【 嘘 】うそつき村のウソつき家族【八百】

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【ごきげんよう・・・(*´A`)つ デスッ♪】

【ごきげんよう・・・(*゜A゜)ノ デスッ☆】

 爽やかな朝の挨拶が、鉛色の梅雨空に木霊する。
マリア様の御庭に集う乙女達が、今日も天使?の様な
無垢な笑顔で、背の高い門を潜り抜けて行く。
汚れを知らないその心身を包むのは、翡翠色の実装服。
スカートのプリーツは乱さないように、白い涎掛けは
翻らせないように・・・ゆっくり歩くのが、ここでの嗜み。

もちろん、遅刻ギリギリで走り去るなどといった
はしたない『糞虫』など
存在していようはずもない・・・

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 山実装と野良実装のニッチ(生態的地位)とも云われる
『里山実装』・・・彼女?達の群れの中で、『山百合の花粉』で受胎し
生まれ堕ちた仔実装の中で、稀に『特異な性質』を持つ個体が現れると云う。

概ね、花粉による受胎は、その草花に添えられている『花言葉』によって
生まれて来る仔供達の、パーソナリティ( 実装(人)格形成→性格 )に
大きく関与している事が、長年に亘る実経験からブリーダーは無論の事
界隈に住まう野良実装達にも、意外と広く知られている現象である。

因みに、『百合』の花言葉はウィキペディアによると『あなたはわたしを騙せない』
『山百合』に至っては、『人生の楽しみ・荘厳・威厳・純潔・飾らない愛・・・』などと
盛り沢山である・・・

この物語の『主実装達』は・・・ある意味、奇特な性格の持ち主だという事を
予め、お断りする非礼を、御許し頂けたのなら幸いである・・・
310創る名無しに見る名無し:2010/06/27(日) 06:03:35 ID:9m0vytvP
>>309の続き

 『 S 市 』・・・平成の町村合併によって
忽然と地図上に出現した『 市 』である。

しかし、過疎化が急激に進むこの地方で、場当たり的な政策は
皮肉にもより一層、限界集落の問題を際立たせる事となった。
市の中心部と郊外の丘陵地帯を結ぶ、唯一の公共交通機関は
町村合併が決した早々に『 廃 線 』という判断がなされ
それまで、細々と運行していた豆列車のレールを刻む音が
完全に途絶える事となった。

元々、人手が足りず、あってはならぬ事ではあるのだが
保守点検等も等閑だった『かの路線』は、廃線が決してから
まだ間もないと云うのに、その一部は早くも自然に帰ろうとしていた。

舞台は・・・其の様な背景のある、とある路線の山腹に穿たれた
『廃トンネル内』である・・・
311創る名無しに見る名無し:2010/06/27(日) 07:16:45 ID:9m0vytvP
>>310の続き

 【ワタシ・・・貴女をスールに選んで本当に良かったデスゥ (*´A`)・゜・】

只でさえ、湿りを帯びたトンネル内の空気を、更に不快にさせる嬌声が響く。

【お姉さま、服装の乱れは心の乱れデスゥ・・・もうこんなに湿ってるデスゥ(*´д`)=33】

トンネルのほの暗さを良い事に、2匹の実装石が当に
『キャッキャ☆ウフフ♪』をしている・・・

その描写を詳細に報告したい所であるのだが、いい歳ぶっこいた『おっさん』が
朝っぱらからこんな事を考えているなんて・・・と色々、云われそうなので
此処は涙を呑んで割愛する。(・・・残念)

気を取り直し、日本の未来に立ち篭る暗雲を取り除くのは矢張り、『外圧』が
必要なのか?吐き気を催す『 情 事 』が繰り広げられている廃トンネルに
独りの『 漢(おとこ)』の影が重なろうとしていた・・・


『 漢(おとこ)』の名前は『マリオ』・・・イタリア人である。

此処へは新たな『ヤード』(車解体場)候補地を探しにやって来た。
手頃な雨避け地として密かに目をつけていたのだが、どうやら先客がいるようだ・・・

『チッ・・・うぜぇな・・・』

同業者の存在を既に、多くの人が忘れてしまったバンクーバー五輪の
英雄の台詞に改変してマリオは思わず呟く。その流暢な日本語は伊達に
20年以上かの地で商売をしている訳では無いと云った所か?

(糞ッ・・・無駄足になっちまったな・・・)

オーバーオールの肩紐に、野焼き用のガスバーナーの重さが圧し掛かる。
思えば、既に自分は『不惑』である。若い頃の無謀な夢はとうに諦めて久しい。
弟と会社を興す事も結局は頓挫した。今はケチなコソ泥の真似事に手を貸す程
落ちぶれている。ヤード探しもその中の仕事の一つである。

(ヤードと宿って似てね?・・・あ、これってオヤジギャグ?)

しょうもない駄洒落を直に思いつくのは、自分でも如何し様も無かったのだが
あまりニヤケてもいられない。トンネルの暗がりから、いきなり
バールのような物でぶん殴られる可能性もあるのだ。解体業や古物商の輩の
気の荒さは嫌と云う程、良く知る所だ・・・
先日、自分よりも2回りも若い『社員様』に蹴られた腰が疼く・・・orz
312創る名無しに見る名無し:2010/06/27(日) 07:51:00 ID:9m0vytvP
>>311の続き

 ヤードでは『クスリ』の取引も頻繁に行われていると聞く。
ガスバーナーを握る手が思わず、力(りき)んで来るのが
空気の読めない鈍い奴と揶揄されるこの自分でも、判りたくないが
判ってしまった。このまま此処で踵を返してしまうのも良いのだが
何等、ノルマを達成せず戻る事は、自分よりも若い上司に怒鳴りつけられる
フラグである事が悔しかったし、もっと差し迫っているのは
後ろから、バールのような物で殴りつけられる危険性を回避したかった。

此処は人気の無い山の中である・・・山歩きに多少慣れているとしても
歳には勝てない。無傷で逃げおおせる事は難しいと考えて良いだろう。
しかも朝から小雨が降り続き、例え止み間があったとしても午後の日差しは
既に弱くなっていた。つまり、他人の手助けは得られそうに無い。
そもそもこの村には老人しか居ないのだ・・・(;´・ω・`)=33

(やるしか、無いか・・・)

笑いそうな膝を叱咤しつつ眼の前の暗闇に挑む。
その姿はまるでLV1の冒険者が、地下迷宮に初めて潜る緊張感に良く似ていた。