♪ちゃ〜ら〜 ちゃらら〜ら〜ら〜ら〜 ちゃ〜らら〜 ちゃらら〜ら〜
♪私は天海春香です!イェイ!トレードマークは頭のリボン!
<<プツッ>>
”はい。天海春香です。ただいま電話に出ることができません。すみませんけど、発信音の後にメッセージを<<ブツッ>>
部屋の片隅、白いゲーム機の大柄な箱の上に置かれた携帯は、応答を得る事なく空しく切れた。
着信履歴を示すランプが、小さく灯る。
コンコン・・・
部屋のドアがノックされた。
返事はない。
やがて、とまどい気味にドアが少しずつ開く。
「プロデューサーさん・・・?」
ドアの隙間から、少女が顔をのぞかせた。
キョロキョロと部屋の中を伺う、その動きに連れて、頭のリボンが揺れる。
彼女の大きな瞳が、部屋の真ん中で向こう向きに横になっている男の姿を捉えた。
『あ、もうお休みだったんですね・・・。』
声を潜めて独り言。
しかし、部屋の電気はおろか、ゲーム機とテレビ画面の電源も入りっぱなし。
ゲームのBGMが鳴り続けている。
明らかに、寝落ちしたというべき状況だ。
少女の表情に、迷いと憂いが影を落とす。
彼を起こすべきか。このまま寝かせといてあげようか。
起こしたい。それはもちろんだ。
もう一度、顔が見たい。声が聞きたい。そして、ちゃんともう一度お礼が言いたい。
『プ・ロ・デュー・サー・さん』
ささやくように呼びかけてみた。
やはり返事はない。
迷いを持ったまま、彼女は部屋に入っていった。