009/05/27(水) 21:19:26 ID:N2+3XSFf
救命病棟だろ
373創る名無しに見る名無し:2009/11/09(月) 17:08:26 ID:m8DuZ9o6
保守
374創る名無しに見る名無し:2009/12/13(日) 09:16:51 ID:Sxgph432
面白かった
保守
375創る名無しに見る名無し
誰か書いてくれ