参加者リスト
7/7【LIVE A LIVE】
○高原日勝/○アキラ(田所晃)/○無法松/○サンダウン/○レイ・クウゴ/○ストレイボウ/○オディ・オブライト
7/7【ファイナルファンタジーVI】
○ティナ・ブランフォード/○エドガー・ロニ・フィガロ/○マッシュ・レネ・フィガロ/○シャドウ/○セッツァー・ギャッビアーニ/○ゴゴ/○ケフカ・パラッツォ
7/7【ドラゴンクエストIV 導かれし者たち】
○主人公(勇者)/○アリーナ/○ミネア/○トルネコ/○ピサロ/○ロザリー/○シンシア
7/7【WILD ARMS 2nd IGNITION】
○アシュレー・ウィンチェスター/○リルカ・エレニアック/○ブラッド・エヴァンス/○カノン/○マリアベル・アーミティッジ/○アナスタシア・ルン・ヴァレリア/○トカ
6/6【幻想水滸伝II】
○2主人公/○ジョウイ・アトレイド/○ビクトール/○ビッキー/○ナナミ/○ルカ・ブライト
5/5【ファイアーエムブレム 烈火の剣】
○リン(リンディス)/○ヘクトル/○フロリーナ/○ジャファル/○ニノ
5/5【アークザラッドU】
○エルク/○リーザ/○シュウ/○トッシュ/○ちょこ
5/5【クロノ・トリガー】
○クロノ/○ルッカ/○カエル/○エイラ/○魔王
5/5【サモンナイト3】
○アティ(女主人公)/○アリーゼ/○アズリア・レヴィノス/○ビジュ/○イスラ・レヴィノス
【残り54名】
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
勝者のみ元の世界に帰ることができる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
「地図」 → MAPのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
【禁止エリアについて】
放送から1時間後、3時間後、5時間に2エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。
【舞台】
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0087.png 【作中での時間表記】(0時スタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【議論の時の心得】
・議論感想雑談は専用スレでして下さい。
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
程度によっては雑談スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NG協議・議論は全てここで行う。進行スレでは絶対に議論しないでください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』
NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。
上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
【書き手の注意点】
・トリップ推奨。 騙り等により起こる混乱等を防ぐため、捨て鳥で良いので付けた方が無難
・無理して体を壊さない。
・残酷表現及び性的描写に関しては原則的に作者の裁量に委ねる。
但し後者については行為中の詳細な描写は禁止とする。
・完結に向けて決してあきらめない
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
・『展開のための展開』はNG
キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効
携帯からPCに変えるだけでも違います
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
【身体能力】
・原則としてキャラの身体能力に制限はかからない。
→例外としてティナのトランス、アシュレーのアクセス、デスピサロはある程度弱体化
【技・魔法】
・MPの定義が作品によって違うため、MPという概念を廃止。
→魔法などのMPを消費する行動を取ると疲れる(体力的・精神的に)
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる人物。(敵味方の区別なし)
・回復魔法は効力が大きく減少。
・以下の特殊能力は効果が弱くなり、消耗が大きくなる。
→アキラの読心能力、ルーラやラナルータやテレポート(アキラ、ビッキー)などの移動系魔法、エルクのインビシブル
・蘇生魔法、即死魔法は禁止
【支給品】
・FEの魔導書や杖は「魔法が使えるものにしか使えず、魔力消費して本来ならばそのキャラが使えない魔法を使えるようになるアイテム」とする
・FEの武器は明確な使用制限なし。他作品の剣も折れるときは折れる。
・シルバード(タイムマシン)、ブルコギドン、マリアベルのゴーレム(巨大ロボ)などは支給禁止。
・また、ヒューイ(ペガサス)、プーカのような自立行動可能なものは支給禁止
・スローナイフ、ボムなどのグッズは有限(残り弾数を表記必須)
【専用武器について】
・アシュレー、ブラッドのARMは誰にでも使える(本来の使い手との差は『経験』)
・碧の賢帝(シャルトス)と果てしなき蒼(ウィスタリアス)、アガートラームは適格者のみ使用可能(非適格者にとっては『ただの剣』?)
・天空装備、アルマーズ、グランドリオンなどは全員が使用可能
>>1 乙! これで火曜日から予約開始して本格始動だね。
OPの本投下はいらないのかな?
9 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/01(月) 00:02:52 ID:SqwEBkMX
ちょこ最強じゃね?
すいません、予約に関するルールが抜けてました
【予約に関してのルール】
・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行います。
・予約は必須です。予約せずに投下できるとしても、必ず予約スレで予約をしてから投下してください。
・修正期間は審議結果の修正要求から最大三日(ただし、議論による反論も可とする)。
・予約時にはトリップ必須です。また、トリップは本人確認の唯一の手段となります。トリップが漏れた場合は本人の責任です。
・予約破棄は、必ず予約スレでも行ってください。
11 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/01(月) 00:37:48 ID:OUKKqZp/
うわ人選つまんね
P3やP4はないの?
このスレって余所から移動してきた?
人選がひどい
ここは新規なの?
他所で企画して、ここで新しく始めます。
作品、人選は投票で決定していますので。
へーいらっしゃい
どこから来たの?
>>12>>14 元々外部の掲示板で発祥した企画だけど、
ルール決まってさあ始めようって時に、タイミングよくこの板が新設されたからスレ立てたんだよ
支給品は参加リストにある作品内からのみ?
それとも他作品からとかもあったりするのかな
>>17 把握
面白そうだな、様子みて投下しようかな
>>16 パロロワの企画を進める為のしたらばがあるんです
>>18 ダメですね。参戦作品以外の作品の設定は出せないんです。
まあ出せたら収拾がつかなくなりそうだし当然か
ところでこれいつになったら読めるの?
書き手の予約は明日からだな
とりあえずその前に、OPを本投下すべきか?
本投下した方がいいと思う。
本人いるなら投下して欲しいけど、明日の夜まで現れないようなら代理投下させて貰うのがいいかな。
何か微妙に古いキャラ選択だな
書き手読み手共に20代以上が多かったんだろう
まあ、年齢層高い方が安定しそうだからいいんだけど。
オープニング案投下した者です。
誤字などの修正を行ったものを、これより本投下致します。
>>24 3日みたいですね。
そこには、深く濃密な闇が広がっていた。
果てなど見当たらないその闇は、月や星が完全に消失した夜空のような混じり気のない漆黒そのもの。
あるいは、あらゆる『黒』を蒐集し尽して凝り固めたような純然たる暗黒だった。
その中にある玉座に、一人の青年が鎮座していた。
金色の髪に黒い瞳が印象的な彼は、鎧を纏い剣を携えている。
その整った相貌は、過去に、勇気と慈愛によって輝いていた。
故に彼――オルステッドは、こう呼ばれていた。
勇者、と。
その呼称は憧憬と尊敬の結晶であり、人々の希望だった。
そのはず、だった。
今この場に居るのは、勇者などではない。
鮮やかだった金髪は褪せ、澄んでいた瞳は昏く淀んでいる。
かつて溢れていた希望などは、微塵も存在しない。
在るのは、人間に対する暗い感情だけだ。
その美しい容貌は、絶望と憎悪で塗り固められている。
もはや彼は、勇者オルステッドなどではない。
遥か遠い太古から、彼方の未来に渡って存在する、『憎しみ』という感情の化身。
憧憬と尊敬ではなく、恐怖と畏怖の結晶であり、人間に絶望を与える存在。
魔王――オディオ。
それこそが、今の彼だった。
辺りの闇を見回し、オディオは思う。
底知れぬ漆黒の闇は、人の心のようだ、と。
そう。ヒトは皆、汚れ腐り切った心を持っているのだ。
自らの欲望を満たすために、他者を傷つけ奪い殺すような、醜悪な心を持っている。
たとえ、世界を救った勇者であろうとも。
たとえ、戦を終結に導いた英雄であろうとも。
例外など、存在しない。
そうだ。
今現在、闇の中で目を覚まし始めた様々な世界からの客人とて、同様だ。
覚醒していく人々を、オディオは黙って見下ろしている。
絶望の宴の、始まりだった。
◆◆
水中から泡が浮上するように、人々の意識が戻ってくる。
ぼんやりと瞼を持ち上げた彼らの目に映るのは、闇だけだった。
まるで体に纏わり付いて心を蝕むような、底冷えのする暗黒が、魔物のように横たわっている。
闇の中から、様々な物音や声がする。その多くは戸惑いや混乱、不安に満ちたものだった。
――ここが何処なのか、何故こんなところにいるのか。
それらの疑念に応じるように、闇が薄まった。等間隔で並んでいた松明が、同時に灯っていく。
炎は小さく、闇を払うには余りに弱々しい。しかし、なんとか周囲の様子が見渡せる程度には明るくなる。
そこは、無機質さを感じさせる石造りの広間だった。謁見の間を髣髴とさせるが、不気味な印象は拭えない。
一際大きな炎が二つ、音を立てて灯った。
反射的にそちらへと視線が集中する。巨大な松明に挟まれた玉座と、そこに座している男の姿があった。
あらゆる動きが、止まった。
男が猛烈な感情に満ちた瞳で、人々を睥睨していたからだ。
喧騒は自然と収束する。男が滲ませる深い感情と静かな気迫が、どんな挙動をも許さない。
「ようこそ、諸君。我は魔王、オディオ」
静かな声音が、鼓膜を震わせる。その静けさとは裏腹に、圧倒的な威圧感を持った声だった。
その声が、言い放つ。有無を言わさぬ意志を、剥き出しにして。
「これから君達には、殺し合いをしてもらう。最後の一人になるまでな」
息を呑む気配が、各所に生まれた。
戦慄が広間に伝播する。正気とは思えない男の言葉は、再びざわめきを呼び起こす。
普段ならば一笑に付すような馬鹿げた宣言だ。
だが男の、鋭く研ぎ澄まされた黒曜石のような瞳からは、嘘や冗談の雰囲気など微塵も感じられない。
それどころか、そういった揶揄の余地も存在していなかった。
狂気の沙汰としか思えない発言に真実味を持たせているのは、たった一つの感情に他ならない。
純粋さやひたむきさすら思わせる、真っ直ぐで濃密な、憎悪という感情だ。
静謐ながら苛烈な憎悪は、オディオ以外の全員を縫い止めていた。
「……ふざ、けるな」
その空気の中で、オディオに牙を剥いた者がいた。中華風の衣装に身を包んだその男に、視線が集中する。
「義破門団にも負けずとも劣らぬ外道め! ワン・タンナベ拳後継者の名において、成敗してくれるッ!!」
赤茶色の髪を振り乱し、男――ワンが構える。右手を引き、左手の肘を玉座に向けた。
それは一見、勇敢な行動に思える。
だがその場に集ったほとんどの人物が悟っていた。
彼の行動は勇敢なものではなく、激情に衝き動かされて冷静さを失した蛮勇でしかない、と。
――よせ。やめろ! 落ち着け!!
静止の声が飛ぶ。しかし、ワンは止まらない。
「ワン・タンナベ拳奥技! 怒髪天突拳!!」
ワンの気迫と絶叫が大気を揺らし地を揺り動かす。
赤茶色の髪が逆立ち、ワンの周りに闘気が具現化されていく。
闇に浮かぶ、闘志と怒りの塊。
気の弱い者なら、それを目の当たりにしただけで戦意を失してしまいそうな激怒の奔流。
それを真正面から受け止めても、オディオは玉座から立ち上がらず、眉一つ動かさない。
「愚かな……」
ただ呟いて、ゆったりと手を挙げる。
たった、それだけの挙動で。
闘気は霧消し、大気の揺らぎが消失し、圧力を纏った怒りが嘘のように消え失せる。
小さな炸裂音が鳴り、ワンの首が、吹き飛んでいた。
時間が止まったように、間が生まれる。
しかし、噴き出し続けている血液が、時の進行を証明していた。
誰かが、悲鳴を上げた。
それを皮切りにして津波のような狂乱が生じ、人々を押しつぶしていく。
パニックに陥る彼らに、オディオは威圧感に満ちた声を叩きつけた。
「彼と同じ末路を辿りたくなければ、勝手な真似は慎んで貰おう」
その言葉の意味が伝わるにつれ、静寂が戻りゆく。
すぐそばに迫った明確な死の気配が、人々をオディオに従わせる。
しかし、たった一人の青年が、オディオを無視してワンの骸へと目を向けていた。
緑色の僧服を着たその青年は、ワンの命を呼び戻そうと、呪文を紡いでいる。
頭が千切れ落ちるほどの大きな損壊を受けた遺体を蘇生させるのは、優秀な神官であっても不可能に等しい。
そんなことなど、青年は百も承知だ。それでも彼は、ワンから離れない。
「クリフト! その人は、もう……ッ!」
青年――クリフトの耳に、主である少女の声が届く。それは、搾り出すかのような悲痛な声色だった。
普段ならば弱音めいた発言をしない彼女が、このように告げたのは、濃厚な悪意に中てられたせいだろうか。
「……分かっています、姫様。しかし私は、神に仕える身。何もせず黙っているわけには参りません」
そんな彼女を勇気付けるようにクリフトが応じた、その直後。
再び、炸裂音が響いた。
それに続く音は、酷く湿っぽい。
びちゃり、と。
ワンの遺体が作り出した血溜まりに、クリフトの首が、落下する。
そして、ワンの身に折り重なるように、クリフトの体が、倒れ伏した。
二人分の血液が床を汚し、鉄臭さが広がる。
吐き気を催すほどの死の気配が、生者に触手を伸ばし心を侵していく。
「クリ、フト……。クリフトォ――ッ!!」
クリフトの主である少女を始めとして、絶叫が再発した。
巻き起こった無数の悲鳴が、甲高い不協和音を奏でる。無数の感情が混ざり合い、広間を荒らしていく。
「私の手で君達を殺めるのは本意ではない。故に、もう一度言う」
全ての声音を鎮圧するような色濃い殺気が、オディオから沸き立つ。
その殺意は、先ほどワンが放っていた気迫を優に凌駕し食らいつくせるほどに、強く激しい。
「――勝手な真似をするな。従わぬ者の首は、直ちに吹き飛ぶと思え」
既に二人の首が無慈悲に飛ばされている現状で、オディオに逆らう者は存在しなかった。
波が引くように、喧騒は鳴りを潜めていく。それでも、彼らが平静を取り戻したわけでは、決してない。
揺らめく炎だけが照らす薄闇の中で、鮮血が噴出する音だけが微かに響いていた。
「君達には首輪が装着されている。私の意思次第で自在に爆発する首輪だ。今のように、な」
暗に反逆の意志を刈り取りながら、オディオは言葉を継ぐ。
その内容は、殺人ゲームとも呼べるバトルロイヤルの説明だった。
「説明が終わり次第、君達を無作為に、ある孤島の各所に転移させる。
そこで、生存者が一人になるまで互いに殺し合って貰う。
転移と同時に食料、水、地図や武器などは支給する。思うままに使い、命を奪い合え。
死者は零時、六時、十二時、十八時に発表する。そして発表ごとに、進入禁止エリアを設ける。
尚、孤島の外は最初から進入禁止エリアであることを覚えておけ。
次に、禁止事項を挙げる。
首輪を無理に外すこと。あるいは、首輪を破壊を試みること。進入禁止エリアに進入すること。
これだけだ。これらに反した者の首輪は、爆発する。
また、死者が出ない状況が二十四時間続いた場合、全ての首輪は爆発する」
一挙に告げると、オディオは参加者となる人々を眺め眇める。
静まり返った彼らに向ける威圧感はそのままで、オディオは口角を持ち上げた。
「最後まで生き延びた者には褒美として、本来在るべき世界に帰してやろう。そして――」
無表情だった相貌に、歪で昏い変化が現れる。
戦慄を覚えずにはいられない、凄惨な笑みだった。
「どのような薄汚い欲望でもよい。何でも望みを叶えてやる。
自らの欲を満たすのは、勝者に与えられた絶対的な権利なのだからなッ……!」
歪んだ笑みから伺える感情は、やはり憎しみでしかない。
あらゆる感情を憎悪に置き換えたような凄絶さで、オディオは言い放つ。
「さあ、存分に殺し合え。欲望のままに、醜く傷つけ合い惨めに奪い合い無様に壊し尽くせ!
見知らぬ人間を信用するな。奴らは皆、自身の為ならば他者を蹴落とすことを由とするッ!
仲間である人間を信用するな。奴らは皆、欲望に身を任せ裏切ることを厭わないッ!
そして、思い知るがいい。人間の浅薄さを、愚劣さを、醜悪さをなッ!!」
人間に対する、あらん限りの憎悪を叩きつけるようにして。
苛烈で強烈で痛烈な感情を剥き出しにし、オディオが右手を振りかざす。
それが、開幕の合図だった。多数の人影が、闇に包まれ消えていく。
まるで、憎悪に侵食され呑み込まれるように、消えていく。
その光景を、オディオは――オルステッドは、最後まで見つめていた。
【バトル・ロワイアル 開幕】
【ワン・タンナベ@LIVE A LIVE 死亡】
【クリフト@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち 死亡】
【残り 54名】
以上、オープニング本投下終了です。
次は本編のネタに着手せねば。
投下乙!
ワタナベw 完全なチョイキャラなのに、見せしめの役割を完璧に果たしてますね。
クリフトの方は鬱まっしぐらですね、これがアリーナにどう影響するか……。
オディオは今までにないタイプの主催で楽しみですね。
乙っす!
オディオはやっぱ主催にハマるなぁ
じゃあ投下します
彼がここへ転送されたときには、太陽は既に遥か西の地平線で眠りに臥していた。
昼の空を照らす孤高の王者亡き夜空。
天を彩る星々も、一際大きな月も、偉大な恒星の代役を務めるには至らない。
この薄暗い世界を照らすものは何もなかった。
空にも、そして地上にも。
地上の明かりとは、つまり電灯のような人工的な明かり。それすらも、この一帯には存在しないのだ。
ここが未開の地だからなのだろうか、それとも景観を考慮してあえて置いていないのか。
どちらにせよ、この空間を満たす黒色にとって天敵足りえる光源はないという事は変わらない。
それでも彼は、この場に転送されたその瞬間に『ここが草原である』と把握できた。
周囲を満たす草木の青々とした臭い。鼻が感じ取る。
遮蔽物のない大地を駆け抜ける涼しい風。皮膚に伝わる。
そして、その波の如く揺れる草木と吹き抜ける風が生み出す、サラサラというメロディ。鼓膜に響く。
この暗闇によって殆ど使い物にならなくなった視覚の穴を埋めるように、他の感覚が情報をかき集める。
(ここいらに広がるのは草原……向こうには森か)
己の感覚が導き出した地形情報を脳内で復唱する。
彼は南に広がる森との正確な距離までもを算出していた。
それは彼の剣士としての才が成せる技なのだろう。
しかし、周囲の状況を把握しても、彼の集中が途切れる事はない。
彼が得ようとした情報はそんなものではないのだ。
ここがどこなのか。そんな事は彼にとってはどうでもよかった。
草原だろうが荒野だろうが地獄だろうが関係ない。
先ほどまで自分がいた場所、パレンシアタワーでない事だけが彼にとって重要な情報。
(畜生……どこに隠れやがった!)
ここがパレンシアタワーでないなら、『あの男』はどこに消えたのか。
それこそが、彼が真に求める情報だ。
目を閉じ、今までより更に感覚を研ぎ澄ます。
風に揺れる赤い髪の毛は、彼の怒りが生み出した炎のようだ。
その1本1本の動きすらも感じ取れるほどに、彼の集中力は高まっていた。
周囲に動く物体はないか、自分に向けられた殺気は感じられないか。
『あの男』はどこかにいる。この暗闇のどこかから自分を狙っている。
見つけ出して、殺さなければ。
殺さなければ、自分が殺される。それほどに『あの男』は強い。
そして罪なき人々が殺される。『あの男』は人殺しを厭わない。
女子供だって平気で殺すのだ。
昔の『あの男』そんな人間ではなかったはずなのに……。
そう、『あの男』、モンジはそんな残忍な男ではなかった。
身寄りの無かった自分を育ててくれた。優しく、厳しく。
血のつながりはないものの、彼にとって親と呼べる存在はモンジただ1人だ。
この剣技は、彼がモンジに与えられたものの中で最も誇るべき宝物である。
モンジが振るう刀は、弱きものを守る為の、大好きな街を守る為の刀。
そのはずだった。
だが、モンジは自分の目の前で、人を殺した。
自分達の育った街の人間を。泣き叫ぶ子供の前でその母親を殺したのだ。
許せない。
誇り高き剣術を裏切ったモンジを。
モンジを殺人マシーンとして甦らせたロマリア帝国も。
モンジを止められなかった自分も。
彼は何もかもが許せなかった。
止めるしかないのだ。
オヤジの皮を被った化物を。
そして乗り込んだ決戦の地が、パレンシアタワーだ。
スメリア全土から目視できるほど高くそびえる塔の最上階で、彼は遂にモンジと決戦する。
彼に全てを与えた親父と、全てを賭けて殺しあった。
親父から受け継いだ誇りを胸に戦い続けた、彼の刀。
彼に全てを託して永い眠りについた、モンジの刀。
決して交わる事のなかった、交わる事などあり得なかった双振りがパレンシアタワーの100階で交錯した。
彼の一撃がモンジの刀を天に押しのけ、モンジの二刀流が彼の刀を床に這い蹲らせる。
その度に、激しい金属音と共に火花が飛び散った。
そんな切り合いが何度続いただろうか。
彼の視界が突如、白く染まった。
目の前の景色が『無くなった』のだ。
そして気付いたら、知らない空間にいた。
幻術か、転送魔法か。
どちらにせよ、これはロマリア側の策略だと彼は判断した。
薄暗く、肌寒い空間。
その中心で演説する男。オディオとか名乗っていただろうか。
それらは彼の目には映らない。
そして、2度の爆発音。一瞬で2人の命を消し飛ばした、鉄のリングの断末魔だ。
直後に響いた少女の悲鳴。
それらすらも彼の耳には届かなかった。
その空間に佇む何十人もの人間の中から、ずっとモンジの気配を探っていた。
全ての感覚を駆使して。
モンジがどこに潜んでいるか分からなかったのだ。
モンジを殺す。彼はその事だけを考え、それ以外の情報を排除していた。
魔王の説明すら聞いていなかったから、この殺し合いのルールも彼は知らなかった。
それどころか、この殺し合いの存在自体を知らなかった
だから、彼は今もモンジを探している。
この殺し合いには参加していない男と今も戦い続けているのだった。
ポタリ、ポタリ。
汗が滴る。
額から頬へと、芋虫が這い進むようにゆっくりと。
顎までに達した、地面へと垂直落下する。
涼しい草原の真っ只中で、彼は汗をかいていた。
それは彼の精神的疲労が大きいということを意味していた。
だがそれも仕方ない。
彼がここに転送されてから10分経過していた。
死闘の最中から呼び出された後、極限状態で10分以上も放置されているのだ。
肉体の疲労は魔王によって回復させられていたが、精神的疲労までは回復していない。
それでも周囲に神経を張り巡らせていられる事実は、彼の精神力が常人離れしている事を証明していた。
「……ッ!」
限界を超え、今にも擦り切れそうな精神が遂に異変を感じ取った。
感じたのは、何者かの息使い。
突如として『その場所』に何者かが現れたのだ。
接近された気配など無かった。
おそらく彼が現れる前からずっとそこで息を潜めていたのか、たった今自分と同じようにワープしてきたのか。
そんなこと、どっちでもいい。
やっと見つけた。
右前方約50メートル。
そこに、いる。
「オヤジッ!」
怒号は雷鳴よりも激しく、彼を中心として球形に、遥か広がる草原に轟いた。
それまでに抑えてきた感情が、咆哮と共に爆発する。
怒りを胸に、目標に向かい疾走する。
(今、殺してやる……)
彼が接近している間も、目標は全く動かない。
目標が発する静かな呼吸だけが、彼に伝わってくる。
おそらく迎え撃つ気なのだろう。
彼が接近するのを待って、射程範囲に踏み入った瞬間に切りかかってくるつもりか。
ならば勝負は一瞬。
彼とモンジは、射程範囲は全くの互角。
だが彼は刀を失ってしまっている。
その分だけモンジの方がやや有利。
その差を埋める為には、高速で肉薄し、彼がモンジよりも早く一瞬早く攻撃を繰り出すほかない。
あのモンジ相手に速さで勝るのは厳しいが、それしか手はない。
「食らえ……!」
拳を握り、振りかぶった。
構えたまま突撃する。
目標の射程範囲に到達。
しかし相手は攻撃をしてこない。
勝った!
全てを込めた拳を振り下ろそうとした。
その瞬間……草木の合間から現れたのは……。
「ご……ごごごごごめんなさいぃぃぃーーーー!!」
少女だった。
桃色の服に青いズボン。
そしてやや茶色がかった髪には桃色のヘアバンド。
「なッ!! ……チィッ!」
震えて怯える少女を目視するが早いか、脳から右腕に『制止しろ』との信号を送る。
だが、この一撃は、格上の相手を殺す為に放った必殺の一撃である。
それは今の彼にとって、全力の一撃。
果たして、それを止められるのか?
放たれた拳を完全に止める事は不可能に近い。
それでも、出来る限り拳の速度を落として、威力を抑えなければ。
「ぐおぉ……ッ!」
握り締めた拳を緩める事でその威力を軽減。
同時に全力で腕を引っ張り、パンチの勢いを相殺する。
「わわわわわわ!!!」
「と……まれ……ッ!」
しかし彼の努力空しく、拳は止まることなく少女に到達した。
最悪の形で。
むにぃ……!
風が止んだ。草木も静止した。
全ての音が停止した。
「…………」
ナナミは考える。
初対面の人間に、挨拶も交わしてもいない人間に、いきなり胸を揉まれたらどうすればいいのだろうか。
気がついたら自分は変な空間にいて、殺し合いをしろと言われた。
そして何人かの首が落とされた。爆破されたと言った方が適当か。
戦争も経験している彼女にしてみれば、死体はそれほど珍しいものではない。
だが、殺し合いを強制させられて平然としていられるほど気丈でもない。
ここに飛ばされてから今まで、ショックで全く動けなかった。
そこに、突撃してきたのはこの男だ。
いきなり目の前に現れると、一目散に自分の胸に手を伸ばしてきたのだ。
さて、彼女はこれに対処しなくてはならない。
ビンタすればいいのだろうか。
しかし、状況が状況だ。
あのような惨劇が繰り広げられた直後なのだから、ここは穏便に済ませたいところだ……。
感情のままに行動してしまっては、殺し合いに乗ってない人間に、要らぬ誤解を招いてしまう可能性がある。
ポイントは彼がどういったつもりでこのような行為に及んだのか、だ。
もしかしたら、やむをえない事情があって自分の胸に手を伸ばしたのではないか……。
そうだ、そうに違いない。
この状況下でセクハラ第1など、正常な人間の思考ではない。
「始めまして、これにはどういった意味が?」
出来るだけ丁寧に、相手を刺激しないように訪ねたつもりだった。
「…………」
トッシュは考える。
初対面の人間の、挨拶も交わしていない人間の胸を、いきなり揉んでしまったらどうすればいいのだろうか。
この人物はモンジではなかった。
人違いで怪我をさせなかったのは幸いだ。
死闘による興奮と精神的疲労があったとはいえ、女子供を傷つけてしまうのは許される事ではない。
なんとか拳の勢いを殺せたことに一瞬だけ安堵する。
さて、彼はこれに対処しなくてはならない。
誰がどう見ても、この状況は自分が悪い。
素直に謝罪すれば許してもらえるだろうか。
しかし、なんと説明したものか。
服装からして、この少女はパレンシアの人間ではない。
ならばモンジのことなど知らないのだろう。説明するのが難しくなる。
しかし自分のことも知らないのらしいは不幸中の幸いだった。
なぜなら、ロマリア帝国の大臣であるアンデルの陰謀によって濡れ衣を着せられたトッシュは、世紀の大犯罪者として世界中に指名手配されているからだ。
もし、自分のことを指名手配中だと知っている人間であれば、もはやこの誤解は解けないだろう。
しかし彼女は自分のことを知らない人間だ。
ならば謝罪の余地はある。
なるべく丁寧に、相手を刺激しないように謝罪の言を紡がなければ。
「始めまして、これにはどういった意味が?」
そんな事を考えているうちに、少女が話しかけてきてしまった。
彼が考えていた謝罪の言葉よりもさらに丁寧な言葉だ。
どういった意味と言われても……どこから説明する?
とにかく、戦闘中だったことを説明しなくては……。
「おぅ、始めましてだな。これは……その……必死でだな……」
少女にいきなり話しかけられたせいか、上手く言葉が出てこない。
もともと彼の頭が利口でない事も影響したのだろう。
「この状況で……」
「……ん?」
ワナワナと震える少女から滲み出しているこのオーラは、怒りだ。
トッシュは悟る。
説得は失敗だと。自分は説明を開始して2秒で地雷を踏んだのだと。
「こんな状況でもセクハラに『必死』なのかァーーーッ!」
顔面に飛んできた右ストレートを避ける事もせず、トッシュは思った。
あぁ……こんなの、弁解なんてできねぇよ……。
◆ ◆ ◆
「殺し合いだとッ?! 正気かよ?!」
左の頬に拳の跡、ナナミがぶん殴った跡をクッキリと残した男。名をトッシュという。
そのトッシュと会話していく中で、ナナミが驚いた事が3つある。
1つ、彼が行ったセクハラは全くの冤罪であったこと。
彼はどうやら自らの父親とも呼べる人間との戦いの最中だったらしく、彼女の胸を揉んだ事もそのせいで起こった事故であったらしい。
ここで話す限り、彼は素直で愚直な性格であり、少女を襲って自分の欲を満たような人間ではない事が伺える。
2つ目、彼は自分のいた国とは遥か遠くの国の人間らしいということ。
あのハイランド王国もハルモニア神聖国も彼は知らないのだ。
それほど遠い国から来たのであろう。
紋章の知識すら持っていなかったのは少しだけ不可解であるが。
そして最も彼女が驚いたのが、彼がこの殺し合いのルールを知らない事。
それどころか、あのオディオとかいう自称魔王の話も殆ど聞いていなかったらしい。
そこまで戦いに集中していたというのか。
それはそれで素晴らしい精神力であるけれども。
「で、殺し合いに乗ったり……しませんよねー……」
「あたりまえだ。誰かを殺してまで叶えたい願いなんざ、俺にはねぇよ」
ナナミが殴った事に起こっているのか、オディオの企みに怒っているのか。恐らく後者だろうが、トッシュが不機嫌そうに吐き捨てた。
彼は一見すると荒々しい男だが、ルカ・ブライトのようにむやみに害を撒き散らす男ではない。
ワンと名乗った男とクリフトと呼ばれた青年。
この2人が首輪を爆破させられて殺されたことにも怒りを露わにしていた。
他人の死にここまで怒り悲しむことが出来る人物は、ナナミは今まで会った人間の中でも稀有な存在だ。
ナナミは彼が信頼に値する人間だと判断した。
そうと決めたら、彼女の行動は早かった。
「じゃあわたしたちは仲間ってことね、一緒に行きましょ!」
「あぁ?! なんで俺がお前と……勝手に決めるんじゃ……」
無理やり同行を求めたナナミにトッシュが食ってかかる。
トッシュもナナミも、この殺し合いを止めるという同じ目的を持っていた。
しかしトッシュは自分なりのやり方で行動するつもりであった。
少女のお守りなどをするつもりは、これっぽっちもなかったのだ。
だがそこはナナミのほうが一枚上手。
「きゃー。この人セクハラしてくるわー。誰かたーすーけーてー」
「……なッ! 馬鹿野郎、黙りやがれ!」
明らかに棒読み。
おそらく誰が聞いても、ただの冗談だと判断するだろう。
だが、この男トッシュには効果てきめんであったようだ。
「誰かー! この人は私の胸を触ってきて、それからそれから……えっと……服を脱がせて……」
「わ、分かったよ! ついて行けばいいんだろ畜生!」
ある事ない事騒ぎ立てやがって、とトッシュが小さく不満を洩らす。
しかし、胸を触ってしまったのだけは、それだけは事実。
彼に責任が全く無いわけではない。
それに自分のやり方で殺し合いを止めるにしても、どうすればいいかも分からない。
この殺し合いの事情が分かる人間を探さなくてはならない。
それならば、この少女がいた方が信用されるというものだ。
弱者を保護していれば、危険人物と勘違いされる確率も低くなる。
「ここがどこだか分からないから、一先ず適当な方向に歩きましょ!」
ここら辺一帯は草原が広がっているのだが、これでは地図を見ても自分たちがどこの草原にいるのかがわからないのだ。
南に森があるという情報も、場所を特定するには至らない。
どこかに施設があれば、地図で現在位置が確認できるのだが。
「あーそうかい。俺はよく分かんねぇから、行き先は勝手に決めてくれ」
つまらなそうに真っ赤な頭を掻くトッシュ。
そんな彼を見て、ナナミはずっと気になっていた疑問を吐き出した。
「ねぇ、トッシュさん。
私が……その、オヤジさんの変装した姿だとは考えなかったの?」
もしも、ナナミがモンジの変装であれば、今頃トッシュは切り殺されているだろう。
少女の姿をしているという1点のみで、トッシュが自分を信用してしまった事が解せないのだ。
「……そうだったのか?」
「いやいやいやいや違います! 違います……けど。
疑わなかったのかな、って思って……」
歩く速度を落として、後ろを歩いていたトッシュの隣に並び立つ。
「そりゃあ少しは考えたさ。お前がモンジじゃねぇか、ってな。
だが例え罠でも、俺は女の姿をしたやつを切るつもりはねぇ」
「それじゃ罠なら殺されちゃうじゃないですか!」
信念というものか。ナナミにはあまり理解できない感情だ。
不意に弟の事が頭に浮かんだ。彼も自分の命を軽視している節があった。
「あー……男にはな、命よりも大事なモンがあんだよ。それに……」
「それに?」
スタスタと早足になったトッシュの背中に問いかける。
10秒ほど沈黙しただろうか、彼は立ち止まり、振り替えることなく呟いた。
「そんな卑怯な剣に、俺を切ることはできねぇよ」
その一瞬だけ、トッシュの大きな背中が、もう一回り大きく見えたのだった。
【B-6 草原 一日目 深夜】
【トッシュ@アークザラッドU】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品1〜3個(未確認)、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いを止め、オディオを倒す。
1:とりあえずナナミに同行する
2:基本的に女子供とは戦わない。
[備考]:
※名簿は確認していません。よって仲間が参戦している事を知りません。
※参戦時期はパレンシアタワー最上階でのモンジとの一騎打ちの最中。
※紋次斬りは未修得です。
【ナナミ@幻想水滸伝II】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品1〜3個(未確認)、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:施設を探して、現在位置を確認する。
[備考]:
※名簿は確認していません。よって仲間や弟たちが参戦している事を知りません。
※参戦時期、宿している紋章はお任せします。
以上、投下終了です。この板なかなかいいですねw
>>44 乙!
とりあえず、トッシュにはラッキースケベlv1の称号を与えよう
投下乙!
ナナミは、剣技だけで見ればルカ様をも凌ぎかねない男と出会うとは運がいい。
紋次斬りは首輪解除にも使えそうだったけど、折られた!
まあ、見たこともあるし、うまく書ければ途中習得も有りかな?
投下乙
トッシュww
一番シリアスな時期から呼ばれたと思ったら…やはりアークシリーズ最強の馬鹿www
ナナミはうまく手綱を握ったように見えるが弟が参加してるとわかったらどうなるか?
先の気になる投下GJです
てか投下していいんだよな?
なんかあんまり動きが見られんから心配で
いつだって大歓迎です
なんか人少ないけど、集客の意味でも是非投下してくださいな
粋な計らいだった。
どす黒い感情に狂って無様に叩き殺された後、友が、愛した女性が、祖国がどうなったのか、特等席で見せてもらえたのだ。
その後、彼の魂はどことも知れぬ迷宮に幽閉され、滅びたルクレチアをただ眺めるばかりであった。
自分のちっぽけな劣等感など比較にならない深さで、親友は彼を信じてくれていたのだ。
魔王と名乗る魔物を倒した折、ハッシュが死に際に、あんなものは魔王などではないと言い残していたが、今ならそれがどういうことかはっきりとわかる。
あの時、あの一瞬、自分の心に僅かにともった黒い炎こそが、勇者ハッシュを葬り、勇者オルステッドを狂わせた魔王なのだ。
その引き金は取るに足らない、なんということもない魔術師。資格がないのなら勇者など夢見ずに沈んでいれば、何事もなかった。
どれほど考え、どんな結論を出そうと、彼には目の前の色褪せたルクレチアを眺める以外に、できることはなかった。
「来たれよ……」
いくらもがこうとも、澄んだ湖面のように波紋一つ立つことがなかった縛めが、揺らいだ。
「愛と名声を得た者よ……」
「人間に今だ幻想を抱く者よ……」
粋な計らいだった。
※
あの時、カエルたちはいつもどおりシルバードで時の最果てを目指していた。
賢者ガッシュの遺作であることに加え、希代の天才ルッカのメンテナンスを得ているシルバードに、故障の要素などあろうはずはなかった。
だが。
「来たれよ……」
何者も割り込めないはずの時空間移動に、声が染み込んだ。
「忠義と償いの剣を振るう勇者よ……」
「人間に今だ幻想を抱く者よ……」
今から思い返すと、マールとロボは反応していなかった。身構える仲間を見て、事情が飲み込めず、もたついていたように思う。
「いざなおう……真実を知らしめんために……」
城は、大まかに2つに分けられる。
防衛拠点としての城は、敵に攻められても、その中に籠って戦えるような仕組みになっている。
政治的拠点としての城は、居住性や移動の利便性などを考えられて作られており、どちらかと言えば戦闘ではなく特大の屋敷という風情である。
ここにある城は、カエルのいた時代のガルディア城と同じ、後者だった。
多数の人間が長期間詰めていても大丈夫なように、宿舎も調理場もある。バルコニーに出なければ、外から丸見えなどということもない。
拠点とするには最適な建造物である。ゆえに、最初に有利な位置を押さえるのが定石だった。
城の兵器庫の武器防具は、片端から何者かによって切り裂かれ、使い物にならない有様となっていた。
調理場の食料も、何日も放置してあったかのような状態であった。食べれば腹を壊すだろう。
だろう、というのは、見た目で判別がつかなかったからである。ハエもアリもたかっていなかった。そういうものさえも死に絶えているのかもしれない。
ということで、当面は袋に入っていた使いづらそうな武器に頼るしかない。
ルッカの銃の大型のもの(確かライフル型と言っていた)に、ショートソードを植え付けたような外見をしている。
槍のように使えば使えないこともないだろう。カエルの得意は剣術だが、騎士として、一通りの武芸に通じるのは当然である。
だが槍とは遠い形状と、何より銃であるということがカエルを戸惑わせた。扱いに気を配らなければ、どこから弾が出るかわからない。
こんなことなら銃について、ルッカに話を聞いておくのだった。
それにしても、あの魔王の他に、魔王を名乗る存在がいたとは知らなかった。
魔族の世界も一枚岩ではないのか。
今のカエルが実際の事情を推し量る余地はないが、少なくともやることは決まっている。
人を見捨てるなど、騎士のすることではない。
どうせ、ただで帰れそうもないのだ。
バルコニーに、不用心な紅のマント姿があった。
※
「おい、お前」
ストレイボウは、足音には気づいていた。殺気は感じなかったのでそのまま立っていたが、多少不用心だっただろうか。
そう思いながら振り向いて、思わず身構えた。
胸ほどの身長のカエルが、二本足で立っている。危うく呪印を切り始めるところだった。
「自分の見た目ぐらいはわきまえている。そんなに驚くな」
「誰だ、あんたは」
「元人間だ。名前は……カエルでいい」
相手は敵意は見せないが、こちらのマントが翻れば、いつでも壁の陰に隠れられるような位置取りである。
どう見ても魔物だが、話が通じる相手であるようだった。
「あんた……カエルと呼べばいいのか。俺を手伝う気はないか」
ふん? とカエルが小首をかしげた。
「事情によるな」
「……友を救う」
答えは無言。変わらないカエルの表情が、続きを促す。
「ここに来る前の話だ。俺のせいで、親友が正気を失った。あいつが一番信じていたものを二つ、俺が奪っちまった。
あいつが一番助けてほしかった時に、俺は自分のことしか考えていなかった」
無言。
「俺は一度死んだ。死んだ時、あいつが俺をどう思っていたか、やっとわかった。俺があいつを、今更友と呼ぶなどおこがましいかもしれないが……」
「俺は、あのオディオって野郎を倒すつもりだ。お前がそれについてくるってんなら、俺もお前を手伝ってやる」
カエルが、口を開いた。
「お前、オディオとかいう魔王と戦う覚悟はあるか?」
「……ああ」
魔王となら、戦った。
勇者とも。
「なら、決まりだな。一応聞いておくが、お前が俺を信用する理由は何だ。無節操に声をかけるタイプにはとても見えないからな」
「あんた、騎士だろう」
在りし日のルクレチアの光景が思い起こされる。
命令とあらば魔物に立ち向かい、疑いもせずオルステッドを追撃し、魂となっても敵への憎悪を噛み締める、健気な人種である。
「騎士ってやつは、どうも似通ったところがある」
「ま、いいだろう」
曖昧な応答にもかかわらず、カエルは納得した様子だった。
「お前の名は?」
このカエルは、ストレイボウが魔王の話をしないうちから、自分からオディオと戦うと言った。
ストレイボウは、魔王山に赴くオルステッドの前に立った時を思い出す。
友と己の武勇を恃み、魔王を名乗る魔物を討ち取ったのは、友情のためと、栄誉が欲しかったためである。
一時の悪魔に魅入られて、友情を捨てて友から奪った栄光の裏側には、死と絶望がべったりと貼りついていた。
カエルは魔王を倒すという。それに同行できるのは、まさしく粋な計らいだろう。
今度は、ストレイボウがいる限り、魔王山に落盤など起こらない。
※
魔王と戦う覚悟はあるか。
その質問に、わずかに間があったものの、ストレイボウはきっぱりと頷いた。
この場合は、むしろわずかな間こそが信用できる。脳裏で、一瞬なりとも算盤を弾いた証である。
この男は、友のためにオディオと戦おうというのだ。
カエルは、かつて似たような境遇にあった男を知っている。その騎士が魔王と戦おうと思ったのは、彼の友がガルディア最強の騎士だったからである。
友のためを念じながらも、結局友に任せきりという弱い心の代償は、人間の姿と、友の命だった。
「まずは戦力を整えなければいかんな」
「俺は魔術師だ。杖か何かがあれば言うことはないが、ある程度はなんとかなる」
「それは心強い」
ストレイボウのマントの裾から、剣の鞘が覗いている。剣であるならば、あれを融通してもらえば、こんな銃のおまけのような剣よりうまく立ち回れるだろう。
隠しているつもりではないだろうが、視線に気づいたストレイボウはまっすぐにこちらを見た。
「すまないが、これは渡せない」
「お前に使えるようには見えないが?」
「ああ、俺に剣の心得はない。手を組む以上、あんたに任せるのがいいこともわかっている。だが……」
ストレイボウの親友は、騎士なのだろう。
かつてカエルがグランドリオンを隠れ家に持ち去っていた理由は、それが伝説の剣であったから、ばかりではない。
「別にかまわんさ」
※
「この城は駄目だ。武具も食糧も、全部使い物にならんようにされている」
カエルが言う。
「どうする、ストレイボウ。この分じゃ期待はできないが、城下町も探ってみるか?」
「そうだな。他の人間に会えるかもしれないしな」
「俺の仲間なら俺が話すが、それ以外は任せるぞ。初対面に俺が出ると、警戒されやすい」
「かもしれないな」
騎士と魔術師がいる。欲を言えば、あと癒しを使える者がほしい。
「城下の次はどうする。オディオの居場所などわからんが」
カエルが聞いてくる。彼に支給の剣を渡した方がいいことは、ストレイボウも十分承知している。
だが、自分たちの因縁を考えれば、例え振るう技がなくとも、絶対に手放すわけにはいかない剣だった。
そして剣を渡さない以上、他の品、バッジのようなマジックアイテムについて尋ねるのも厚顔というものである。
「北の城へ行こう」
ここを勇者の山に見立てるのなら、魔王と戦うのは魔王山だ。
剣は、重い。
【I-9 城内 一日目 深夜】
【カエル@クロノトリガー】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:バイアネット(射撃残弾4)、バレットチャージ1個(アーム共用、アーム残弾のみ回復可能)、基本支給品一式
[思考]
基本:魔王オディオを倒す
1.戦力を増強しつつ、北の城へ。
参戦時期:シルバード入手後・グランドリオン未解放のどこか。他は後の人にお任せします
【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ブライオン、勇者バッジ、基本支給品一式
[思考]
基本:魔王オディオを倒す
1.戦力を増強しつつ、北の城へ。
参戦時期:最終編
以上です。
途中でトリ間違いに気付きました。
◆Tt7VpJAYxU も自分です。
タイトルはつけていないのではなく、血のようなものが染みついていて読めないだけです。
なにかありましたら、よろしく。
投下乙!
冷房、対主催化キター!
彼にはがんばってかつて友を救ってほしいなあ
投下乙!
対主催冷房きたよ! 冷房のくせにカッコいいよ!
剣士カエルと魔術師ストレイボウのパーティ。まさにRPGの王道ですね。
友を失った2人がどう戦うのか、もの凄い楽しみになりました。
投下乙!
ストレイボウの動向は気になっていたが、全うな対主催になりそうだな。
そしてブライオンを手放さない理由がどうにも切ない。
唯一主催者を知る人物だし、頑張って欲しいぜ。
乙です
ストレイボウ対主催とは、なかなか燃える展開
頑張って原作での汚名を返上して欲しいな
投下乙です
どちらも友に対して負い目があるコンビだな
はたして彼らは魔王の元へとたどり着く事ができるだろうか
高原、マッシュ投下します。
「……114……115……116……117……118」
星が微かに見えるかどうかわからないこの夜の闇の下。
「……119……120……121……122……123」
360°いつ何時どの方角からどのような攻撃が来るかすらわからないこの場所で。
「……124……125……126……127……128!!」
ただ、黙々と。
ただ、ひたすらに。
ただ、恐るべき集中力で。
「よし、次は……と、ん?」
男はそれに夢中だった。
もう一人の男はそれな夢中だった男に釘付けだった。
決していやらしい意味ではなく、ただ純粋に。
驚き、感動し、呆れ果て、妬いて、引き寄せられていた。
「なんだ、居るなら居るって言ってくれよ」
何度でも何度でも、理解できるまで、声が枯れるまで真実を言い続けよう。
このバンダナの青年、高原日勝は。
人々が殺し合う絶望的な状況に置かれながら。
いつどこから襲われるともわからない状況で。
星さえ見えるかどうか怪しいこの夜の闇の中。
支援
腕立て伏せ、一般的に筋力トレーニングと呼ばれるそれに没頭していたのだ。
いつ何時でも筋力トレーニングを欠かさない、格闘家の鏡のような精神は誉められるべきなのかもしれない。
こんな状況でなければ、である。
いや、こんな状況で出来るからこそ夢を追い続けられるのかもしれない。
同時に彼は幸運まで持っていた。
最初に高原の筋力トレーニングを見ていた人物。
もし彼が凄腕のスナイパーなら高原は隙だらけもいいところだ。
もし彼が魔術の類を使うなら遠くから気づかぬうちに魔法の餌食になっていただろう。
もし彼が隠密活動を生業とするなら、首をカッ斬られて死んでいただろう。
彼はどれでもなかった、むしろこの場所で高原が追い求める数少ない人物なのでは無いだろうか?
「オレは高原日勝、現代最強の格闘家を目指してる。
アンタは一体? 見たところ格闘家のようだが……」
高原が口を開く。
高原を見ていた彼は先ほどまでの映像を飲み込むのに時間がかかっているらしい。
そんな彼も高原の声にやっと反応し、我を取り戻しゆっくりとその口を開き始めた。
「……ああ、マッシュ。マッシュ・レネ・フィガロだ。
お察しの通りのダンカン流格闘術継承者のモンクだ」
マッシュが名乗り終えると、高原は嬉しそうに立ち上がり戦いの姿勢を取ったのだ。
マッシュもとっさに構えに入ったが、向こうから襲って来る気配はない。
「……殺し合いに乗ってるのか」
両者の間合いは攻め込めないギリギリを保ったまま。
マッシュは落ち着いて問う。
高原はそれに構えながら苦笑いで答えた。
「まさか、そんな己の力を誇示するだけなら格闘家とは呼べない。
他人の命を奪ってヘラヘラ笑うやつは大バカ野郎だ……ただ」
高原は息を呑む。そして再び嬉しそうに笑顔を作った。
「俺が目指すのは最強、なら見たこともない強者とは手合わせしてみたいもんさ。
……手合わせ、願えるかな?」
一点の曇りすら許さないその瞳に嘘はない。
ひとりの格闘家としてマッシュに挑みたかったのだ。
自然とマッシュからも笑みがこぼれる。
「ああ、いいぜ」
そしてマッシュの手首から先が手招くように二度曲がった。
「かかってきな」
たったそれだけの合図で練習試合の火蓋が落ちた。
先に駆けたのは高原である。
超人的な加速から生み出す右の正拳突き。
烈風をも生み出しかねないその拳が素早く、確実にマッシュの鳩尾を狙う。
しかしマッシュも落ち着いて拳を受け流す、が高原の攻撃は途切れない。
拳が左に受け流されたのをみて体を大きく左にひねり、胴のバネを使いこめかみを刈り取るかのごとく右足がマッシュに襲いかかる。
予想だにしない連撃に多少反応の遅れるマッシュ。
直撃は逃れたものの防御に回った左手にわずかにダメージを受ける。
瞬時に飛びのき体勢を立て直そうとするマッシュ、しかしその瞬間に生じる隙を見逃さない高原。
初撃のようなスピードをまといながら高速回転し、打点を一点に絞りマッシュへと向かう。
「攻撃は最大の防御なり」そんなことを言ったのは誰だっただろうか。
マッシュも防御に回ることをやめた。目には目を、歯に歯はを、攻撃には攻撃を。
猛スピードで飛び掛ってくる高原に真っ向勝負を挑む。
1秒1秒が妙にスローに感じる中、技の一挙動一挙動をしっかりと組み立てていく。
そして高原がマッシュに肉薄した瞬間、マッシュの目が見開かれ高原へと向かっていった。
「爆! 裂! 拳!」
竜の如き鋭い一撃に向かうは、虎の目を見張る連撃。
脇腹の辺りに重い一撃を感じながらも、マッシュはその連撃をやめない。
そして最後の一発を打ち込むのと、高原の膝が振りぬかれるのはほぼ同時。
両者が吹き飛ぶのもほぼ同時、起き上がるのもほぼ同時。
「……なるほど、技の構えの腕や足の角度を45°ズラすコトによってスムーズにかつ正確に技を出すことができる……か」
そういいながら自らの技を素振る高原、動きのキレ正確さが先ほどよりも増している。
そして、驚くべきことに高原はマッシュが行った爆裂拳の動作を、マッシュの目の前でほぼ完璧に再現して見せたのだ。
高原の一種の才能とも呼べるこの能力、受けた技を体で覚えることができる。
本人が不器用なのかどうなのか格闘技にしか限らないが、無限の可能性のある能力であることは確かだ。
自分がある程度長い期間かけ、身につけた技能を一瞬にして模倣されたのだ、マッシュが驚くのも無理はない。
支援C
「さぁ、決着つけようぜ!」
再び駆け出したのは高原だった。
呆気にとられていたマッシュも高原が飛び出したのを確認し、再び技の構えに入る。
今度は距離が詰まるのにさして時間はかからなかった。ぶつかり合う同じ技、同じ腕、同じ呼吸。
そして最後の一撃と同時に今度は二人とも違う動きに入る。
高原は体を大きくひねらせ、マッシュは自分の腹部で構えを作っている。
そして、拳と拳がもう一度ぶつかり――――!!
「オーラッ……キャノン!!」
「M・ボンバァァーーッ!!」
音速をも超えかねない高原の体のばねを利用したラリアットと、マッシュの闘気の塊がぶつかり。
それは科学や物理じゃ説明できない現象を起こし。
弾けた。
両者とも大きく吹き飛ばされ、離れた場所で大の字に寝そべっている。
しかし……彼らは。
「ふふふ、ははは……はははははっ!! あーっはっはっは! いやー楽しかった!」
「ホント、久しぶりに暴れたぜまったく……ははは、いい技持ってるなぁ!!」
彼らは、寝そべったまま。大きな声で笑い続けた。
拳でしか語り合えないことがある。
拳でしかわからないこともある。
拳でしかできないこともある。
二人が分かり合うのに、言葉は要らなかった。
支援B
一通り笑い終わった後、彼らは改めて自己紹介をすることにした。
高原のデイバックに入っていた鯛焼きを二人とも頬張りながら談笑する。
「俺の世界にはいろいろな格闘家がいて――――」
二人とも、違う世界に生まれ育った。そんなことはたいした問題ではない。
「俺の仲間にロックっていうコソドロ……じゃなくてトレジャーハンターが――――」
拳で語り合った二人の間に、もはや壁はない。
「そう、このレイ・クウゴってのが俺の仲間で――――」
次元すら超えられる、どんな物にも変え難い深いものを。
「俺の仲間は……ティナと――」
二人は、得た。
「ああ、日勝、ほかには何か入ってたのか? 俺は……必要のないものばかりだな」
マッシュのデイバッグから出てきたのはなんだか良くわからない物と長い筒に取っ手がついたようなもの。
後者を手に持ちマッシュは「兄貴なら何とかできるかもな」と苦笑しながら言った。
日勝がデイバッグを漁って見ると、真っ先に出てきたのは数枚のカード。
どのカードにも死神が描かれており、あまり良い気分はしない。
「あとは……ん?」
疑問を感じながら取り出したのは一枚のコイン。
高原は俺もハズレだなと苦笑いしたが、マッシュの表情は変わっていた。
「……それ、俺のなんだ。貰っても良いか?」
やけに真剣な表情のマッシュをみて、あまり深く考えずに日勝はコインを渡した。
そしてマッシュは少しの間コインを見つめ、ポケットにコインを入れた。
その時に見せた表情を日勝は忘れることはないだろう。
「さて、日勝。 問題は……もちろんコレだ」
マッシュが首を指差す。そこには憎たらしいほど輝いている忌まわしい首輪があった。
すでに二人の人間の命はこの首輪によって失われている。
あの魔王に立ち向かうにしてもこの首輪を何とかしなければならない。
「こういうもんは大体ウチのアニキが詳しいんだよ、というわけで俺はアニキを探そうと思う……オマエはどうする?」
ドコともいえない場所を指差しながら、首をちょいちょいと動かして日勝を誘うマッシュ。
日勝はまったく考えるそぶりも見せずに清々しい位さわやかな顔で返答した。
「ああ、もちろん一緒に行かせてくれ。俺も探したい仲間がいる。それに……」
一瞬だけ言葉を詰まらせ、高原は先ほどのマッシュの技の構えを取る。
「オーラキャノン、アレを何とか習得してみたいしな」
笑いながら、マッシュに語りかける。
もちろん、今の高原には闘気を固めるということはできない。
しかし、爆裂拳を瞬時に覚えた彼なら、彼ならダンカン流格闘術もマスターできるかもしれない。
少しだけ、マッシュはそんなことを考えたのだ。
「ああ、よろしく頼むぜ。日勝」
腕ががっちりと絡み合う。
それは二人の結託の証であり。
また新たな絆の証でもあった。
支援A
【I-1 灯台付近 一日目 深夜(黎明寸前)】
【高原日勝@LIVE A LIVE】
[状態]:全身にダメージ(中)、爽快感
[装備]:なし
[道具]:鯛焼きセット(鯛焼き*4、バナナクレープ*6、ミサワ焼き*4、ど根性焼き*2)@LIVEALIVE、死神のカード@FF6、基本支給品一式
[思考]
基本:ゲームには乗らないが、真の「最強」になる。
1:マッシュとともに仲間を探す(エドガー最優先)
2:オーラキャノンの習得……できるのか?
3:レイ・クウゴとはもう一度手合わせしたい。
4:武術の心得がある者とは戦ってみたい
5:オディ・オブライトは俺がぶっ潰す(?)
[備考]:
※名簿を確認、自分とマッシュの仲間を把握。
※ばくれつけんを習得。 オーラキャノンの可能性については後述の書き手さんにお任せします
【マッシュ・レネ・フィガロ@ファイナルファンタジーVI】
[状態]:全身にダメージ(中)、爽快感
[装備]:なし
[道具]:スーパーファミコンのアダプタ@現実、ミラクルショット@クロノトリガー、表裏一体のコイン@FF6、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:首輪を何とかするため、機械に詳しそうなエドガー最優先に仲間を探す
2:高原に技を習得させる(?)
3:ケフカについてはひとまず保留
[備考]:
※名簿を確認、自分と高原の仲間を把握。
投下終了……です。
いやー、いい感じですねこの板。
投下乙!
なんという筋肉祭りw こいつら最高に頭悪い!w
知力25は対主催なんだけど、好戦的っていう特殊なスタンスですね。
物語に幅を持たせるいいキャラだと思います。
序盤からハイレベルな戦い、楽しませてもらいました。GJ。
しかし、「全身にダメージ(中)」って、やりすぎだお前らw
投下乙です
流石筋肉バカコンビw
殺し合いの中で試合とか、マイペース過ぎるw
ところで、高原はレイのことは知ってるみたいだけど、クリア後からの参加ってこと?
だとしたら、サンダウンやアキラのことも知ってるのかな?
投下乙
しかし気になるのが高原の参戦時期だが最終編後ってことなのか?
レイと知り合いってことはそうなんだろうが…。
今後の筋肉コンビに期待
あ、参戦時期について抜けてましたね。
高原の備考に
※参戦時期は最終編。 レイやアキラやサンダウンとは面識があります。
が、オディオ戦を迎えていないのでオディオとは面識がありません。
マッシュの備考に
※参戦時期はクリア後、夢幻闘舞は習得済み。
を追加お願いします。
投下乙です!
いやあ、さすが高原というかなんというかw
他の格闘キャラというとアリーナとエイラ辺りか?
支給品で思い出したがこの2作品はスーファミで同じ年に出たんだったな
あと支援CBAわろた
バトロワスレはじめてなんだけど
これってキャラ予約して書き終わったらすぐ投下していいの?
それとも自分より前に予約した人が全員投下するまで待たなきゃ駄目?
もちろん予約してる場面が書き終わったらすぐ投下してもいいよ
ワクテカしながら投下を待っているのだが
この手のスレの投下速度ってどんなもんなん?
投下速度はロワによってバラバラだよ。月1作のところもあれば、ほぼ毎日投下されるところもある。
短文とか長文とか気にしなくていいから、初めての人もテンプレ読んでどんどん挑戦してみてください。
>>82 書き手が多いところは一日に5つくらいかな。始まったばかりのロワとかだと
すぐに50話とか投下されるよ。テイルズロワ2ndなんかがいい例。
逆に書き手が少ないと序盤でも殆ど投下されなくなるから注意が必要。SRPGロワがそんな感じかな。
注意が必要と言ったって、SSとか書くの苦手だしどうしたらいいんだろ。
しっかり感想書くとか?
>>83,84
ありがとう。なるほど
俺は口調とか性格掴める程度に覚えてるキャラが割と予約済みだったから
取り敢えず読む側で楽しもうと思ってたけど、ちょっとゲームやり直して
他のキャラでも書けるよう頑張ってみようかな。
>>85 SSを書くのが苦手だったら支援すればいいよ
書き手が長いSSを投下している時はさるさん規制になりがちだから
投下中の合間にレスすることで規制されるのを防ぐことができるんだ
レスは空白でもいいし、単純に支援でもいいし、名台詞集をもじった支援でもいい
楽しくやればいいのさ。そうだろ、松!
他にもwikiに投下されたSSやデータを更新したり、今はないけど絵板に絵を投下したり
死者スレ(ロワ内で死んだキャラの追悼スレみたいなもん)にSSを書き込むのも支援だ
死者スレのSSは本編とは違って自由にできるからSSを書く練習にもなる
>>85 そのとーり。感想はロワのエンジンだよ。
他には支援とかも大事だね
>>65みたいな。
>>86 おぉ! 俺、期待しちゃうよ。
FFキャラとDQキャラだけを予約していいもんかな?
折角のRPGロワだし、違う組み合わせのがいいかと少し不安だ
もちろんOKさ。気にしないでぜひ予約してくれ。
それにFFとDQの組み合わせの予約はまだないしね。
これより投下しますね。
小さな風が木々の合間を通り抜ける。葉が擦れ合う音は、泣き声や嘆きのようだった。
風が止まりざわめきが収まれば、残るのは静けさと夜闇のみ。
月明かりは薄く、深い森の奥を照らすには弱すぎる。
――でも、さっきよりはマシかも。
肌寒い夜気を感じながら、赤を基調としたワンピースを着た少女――リルカ・エレニアックは両腕でその身を抱く。
身震いをしてしまうのは肌寒さのせいだけではなく、数分前の光景を思い出したためだ。
光すら届かないような漆黒の中にいたあの数分は、息が詰まりそうだった。
性質の悪い夢にしては生々しくリアリティがある。
そもそも、これが夢だとすればとっくに目覚めているはずだ。
あんな悪夢を見て寝ていられるほど、リルカは肝が据わっているわけではない。
だからきっと、これは現実だ。
魔王と名乗る、憎しみに満ちた男の存在も。
二人の男の首が無残に吹き飛んだ光景も。
そして、命を握られて殺し合いを強要される状況すらも。
全て、現実だ。
震えが、止められない。
どれほど拭っても取れない汚れのように、恐怖がこびりついている。
ARMSに所属し、戦いに身を置いている以上、死は身近に存在していた。
自分が殺される可能性、仲間が殺される可能性、敵を殺してしまう可能性。
それらはいつだって、すぐ側で息を潜めている。
少しでもきっかけがあれば姿を現して、襲ってくる可能性の群れ。
その気配が、より濃厚になって纏わり付いてくる。
これほど強く死を意識するのは、抗う暇もなく瞬時に命を消し飛ばす枷が首に巻きついているせいか。
憎しみの固まりとしか思えない魔王オディオの姿が脳裏から離れないせいか。
あるいは、こんな殺し合いの場に一人ぼっちで放り出されたせいだろうか。
いや、一人ぼっちなだけならまだマシだ。その事実は充分に心細いが、リルカの不安を煽る要因は他にある。
クレストグラフが一枚もなかった。愛用の傘もない。テレポートジェムすら残されていない。
つまり、戦う手段が皆無だった。殺し合いどころか、自分の身すら守れない。
このままでは襲われたとき、死を甘んじて受けるしかない。
一面に広がる森には闇が落ちており、隠れるには最適だ。
しかしそれは同時に、他の誰かが身を隠すにも適している。
今も、いるかもしれない。
たとえば、隙間なく林立する木々の陰に。
たとえば、リルカとほとんど変わらないほどに背の高い草が作り出す草叢の奥に。
たとえば、仰ぎ見ても頂点が窺えないくらいに高い大木の上に。
もう、いるかもしれないのだ。
誰かを傷つけ甚振り嬲り殺すことに抵抗を覚えないような人物が。
オディオが言うような、自分のために他者から全てを奪うような人物が。
意識した瞬間、拍動が強くなり背筋を生温い汗が伝い落ちる。
周囲を満たす暗闇が怖くなる。
その中に、向こうに、既に誰かが潜んでいて、リルカを監視しているような予感すら生まれてくる。
緊張が高まり、思わず唾を飲み込んだ。
不意に、風が吹く。冷えた夜風はリルカの髪とマントを揺らしていき、そして。
ざわり、と。
枝葉が擦れる音を響かせた。緊張のせいで鋭敏になった聴覚が、必要以上に大きくその音を捉える。
反射的に、振り向いてしまう。
風によって揺らされた草木が立てた音だと分かっていても、敏感に反応していた。
溜息が、落ちた。
一人になったら何もできず、怯え震えている臆病な自分が情けない。
広がっていく自己嫌悪。所詮その程度でしかないと、胸の奥から声がする。
囁いているのが誰かなどと、考えるまでもない。
何も見えず何も聞こえず何も感じられない虚無へと誘う、弱い自分の声。
聞き慣れた、嫌な声だった。
だが、それ故に知っている。
自分を傷つけようとする感情に、押されず流されず潰されないための、術を。
そして、リルカは確信している。
どんなものにも抗い立ち向かうことが出来るという、事実を。
自分にも、他の何者にも負けないために。立ち止まらないよう、前を向くために。
リルカは、唱える。クレストグラフなどなくても、才能などなくてもできる、魔法の言葉を。
「……ホクスポクスフィジポス」
それは、元気が出るおまじない。チカラを与えてくれる、優しい魔法。
久々に唱えるその呪文は、じんわりと心に染み入っていく。凝り固まった体を解すように、染み渡っていく。
いつしか、震えは止まっていた。恐れが消えたわけではない。望みが生まれたわけでもない。
それでも。
たとえ絶望的な状況でも真っ暗闇の中でも、めげないで前を向いて進むことができる。
自己嫌悪を感じても、それを踏み台にして前を向ける。
それが、リルカの魔法。クレストソーサーなんかじゃない、リルカだけの、魔法。
「うん。へいき、へっちゃらッ!」
出来ることをやればいい。何もやらずに震えたって、先へは進めない。
リルカは、デイバックからランタンを取り出して明かりを灯す。
暗順応し始めた瞳には、小さな輝きすら眩く見える。だがそれ故に、頼もしい。
生まれた光を頼りに、リルカは名簿の知っている名前を順に追っていく。
ティムを除く、ARMSの実働部隊全員がこの孤島のどこかにいるらしい。
みんななら大丈夫だと、リルカは思う。
みんなずっと強く、こんな殺し合いに乗るような人たちではないのだ。
彼らとの合流を考えながら、続く名前を見て、リルカは目を見開いた。
アナスタシア・ルン・ヴァレリア。
アガートラームを振るい、欲望のガーディアンと共に焔の災厄を終わりに導いた、剣の聖女。
既にこの世にはいないはずの存在である彼女の名があるのは不可解だった。
だが、考えるのは後回しだ。今は、そんな考察よりもすべきことがある。
そして、最後に残った既知の名を見つけた瞬間、リルカの表情が引きつった。
「えーと……なんで……?」
思わず、目を擦る。見間違いだと思いたい。
それでも、名簿には確かにその名が記されている。
理解不能だった。相方はいないようだが、そんなものは些細な問題だ。
深呼吸を一つして、早急にデイバックへと名簿を放り込む。
――細かいことは会ったときに考えよう。考えられる余裕、ないかもしれないけど。
頭に浮かんだ緑の影を振り払いつつ、リルカは支給品を確認する。
出てきた物は、ピアスとイヤリングと、そして。
破壊のために作られたとしか思えない、巨大な鋸の刃が特徴的な、禍々しい武器だった。
ピアスはただのアクセサリではなく、刃のように鋭い形状をしている。
なかなかの殺傷力を誇りそうだが、近接戦闘が魔法以上に不得手なリルカには使いこなせそうにない。
対して、イヤリングは普通の装飾品に見える。
しかし、多少なりとも魔法の心得があるリルカには、魔力の込められたものだと分かった。
クレストグラフがないため魔法は使えないが、一応装備しておく。
そして、残ったのは鋸のくっついたARMのような武器。
使い方が分からないし、そもそも重くて持てない。
原理は分からないが、デイバックに入れておけるようだし、入れてあれば重さを感じないので、なんとか戻しておく。
まともに使えそうな武具が入っていなかったことに落胆するが、立ち止まってはいられない。
現在地を確認しようと地図を広げた、その瞬間。
がさりと、葉擦れの音がした。
リルカの髪は揺れていない。大気の流動など感じられない。
無風の世界で立つ物音は、何かの気配を伴っている。
心臓が跳ねる。不用意に明かりを灯したのは迂闊だったと後悔しながら、ランタンに手を伸ばす。
だが、間に合わない。
「動かないで」
リルカが明かりを消すより早く、声が飛んできた。
反射的にそちらに目を向けると、金髪を後ろで束ねた線の細い少年が、リルカへとクロスボウを向けていた。
◆◆
金髪の少年――ジョウイが少女の元へ辿り着いたのは、森に浮かぶ明かりを頼りに移動した結果だ。
弓越しに見える少女はそれほど焦っているようには見えない。ある程度戦場に慣れているのだろうか。
背格好からは体術に長けているとは思えないし、武器は見当たらない。
ならば、紋章術士という可能性が高い。
額と両手に視線を走らせる。しかし、そのどこにも紋章は宿されていないようだ。
次いで、彼女の表情を今一度観察する。
まだ幼さの残る顔に浮かぶのは、ジョウイに対する警戒心。
緑の瞳から生じる視線は真っ直ぐにジョウイを捉えている。
そこには諦観など露もない。曇りのない純粋な瞳は、魔王の憎悪に屈してなどいなかった。
だから、ジョウイはクロスボウ――ワルキューレの引き金から指を離し、下ろす。
肩の力を抜き、少女に向けて微笑みかけた。
「すまない。きみが殺し合いに乗っているか判断できなかったから、弩を向けさせてもらった。
だけど、心配することはなさそうだね」
彼女からは殺意や敵意を感じない。ただ、武器を向けてくる相手に警戒心を抱いているだけ。
演技で殺気を隠しているようにも見受けられない。そもそも、そんなことができるほど器用には見えなかった。
だから、ジョウイは少女に歩み寄る。
極力敵を作るわけにはいかない。
少なくとも、今は。
ジョウイの態度にホッとしたのか、少女は緊張を解いて座り込み、長い息を吐いた。
「びっくりしたぁ……」
安堵に満ちた呟きを落とす少女の前で、ジョウイもしゃがみ込んだ。
「本当に、ごめん」
眉尻を下げて謝罪するジョウイに、少女は首を横に振って答える。
「あ、いえ。平気です、大丈夫」
ピースサインと共に彼女が返してくる微笑みは、とても純粋で人懐っこい。
猜疑心の欠片も見られないその笑みを前にして、ジョウイは、胸の深奥に小さな痛みを覚えた。
何故ならば。
ジョウイは、彼女を始めとした参加者全員の、死を望んでいるからだ。
今も鮮烈に焼き付いている。
痛烈な憎悪を以って人々を屈服させ、力を誇示した魔王の姿が。
ルカ・ブライト並みか、それ以上の憎しみと力を誇った魔王オディオが、ジョウイの脳裏に強烈に刻まれていた。
ハイランドのキャンプでルカの力を目の当たりにしたときと同様の衝撃が、ジョウイを貫いていた。
魔王の持つ強さに惹かれていたのだ。かつて、ルカに惹かれたように。
何者にも有無を言わさない、絶対的で圧倒的な力。
それを欲し、求め、黒き刃の紋章を身に宿した。
それでも足りず、ルカに力を見出し、利用して、ハイランドという国を手に入れた。
上手くいくと思った。力が、理想へと近づけてくれる気がした。
だが、ハイランドは敗北した。
親友がリーダーを務める都市同盟に、敗戦を喫した。
親友が作る国は、ジョウイ自身の理想と違わないだろう。
だが、ジョウイは思うのだ。
それでは足りない、と。
優しすぎる彼が作る国では、またいずれ戦争が始まり傷つく人が出る、と。
親友の思想を否定するつもりも、自分の行為を正当化するつもりもない。
ただ、歩む道が違っただけ。
そしてきっと、今も選ぶ道は別々なのだろう。
ジョウイは再度、かつて通った道の出発点に立っていた。
もう一度だけ、チャンスを与えられた気がした。
力を得て、理想の国を打ち立てる機会を。
自分を信じて戦ってくれた兵たちに報いる機会を。
神ではなく魔王によって与えられたチャンスだが、構わない。
どのみち、次などない。
黒き刃の紋章が、既にジョウイの命を限界近くまで削り取っている。
輝く盾の紋章を手にし、始まりの紋章を一つに戻さない限り、先はない。
だが、始まりの紋章を宿した上で魔王の力を得ることができれば。
その力を以って、新しい国を、理想の世界を作り上げられる。
理想の世界とは即ち、誰も傷つかず悲しまず戦争など起きない国。
ピリカのような子が、家族や故郷を失わず、怖い思いをせずに生きていける国。
欺瞞であり身勝手な理想などと、百も承知だ。
悲劇を生まない理想の前提として、無数の悲劇と犠牲が必要なのだから。
未来を夢見て、今を破壊する行為の果てに、理想を実現したとしても、手放しに賞賛はされないだろう。
それどころか、怨恨、憎悪、嫌悪、怨嗟、遺恨、あらゆる負の感情をぶつけられ、悪意に満ちた視線と感情に晒されることは想像に難くない。
それだけ多くのものを、多くの人から奪い取るのだから、当然だ。
だが、たとえそうなったとしても。
理想が、叶えられるのなら。
戦争による悲劇が、二度と生まれないのなら。
自分だけが傷つき怨まれ憎まれることで、他の誰も傷つかない世界が作れるのなら。
どんな汚名も恥辱も受け止め受け入れられる。
決して後悔など、しない。
いや、たとえもう一度敗北したとしても、後悔はしないと言い切れる。
自分出した答えを、信じて進む道だから。
覚悟だって、できている。
アナベルを手にかけたときから。
自分が汚れ罵られる覚悟も、全てを背負う覚悟も、そして。
親友である少年と、彼の姉と戦う覚悟も、とうの昔にできている。
親友同士だったハーン・カニンガムとゲンカクが剣を交えたように。
ジョウイと親友も、戦いは避けられない。
それは、分かたれた始まりの紋章をそれぞれに宿したときから決まっていた宿命であり、必然だ。
――それでもきっと、きみは拒否するんだろうな。
親友の顔を思い浮かべ、内心でそう呟いたとき、目の前の少女が口を開いた。
「あの、わたし、リルカ・エレニアックって言います。名前、教えてもらっていいですか?」
黙りこんだジョウイを不審に思ったようだった。
彼女の言葉に耳を傾けながら、ジョウイは思う。
この島にいる全ての人間を自分で殺して回るのは無理がある。
ルカがかなりの命を奪うだろうが、彼を野放しにしておくわけにもいかない。
ルカ打倒のことも考え、しばらくは他の参加者と協力した方がいいだろう。
参加者を利用し、互いに戦わせ、人数が減ってきたところで本格的に動けばいい。
死んだはずの人間を召喚するほどの、魔王が持つ力を得るために。
だから、今は。
「ジョウイ、だよ。もっと気楽に話してくれていいから」
友好的な態度で、リルカに応じる。
胸の痛みを、自覚したままで。
木々に遮られて細くなった月光を浴びたジョウイの表情。
ランタンの明かりに照らされたリルカの横顔。
そのどちらにも、微笑が宿っていた。
【F-7 森林 一日目 深夜】
【リルカ・エレニアック@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康
[装備]:イヤリング@ファイナルファンタジーVI
[道具]:キラーピアス@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち、回転のこぎり@ファイナルファンタジーVI、
基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いに乗らず、ファルガイアへ帰る。
1:ジョウイと情報交換し、共に行動。ARMSのメンバー及びアナスタシアと合流したい。
2:何でもいいからクレストグラフがほしい。
[備考]:
※名簿確認済み。
※参戦時期は背塔螺旋突入前です。
【ジョウイ・アトレイド@幻想水滸伝U】
[状態]:健康
[装備]:ワルキューレ@クロノトリガー
[道具]:ランダム支給品0〜2個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:更なる力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。
1:ひとまずリルカと情報交換し、行動。利用できそうな仲間を集める。
[備考]:
※名簿を確認済み。
※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所で2主人公を待っているときです。
以上、投下終了しました。
名簿にはジョウイ・アトレイドになってるけど、参戦時期的にはジョウイ・ブライトになってます。
感想や指摘等、何でも言ってください。
投下乙
ここはステルスできたかぁ!
相手をひっかきわますステルスうまく立ち回れるか
ジョウイに期待だ
投下乙!
ステルスきた! 原作でも中盤まではステルスっぽかったし、これもジョウイらしいスタンスなのかな。
しかしリルカは不運だw 支給品も扱えないし、仲間もステルスw だがそれがいい。
あなたのOPでも思いましたが、ただの「悪い奴」では終わらない敵を書くのが上手ですね。
しかし、トカへの反応がwそりゃあ疑問だよなアイツの参戦はw
そういえばSSをまとめるところってあったっけ?
誰かwikiを借りてきてくれれば大助かりなんだが
できれば他のロワみたいに、このスレのまとめwikiがほしいよね。
>>101みたいに、複数のスレを一緒にまとめる形式だと、このロワのページばっかり作るわけにもいかないしな
キャラ紹介とか追跡表とか死亡キャラ一覧とか
そろそろ最初の方の予約から3日経つけど
>>24,
>>27を見るに予約から72時間経って投下がなければ
予約破棄と見なしていいのかな
>>103 wikiは好きなだけページ作れるから、
リンク張ってさえくれればどれだけページ増やしても構わんよ
>>104 まぁそうなんだけど、予約期限ギリギリまで推敲しようと思ってる人は結構要るんだよね。
ギリギリまで推敲するタイプの人が複数いると、72時間直前に投下が重なったりして
他の人の投下中に期限過ぎてしまう場合もあるから、そういう場合は大目に見ましょう。
期限に間に合わなくて予約破棄するときも予約スレで破棄宣言は欲しいところですね。
投下します。
今までずっと物真似をして生きてきた。
そして、これからも。
◇ ◇ ◇
白と青を基調とした服を着た少女が、風も通らぬ鬱蒼とした木々の間をがさがさと歩く。
彼女の名はビッキー。瞬きの紋章をその身に宿した、宿星の一人に数えられる少女である。
他の人間と同じようにオディオの手によって乱雑なテレポートの対象になった彼女は
地図では「E-9」と記されている、割と深い森の中へと降り立ったのであった。
「ここ、どこなんだろー」
しかしそのことには彼女は気付かなかったらしい。
「一体ここはどこなのか」という、調べれば一発で解るであろう疑問を呟いている。
「あ、ういえば地図が入ってるって言ってたような……」
ここで彼女は、地図が自分の持っている袋の中に入っていることをようやく思い出した。
袋へと手を突っ込み、ごそごそとまさぐる。たっぷり時間をかけて地図を取り出すと、それを乱雑に開いた。
予想よりも多少大きかったそれを見ると、一つの大きな島が描かれている。
平地、森、山、そしていくつかの建物。それらの表記と地図自体の大きさの所為か、島の面積がとても広く感じられた。
だが地図は地図、しっかり確認すれば問題は無いはずである。ビッキーは指で地図の隅々までなぞって眺め始めた。
周りの景色を見渡し、そして視線を地図に戻す。景色を見て、地図を見る。それを何度も何度も繰り返す。
――そしてそんな行動を数十回繰り返す内に、ビッキーははっとした様に顔を上げた。
何か閃いたような顔……いや、違う。これは何かに気付いた表情だ。
そう、つまり彼女は地図のおかげで現在位置の特定が――――
「んー……うん、わかった! ここは森!」
――――出来なかったらしい。
◇ ◇ ◇
地図を確認する。見ればここはE-9という場所らしい。
月明かりに照らされた景色を見れば納得出来る。道理でここは花が咲き乱れているはずだ。
地形が地図に記載されている通りになっているということは、この地図は信用に値するだろう。
あくまでも魔王オディオと名乗ったあの男は、我々に滞りなく殺し合いを進めてもらいたいらしい。
なるほど、よくわかった。
◇ ◇ ◇
がさりがさりと、ビッキーは植物を掻き分けながら進んでいく。
意味もなく、目的もなく、ただただ本能に従って。
その足取りは何の戸惑いもない。殺し合いの舞台である、という事にも無関心な如き歩みだ。
彼女には恐怖心というものがないのだろうか。もしくは賢者の如く悟りを開いたのだろうか。
「でもわたし、なんでここにいるんだっけ……」
否。ただ単純に、自分が何を強制されていたのか忘れていただけらしい。
ここにまともな人間がいれば突込みが入るであろう言葉を最後に、ビッキーは突如足を止めた。
そして顎に手を当て、黙りこくり――ここまでの状況を思い出し始めた。
そうだ、確かいつの間にか奇妙な部屋に飛ばされて、魔王と名乗る人物が現れたのだ。
そして殺し合いをしろと言われて、反抗した人がいたんだった。
それからその反抗した人達の首輪が爆発して、首が…………。
「……そうだ、確か殺しあえって言われ――殺し合い!?」
遂に自分が何の為にここにいるのかを思い出したらしい。
自分をこの地に飛ばした、魔王と名乗った男の言葉を今更反芻する。
「殺し合い……殺し合い……」と、ビッキーは繰り返し呟く。
顔は青ざめ、足が徐々に震え出す。事の重大さに気付いた証だ。
単語一つ一つに世界全ての存在への恨みを混めたかのような魔王の言葉を思い出す。
「殺し合い」という絶望の言葉と鮮明に思い出した首輪の力のおかげで、恐怖が順調に口を開けていた。
「うう……どうしよお……」
だがビッキーは「自分がどうするべきなのか」という答えにはたどり着けなかった。
突然殺し合いをしろといわれても、納得がいくはずがない。
自分は確かに戦争の際には反乱軍等に加担していたが
別に人を殺したくてたまらなかったから仲間になったというわけでは決してない。
むしろ人を殺すなんて出来る限りはあってはならないことだと考えている。
「で、でもわたし以外の人は……」
だが、そう考えているのは自分だけかもしれない。
共に戦った仲間達なら、信用は出来る。皆は殺し合いに乗るなんていうことはしないだろう。
だが問題は、あの部屋には自分には見覚えのない人間が沢山揃っていたことだ。
名も顔も正確も知らぬ誰かさん。それが星の数ほど――は言いすぎだが、沢山。
もしかしたらこの状況で嬉々として他の人間を殺し始めるかもしれない。
「皆に会いたい……」
自分への重圧と、徐々に込み上げる恐怖が体を蝕んでいく。
恐怖を紛らわせる為に言葉を呟いてみるも意味はなかった。
だがしかし、今何をすればいいかわからない――だから。
「とりあえず、どこか行こ……」
だから、まずは自分の足で歩く事にした。
森の中から再び音が生まれる。がさり、がさり。少女の歩く音が鳴り始める。
とにかくこの光すら射さない暗い森から出ることにしよう。
そうすればきっと、この気分も晴れるはずだ。ビッキーはそう信じる事にした。
支援
◇ ◇ ◇
俺の足元の花々は何も言わずそこに在り続けている。
擬音も作れぬ程、ただただじっと動かない。
――そういえば、あの「魔王」が呼び寄せた者たちの中には俺の仲間がいたな。
ティナ、エドガー、マッシュ、シャドウ、セッツァー。あとついでにケフカ。
最後に仲間では無い危険人物が含まれていた事もあって多少は気になる。
だがここで気に病んでも仕方がないことは理解している、何も問題はない。
相変わらず花々は何にも動じていないように、そこにある。
決めた。手持ち無沙汰なのもある。まずはこいつらの物真似をすることにしよう。
誰かが来るまで、何にも動じずにじっと在り続けよう。
◇ ◇ ◇
「わぁ……きれい……」
延々と森の中を歩く続けていたビッキーは、突如感嘆の意を口にした。
目の前に広がるのは、色とりどりの美しい花。まさに彼女好みの平和な光景だった。
鬱蒼と茂っていた森の中は同じ景色ばかりだったが、ここは言うなればオアシスでパラダイス。
月明かりに照らされて美しくコーディネイトされた自然の風景が、視界の全てを覆い尽くす。
そのおかげで、色々なことを考えすぎて気が滅入っていた彼女はどうにか持ち直したらしい。
先程までの暗い表情が嘘だったかのように、今は清々しい位の笑顔を浮かべている。
「すごーい! ナナミちゃん達にも見せてあげたいなー」
世界中の全ての色が揃っているかのような景色に、ビッキーは興奮する。
再び自分が何の為にここにいるのかを忘れ、花園へとダイブした。
本来、彼女は多少大人しめな性格なのでこの様な行動は珍しいのだが
やはり気が滅入っていた反動なのだろう。全てを忘れようとするかのようにはしゃぎ回っていた。
「あれ?」
ふと、顔を上げる。よく見てみれば、少し離れた先にぽつんと人が立っていた。
先客だったのだろうか。見てみる限り何もしていない。その誰かさんはじっと立っている。
誰だろう。まさか自分を殺すチャンスをうかがっているんだろうか。だがそれにしてもおかしい。
相手は何もしていない。どこに動こうともしていない。まるで植物のようだ。
怪しい。けれど、襲い掛かってきているわけじゃない。こちらの様子を伺って来ているのかも。
いや、しかしそれにしたって……いや、だが――――と、考えるうちにビッキーの頭はこんがらがってきた。
よし、とりあえず話しかけてみよう。結局そんな結論に達した彼女は、うつ伏せになっていた体勢から立ち上がった。
咲き乱れる花の道路を歩いていく。不安と期待の板ばさみになりながら、ビッキーは謎の人物の目の前に到着した。
お互いの足元では、花々が自分達の事を見守っているかのように咲いている。
「ふ、不思議な服……ですね」
ビッキーは何の躊躇いもなく話しかけた。
「不思議な服だな」
すぐに答えは返ってきた。その声に敵意はない。
目の前の人は自分を怪しんでないんだな、とビッキーはなんとなく理解した。
研ぎ澄ましているつもりだった警戒心が急速に薄れる。これは勘だ。だが信じるに値する気がする。
しかし見れば見るほど不思議だ。鸚鵡返しな答えもそうだが、様々な部分で奇妙さが伺える。
まず服装からしてなんとも言えない。奇抜な色をした布を何枚にも重ね着したような奇抜なデザインだ。
頭は目以外を隠す被り物で包まれており、髪型はおろか表情も判断しづらい。
両目と眉間には赤い線のメイク。服装の所為で見た目だけでは性別も解らない。
「俺は物真似師ゴゴ。今まで物真似をして生きてきた」
と、ここで今度はビッキーからではなく向こうから話しかけてきた。
どうやらゴゴという名前らしい。物真似師、という言葉はよくわからない。
自分のことを「俺」と言っているのに、その声からもゴゴが男なのか女なのかを察する事は出来なかった。
本当に不思議な人間――いや、それ以前にこんな服装と第一印象では「人間なのかどうか」すらもわからない。
性別も種族も不明。身に纏うものや紡ぐ言葉は奇妙。ゴゴの全ては不思議尽くしだ。
――だが、ビッキーにとってはそんなことはどうでも良い。障害にはならない。
「物真似師……? じゃあ、今は何してたの?」
臆せず、というより臆すという発想も浮かべずにゴゴに質問をするビッキー。
「今はこの一帯に咲く花の物真似をしていた」
そしてそれに対し、ゴゴはすぐさま答える。
やはりその声に敵意はない。ついでにやっぱり性別や種族もわからない。
だがここでビッキーは遂にゴゴを怪しむのを完全にやめ、一切の怪訝も浮かべずにゴゴの姿を眺めていた。
ゴゴはビッキーのその行動に嫌悪感は抱いていないらしい。嫌がるそぶりも見せない。
「……お前は今、何をしているのだ?」
それどころか、ゴゴは遂に質問を向けてきたのだ。
ただの雑談ではない、突然の質問。だがビッキーは怪しむ事もせずに、素直に答えを考え始めた。
そういえば自分は、ここで何をすればいいのかわからず――その勢いでここに来たのではなかったか。
「今、何をしているのか」という質問は、ちょっと難しい。ビッキーは悩みに悩む。
友達を探している? どこかに向かっている? 誰かを殺そうとしている?
どれも違う。どれも正しくない。「自分は今こんなことをしています」という答えには相応しくない。
だが、そこまで考えて彼女はふと気付き――答えが閃いた。
「"今"なら……ゴゴさんとお友達になりたいな、って思ってるよ」
そう、彼女は「まさに今」考えていることを口にした。
別に「今さっきまで何をしていたのか」だとか「ずっと何をしているのか」まで答える必要はない、と踏んだのだ。
だから「今はゴゴと友達になりたいと思っている自分」を答えにした。
相手に興味を持ち、繋がりを持ちたいと考えた彼女自身の考えは本物なのだ。
ゴゴはそんな彼女の答えに「そうか」と呟く。そして一寸何かを考えるような仕草をする。
「では、俺はお前の物真似をすることにしよう。お前の名は?」
そしてゴゴは突然、こんな突拍子のない宣言をした。ビッキーは「私の、物真似?」と驚いたように呟く。
それから数秒の時を置いて、自分がやっと名前を尋ねられていることに気がついた。
更にそこで自分が相手に名を名乗っていないことを連鎖的に思い出す。相変わらずのド天然だ。
「わたしはビッキー。あ、私ね、紋章の力で人を色んな所に移動させられるの。えへへ、凄いでしょー」
名前ついでに聞かれてもいないことをペラペラと喋り出すビッキー。
これも肩の荷が下りた反動だろうか。先程までの警戒心も消えうせ、喋り捲る。
殺し合いという状況で孤独だった事の反動でもあるのかもしれない。
だがゴゴはそれに文句一つ言わずに耳を傾けている様だ。
「それにこう見えてもわたしは戦えるのよ! 赤月帝国とか、ハイランドってところとも……」
「へー! ビッキーちゃんって凄いんだあ!」
「……え?」
ビッキーは興奮しながら自慢げに話を進めていた。が、突然動きが止まる。
今ゴゴが何かを言ったような気がする。いや、ゴゴではない誰かが。今の声は? 一体?
色々な疑問を浮かべ、その末に「はて、一体何が起こったのだろうか」と頭に「?」なマークを浮かべるビッキー。
「ビッキーちゃん、どうしたの? あ、見るの初めてだから混乱してるの?」
悩みに悩んでいると、ゴゴが再び「ビッキーの声色を使って話しかけた」。
だがそのはっきりとした相手の行動も、今の状況では理解出来ず体が固まる。
相手は先程まで違う声で話していたというのに、突如声が変化したのだ。当然の反応だろう。
数秒置いてやっと「え? え、今? 私?」と文章の体系を成さない言葉をゴゴにぶつける事が出来た。
「えへへ、凄い? 今わたしはビッキーちゃんの物真似をしてるの!」
「え、ええええ!? ご、ごごごゴゴごごさん!? の声!?」
「物真似師だって言ったでしょ? そんなに驚かれるとは思わなかったなあ」
ビッキーの心臓は大きな音をたてて動き始めた。
整理すればつまり、今自分の声が自分からだけではなく相手からも聞こえてくる。
その理由は「ゴゴが物真似をしているから」というシンプルかつとんでもないもの。
物真似師というのはここまで凄いのか。これが物真似の力なのか。
「でもそっかぁ、ビッキーちゃんの周りには物真似師なんていないもんね」
相変わらずビッキーの声で話し始めるゴゴは、遂にその挙動や雰囲気までも真似をし始めた。
ゴゴの奇抜な服装や身の丈以外がビッキーそのものになる。今相手が服さえ着替えればほぼビッキーだ。
あまりにも素っ頓狂で、あまりにも酔狂。そしてあまりにも完成度が高すぎる特技には驚くばかりだ。
「す、す……凄い! 凄いよゴゴさん、私感激しちゃった!」
遂にビッキーは、まさに飛びつかんという勢いでゴゴを褒め称え始めた。
心の底から本当に感動したらしく笑顔で拍手を送っている。
まさにスタンディングオベーション。感動のあまり、完全に現状を忘れているらしい。
だが同時に、今のビッキーの表情からは先刻まで抱いていた不安は一掃されていた。
ゴゴ、大手柄。
◇ ◇ ◇
早速物真似が喜ばれたらしい。敵意を抱かれなかったのは何よりだ。
俺は物真似師ゴゴ。今まで物真似をして生きてきた。
だから今もこうして彼女の物真似をしている。
俺は自分の意思で行う純粋な殺し合いには興味は無い。
俺は物真似師だ。物真似にしか興味は無い。
始めから物真似以外の事をするつもりは毛頭無いのだ。
故に、これからが楽しみだ。
魔王とやらが呼んだ者達の数は自分の予想以上に多かった。
見渡すばかり人。最初に自分達がいた謎の空間はこう表現するのが正しいほどであった。
それが今、この謎の地で散り散りになっているのだ。いつ新たな人物に出会ってもおかしくは無い。
本当に楽しみだ。俺はこれからどんな人物と出会っていくのだろうか。
陽気な者、暗い者、狂ったもの、正義感溢れるもの、殺し合いに乗ったもの――色々な者に会うはずだ。
それを証明するかのように、俺は早速ビッキーという少女と出会った。早速繋がりが出来た。
実に面白い。何故なら人と出会い、真似する事こそが物真似師の最大の喜びなのだから。
だから俺はこの世界では物真似しかしない。この先出会うであろう数々の者達の物真似をするだけだ。
まずは手始めにビッキーの物真似をしているが、俺はこれで満足はしないし、まず出来ない。
これから先新たな仲間にでも出会ったなら、今度はそいつの真似をしてみるのも良いだろう。
もしも彼女と別れることになったなら、次はまた別の者に出会って物真似をするのも悪くない。
いつか徒党を組む事になって大勢になった仲間達の物真似をし尽くすというのも良い、夢が広がる。
これからどんなスタンスの人間に会おうが、物真似師である俺は誰かの物真似をするのみだ。
俺が誰の物真似をするかは俺自身が決める。
つまり、俺がどう生きていくかは俺が決めるという事だ。
魔王オディオとやらに行動を縛って貰うつもりは無いのだから。
結局のところ、環境が変わろうが俺に出来る事は物真似しかないのだ。
逆にいくら環境が変わろうとも、俺には物真似が出来る。
俺は俺の出来る事をするだけ。俺は物真似でこの世界を渡り歩く。
数々の出会いと別れの中で、俺は物真似をし尽くしてみせる。
【E-9 花園 一日目 深夜】
【ビッキー@幻想水滸伝2】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:不明支給品1〜3個(未確認)、基本支給品一式
[思考]
基本:決めてない。どうしよう。
1:ゴゴとお友達になりたい。
[備考]
参戦時期は後続にお任せします。
【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:ビッキーの物真似中、健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品1〜3個(未確認)、基本支給品一式
[思考]
基本:数々の出会いと別れの中で、物真似をし尽くす。
1:まずはビッキーの物真似をする。
[備考]
参戦時期はパーティメンバー加入後です。詳細はお任せします。
投下終了です。
投下乙
ゴゴwwwwwビッキーの物真似とかお茶ふいたwwwww
ドジっぷりまで再現してしまうとしたら怖いな。自爆的な意味で。
投下乙!
このゴゴは新しい! 自我を持ったゴゴは新鮮ですねー。
ビッキーは戦力になるんでしょうかねー……5だとメチャクチャ強いんですが、2だとw
何考えてるか分からん2人の心の内を上手く描写してますね。素晴らしい!
しかし、ビッキーのマネをするゴゴ……きめぇw
ゴゴ!こいつはいいトリックスターになりそうだw
投下乙です!
さまざまな人間の物真似……このロワでもさまざまな人間の物真似を駆使してゴゴはどう動いていくんだろうか?
今はとにかく天然っぽい子の物真似してるみたいなんで……二重の意味で期待です。
◆jtfCe9.SeY氏の作品の代理投下行きたいと思います。
しえn
13 名前:ダブル・ナイトメア ◆jtfCe9.SeY[sage] 投稿日:2008/09/04(木) 22:08:44 ID:HUuOLlZk0
闇が全てを支配しているこの深い深い森の中。
その闇に溶け込むような全身が黒づくめの男がそこに居た。
木に寄りかかったまま微動だもしない。
まるで生きていないような錯覚に陥るような印象がある。
その男の名はシャドウ。
最もそれは本名ではない。
「影」を意味するその偽名。
それこそ今の彼を象徴するものだった。
そしてシャドウはただ考えていた。
オディオと名乗るもの。
そして死んでいった二人の人間。
極めつけは殺し合いの強制。
そんな傍から見たら非日常な風景。
その中でシャドウが選ぼうとする選択は……?
その時一つの風が吹いた。
風を受けざわめく木々。
木の葉が擦れ合う音が響く。
が。
その刹那。
「………………」
木々の間から飛び出す新たな影。
その動きはかまいたちの如き速さでシャドウの背後に迫る。
そしてその襲撃者は死神の鎌を振るうが如くシャドウの首筋に己の獲物である短刀を振るった。
神速の一撃。
それは迷うことなくシャドウの首を狩ろうとする。
「………………!」
「………………!?」
だが死神の鎌は首を刈ることができなかった。
シャドウはそれはたやすく自らの短刀で受けとめてていた。
振り返らず空気をだけを読み背中に短刀をやり死神の鎌を受け止めていたのだ。
ほんの刹那の事である。
「………………」
襲撃者は奇襲に失敗した事に驚きつつもすぐに撤退を開始する。
一撃で仕留められ無かったのだ、ここで無駄に戦闘して体力を失う事は下策と判断。
そして襲撃者にとってシャドウは同業者である判断した。
そう、その職業は一撃必殺を誓う「暗殺者」
それ故に撤退を選択した。
襲撃者の行動は迅速で一撃を振るって数十秒も立たないうちにまた闇へと姿を消した。
それをシャドウは追おうとしない。
シャドウも襲撃者が同業である事に気付き追いつくことは無理だと判断した為だ。
そしてほんの数分前と変わらない静寂がまた森を支配した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
しえん
14 名前:ダブル・ナイトメア ◆jtfCe9.SeY[sage] 投稿日:2008/09/04(木) 22:09:37 ID:HUuOLlZk0
襲撃者はシャドウから距離を置いて事を確認すると殺し合いが始まった時の事を思い出す。
名簿に最も大切な人の名前が書かれていた。
名前はニノ。
襲撃者――ジャファルにとって殺人以外に生きる意味をくれた大切な少女。
その大切なニノが殺し合いに巻き込まれていた。
ジャファルにとって自らが殺し合いに巻き込まれる事などいとわない。
何れ訪れる事だと。
暗殺を繰り返し続けて何れ自分も殺される。
それがこの殺し合いの舞台になるかもしれないだけの事。
だがニノはそうじゃない。
ニノは生きないと駄目だと。
ジャファルは唯そう思った。
だからジャファルは唯思う。
ニノを生かすと。
他の参加者を殺しニノを優勝させる。
それが不器用なジャファルがニノにできる事だと。
それしか考えられなかった。
「…………………………ニノ」
だからジャファルは行く。
「死神」の異名持つ自分の力でニノを生き残らせる為に。
唯。
唯。
その心にはそれしか宿らなかった。
【E-2 森林 一日目 深夜】
【ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康
[装備]:アサシンダガー@ファイナルファンタジーVI
[道具]:不明支給品0〜2、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いに乗り、ニノを優勝させる。
1:参加者を見つけ次第殺す。ただし深追いはしない。
2:知り合いに対して躊躇しない。
[備考]:
※名簿確認済み。
※ニノ支援A時点から参戦
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
15 名前:ダブル・ナイトメア ◆jtfCe9.SeY[sage] 投稿日:2008/09/04(木) 22:10:28 ID:HUuOLlZk0
(…………………………)
シャドウはジャファルの襲撃を退けた後森を用心に進んでいた。
この殺し合い。
シャドウにとっては唯の日常だった。
仕事と同意だと。
パートナーであるインターセプターがいない事は気がかりだったが。
でもシャドウはそれでも変わらなかった。
影に生きる者として。
選ぶ事は一つ。
殺し合いに乗り優勝する事。
もとい殺人に躊躇いなどない。
迷う事などなかった。
ここが死場になるかは自分の腕次第。
先ほどのジャファルの様な腕のたつ者が他にいるのら気を引き締めないといけないと。
「……………………」
そしてシャドウは行く。
己が悪夢に終止符を打てる事を期待して。
唯。
唯。
進んでいた。
【D-2 森林 一日目 深夜】
【シャドウ@ファイナルファンタジーVI】
[状態]:健康
[装備]:アッサシンズ@サモンナイト3
[道具]:不明支給品0〜2、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いに乗り優勝する。
1:参加者を見つけ次第殺す。ただし深追いはしない。
2:知り合いに対して……?
[備考]:
※名簿確認済み。
代理投下の方終了です。
投下乙
ダブルマーダーか!ここにおいてのマーダーは貴重だし生き残ってもらいたいところだ
投下乙!
暗殺者きた! この2人は強マーダーでしょう。
シャドウにとってはロワすら仕事かあ。かなり冷徹なキャラになりそうですね。
ジャファルはやはり奉仕ですね。いろいろとドラマが展開されそう。
似ているようで違う境遇の2人、面白い対比でした。
投下乙です。
暗殺者二人、しかもマーダーとは…いい仕事してくれそうで期待大です。
今更だけど、ヘイゼルさんとかも参加して暗殺者追加してほしかったなあと思う自分がいたりします。
あと、したらばの仮投下スレに仮作品として投下しておきました。何かおかしな部分があったら
ご指摘お願いします。
ところで、会場の施設を各作品の偽者にするというのはアリなんでしょうか?
あの名簿は投票で決定されたから仕方ないんだよねぇ
施設は偽物は偽物だけど細部までキッチリ再現されているなら問題ないかな
ところでRPGロワ専属のwikiがほしいけど
誰も立てないのならたてちゃおうかなあ
>>131 問題ないでしょう。施設も別に問題ないかな。
贅沢を言わせて貰うならば、施設の名前も「神殿(集いの泉@サモンナイト3)」とか、作品名いれた表記にしていただけると分かりやすいかも。
感想は本投下時に。
>>132 立ててください。お願いします!
>>132,133
レスありがとうございます。施設の方が問題ないなら、名前の部分を修正して投下します。
褐色の肌に流れるような紫紺の髪の黒き百合―ミネアは神殿の中にいた。その手に持つのは、
参加者達に渡された支給品の一つである地図。光源無しで確認するのが困難であった為、彼女は危険を承知で
支給されたランタンの灯を灯したのだった。
(私の現在いる場所は、おそらくC-8という場所でしょうか…)
壁の少ない神殿から見える外の景色と地図の内容を照らし合わせて、現在位置を把握する。
次に参加者の名簿を開いて内容を把握する。一見淡々と行動しているように見えるが、それは同時に何か辛い現実から
目を背けようとしているようにも見えた。
(クリフトさん……)
思うのは先ほどの広間で死んでいった仲間の事。無残に殺された人を蘇生させようと懸命に呪文を唱えようとしたのは、
神官である彼らしい行動だった。なのに、あの魔王を名乗った青年は、遊び飽きた玩具を捨てるかように彼の首を刎ねたのだ。
(アリーナさん…きっと今泣いているかもしれないわ)
首を刎ねられた彼が密かに愛していた姫…アリーナは彼が死ぬところを目の前で見てしまったのだ。それが彼女にとってどれだけショックの大きいことなのかは計り知れない。
彼女もこの島のどこかに飛ばされているのなら、誰かが支えてやらなければ…
そのためにも、今は出来る限りの情報を集め、早く彼女や仲間と合流しなければならない。
ミネアは再び名簿に目を向ける。その時、誰かがすすり泣く声が聞こえはっと周囲を見渡した。
「うっうっ…先生…」
アリーゼは神殿の中央に設置されたテーブルの下で泣き続けていた。どうしてこんなことになってしまったのか、何故殺し合いなんてしなければいけないのか。
彼女自身、今までいくつもの困難を乗り越えてきていたが、さすがにこの理不尽な状況には耐えられなかった。
気が付いたらあの大広間にいて、オディオという男に殺し合いをしろと言われた。最初何がどうなっているのかわからなかったので、彼の言葉も
理解出来なかったが、直後に彼に逆らった男が殺され、男を生き返らせようとした(それも信じられなかったが)聖職者風の男の人も殺されて、
初めて今置かれている状況に気が付いたのだった。そしてすぐまた闇にのまれて、気が付いたら此処にいたのだ。
そこは自分のよく知った場所――集いの泉だった。
そこで、自分のいる場所を理解し傍に置かれたデイバックを見た途端、急に感情が溢れだした。不安、恐怖、疑問…いくつもの感情がこみ上げてきて、
涙となって頬から伝う。僅かな理性で人に見えるところにいるのは危険と判断してテーブルの下にもぐり、現在に至るわけである。
「私……殺し合いなんてっ……どうしたら…」
最近は改善されてきたものの、元々人見知りが激しく慣れない環境に弱い彼女には、この殺し合いというゲームは酷だった。
不安に押しつぶされながらただただ泣く事しかできなかった…。
「先生……」
「……どうしたの?」
ふいに声をかけられて、思わず「ひっ!」と声を上げてしまう。今の自分は武器も持っていない。もしこの人が殺し合いに乗ってたら…
そんな恐怖に駆られたアリーゼは、腰を抜かしながらもずるずると後ずさりした。
「こっ殺さないで……」
僅かな勇気を振り絞ってか細い声で拒絶する。しかし、それに対して女性と思われる声の主は、優しい言葉で返した。
「大丈夫よ、私はあなたを殺したりしないわ。だから落ち着いて…ね?」
暗い神殿の中で彼女の持ったランタンが、二人の姿を照らし出した。
あれ? ID変わってる。支援。
「…落ち着いた?」
「は…はい…怖がったりして、すみませんでした…」
「気にしなくていいわ。こんな状況じゃ怖くなっても仕方がないもの」
ミネアの優しさに安心したアリーゼは、彼女に寄り添うように備え付けられた椅子に座っている。
彼女を落ち着かせながら、お互いの情報を交換することにしたのだ。
話をしていくうちに、お互いが全く別の世界の住人であることが判明した。異世界の存在が身近にあるアリーゼはそれほど驚かなかったが、
ミネアの方はかなり驚かされた。自身も魔界と呼ばれるような地底世界に行ったことはあるが、完全な異世界となると話は別だった。
この殺し合いに参加している者達は、皆異世界から召喚されているのだろうか…だとしたら、あの魔王オディオという人物は、一体どれほどの
力を持っているのだろうか…。
「……ミネアさん?」
彼女の深刻な顔に、アリーゼが心配そうに顔を覗き込む。
「あ…ううん、大丈夫よ。少し考え事をしていただけだから…」
ミネアもそれに気付き、心配かけまいと明るく答えた。
それから二人は自分達の現在位置や殺し合いに参加している自分達の知り合いの事、これからの行動方針などについて話し合った。
「それじゃあお互いの知り合いは、私はユーリルさん、アリーナ、トルネコさん、ピサロさん、ロザリーさん。
アリーゼちゃんはアティ先生、アズリアさん、イスラさん、ビジュさんね?それで、その中で注意した方がいいのは
ビジュさんとイスラさんにピサロさん。ここまではいいわね?」
「はい、ビジュは多分こういうことには喜んで参加してしまいそうな感じがします。イスラは…何を考えているのかよくわからなくて…
でも、二人共とっくに死んでいるはずなんです。なのにどうして…?」
「私の世界には、死者を蘇らせる呪文や道具があるの。あのオディオという人が私達を集められたのなら、私達の世界の道具を手に入れることもできるんじゃないかしら?
とりあえず、その二人に会った時は気をつけるようにしましょう。ピサロさんもロザリーさんが無事なら大丈夫だとは思うけど、
もしロザリーさんに何かあった時は、十分注意した方がいいと思うわ。」
ピサロは元々人間を憎んでいる。もし参加者の誰かにロザリーを殺されでもしたら、彼は暴走して皆殺しをするだろう。それだけは避けたいところである。
しかし、ロザリーを保護するにも、非力な自分達が大きく行動するのは危険だ。それにアリーゼの保護者であるアティと合流して、彼女を安心させてあげたい。
「……あの、ミネアさん」
ミネアが悩んでいると、アリーゼが声をかけてきた。その顔には何か決心したような雰囲気もある。
「あの…私は大丈夫ですから、先にロザリーさんを探しましょう。」
「え?」
思いがけない言葉に、一瞬戸惑うミネア。しかし、アリーゼを彼女の回答を待たずに続ける。
「このまま放っておいて、ロザリーさんが殺されたら、ピサロさんが乗ってしまうかもしれないんでしょう?だったら先にロザリーさんを見つけて、
ピサロさんを安心させてあげた方が良いです。先生もアズリアもとても強いし、きっとまたすぐに会えますから…だから早くロザリーさんを…」
「わかった、わかったわ。あなたがそれでも大丈夫だと言うのなら、そうしましょう。でも、まず自分の身を守れるようにしないといけないわ。
探す前に私達が死んでしまったら、元も子もないでしょう?」
なおも喋り続けようとするアリーゼを落ち着かせ、お互いの支給品を調べるように促した。焦る気持ちもわかるが、焦っていても良い事はない。
まずは自分達の身を守れるようにしなければならない。場も静かになったところで、二人は支給品の確認をすることにした。
先にミネアが支給品を取り出す。出てきたのは、なんだかよくわからない鉄の道具と紫色の綺麗な宝石、それに首飾りだった。
「それって…もしかしてサモナイト石ですか?」
横で見ていたアリーゼが、宝石を指差しながら言った。
「サモナイト石?」
「はい。召喚術を使う時に使う魔法の石なんです。…ちょっと貸してもらえませんか?」
そう言ってアリーゼが手を差し出したので渡すと、彼女は宝石を両手で包み、瞑想を始めた。
「……やっぱりサモナイト石です。これは…天使ロティエルですね。」
「天使?その宝石で天使が呼べるの?」
はいと答えて、目を開けたアリーゼがサモナイト石を返す。そして、サモナイト石について説明した。
サモナイト石とは、アリーゼの世界であるリィンバウムに隣接した4つの世界のゲートを開き、そこに住む住人を召喚するのだという。
リィンバウムではサモナイト石は貴重ではあるが一般に認知されているものらしい。改めて、異世界の力の凄さを思い知らされた。
次にアリーゼが支給品を確認する。彼女の支給された品は、工具セットに毒蛾を模した装飾のされたナイフ、そして……
「………」
「…あの、これって一体…」
二人ともなんともいえない顔で、最後の支給品を見つめている。アリーゼの持つその品とは……
ブラジャーだった
どうみても女性用の下着にしか見えないそれを手にしたまま、二人は暫く何も言えないでいた。
すると、ブラジャーに引っかかっていた紙切れのようなものがすり抜け、カサリと地面に落ちた。
それに気付いた二人が紙切れを広げる。そこには短い文章でこう書かれていた。
『みわくのブラ…装備することでいろじかけの成功率UP』
支援
【C-8 神殿(集いの泉@サモンナイト3) 一日目 黎明】
【ミネア@ドラゴンクエストW 導かれし者たち】
[状態]:健康、唖然
[装備]:無し
[道具]:ブラストボイス@ファイナルファンタジーY、天使ロティエル@サモンナイト3、サラのお守り@クロノトリガー、基本支給品一式
[思考]
基本:自分とアリーゼの仲間を探して合流する(ロザリー最優先)
1:いろじかけって……
[備考]
参戦時期は6章ED後です。
【アリーゼ@サモンナイト3】
[状態]:健康、泣いた事による疲労(小)、唖然
[装備]:なし
[道具]:工具セット@現実、毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストW 導かれし者たち、みわくのブラ@クロノトリガー、基本支給品一式
[思考]
基本:自分とミネアの仲間を探して合流する(ロザリー最優先)
1:あっあのぅ……
[備考]
参戦時期はED後です。どのEDかはお任せします。(ただし、イスラEDではありません)
以上で投下終了です。なにげに脱出フラグを立てておきました。
キーワードは「ゲート」です。
投下乙!
サービスシーンフラグきた! 色仕掛けが楽しみで仕方ないw
ミネアは魔法も使えるが、アリーゼを守りきれるのか……不安ですね。
ミネアはいい感じに「お姉さん役」がハマってますね。素晴らしい。
ところで、仮投下のときに聞き逃した(俺が見逃した)んですけど、「ユーリルさん」って勇者のこと?
>>143 たしか小説版の勇者の名前じゃなかったっけ>ユーリル
>>143,144
ミネアはしっかりものだし多少は武器の心得もあるしいざとなったらメガザルもあるし
結構おいしいキャラだと思います。しかし、彼女がブラを着用するかどうかは次の書き手さんに任せようかなw
勇者の名前は参加時点で決まっていなかったようなので、自分の方で勝手につけてしまいました。
名前の元ネタは小説版で合ってます。
投下乙!
アリーゼとミネア。小さなこと保護者のお姉さんもなかなかいいなあ
そしてあの説明文を書いたのがオルステッドだとしたら……
あいつ今でもアリシアのことひきずってるんだなw
アキラ投下します。
支援
これは……支援じゃねーか!
あんた……今、幸せか?
俺の方は……そうだな、ちょいと幸せとは言えねーな。
いきなりワケのわからねえ野郎に「殺し合え」とか命令されて、気付けば見知らぬ場所に放り出されちまってたんだからよ。
こんな状況に幸せ感じるほど、人間腐っちゃいねーつもりだ。
おっと、すまねえ。グチになっちまってたな。
オディオ、とか言いやがったか。
あの魔王ヤローが何を企んでやがるのかは知らねえが、ロクなもんじゃねー事は明らかだ。
あの目……ドブ河みたいに濁り切った、とても人間とは思えねえ目……。
あんな目をした連中を、俺は知っている。人間の命なんて、どうにも思ってないヤツの目だ。
そんなヤツの思惑に乗るのは面白くねーし、なにより人殺しなんざ真っ平御免だ。
だから、俺のするべき事は一つ。
あの魔王ヤローを叩きのめして、このくだらねー殺し合いを止めさせる事だ。
そのために、まず必要なのが……。
しえーん
妙子の支援
(この首輪を外す事、か)
爆弾つきの首輪を指先で弄くり、田所アキラは心の中で呟いた。
いわゆるパンクファッションであるアキラの服装に、首輪は全く違和感無く溶け込んでいる。
ともすれば最初から身に着けていたのかと、勘違いすら起こしてしまいそうなほどに。
それを皮肉に思いながら、アキラは今度の行動指針に対する考えを纏めていた。
この首輪が殺し合いを想定して作られた代物であるならば、ちょっとくらい突付いた所で誤作動を起こす可能性は無いはずだ。
ちょっと弄くった程度で爆発するのであれば、この殺し合い自体が成立しなくなる。
無理に外そうとしない限り、プレッシャーを感じる必要は無い。それが、アキラの結論だった。
ならば、どうするか。
発明家である籐兵衛の店に入り浸っている事もあり、アキラは比較的機械には強い方だった。
だが、それでも専門的な知識を持ち合わせている訳ではない。
首輪の解体作業をしろと言うのは、流石に無理が過ぎると言うものだった。
考え得る首輪の解体方法は、二つ。
科学知識を持った人間に首輪の解体を依頼するか、それとも首輪の設計者を捕まえて解除方法を読み取るかだ。
そうして首輪を解除した後に――魔王のツラを、ブン殴る!
「テレポートの応用で、首輪だけ吹っ飛ばせりゃ楽なんだろうが、それほど小器用な技じゃねーしな、ありゃ……」
アキラは稀に見る強力な超能力者だが、それでも決して万能の力を使える訳ではない。
テレパス、サイコキノ、テレポート、ヒーリング。
多岐に渡る能力を高水準で使いこなせる事は確かだが、それでもやはり得意・不得意は存在する。
精神感応。それも自分の“イメージ”を具現化させると言う事に関しては、アキラの力は群を抜いているだろう。
心を持たない機械にすら、イメージによる影響を与えられるほどなのだから。
だが、それに比べるとテレポートは苦手な方に分けられる。ごく稀にではあるのだが、失敗する事もあるからだ。
アキラ自身、詳しい理屈は分かっていない。だが、どうやら彼のテレポートは“水”に引き寄せられる性質があるらしい。
バスルームやトイレなど、水の有る場所に意図せず飛んでしまったと言う経験が、アキラには少なからず存在する。
いや、それだけではない。いつぞやのように、奇妙な迷宮に迷い込んでしまう可能性もある。
これが平和な街の中であれば、特に問題は無い事であった。
だが、この状況下でテレポートを失敗する事は、最悪の場合死を意味する。
もし間違って禁止エリアにテレポートしてしまった場合、その瞬間にゲーム・オーバーとなってしまうからだ。
……テレポートは、使えない。
「ちっ……面倒な事になっちまったな、まったくよ……」
目の前に広がる光景を見ながら、アキラは陰鬱な声で言う。
そこは、どこまでも深い森の中。見渡す限りの樹木に取り囲まれて、アキラは一人立ち尽くしていた。
ランタンの輝きは頼り無く、鬱蒼と生い茂る木々の中で、満足な働きを為しているとは言い難い。
幸か、不幸か、どうやら付近に他の参加者は居ないようであった。
少なくとも、人の気配は感じられない。そしてランタンの輝きもまた、アキラの手元から放たれる光条以外には存在しなかった。
もし自分以外の参加者が居れば心を読み取り、信用出来るようであれば仲間を得たかった所なのだが、そこまで楽にはいかないらしい。
殺し合いに乗った参加者と遭遇しなかった事だけでも、ひとまずは良しとしておくべきだろう。
「さて、と……それじゃあ、こんな辛気臭え森なんざ、さっさと出ちまうとするか……」
いまひとつやる気の無い声で呟きながら、アキラは当て所無く森の中を彷徨い始めた。
まずは、森を出なければならない。
並び立つ樹木の間隔は極端に狭く、足場も決して良いとは言えない。ちょっとした気の緩みから、すぐに転げてしまいそうになる。
おぼろ丸のような野戦を得意とする相手に不意を付かれたら、為す術も無く追い詰められる事は目に見えていた。
森の中で身を潜めて、朝を待つ手も無くはないが、まだ体力には充分余裕がある。
せめて身体を落ち着けられそうな場所くらいは、早い内に確保しておきたかった。
ほんの微かな木々の隙間に身を潜め続けていたのでは、かえって体力を消耗する結果にしかならないからだ。
……それに、なるべく早い内に至急品の確認も済ませておきたい。
足元の確認すら覚束無い暗闇の中だったからこそ、アキラは未だ参加者の名簿に目を通してさえいなかった。
だからこそ、気付けなかった。
高原日勝、レイ・クウゴ、サンダウン・キッド。
わけの分からない異世界で出会い、成り行きと必要から力を合わせて戦う事となった戦友の幾人かもまた、この殺し合いに巻き込まれている事に。
そして、無法松。
アキラにとっては父親の仇であり、また漢の生き様を教えてくれた兄貴分でもある青年。
陸軍との戦いによって命を落としたはずの彼が、何故か生きていると言う事に……。
【C-7 森林 一日目 深夜】
【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ランダムアイテム1〜3個(未確認)、基本支給品一式
[思考]
基本:オディオを倒して殺し合いを止める
1.他の参加者と接触する
2.どうにかして首輪を解除する
[備考]
※参戦時期は最終編(心のダンジョン攻略済み、魔王山に挑む前、オディオとの面識は無し)からです
※名簿を含む支給品の確認が未だ出来ていません
※日勝、レイ、サンダウン、無法松が参戦している事に気付いてません
※テレポートの使用を控えています
※超能力の制限に気付いていません
※ストレイボウの顔を見知っています
アキラ投下。
すっ……すいません! 途中で一回PC止まっちゃったんで、急いで再起動してきました!
あの世で皆さんに詫び続けてきますので、どうか寛大な気持ちで許してやってください、お願いします……っ!
投下乙!
LALの(俺的)主人公きた! ローキックは炸裂するのか!w
さすがLAL最熱血シナリオの主役だけあって、熱い男ですね。完璧に再現出来ていると思います。
でもアキラは意外と非力なんだよなあw それがロワにどう影響するか……・。
ストレイボウと面識あるのは面白そうですね。
投下乙!
いいね、アキラは。原作風味がすごいでているよ
アキラキター!
LAL主人公の中じゃ一番好きだぜ!
読心能力を始めとした超能力がどの程度使えるのかが気になるね。
あと無法松と再会するときはくるのだろうか。
投下乙
こういうオーソドックス?な超能力者ってのはいいな
上手く使えば首輪解除や脱出の役にも立ちそうだし
ところで、オブライト、ヘクトル、リーザ予約した人、もう期限切れてるけど
破棄ってことでいいのかな?
ギャアアアアアすいません寝過ごしました
遅れましたが、今から推敲して、仮投下スレのほうに投下したいと思います
ところで、4勇者の名前が……ユーリルじゃないんですが、いいんでしょうかこれ
ていうか話の展開上、実はユーリルだとちとまずかったり……;
仮投下乙
4主人公の名前は、主人公を書いた人の名前に決めといた方がいいかと思われます
でもそこまでに名前が未定ってのも問題なんですけどねぇ
携帯から失礼します。
遅れてごめんなさい。
アクセスエラーのため、したらばに投下しておきました。
携帯から失礼します。
遅れてごめんなさい。
アクセスエラーのため、したらばに投下しておきました。
165 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 09:39:06 ID:CiGz30G3
連投すまんorz
大事なことなので2回いったのですね、わかります
……投下直前になって思い止まった。
このSS、このまま投下するのはまずいんじゃないか。
ちょっと、したらばの議論スレに詳細書きます。まずかった場合、予約破棄することになるかも。
>>161 無名キャラの名前は、最初に書いた人が決めることになってたし、権利的にはミネアとアリーゼの人にあるけど、
そんなにこだわることもないだろうし、頼めば変更してくれると思います
>>163 仮投下乙です
問題はないと思います
本投下待ってます
_ ∩
( ゚∀゚)彡 百合る!百合る!
( ⊂彡
では代理投下させていただきます
「どうして、こんな酷い事を……」
山の中を歩く少女はポツリと悲壮に満ちたため息を漏らす。
少女の中で思い浮かぶのは先ほどの光景。
オディオと名乗る主催者相手に勇敢に立ち向かった少年の死、そして無残な姿へと変貌した少年に駆け寄る神官の死。
二人の死にリーザの心境は複雑に交差する。
もしかしていたら、自分も彼らのようになっていたかもしれないのだ。
少年が死んだとき、リーザは彼らの死を呆然と眺めていた。
リーザは突然の事に呆気に捕らわれていたけど、思考が戻るとすぐに神官と同じように少年に駆け寄ろうとした。
シュウの「行くな」という言葉が耳朶を打つが、無我夢中に駆け寄ろうとしていた。
無理だと分かっていながらも、今ならまだ間に合うかもしれない。
そんな矛盾めいた願いの下、リーザは足を速めた。
でも、それは叶う事はなかった。
後、十数歩という目の前で、神官姿の男性の首が弾け飛んだのだ。
目に焼き付かれる陰惨な光景にリーザはわなわなと唇を震わせ、その場に崩れ落ちる。
「クリ、フト……。クリフトォ――ッ!!」と、彼の知人なのか、女性の叫び声が聞こえる。
とても親しい間柄だったのだろう、その声は悔しさと悲しさが入り混じった、とても聞くに堪えない悲しいものだった。
「そんな、どうして……」
リーザは放心状態のまま、ポツリと涙を混じらせ、言葉を漏らす。
そして、気づいたときには漆黒の広がる林の中にいた。
その光景を思い出すたび、リーザは思う。
クリフトと呼ばれる青年はただ少年の安否を気遣っただけなのだ。
私と同じように無理だと分かっていながらも、
少年のために傷を施しに行っただけなのに…無残にも殺されたのだ。
彼はたった一人だった。少年の一方的な惨殺の前に皆が恐れおののく状況の最中、
たった一人の救済者だったのだ。
勇敢で心優しい行為の目の前で、どうしてオディオはこんな酷い仕打ちを与えるだろうか。
多くの者は彼を命知らずの愚か者と感じるだろう。
でも、リーザは違った。彼の行いは勇敢で心優しいものだった。
この行為によって少年の魂は救われたに違いない。
だからこそリーザは決意する。
絶対に魔王オディオを許さないと。
そして、少年を慈しんだ彼のように―――皆を救いたい。
クリフトのように勇敢に立ち向かえるようになる。
一番最初に怪我人に駆け寄る強さを受け取りたい。
そう、リーザは心に誓ったのだった。
リーザはそんな決意を胸に詰め込み、また足を進める。
今、彼女が向かっているのはこの地点から最も近い砂漠の塔であった。
エルクやシュウ、トッシュ、ちょこを含む、
この殺し合いに乗らない人たちに会い、オディオに対抗する方法を考えなければなかった。
リーザは人が集まりそうなところへと茂みを掻き分け押し進んだ。
前方に広がるのは漆黒の闇。
不吉な予感を想像させる黒い空間にランプの明かりを照らし、道を切り開き、ただひたすら西に向かった。
その途中、不意に全身にへばりつく邪悪な気配がリーザを襲う。
誰に見られている。圧倒的な殺意を巡らし、今にも私に襲い掛からんとしている。
「誰!! 近くにいるのは!!」
リーザはまだ見ぬ監視者に対して声を大きくは張り上げる。
叫び声が森閑とした周囲に響き渡る。
そのとき、リーザの目の前に突然大男が姿を現す。
その男の姿は背丈二メートル以上ありそうなほど巨躯であり、
上半身は裸に髪型はスキンヘッド、そして、恐持ての顔つき。
外見上どう見ても友好的には見えない上に、常に付き纏う異質のオーラにリーザは一歩距離を引いた。
勇者の名前に関しては、自分は変更しても構いません。
名簿に記してある時点で名前がなかったので、呼ぶときに不便だからとりあえずつけただけなので。
名前は勇者を書く人の名前を優先してください。後でwikiか何かにまとめる時に編集すれば
大丈夫だと思うので…。
「よく気づいたな。女とはいえなかなか勘が鋭いな」
「あなたは何者ですか?」
異質なオーラを放つ男にリーザは問いかける。
それは名前を問う質問ではない。
この男自身の存在を問う質問。
「あなたから放たれる異質な力……人とは思えないその力……何者です?」
「ほう、そこまで分かるのか? 私が“人”ではないことが」
リーザの目の前にいるのは最強を目指すがうえに人を捨て、
己を魔人へと変貌させたオディ・オブライトであった。
オブライトは自分の正体を見破った少女に感心しながら、
リーザの全身を嘗め回すような目つきで見据え、呟く。
「勘がいいようだが、俺を満たすには少々物足りないな」
蛇を想わせる狡猾な視線に身震いを覚えながらも、リーザは言葉の意図を尋ねる。
「どう言う意味ですか?」
ニタニタと笑みを浮かべ、オブライトはか弱い少女を見下ろす。
「ふ、教えてやろうかぁ? お前の身体に興味があるのだ」
オブライトのおぞましい答えに吐き気と供にリーザはヒッと一瞬声を漏らした。
貞操の危機にナイフを構え、警戒心を高める。
「はっはっはっは、何を怯えているのだ? 勘違いするなよ…俺はただお前の戦闘能力に興味があるだけだ。
ひょろひょろのガキ相手では俺の心は満たせない。
『最強』を目指すためにも……己の『最強』を誇示すためにもなッ!!」
オブライトはリーザに見下したような高笑いをあげる。
「つまり、あなたは殺し合いに乗っていると?」
リーザは自分の不運を嘆きながらも問いかける。
「無論だ……だが、雑魚には興味がない。
ただ俺が求めるのは『強者』のみだ。
まあ、俺に歯向かうなら相手をしてやってもいいぞ…女」
そう、言葉を終わらせるとオブライトはこの殺し合いの最中、無防備に背を向け歩き出す。
完全に彼女から興味を失ったのだ。無防備にも背を向けたのはリーザに対する戦力外通告であった。
幸な事かリーザは魔人オディ・オブライトの魔の手から逃れたのであった。
リーザは漆黒の林の中へと消えていくオブライトの後ろ姿を黙って見つめていた。
現状況で戦闘すれば、敗北は必死であった。
リーザ自身戦闘能力はあるが、回復や魔法といった後方支援に適しているのだ。
ここで戦闘をするのは愚の骨頂ともいえる。
「止まりなさい」
だが、リーザは高らかに声を上げオブライトを引き止める。
オブライトは声に反応し、後ろを振り向く。
「殺し合いに乗るというなら私はあなたを止めます。
仲間を傷つけさせないためにも私は全力で立ち向かいます」
そこにはナイフを前に構えるリーザがいた。
リーザは決意したのだ。
もうあんな悲しみを生まないためにも。
後悔しないためにも。
勇敢に立ち向かった人々の意思を無碍にしないためにも。
死の覚悟を決め立ち向かった。
リーザは宣戦布告と同時に魔法を詠唱の構えをとる。
唯一の攻撃呪文『アースクエイク』を唱える。
相手の距離は離した、この距離なら先手はこちらにある、そうリーザは考えていた。
「がががぁあああ!!」
と、言葉と同時にリーザの身体が宙を舞った。
一瞬の出来事であった。
気づいたら一気に間合いを詰められていた。
気づいたら胸部に男の豪腕が突きつけられていた。
「…うがぁ」
胸に重い衝撃が伝わる。
リーザはあまりの激痛にその場に蹲る。
その衝撃は呼吸器官を弾圧し、リーザの呼吸を見る見るうちに奪っていく。
リーザは見誤ったのだ。圧倒的な戦力差に開きあるという事に。
その巨躯に似合わぬ俊敏さで詰め寄ってくる速さを持っている事に。
そして、最大の敗因――――
「ふ、愚か者め、お前如きにこの俺が倒せると思ったのかッ?」
地面にひれ伏すリーザの腹を蹴り上げる。口元から吐血がにじみ出る。
「この状況下わざわざ宣戦布告する馬鹿がどこいるのだッ!!」
漆黒の森を駆け抜ける一つの足音。
静寂広がるこの森で騒ぎの声を聞きつけ、疾風のごとく駆けつける。
叫び声を聞きつけるといなや、足を奮い立たせ、全速力で声の方向へと進んだ。
暗闇慣れた目は次第に騒ぎの現状を目に焼き付けられる。
そこに見えるのは刺青の背中に大柄の男。
片手で何か持ち上げている?
その姿は空に蒼く光る月に照らされ、神に祈りを捧げているように見えた。
駆ける男は祈り手の先を見る。それは神に祈りを捧げているようなものではなかった。
それは、邪教の儀式のようだった。その手には……。
ヘクトルはそれを認識すると剣を引き抜き、一気に踏み込み、背を向ける男に縦に振りかぶる。
「このクソ野郎が!!」
ヘクトルの完全に男の脳天を捕らえる。アーマーナイトの鎧さえ貫ける剛の一撃が放たれる。
だが、その一撃は防がれる。
「何!!」
ヘクトルはあまりの突飛な出来事に驚愕する。
得意の武器である斧でないにしろ、ヘクトルの攻撃は豪腕の一撃。
その威力は相手を一刀両断できる凄まじいものだ。
だが、それを両腕に着けられた小手だけで防がれたのだ。
普段ならこの腕ごと叩き割る自信があるのだが。
目の前の出来事は驚愕としか言えない。
それもそのはず、男は装備する小手は名工――源氏の小手。
柔な武器では傷一つ付ける事が出来ない代物であった。
「ほう、気配の消し方といい、その踏み込みといい。
この俺を楽しませてくれそうではないかッ!!」
すかさず、魔人オブライトは反撃の一撃を加える。
ヘクトルはそれを体の捌きで避け、間合いを離すため後ろに大きくステップする。
「つるっぱげ…てめぇ、女を殺したのか!?」
ヘクトルはオブライトを睨め付け、剣を構えながらじりじりと横に移動し、お互いに間合いを維持する。
「いい目をしている。多くの死線を潜った鋭い目つきだ」
「質問に答えろ、なぜ殺したんだ?」
「ああ、殺したどうかは分からんが、瀕死に違いないだろう。だが、勘違いしては困るな。
これは正統防衛だ。あちらから俺に立ち向かってきたのだよ」
「信じられると思うか」
激昂の限り睨み付けるヘクトルの気迫を無視し、言葉を続ける。
「信じるかどうかはお前しだいだ。それにしてもあまりで脆弱で反吐が出そうだった。
つまらん女だった。……だが、お前は大いに楽しませてくれそうだ」
オブライトは地面を蹴って、ヘクトルへと踏み込み、鳩尾に掌打を打つ。
その踏み込みの速さは砲弾を連想させる。
突然の攻撃にヘクトルは咄嗟に剣を側面にして、その攻撃を防ぎ切るが、
その勢いを殺しきれず、ガードを崩す。
その瞬間、オブライトの掌打が連続して放たれる。
その威力は鎧に守られているにもかかわらず、大地がゆっくりと砕けるような衝撃が胸に伝わる。
オブライトにとって鎧など紙切れに過ぎないのだ。
長年修行した気の力によって、波紋の如く衝撃を浸透させる。
鎧通しと呼ばれる日本古来から伝わる技法。
ヘクトルの巨躯が軽々しく吹き飛ばされてしまう。
オブライトは追撃に入るべく、大きく跳ねとび、顔面目掛け拳を振り上げる。
地面を転がるヘクトルは体勢を立て直すと、同時に足と体を捌かせ、オブライトの打突ポイントをずらす。
オブライトの拳は目測の地点とは大きくずれ、地面に叩きつけられる。
拳の重圧によって、地面の枯葉が高く舞い上がる。
その一瞬の隙を狙い、ヘクトルの刃が首元を狙う。
普通ならここで決着が付くのだが、オブライトは両手を交差させ、小手で受けきる。
それはあまりに暴力じみた反射神経。人間の所蔵と思えない、人間の範疇を超えたものであった。
「クソが、人間とは思えねえぜ」
オブライトはすかさず無防備になった身体に前蹴りを食らわせる。
前蹴りのよって、宙に吹き飛ばされる最中、ヘクトルは焦っていた。
こんなところで、油を売っている場合ではないのだ。
すぐにでも、少女の安否を確認したいのだが、目の前の敵はあまりに規格外。
怪我人に構っていられるほど余裕はない。自分の死を覚悟せざるえないほど男は強い。
ヘクトルは苦戦を強いられていたのだ。
本来の得意の武器でない上に、付き纏う焦燥感。
その二つがじわじわとヘクトルを縛り付ける。
「どうしたあ? 動きが鈍くなってきたぞ?」
一方的な攻撃の前にヘクトルは防御のみに絞られる。
ヘクトルはこの不利な状況を打破する答えを搾り出す。
だが、その答えは―――
「はああああああああああッ!!」
拳と剣がぶつかり合う。
その瞬間、ヘクトルの唯一の武器鋼の剣が砕け散った。
―――金切り音と同時に闇の中へと消え去った。
ここからは一片の隙も与えない攻防であった。
いや、それは紛れも無く一方的な虐殺であった。
ヘクトルはなされるがまま、オブライトの攻撃を一身に受ける。
いくら抵抗しようが、ガードは崩され、全身のいたるところに拳を浴びせられる。
ヘクトルとはいえ、武器を失った時のために格闘術は一通り習っていた。だが、それを上回るオブライトの格闘術。
急所だけは何とか避わし、意識だけは失われないようにしていたが、そろそろ体力は限界に近づいて来ていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、まだ俺は倒れて…いやしねえぞ、つるっぱげが!!」
ヘクトルは立つのもやっとであった。
むしろ、生きているのすら不思議なほど満身創痍であった。
オブライトはにやりと頬を持ち上げ、止めの一撃を顔面に食らわせる。
顔面が陥没必至の一撃。
ヘクトルの死は確定的であった。
だが、それは確定することなく防がれる。
「なにぃッ!?」
足元から隆起した鋭い岩片がオブライトを襲う。
オブライト突然ことに足元の自由を奪われ、傷を負うが、
すぐに状況を理解するため周囲を見渡す。
そして、目に映るのは立つのもやっとの女がオブライトを見据える光景。
「女、よくも俺の邪魔を……」
オブライトはすぐにでも地を踏みしめ、リーザの元へと間合い詰めようとする。
だが、その一瞬の隙が。
「やらせはしないぜ!」
オブライトは振り向く。身体に何かが貼り付けられている。
それは、ハゲワシの羽に似た見た事もない代物。
『キメラの翼』が突きつけられていた。
その瞬間、翼が砕け散り、効果を及ぼす。
オブライトの巨躯が宙を舞う。
刹那、高速でどこか彼方に飛ばされたのだった。
ヘクトルは空高く舞い上がるオブライトを眺める。
奴の突然の驚きようは死に逝く自分にとって、手土産になるだろう。
エリウッド、リン、そして―――フロリーナ…すまねえ…俺はここで退場だ。
そう、思いながら、ヘクトルはそのまま大の字に倒れる。
肉体が軋みを上げ、自分だけが分かるレクイエムを奏でる。
そこに、ふらふらと身体を引きずって、ヘクトルの元に少女が駆け寄ってくる。
その全身の怪我は見るに痛々しい。
まあ、俺ほどじゃないけどな……。
「大丈夫か、すまねえな。もうちょっと早く駆けつければ無傷であんただけでも逃がせられたのによう」
「ごめんなさい、私のせいで……私のせいで…」
「へっ…俺が勝手にしでかしただけだ…それに女に泣かれるのは…。
フロリーナだけで…じゅうぶんだ……かんべんしてくれ。
まあ…また……泣かしてしまうけどよ」
そう、言葉を紡ぐと、心の中でもう一度最愛の者に謝った。
涙を浮かべるリーザは息も絶え絶えのヘクトルを見渡す。
立派に飾られた鎧に拳の跡が至るところに刻み込まれ、酷いものとなると捻り潰されているものもある。
それは明らかに相手の膂力の凄まじさを物語っていた。
「今すぐ、あなたを癒します。だから、心配しないで待っていてください」
「ああ……ありがてえ。いつでも待ってやらあ」
ヘクトルは悲しい嘘だと思っていた。ライブの杖もなしにすぐに傷を癒すことは不可能なのだ。
最後の最後まで俺を心配させまいとする心遣いだと。
だが、その認識は覆される。
リーザはその瀕死にヘクトルの姿を見ると詠唱の構えを取る。
優しい光がヘクトルの身体を包み込む。すると見る見るうちに傷が癒されていくのだ。
ヘクトルはライブの杖なしに魔法を使える事に驚愕し、リーザの顔を覗き込む。
その顔は汗だくで体調は優れていない。見る見るうちに生気が失っているようにすら見える。
「おい、お前!! 止めろ!! もしかしてお前……」
「ごめんなさい、いつもより…治癒力が…弱いの。
でも…ホルンの魔女リーザ・フローラ・メルノが……。
絶対に……あなたの傷を……治すわ…」
「止めろ!! 俺のことはいい!! あんたはあんたのこと心配するんだ!!」
ヘクトルは何度も声を張り上げ、治癒呪文を唱えるリーザを制する。
が、リーザは一心不乱に詠唱を続ける。
ヘクトルを『救う』ために。
あのときのように後悔はしないために。
クリフトのように勇敢になりたいために。
オブライトに打破された偽りの覚悟ではなく。
―――本物の覚悟を。
傷ついた身体を鞭打って唱え続けた。
これ以上魔力を使う事は死を意味していた。
だが、命を賭して、唱え続けた。
リーザの身体が大きく光ると、治癒力も大幅に増大し、
ヘクトルの満身創痍の身体は綺麗に治されていた。
「わ…たし…やり…ま……し………」
ヘクトルの元気な姿を確認すると、リーザは弱弱しい笑顔を見せ、その場に崩れ落ちた。
ヘクトルは崩れ落ちるリーザを咄嗟に抱える。金色の髪がさらさらと腕に流れ落ちる。
その身体はあまりに冷たく、軽かった。
紛れも無く死が訪れを意味していた。戦乱で何度も体験した人の死。
それが、今ここで訪れていた。
「おい!? どうしてなんだよ!! なぜあんたが死ぬ必要があるんだ。
本当は俺が死ぬはずだった。それなのにどうして俺じゃなくてあんたが死ぬ事になるんだ。
なぜだ……なぜなんだ!!」
ヘクトルは憤りと悲しみの入り混じった言葉を投げかける。
だが、腕の中の少女の耳には届かない。
少女は自分が救った者の腕の中で眠っている。
そのか細い死に顔は安らかのものだったのかは、彼女自身しか知らない。
【リーザ@アークザラッドU 死亡】
【残り53名】
【F-5 森林 一日目 深夜】
【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:全身打撲(小程度)
[装備]:なし
[道具]:リーザの不明支給品1、聖なるナイフ@DQ、基本支給品一式×2(リーザ、ヘクトル)
[思考]
基本:オディオをぶっ倒す。
1:仲間を集める。
2:オディ・オブライトを倒す。
[備考]:
※フロリーナとは恋仲です。
※キメラの翼@DQは砕け散りました。
※鋼の剣@DQは刃が砕け散りました。
【??? 一日目 深夜】
【オディ・オブライト@LIVE A LIVE】
[状態]:両足に損傷(小程度)
[装備]:源氏の小手 @FF
[道具]:不明支給品1〜2個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:『最強』を目指すため最後まで生き残る。
1:強者と戦う、弱者には興味は無い
2:リーザを殺す
3:ヘクトルと再戦(生きていると思っていないが)
[備考]:
※魔法の存在を意識しました
※キメラの翼によって何処か遠くに飛ばされました(場所は次の書き手に任せます)
39 名前: ◆O4VWua9pzs[sage] 投稿日:2008/09/05(金) 09:42:29 ID:7eewbtkA0
投下完了しました
タイトルは『遺志を継ぐもの』です
以上、代理投下終了です。
俺からも作品の感想を。
投下乙! リィィィィィザァァァァ!! 俺の嫁が! 嫁が!
外道マーダーきた! 強いよオディ怖いよオディ。
ヘクトルはフロリーナと支援状態か……これはオイシイ設定。
他ロワであなたの作品を見ましたが、素手でのバトル描写は相変わらずトップレベルですね。GJ
しっかしこのロワは一番戦闘力高いロワになりそうだねw
代理投下乙。リーザが健気過ぎる…。クリフトの影響力が以外なところで出たな。
ところでへクトルの支給品が鋼の剣、キメラの翼。リーザが聖なるナイフと不明1つでいいのかな?
ピサロ投下します。
予約していたあとの二人は登場しません。詳細は議論スレ。
長期間キャラを拘束してすみませんでした。
口惜しかろう……
お前達とて……自分の欲望、感情のままに素直に行動していただけなのだから……
愚かなる人間の欲望……お前達はその犠牲となった。
お前はそれでいいのか。このまま終わっていいのか……?
若き魔族の王よ。今一度、お前に機会をくれてやろう。
目を覚ませ。お前の抱く憎しみを、もう一度思い出せ。
そして、人間達に己の罪を、その愚かさを……
思い知らせるのだ!
『デスピサロ』
ばしゃと支援!
しえん
月明かりに、手を透かす。
その手は緑の醜悪な怪物の手などではなく、見慣れた自分の手だった。
「生きている……か」
男は一人、ポツリと呟いた。
勇者達の手でとどめを刺され、死んだはずだった自分の身体を見回す。
夜の風に靡く銀の長髪。赤いバンダナ。尖った耳。マントと黒い装束。
美しく整った端正な顔立ち。その表情に差しこむ、黒い影。
月の光という演出も手伝って、その姿は神秘的とすら表現できた。
「いや、死に損なった……と言うべきか」
どこか自嘲気味に自らの運命を皮肉る。
若き魔族の王、デスピサロ。
彼は大切な人を殺され、人間の全てを憎悪した。
遂には禁断の秘術・進化の秘法に手を染め、その力を自らに取り込んだ。
その代償として、記憶や人格、彼を証明する全てが崩壊した。
ヒトという種に対しての、純粋な憎しみだけを残して。
……そうまでして手にした復讐の力は、今は彼の中から失われていた。
身体は、完全に元の姿へと戻っている。
人格も安定し、記憶も……完全ではないが、ほぼ修復されていた。
進化の秘法による後遺症らしきものも、何もない。
あの勇者達との戦いの傷も、それが夢であったかのように綺麗に消えていた。
「お前の差し金か。オディオとやら」
あの部屋で見た、魔王を名乗っていた人間の姿を思い起こす。
殺し合い。ただそれだけの他愛のない遊戯を行うため、奴は50人以上の者を集めた。
所詮は人間か。こんな馬鹿げた殺人ゲームのために、よくも労力を割ける。
そんな者が魔王を名乗るなど、分不相応にも程がある。
……最初は、そう思い彼のことを見下していた。
だが、彼の目に灯っていた光。あの黒い輝きが、デスピサロの瞼に強く焼き付いていた。
そう……同じだ。あの男は、自分と同じ感情をその精神に宿している。
憎悪。人間に対する、圧倒的なまでの憎悪。
それが、デスピサロの興味を捉えて離さなかった。
共感。オディオの発する闇が、同じく憎悪を宿すデスピサロにも、不思議と強く理解できた。
「……そうか。そういうことか」
やがてデスピサロは、何かに納得したかのように笑みを浮かべた。
空を見上げる。月は変わらず、光を放ち続けていた。
「お前は思い知らせたいのか。奴らの愚かさを、罪深さを。
奴ら人間自身に、身をもって思い知らせたい……そうだろう、オディオよ!」
空へ向けて叫ぶ。今もどこかで自分達を見ているかもしれない男に向けて。
シエン→シエンラ→シエンガ
「……面白い」
彼の笑みはさらに強まる。端正な顔立ちは崩れ、表情を醜悪に歪ませて。
「いいだろう。この茶番……付き合ってやろう」
狂気にも等しい憎悪に表情を歪ませ、口元をつり上げる。
通常の彼であれば、こんな馬鹿げた遊戯など一蹴したであろう。
憎き、滅ぼすべき人間のお遊びの駒になるなど、彼の誇りが許さなかったはずだ。
だが、彼はオディオに興味を抱いた。
あの男にもう一度会ってみたい。同じ人間でありながら、自分に匹敵する……
いや……あるいは自分以上とすら思えるほどの闇を発する、あの男と。
「この地に蔓延る人間どもを排除し……お前のもとに辿り着いて見せよう……!!」
内に秘めた憎悪を発露する。まるで、オディオの放っていた憎しみに呼応するかの如く。
支給された鞄から名簿を取り出すと……デスピサロは自らの魔力で、それを消し飛ばした。
目を通す必要などない。そこに書かれた人間どもは、どの道一人残らず生かすつもりはない。
名簿は瞬く間に灰と化し、やがて自然の中に還る。
「これが、お前達の運命だ……愚かな人間達よ」
自分の為すべきことはわかっている。
――皆殺しだ。
人間達は一人残らず殺す。奴らと組する輩も、容赦なく消す。
お前達はロザリーを殺した。その罪は、裁かれなければならない。
お前達の罪の重さを、骨の髄まで味わわせてくれる。
死の淵から蘇ったばかりの彼は、気付いていなかった。
あの場所に、自分と同じく召喚された参加者の中に、殺されたはずの大切な人がいたことに。
だが名簿を燃したことで、再びそれを確認することは難しくなった。
いや……例え彼女が傍にいたところで、彼が人間を滅ぼすという意志は、もはや止めることは
不可能だろう。人間達が己の欲望のために、彼女を惨殺したという事実は消えないのだから。
誰も彼を止められる者はいなかった。
そう、ピサロという青年は、もういない。
かつてロザリーの前で見せていたという穏やかな一面など、今の彼からは微塵も感じられない。
いるのは「オディオ」という名の感情にその身を委ねた復讐鬼。
男の名は、デスピサロ。人間を憎み、滅ぼす者。
【E-6 森林 一日目 深夜】
【ピサロ@ドラゴンクエストIV 】
[状態]:健康。人間に対する強烈な憎悪
[装備]:なし
[道具]:不明支給品1〜3個(未確認)、基本支給品一式
[思考]
基本:優勝し、魔王オディオと接触する。
1:皆殺し(特に人間を優先的に)
[備考]:
※名簿は確認していません。またロザリーは死んでいると認識しています
※参戦時期は5章最終決戦直後
投下終了。ご迷惑おかけしました。
投下乙!紆余曲折はあったけどいい作品じゃあないか
ピサロは完全なるマーダーと化したか。彼も人間に裏切られた人なんだよなぁ
これは期待だなあ
投下乙!
マーダーピサロきた!
でもロザリーの生存を知ったら、どっちに転ぶか分からないのか……。これは楽しみ。
ピサロの憎しみをオディオと重ねたのは上手いですね。
しかしこのロワのマーダーやべぇw
トルネコ、セッツァー投下します。
SS自体を書くのが久しぶりだったので読み辛いかもしれません。すみません。
夕闇に染まる景色の中。
草原の中にぽつんと孤立した小屋の中で、二人の男が酒を飲み交わしていた。
一人は静かに酒を呷り、どこか虚ろな瞳を浮かべている。
頬には大きく太い傷が走っているが、決して醜い顔つきではない。
銀色に輝く流れるような長髪、どこか危うい空気を纏った精悍な顔つき。
年は若くないだろうが、しかし老けている訳ではなかった。
強いて言うならば、大人の男――それがこのセッツァー=ギャッビアーニであった。
一方、そんなセッツァーに向かってぺちゃくちゃと大声で、かつ楽しげに話している男がいた。
特徴的な縦縞の服を着たその身体は、脂肪がつきすぎてセッツァーと共に囲んでいるテーブルにつっかえている。
白髪が混じった青い髪と髭。
よく笑う為なのか目尻と口元には皺が出来ており、この男が若くない事は一目で判る。
小太りの中年の男――トルネコは、尚も盛んにその口を動かしていた。
二人が出会ったのは、ほんの数十分前である。
この地に降り立ったトルネコは、一先ずの隠れ家として目の前にあった小屋に入ろうとした。
ドアノブに手をかけ、戸を静かに開ける。
そこにいたのは、一人で静かにグラスを傾けるセッツァーだったのである。
「いやぁ、しかしあの時は驚きましたよ。
まさか人がいる家をドンピシャリで当ててしまうとはね、セッツァーさんを見た時は肝が冷えました」
手を叩いて笑いながら、トルネコは思い出すように言う。
何せ大きな傷を顔に持つ男が一人、暗い部屋で酒を飲んでいるのだ。 しかも、その足元には得物を携えて。
これが驚かずにいれるはずがない。
見た瞬間思わず逃げ腰になったトルネコだったが、ふとその時気付いた。
それは、自分のような無防備で見るからに動きの鈍そうな男が突然現れたというのに、
セッツァーが自分の得物に手をかけようとしていないという事だった。
このふざけたゲームに乗っている人間ならば、まず自分を標的にするはずだろうに。
それがわかった瞬間、トルネコは咳払いを一つしてセッツァーに向き直り言った。
ただ一言、「あなたはやる気なのですか?」とだけ。
セッツァーは何も言わず、ただ首を横に振った。
それからは早い。
元々陽気な性格で人懐こいトルネコはすぐに家の中へ入るとセッツァーと同じテーブルへとつき喋り始めた。
自分もやる気はないだとか、身の上話やここへ連れられてくるまでしていた事。
途中からはセッツァーが注いでくれた酒――セッツァーの支給品で老酒という珍しい酒らしい――も入った事もあり、
この場に連れてこられて緊張していた心も徐々に解れたのだろう。
とにかく、喋れる事は何でも喋った。
「なぁトルネコ……」
トルネコの愛妻の自慢話の腰を折り、セッツァーが声をかける。
この談笑――といっても、単にトルネコが一方的に話していただけだが――の中、初めてセッツァーが口を開いた。
その事に少し驚きながら、トルネコは口を閉じてセッツァーの目を見る。
何か機嫌を損ねただろうか? それとも、外に他の参加者の気配でも見つけたのだろうか?
セッツァーの眼差しは真剣そのもので、思わずトルネコは身を堅くする。
しかし次に発したセッツァーの言葉は、別の意味でトルネコを驚かせた。
「あんたはどうしてそんなに陽気なんだ?」
「へっ?」
思わず間抜けな声が出てしまい、慌てて口を強く結ぶ。
目の前の男は、"何故自分が陽気なのか?" ……そう聞いたのか?
……いやいや、そんなはずはない。
あれだけ真剣な眼差しをしていたのだ、そんな馬鹿馬鹿しい事を聞くはずがない。
きっと自分の聞き間違いなのだ。 そう結論付けて、トルネコは聞きなおそうとする――が。
「あ、あの、セッツァーさん? 今、何と……」
「答えてくれ、トルネコ。 何であんたはそこまで陽気になれる?」
……どうやら自分の耳は正常だったらしい。
これが冗談交じりの言葉や、或いはどこか皮肉を交えた言葉ならまだ返答しやすい。
だが、目の前の人物は真剣に自分に聞いてきてるのだ。
「えっと……質問の意図が、わかりにくいのですが……」
「……言葉のままさ。 お前は、何故陽気なんだ。 何故そんなに、明るい。
こんな……腐った世界の中で」
そう言うセッツァーの真剣な瞳は、再び濁りだす。
腐った世界……セッツァーの生きている世界は、そんな世界だった。
いや、正確にはそんな世界になってしまったのだ。
一年ほど前の事、浮上した魔大陸でガストラ皇帝やケフカ=パラッツォを追い詰め――そして、三幻神のバランスが崩れて世界が崩壊してから。
美しかった世界はもう無い……帝国と共に戦っていた仲間とも散り散りになってしまった。
そして、何より大切にしていた翼は――使い物にならなくなってしまった。
……一部の人間は、まだ完全に絶望をした訳ではないらしく各地で復興活動をしていると聞く。
だが、そんな事は自分にとってはどうでもいい事だった。
翼を失ってしまった今の自分は、何をする気力も沸かない。
ただ毎日パブに通っては退屈を紛らわすように酒を飲むだけだった。
wktk支援☆
命を失う事など今更惜しい事ではなかった。
翼を失ってしまった以上、今の自分には何の存在意義も価値も無い。
元々自分はギャンブルの世界で生きてきた人間。
人々の心にゆとりが無い今の世は、あまりにも生き辛い。
生きていたって死んでいたって、どうせ同じ事だ。
こんな小屋で無防備に酒を飲んでいたのだって、そんな自暴自棄な考えがあったからこそ。
「だからこそ、あんたがわからない……なんでこんな状況で陽気になれるのか、な」
「……世界は腐ってなどいませんよ」
「何?」
いつの間にかトルネコは俯いていた。
俯いたまま、先ほどとは打って変わって小さくか細い声で呟いた。
「……確かに、今の世には魔物が大勢います。
人間同士で戦争を起こしてしまいそうになった国があります……。
ですが、ですがね……世界はセッツァーさんの言うように腐っちゃあいませんよ」
酒を呷り、トルネコは再び顔を上げた。
そこには先ほどまでのような陽気で朗らかな人懐こい笑顔は無い。
真剣な――そして、どこか悲しみを帯びたような表情のまま、トルネコは続ける。
「あの魔王と名乗る者に飛び掛った格闘家を思い出してご覧なさい。
確かに、彼の行動は蛮勇でしょう。 馬鹿のやる事でしょう。
ですがね、彼は……少なくとも彼は、あの魔王と倒そうと挑みかかったのです。
腐った世界で、あのような真っ正直な人間が作られますか?」
答えは否だろう。
彼の居た世界はセッツァーやトルネコの居た世界とは違うとはいえ、相応に熾烈な世界だった。
街中で恐喝や食い逃げ、窃盗が多発する。森には野盗が出る、決して治安がいいとは言えない世界。
しかし、それでも彼はあのように真っ正直な人間に育った。
――少しばかり頭は悪かったかもしれないが、少なくとも腐った人間ではない。
「そして、死んだ彼を必死に蘇生しようとした神官がいました――私の仲間です。
彼は……私と同じように、決して勇敢な人間ではありませんでした。
でも、彼は死んだ青年を蘇生しようとした……あの状況で、です」
普通なら物怖じしてしまうような状況で、彼は果敢にも死んでしまった青年を蘇生をしようとした。
それは傍から見れば無謀な行為だったかもしれない。馬鹿のやる行為だったかもしれない。
だが、トルネコはそんな彼の仲間であった事を誇りに思う。
彼は少しなよなよしていて頼りない一面もあったが……しかし。
それでも彼には強い正義感と、真っ正直な人間の呆気ない死を放ってはおけない優しさがあった。
「セッツァーさん……正直な話をして私は、魔大陸の事なんて知りません。
あなたの言う世界の事情なんて、何も知りません。
恐らくは噂に聞く天界とかいうのと私の住む世界がまるっきり違うように、私達の住む世界はまるっきり違うのかもしれません。
でもね……」
そこで言葉を切り、トルネコはその厳しかった瞳を柔和なものへと変え、言った。
「人間は……世界ってもんは、そんなに簡単に腐らないんですよ。
何故なら、人には希望があるから、絆があるから……夢があるからです」
「夢……?」
その言葉を最後に聞いたのは……一体、どれほど前だっただろうか。
呆然としているセッツァーを余所に、トルネコは更に言葉を続ける。
支援
「こんな年になってもね、私は夢見ているんですよ。
世界一の武器商人になるという夢――天空の剣という名の伝説の武器を見つけ出すというものが」
無論、トルネコは伝説の武器を扱えるような戦士ではない。
しかし、それでも彼はその天空の剣を見つけ出したいのだ。
それは彼が一流の剣士になりたいからという夢を見ているからではなく、世界一の武器商人になりたいと思うからこそ。
「世界一の武器商人には、やはり世界一の武器が相応しいでしょう。
無論私には使えませんから、その剣はちゃんとその剣を扱える方――勇者様にお譲りします。
ですがそれでも私は満足なんです。 武器商人にとっての最大の喜びとは、その武器を相応しい人にお渡しする事なのですから」
そう、トルネコの目的はあくまでも天空の剣を見つける事にあるのだ。
決して天空の剣を手に入れたい訳ではない。
単に彼はその世界一の剣を装備するに値する人に天空の剣を渡したいだけなのである。
だからこそ、彼は勇者の旅に同行し――その天空の剣を見つけ出す事を手伝っている。
「夢があるから、希望があるから、絆があるから人は絶望なんかしないんです。
例え世界がどうなろうと、夢がある限り人の心は枯れません」
「夢……夢か」
「そう、夢です……セッツァーさんにだって、あるはずですよ。
そして、こんな世界だからこそ……こんな状況だからこそ! 夢を追いかけるべきなんです!」
確かに、セッツァー=ギャッビアーニには夢があった。
だが、それは崩壊してしまったのだ……一年前の、世界崩壊の時に。
翼が無い限り、夢は追いかける事は出来ない。
そう考えていたセッツァーの頭に、突如電撃が走る。
――確かに翼は壊れてしまった、あの時……自分の夢は潰えてしまった。
だが、本当にそうか……? それで全ては終わってしまったのか……?
違う……まだ、夢は終わっていない。 俺の……否、友の夢は。
いつしかグラスを持っていたセッツァーの手は震え、口元には笑みが浮かび上がっていた。
自分の翼は壊れた……だが、まだ自分には残されている。
友の遺産――友の夢が、まだ残されている。
それを思い出した瞬間、セッツァーの虚ろな瞳は消え失せ、代わりに熱い情熱の炎の色が灯る。
「ふふ……確かに、あんたの言う通りだ……」
「セッツァーさん……!」
セッツァーの手を両手で包み込むようにして強く握りながら、トルネコは熱く語り掛ける。
「一緒に夢を追いかけましょう……私は見ての通り腕に自信はありません。
ですが、今まで幾度と旅をしてきて魔物と戦ってきた経験があります。
武器や道具を見る目だってあるつもりですし、頭の回転だってそんなに悪くないつもりです。
それにきっと、私達と同じように夢を持ち希望を持ち、あの魔王と戦おうとしている人もいるはずです。
その人達と協力をして知恵を練れば――きっとこんなふざけたゲームを止める事が出来ます!
もう一度、夢を追う事が出来るんですよ!」
「ああ、そうだな……本当にその通りだ……!」
いつしか、両者は瞳に涙を浮かべていた。
目指すものは違えど、その気持ちは両者共に同じ。
だからこそ、セッツァーは己の手を力強く握るトルネコの手をそのままにしておいた。
そして、もう片方の手で持っていたグラスを静かに置く。
「トルネコ……あんたは本当に……」
語りかけながら、セッツァーは一度グラスを持っていた方の手をテーブルの下へと這わせ――。
「いい奴だな……」
そこにあった"ナニカ"を掴み取り、テーブルの下からトルネコの腹へと思い切り突き上げた。
しえんのむれがあらわれた!
突き上げた振動により、ガタンと音を立ててテーブルが倒れ酒の入ったグラスと瓶が割れる。
テーブルが倒れた事により露になったのはトルネコの腹に深々と突き刺さった一本の槍。
最初にトルネコがこの場に来た時にセッツァーが横に携えていた得物だった。
「セッ、ツァー……さん……?」
喉から込み上げてきた粘着性のある赤い液体を垂らしながら、トルネコは焦点の定まらない瞳で目の前の人物を見る。
彼は――涙を流していた。
涙を流したまま、トルネコを突き刺していた。
「感謝してるよトルネコ……あんたは俺に大切な事を思い出させてくれた。
本当に、大切な事をな」
彼が情熱的に夢の話をしてくれなければきっと己はあのまま腐って酒に溺れていただろう。
そして、何も為せぬまま何れは死んでいたに違いない。
全てに絶望をしたまま、夢を思い出す事もなく。
だからこそ彼はトルネコに対して感謝をしている。
自分を蘇らせてくれたのはトルネコなのだから――大切な事を思い出させてくれたのはトルネコなのだから。
「な、ら……どうして……こ、こん……な……」
「もう一度夢を追いかける為さ」
彼の言っていたように、自分達を集めて殺し合いを強要しようとしている魔王を倒す――それもまた夢を追いかける為の道ではある。
だが、それはイレギュラーな夢の追い方でしかないのだ。 この"ゲーム"の中では。
ゲーム……そう、これは己の命をチップとした、殺人ゲーム。
あの魔王を倒すというトルネコの意見はそのゲームをただ放棄しているだけに過ぎない。
しかしセッツァーはそれを好しとしない。
何故なら彼は勝負事の世界に生きてきた人間――戦わない内にゲームを降りる訳にはいかない。
最初はこんなゲームに乗るつもりはなかった……無気力だった自分は生きても死んでも同じ事だったのだから。
だが、今は違う。 今は夢を追いかけるという新たな生きる目的が出来てしまった。
ただ怠惰な毎日を送ってきたセッツァーは消え去り、大空を駆ける勝負師へと舞い戻ってしまった。
故に、セッツァーはゲームを行う――勝負師として、夢を叶える為に。
「不意打ちは卑怯? 一度でも心を通わせた相手を殺すなんて外道だ?
――馬鹿を言うなよ、これは勝負事だ、博打なんだ。 博打の世界にゃ卑怯も何もねぇ」
槍を持つ手に更に力を込め、ずぷずぷと突き刺していく。
肉付きのよすぎるトルネコの体を、しかしその槍はいとも容易く貫いた。
その槍は元々屈強な鎧兵士の装甲をも簡単に突き殺すよう作られている。
ただの脂肪に過ぎないトルネコの体を容易に貫けたというのも、ある意味では当然なのかもしれない。
ぶくぶくと赤い泡を吹き出しながら、それでもトルネコは何かをまだ言おうとしていた。
全身は痙攣を始め、顔面はどんどんと蒼白になっていく。
そして数分が経過した後――トルネコは、大きな音を立てて地面へと倒れこみ、もう二度と立ち上がろうとはしなかった。
ずぷり、とトルネコの胴体から槍を引き抜きついてしまった血糊を小屋にあった布で拭き取る。
拭き取りながら、セッツァーはもう二度と動かないトルネコを見た。
感謝をしている……というのは本当だ。
こんな状況で、こんな場所で出会っていなかったなら……きっといい友人になれていただろう。
あんな年になりながら夢を追い続ける事の出来る男……尊敬の出来る人物だった。
しかし、それはあくまでも平時の時――こんな状況でなかったならばの話。
セッツァーが夢を取り戻し、勝負師としてのかつての自分を取り戻した瞬間――彼はただの標的になりさがってしまった。
不運にもセッツァーを立ち直らせようと決死にトルネコが話しかけた事が、結果的にセッツァーの魂に火をつけてしまったのである。
「あんたは本当にいい人だった……俺の昔の仲間にも見せてやりたいくらいに出来た人間だったよ。
出来る事ならあんたにも夢を追って欲しかった……って、こんな事言っても言い訳にもならねぇだろうがな」
血糊を目立たない範囲で拭えたのを確認した後、自分とトルネコの持っていたデイパックを回収して戸に手をかける。
さぁ、自分は乗ってしまった、このゲームに。
乗るかそるか――命を賭けた殺人ゲームに。
勝てば無事生還、負ければ……命と、思い出した夢が没収される。
だが、怖くは無い。
――久しぶりに感じるこの感触、この緊張感こそがギャンブルの醍醐味だ。
戸を開けると、辺りはまだ暗い。 当然だろう、トルネコと共に過ごした時間はそれほど長いものではなかったのだ。
しかし、そんな薄暗い辺りの様子とは裏腹にセッツァーの心は透き通り光に満ち溢れていた。
「もう一度蘇らせる……友の翼を!」
力強くそう吐き出すと同時に、セッツァーは外へと一歩踏み出す。
もう一度夢を見るために、夢を掴み取る為に。
【トルネコ@ドラゴンクエストW 導かれし者たち 死亡】
【残り 52名】
【H−4 小屋の外 一日目 深夜】
【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:若干の酔い
[装備]:つらぬきのやり@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:ランダムアイテム0〜1個(確認済み)、トルネコのランダムアイテム1〜3個(未確認)、基本支給品一式×2(セッツァー、トルネコ)
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1.手段を問わず、参加者を減らしたい
2.扱いなれたナイフ類やカード、ダイスが出来れば欲しい
※参戦時期は魔大陸崩壊後〜セリス達と合流する前です
※名簿は未確認です。ティナ達が呼ばれている事には気付いていません
これにて投下終了です。
支援ありがとうございました。
うおおお!セッツアーがマーダーに!
原作バトロワの桐山みたいなノリでなるのかなあと思ったけど
最終的にはゲームに乗ったみたいっすねえ
意外とマーダー増えないかなあと思いきや着々と数を増やしているようだ
トルネコ…トルネコぉぉぉお!!
セッツァーもトルネコも好きだから組んでくれたらと思ったのにこれは予想外。
面白い時期から参戦したと思ったらマーダー化か…。
仲間達と出合ったらどう反応するか期待だな。
最後に、GJ!
これはやられた。あそこからマーダー化は予想できなかったぜ。
ギャンブラーとしての勘や経験がゲームにどう生かされるか期待大。
トルネコは不憫すぎる…。
投下乙!
マーダーセッツァーきた! マーダー充実してきたね。
途中までは、対主催的な流れだったのに……見事にひっくり返しましたね。
これは素晴らしい。トルネコも彼にしてはカッコよかったんだけどね……w
しかし彼も名簿は未確認。仲間の参戦を知ったらどうなるか……楽しみですね、GJ!
二人とも投下乙
ピサロ、セッツァーは殺し合いに乗ってしまったか
どっちもらしい理由だし、これからの活躍に期待
ところで、ピサロは5章終了直後からの参加となってるけど、
ミネアが6章終了後からの参加になってて、食い違っちゃってると思うんだけど
トルネコも、天空の剣手に入れる前みたいだし
参戦時期がズレている、でいいと思う
パロロワではよくあること
それより俺が気になるのはFEの支援の扱いなんだよな
フロリーナやニノがヘクトルやジャファルと支援Aになってない時期から参戦とかはアリだろうけど、
リンがフロリーナやヘクトルと支援Aになってる段階で参戦するのはアリなのだろうか?
ピサロはオディオと違い大半が逆恨み疑惑があるな
投下乙です
>遺志を継ぐもの
オブライト強いな…
リーザ死んだのは悲しいけど、ヘクトルにはタイトル通り遺志を継いで頑張ってほしい
>デスピサロ
ピサロマーダー化はある程度予想してたけど、オディオと関連付けたのが上手い
確かにピサロも憎しみで暴走したキャラだったな
>夢をもう一度
セッツァーは一番やさぐれてた時期からの参加か
トルネコの説得で立ち直りはしたけど、その結果マーダー化
トルネコが浮かばれないなw
他のマーダーは何か化け物みたいな奴ばっかりなんで、セッツァーにはそれなりに強いマーダーとして活躍してもらいたいな
>>213 そこまでいったら流石にややこしすぎるんじゃないか?
シンシア、レイ・クウゴ投下します。
支援!!
――そして、思い知るがいい。人間の残薄さを、愚劣さを、醜悪さをなっ!!
魔王オディオは言った。
全ての人間は己の利潤の為に働き、他者を蹴落とすことを厭わない。
本当にそうだろうか?
例外なく全ての人間がそうであると言えるだろうか?
答えはNOだと言いたい。だが、そんな人間がいるのも事実だ。
「……なんで、かな」
先ほどの場所で彼女は見つけてしまった、かつて自らを犠牲にしてまで救った幼なじみを。
彼女――シンシアは考える。
彼がもし、誰かに利用されていたら?
彼がもし、それで恨みを買っていたら?
彼がもし、強者に出会ったら?
彼がもし、何らかの出来事で殺――
嫌な想像を頭から振り払う。
しかし、有り得ないことではない。
彼が死ねば、元いた世界の平和が崩れさりかねないのだ。
だから、一度身を挺して守った。
もう一度、守らなければならない。
真っ先に彼を探さなければならない。
オディオは言った。
他人を信用するなと。
ここにいる全ての人間は己の利潤の為なら他人を蹴落とすことを厭わないと。
もとより、自分の知っている人間は彼一人。
後は他人、全て他人。
考えるにつれて一つの考えが浮かんだ。
――殺してしまえ。
頭のどこかでそんな声が聞こえた気がする。
ここにいる全ての他人は彼の命を脅かしかねない。
だったら殺せばいい、彼の命が思いがけない事故や理由はどうあれ闘争で奪われるなら。
こっちが先に奪うまで。
人を減らしておけば彼が死ぬ可能性も薄くなる。
彼と二人になったら私が死ねばいい。
最悪、もし彼が死んでしまっても、最後の一人を狙えばいい。
生き残れ、どんな手を使っても。
二人生きて、皆生きて魔王に立ち向かうなんてメルヘンやファンタジーな物語は存在しない。
待っているのはきっと残酷な現実。
気がつけば夢中でデイバックを漁っていた。
「考えろシンシア……どうする、どうする?」
デイバックの中身と睨み合いながら、一人思案する。
真っ正面から戦って勝てる可能性はない……なら。
血と汚名を纏うのは、私だけでいい。
彼が元の世界に帰れれば、それでいい。
元いた世界を失うことはできない。
「私も醜い人間、か」
道化に成り下がっていく自分を嘲笑うように乾いた笑いが漏れる。
自分は、自分は、もうこの世にいない身。
それなら、もう怖くない。何が起こっても、何が起ころうとも。
近くに人の気配を感じ取ったのは、それからすぐのこと。
ゆっくりと立ち上がり、気配の方へと歩いた。
怒り。
それは魔王オディオに対してと、その魔王オディオに何もできないでいる自分に対して。
たった首輪一つで、あの場にいた全員が刃向かうことすらできない。
少なくとも自分の力のなさを感じずには居られなかった。
「お師匠さん……どうすりゃ、どうすりゃいいかな」
ふと、かつての師を思い出す。
彼は、彼なら、この場に立たされたときどうするか?
――心じゃよ。
聞こえるはずない声、でも確かに彼女の耳には入った声。
何かに突き動かされるように、レイは目の前の巨木の前で構えに入る。
長い、長い間の瞑想に彼女は何を思ったのか。
とある一瞬に目を見開き、刹那の間に一発だけ巨木に右手を打ち込む。
巨木がわずかに揺れ、上空から木の葉が落ちる。
その一撃に続くように、左手、右足、右手、左足と一つ一つの挙動が確実に巨木へと打ち込まれる。
巨木は大きく揺れる、木の葉を撒き散らしながら。
「……よし」
拳を止めた彼女は堅い決意を瞳に宿し、動き出した。
人のような気配を感じ取ったのはそれからすぐのこと。
シンシアが見たのは一部始終。
見知らぬ女性が巨木に拳を黙々と打ち込んでいる。
何のために?
人を殺すための準備運動?
そうでなかったとしても、何らかの形であの拳が彼に向かったとすれば……?
そんなことを考えただけでも背筋から全身にゾッとする。
「ごめんなさいね、貴女に恨みはないけど彼が死ぬと世界は滅んでしまうの」
シンシアは一人呟く、自分に言い聞かせるように言ったのかはわからない。
そして、賽は振られた。
レイは気配の感じ取った方へと気配をできるだけ消しながらゆっくりと歩いていた。
気配の相手が形振り構わず襲ってこないとも限らない。
できるだけどんな状況でも先手がとれるように行く。
気配がだんだんと濃くなって来た感触がある。
全方位に意識を向けながら歩いていくとうっすらと人影が見えてきた。
それでも、ゆっくりと慎重に進む。意識を目の前の人形に向けながら……。
しかし、何かがおかしい。
何かがレイの中で引っかかっている。
人影は横たわったまま動かない。
気配を感じ取るのが遅く、すでに一人殺された後だったのか?
それとも睡眠、ないし気絶しているのか?
そんなことを考えながら一歩ずつ人影に近づき、ついにしっかりとその姿を視界に捉えることができた。
ユンぐらいの年齢だろうか、赤い髪の少年が横たわっている。
もう少し近づき、横たわる少年に声を掛けた。
「おい、大丈――」
少年の体に触れた時に体温が冷たいのが分かった、すでに手遅れだったのか?
もう一度、声を掛けようとしたが出来なかった。
体を動かすことはおろか、声を出すことすらも瞬間的にままならなかったからだ。
余力を振り絞って振り向いてみると一人の女性が自分の背後にいる。
その両手には、一本の短刀。
とっさに反撃しようとしても、突如全身に行き渡った痺れのような感覚が体を蝕んで思うように上手く動かない。
足から順に、崩れ落ちるように地に伏す。
「が……て、めぇ」
「はー、便利ねーこの隠れ蓑、動けないのは難点だけど……さて、悪く思わないでね。すぐ終わるから」
背後から現れた彼女は瞬く間にレイの荷物を奪い去っていく。
彼女はレイの背後あたりの木に隠れ蓑を使いその姿を消していたのだ。
故に、彼女が感じていた気配は人形のものではなく、そばにいた彼女のもの。
人形を見つけたことで気が緩み、気がそちらに集中してしまったのがレイの敗因。
自分の失態に悪態をつきながら自分が陥った状況を整理する。
思ったよりも傷は深そうだ、背中から大量の血が流れ出すのが自分でも分かる。
そんなことを考えている間にも、彼女はそそくさと人形をデイバッグの中にしまっていく。
「靴だけ、か。でも良さそうな靴だし貰ってくね。
他には……何これ? 絵? これはいいや。あ、あと……」
何を言っているのか分からなかったが、彼女が大きな煙とともに姿が変わった。
いや、変わったどころではない。
服装、顔立ち、髪の色、全てに至って自分とまったく一緒。
まるで鏡を見ているかのように、彼女はそこに立っていた。
「ケホケホ……んー、まあ成功かな。まあいろいろと利用させてもらうから――」
声色すら完璧に自分の物と一緒。まったく見たことのない妖術か何かにただ驚愕するしかなかった。
自分ではない自分が、自分に歩み寄ってくる。
体はまだ言うことを聞かない、相手はゆっくり歩いているはずなのに、それが妙に早く感じられる。
「死んで」
今度は妙にスローに短刀が自分の喉元めがけて振りおろされてくる。
もう駄目かな、と思ったとき。もう一度さっきの声が聞こえた。
レイの耳の奥にまで響き渡るように、聞こえた。
「るああっ!!」
反射的に伸びた右腕が短刀を振り下ろそうとする片手を止める。
そのまま、彼女の腕をつかみ起き上がりざまに頭突きをお見舞いする。
彼女がひるんだ辺りで蹴りをお見舞いする、同時に惚れ惚れするほど華麗な動きで後退する。
自分の姿をした彼女は後ろに吹っ飛んだもののすばやく起き上がり、再び襲い掛かってくることなくその場から瞬く間に逃走していった。
どうやら相手に正面から闘うつもりはないらしい。
「ヘッ、ざまあみやがッ……?!」
再び体が思うように動かなくなる。背中の出血は止まっていない。
追いかけて倒すのも良いが、このままにしておけば自分の命が危ない。
かといって逃げた彼女を放っていおくわけにも行かない。
さて、どうする?
【D-6 巨木付近 一日目 深夜】
【レイ・クウゴ@LIVE A LIVE】
[状態]:ストップ(無理すれば気合で動ける程度)、背中に刺し傷、出血(このまま行くと死亡)
[装備]:なし
[道具]:モグタン将軍のプロマイド@ファイナルファンタジー6
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:逃走、現状をどうにかする
[備考]:
※名簿は未確認です。
※参戦時期は最終編オディオ戦前(高原と一緒)です。
※毒蛾のナイフの麻痺は数十分で解けるかと思われます
※制限を感じ取りました。
「はぁ、はぁ……しくっちゃった、か」
軽く息を切らしながら、シンシアは近くの木にもたれ掛る。
この短刀の動きを止める効果はそこまで強くはないようだ、過信しすぎは自分が危ない。
しかし、手に入れたこの外見はなかなか動きやすい。その上この靴がもたらす効果でさらにすばやく動けるようだ。
仕留め損ねたのは予定外だが……放って置けばあのまま死ぬかもしれない。
わざわざもう一度正面きって闘いに行くほど、分の悪い賭けには臨みたくない。
「待っててね、私が絶対に守ってあげる」
彼女は駆ける。これも世界を救うためと自分に言い聞かせながら。
気づかないうちに狂気にも似た感情を胸に宿しながら。
他人の面をかぶり、醜悪なまでに外道を演じ。
たどり着いた先に、光は。
光は、あるのか?
【D-5 南東部 一日目 深夜】
【シンシア@ドラゴンクエストIV】
[状態]:モシャスにより外見と身体能力がレイ・クウゴと同じ(持って次回放送)、焦燥感
[装備]:影縫い@ファイナルファンタジーVI、ミラクルシューズ@ファイナルファンタジーIV
[道具]:ドッペル君@クロノトリガー、かくれみの@LIVEALIVE、基本支給品一式*2
[思考]
基本:DQ4勇者、もしくは自身の優勝を目指す。
1:DQ4勇者を探し、守る。
2:DQ4勇者を殺しうる力を持つもの優先に奇襲を利用し殺す
3:DQ4勇者と残り二人になった場合、自殺。
[備考]:
※名簿を確認していませんが、DQ4勇者をOPで確認しています
※参戦時期は五章で主人公をかばい死亡した直後
投下終了です。
ハッキリ言っていっぺん仮投下を踏むべきだったかな……と思います。
何かあればどうぞ。
投下乙!
いやあ、あれか
某ロワのアメフトマネージャーみたいなキャラポジションになりそうかもしれんなあ
でもこっちの方が変身魔法使えるからこっちの方が強そうかもなあ
後、レイは師匠のことはジジイって呼んでいるんだ。
ああ、途中でもいいからちゃんと書いとけばよかったなあ、本当にごめん
投下乙!
貴重な一般人きt……きてない! 一般人いないこのロワ!
まさかのシンシアマーダー化ですか! これは意外だけど、理由は納得です。
原作でも彼女の死亡シーンはトラウマでしたからねぇ……これも面白い展開でしょう。
上手く支給品、魔法を駆使した戦い方は素晴らしい。GJ!
>>225 ジジイにしなかったのはカンフー編終わってる後から来てるからそこまで性根曲がってないかなあ……と思いまして。
最終編でジジイも出てきませんし、あのED後なら呼び方変わってるかなあと。
……あれ? 最終編でもジジイって呼ぶシーンあったっけ。
ちょっと確認してきます。
投下乙。内容には問題無いと思います。
ただ、支給品の説明と、
>影縫い@ファイナルファンタジーVI
>ミラクルシューズ@ファイナルファンタジーIV
これは別シリーズから?それとも入力ミス?
別シリーズなら靴の方はアウトかと。
功夫編スタッフロール直前に
「ジジイが言うような優しい人間にゃまだなれねーけど……」
って
>>228 うわホントだ……ミラクルシューズもFF6です。
ですので
ミラクルシューズ@ファイナルファンタジーVI
となりますね、当初DQの支給品だったからそれのヤツが残ってたみたいです。
申し訳ない。
>>229 ホンマや……EDがキョーレツすぎて摩り替わってました。
>>219の
>「お師匠さん……どうすりゃ、どうすりゃいいかな」
を
>「ジジイ……どうすりゃ、どうすりゃいいかな」
に変更します。
そうえいばモシャスで得られるコピーは能力と外見だけで
声とかの細かい部分はコピーできないでよかったっけ?
投下乙!
シンシアには経験の差だけで偽者秒殺できるアークキャラが天敵かな。
てか、モグタン将軍ワロタ。
>>232 DQ4OPのカエルの時に主人公がシンシアだと気づかなかった場面があるので
声も自在に変えられるのかなぁ……と
シンシアの声で話しかければ外見がカエルでも超天然じゃない限り気がつくんじゃないかと。
と、いうわけで独断でこういう風にしました。
問題があるようなら差し替えたいと思います。
モシャスの効果はあれでいいと思う
投下乙。シンシアまさかの一般人マーダーか。
貴重なモシャス使いに隠れ蓑とは…まさに外道(良い意味で)
それとは別ですが、自分も仮投下スレに投下しておきました。
内容が内容だけに没の可能性もあるのですが、何かあったらご指摘お願いします。
>>236 ステルス対主催ですか。別に引きこもるというわけじゃないから、大丈夫だと思います。
1つだけ誤字を。最後の部分ですが、
>僕が思いつた事は
ここは多分「思いついた」ですね。細かくてすいません。
申し訳ないですが、予約期限も近いので先に投下させていただきます
名前とは、単なる記号に過ぎないのだろうか。
人や事物を識別するための、言葉の羅列に過ぎないのだろうか。
俺は言おう。
そんなことはない、と。
親は我が子の名前に、自分の希望を託すものだろう。違うか?
人間が始めて背負う『歴史』。それが名前なのだ。
それは他人にとっては意味のない文字列かもしれない。
ただ「その言葉が何を指すか」が分かれば、どんな名前だろうが構わないのだろう。
だが、その短い文字列に詰まっている『思い』は、時として大きな価値を持つ。
では、この血塗られた名前に何の意味があるのだろう?
俺は、英雄として祭り上げられた男の名前を背負っていた。
自分が親に貰った名前も捨てて、親友の名前を騙っているのだ。
もしかしたら、俺は偽りの人生を歩んでいるだけなのかもしれない。
あぁそうだ。英雄の名前なんてなんの意味も価値もない。
名前だけを偽ったところで、俺は英雄にはなれないんだからな。
だが、俺は信じて疑わない。
俺が信じた仲間、俺たちが守り抜いた世界だけは、偽りではないのだと。
そしてこの名前、「ブラッド・エヴァンス」は俺と親友との絆なのだと。
それで、充分なんだ。
今現在、自分がどういう状況に置かれているのか。
それを把握しようと、ブラッドは川に両手を突っ込み、すくい上げた水を顔面に叩きつけた。
ひんやりと心地よい感触を皮膚の触覚が感じ取り、ぼやけていた脳の覚醒を促した。
一息つくと、先ほどの光景、魔王オディオとかいう男の起こした一連事件を思い返す。
落ちる首、血の臭い。少女の悲鳴、オディオの闇。
そこまでを鮮明に思い返したのにもかかわらず、冷静でいられる自分に少しばかり驚く。
「さて、どうするか」
辺りを見渡しても、人影はない。
仕方がないので当ても無く進むことにした。
◆ ◆ ◆
魔王は魔王と対峙した。
とは言っても、別に彼が哲学に目覚めたというわけではない。
彼の心のうちを詩的に表現した、と言うわけでもない。
読んで字の如く、『魔王』と名乗る彼が、同じく自分を『魔王』と名乗る男と対峙したのだ。
「魔王……オディオか」
自分とは異なる『魔王』と出会い、彼は何を思ったのか。
怒りでも感じているのだろうか。
異形たちの王者として君臨していた自分を差し置いて魔王を名乗っているオディオに。
いや、そんなことはない。
誰が魔王を名乗ろうが、そんな事は興味なかった。
名乗りたいのならば勝手に名乗ればいいのだ。
「クロノにルッカ、カエル、エイラ、そして……魔王か」
夜の闇の中でも明かりを点けることなく、支給された名簿を読んでいく。
どうやら名簿には自分の事も『魔王』と表記されているようだ。
「魔王の称号などオディオにくれてやろうと思ったが……やめだ。
オディオが私を魔王と呼ぶならば、私も自分を魔王と名乗らせてもらおう」
その方が便利だから。それだけだ。
名前など、個人を特定する文字の羅列だ。そこに深い意味など存在しない。
それよりも彼の興味を引いたのが、この殺し合いの優勝者に与えられた権利。
なんでも1つだけ願いを叶える事が出来る権利だ。
顔を上げ視線を空の方向へと向ける。
マップ中央には山がそびえ立っており、彼のいるこの場所は、この島で最も高い場所ということになる。
「……低いな」
風の音にも負けるほどの囁きであった。
彼の脳裏に浮かんだ思い出はここよりも遥か高く、何よりも天に近い場所の思い出。
空中都市ジール。
「全ては、海の底だ……」
何もかも、消えてしまった。
全ては滅びてしまった。
たった1度の過ちにして、人類最大の過ち。
……ラヴォス。
生まれ出たそれは全てを飲み込み、最愛の姉もこの両手から奪い去っていった。
その日から、彼の心には大きな風穴が開いた。
部下達を引き連れて行動していたときも、クロノ達と冒険をしていたときも……。
ラヴォスを倒したその瞬間でさえも……。
この心が満たされる事はなかった、ただの1秒も。
クロノ達と別れた後は、必死に姉の影を追い続けた。
姉がどこかで自分を待っていると信じて、探し続けた。
だが、彼女はどこにもいない。
世界のどこにも……彼女の痕跡すら残されてはいなかった。
「魔王オディオか……」
もう1度。その名を呼ぶ。
彼が何者だろうと構わない。
だが、これは自分が掴み取った最後のチャンス。
あの日失った姉にめぐり合える、最後のチャンスなのだ。
「私は……失ったものを取り戻すッ!」
支給品である剣を強く握り、胸元に引き寄せる。いつしかの思い出を手繰り寄せるかのように。
彼はこの刀を扱ったことはない。
だが、その威力は知っている。ずっと間近で見ていたからだ。
彼の思いに答えるように、名刀『にじ』が淡く輝いた。
「……悪く思うな…………」
重力など知った事かといわんばかりに軽い跳躍。
山の頂上から飛び立った魔王は、眼下の男へ標的を定めた。
月の光を受けた背中、そして掲げた刀が金色に光る。
5メートルほど上昇した後、魔王の体は急激に落下を開始する。
重力が今になって突然己の仕事を思い出したかのだろうか。
刀の軌跡が描いた、綺麗な放物線。
それはこの殺し合いの会場に彩られた、金色の虹であった。
そしてその虹の付け根に位置するはずの場所、彼の刀の落下地点には男が1人。
子供のころ、誰もが虹を見るたび思ったことだろう。
あの虹の付け根はどうなっているのだろう。その付け根に触ってみたい。
その好奇心は純粋なもので、その純粋さは魔王が幼くして失ってしまった心の欠片なのかもしれない。
そして、誰もが抱いたその望みを叶えるに至った男が1人。
彼はこの虹の付け根に触れる権利を有したのだ。
その死を代償として。
「死んで貰うッ……!」
夜空を分かつ、一閃であった。
漆黒の空を東西に分かつ金色の天の川を目撃したのは、ただ1人。
そしてその唯一の目撃者を切り裂くべく、魔王は刀を降り落とした。
魔王の剣速に、重力による加速を加えた一撃。
あまりに強烈で……そして……。
「甘く見られたものだ……」
あまりにも遅かった。
補足しておこう。「遅い」とは言っても、魔王の放った一撃は常人の反応できる速度を超えた一撃であった。
彼の知る中で、この斬撃を交わす事ができるのは、片手の指で数えられるほどしか存在していない。
ならばなぜ……。
答えは単純。
「入隊試験なら、ティムにでも担当して貰うがいい」
彼の反応速度が常人のソレを遥かに凌駕していたからだ。
戦闘における能力は、ARMSでも1番秀でている。
その彼にこんな一撃、『常人の反応速度を超える』程度の一撃など通用するはずもない。
「この俺に戦いを挑んだのだ。覚悟は出来ているか?
尤も、たとえ覚悟が出来ていなかったとしても……」
魔王の放った一撃を軽々と避けた男、ブラッド・エヴァンスが拳を構える。
その拳には装着されているのは、彼の愛用していた武器ではない。
彼の支給品。その名を、ドラゴンクローという。
マッシュ・レネ・フィガロが扱った武器だ。
ヘヴィアームのような内蔵武器は所持していない。
たが、聖なる属性を有した竜の爪は、血で汚れたブラッドの右手を新たな棲家と認めたのだ。
「俺のあずかり知る事ではないがなッ!」
叫ぶが早いか、右手を振りぬく。
躊躇はなかった。
アシュレーなら、リルカなら躊躇しただろう。
だが、ブラッドは違う。
敵と見定めたものは、迷い無く粉砕する。
それがARMSのなかでの彼の役目であった。
体の捻りを最大限に溜めつつ、左の足を半歩前に。
右の足で地面を蹴ると同時に体の捻りを解放。
握り締めた右の拳を突き出す!
その瞬間、ドラゴンクローは音速を超えた。
「ほぅ……」
必殺の一撃を外しても、魔王はまだ余裕であった。
確かに、この男を侮っていたことは認めざるを得ない。
この男の持つスピードや、殺気はクロノと同じかそれ以上。
そして体から漂う血の臭いは自分と同じくらい強烈なものだ。
左から飛んできた拳を避ける。
そのパンチを目視して、後ろに軽く飛んだだけだ。
たったそれだけでブラッドの一撃を避けてしまった。
「ふむ。これは私も全力で相手しなくてはならないようだ」
魔王の光なき瞳の奥を見通しながら、ブラッドは悟る。このセリフはハッタリではない。
自分が相手にしようとしている男は、自分よりも格上だ。
身体能力でもない、反応速度でもない、目の前の男が持つ『何らかの要素』が彼をブラッドよりも格上としている。
それが何なのか、ブラッドには分からなかった。
「俺はブラッド」
相手の性格を探るために、ブラッドは会話を試みた。
性格を把握する事で、相手の戦闘スタイルを先読みする事が可能となるからだ。
「ブラッド・エヴァンスだ」
「なるほど……ブラッド……」
先ほど嗅覚が感じ取った彼のイメージと、その名前の持つイメージが魔王の中でぴったりと重なった。
戦場で生き、戦場で死ぬために存在している。そんな名前だ。
「私は魔王。あのオディオとは違う、『ただの魔王』だ」
今の会話を受けて、ブラッドの脳が相手の性格を算出する。
……算出しようとした。
(……読めない)
トカ、ゲーのコンビのような不可解さとは違う。
あの2人は人間に理解不能な脳の構造をしているに過ぎない。
魔王の性格自体は、我々の持つ常識の範疇に収まっているのだろう。
だが、氷の檻の中に自らの心を隠す事によって、胸中をだれにも探られないようにしているのだ。
(やっかいな相手だ……)
魔王は、今まで対峙した事のないタイプの敵。
何もかもが未知数の敵だ。
(だが……)
それでも、自分達ARMSが乗り越えてきた困難に比べたら……。
あの世紀の厄災に比べたら。
(どうってことはない)
「俺は、俺の戦い方を貫くだけだッ!」
武器が変わっても、状況が変わっても、これだけは変わる事がない。
「貴様を倒して、また仲間達との『日常』へ帰ってみせるッ!」
ブラッドは駆ける。
かつての戦い、仲間達と共に戦ったときのように……。
この右手で、全てを破壊する!
「よし、ブラッド・エヴァンスだな……」
静かに佇む魔王の体が赤く発光した。
周囲の温度が見る見るうちに上昇し、景色がどんどん歪んでいく。
魔王の周囲を灼熱の炎が包み込んだ。
「……ッ!」
行く手を火柱に遮られ、たまらずブラッドが立ち止まる。
(これは『魔力』かッ!)
彼が先ほど感じた、『何らかの要素』。
魔王を自分よりも格上足らしめている要素。
それがこの『魔力』。
リルカが全力で作り出した炎よりも、ティムが全力で生み出した炎よりも大きい。
そんな炎を顔色1つ変えずに、この男は生み出している。
まるで呼吸をするように容易く。
「貴様の名前は、覚えておこうッ!」
火柱が、膨らんだ。
ただでさえ絶望的な大きさの火柱が、さらに大きく成長したのだ。
赤、赤、赤。
ブラッドの視界にある全ての物体は、このバケモノ炎に照らされるがまま赤く染まった。
「……ファイガ」
思いのままに荒れ狂う火炎を、魔王は指揮者のように手なずけて見せた。
そして短い呪文を合図として、一斉に撒き散らされる、火、熱、爆風。
「こんな……馬鹿なッ……」
ブラッドは世界が紅く染まるのを感じた。
それ以外、何も見えなかったのだ。
体が熱い。
燃える、全てが燃えて灰になる。そんなイメージが脳を支配した。
抗う術など持ちえていない。こんな高威力な魔法を体験した事はなかった。
その切望的な威力のおかげだろうか。
彼の判断は早かった。
撤退。
魔王の殺害を諦め、ここは一度逃げに徹する。
しかし辺りは炎に包まれている。
かなりの広範囲にわたって、この『ファイガ』という魔法は展開されているようだ。
おそらく見渡す限りは火の海だろう。
逃げ道など、存在しなかった。
◆ ◆ ◆
「……呆気ないものだな」
焼け野原となった大地を見渡し、魔王が呟く。
緑の草が生い茂っていた大地は、魔王から半径約百メートルに渡って黒く焦げ付いていた。
あの男、ブラッドの姿はない。
死体すら存在しなかった。
あの炎を受けて、バラバラに砕け散ったのだろう。
さて、他の参加者を探さなくては……。
ここで待っていてもよかったのだが、今の魔法を目撃した人間がここにやってくる可能性は低い。
炎の規模自体は大きいものであったが、所詮は一瞬のこと。
遠くからでは、一瞬だけ光ったようにしか見えないだろう。
ならば、こちらから他の参加者を探すよりほかない。
フン……と詰まらなそうに息を吐き出すと、魔王は振り返ることなく歩き出した。
【F-6 南部 一日目 深夜】
【魔王@クロノトリガー】
[状態]:疲労(小)
[装備]:にじ@クロノトリガー
[道具]:不明支給品0〜2個、基本支給品一式
[思考]
基本:優勝して、姉に会う。
1:敵を探して皆殺し。
[備考]
※参戦時期はクリア後。
◆ ◆ ◆
「……ぶはぁッ!」
水面から顔を出すと同時に、肺中に溜まりに溜まった二酸化炭素を吐き出し、酸素を詰め込む。
冷たい水流が体中の傷口に、チクチクと痛みを与えては去っていく。
危なかった。
あの魔法が直撃していたら命は無かっただろう。
敵の使った魔法が炎の魔法だった事、事前に川の位置を確認していた事が幸運だった。
川に飛び込むことで、なんとか生きながらえることはできた。
しかし、魔王のあの魔力……。
リルカやティムよりも、コキュートスさえも遥かに凌ぐだろう。
それに引き換え……。
「弱くなったものだな……この俺も……」
平和な世の中で暮らすうちに、こんなにも弱くなるものなのか。
戦闘力そのものや、戦いの勘は鈍ってはいない。
衰えたのは……『闘争心』。
あの時のような、アシュレーたちと共に戦ったときのような闘争心が欠けてしまっていた。
あの男は言った。
失ったものを取り戻す、と。
自分はどうだ? 戦ってまで欲しいものはあるのか?
命を賭けて守りたいものはあるのか?
それを見つけなくては……。
「今度こそ、命は無い……」
そこまでで、彼の思考は停止した。
今はこの疲れを癒す事にしよう。
深い眠りの後で、答えを探そう。
【G-6 川 一日目 深夜】
【ブラッド・エヴァンス@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:気絶、全身に火傷、疲労(大)
[装備]:ドラゴンクロー@クロノトリガー
[道具]:不明支給品0〜2個、基本支給品一式
[思考]
基本:主催者を倒す。
1:気絶中。
[備考]
※参戦時期はクリア後。
※川に流されて南へ向かっています。
以上、投下終了です。
投下乙!
>◆FRuIDX92ew氏
隠れ蓑+モシャスとは。
十分強キャラと渡り合えるぞこの人w
やばいマーダーがまた一人…。
ところで
>※毒蛾のナイフの麻痺は数十分で解けるかと思われます
これは影縫いの間違いでしょうか?
◆Rd1trDrhhU氏
初っ端から文字通り熱いバトル乙!
WA2知らないけどブラッドかっけええ!でも相手が悪かったか…。
今後のブラッドの活躍に期待。
お二人ともGJでした!
>>236 投下乙
サモンナイトのことはそんなに詳しくないけど
いいんじゃないかなあと思う
>>245 魔王!一時はクロノと行動を共にしてたけど一時休戦って感じだもんなあ
やはり魔王の名は伊達じゃあないな
投下乙です!
いやあ魔王カッコいいですねえ。
しかしファイガから逃げることができたブラッドもすごいと思います。
魔王ににじって言うのもなかなか対比がいい感じだなぁ、と。
>>246 あ、すいません。
当初毒蛾だったんですけどダブってしまったんで……また修正前の名残が出てましたね。
>※毒蛾のナイフの麻痺は数十分で解けるかと思われます
も
>※影縫いのストップ効果は数十分で解けるかと思われます
になります、たびたび本当に申し訳ない。
あと、DQ4勇者の名前ってユーリルでいいんですよね?
投下乙
ブラッド気絶したまま流されてるw
気になったことは魔王のファイガです。
魔王の持つ技のなかでは低位の技のはずです。
威力はともかく、範囲がデカすぎではないでしょうか。
イスラのほうも仮投下乙です。
こちらはキルスレスを失っているようですが、にもかかわらず魔界の剣を普通に装備しているのが気になります。
設定上とんでもない呪いの剣だったはず。
>>249 議論の段階で、天空の剣が誰でも装備可能という話になっていたので、
ならそのピサロ版の魔界の剣も誰でも装備可能でもおkじゃね?と判断して書きました。
呪いの方もピサロしか装備できないのであってないようなものかなと…。
必要なら変更しますよ。
返信ありがとうございます。
まあ呪いに慣れたイスラだし邪気に当てられてなくてもいいとはおもいます。
◆Rd1trDrhhU氏
すいません。書き忘れました。
ドラゴンクローの出展元がクロノトリガーになってます。
>>249 指摘ありがとうございます。
たしかに百メートルはやりすぎでしたね。
何メートルとかの詳しい距離は描写せずに、「辺り一面」という表現に変えておきます。
連投すいません。
>>251 指摘ありがとうございます。
すいません! FFYでした。
何で天空の剣は誰でも装備出来るようにしたの?
普通に勇者専用装備でよくない?
それなら他の剣出した方がいいし、
もし勇者が死んだら使う奴が誰もいなくなるから仕方ないのさ
またややこしくなる事実にきずいたorz
カエルと冷房の話で
「今から思い返すと、マールとロボは反応していなかった」
となっていて、他クロノキャラの参戦時期が縛られています。
ただ魔王の予約が入る前に投下されたものなんですよね。
ややこしい…
普通に前のSSに合わせればいいよ
無駄に変える必要なんてない
258 :
HUNTER×HUNTER :2008/09/06(土) 04:01:42 ID:jNJHDWQB
ぎりぎりですが、エルク、カノン、投下します。
ただ、暗闇だけが広がっていた。
歩けども、歩けども、闇は晴れず、どこにも辿りつくことは無い。
それでも、何かから逃げるように光を求め、止まることなく進み続けた。
――エルク……
声が、聞こえた。
いつか、どこかで聞こえた声だった。
それまで自分以外には闇しか存在しなかった世界で、初めて他者を感じられたからか。
俺の足は自然とその声が聞こえる方へと進んでいた。
誰も、居ない。
前を、左右を、後ろを見渡せど、誰も、
「可哀相に、疲れてしまったんだねぇ」
「!?」
居た。
「生きるのなんて、つらい事なかりだ。こっちへおいで」
「父さん? ……母さんなの?」
死んだはずの母さんが。
殺されたはずの父さんが。
いつの間にか、俺の後ろに立っていた。
いや、父さんたちだけじゃない。
「ようっ、エルク」
「ジーン! 俺は……」
「わかっているさ。お前は俺達を殺した痛みを背負っていける程タフじゃない。生きるのなんかやめちまえ。楽になるぜ」
俺がこの手で殺した親友が。
「エルク、待っていたわ。此処で、一緒に暮らしましょ。此処はいいわよ、静かで」
好きだったのに助けられなかった少女が。
失った、全てが、そこには、あった。
きっとここは幸せな世界なのだろう。
それでも俺は、この幸せな夢に沈むわけにはいかなかった。
「ミリル、そうはいかないんだ」
ガルアーノは、俺達から全てを奪った奴はまだ生きているのだ。
故郷の村を焼き払ったアーク一味もだ。
俺は、あいつらを殺してみんなの仇を討つまでは死ねない!
「貴方は私の言いなりにならなきゃいけない筈よ。だって、私を殺したのは貴方だもの。ずーっと信じて待っていた貴方に殺された私の気持ちが解る?」
何も言い返すことはできない。
ミリルは、ずっとあの白い家で俺が助けに来るのを待っていてくれたのに。
逃げ出して、見捨てて。
俺は、そのことすら忘れていたのだ。
助けに行くと。必ず助けに行くと約束していたのに!
「私は、貴方を元の世界に戻しはしない」
――来たれよ…… 炎を操り闇を照らす者よ…… 人間に未だ幻想をいだく者よ…… いざなおう…… 真実を知らしめんために……
ああ、これは俺への罰なのか、ミリル……。
◇
眼を覚ました時、エルクは遂に自分が死んで地獄に落ちたのだと思った。
さしずめ玉座に座しているあの男は、俺を裁く閻魔なのだと。
そんな彼の認識は半分ハズレで、半分当たりであった。
彼は死んではおらず、されど、ここは地獄だ。
命を握られ、殺し合いを強要される世界。
これが地獄で無いというのなら、是非とも他の呼び方を教えてもらいたい。
「何でも望みを叶えてやる、か」
オディオと名乗った魔王の言葉を思い出す。
奴の言う通りなら、優勝さえすればどんな願いでも叶えてくれるらしい。
ジーンやミリルを生き返らせることも可能かもしれない。
それはとても甘い誘惑で、けれど、エルクは否定する。
無理だ。
玉座の間に集められていた人間にはシュウとリーザ、彼の仲間の姿もあった。
幼い少年、少女の姿もあった。
いくら願いを死んでしまった大切な人達を蘇らす為とはいえ、エルクには彼らを殺すことなんてできそうにもなかった。
もうその手は血で汚れてしまっているというのに。
なんて、偽善。
夢の中の彼らの言葉はいつまで経っても消えてはくれない。
蘇生の可能性を不意にした今、彼をより強く攻め立てていく。
「ちくしょう、俺は死んじまった方がいいってのか」
首筋に手を伸ばす。
そこには彼の命を脅かす無骨な枷が確かに巻きついていた。
これを引っ張れば、死ねる。
魔王に立ち向かった男のように。
命を繋ごうとした僧侶のように。
あるいはあの時のミリルのように。
爆発して、彼は死ぬ。
逝くのにあまりにも適した状況に、自然と渇いた笑みが零れそうになり、次の瞬間、凍りついた。
「死ぬのは貴様の勝手だが、その前にあたしの質問に答えてもらおうか」
「誰だ!?」
振り返った先には女がいた。
「――カノン」
薄汚れたマントと緑の髪を風になびかせて。
「……通り名だが、抱いて逝くにはそれで十分だろう?」
眼帯の女は自らの名を告げた。
◇
目の前に広がる光景にカノンは絶句していた。
その驚き様は魔王オディオによる宣告を受けた時や、名簿で『ある名前』を見つけた時と勝るとも劣らないものだった。
草木が覆い茂っているのだ。
これだけでは何のことかわからないかも知れないが、彼女の世界の住人からすれば驚くなと言う方が無理である。
カノンが本来住んでいた世界――ファルガイアの大地は枯れ果てていたからだ。
ところがどうだろう。
今、彼女が進んでいる森の木々は、行けども行けども途切れない。
ファルガイアにも全く緑が無かったわけでは無いが、これほどの範囲に渡って広がっている場所をカノンは知らない。
「馬鹿なッ、異世界だとでも言うのか!?」
思い返せばあの魔王もそれを匂わせることを言ってはいなかったか?
カノンは考える。
『最後まで生き延びた者には褒美として、本来在るべき世界に帰してやろう』
わざわざ『本来在るべき』とつけているのだ。
ここが異世界だという考えは、あながち的外れなものではないだろう。
そもそも、このような場所がファルガイアにあるのなら、
渡り鳥として世界各地を周って魔を祓っていた自分が噂にすら聞いたことが無いというのは、いくらなんでもあり得ない。
一応最後の確認とばかりに彼女は花園へと向かうことにした。
草木以上にファルガイアに縁の無い施設だ。
実在すればここがファルガイアではない何よりの証明になる。
位置も現在地から近く、地図に記載されているくらいなら人も集まっているかもしれないと判断してのことでもあった。
彼女が彼を見つけたのはその道中のことであった。
濃い茶色の髪の毛を逆立て赤いバンダナを巻いた青年が、何か思いつめているのは直ぐにわかった。
こちらのことにも気づかない程真剣な位にだ。
時折耳に届く独白からも覇気は感じられず、故に危険人物ではないと見なし声をかけてみたのである。
無論、一時たりとも気を抜かず、いつでも全身に施したギミックを解放できるようにした上でだが。
「アシュレー・ウィンチェスター、または魔王という男に出会わなかったか?」
「魔王? 何言ってんだ、それならてめえだってさっき会っただろが!」
それを聞きたいのはカノンも同じだ。
名簿に堂々と記載されている魔王という文字。
まさかオディオ本人が参加しているとは思えないが。
判断を保留しつつ、未だに眼を通していなかったらしい男に名簿を突き付ける。
知り合いの名前でも見つけたのか、男の顔に動揺が浮かぶも、カノンにとっては興味のないことだった。
――そう、例え殺し合いに放り込まれてもカノンがすることに変わりは無い。
「いや、俺が会ったのはあんたが初めてだ」
「そうか」
名簿を見終わった男の答えに、カノンは特に落胆はしなかった。
殺し合いに駆り出されてまだ間もないのだ。
初めから大して期待はしていない。
むしろ、次の問こそが本命だ。
「もう一つ。貴様の知り合いに『魔』はいるか?」
「……『魔』?」
「私は凶祓い(まがばらい)だ。モンスターや魔物、魔王といった『魔』を滅ぼす義務がある」
彼女は凶祓いだ。
そして、魔神を封じ、世界を救った英雄<剣の聖女>の末裔だ。
殺し合いに乗る気はない。
だが。
(『魔』はあたしの手で滅ぼすッ!!)
「そのアシュレーという奴も『魔』なのか?」
質問に質問で返されたことに苛立ちはしたが、アシュレーの場合は特殊なパターンだ。
男から情報を得るためにも、カノンは説明することにした。
「正式には奴自身では無い。奴に降ろされた魔神がだ」
「降ろされた? そいつが自分でモンスターになったんじゃないのか!?」
「……そうだ。負の念に満ちかねないこの世界では、いつあの悪しき魔神が目を覚ますのかわからない」
「だから殺すっていうのか!」
降魔儀式に巻き込まれただけの被害者。
アシュレーのことをそう捉える人間がいるのもわかる。
(それでも、あたしは『魔』を許さぬッ! この身に流れる『血』に誓ってッ!!)
『魔王』とやらがオディオと別人であるのなら、そちらも斬るまでだ。
『魔王』だけでは無い。
この殺し合いに潜んでいる全ての魔を殺す。
自らに流れる『英雄』の血を証明する為に。
彼女自身が英雄になる為に。
――この地には、本物の『英雄』が、<剣の聖女>がいるのに?
カノンの脳裏で、栗色の髪の少女が囁く。
捨て去ったはずの過去が、彼女を揺さぶる。
――ねえ、ここにも、あたしの居場所は
(黙れッ!!)
「<剣の聖女>の末裔であるこのあたしには魔神を駆逐する宿命があるんだよッ!」
「そうかよ。なら――」
心に浮かんだ迷いから眼を逸らし血に縋るカノンに、男はようやく引き延ばしていた答えを告げる。
「俺はあんたを放っておくわけにはいかねぇ!!」
「なッ!?」
紅蓮の炎による拒絶という答えを。
◇
しえん
◇
『人間』に絶望し、『人間』であることを辞めた『魔王』は嘲笑う。
『英雄』に何の意味があるのだと?
かって『勇者』と称えた人物を、不要になればすぐに切り捨てるのが『人間』だ。
『英雄』など所詮人柱に過ぎないことを、彼は痛いほど知っていた。
だからだろうか?
『英雄』になる為に、『人間』を棄てた女に彼は与えた。
人ならざる者のにしか扱えないその二つの支給品を。
◇
パワーユニットファイアバグ。
ARMの一種と踏んだ支給品がカノンの義体(シルエット)に力を与える。
展開された魔力の障壁は見事爆炎から彼女を守り切った。
狩るべき男は目を見開き、慌てて回避行動に移ろうとするが、もう遅い。
マジックシールドの対魔力は強力だが、種が割れれば簡単に手を打たれてしまう。
代償として彼女を襲う疲労も無視するにはやや重い。
故に、カノンは一気に勝負に出る。
義体と義体に仕込んだ武器のリミッターを限定解除。
人の身では耐えられない圧倒的な速度でカノンは駆ける。
軋む機械の身体。
悲鳴を上げる人の心。
その全ての痛みを棄て去って、一瞬で距離を詰め、神速の連撃を叩き込む。
愛用の短剣は取り上げられてはいるが、構わない。
今の彼女の右腕には変わりとばかりに唸りを上げる獲物がある。
『勇者』の名を冠する回転衝角が!
右方より大きく振りかぶられたドリルの一撃が、男の胴を打つ。
大振り故に、晒されるはずの隙を、機械の身体は強引にキャンセル。
地に崩れ落ち逝く身体に、左の拳を打ち込み、打ち上げる。
その神速の世界の中、男の腕が動き、デイパックから何かを取り出したのが見えた。
(かまわない。反撃される前に滅っするまでッ!!)
続けざまに左、右と鋼の鞭と化した回し蹴りで完膚なきまでに打ち据える。
距離をとるなどという愚は冒さない。
零距離で左のワイヤーナックルを叩き込む。
支援
「っぐ、ちく、しょおおっ……」
それで、全てが終わった。
炎使いの身体が拳ごとワイヤーで飛ばされ、川に落ちたのは誤算だったが、
幸い彼が直前まで手していたデイパックはカノンの足もとに転がっている。
反撃に用いようといていたらしい何かは共に流されてはいったが。
「赦せとは言わぬ」
慣れない武器、慣れない補助動力源を用いての戦闘行為だった為か、確信は持てない。
元より機械の身体では手応えは曖昧にしか感じられない。
しかし、あれだけの攻撃を立て続けに見舞ったのだ。
生きてはいまい。
「これも、『英雄』の血を証明する為だ」
当初の予定通り、カノンは花園に向かうことにする。
戦いの最中放たれた炎は、夜の闇の中ではかなり目立ったはずだ。
このままここに残り、やってきた者達と接触することも考えたが、疲労した状態で、危険人物に会うことは避けたかった。
――本当に? 会いたくないのは、本当に危険人物なのか?
「一人この手で殺したんだ。今更戻れはしないッ! あたしも、あたしの身体もッ!」
再び浮上する迷いを振り切り、デイパックを拾い、カノンは背を向ける。
平野に、過去に、自らの本当の願いにさえ。
【B-9 平野 一日目 深夜】
【カノン@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:精神的疲労(中)、ダメージ(微小)
[装備]:勇者ドリル@サモンナイト3(右腕)、Pファイアバグ@アークザラッドU
[道具]:エルクの不明支給品1〜2個(未確認)、基本支給品一式×2
[思考]
基本:『魔』を滅ぼす。邪魔されない限りそれ以外と戦う気はない。ただし、邪魔者は排除する。
1:アシュレーを見つけて討つ。
2:アシュレー以外の『魔』も討つ。(現時点:オディオ、魔王)
3:まずは花園へ向かい1、2の為に情報を集める。
[備考]:
※参戦時期はエミュレーターゾーンでアシュレーと戦った直後です。
※彼女の言う『魔』とは、モンスター、魔物、悪魔、魔神の類の人外のことです。
※勇者ドリル、Pファイアバグは機械系の参加者及び支給品には誰(どれ)でも装備できるよう改造されています。
Pファイアバグは今のところ、マジックシールドの使用可能が確認されています。
他の術はお任せ。
※エルクの名前を知りません。死んだと思っています。
※エルクの発した炎がどのあたりまで見えたかはお任せ。夜なので目立ったかもしれませんが、エリアの端なので。
支
◇
(待ちやがれ……)
遠ざかるカノンに手を伸ばす。
変な話だった。
本当に腕を伸ばしているのは、カノンの方だというのに。
(傷が、癒えている……)
全快には程遠いが、貫かれたはずの傷が塞がっていた。
自然と一人の少女の顔が思い浮かぶ。
(リーザ……)
『モンスター』とも心を通わすホルンの『魔女』が微笑む。
いつかの日のヤゴス島での夜のように、伸ばした手を彼女が握ってくれた。
(頼む、無事でいてくれ……)
意識が闇に呑まれる。
手の中で、何かが砕け散る音が聞こえた。
【B-9 川 一日目 深夜】
【カノン@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:シュウとリーザを守り、オディオを倒す。
1:???
2:カノンを止める。
[備考]:
※参戦時期は『白い家』戦後、スメリアで悪夢にうなされていた時
※カノンからアシュレーの情報を得ました。
※どこに流されるかはお任せです。
アイオライト。
何の縁か彼の世界より持ち出された宝石がドリルに貫かれた彼の命を繋ぎとめた。
とはいえ、身体が回復した時に咄嗟にインビシブルを唱えていなければ、ガトリング・ワイヤーナックルで死んでいただろう。
アイオライトが救えるのは、あくまでも死に瀕したものであって、死んでしまったものは救えない。
その宝石の眠るバルバラードの地を訪れていない時間軸より呼び出されたエルクには知る由もないことだったが。
パリン。
制限により、回復能力を有する宝石はたった一度の使用で塵と化した。
投下終了。真夜中、むしろ早朝での支援、感謝します。ありがとう!
援
……あれ?すみません、一部投下ぬけがありました。
これは支援せざるを得ない
投下乙!
>>272仮投下スレに投下されたみたいですよ。
危険対主催きた! これは2人とも上手い参戦時期ですね。
しかしカノン強い。敵のときは、こんな感じで異常に強いんですよねコイツw仲間になると弱くなるくせにw
Pユニットを装着したのもナイスアイディア! 体を機械化した彼女の特徴を上手く利用してますね。
ラストはリーザの死があっただけに切ないですね……。
指摘を2つほど。
エルクの状態票、名前がカノンになってます。
あと、仮投下スレの
>>49で、シャンテの弟は「アルフレッド」です。
19 名前: ◆iDqvc5TpTI[sage] 投稿日:2008/09/06(土) 04:39:59 ID:CWXihXaU0
投下時にミスを犯し、一部小説に抜け落ちが発生してしまいました。
規制されてしまったので、やむを得ず仮投下スレに全文投下し直しました。
49、50が本スレ時の262と264の間に挟まる部分です。
避難所より代理報告。
これって行動が投下されたキャラは予約してもいいの?
それとも全キャラ一回は登場するまで待つべき?
新キャラと混ぜるならアリ
了解です
投下乙ッ!
カノンかっこいいッ!このデタラメな強さ、まさに敵カノン…。
まさかドリルを使うとは思わなかったが、似合ってるなー。
そしてエルク切ないぜ。がんばれ。超がんばれ。
そうなのか?
俺が見てた他のロワでは、初回だけは全キャラ登場するまで待ってたけどな。
一部のキャラの時間軸だけどんどん進んでいくのもやりにくいだろうし。
確かに一部のキャラだけどんどん進んだら困るけど、わざわざ禁止する程のことじゃないだろ
そもそも、他のキャラが出まくってるのに全く予約が入らないようなキャラがいるんじゃその方が問題だし
置いてけぼりを食らうのは空気キャラを作る原因にもなる
空気キャラ作ると人知れず死なれたりと悲惨な結果になるから避けたい
置いてけぼり喰らうようなキャラがいること自体が問題なんでしょ
てか、そこまでなる前には誰か書くだろうし、気にする必要なんてない
既出キャラだけで書きたいって人がいるならそれもいいじゃない
2話目までならアリじゃないか?
さすがに未出キャラがいるのに3話4話と進められると困るけど。
ところで
>>256って議論スレで議論した方がいいかな?
やっぱり、他キャラの参戦時期を縛ってしまうのは問題があると思うんだよね。
そこは前の人に合わせるべきだと思うけどな
クロノはよく知らないけど、参加時期変えたいと思ってる人いるの?
逆に他のキャラを統一させる意味が分からん
これって予約していないキャラの描写をしてしまったってことじゃないか?
クロノの話をし始めたものですが
魔王がすでに投下されている
ただ魔王は仲間になってないとかで辻褄は合う
問題はマールとロボ、参加してない二人の名前だけが挙げられていることかな
追記
4人以上の時間の旅は危険なのにシルバードに大人数いるみたいです。
>これって予約していないキャラの描写をしてしまったってことじゃないか?
ハァ?
何を勝手に思い込んでるのか知らんが、どういう理屈だよそりゃ
ばらつかせるも統一するも書き手の思惑しだいだろ
自分の気に入らない時間から出されたら「キャラを縛りやがって」っことになるのかよ
何度もすいません
カエルと冷房の話ですが
バイアネットは武器の種類です
搭載されているカートリッジも不明になってます。
わざとぼかしたのかもしれませんが。
カートリッジの残弾が4となっているので
ショックスライダー、ファントムファング、ブラスターギルティ
そしてライジングノヴァの中のどれかでしょう。
他は改造なしでも最低5発あるので。
落ち着け、ケンカ腰になったらダメだ。
取り合えず、
>>287の件も含めて、議論スレへ行きましょう。
このスレで、この話題をするのは止めておきましょう。
携帯なので鳥が思い出せませんが、カエルを書いたものです。
あのあたりのくだりはただの演出なので、削除修正の必要があるなら、こちらは問題ありません。
今から思うに〜以降の文をを場面転換まで削るのが、現実的な落としどころだと思いますが、いかがでしょう。
読み返してみたが、別に他のクロノ勢を縛るような描写ではないとおもうんだが。
議論スレへ行きます。
質問なんだけど、MAP全体の広さとかエリア一つ分の面積ってどれくらいなのかな?
>>294 決まってないみたいです。
一エリアだいたい500メートル四方くらいで考えてましたけど、ある程度適当でいいのかな?
さて、クロトリ勢の時間軸問題についても、作者さんが修正してくださるようなので、エイラとトカを投下しますね。
赤茶色の地層に、月明かりが落ちている。
大小さまざまな形の岩が転がる硬質の地面は舗装されておらず、お世辞にも歩きやすいとは言い難い。
だというのに、その荒野を軽やかに疾駆する人影があった。
鮮やかな長い金髪を靡かせて風を切るその人影は女性のものだが、そうは思えないほどに力強い。
だが、そのふくよかなボディラインは十二分に女性的だ。
灰色の毛皮を胸と腰に巻きつけた彼女は、両手両足を使って荒地を蹴っている。
獣を思わせるその女性――エイラは、明かりを灯すことなく駆けていた。
自然の中で生き、その身を武器に狩りを行って生きてきた彼女にとって、この程度の暗闇も荒地も障害にはならない。
エイラの身長よりも高い岩へ、一足で飛び乗る。その先の、更に大きな岩へと跳躍。
最も巨大な岩まで躍り上がると、恐れることなく直ちに降下する。目標着地点が鋭い岩肌であっても構わない。
中空に身を躍らせ、猫のように姿勢を制御する。大気が上空へと流れ、髪が重力に逆らって巻き上がる。
着地までの時間は、刹那。
微かな音と砂埃を上げて地に足を着けると、休みなく再加速する。
額に浮かんだ汗が、エイラの勢いに耐えられず振り落とされる。それでも、汗は次から次へと浮かび上がる。
エイラは、焦っていた。否、怯えていたと言ってもいい。
野生動物に似た生活を送っているエイラは、本能に忠実だ。本能が感じ赴くままに、彼女は生きている。
その本能があのとき、激しい警鐘を鳴らしていた。
剥きだしの憎悪を前にしたとき、本能は強く危機を告げてきたのだ。動物が、その本能で危機を悟るように。
そこには、理屈や理論など少しも存在しない。
純然たる恐怖がエイラの身を支配し、縛り付けていた。
だから、動けなかった。オディオに立ち向かえなかった。
思い出すだけでもゾッとする。強烈な悪意は、エイラの心臓を激しく揺さぶる。
本能は壊れてしまったかのように、未だ警鐘を鳴らし続けている。
本能が、逆らうなと言ってくる。戦っても勝てはしないと、叫んでいる。
だが同時に、本能以上に大きな声が、エイラの心に響いていた。
感情が、許せないと銘じてくるのだ。
たとえ恐くても、こんな傲慢な暴挙に従えるはずなどないと、大声を張り上げている。
動物ならば、本能に従うのが道理だろう。何よりも優先すべき事象が、自分の身であるのは当然だ。
しかし、エイラは人間だ。
だからこそ時には、本能を超えるものが行動基準になり得る。
行動の根幹に本能があるとはいえ、本能だけに衝き動かされて行動するわけではない。
恐れを抱く本能よりも、反逆を主張する感情を、エイラは選ぶ。
オディオ打倒の道を、エイラは迷わずに選択する。
オディオに対する恐怖を闘争心に変え、エイラは駆ける。
視界の中を、月光に照らされた世界が流れていく。
岩石の群れを駆け抜けると、広大な平野が見えてくる。
遮蔽物の見当たらないその平野に、直立している“緑色の何か”を見つけ、エイラは足を止めた。
「……おっと、我輩のフェロモンに惹かれてうかうか小虫がやって来たトカ?
トカゲの側に寄った虫は丸呑みにされる運命。しかし儚い命も美味しく頂くのでご安心をッ!」
そいつもエイラに気付いたらしい。
その“緑色の何か”は、くねくねと珍妙な動きをしてエイラに歩み寄ってくる。
筆舌にし難い気持ち悪さで迫ってくるそれから、エイラは反射的に飛び退った。
「まな板の上でぴちぴち跳ねるお魚のような目をして、怯えを表す必要はないですぞ。
我輩は心優しき科学の子。
百万馬力も何のその、平和的解決こそ我輩の得意分野トカ、違うトカ」
マントを棚引かせ妄言を撒き散らし、“緑色の何か”は距離を詰めてくる。
よく見ると、“緑色の何か”の腹部は白く、尻尾が生えていた。
二足歩行をするその姿を見て、エイラは臨戦態勢を取った。
「何言ってるか、分からない。お前、恐竜人か?」
そう、未だ奇妙なステップを踏む“緑の何か”は、エイラが戦った恐竜人という種族の姿に酷似している。
恐竜人にしては細長いその身を揺らしながら、そいつは、エイラの言葉に目を輝かせた。
「わーおッ! なんだかときめく響きッ!
遺伝子に書き記されたご先祖様の記憶が反応しているトカ?
それとも、これがいわゆる前世の記憶?
ダイナソー星人だった頃の思い出と我輩の甘酸っぱい思い出が混じりあい、とても甘美な化学変化が脳内麻薬を分泌してくる予感!」
「……やっぱりお前、何言ってるか、分からない。エイラ食う言うのは、本気か?」
推し量るように、エイラは問うた。
恐竜人は、人間に仇名す存在だったからだ。
残虐に無慈悲に陰惨に、略奪や破壊や殺傷を行う彼らは、エイラたちにとって明確な敵だった。
戦わなければ死ぬ。殺さなければ滅ぼされる。弱い者は死に、強い者が生き残る。
それが、大地の掟。
掟に従って、エイラたちは戦った。
恐竜人たちも同じだ。自分たちが生き残るため、人間と戦った。彼らにとって、人間は敵だった。
単純だが、確かな事実。
長であるアザーラが命を落としたことで、恐竜人との戦いは終結を迎えた。
伸ばしたエイラの手を取ることなく、アザーラは掟に従い死を選んだのだ。
誇り高い最期だった。
彼もまた、エイラたちと同様に仲間を守ろうとしていた。強者となり、生き延びようとしていた。
では、眼前にいるマントの恐竜人は、果たしてどうなのだろうか。
アザーラの死を受け入れ、彼と同じように淘汰される宿命を選ぶのだろうか。
あるいは、存亡を賭けて戦ったアザーラのように、再び人と戦う道を選ぶのだろうか。
「こう見えても我輩はグルメでしてな。節足動物を中心とした食生活を送っております。
カブトムシを腹いっぱいになるまで食べつくすことを夢見て、冷たいねぐらで詩集に手を伸ばすのが最近のマイブーム。
科学の歯車を動かす原動力は、飽くなき夢見であるぞッ!」
しかし、マントの恐竜人の口から飛び出すのは意味不明な戯言の群れだ。
少なくとも、エイラを食べようとする意識はないらしい。だが、何を考えているのか分からない。
ひょっとすると、野生動物相手の方がまだ意思疎通が可能かもしれない。
垂れ流される毒電波に、エイラの脳は熱を増していく。
そんなエイラを無視し、空気の読めないそいつは饒舌に語り続ける。
「しかし、それすらをも凌駕する我輩の最大の夢、それは――ッ」
片手を腰に当て、天を指差すマントの恐竜人。
「果てなく広がる星の海ッ! 何処かで輝く故郷の星ッ! ああ、帰りたい、帰りたいのです。
リザード星の土をもう一度踏みしめ、凱旋したいのですッ!
そのために我輩、テロ活動に勤しんでおりました。悪いことをしながらも、故郷を思う気持ちは一直線ッ!
その一途な願いは、今も変わっておりません。と、いうわけで」
マントの恐竜人――否、リザード星人は、背負っていた袋に手を入れてごそごそとまさぐる。
その動きが止まると、ゆっくりともったいぶるように、そいつは袋から手を出す。
「我輩、夢を実現するために、魔王に魂を売ることにしました。どうぞよしなに」
袋から取り出した武器を迷わずエイラに向けてきた。
鱗に覆われた手が握る得物は、エイラにも見覚えがある物だった。
それは、ルッカが得意とする、銃と呼ばれる武器。その引き金に、指がかかっている。
「笑わば笑えいッ! 旅の恥は掻き捨て、戦わずして得られるものなどあるものかッ!
偉大な科学の力の前にひれ伏せーいッ!!」
リザード星人の奇天烈な言動と不可解な行動が、現状の把握を阻害してくる。
そのせいで、反応が遅れた。
ぽん、という軽い音が夜気に響く。それでも、エイラの動きは間に合わない。
銃口から弾丸が飛び出し、真っ直ぐに飛来する。
丸く小さな飛来物。それが、エイラの額に吸い込まれるように迫り来る。
だが、随分と弾速は遅かった。
エイラの優れた動体視力なら充分に捉えられる程度であり、射出を認識してからでも回避が間に合う程度の速度。
それを捕捉したところで、ようやく事態を把握する。
リザード星人は、エイラと戦うつもりなのだと。
共闘するわけではなく、オディオを倒そうとするのではなく、魔王の意志に従おうというのだと。
それならば。
エイラも、戦うだけだ。
倒さなければ、やられる。殺さなければ、殺される。
ただ、生きるために。
大地の掟のままに、戦うだけ。
そうと決まれば、体は即座に動く。
一気に身を伏せた。地面スレスレまで体を落とし、四肢を用いて全身を支える。
頭上を通過する弾丸の気配を肌で感じ取る。その気配が遠ざかっていくのと、ほぼ同時に。
曲げていた肘と膝に力を込めて、伸ばす。
エイラの肢体が、ばねのように、月夜に跳ね上がった。
◆◆
「ななな、何ですとぉ〜〜〜〜ッ!?」
まさか避けられるとは思わなかった。星空を背景に降下してくる金髪の女を呆然と眺めながら、トカは叫ぶ。
慌てて手元の銃の照準を女に合わせ、トリガーを引く。
再度、銃が乾いた鳴き声を上げて弾丸を射出する。飛んでいく弾は、しかし、容易く女の手で弾かれる。
銃弾を素手で弾いたはずなのに、女の手からは一滴の血も流れてはいない。
そこで始めて不審に思う。
もう一度、引き金を引く。
三度目の乾いた音。それはまるで、圧縮された空気が破裂したような音で。
三発目にして、ようやく理解した。
それが、殺傷力など皆無な、ただのエアガンであると。
当然三発目の弾丸でも女にダメージを与えられるはずもなく、勢いを削ぐことすらできない。
「えぇーいッ! こんなはずではッ!
しかしこの程度のびっくりドッキリな展開で、科学の進歩は止められませんッ!」
トカの叫びに構わず、女は両手を振り下ろす。空気を切り裂く拳は、それそのものが凶器となる。
重い一撃が、振り落とされる。
ギリギリで身を反らして回避。目標を失った拳は、平野の草を押しつぶし地面を抉り取る。
「戦うなら、容赦しない! エイラ、お前、倒す!!」
女――エイラは、地面を叩き潰した反動を利用し、トカへと肉迫する。
洗練された貫手が、鱗を貫き破こうと飛んでくる。
それが到達する前に、トカは急ぎエアガンを持ち替える。銃身を握り、グリップをエイラに向けた。
「やらいでかァ――ッ!!」
エアガンのグリップ部分を、思い切り叩き付ける。
狙うは、肘。貫手によって伸び切ろうとする肘を砕ければ、片腕の機能をほぼ奪える。
そんなトカの狙いを予感してか、あるいは単純に、危機を察してか。
エイラは、貫手の軌道を変える。鋭い爪が中空を貫いていく。
エアガンのグリップも、同じように宙を抜けるが、構わない。
前へ体重をかけるようにして殴った勢いをそのままに、トカはエイラの横をすり抜け疾走を開始した。
「撤退、撤退〜〜ッ! 明日の日の出を拝むため、今日のところはオサラバさせてもらうぜェ――ッ!」
盛大な土煙を上げ、全力で足を動かす。
頭脳派であるトカなのだ。ステゴロの肉弾戦など望むところではない。
「逃がさない!!」
急ぎエイラから距離を取ったトカの背に、大声が飛んでくる。
そっと優しく振り返ってみると、野獣のように四肢を使ってしなやかに追走してくるエイラの姿があった。
二足歩行で逃走するトカゲと、それを追う四足歩行の人間。
トカゲも必死だったが、人間の速度は尋常ではない。ぐんぐん距離は詰まっていく。
「あ〜〜〜れ〜〜〜ッ! お〜〜た〜〜す〜〜け〜〜ッ!!」
通りすがりの頼れるお兄さんの助けを期待して、救難信号を出してみる。
闇を引き裂く怪しい悲鳴は、しかし、暗い平野に響き渡るだけだ。
トカは、大慌てでデイバックに手を入れる。その直後、大きく踏み込む音が聞こえ足音が消失する。
手をデイバックに入れたままで、もう一度だけ、ちらりと後ろを確認する。
エイラは、またも跳んでいた。
中空で身を丸め回転し、その長い足をトカへと向ける。
エイラが、咆哮を上げた。
荒ぶる野生を剥きだしにした、闘志と戦意の塊を思わせる絶叫が、夜気を震撼させる。
その迫力に圧されたかのように、重力が彼女の味方をする。
増していく落下速度をそのままに、真っ直ぐ飛んでくるエイラ。
まるで、地を這う獲物を空から狩る猛禽類のように。
あるいは、夜を切り裂いて飛ぶ流星のように。
鋭く重い蹴りが、トカを砕き潰しブチ抜こうと落ちてくる。
負けじと、トカも足に力を込める。全身全霊の力を両足に預け、全神経ただ走ることだけを足に命じ続ける。
残像で足が多く見えているのではないかと思うほど、必死で駆ける。
空気を裂く音が迫ってくる。接触まで時間などない。
トカは無我夢中で、デイバックから小さな何かを取り出した。
それが――そのカプセルが、見覚えのあるものだったことに、トカは安堵する。
「堅実さと科学信仰が売りの我輩ですが、にっちもさっちもいかないなら仕方ねぇッ!
頼むぜ不思議な魔法のカプセルッ!」
トカが、デイバックから出てきたクレストカプセルの蓋に手をかけた。
その中に詰め込まれた、クレストソーサーが顕現する。
それよりも、僅かに早く。
エイラの足が、トカへと到達した。
重力加速度の恩恵をたっぷりと受けたエイラの跳び蹴りは、彼女の卓越した筋力も相まって、鱗を破り肉を潰し骨を割る必殺の一撃となる。
重く鋭い蹴りは、確かに衝突していた。
トカの、長い尻尾へと。
「ひぎぃいーッ! 刺激的な電気信号がゾクゾクと駆け上がってきよるーッ!
頂点まで上り詰めた先に見えるのは出世の道トカ違うトカーッ!?」
珍妙な絶叫を上げるトカ。だが、致命傷には至らない。
トカゲとは、尾を切り捨て自身のスケープゴートにすることもある生物なのだから。
それを知っているのだろう、エイラの爪が容赦のない追撃をかけてくる。
存分に速い攻撃だが、トカには届かない。
同時に、トカの手が、クレストカプセルの蓋を開け放っていたからだ。
甲高い音が、生まれた。
それは次第に大きさと数を増し、重なり合い、音を編み上げていく。
大気が流れ空気が混ざり風が回転する。
小さなカプセルが生んだのは、旋風だった。
逆巻く旋風は草を引きちぎり土を巻き上げ、エイラに襲い掛かる。
エイラはバックステップで距離を取ろうとするが、旋回する大気が、彼女の動きを制限する。
風のクレストソーサー、ヴォルテックが、エイラの身が空へと吹き飛ばす。
それを尻目に、トカは改めて逃走を開始した。エイラの一撃に潰された尻尾を、涙目で撫でながら。
◆◆
エリマキトカゲ、否、カモシカのように平野を駆け抜けたトカは、森林に飛び込んだところでようやく立ち止まった。
振り返るが、もう追走してくる野生児の姿はない。
「はひー、はひー……。おのれ、ブルコギドンさえ完成していれば……ッ!」
完成していたとしても支給されるはずはないのだが、それはそれだ。
痛々しい傷を負ってしまった尻尾を、トカは改めて見やる。
砕けた鱗からは命の証である血液が流れ落ち、筋繊維が覗いていた。
「ひでぇことしてくれるじゃねぇかッ!
だが、どんな仕打ちを受けようとも、我輩の夢の翼は折れもちぎれもしねぇぜッ!」
と、無意味に啖呵を切ってみたのはいいが。
手元にある武器はエアガン。
そして、一度使ってしまうと、中身を入れ直さない限り使えないクレストカプセルだけだ。
デイバックの中を確認すると、クレストカプセルは5つ入っていた。
そのうち1つは既に空っぽ。残り4つにも、何が入っているのやら。
まともに使えそうな武器は支給されていなかった。
『自家製爆弾』も、『博士の異常な爆弾』も、『シェフの気まぐれ爆弾』もない。
「味な真似をしてくれやがるぜ。しかーしッ、諦めません勝つまでは!
見ていてくれ、ゲーくん。我輩は必ず、星に帰ってみせる。たった、一人でも……ッ!」
惑星Fで、頑張って生きていくゲーの姿を想像する。それだけで、トカの身に活力が沸いてくる。
友の姿を思うだけで、尻尾の痛みも忘れられそうだ。
友情の素晴らしさを噛み締めながら、トカはデイバックを背負い直す。
故郷へ帰るための新たな一歩を、トカは踏み出した。
◆◆
「ぐぅ……ッ」
突如巻き起こった暴風は、その突然の発生と同様に、前触れもなく収まった。
中空に投げ出されたエイラを落下させたのは、先ほどは味方だった重力だ。
なんとか受身を取れたのと、地面に草が生い茂っていたため、落下のダメージはそれほどでもない。
だが烈風によって刻まれた傷は、無視できるようなものではない。
特に、右足。
蹴りを繰り出した足の傷が、特に深い。ぱっくりと裂けた傷口からは、鮮血が零れ落ちていた。
少し動かしてみるだけでも、痛覚が敏感に反応し痛みを訴えてくる。
悔しいが、あの“敵”を追えそうになかった。
しかしそれでも。
エイラは、立ち上がる。
あの、恐竜人に似た敵の存在が、エイラの闘争本能に火を点けていた。
この程度の傷が何だと言うのだ。
まだ立てる。動ける。
ならば、戦える。
奴は、逃げたのだ。背中を向けて、逃亡したのだ。
まだ勝負は付いていない。故に、絶対に倒す。やられっぱなしなど、性に合わない。
不屈の心を抱き、エイラはふと天を仰いだ。
そこに浮かぶのは、雄大な月。
降り注ぐたおやかな光を浴びて、エイラは深く息を吸う。
冷たい夜気を、自然の空気を、体全体に澄み渡らせて。
そして、エイラは吼えた。
傷の痛みを薪にし、闘争心を鼓舞するように。
魔王オディオに向けて、“敵”に向けて、宣戦を布告するように。
雄叫びを、上げる――。
【C-3 平野 一日目 深夜】
【エイラ@クロノトリガー】
[状態]:全身に細かい裂傷。右足に深い裂傷と出血。疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:ランダム支給品1〜3個(未確認)、基本支給品一式
[思考]
基本:オディオを倒す。襲ってくる者には容赦しない。
1:オディオを倒すための手段を探し、仲間を集める。
2:トカを倒す。
[備考]:
※名簿未確認。
※参戦時期はシルバード入手後。詳細は後の書き手さんにお任せします。
【C-4 森林 一日目 深夜】
【トカ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(大)、尻尾にダメージ大。
[装備]:エアガン@クロノトリガー
[道具]:クレストカプセル×5@WILD ARMS 2nd IGNITION(1つは空)、基本支給品一式
[思考]
基本:リザード星へ帰るため、優勝を狙う。
1:他の参加者を殺し生き残る。
2:科学的な武器が欲しい。
[備考]:
※名簿を確認済み。
※参戦時期はヘイムダル・ガッツォークリア後から、科学大迫力研究所クリア前です。
※クレストカプセルに入っている魔法については、後の書き手さんにお任せします。
以上、投下終了です。
すまん、俺にはトカの言動を再現するのは荷が重かったようだ…orz
投下乙
トカはこんな状況でもいつも通りで頼もしいなw
>>303 いやいやwトカの言動はパーフェクトに再現されてると思います
トカキタワァァァァァァァwww
すげぇ、よくここまで完璧に再現できたと感動するwww
ていうか開始前はマーダー少ないと言われてたけど
なんかもう凄い勢いで増えてるじゃねーかw
投下乙!
トカきた! 間違いなくコイツは参加者最狂w
あのフザケまくった言動の再現度も高いですね。
トカのマーダー化は面白い展開。どう転んでもこのキャラを活かせそうですからw
トカのインパクトも凄いけど、エイラの『野性』の描写も完璧! GJ!
>>305 数も充実してきたけど、それぞれの実力がヤバいんだよねw
投下乙。キャラはエイラしかわからなかったけど、楽しませていただきました。
多少の手直しが完了したので、投下したいと思います。ついでにタイトルも変更します。
暗い礼拝堂の中で、月の光に照らされて七色に輝くステンドグラスが眩しい…
僕は備え付けられた椅子にもたれかかりながら、ステンドグラスに描かれた女神を眺めていた。
女神は生きとし生けるもの全てに安らぎを与えるような微笑を浮かべている。でも、僕はその微笑を見ても別に安らぎはしなかった。
それは僕が一度死んで再び蘇った存在だからでも、元いた世界に神が存在せず、何かを崇めるような習慣がなかったからでもない。
微笑みを見ても何も感じない…ただそれだけだった。
「殺し合い、ねぇ……」
何気なく横に置いたデイバックから地図を取り出し、だらだらと端から端まで流し見た。
地図の端に教会という文字を見つけ、現在位置がF-1である事を知る。
口から出てくるのは溜め息ばかり。当然だ、僕にはそんなことに付き合う気も起きなかったのだから…。
僕はあの島でアティや姉さん達と対立し、最後まで共に歩む事を拒絶した。それは、僕の存在が皆を苦しめる事になると思っていたから。
小さい頃に無色の派閥によって一生病魔に苛まれる呪いを受け、家族から必要のない…邪魔な存在となった。
表面上は皆僕に優しく接してくれていたが、裏で厄介者扱いしていることはよくわかっていた。でも僕はそれを憎んだりはしなかった。
…むしろ悲しかった。悔しかった。周囲を苦しめてしまう自分が嫌だった。姉さんを軍人にしてしまう自分が憎くて仕方なかった…。
そこで僕は、自分の命を絶つ方法を探した。呪いの効果で自殺もできないこの命を絶つ方法を探し、そして見つけた。
二本の封印の魔剣の適格者となり、その魔剣の適格者同士ならば、お互いを殺す事ができるのだと。資格を持っていた自分は封印の魔剣を手に入れ、適格者となった。
魔剣の力で呪詛を抑えこむ事もできたので、更に行動範囲は増えた。後はもう一人の適格者を見つけて、自分を殺させるだけだった。
でも、僕を殺す事ができるもう一人の適格者のアティは、とんでもないお人よしだった。僕は彼女に僕を殺させようと何度も挑発して襲った。
だが、どれだけやっても彼女は僕を殺さなかった。僕が死んだ時に悲しまないようにと、姉さんの前でも卑劣な弟を演じて嫌われようとしたがだめだった。
結局、無色の派閥によって抑え込んでいた呪詛を解かれ、その反動によって死ぬという自分の計画を何一つ達成できない結末を迎えた。
しかし、僕は確かに生きている…と言えるのだろうか?正確には、死んだのを無理矢理蘇らせられただけだ。あのオディオと名乗る魔王の手によって。
それにしても何故僕のような人間をわざわざ蘇らせて、こんな馬鹿げたことをさせるのやら。はっきり言って迷惑だった。
生きているだけで邪魔な存在だった自分が嫌で死んだというのに、今更呪いの解かれた状態で蘇ったところでどうなる?
姉さんやアティ達に会わせる顔があるわけがないじゃないか。第一何処とも知れない場所で、殺し合いに参加している時点で会えるわけがない。
じゃあどうすればいいのか……そんな事どうだっていい。僕が蘇っていることなんて姉さんが知るわけないんだし、死んでもいいかもしれない…
でも未だ誰も自分を殺しにやってこない。それじゃあ自殺でもしようかと思っても、不思議とやる気になれない。
「…名簿でも見てみるか」
それでもふと、他に誰が参加しているのか少し気になった。こんな馬鹿げたことに知り合いがいるとは思わなかったけど、
とりあえず名前だけでも知っておこうかと思った。
しかしそんな気持ちは、取り出した参加者名簿に目を通した時に変化することになる。
「……なんで姉さんの名前が?」
最初は見間違いかと思った。でも自分と同じ性も記載されていて、自分の名前のすぐ近くに書かれていたのだ。
更に近くにアティやアリーゼなど知っている名前もあった。これで別人だと思う方がおかしい。
何故だか知らないが、姉さん達もこの殺し合いの参加者であることは事実なのだ。
「とにかく姉さん達の……」
と言いかけたところで、僕は動きを止めた。
…僕は今何を言いかけた?
(姉さん達のところに行かなきゃ…と)
誰が誰のところに行くって?
(僕が…姉さん達の……)
さっき自分で言ったじゃないか。自分には会う資格なんてないってさ…。
(それじゃあ姉さん達を見殺しにするのか?)
それは……
(なら行けばいいじゃないか…)
だから会うことなんて…
(なら今自分にできることはなんだ…)
「……僕にできること」
そう呟いて、僕は暫く動かなかったが、やがて僕の中であることが決まった。
僕にできること…それは誰とも共に行動せず、誰にも見られずにこの殺し合いを破壊する事。
首輪を解除し、ここから脱出してあの魔王を倒して姉さん達を解放する事。
その途中、危険分子…例えば殺し合いに乗った奴を見つけたら、排除する事。
これなら姉さん達に会わずに助けることができる。勿論絶対とは言えないが。
何にせよ、僕が姉さん達の前に現れない方がいいのは確かなんだ。
僕は早速荷物の整理と確認を行う事にした。そこ先ほどまでの無気力な自分は見当たらなかった。
まずは武器がなくては話にならない。そう思い、自分に支給された品を確認する。
支給された武器は剣だった。禍々しくもどこか美しい輝きを放つ片刃の剣…紅の暴君キルスレスに似ている気がした。
他の支給品も確認したが、別に今必要とすることはないだろう。
そういえば、まだ何処に行くのかも決めてない。魔王を倒す前にこの島からの脱出方法を探す必要があり、
脱出方法を探す前に首輪の解除方法を探す必要がある。
僕は改めて地図を開いた。
現在位置はF-1の教会。首輪を解除するのに必要なのは機械弄りに使う工具類やラトリクスのような機械設備の整った施設だ。
しかし、地図に記入された施設を見ても、そのどちらかでも置いてありそうな場所が見当たらない。
強いて手がかりがありそうなのは、F-7の遺跡と、D-1の港町、そしてI-1の灯台ぐらいだろうか…
その中で、港町は誰かと接触する可能性が一番高い。遺跡は砂漠と川を越える必要がある。移動だけでもかなりの時間がかかりそうだ。
「……となると、まずは灯台かな」
目的地は決まった。もうここに留まる必要はない。女神は相変わらず微笑みを浮かべていたが、僕は振り返ることもなく、教会を後にした。
ごめんね、姉さん…
僕は姉さんに会うことはできないけれど…
僕は僕にできることをして…
姉さん達をこの殺し合いから解放してみせるよ…
【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】
[状態]:健康。
[装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストW 導かれし者たち
[道具]:不明支給品1〜2個(本人確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:首輪解除と脱出を行い、魔王オディオを倒してアズリア達を解放する。
1:首輪を解除する為に必要な道具または施設を求めてI-1へ向かう。
2:途中危険分子(マーダー等)を見かけたら排除する。
3:極力誰とも会いたくない(特にアズリア達)
[備考]:
※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。
※名簿は確認済みです。
以上で投下終了です。やっぱりイスラは難しいなぁ…。
314 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/06(土) 22:46:53 ID:/EIq6yq+
ならつまらん文章書くな
投下乙!
ステルス対主催きた! 特殊スタンスですねえ。
仲間とは会いたくないってのは今まで見た事ないキャラで新鮮ですねえ。
しかも心の揺れまできちんと描写されているから、今後の展開への期待も膨らみます。
投下乙
あまり交流を求めないキャラってのも珍しいな
このスタンスが今後どう影響するのか気になる
投下乙!……ですが、現在地はどこでしょうか?
おはようございます。
PCに取り付けたので、トリップ付きで改めて議論スレでの決定を。
>>51-53のタイトル名(血のような痕が染みついていて読めない)について
>>51の
>今から思い返すと、マールとロボは反応していなかった。身構える仲間を見て、事情が飲み込めず、もたついていたように思う。
部分を空白の改行1つに修正
>>53の状態表
カエルの所持品のバイアネットの残弾を4から7に修正
以上に決定しました。読み替え及び修正をよろしくお願いします。
>>317 すみません、現在位置と時間が抜けてました。
【F-1 教会 一日目 深夜】
【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】
[状態]:健康。
[装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストW 導かれし者たち
[道具]:不明支給品1〜2個(本人確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:首輪解除と脱出を行い、魔王オディオを倒してアズリア達を解放する。
1:首輪を解除する為に必要な道具または施設を求めてI-1へ向かう。
2:途中危険分子(マーダー等)を見かけたら排除する。
3:極力誰とも会いたくない(特にアズリア達)
[備考]:
※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。
※名簿は確認済みです。
ところで、サンダウンロザリーの予約ってもう切れてるよね?
したらばにも書きましたが、2〜3日間延長していただけないでしょうか
だいたいは書きあがっているんですが。
それは完成まで確実に3日かかるってことですか?
取り合えず、1日だけ延長して頑張ってみては?
初っ端から延長はちょっと…
とりあえずいったん予約破棄して、書きあがるまで予約入らなかったら投下するってのは?
投下乙。
おお、このイスラはなんか新鮮だ。
ここってまとめとかはないのかな?
ないけど、wiki欲しいね。
ところでちょっと聞きたいんだけど、
同じゲームの別々の時期から参加してるキャラがいる場合、
後の時期から参加したキャラは、前の時期に参加したキャラが呼び出された時のことを知ってるわけだよね?
例えば、クリア後参加のブラッドにとっては、クリア前参加のリルカは突然消えたってことになってるとか
いや、そういう場合は大抵完全なパラレルワールドってことになってる
そして他所のロワには、それを理解して元の世界のあいつは無事だからって
ロワに参加してるあいつを殺すという行動を取る奴も……
最終的にその辺の設定がどういう結末を迎えるかは、書き手次第ってことになる
パラレルワールドとかしたらややこしくならない?
>>327 そういう場合は大抵パラレルワールドって形になってる事が多いですね。
予約していたものを投下します。
「クリフト…」
彼の名を呟くが、彼はもう戻ってこない。彼はもう帰ってこない。
城を飛び出した自分に着いてきて、小言を言いながらも何だかんだで面倒を見ていてくれた彼。
お供として彼は最後まで自分に尽くしてくれた。それに対して、自分はクリフトに何をしてあげられただろう?
思い出せば、いつも彼やブライを振り回して迷惑をかけてばかりだった。
あの時だって…クリフトが少年を治療しようとした時だって、自分は叫ぶだけで何も出来なかった。
もっと勇気を出せれば…叫ぶだけでなく、力づくでも彼を止める事が出来たら、クリフトは死なずに済んだのではないか?
結局自分は何も出来ず、彼を見殺しにしてしまった。
アリーナの支給品は「天罰の杖」。一時期クリフトが装備していた武器だ。
…まあ己の拳が武器である彼女にとってはそれほど役立つ物では無いだろうが、遺品となってしまったこの杖はアリーナの決意を強いものにする。
「ごめんね、クリフト」
後悔の言葉はこれで最後にする。
いくら悲しんだって、いくら悔やんだって、クリフトは生き返らない。
ならば、せめて彼の無念を晴らす。
――……分かっています、姫様。しかし私は、神に仕える身。何もせず黙っているわけには参りません
彼の正義を、自分が受け継ぐ。
クリフトに代わって自分が人々を助ける盾になる。
そして最後は…あの魔王にこの杖の名の通り天罰を与え、仇を取ってみせる。
それが自分にできるクリフトへの供養だろう。
「うっひゃひゃひゃひゃー!これはこれは、さっき泣き喚いてた女じゃあっりませんかぁ〜!」
そんなアリーナの決意を背後からの不愉快な声が遮った。
「誰!?」
すかさず振り向いて臨戦態勢を取る。
ピエロのような化粧をした派手な男が、ケラケラと笑いながらアリーナを見ていた。
ガストラ帝国の魔術師であり、神の力をも手に入れた混沌の王ケフカである。
「おやおや、いきなり喧嘩腰なんて、ヤバンな女は嫌ですねぇー。僕ちん、何にもしてないのに!」
「何の用?」
不快感を露にしながらアリーナが問いかける。
しかしケフカは意に介さず、相変わらず小馬鹿にしたような喋り方をする。
「べっつにー?ただ歩いていたらオマエを見つけただけですよ?」
…アリーナは決して気が長い方ではない。普段だったらこの時点でケフカをぶっ飛ばしていても不思議は無い。
だがクリフトの死を乗り越え決意をしたばかりの彼女は、何とか激情を抑えて冷静になるように努めていた。
「…あんた、殺し合いをするつもり?」
一番重要な事を聞く。
「うーん、そうですねえ…面白そうではありますよねぇ〜」
「面白い…ですって?」
アリーナの顔に僅かながら血管が浮き出る。
「沢山の人間が殺し合う。面白いじゃありませんか!ある者は望むまま、ある者は自分の意思と関係無く、ある者は流されるまま!
戦いが憎悪を呼び、やがてはこの舞台そのものが地獄と化し、そんな中を必死に生き残り、また殺しあう!う〜ん、想像するだけでもゾクゾクしちゃう!」
段々と浮き出る血管が増える。
「ん〜でも唯一気に入らない事があるって言ったら、このボクちんが参加する側に回されっちゃったことですね!
こんなユカイな事を傍観者としてノンビリ見物できたらどれほど良かったかぶほぉ!」
そこでケフカの言葉は途切れる。
堪忍袋の緒が切れたアリーナがケフカの顔面に必殺パンチをお見舞いしたのだ。
小柄なケフカの体はその衝撃で吹っ飛ばされる。
「いった〜い!何するんですかっ!」
「何が、愉快よ…」
ケフカの文句も彼女の耳には入っていなかった。今彼女の頭を支配しているのは、殺し合いに賛同する者への怒りのみ。
「こんな殺し合いの!何が愉快なの!?」
拳を握りしめてケフカに向かって突進するアリーナ。
腹が立った。こんな殺し合いを面白そうだというケフカが。
クリフトの死を侮辱されたようで、許せなかった。
「ふん、短気は損気だよ。サンダー!」
アリーナに向かってケフカが魔法を放つ。
しかし抜群の身体能力と反射神経を持つアリーナは難なくこれを避ける。
「このおおおお!」
かわすと同時にケフカへ肉薄。アリーナの上段回し蹴りがケフカを襲う。
ケフカにこれを避ける術は無く、再び吹っ飛ばされて木に叩きつけられた。
「取り消しなさい!殺し合いが面白いって言葉を!クリフトを侮辱した事を!」
尻餅をついたままのケフカに向かって、ビシッと指を突きつけて叫ぶアリーナ。
しかしケフカに反省の様子は無い。口からペッと血を飛ばして立ち上がり、チッチッチと指を振る。
「いやー、殺し合いは面白い!ユカイ!」
アリーナの神経を逆撫でするかの如く、小馬鹿にしたような表情と口調で彼女を挑発した。
「こいつ…!」
アリーナが駆ける。完膚無きまでに叩きのめして、絶対に反省させてやる!
拳を振り上げ、自慢のパンチを喰らわせようとケフカに迫る。
だが当のケフカはその場から動こうとしない。それどころか、余裕の表情を浮かべている。
何か嫌な予感がする…そう思った時だった。
(!?…何、これ…)
突然アリーナの視界がぐらつく。
まるで自分が高速回転してるかのような感覚に陥る。足下がふらつき、頭が痛い。
(何なのよ…一体…!)
必死に体勢を立て直そうとするが体のバランスが全く取れず、前を向くことすらままならなかった。
「オマエみたいな奴はボクが最も得意な相手だよ。こーやって簡単にコンフュにもかかってくれるしねえ!」
ケフカの声がする。しかし最早その声がどの方向からするかも分からない。
「熱血野郎は、少し頭を冷やしなさーい!ブリザガ!」
刹那、アリーナの周囲を氷壁が覆う。
全身が凍りつくき、猛烈な痛みが走る。最早熱いのか冷たいのかも分からなかった。
「あ、あ…」
氷が消えると同時に、アリーナはその場へと崩れ落ちた。
「ひょーひょっひょっひょっひょ!まあボクちんにかかればこんなものさー!」
動かなくなったアリーナを眺め上機嫌になるケフカ。
「それにしてもこの女、私に二発も攻撃を喰らわすとはなかなか油断できませんねえ。
こういう腕力バカばかりだと、さすがのボクちんも戦うのが苦しいですね」
どちらかというと遠距離からの魔法攻撃が得意で、接近戦が苦手なケフカ。
ここから先一人っきりで戦っていくのは少々骨が折れそうだった。
「う〜ん、ここは誰か他の連中に上手く取り入った方が良さそう!私は賢いからね、利用できる奴は利用させて貰う!
そして最後に勝つのは、このボクちんって事だ!」
耳障りな高笑いを発しながら、ケフカは悠々とその場を去った。
アリーナとケフカの交戦場所にアシュレーがやって来たのは、その数分後だった。
ひとまず森を出て参加者が集まりそうな場所へと向かっていたのだが、その途中で現場を通ったのだ。
「!?…おい君!大丈夫か!?」
その場に倒れていた少女を見つけアシュレーが声をかける。
「しっかりするんだ!」
少女を抱き起こす。全身に凍傷のような傷痕が広がっており、素人目にも致命傷であることは分かる。
恐らくもう意識は…。
「あ……う………」
少女の口が微かに動く。まだ息があったようだ。
「あ…あな……た…」
「君、喋らない方が…」
「こ、これ、を…」
アシュレーが制するものの少女は喋るのを止めず、握りしめていた杖を手渡してきた。
「あた、しと…クリフト、…の……ぶん、まで…」
杖をアシュレーが受け取ると同時に、少女の腕が支えを失ったかのように地面へと落ちる。
そして、二度と動くことはなかった。
「おい!おい!……くそっ!」
少女を救えなかったことを悔やみ、拳を地面に叩きつけるアシュレー。
彼が来た時には既に手遅れだったのだが、それでも歯痒い思いだった。
彼女が最後に言った「クリフト」という名前には聞き覚えがある。
最初にあの場所に集められた時、首を吹き飛ばされて死んだ男を治療していた青年。
確か少女の声が彼を「クリフト」と呼んでいた。
そしてその声は、きっとこの少女のものだろう。
魔王オディオの力を見せつけられた後、彼に刃向かってまで人を助けようとするなんて普通はできない。
きっと、勇気と正義感に溢れる人物だったのだろう。
人を守る事を仕事としてきた自分に取っては、尊敬に値する人物だ。
彼の意志は、まだ生きている自分達が継いでいかなければならない。
もちろん、この少女の意志も。
「…ありがとう」
少女から渡された杖をデイパックに入れ、一礼する。
止まっている暇は無い。彼らの死を無駄にしないためにも。
踵を返してアシュレーは走り始めた。
少女と青年の分まで、絶対に魔王オディオを倒してみせる。そう心に誓って。
【E-8 中心部(森林) 一日目深夜】
【アシュレー・ウィンチェスター@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康
[装備]:?(支給品に武器があった場合、装備している可能性有り)
[道具]:天罰の杖@DQ4、ランダム支給品0〜3個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:主催者の打倒。戦える力のある者とは共に戦い、無い者は守る。
1:リルカやブラッドら仲間の捜索
2:他参加者との接触
3:アリーナを殺した者を倒す
※参戦時期は本編終了後です。
【ケフカ・パラッツォ@ファイナルファンタジーY】
[状態]:上機嫌。顔、腹部に痛み
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品1〜3個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:全参加者を抹殺し優勝。最終的にはオディオも殺す。
1:積極的には殺しにかからず、他の参加者を利用しながら生き延びる。
※参戦時期は世界崩壊後〜本編終了後。具体的な参戦時期はその都度設定して下さい。
三闘神の力を吸収していますが、制限の為全ては出せないと思われます。
【アリーナ@ドラゴンクエストIV 死亡】
【残り51人】
投下乙です
本編終了後ってことは、アシュレーはアクセスは出来ないってこと?
そのままじゃ強すぎるし、それがいいかな
投下乙
えぇぇぇぇぇいきなり死ぬかアリーナ!?
クリフトの屍を超えておいてなんてザマだい、見損なったぜアリーナさんよぉ
投下乙
ケフカおめえステルスかよwこんな怪しいやつを信用するやつがいるのか?
アリーナは無念
投下乙
アリーナが増殖しなくて良かったです
アリーナァ!!
やっぱOPで目立ったからか!目立ったからなのか!?
GJ。
ケフカのむかつく感がでててよかったです。
さて、投下します。
ほの暗い水の中で彼女は溺れていた。
荒れ狂う海の中で目を開けることもできず濁流の音に耳を支配され泳ぐことすらできずに、怒れる龍の如き海のうねりにただ身を任せる状態となっていた。
だが、そのような状態と為っても今だ、心は決して折れてはいなかった。
彼女は約束したのだ。少女を守ってあげると。
故に荒れ狂う海へと落ちていった少女を助けるために、わが身構わずに少女の後を追い飛び込んだ。
しかし現実は非常であった。
海龍は彼女の体力を喰らいつくし、彼女の首を締め上げ口から酸素を吐き出させ、じっくりと死へと誘う。
体力が尽きても折れなかった心はここへきて、急速に死に始める。
それは生物としては正しいことではあったが、そのことは彼女の魂を絶望させる。
あの子と約束したんだ。守って上げると。が、もう指一本ほども動かす力が無い。
くやしい。力が…力が欲しい。力さえあればあの子を守って上げられるのに。
彼女の心を虚無と悲しみと少女への思いなどのさまざまな感情が支配し、だけれども思いは天へと届かずにそのまま海の藻屑へと消えていく。
そんな時だった。濁流の音に支配されている彼女の耳に奇妙な男の声が聞えてきたのは。
『力が…欲しいか?』
聞いたことも無い男の声により、失われかけていた彼女の意思がぎりぎりの境界線で繋ぎとめられる。
(え?)
彼女は思わず声無き疑問の念を発する。が、見知らぬ声は自分勝手に話を推し進めようとする。
まるで、悪魔が囁くような魔の契約のように。
『ならば、我を手にせよ…生き延びたくば我を継承するのだ』
謎の声が話す言葉そのものも、まるで悪魔の言葉の如く代償など伝えずにどうとでも取れるような代物であった。
そして、状況そのものも悪魔の関与があったとしても有無を言わせぬ危険な状態であった彼女に当然の如く選択肢などない。
「生き、延びる…」
彼女は文字通り溺れるものはわらをも掴む気持ちで、声が聞えてきた方向へと手を伸ばす。
『さあ、手を伸ばして掴み取れ!!』
男の宣言とともに彼女は嘗に力を込め、海の中に漂う何かを握る。
「……っ!?」
彼女がその何かを握った瞬間、突然周囲の光景が歪んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ようこそ、諸君。我は魔王、オディオ」
濃密な闇の中で、周囲の暗闇に負けることの無いほど邪悪に染まった男の声が周囲に木霊する。
その声にある者は怯え、ある者は憤りを向け、ある者は疑問を抱き、ある者はその男そのものを無視した。
そんな中で彼女は、トッシュという男と同じくオディオと名乗った男を無視していた。
右腕を延ばし地面にうつ伏せの体勢で寝転がった格好で、彼女は床に倒れていた。
僅かばかりに苦しそうに震える動作を続けるだけでそれ以外の行動をせず、何かの騒ぎを誘発するような動きをせずにただ倒れていた。
彼女のその状態は、水の中で口に含んだ酸素を逃がさないと思う物ならば当然の反応であり、激流により上下や重力に引っ張られる感覚が一時的に消失し、
海水が染込んだ眼球は物を映さず、ただひたすら掴み取った何かが奇跡を起こすまで意識を途絶えさせないことに全力を費やし、
海の底のような冷たい妖気が漂う空間では、彼女が海中から陸へと転移させられたということは気付きようが無い。
故に二人の男達が死に、少女が嘆き悲しんでも彼女はそれらの出来事を知ることなどなかった。
何も知ることのないまま闇に飲み込まれた彼女は、再び何処かの大地へと転移させられた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
E-6にある木が生い茂った山の中に突如、夜の闇よりも暗い球体のような物が発生し、現れた時とおなじように突然に消えた。
闇の球体が去ったその場所には、一人の女が倒れていた。
その女は赤い長髪に白い帽子、白いコートに赤い上着といった格好であったために、闇夜の中ではとても目立つ格好であった。
が、このバトルロイヤルという危険な状況下でそのような目立つ井出達だというのに、女は隠れようともしなかった。
ただ必死で息を止め続け、ぎゅっと力強く目を閉じ、暗い淵へと沈んでいく意識を繋ぎとめようとするだけだった。
そして息を止め続けたまま、突然かっと目を見開き足をピンッと真直ぐにし、次の瞬間に力なく項垂れ彼女は呼吸困難に陥り
陸に上がった魚のような格好でそのまま死んでしまった。
「ぷはぁ〜〜〜〜、死ぬかと思いました」
女は一度呼吸停止により死に掛けたものの、力を抜くことによって肺の中に空気が流れ込み何とか自力で蘇生することに成功した。
彼女は誰に言うでもなく独り言を呟きながら起き上がり、そこで目を丸くした。
「…なんで私、こんな山の中でひっくり返っているんでしょうか?」
誰かがいるわけではないでも無いのに、自分の考えを口に出すのは彼女が困っている時の癖である。
水中で溺れていたらいきなり山のど真ん中にいたのである。このような状況下では当然驚かずにはいられない。
「とにかく、いったいどうしてこんなことになっているのか、順番に思い出してみないと」
彼女はそう呟きながら、状況を整理するために思考を巡らす。
自分のこと。遭難してたどり着いた場所はどこなのかということ。
「私の名前は…アティ。私が生まれたのは帝国…といっても小さな田舎の村で、南国なのに冬には雪が降ってくるような村でしたっけ」
そこまで考え彼女は、自分が記憶喪失者でないと判断し、さらに最近のことを思い出そうとする。
「……クッシュン!」
考えている最中にくしゃみ一つ。
「……とはいえ寒いですね」
鼻から垂れた液体を指で拭いながら呟く。体を見てみると、服はずぶ濡れで長く伸ばした赤い髪は海から出した直前の海草のごとく水が滴り落ちていた。
アティは先ほどまで自分が溺れていたことを思い出す。そうだ、私海に飛び込んだんだと。
何故海にとびこんだんだろうか、何の理由もなしに海に飛び込んだりはすまい。海に飛び込んで遭難する理由とはいったい何か。
「…そうだ、アリーゼさんは!?」
アティは思い出す、己が海に飛び込んだ理由を。悲鳴を上げながら舟から海へと転落していった彼女を助けるために自分もまた海に飛び込んだのだ。
だが、大自然の力には勝てず、延ばした手は少女を掴めず、海の藻屑と消えようとしたとき、記憶がそこでぷつりと途絶えていた。
「アリーゼさん〜! どこにいるの〜! アリーゼ〜!」
状況判断よりも少女を探すことを優先する。立ち上がり少女の名を叫ぶ。
しかし、叫べども呼べども少女の返事どころか、誰かや何かがやってくる気配などない。
やがて、彼女はすぐに叫び疲れその場に座り込んだ。海に揉まれ体力を失った体ではそれで限界だった。
が、アティにとってはそんなことは何の慰めにすらならない。
「私が守ってあげるから」
数時間と経たぬ間に、その言葉は嘘となってしまった。
いつしか、彼女の頬を雫が流れている。
汗にしては、雫は熱く、苦く悲しすぎた。アティは、滝のように涙を流し続けていた。
守れなかった。助けられなかった。救えなかった。自分の心を、容赦なく自分が責める。なにが先生か。なにが主席か。何が守ってあげるだか。
「ふぐっ…うっ…」
アティは涙を拭うために顔に手をやる。だがいくら拭っても拭っても涙は枯れることなくあふれ出てくる。
「うぐっ…?」
そんな最中アティの持つデイバッグの口から淡く光る蒼い石が転が出て、アティの膝にあたる。
アティは泣いていたためデイバッグから石が転がってきたことなど知らず、足元にある石を何時の間にか転がっていた物と思い不思議そうに見つめる。
始めその石がなんなのか分からなかったが、一泊置いて彼女はそれがなんであるかを判断する。
「…サモナイト石?」
サモナイト石とはは召還師が魔術を行使し、召還獣を呼び出すために必要不可欠な道具である。
「…違う」
が、かの石はダイヤモンドのような多角形の石であり、アティの目の前にある球体とはことなる石である。
その石を見てアティは思う。この石が自分を助けてくれたのかもしれないと。淡く不思議に輝く石が海中にいた自分をこの島まで運んでくれたのかもしれないと。
あの時聞えた声はこの石から発せられたもではないのかと。
「あなたが助けてくれたの?」
アティは石に向かって喋りかける。もちろん石は何の反応も返さない。
「私がんばるからね、ありがとう」
しかし、アティは石がなんの反応も返さずとも、その石が自分を助けてくれたと判断した。
今の彼女に先ほどまでの悲壮感は漂っていない。
奇跡的に自分は助かった。だから、アリーゼもきっとこの夜空の下のどこかで生きている。
何の根拠も無くアティは少女が生きていることを信じた。サモナイト石とは異なる本当に力があるかどうか分からぬ石の加護を、彼女は信じたのだ。
とりあえず、アティは持っていた石を持っていた荷物の中に入れようとした。
そこでアティは気付く。自分の持っていた荷物とは違うことに。興味に駆られた彼女はデイバッグの中から荷を出した。
中には自分がどうやって持っていたのか分からないほどの重量感のあるモーニングスターのような鉄塊と白いコート、そして数々の雑貨が入っていた。
「サモナイト石でも入っていれば良かったのに」
召還獣の力を借りてアリーゼを見つけるという期待を抱いていたため、アティは少し苦い表情を浮かべるが気持ちを切り替えアリーゼ探索に必要な道具の選択に移る。
そこで彼女は何かの書類を見つけた。ランタンの明かりを付けメガネを掛けて、何が書かれているかを確認する。
そこには自分を含め50数名もの人物たちの名前が書かれてあった。中には自分がよく知っている者の名前も書かれてあった。
「なんでアズリアの名前も書かれているの?」
アティは名簿を見て一瞬混乱した。そして、この名簿の意味を考える。自分やアズリアにアリーゼの名が綴られた名簿。
それが指し示す意味は果たして何なのか。僅かばかり考えた彼女は、至極まっとうで一番ありそうな答えを出した。
「これは船の乗客名簿に間違いありません」
船内を探索中に聞えたアズリアの声、そしてビジュと呼ばれた男の名が名簿にあったことからアティはそう判断する。
アズリア・レヴィノスはアティの友人であり、誇り高くその身に優しさを秘めた実直な人間である。
おそらく軍の何らかの任務か何かで、あの船に乗っていたのだ。風の噂で部隊長になったという噂を聞いてはいたが、意外と身近にいたものである。
彼女と出会うことができれば、自分が何故軍を辞めたかと小言を言いながらもきっと協力してくれるであろう。
そして、ビジュという男を始めとした軍人達にも協力を仰ごう。アズリアの部下達だ。きっと規律正しい良い人たちに違いない。
ビジュという男はぶち殺すなどと言っていたが、あれは何か重要な任務を受け負っていたために緊張していただけなのだ。
現に海賊が襲ってきた。あながちこの考えは間違いではないのだろう。
57 名前:『アティの場合』 ◆x7pdsyoKoA[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 21:38:20 ID:/nAXJuSk0
「…もしかして、海賊達もこの島にいるのでしょうか?」
海賊達のことを思い出し、彼らもこの島にいるのではないかと思い始める。
自分がこの島に流れ着いた以上は、その可能性は多いにありうる。
ならばこれ以上は悠長なことはしていられない。海賊達に対抗するための武器やコンパス等の雑貨をデイバッグに乱雑に収める。
そしてアティは僅かばかりの逡巡みせて、おもむろに服を脱ぎ始めた。その行動は濡れた服はアリーゼ探索には不向きであるとの判断からである。
水を吸い冷たくなった服は体温を奪い、重量を増す。一刻も早くアリーゼを見つけたいアティにとっては、これ以上のタイムロスは避けたかった。
海賊やこの島特有の野生動物やはぐれ召還獣がいるかもしれないと思ってしまう以上はなおのことである。
だから彼女は服を脱ぐ。白く美しい肌を外にさらし、男達には見せられない下着一枚靴一足の格好となる。
そんな姿から、すぐさま自分が持っているものよりも大きい白いコートを羽織る。服を脱がなければならない理由があっても、羞恥心がないわけではなかった。
もし、予備のコートがなければ濡れたコートを使わなければいけなかった。乾いたコートが何故か荷物の中に入っていたのは幸いだ。
遭難した以上は未知の樹液や直射日光から身を守るためのコートは必要なのだ。服のポケットに丸い石を入れ、その場に散らかった服を適当な木に引っ掛ける。
「今行きますからまっててね」
アティはそう呟きながら当ても無く歩き始める。
アリーゼとの約束を果たすために、親友を探すために、この地から脱出するために、彼女は進む。
【E-6 山 一日目 深夜】
【アティ@サモンナイト3 】
[状態]:疲労困憊。コートと眼鏡とパンツと靴以外の衣服は着用していない。
[装備]:白いコート、水の封印球@幻想水滸伝2
[道具]:基本支給品一式、はかいのてっきゅう@ドラクエW
[思考]
基本:アリーゼを探す。
1:アズリアを探してアリーゼ探索に協力してもらう。
2:他の遭難者やビジュという軍人も探す。
3:舟を襲ってきた海賊や島にいるかもしれない召還獣等に警戒する。
4:アリーゼと共に帝都に行く。
5:アリーゼを見つけてから服を取りに戻る。
[備考]:
※参戦時期は一話で海に飛び込んだところから。
※E-6にあるどこかの木にアティのコートや上着や帽子などが掛っています。
※首輪の存在にはまったく気付いておりません。
※地図は見ておりません。
58 名前: ◆x7pdsyoKoA[sage] 投稿日:2008/09/07(日) 21:39:42 ID:/nAXJuSk0
猿さん喰らった。
だからこっち投下。
誰か後よろしくお願いします。
あと、なんかいろいろごめんなさい。
代理投下乙。アティ第一話からの参戦か。それでも同じ世界の参加者で知り合いが結構いるから、
SRPGのソノラよりはマシだな。
それで少し気になった部分があるんだけど、第一話の時点でアティはビジュのこと知ってたっけ?
船に乗っているときに船内をぶらつく選択をしても、顔は見ても名前は知らなかった記憶があるんだけど。
知ってる人いたら教えてもらえないだろうか。
>>350 船内を探索する選択肢を選んで探索中に、
ギャレオが「こらビジュ」と怒っていたから記憶にあってもおかしくはないと判断しました。
>>335 投下乙! アリィィィィナァァァァァ!!!
最強の小物きた! さすがケフカはステルスが様になるわw
アリーナは報われないが、しっかりとその意思はアシュレーに受け継がれたようですね。
ケフカの口調は難易度高いはずですが、完璧に再現できてますね、GJです!
>>349 投下、代理投下乙!
天然(?)キャラきた! ほんとに死んだかと思ってヒヤヒヤしましたw
アティは未把握なんで再現度とかは分からないんですが、とても魅力的なキャラに感じました。
知らない人にまで、ここまで上手くキャラを魅せるというのは、そうそうできる事ではないでしょう。GJ!
>>351 なるほど。お香ランプはそんなこと言ってたのか…。
二週目以降はいつでもイスラED選べるように甲板出てたからわからなかった。
そしてアリーナの人も乙。まさかのズガンとは…アシュレー頑張れ!
ケフカはステルスだと言われてますけど。どっちかっていうとアサシンマーダーの方が向いてるような…。
◆BGnFOf.FWQ氏
投下乙
アシュレー暴走フラグがいきなり折れた!
良い対主催になってくれそう。
◆x7pdsyoKoA 氏
投下乙
オディオも濡れた服は乾かしてくれなかったか。
ところで、アティの得意分野と属性は後の人におまかせでいいのかな。
なんかこのロワ首輪解除スキル持ったやつ多いな。
本命 ルッカ、マリアベル、シュウ、エドガー
予備軍 エルク、アティ、アズリア、イスラ、トカ、ブラッド
特殊 トッシュ、ゴゴ
こんなにいるww
マーダーと首輪解除持ちキャラの多さは良ロワの証拠
今のところこんな状況か
【マーダー】
ジョウイ、ジャファル、シャドウ、オブライト、ピサロ、セッツァー、シンシア、魔王、トカ、ケフカ
【対主催】
トッシュ、ナナミ、カエル、ストレイボウ、マッシュ、リルカ、ミネア、アリーゼ
アキラ、ヘクトル、レイ、ブラッド、エルク、エイラ、イスラ、アシュラー、アティ
【不明】
ビッキー、ゴゴ
【危険】
高原、カノン
マーダーは強そうなのから狡そうなのまで幅広くいるな
今まで出たキャラ、半分ぐらいマーダーか?
まだ、そんなでもないかな
大変遅れて申し訳ありません
サンダウン、ロザリー投下します
その男は、木々が生い茂る森の前にたった一人でいた。
男の身につけている服は長年使い古していたのか、どこもかしこもボロボロで見てくれは非常にみすぼらしかった。
しかし、男がうつす眼だけはその風貌とは相反するかのように輝いていた。
サンダウン・キッドは考えあぐねていた。これからどうするかを。
サンダウンが本来いた世界では「殺し」は日常茶飯事である。死に場所を求めて荒野を放浪し、
自分を狙うならず者や賞金稼ぎたちの銃弾にいつ斃れるかもしれない死と隣り合わせの日々を送ってきた。
殺しには躊躇いがない。しかし、それは「決闘」という公正なルールの上での場合だ。
名簿を見てみると、明らかに女性らしきの名前が載っている。明らかに戦意のない人々を
襲うほど、サンダウンは愚かではなかった。
サンダウンはひとまず、ここから立ち去ろうとした。
ずっと立ち止まっていても、いずれ殺し合いにのっている者に発見される。
自分は銃を全て奪われてしまっている。襲撃されでもしたらこちらが不利になるのは明らかだ
そう考えたサンダウンは小屋から離れるための一歩を踏み出そうとして
それを止めた。
サンダウンはしばしその場に佇んだ後、ちょうど後ろにある木の幹に振り向いて言った。
「……そこにいるんだろ?誰だかは知らないが、出てきた方がいい」
サンダウンが声をかけた木の陰から、桃色の髪をした女性がおそるおそる現れた。
「すみません、盗み見るような真似をして……」
桃色の髪の女性は申し訳なさそうな顔をする。
「いや、気にしなくていい……こんな状況だ。用心深くなるのも無理はない」
「でもよかった。殺し合いにはのっていない人間に出会えたのですから」
「……何故分かる」
「だって私の気配が分かっているのにもいきなり襲わず、声をかけたのですもの。」
「声をかけて油断させようとしたのかもしれないぞ?」
「いいえ、あなたはそんなことをするような眼ではありませんもの。あの勇者様のような心正しき人でなければ
そんな眼はしませんわ」
サンダウンの言葉に対し、凛とした表情で桃色の髪の女性は反論する
「すまなかった。困らせるような真似をして。私もあんたと同じようにこの殺し合いにはのってない」
「謝る必要なんてありません。ただ、一つお願い事を聞いていただけないでしょうか?」
「何だ?」
「私とピサロ様を捜してもらえないでしょうか?」
ピサロ……その言葉にサンダウンはどこかで見覚えがあった。
先ほど名簿に目を通した時に確かに「ピサロ」という名が書かれていたことを思い出した。
「……知り合いか?」
「はい、私の命の恩人……私のかけがえのない人。その人がこの地で自らの手を汚そうとしているのです。
ピサロ様は以前私を失った時失意に駆られ、人間達を滅ぼそうとしたことがあって……
あまり考えたくはありませんが、ピサロ様が私のために殺し合いにのっているのかもしれないんです。
お願いです、私と一緒にピサロ様を止めてはいただけないでしょうか……」
「………」
サンダウンは桃色の髪の女性の言葉を沈黙しながら聞いていた。
最初は軽くあしらう気だったが、彼女の哀願する顔を見るうちにだんだん彼女の話に耳を傾けるようになってきた
なるほど、あの賞金稼ぎも女の頼まれて断れないと言っていたがが、どうもそれは的を射ているかもしれない。
「もし、それで私が命を落とすようなことがあれば……」
「もういい、分かった。あんたと一緒にそのピサロという奴を捜すのを手伝ってやろう」
「ありがとうございます!えっと……」
桃色の髪女性は名前を言おうとして、言葉に詰まる。
「サンダウンだ」
「ありがとうございます、サンダウンさん」
桃色の女性はサンダウンに深々と頭を下げた。
「私はロザリーと申します。これからよろしくお願いします」
申し遅れてすみません、とロザリーは付け加える。
「ところで、銃はもっているか?私の持っているものじゃ少々護衛は難しいのだが……」
「……じゅう?何かの魔法アイテムでしょうか?」
「あんた、銃を知らないのか?」
ロザリーは首を縦に振る
「銃っていうのは鉄の筒のようなもので、引き金を弾くと弾丸が発射される武器なんだが……」
ロザリーは何のことだが分からないようにキョトンとした顔をしている
「……無いのならいいんだ」
「すみません、道具を入れる袋の中にも……これだけしか入ってないんです」
ロザリーは持っていたデイバッグの中から自分の支給されたものをサンダウンに見せる。
中に入っていたのは短い剣、小さな望遠鏡、そして液体が入ったビンのようなものだった。
「捜しながら見つけるしかない、か……」
「あ、でもその代りこの薬は2本あるので残りの一本はお譲りします。きっと何かの役に立つはずです」
「すまない、感謝する」
2人はそれから、ピサロの他にも捜索すべき人物の情報交換を行った。
ロザリーの知っている仲間はあのアリーナ、トルネコ、ミネア、勇者と呼ばれる男
彼らも殺し合いを止めるのに役に立つ人物であるということだった。
サンダウンが知っている仲間はレイ・クウゴ、高原日勝、アキラ。かつてここに連れてこられる前に
共に旅をしていた仲間だということを彼はロザリーに伝えた。
「急ぎましょう。サンダウンさん、ピサロ様を捜しましょう。時は一刻を争います」
「待て、気持ちは分かるが闇雲に動いても見つかる保障はない。情報交換や私たちと協力してくれる戦力が必要だ」
「それもそうですね……道具の調達や町の人々から情報を入手して万全な状態で臨まないと、途中で何が起こるか分かりませんものね」
「地図によるとここから南にある城下町が近いな。ひとまずはそこへ向かおう」
「はい、分かりました。」
こうして再び人を守る事を決意した男は一人のエルフとともに森の中に消えていった。
しかし、2人は知る術がなかった。
ロザリーの支給されたナイフはかつて"勇者"と呼ばれた男を拒絶し、一国の忌まわしき姫君が自らその命を絶つために使われた曰くつきのナイフだということ
ピサロがすでにロザリーの説得にはおえない状態になっていること
この2つのことを知る術はなかった。
はたして彼らのもとに朝日は再びやってくるのだろうか……
あるいはその名のように夕日に沈んだきり戻らぬままか……
【H-7 森林 一日目 深夜】
【サンダウン@LIVE A LIVE】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーY、未確認支給品(1〜3、銃器の類は入っていない模様)基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いにのらずに、ここからの脱出
1:ピサロの捜索
2:ひとまず城下町へ向かって情報交換
2:ロザリーの仲間(主人公(勇者)、アリーナ、トルネコ、ミネア)の捜索
3:自分の仲間(アキラ、レイ・クウゴ、高原日勝)の捜索(そう簡単には死ぬことはないと思っているので上記の人物よりは優先度は下)
4:銃がほしい
[備考]
参戦時期は最終編。魔王山に向かう前です。
【ロザリー@ドラゴンクエストW 導かれし者たち】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーY、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、双眼鏡@現実、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いを止める
1:ピサロ様を捜す
2:ひとまず城下町へ向かって情報交換
3:主人公(勇者)、アリーナ、トルネコ、ミネアたちとの合流
4:サンダウンさんの仲間を捜す(レイ・クウゴ、アキラ、高原日勝)
[備考]
参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。
投下終了です
予約延滞のご迷惑をかけて申し訳ありません
あと、ロザリーは主人公のことを勇者様と呼んでますが
主人公の名前がはっきりしていないので名前確定するまでの便宜上の呼び名ってことで
確定したらその名前に修正します
投下乙!
トラウマナイフきた!
ロザリーはピサロを止めるのかあ……今回ばかりはキツそうだけど。
そうか、良く考えたらロザリーは銃知らないんだなw そこらへんの認識の違いを書いたのは上手いですね。
サンダウンも渋い! 最終編かあ……ハリケン覚えてたらチート化するなw
投下乙
サンダウン相変わらず渋くていいね!
しかし銃なしでどこまで戦えるか?
アリシアのナイフ…オディオは何を考えてこんなものをw
しかし、ライブアライブキャラは全員最終章からの参加なのか
何人かは最終章前から出したりしたら面白そうだったのに
今回アシュレーを本編終了後にしたんですが、アクセス無いとつまらないですかね?
もしそういう意見が多いなら、参戦時期を決ないように修正しようと思いますが
アシュレーは対主催が合ってるし
カノンとの対立は本編でうまくまとまったから、むしろ「アシュレーの中に誰も居ませんよ」
としてカノン空回りさせたほうがいいかな、個人的に。
>>366 うーん、申し訳ないが、個人的な願望としてはアクセス欲しいなぁ。
>>368 超乙!
暇を見つけて編集していこうと思います。
後付で理由つけて、クリア後でもアクセスできるようにすればいいさ
そう、オディオがロードブレイザーの因子とか何とかを仕込んだとか適当にこじつけてw
まあ、そんなことが可能かどうかは知らんが!
なーに、世間には参加者達の中にDG細胞やゲッター線やアルジャーノンやらを仕込みまくった主催者もいてなry
でも確かに、特に必要な場合でないなら、参戦時期は別に書かなくてもいいんじゃないかって気がする
>>366 そうですね。アクセスは個人的には欲しいかな。
どっちにしても今回は参戦時期を決定しなくてもいいかもね。
>>368 GJ! 素晴らしい!!
参戦時期をいつにするかは書き手の自由にするべきだろ
周りが口出すことじゃない
「意見を募集してみる」と書き手さんが言ったんだから、ダンマリは逆に酷いだろw
だから「書き手が自由に決めるべき」って意見を言ってるんじゃん
だとしたら「口を出す事じゃない」は言うべきじゃなかったんじゃないかな。
>>366 どちらでもいいですが、心配ならば後に書く方に任せたら安全でしょう。
>>368 超乙です。サイコーです!
なかなか充実してきましたね。
何故かロードブレイザーが復活してましたってことでいいじゃん
DQ4勇者、クロノ投下します。
なお、
>>138で名前が出ているっぽいので
勇者の名前はユーリルにしました
クロノは激怒した。
必ず、あの邪知暴虐なる魔王オディオを倒さねばならぬと思った。
……と、そう言える状況なら良かったのだが。
そうもいっていられない状況にある。
武器、防具、道具、魔王討伐に必要なものは揃っているかも知れない。
ひょっとすると首輪解除に大きく近づくアイテムが入っているかもしれない。
ただ、そんなものを確認することすら許されない。
できることなら今から仲間を募って動き出したい……が。
本当に「今はそれどころじゃない」のだ。
不運にも彼が放り出されたのは――
海。しかも海中。さらに結構深め。
夜だから良くわからないが、これは相当深い。
何しろここにこのままとどまっていれば助かることはないだろう。
とりあえず考えたことは……海中からの脱出。
闇雲に上を目指してただひたすらに泳ぐ!
海面はまだ見えそうにもない!
泳ぐ!
徐々に冷たい水温が体力を奪っていく!
泳ぐ!
酸素も着々とクロノの体から抜けていく!
死ぬ一歩手前にやっとのことでクロノは海面に到達し、黒一色に染まった夜空が一面に見えた。
しかし一難去ってまた一難。新たに大きな問題が彼に襲い掛かる。
準備運動もせずに水中に飛び込んだ場合、足などの筋肉が攣ったりする事がある。
クロノが海中に放り込まれたのはオディオの説明の後。
もちろん、準備運動なんてしているわけもないから足が攣ってもおかしくはない。
水中で足が攣るということは……其即ち「溺れた」ということになる。
海岸まで約五メートル、この距離が憎たらしいほど長く思える。
体力は海面へたどり着くのにほぼ使ってしまい、足の攣りを無視して海岸にたどり着く気合もない。
ここで死ぬのか、そんなことを考えていたとき。
ふと上を見上げると自分に向かって手を伸ばす天使が見えた。天国からのお迎えだろうか?
そんなことを考える暇もなく、無我夢中でその伸ばされた腕を掴む。
天使が有りっ丈の力を振り絞って自分の体を引き上げるのが分かる。
自分も有りっ丈の力を振り絞り海面から脱出を図る。
二人とも顔を真っ赤にしながら互いに力を作用させる。
見事クロノは海中から脱出し、天使がそのまま海岸へと連れて行く。
そして、そのまま両者とも海岸へ突っ伏すように寝転んだ。
クロノは助けてもらった緑髪の天使に寝ながらではあるが軽く一礼をする。
緑髪の天使はシニカルな笑みを浮かべながら、親指をつきたててクロノの目の前に突き出す。
なんだかおかしくなって来てそのまま二人は笑いあう、夜空に響き渡るぐらい大きな声で。
どれぐらい笑いあっていただろうか。
気がつけばクロノの足の痛みは起き上がれる程度には回復していた。
ゆっくりと体を起こし、二人とも向き合って胡坐をかく。
「……クロノ」
「ユーリルだ」
たった一言、最短にして十分な一言。そして交わされる握手。
この二人の間に余計な喋りは要らない。ただ、信頼できる目と心。それだけで十分。
その後、クロノは自分のデイバッグを探してみたが一本のモップと一個の光る石が出てきただけで、目立った武器はなかった。
もちろん、ユーリルも天使の羽と腕に巻いたバンテージ以外の支給品はない。
この状況にはさすがの二人も苦笑いを浮かべた。
クロノはそのまま石をポケットに入れ、モップを片手に持った。
デイバッグから出てきた名簿にもしっかりと目を通し、互いの仲間要注意人物を把握する。
この人物とこの人物なら安心でき、この人物は警戒したほうが良いということを。
やはり二人は目と目で互いの考えてることを察する。今さっき出会った二人ができるアイコンタクトとはとても思えない。
しかし、この二人は平然とやってのけている。まるで昔から知り合っていてお互いを知り尽くしているかのように。
とにかく今やるべきことはたった一つ。
それを確認し、お互いに頷きあいながら二人は立ち上がる。
打つべき敵である存在、魔王オディオを見据え。
二人は遠く果てしない道なき道を歩く。
同じ道を歩もうとする、仲間を求めて。
【I-4 海岸 一日目 深夜】
【クロノ@クロノ・トリガー】
[状態]:疲労(大)、ずぶ濡れ。
[装備]:モップ@クロノ・トリガー、魔石ギルガメッシュ@ファイナルファンタジーVI
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:打倒オディオ
1:打倒オディオのため仲間を探す
2:できれば首輪の件があるので機械に詳しそうなルッカ優先で合流したい
3:魔王については保留
[備考]:
※自分とユーリルの仲間、要注意人物を把握。
※参戦時期は魔王が仲間になっているあたり(蘇生後)、具体的な時期は次の書き手さんにお任せします
【ユーリル(DQ4男勇者)@ドラゴンクエストIV】
[状態]:疲労(大)、ちょい濡れ
[装備]:最強バンテージ@LIVEALIVE、天使の羽@ファイナルファンタジーVI
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:打倒オディオ
1:打倒オディオのため仲間を探す
2:なぜかいるシンシアの名前に多少の疑問
3:ピサロに多少の警戒感
4:ロザリーを保護すべき……か?
[備考]:
※自分とクロノの仲間、要注意人物を把握。
※参戦時期は六章終了後、タイミングは次の書き手さんにお任せします
投下終了です。
びっくりするぐらい喋らない二人が出来上がってしまいました。
あと、魔石ギルガメッシュはGBA版の要素ですので、まずかったら削除します。
あと
>>218-223の作品にタイトルが無いことに気がついたので
タイトルのほうを「踊る道化は夢を見ない」でお願いします。
投下乙! GBAだろうが全然OKですよー。
無口キャラきた! 口数を減らす事で無理なくキャラを再現したのは見事。
溺れるシーンの描写が丁寧ですwまさに「泳げクロノ」ですねw
口数は少ないけど意外と明るい2人。なかなかいいコンビに思えます。
戦闘力も高いから、今後の戦場の鍵を握りそう。GJ!
投下乙です。
なんという無口コンビw登場位置が海底とは嫌がらせすぎるwww
あと、魔石のギルはどんな効果なのでしょうか?氏の他の投下作で出てきたアイテムの説明も載せてくれると有り難いです。
>>385 したらばの雑談スレのほうに今まで支給したものを含め簡単な解説を載せておきました。
投下乙。
無口コンビでシレンとクロノコンビを思い出した。
しかし海底とは……
スタート直後に溺死とか嫌過ぎるw
>>386 おお、ありがとうございました。
お手数をお掛けして申し訳ありません。
投下乙
主人公コンビとはありがちだけど、このコンビいつ続くかちょっと気になる所
投下乙
無口主人公の性格がどうなるかと思ったけど
徹底的に喋らせないとは潔いw
魔石のチョイスは俺的にGJと言いたい
wiki編集してるんだけど、もう一人してる人がいるみたいだ
被ったらアレだし、任せた方がいいのかな?
うわ!よく見たら自分のSSタイトル名入れるのを忘れていた
「そしてまた日は昇るのか?」でお願いします。すみません
うーん、やっぱアクセスあった方がいいって意見が多いみたいですね。
後付けでクリア後でもアクセス使える事にすればいいって意見も頂いてますが
それでもいいですか?
ちょっと理由付けに苦労しそうな気がしますが……。
取り合えず議論スレへ行きませんか?
今はこのままでいいよ
必要ならその時に後付けすればいいし
◆FRuIDX92ew氏
投下乙
マルチドライバークロノは勇者と合流か、電撃&無口コンビここに結成!
まともな武器こそないが最強バンテージにギルガメッシュといいものそろってる。
これで、二人とも強いといえるパーティは3つめかな。
ところで、なんでユーリルそんなに疲労してんですかww
ティナ、無法松、ルカ様投下します。
何か最初から不安だ……
支援
「はぁ、はぁ、はっ……!」
行けども行けども、木、木、ひたすら木。
そう、さっきやっと分かったことだが、ここは深い森の中だった。
鬱蒼と草花が生い茂り、月の明かりを遮るように立ち並ぶ木々のおかげで辺りは真っ暗。
そして、その中を私は夢中で走っていた。
切り傷を作り、左手で右の腕を押さえながら、ただひたすら。
後ろを振り向きたくなかった。転ばないように、ぶつからないように、一心不乱に足を動かす。
すると、前方に見えたのは、木々の間を縫ってうっすらと差し込んでくる光。……光だ。
よかった、出られる……!
その光は私の心の隅々にまで注がれるようだった。
暗闇の恐怖から解放されるのと引き換えに、私はついほっと気を抜いてしまう。
だから、気づかなかった。
「きゃ!」
「おわっ!?」
がつっ、と足元から音が聞こえた時にはもう遅かった。
私の体はわずかに宙を舞った後、地面へしたたかに打ちつけられる。泥の上に転がり
しかし、そんなことがどうでもよくなるほど、私は焦っていた。
今確かに声がした。誰かにぶつかってしまったんだ。
……どうしよう、殺し合いに乗ってる人だったら!?
それだけで頭が一杯だった。私はすぐに体を起こし、その場から立ち去ろうと――
「お、おい、どこ行く!? ぶつかっておいてそれはねぇだろッ!」
――する前に、大声で呼び止められた。
体がびくっと跳ね、私は足を止める。火照った体が初めて、夜の冷やされた空気に触れたように感じた。
振り向いて顔を上げると、そこにいたのは気に寄りかかって立ち上がる男の人が。
暗くてよく分からないけれど、その逆立った髪とは、柄が悪いように思えた。
そしてやっぱり怒っている気がする。……でも、それは殺気ではないような気もする。
少なくとも、先ほど感じられたようなものとは違った。
それでも不安で恐る恐る口を開く。
「……あ、あなたは、殺さないの?」
すると、その人が顔をしかめるのが分かった。
「バカ言うな、誰がそんなことするか!俺はな、何でお前がそんな急いで走ってるのか、それが気になっただけだ」
段々と冷えてきた頭でその言葉を聞く。そして、また私は焦った。しまった、と思った。
最初にぶつかったのは私、悪いのは私の方だったのに、なぜ逃げようとしてしまったのだろう、と。
「ごめんなさい、動揺してしまって。私……、私は……」
そこで初めて、私は自分の身体に目を向ける。
逃げる前にできた切り傷に加えて、服は落ち葉と泥だらけだ。
周りからは水の流れる音が聞こえる。ここを抜けた先には川があるらしい。
私は今まで走ってきた道を見た。そこには先ほどと何も変わらず、ただ闇が広がっている。
よかった、逃げ切れたかもしれない。
私は安堵感をかみ締めながら、未だはぁはぁと漏れる息を抑えて口を動かした。
「私……、森の中で襲われたの……。暗いから火をつけたら、いつの間にか……
、後ろにいて……」
一旦言葉を切り、私は事の詳細を伝えようと次に口に出す言葉を探す。
すると泉から湧き出る水の如く、先ほどまでの出来事が鮮明に蘇ってきた。
鎧を着た、大きな男の人だった。
あの時はただ暗いから、不安だから明かりをつけたけれど、あっちにとっては格好の的だったのだろう。
撃った魔法はいとも簡単に――今思えばあれはサイレスの類に思えた――封じられて全く歯が立たず、
他に使える武器も道具もない私は逃げることしかできなかったのだ。
「……それで、ここまで逃げてきたって訳か」
「そう、だから、ここにいるのは危険よ。あなたも気をつけ――」
「お前、名前は何だ? 俺は無法松、松でいい」
「え?」
何で今、名前を?
唐突な質問に思わず目を丸くする。私は、戸惑いながらも答えた。
「ティナ、だけど……」
「ティナか、この森を抜けるつもりなら、俺も一緒について行ってもいいか?
ここまで聞いておいて、怪我した女一人を見送るなんてできねぇからよ!」
そう言ってからその人……ええと、松は樹の幹から体を離し、威勢よく立ち上がる。
私はというと、その言葉に驚いて飛び上がりそうになっていた。
私は忠告になればと思って言ったつもりで、この返事は予想もしていなかったのだ。
この殺し合いの中、味方になってくれる人がいるなんて思ってもいなかったから。それも、初対面にも関わらず。
「……いいの?あなたも巻き込んでしまうかもしれないのに」
「殺し合いに巻き込まれた時点で、お互い様って事よ」
松の答えは、簡単だった。
そして、私達は並んで歩き出した。
森を抜け、その脇を流れる川にそって歩を進めていく。
綺麗な満月だった。森をさ迷っていた時には想像もつかなかった量の光が地面に降り注ぎ、
川はそれを受けてきらきらと瞬く。
それはまるで作り物なのではないかと疑ってしまうほどだった。
そしてその満天の星空の下、2人で荷物の中に入っていたものを確認する。カンテラを最小限に灯しながら。
どうやら私達がいるのはD-7、中央にある山のふもとらしい。
私が名簿と、松が地図とにらめっこしながら情報交換も進めていく。
「……エドガー、マッシュ、シャドウ、セッツァー、ゴゴ……。
私達のところからも、こんなに来てたのね。それに、ケフカ……。この人には気をつけないと」
「そんなに知り合いがいるのか? なんと言うか、災難だな。こっちはアキラって奴だけだ、見かけたらよろしく頼む」
周り一帯に森林が続いていること、私の仲間が5人も殺し合いに参加させられていること、
あのケフカまでがいるということが分かり、私はそれらの文字に押されるように肩を落とす。
けれども、松と話していると、いくらか気持ちが軽くなった気がした。
「じゃあ、まずは森を抜けてここの神殿でも行ってみるか? 多分向こうの――」
「分かったわ。このまま川を辿ればいいのね?」
なぜか返事が帰ってこない。
不審に思って顔を地図から離し、そこでようやく私も気づいた。
「……何だあれ? 火事か?」
松の"神殿"に置かれた指が宙を移動して、脇の森林の奥を指す。
そこに見えたのは、真紅の炎を巻き上げながら燃える木々の姿だった。
川の急流が作る音と、横で光るカンテラの明かりで今まで気付かなかったのだ。
「私がさっき放ったファイアのせいかもしれない……。でも……」
でも、それにしては燃え広がるのが早すぎる。
まだ距離はあるけれど、火の手はもう私達の後ろを囲むように進んでいたのだから。
「お前、火を放ったって……、超能力が使えるのか?」
不意に松が尋ねてくる。私達は心なしか、だんだんと早足になっていた。
「……超能力? そのようなものかもしれないけれど……私のは魔法よ」
まほう?と松が首を傾げる。
どうやら松の知り合いに、心を読める人がいるらしい。確かに超能力と言えそうだけど、魔法とは別なのだろうか。
でも、私の魔法は、あの男の人が使った道具のせいで未だに使えないようだった。
これでは火を消すことはおろか、戦うこともできない。
まるで、モブリズの村にいた時に戻ってしまったかのように、私は戦う力をなくしていた。
段々と迫ってくる炎が、私の無力さを伝えているようだった。
「バカヤロウ逃げるぞ! 何をボーっとしてるんだ!」
そんなことを考えていると、ぴしゃりと松に怒られる。
刻一刻と、私達は火に追い詰められているのだ。もはや火の届かない場所まで逃げるしかない。
私達は早足をやめ、むこうに見える河原に向かって走り出す。そこは、川が緩やかなカーブを描き、長い河原を作ってい
る。
走りながら、私は何か心に引っかかるものを感じていた。
私のファイアではここまで燃え広がるのに何時間もかかるはず。だから、これは明らかにおかしいのだ。
まさか、と思った考えを振り払いながら、走ることに専念する。
「何か、ここから脱出できる物があればいいのに……」
「それだけどな、方法があることはあるが……」
「何? 何かある……の……」
なにしたルカ様?
松のいう"方法"が気になり、呼び止めようとしたその時。河原に着き、まだ燃えていない森を前にしたその時に。
「ん、どうし……」
見つけてしまった。いや、見つかってしまったのかもしれない。
揺れる炎のようにぎらぎらと光る目、飢えた獣のように歯をむき出して笑う口に。
先ほど襲ってきた、あの男に。
「来たな……、虫けら共が!」
逃げきれた? 私の魔法で山火事が起きた?
本当は、全然違っていたじゃないか。今まで私は、あいつの誘導通りに動いていたのだというの?
「おい、あいつが……そうなのか?」
「……そ、そんな……」
「貴様は炎を放てるようだが、まるで気付かなかったようだな。俺も同じことが出来るということにな!」
私の心臓が早鐘を打ち、汗が頬を伝う。
その男は炎を纏った槍を右手に持っていた。それを光らせながら、私達のほうへと歩いてくる。
勢いよくうねりを上げる川を背に、じりじりと追い詰められていく。
「歯応えの無い奴らだ。虫けらが一人増えようが同じ事……。自分の無力さを悔いて死んでいくんだな!」
一歩、また一歩、間が狭まっていく。
悔しい、と思った。こんなにこの感情が起こるのも、あいつの言うように悔いることしかできないのも。
やっぱり魔法も武器も無しではこの有り様だった。戦う事のできない魔導戦士など、何の役にも立たない。
前もその辛さを味わって、それを克服したはずなのに。
「ティナ……」
男が距離を更に狭める。その中で、不意に松が話しかけてきた。
何、と答えようとしたところで、私の腕に何か重みのあるものが落ち、囁き声を聞く。
「これで……川を渡れるらしいんだ。使ってくれ」
ヘルメットのようなその形は、見覚えがあった。
確か、マッシュ達が川に潜る時に使ったと言っていたものだ。ガウがよく自慢していたのを覚えている。
「……俺はな、死んだ人間だった。今更生き返った意味はわからねえが……。
お前を逃がして死ねるならそれはそれで悪くないかもな」
松は、死んでいたのに生き返った?それはあまり分からなかったけれど……。
後者は、よく分かった。守ること、そのために戦うこと。それは私にとっても絶対に譲れないことだったから。
「さあ、早く行けッ!」
「何だ、最初はお前か? まあ結果は同じことだ! 今のうちに命乞いの台詞でも考えておくんだな!!」
ねえ、ロック。力が無くても、人を守ることってできるかな? ……できるよね。
なら……
「え……」
私は手を伸ばして、松の頭にヘルメットを押し込む。そして割り込むように、松とその男の前に立った。
そう、私は誓ったんだ。戦う力を取り戻したあの時……。皆を守る為に戦う、と。
「松、私も、同じこと思ってた……。だから、ごめんなさい」
巻き込んでしまって、最後は勝手に決めてしまって、ごめんなさい。
それと、大切なことを思い出させてくれて、ありがとう。
「私の仲間にも、よろしくね」
私は思い切り手を突っぱね、その体が深い川の急流に呑み込まれるのを見送った。
……皆も、どうか無事でいてくれますように。
そう思って、再び前を向いた。何もかもそれが最後だった。
◆
しえん
地獄で支援
410 :
だいりとうか:2008/09/09(火) 20:44:35 ID:HKbxNb5Y
: ◆jU59Fli6bM:2008/09/09(火) 20:41:49 ID:WvBUy6Rk0
眼下には物言わぬ肉塊となった少女の死体。それを照らすのは背後で赤く躍り狂う炎。
その辺りに撒き散らかされたのは、また例外もなく赤い、血。
鼻につくねっとりとした生臭さを味わうように、ルカはしばしの間それらを眺めていた。
「不思議なものだな。俺だけでなくあいつも、あの魔王とやらにもう一度生を与えられたということか……」
そう、彼もまた、死んだはずの人間だった。
自身の望んだ通りに悪を貫いた男は、この会場で目覚めた後も、いつもの感覚でいつも通り殺したのだった。
「だが、くだらんな……。再び得た命を他人の為に捨ててもいいとは。
弱い奴は死ぬ。逃げるだけの奴らに、生かす価値などありはしないわ!」
ルカは吐き捨てるように呟いた後、もう死体に用は無いとばかりに踵を返す。そして、河原の上を歩き始めた。
彼の目は横でごうごうと燃えさかる森さえも映さない。
ただ、名簿で見た名前が、ルカ・ブライトを打ち破った人物の名前が、彼の思考を支配していた。
「優勝したら元の世界に帰れる、か……。あいつらを始末して再びあの地を踏めるというのなら、それも面白いな」
ふと、ルカの口から笑い声が漏れる。
単調に音を刻む足の動きとは裏腹に、その声は段々と大きく、どす黒くなっていった。
「ふはは……ふはははははは!!! 覚悟して待っていろ、討ちとったはずの俺に殺される運命を!
そして貴様らも思い知れ、俺の味わった絶望をなッ!」
【ティナ・ブランフォード@ファイナルファンタジー6 死亡】
【残り50人】
【D-7 川 一日目 深夜】
【無法松@LIVE A LIVE】
[状態]健康、どんぶらこ
[装備]潜水ヘルメット@ファイナルファンタジー6
[道具]基本支給品一式、不明支給品0〜2(本人確認済)
[思考]基本:打倒オディオ1:ティナ……?2:アキラとティナの仲間を探す
[備考]死んだ後からの参戦です
※自分とティナの仲間について把握。ケフカを要注意人物と見なしています。
【D-7 河原 一日目 深夜】
【ルカ・ブライト@幻想水滸伝2】
[状態]健康
[装備]フレイムトライデント@アークザラッド2、魔封じの杖(4/5)@ドラゴンクエスト4
[道具]基本支給品一式*2、不明支給品0〜3(武器、回復道具は無し)
[思考]基本:ゲームに乗る。殺しを楽しむ。
1:会った奴は無差別に殺す。ただし、同じ世界から来た5人を優先
[備考]死んだ後からの参戦です
※魔封じの杖
使うと相手にマホトーンの効果、回数制限有り。普通に杖としても使えます。
※D-7北東の森林で山火事が起きています。周りのエリアにも広がる可能性があります。
411 :
だいりとうか:2008/09/09(火) 20:50:04 ID:HKbxNb5Y
22 名前: ◆jU59Fli6bM 投稿日: 2008/09/09(火) 20:46:13 ID:jKVYmCz.0
バイバイさるさんされてしまった……。
仮投下スレに残りを投下しました。どなたか代理お願いできますでしょうか
あと題名忘れていました。「死んだのにイキテルマン(×2)」でお願いします。
すみません、最初は山火事起こす予定なかったはずなんだが…
おかしかったら指摘お願いします
投下乙! ティナァァァァァ!!!
ルカ様きた! 初っ端から絶好調じゃないっすかw
ティナ頑張ったけど、相手が悪すぎた。ルカ様じゃ仕方ないわw
松の兄貴も登場! だけど前途多難なようですねー。
悪を見事に書き切った、緊迫した手に汗握る話でした。GJ!
投下乙。
ルカ様はやっぱり邪悪だ。ティナは無残。
ここだけの話、一瞬竜王剣が出てきたと思った。
投下乙。ルカ様流石です。
ていうかこのロワ、ヒロインクラスの死亡率がやべぇ
これで今予約されてるリンも死んだりした日には、もう立派なジンクスに……あわわ
投下乙
松が華々しく散るかと思ったがティナ死亡か…。
松頑張れ、超頑張れ。
投下乙
いつルカが出てくるかヒヤヒヤものだったけど・・・やはり逃げ切れなかったか
炎の中から現れるルカとか怖い、怖すぎる
しかし何が不憫ってティナの仲間が二人もゲームに乗ってる事だよー
じゃあ投下します。
砂漠は暑い、というイメージしかなかったのだが、夜の砂漠となると流石に少しは涼しいようだ。
砂漠での昼夜の体感温度差は凄まじく、それはオーブントースターのスイッチをオンオフと切り替えるかのように大きく変動する。
夜の砂漠に迷い込んでしまったら、日の出前にはなんとしてもここから抜け出さなくてはいけない。
朝になれば太陽が昇り、この砂漠という名の巨大オーブンのスイッチも捻られるのだ。
そうなってしまったら後は灼熱地獄だ。
照りつける太陽が肌を焼き、カラカラとした空気が喉を焼く。
終いには砂を踏みつける音に鼓膜を焼かれるような気にさえなる。
全てが、自分を包み込む森羅万象が敵と化すのだ。
頼れるのは水だけ。
もう水しか眼に映らなくなる。
ひたすら水を求めて、オアシスを捜し歩く木偶人形となるのだ。
そして目の前に池が見えたら、躊躇無く頭からダイブしてしまうだろう。
たとえその水の色が真っ赤でも、その池の横で鬼が金棒を持って手招きをしていても、だ。
信じられないだろうが、人間とはそういうものだ。
欲望とはそういうものなのだ。
気付いたら私たちの心に存在していて、私たちは欲望の小躍りに支配されるままに我を忘れる。
そして我に返ったときにはもう遅い。
自我を取り戻したそのときには既に、欲望は私たちの心から忽然と消えているのだ。
まるで初めから欲望なんてものは存在してなどいなかったかのように。
そして私たちは悩むのだ。振り上げたこの拳はどこに下ろせばいいのだ、と。
自分を責めようにも、その心に欲望がいないのなら叱りようがない。叱る対象がいないのだ。
こうして、人は反省という大事な作業をスキップせざるを得なくなる。
そしてまた心に欲望が姿を見せたとき、同じ過ちを繰り返すのだ。
ずっと、ずっと。反省することなく犬のように同じ場所をグルグルと回り続ける。
欲望とは、人間の宿す中で、尤も厄介な感情なのかもしれない。
しかしその悪魔の感情は時として、とは言っても非常に非常に稀な事だが、人々を幸福足らしめる。
彼女がそうだ。
彼女の欲望は世界を救った。
それは比喩でもなければ、勿論皮肉でもない。
文字通り、彼女はその心に棲まわせた欲望によって世界を救ったのだ。
彼女のその功績は『剣の聖女』として後世に語り継がれている。
大いなる厄災から世界を救った聖なる女騎士。
それは、神々が天地を創造したのと同系列の寓話として詠われていた。
だが、神話にまで上り詰めた少女のその実は、苦悩の日々であった。
剣など握った事すらないのに、望まぬ戦いに駆り出され。
親しい友だっていた。好きな男だっていた。そんな日々とも離れ離れになり。
終いには世界の為に命を絶つこととなる。
そこに『英雄』などいなかった。
人々の崇め続けた神話などありはしなかった。
現実にあったのは、『生け贄』となった少女の悲劇。
それだけ。
ただ『欲望』が強かった。それだけで……。
それだけで彼女は『生け贄』として殺されたのだ。
彼女の持つ『欲望』とは、『生きたい』という願い。
その願いこそが、『生け贄』の素質であった。
誰よりも『生きたい』と願い、そのために剣を振るった。
そこにいる皆を守り、皆と笑いあうことを望み、その希望を叶えるために苦しみ続け……。
その果てに少女を待っていたのは、『死』。そして永遠の『孤独』。
そして今、彼女は2度目の生を受ける。
『英雄』という鎖をから解放された彼女を待つのは……。
◆ ◆ ◆
「……きっついわね…………」
一刻も早く、砂漠からの脱出を。
その一心で歩き続けていたが、流石に疲れた。
夜だから若干涼しいとはいえ、やはりここは砂漠なのだ。決して住み良い環境とは言えない。
さらに見渡す限りに広がる砂、砂、砂。
全ての生命を拒絶するかのような地形に足を取られ、進む速度は遅くなるばかりか、疲労もどんどん蓄積する。
「殺し合い……か」
躊躇いながらも、砂の上に腰を下ろす。
砂で服が汚れる事を気にしている自分に気付いて、不思議な感覚にとらわれた。
戦いの中で、ずっと敵の血を浴び続けてきたはずだ。
汚れる事など気にしてはいなかった。そんな余裕などありはしなかった。
だが、今の自分は砂が付着する事にすら躊躇いを覚えているではないか。
まるで……ただの乙女だ。
「ただの、乙女……か…………」
そういえば、なぜ自分が生きているのだろう。
そんな疑問が今更ながら浮かんだ。
これは夢なのか、と疑った。
が、すぐにその可能性を考えるのを止めた。
夢なんだとしたら、そのうち覚めるのだから、考えるだけ無駄だ。
今は『これは夢なんかじゃない』と思い込んで行動すればいい。
これが夢じゃないのだとしたら、自分は魔王オディオによって生き返させられた事になる。
2度目の生を与えられたことになる。
「私、生き返ったんだ……」
とは言え、口に出してみても、いまいち現実感が持てない。
瞬きをして、目を開いたその瞬間に、またいつもの孤独な空間が広がるのではないか。
そんな予感がしてならなかった。
だが、この茹だるような暑さを感じる皮膚も。砂で汚れた両の手も、現実に存在しているのだ。
だとすれば、自分は本当に生き返ったのだろう。
「じゃあ、私は……やり直せるの?」
ただの乙女として、1人の人間として……もう一度生きることが許されるのだろうか。
服が汚れる事に不満を抱き、友人と河原で笑いあったり……。
好きな人と手を繋いだり……。
そんな生き方が許されるのだろうか。
だとしたら……。
「これはチャンスなのかな……?」
これは神様がくれたチャンス?
世界を救ったご褒美に、新たな命をプレゼントして貰えたのかもしれない。
だとしたら、彼女の望む事はただ1つ。
(生きたい……)
今度こそ、普通の少女として生きたい。
特別じゃなくていい。『英雄』なんかじゃなくていい。
重い運命から逃れて、ただ1人の少女として生きたかった。
ただ1つ気になるのは……魔王が言い放った言葉。
「殺し合い……」
魔王は言った。
生き残れるのはただ1人だけだと。
殺し合いに勝利した1人だけしか生きて帰れないのだと。
「何も、変わってないじゃない……」
彼女は『英雄』として犠牲になった。
生きたいが為に犠牲となったのだ。
そして今度は、誰かを犠牲になければならない。
誰かを殺さなくては生きられないのだ。
「そんなこと……」
本当に自分は、人を殺す事は出来ないのか?
自分に問いかける。
今までだって、剣を降るってきたじゃないか。
そこに高尚な理由などあったか?
そこにあったのは『生きる』という欲望だけ。
それは、今ここで殺し合いに乗る事と何も変わりはしないじゃないか。
「そう、何も変わらない……」
生きたいから、殺す。
もしそれが、悪なのだとしたら、自分が世界を救った事だって悪だ。
そう、同じなのだ。
この殺し合いと、自分の神話は……同じことなのだ。
だから、同じように……。
「ねぇねぇ、おねーさん。ちょこと遊ぼ!」
いつから少女はそこにいたのだろうか?
自分が考えに没頭していたからだろう、話しかけられるまでその存在に気付けなかった。
赤い髪をした幼き少女。
おそらく、この殺し合いのことなど何一つ理解してはいないのだろう。
無邪気に遊ぼうと、何度も何度も話しかけてくる。
その眼は純粋そのもので、頭の中すら見通せるのではないかと思えるほど透き通っていた。
この少女が、自分の最初の被害者となるのか……。
アナスタシアの決断は早かった。
もしかしたら、悩みたくなかったのかもしれない。
殺してしまえば、踏ん切りがつくから。
何も知らない少女の首へ、両手を伸ばす。
一直線に伸ばしたはずの手は、フルフルと小刻みに震えていた。
「ごめんね……」
「なんで謝るの?」
生きるためには仕方がない事なのだ。
心の中で必死に言い訳を繰り替えすい。誰に向けての言い訳なのだろうか。
おそらくは、自分への弁解だ。
殺さなければ、生きられないのだから、仕方がない。
そう自分に言い聞かせなければ、この心は容易く折れてしまう。
2度目の灯を、無駄に消してしまう。
「仕方ないの……仕方ないのよ……」
うわ言の様に、口から漏れては煙のように消える言葉。
あのときだって、世界を救ったあのときだってそうだった。
生きるためには仕方がないと、自分に言い聞かせながら戦う日々が続いた。
そうしなければ、いつか折れてしまいそうな気がしたから。
あのときと同じ。同じなんだ。
怖がる事なんて何もない。
世界を救ったあのときと、何にも変わらない。
もう一度、同じことを繰り返すだけ。
「おねーさん、ちょこと結婚してくれる?」
不意にぶつけられた少女の言葉に、右手も左手も「首を絞める」というその役割を忘れて停止した。
この少女は何を言っているのか。
その疑問が石つぶてとなり、『自分への言い訳』という純水で満たされた意識の池に、大きな波紋を生じさせた。
『おねーさん』。これは間違いなくアナスタシアの事だろう。
『ちょこ』。これは、最初に少女が放った一言から考えて、少女の名前だ。
彼女は『ちょこ』という名前らしい。
そして問題は『結婚』という言葉。
アナスタシアも目の前の人物の性別くらいは見破れる眼を持っているつもりだ。
『ちょこ』は女の子だろう。これは間違いない。
だとしたら、女であるアナスタシアに結婚を申し込むというのはどういうことなのだろうか。
(そ……そういう世界も……あるにはあるらしい……けど……)
女同士で、それもこんな幼女相手に……。
そんな光景を想像してしまった。
一度脳内に生じたHなイメージは、彼女の脳細胞をたちまち桃色に染め上げていく。
(あーダメダメ! そうじゃなくって……)
フルフルこ頭を左右に振り回して、煩悩を空気中に逃がすと、少女の発した言葉の意味をもう一度考え直す。
……そもそも、性別がどうとか言う前に、出会って1分も立たないうちにプロポーズをする人間がいるとは思えない。
つまり、『ちょこ』という少女は、明らかに可笑しい事を言っているのだ。
そしてそれこそが答えだった。
つまり彼女は『結婚』の意味を知らないのだ。
「ちょこちゃん、結婚ってどういうことか、知ってる?」
少女に伸ばしていた両手を引っ込めて、尋ねる。
「知ってるよ。ずぅーと一緒にいることなのー」
なるほど、見えてきた。
彼女にこの言葉の意味を教えた人物が父親か母親か教師は知らないが、その人物にそう教わったのだろう。
そして、そのせいで彼女は今でも『結婚』の意味を勘違いしているのだ。
「だめ……なの?」
真ん丸い眼をウルウルさせた少女が尋ねる。
勿論少女と結婚するつもりなどない。
自分はこの殺し合いを生き残るのだから。
だが、決心が鈍らされたのも事実。
今のアナスタシアは、どうにも少女を殺そうという気分にはなれなかった。
「……いいわよ。結婚しましょうか」
特に何を考えてたというわけじゃない。
ほんの気まぐれである。
しばらく彼女と行動を共にしてみるのもいいかもしれない。
殺したくなったときに、殺せばいい。
こんな少女、特に害はないだろう。
「ほんと? わーいのー!」
嬉しそうに砂を巻き上げて走り回る少女。
その姿は、殺し合いに乗ったアナスタシアの眼にも、微笑ましい光景として映った。
「あ……」
少女がその動きを止めると、舞い上がった砂塵が雪のように降り注いで髪を汚す。
ちょこは何かを思い出そうとしているようで、うーうーと唸りながら頭を抱えていた。
「どうしたの……?」
「あのね、結婚したら、2人でいろんな所へお出かけするんだって父さまが言ってたの……」
「もしかして、新婚旅行のこと?」
「そうなの! 『しんこんりょこー』なの!」
新婚旅行か……。
どうせならば、殺し合いに乗る前に色んな施設を見ていくのもいいかもしれない。
どうせ行く当てもない。
せっかくの新たな人生なんだし、最初くらいエンジョイするのも悪くないか。
「そうね、取り合えず、この砂漠から抜け出しましょ」
「分かったの! 熱いの嫌いだぁー!」
はしゃぐ少女の手を引いて、緑の大地目指して歩き出す。
「おねーさん、ずっと一緒だよね?」
ちょこはアナスタシアに言った。
ずっと一緒にいて欲しいと。
「えぇ。ずっと一緒よ」
アナスタシアはそれを軽い気持ちで受け取った。
適当な空返事で返したつもりだった。
生きるためには、彼女もそのうち切り捨てなくてはならない。
ずっと一緒にいるつもりなど全く無かった。
「ほんと? 約束だよ」
「……」
ちょこの瞳の奥に、恐ろしいものをみたような気がした。
アナスタシアは、ちょこが自分に鎖を巻きつけている、そんなイメージを感じた。
まるで、少女から自分は逃げられないのではないか、という気にさえなった。
アナスタシアは知らない。
ちょこが失ったもの、ちょこの求めているものを。
ちょこの封印した悲劇を。
アナスタシアは知らない。
今回命拾いしたのは、自分の方だということを……。
【G-4 砂漠 一日目 深夜】
【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:不明支給品1〜3個、基本支給品一式
[思考]
基本:生きたい。そのうち殺し合いに乗るつもり。
1:砂漠からの脱出。
2:ちょこと施設を見て回る。
[備考]
※参戦時期は不明です。
※名簿は未確認。
※ちょこを普通の少女だと思っています。
【ちょこ@アークザラッドU】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:不明支給品1〜3個、基本支給品一式
[思考]
基本:おねーさんといっしょなの!
1:『しんこうりょこー』なのー!
[備考]
※参戦時期は不明。
※殺し合いのルールを理解していません。名簿も見ていません。
以上、投下終了です。
投下乙ー
やべぇ、まさかちょこを怖いと思う日がこようとは…。
しかしいつマーダーになるかわからないが、アナスタシアはとんでもな爆弾を背負ってしまったな。
◆jU59Fli6bM氏
投下乙
うーん、もうちょっと加筆が欲しいかも、一方的過ぎる、トランスによる離脱などは考えなかったのか?とか思うし。作中見る限りトランス使えるみたいだし。
まあ、魔法なし武器なしでルカ様に勝つのはさすがに無理だとは思うが。
◆Rd1trDrhhU氏
投下乙
最強キャラキター!Hなお姉さんはマジ命拾いしたな、その幼女はとんでもない厨スペックだぞー。
親友の参加に気づいたらどうするのか、お姉さんの今後が気になるところ。
あと、ちょこの状態表が「しんこうりょこー」になってます。
投下乙
ちょこヤバイだろwww
アナスタシアが今後どうなっていくのかも興味深い
投下乙。
ヒャッハァ! 即席百合カップルのできあがりだぁ。
アナスタシアがうっかりキャラに見えるぜ。
このロワ名簿の未確認者多いな。
◆n95k6APn4k氏
「デスピサロ」にて
すみません、すっごくいまさらですが、E−6に森林はなかったです。山ですね。
◆O4VWua9pzs氏、◆jU59Fli6bM氏
いままでの話を見て思ったのですが、ルカ様とヘクトルの鎧はどうします。
バランス崩すほどじゃないけど支給品でなくデフォで装備してる感じがしたので、二人とも後ひとつまでなら支給できますし。
もっともヘクトルのほうの鎧はもうだめだが。
>>429 すいません、wikiのほうで直しておきます
それでは、投下します
一面に広がる夜の雪景色。
故郷であるイリアでは珍しくもない光景だけど、ここの雪にはイリアと違って
ただ無機質で、気分が悪くなるほど冷たいだけ。
月明かりで照らされる雪達が、私を恐怖の中に手招きしてるようで、不気味だった。
怖い。今も恐怖で、心臓が張り裂けそうになる。
あの魔王オディオの眼光に晒され、私は動けなくなった。
首を飛ばされた人達の無惨な姿を見て、絶望が私を包み込んだ。
人が死ぬところなんて、今までも嫌と言うほど見てきてるはずなのに。
逃げられない――ネガティブな想いだけが私の中を渦巻く。
どうすれば。私はどうすればいいんだろう。
私は一人ぼっちだ。いつも一緒だったヒューイも、ここにはいない。
身体が震える。全身の寒気が治まらない。この雪と気温のせいだけじゃなかった。
私はどうすれば……リン……ヘクトル様……
……そうだ。この島に召喚されたのは私だけじゃない。
私の大切な人達もまた、同じようにこの殺し合いに参加させられている。
リン、いえリンディス様。そして、ヘクトル様。
こんなことに巻き込まれて死んでいい方ではない。
私は震えを抑え、立ち上がった。
リンディス様やヘクトル様、エリウッド様や多くの仲間と共に厳しい戦争を戦い抜いて、
私だって強くなれたと、少しは自信が付いたと思う。
だから……こんなことに屈するわけにはいかない。
私の望み。それは……
リンディス様とヘクトル様、お二人をお守りすること。
そのために、私はどうすればいいの?
今、自分にできることは……?
私は考えた。大切な人を守る術を。
私なりに、考えに考えて……そして、決意した。
手に握られた、一本の槍。
これがあれば、戦える。戦ってみせる。
ヒューイもいないし、空と同じように戦えないかもしれないけど。
私は、覚悟を決めた。
自分の手が、血に汚れる覚悟を――
◆ ◆ ◆
孤島を舞台に、最後の一人になるまで殺し合い。あまりにも悪趣味で馬鹿げている。
こんな真似をする奴は、それこそあの外道・ケフカくらいのものだと思っていたが。
だがあの魔王オディオとやらは、ケフカとは違う類の人間であることは見て取れた。
ただの悦楽のためにこの殺戮の宴を開いたようには、私にはどうにも思えない。
上手く表現できないが……何かの怨念のようなものすら感じ取れた。
彼に恨まれるようなことをした覚えはないのだがな。
参加者名簿に目を通す。
そこには、我が自慢の弟・マッシュを始めとする、仲間達の名前も記されていた。
ティナ、セッツァー、ゴゴ。そして……シャドウの名も。
瓦礫の塔脱出の時に姿がなかったため、彼の身を案じていたのだが。
そうか……彼は生きていてくれたか。
仲間の生存を喜ぶ……しかし、それに浸っていられるのは一瞬でしかなかった。
そのすぐ下に記されていたのは……忌まわしき、ケフカ・バラッツォの名。
……何の冗談だ、これは。嫌な汗が額に滲む。
奴は我々がこの手で倒したはずだ。あの瓦礫の塔での最終決戦で、確実にとどめを刺した。
あの男の異常なしぶとさを考えても、生きていたなどとは考えにくい。
……まさか、これもあの魔王オディオの手によるものだというのか。
奴すらも蘇らせ、駒として扱えるだけの力を持っているとでも――?
……柄にもなく、思考が弱気に傾いている気がする。
今は、オディオの理由や都合、ケフカ復活の真意を考察する場合ではないだろう。
どんな理由があろうが、こんな理不尽を馬鹿正直に受け入れてたまるか。
わざわざ奴の言う通りに殺し合いに乗ってやる道理など微塵もない。
私、エドガー・ロニ・フィガロが為すべきことは決まった。
打倒オディオ。そのための対策を練る。
そうとなれば、少しでも多くの戦力を集める必要がある。
まずは一刻も早く、5人の仲間との合流を図りたい。
それに、最初に召喚された部屋の中には、私の仲間以外にも腕の立ちそうな連中は多く見られた。
彼らも可能な限り味方に付けたい。私同様、殺し合いに抗う意思を持った者がいると信じて。
だがオディオへの対抗戦力を集めたところで、それだけでは勝てない。
首に装着された首輪だ。これがある限り、我々は奴に手出しはできないのだ。
ならば、こいつの解除も急務といえよう。
首輪は機械仕掛けのようだし、そうなれば……やはり機械屋である私の出番だろうな。
こいつを解析するべく、そのための設備・資材を探すことも考えたい。
あとできることなら、同じように機械の知識に詳しい者とも合流できればいいが。
そういえば、あの部屋で私の近くにいた眼鏡の女の子が思い出される。
いかにもなメカニック然としていた風貌。見るからに、機械関連のスキルを持っていそうだった。
是非ともお近づきになりたいところだ。
あとは……ケフカの打倒。
奴が本物だとすれば、十分に警戒しなければなるまい。
もし奴の取り込んだ三闘神の力が健在だとすれば、危険どころの騒ぎではない。
奴の力は、世界を一度壊した。あの悲劇を、二度も繰り返させるものか。
とりあえず、こんなところか。大体の行動方針は決定した。
……何?やけに場慣れしていないかって?
そうだな。こう見えても、それなりの修羅場を潜り抜けてきたという自負はある。
崩壊後の世界の中で、海賊の真似事までして見せた私の適応力を舐めてはいけない。
それに私も国王の端くれ。水準以上の判断力と決断力は持ち合わせているつもりだ。
さて……まずは自分に支給された道具を確認することにする。
万一敵に襲われた時にも対処できるよう、身を守る術は確保しておかねばならない。
自分に支給されたアイテムは二つ。
巨大な斧と、小型の重火器。他の連中がどういったものを支給されているかは知らないが、
武器としてはかなり強力なものを引き当てていることは間違いない。
無論、こいつで人を殺すような真似は避けたいところだが。
まず、巨斧のほうだが……
かなり重量があり、こいつを使いこなすには相応の腕力と技量を要するだろう。
斧を武器として使ったことはない。この物騒な得物、私に使いこなせるか。
いや……生き延びるためにも、使いこなして見せねばなるまい。
それにしても、不思議な斧だ。月明かりに照らし出される刃は、危険な輝きを放っていた。
素人目にも、一般に出回っているような凡百の斧とは違う、特別な斧であることが見て取れる。
……この悪趣味な殺人ゲームなどには、過ぎた代物だ。
そして重火器……小型のバズーカ砲か。
我が機械王国フィガロでも、見たことのない技術系統の火器だ。
どうやら民間で造られた物のようだが、技術的にはかなり洗練されていると見た。
未知の機械を前に、マシーナリーの血が疼く。
その場に腰を据え、私はバズーカを手に取り調べ始めた。
武器として十分に使いこなせるよう、性能を熟知しておく必要がある。
いや、あるいはそれ以上に――
今思えば、それは殺戮の舞台に放り込まれた不安を紛らわせる意味もあったかもしれない。
つい機械いじりに没頭してしまった私は、一時的に周囲の状況に気を配ることを怠ってしまった。
ちょうど、バズーカの引き金に手をかけた、その時――
がさり、と雪を踏む音が聞こえた。
背後からだ。それもそう遠い距離ではない。
また同時に、自分に向けられた鋭い視線にも気付く。
――それは敵意、と呼んでも差し支えはない。
「誰だ!?」
反射的に振り返り、その敵意を発する対象に砲口を向ける。
「あ……」
そこには、一人の女の子が立ち尽くしていた。
紫の髪で、肩当と胸当を身に着けた、どこか気弱そうで……
私がその少女について判り得たのはそこまでが限界だった。
それは時間にして、ほんの1秒にすら満たない。
そして、それ以上の時間を取ることはできなかった。
私は、無意識のうちに神経を張り詰めすぎていた。
彼女に振り返った瞬間、つい剣を握る要領で手に力を込めてしまった。
……引き金に指をかけた状態で、だ。
その迂闊な行動で導き出された結果、それは――
――暴発。
惨劇が、起きた。
ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ
「きゃあぁぁっ!?」
「うぉわっ!?」
ほぼ同時に、私と少女の口から驚愕の声があがった。
無理もない。砲口から発射された弾は、こちらの予想の斜め上をいく代物だった。
ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ
ヒヨコだ。大量のヒヨコが、前方に撒き散らされる。
ヒヨコの形をした弾が、バズーカの砲口からマシンガンの如く連射される。
……何だこれは。
あまりにもカオスなその光景に、私はバズーカを構えた姿勢のまま呆然と立ち尽くしていた。
「い、痛い痛い!いやぁぁぁぁぁ!!」
少女の悲鳴で、私は我に返る。
目の前では、少女が涙目で、しゃがみ込み両手で庇うように頭を押さえていた。
そしてそこに容赦なく降り注ぐ、ヒヨコの雨あられ……
「い、いかん!止まれッ!」
必死で止める術を探すも、ヒヨコは際限なく砲口から飛び出してくる。
くっ、どうなっているんだ!?こいつはどうすれば止められ――
べちーん!……と、爽快感すら漂う派手な音がした。
それと同時に。
「ぶべっ!?」
如何とも形容しがたい少女の声が響き渡った。
思わず、少女に向き直る。
「……あ」
ヒヨコの一体が、彼女の顔面に綺麗に直撃したようだ。
少女は目を回し、顔を真赤に腫らしてその場に倒れこんでいた。
その一発を最後に、ヒヨコの発射も止まっていた。
……やれやれ、なんというザマだ。
……待てよ?
よく考えたら、単に砲口の向きを彼女から逸らせばよかっただけの話か……?
昭和ヒヨコッコ砲。
ヒヨコ弾なる怪しげな弾を連続発射する小型バズーカ砲……らしい。
この中のどこにあれだけのヒヨコが入っているのかは定かではない……
そのナゾに満ちた構造については、とりあえず後々調べるとして。
これを全弾相手に直撃させれば、魔導アーマーの力に匹敵する殺傷力を有する……かもしれない。
一発ごとの威力はそれほどでもなかったのが、今回は幸いだった。
気を失ったままの少女の腫れて赤くなった顔を、濡れたタオルで冷やしてやる。
大した怪我ではなくてよかったと思う。
こんな間抜けな武器で殺された日には、死んでも死に切れまい。
それにしても、先程無様に晒した自分の醜態……自己嫌悪すら抱く。
機械の使い方を誤り暴走させた上、女の子に怪我までさせてしまうとは……
せめてもの名誉挽回、アフターケアは万全に行っておかなければなるまい。
彼女を落ち着かせるためにも。
少女の介抱を続けながら、私は思う。
この出で立ち、見習いの騎士か傭兵か。
だが彼女の無垢で幼い寝顔は、あまりにも戦士には似つかわしくない。
こんな子にまで殺し合いを強要させるとは……と、オディオへの憤りは込み上げてくる。
それでも……警戒はしておいたほうがいいだろうな。
何故なら、彼女は――
「ぅ……ん……」
少女の目から、涙が一筋零れ落ち、月の光で輝いた。
……やれやれ。こういうものを見せられると、どうにも弱い……
「ヒヨコ……ヒヨコが……ぅぅ……」
……すまん、私が悪かった。
ヒヨコが……大量のヒヨコが襲い掛かってくる。
そして今も、私の頭の上をヒヨコがくるくると回ってるような気がする。
ヒヨコが怖い。ああ、蜂に追いかけられた苦いトラウマが蘇ってくる。
私が悩み、固めた決意が、こんなに簡単に跳ね返されてしまうなんて。
これは、ヒヨコの神様が下した私への天罰なの?
そう……人の道から外れようとしている、私への。
……だけど、私はもう決めたの。
どんなことをしても、お守りするって。
リンディス様。
私の仕えるキアランの公女様にして、私が守るべき人。
そして何よりも、私のかけがえのない大切な親友。
ヘクトル様。
オスティア侯弟にして、私がずっと憧れてきた人。
こんな私を受け止めてくれた……大切な人。
なんとしても、お守りしたい。お二人を、私の大切な人達を。
そのためには……自分の手を汚すことも厭わない。
ごめんね、リン……きっと軽蔑するよね、こんな私を。
でも、それでも構わない。生きていて欲しいから、死んで欲しくないから。
お二人を守るために、私は他の皆を手にかける。
リン、ヘクトル様……お二人以外の、全てを……
ふいに、女の子の顔が頭を掠めた。
――ニノ。
戦いの中で、友達になった女の子。
お母さんに裏切られて、親しい人達との戦いを余儀なくされて。
そんな辛い、私なんかよりもずっと辛い過去を背負っているのに。
あの子は気丈にもそれに負けず、明るい笑顔を振りまいている。
私に……できるの?彼女を、手にかけることができるの?
迷っちゃダメだってわかってるのに。
でも……あの子の笑顔が過ぎる度、心が締め付けられるように痛くなる。
私は――
438 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 03:58:32 ID:mMMFipXX
支援
「……ぅ……ん……?」
飛んでいた意識が戻った。
私は、ゆっくりと目を開ける。
月の明かりが罪悪感を感じさせるほど眩しくて、そして……
「気が付いたかな、お嬢さん」
私の前には、見たことのない男の人の顔があった。
目と目が合った瞬間――私は全身が強張り、そのまま完全に硬直してしまう。
そう、まるでヒヨコ……じゃない、ヘビに睨まれたカエルのように。
「ひ……っ!?」
ああ、ダメ。いつもこう。
男の人を前にすると怖くなって、身体が拒絶してしまう。
私は固まった右手をなんとか動かして……その手に槍が握られていないことに気付く。
「ぁ……ぁ……」
顔が青ざめる。目には涙が滲む。
その手に武器も何もない私は、あまりにも無力。
どうしよう。私は殺されるの?それとも――
いや、怖い。助けてリン……お姉ちゃん……ヘクトル様――!
「待ってくれ、怯えなくてもいい。
君に怖い思いをさせてしまったことは、心から詫びさせてもらう。すまなかった」
……返ってきたのは謝罪の言葉だった。
この人の言葉は多分、紳士的と呼べるものだと思うけど。
「あ、あの……え、と……あ、あなた、は……」
ただ、私の中に根付いた男の人への抵抗が、それを素直に受け止められない。
ましてや、ここは殺し合いの真っ只中。見ず知らずの人を簡単に信用できるわけない。
「ああ、レディに対して自己紹介が遅れるとは失礼した。
私はエドガー・ロニ・フィガロ。魔王オディオ打倒のための仲間を探している」
だけど、この人……エドガーさんの口にした言葉が、私を揺れ動かした。
オディオの打倒……そういえば、その発想はなかった。
でも、そんなことができるの?逆らえば、首を飛ばされるのに。
何より、遠くから見ているだけでも、私は動けなかったほどなのに……
「よければ、君の名前も聞かせてくれないだろうか?」
「わ、私は……フロリーナ……
イリアの天馬騎士見習いで……その、今は、キアラン侯爵家に仕える、身です……」
言われるがままに、私も名乗る。気付けば、やっぱり私は状況に流されてた。
「フロリーナか……素敵な名前だ。ここで君と出会ったのも何かの縁。
君さえよかったら、私と共に行動しないか?」
「え?いや、あの……」
「この物騒な場所を、君のような美しいお嬢さん一人で歩かせるには忍びない。
是非とも、君を守らせてはもらえないだろうか?先程の侘びの意味も兼ねて、ね」
え、えーと、この人何言ってるんだろう、頭でも打ったんだろうか。
どう返答すべきか、私は言葉を詰まらせる。
もしこの人の言う通り、オディオを倒せるのなら……私は――
その時。
エドガーさんが携えている一本の斧が、私の目に入った。
あの斧は……知っている。
天雷の斧『アルマーズ』。
ヘクトル様が、過酷な試練の末に手にした神将器の一つ。
どうして、これがここに?
「ん?この斧を知っているのか?」
私の視線に気付いたのか、エドガーさんが尋ねてくる。
「い、いえ……何でも、ない……です」
気付かれないように、慌てて誤魔化す。
深呼吸を一つ。落ち着いて、落ち着くのよフロリーナ。
そうよ……私はリンディス様とヘクトル様を守る。私はそう決めたはず。
気をしっかり持って。ヒヨコやエドガーさんに惑わされちゃダメ。
エドガーさんの持つアルマーズは、揺れ動いていた私の決意と覚悟を思い出させてくれた。
「わ、わかりました……お、お願いします……」
震えを抑えて、エドガーさんの申し出を受け入れる。
アルマーズは、ヘクトル様の大きな力になる。見逃すことなんてできない。
何とかして、ヘクトル様の下に届けなくちゃ……
しばらくの休息の後、私達はこの場所を発つことになった。
「いつまでもここにいるわけにもいかない。
まずはここから近いA-3の城に向かい、そこで互いの詳しい情報交換を行おう。
目立つ場所だけに、他の参加者が集まっている可能性もあるからな……
と、大丈夫か、立てるか?」
エドガーさんが、手を差し伸べてくる。
少し間を置いて……私は丁重にお断りした。
「あ、あの……自分で、立てますから……」
そう言って、さっきのヒヨコでまだ半分抜けたままの腰を隠しながら、私は立ち上がった。
今の私にできる抵抗なんて、そのくらい。
リンを、ヘクトル様を守る。
そのために、他の人達はみんな殺す。
それが、私の決意。
……。
私、こんなことで大丈夫なのかな……
もしかして書きながら投下?
◆ ◆ ◆
少し話してわかったが、彼女は男性を極端に苦手としているようだ。
おどおどした喋り方と必要以上の怯え方、殺し合いで不安になっているだけではないように思える。
とはいえ、久しぶりのせいか、私の口説きのテクニックも錆付いているようだな……
さて、彼女についてわかったことといえば、もう一つ。
残念なことに、彼女はこの殺し合いに乗ってしまっているようだ。
私の目とて節穴ではない。
彼女は思っていることが表情に出すぎる。これほどポーカーフェイスから程遠い子も珍しい。
私の持つ斧『アルマーズ』を見た時もそうだ。
彼女は誤魔化していたが、その目の色が少なからず変わったのを私は見逃してはいない。
大抵の人間なら、少し勘を働かせれば、彼女の真意はすぐに読み取れるだろう。
フロリーナ。
確かに彼女は気弱で、戦士には似つかわしくない少女ではある。
それでも、実力的には一人前と呼べるだけのものを持っていると思う。
この雪の中を、あの重い槍を抱えて、気配を消して歩ける程度の実力は。
……無論、あれだけの接近を許したのは、私が警戒を怠っていたせいもあるのだが。
いずれにしても、彼女は今後も警戒する必要はある。
だが私は、そこまでわかっていながら……あえて、危ない橋を渡ろうと思う。
「フロリーナ、これを君に返しておく」
そう言って、私は彼女の持ち物を返す。
そう……彼女が武器として持っていた、槍もだ。
「え……」
目を丸くする仕草に、思わず笑みが浮かぶ。本当に、わかりやすい子だ。
ちなみに、彼女の持ち物は調べさせてもらっている。他に武器らしき物はなかった。
この槍以外に警戒すべき道具はないと見ていい。
彼女は思っていることが表情に出すぎる。
殺し合いに乗る意思とは別に、強い迷いや葛藤があることもまた見て取れた。
本人は覚悟を決めたつもりかもしれないが……まだ、悪魔に魂を売り渡しきれてはいない。
それ故に、私は彼女の良心を信じ、槍を返した。
無理に理由をつけて身を守る術を取り上げては、逆に疑心を煽りかねない。
この極限的状況下で、そういった行為は彼女にとっては逆効果ではないかと判断した。
殺し合いに乗る――
私としては、その点を責めるような真似はしたくない。
あの惨劇を目の当たりして、平静な思考を保てる人間は多くはないだろう。
怖くなって一人で隠れるか、あるいは正気を失い殺人に走ってしまうか。
それが、普通の反応だ。私のように抗おうとする者の方が、むしろ珍しいだろう。
ただ……彼女はそういった混乱のためだけに殺し合いに乗っているとは思えないのだ。
その辺の事情は、追々尋ねてみるとして。
ここは一つ、彼女のあの涙を信じてみたいと思う。
……やれやれ。私も甘い……
【A-4 雪原 一日目 深夜】
【エドガー・ロニ・フィガロ@ファイナルファンタジー6 】
[状態]:健康
[装備]:アルマーズ@ファイヤーエムブレム烈火の剣
[道具]:昭和ヒヨコッコ砲@LIVEALIVE、基本支給品一式
[思考]
基本:ゲーム阻止・打倒主催
1:A-3城へ向かう
2:フロリーナと情報交換(彼女への注意は怠らない)
3:仲間と合流・戦力の結集
4:首輪の解除。そのための資材・人材の調達。眼鏡の少女(ルッカ)が気にかかっています。
5:ケフカを警戒・打倒
[備考]:
※参戦時期はクリア後
※フロリーナの真意に漠然と気付いています
【フロリーナ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康。顔面に軽度の腫れ
[装備]:デーモンスピア@ドラゴンクエスト4
[道具]:不明支給品1〜2個(確認済。武器は無し)、基本支給品一式
[思考]
基本:リン、ヘクトルの生還
1:リンとヘクトルを除く全参加者の殺害
2:アルマーズをヘクトルに届ける
3:ニノに対しては……保留
[備考]:
※ニノとは支援が付いています。
投下終了。
すいません、途中でパソコン止まって投下が遅れました
昭和ヒヨコッコ砲、少し独自解釈が入ってますけど大丈夫かな
投下乙!
ヒヨコきた! なんというファンシー凶器www
フロリーナがマーダーですか。意外でしたが、FEの世界観では誰もが殺しに乗る理由がありますからね。
そして支援はニノ。ヘクトル→フロリーナ→ニノという複雑な連鎖は何かと利用できそう。
エドガーもフロリーナの異変には気付いてるようですね。仲間たちの中でも、精神は一番大人ですからね。
いろいろな複線が見事に張り巡らされた、まさにフラグ祭りの1話でした。GJ!
支援が付いてるとしかいわれてないからニノB、ヘクトルAなのはありなんじゃね?
支援ってのは良く分からないんだけど、要するに別世界から連れてこられたってこと?
支援っていうのはゲームシステム…だな。
友好度みたいなもので、C→B→Aの三段階。
Cが1ポイント、Bが2ポイント、Aが3ポイントと考えて、
合計5ポイントつけることができる。
烈火の場合は一部キャラが支援Aのままゲームクリアで後日談で結婚したりする。
ちなみに参加者間の支援は
リン―フロリーナ
リン―ヘクトル
ヘクトル―フロリーナ
フロリーナ―ニノ
ニノ―ジャファル
ってのがあるな。何気にフロリーナ多い。
会話の内容からニノとはBと思われるが、別にCでも可。
ずっとそばに〜と言っていることと矛盾感があるからAとは考えにくい。
ついでにリンのことをリンディスと言い直してるから、リン―フロリーナ間はB以下。
ヘクトルにお礼を言う描写があったならA確定なんだがな…
ニノがジャファルとAじゃなかったり、フロリーナがヘクトルとAじゃなかったり、
ニノとフロリーナに支援が付いてなかったらパラレルワールドからきた、ということになる。
投下GJ!
>アナスタシア、『手』を繋ぐ
ちょこはどこまでいってもちょこ…と思ったら
最後に何とも言えない不気味さを見た気がする…
設定だけなら相当やばいもんなwそしてアナスタシアさん、幼女相手に何をw
>いわゆるマーダーには向かない性格
エドガーはさすが大人の貫録、そしてちゃっかりルッカに目を付ける手の早さ…もとい眼力も見事
何より昭和ヒヨコッコという選択が素晴らしすぎるww
マーダー増えたけど、上の二人はなんか苦労しそうだw
投下乙
フロリーナがマーダーと対主催どっちに傾くか、ちょっとハラハラだぜ
エドガーイイ男w
かなりリーダーシップを発揮してくれそう。今後に期待大
投下乙!エドガーさん、さすが王様だ。
かっこいいです。
投下乙!
ヒヨコはフロリーナのトラウマになったんだろうかw
・・・ああっ!?まさかネタキャラ化の兆候!?
毒吐きBBSでのネタが現実になるのか!?w
投下乙です!
エドガーいい男すぎる。
続きが楽しみだな
急にレスがストップしたw
投下されるまでネタ振ってみる。
お題は【支給品】
すまないが誰か地図をJPEGで上げてくれないか?
携帯からだとPNGは見れないんだ
>>426 遅くなりましたが、指摘ありがとうございます。wikiで直しておきます
wikiに地図と現在地表のってるけど、ちょっと大きすぎない?
ページ右の更新履歴にまでかかってるし
シュウ、マリアベル様投下します。
―――――わらわは唯一にして絶対・究極の真の支配者じゃ。
ファルガイアを支配者を名乗る伝説のイモータル、マリアベルは憤慨していた。こんな悪趣味な催しに、そしてそれ以上に支配者たる自分が支配される側に回った事実に。
彼女は名簿に目を通していた。名簿にはティムを除いた元ARMSメンバーにあの変なトカゲ、そして死んだはずの昔の親友の名前が綴られていた。
「なにゆえアナスタシアの名前があるのじゃ?」
―――今は考えていても仕方ないか。
アナスタシアの名前のことは気になるが判断材料が足らん。それよりもいまはあの魔王、目にものを見せてくれるわ。
「少しいいか」
不意に声をかけられた。
◆ ◆ ◆
声をかけた男――シュウはこんなふざけたことに参加する気はなかった。
オディオを倒す。それが今回のミッション。そして行動を始めた矢先。マリアベルを見つけた。
「少しいいか」
この少女、只者じゃないな。ちょこと似た気配がする。だが、殺し合いに乗るような目はしていないな。
「あの魔王を倒すため、一緒に戦ってくれ」
「『一緒に戦ってくれ』か。お主、その言葉に偽りないな?」
「ああ」
「ならば、約束じゃ。魔王を打倒する為に共に戦ってくれるな?」
「約束しよう」
「それを聞いて安心した」
「……シュウだ」
「わらわはマリアベル。マリアベル・アーミティッジじゃ」
◆ ◆ ◆
「約束しよう」
「それを聞いて安心した」
いつだったかアシュレーとした約束を思い出す。彼は約束を守った。そして人間が持つ可能性を感じた。
……わらわも甘くなったの……。
シュウとの情報交換もそこそこにお互いの支給品の確認を始めた。
わらわの支給品はクレストグラフが5つ、そしてARMではない小さな銃に片刃の剣、どれもわらわには無用の長物じゃ。クレストグラフはリルカに会ったら渡してやるか。
シュウの奴は謎の機械にわらわの着ぐるみ、元艦載式磁力線砲―――リニアレールキャノンが支給されておったわ。
驚いたことにシュウのやつはそれを軽々と持っておった。恐ろしい豪腕じゃ……。
それにしてもあの機械興味あるな。着ぐるみも日が昇れば必要になるじゃろうし…。
「シュウ、その機械と着ぐるみをこの銃と片刃剣と交換してくれぬか?」
◆ ◆ ◆
どうやら彼女は異世界の者らしい。そうでなければ、あの『大災害』を知らない者なんていないだろう。
マリアベルは異世界に身近だったようで驚いてなかったが。俺には驚かされる事実だった。
情報交換を終えお互いの支給品を確認している最中。
「シュウ、その機械と着ぐるみをこの銃と片刃剣と交換してくれぬか?」
マリアベルから支給品の交換を頼まれた。断る理由も無いし交換に応じたところ、交換されたのは親友の刀だった。
―――やはり使えそうなものはすべて奪われているようだ。
不安がよぎる。この場所、ただ強いだけで生き残れるところでは無い。すぐに熱くなる弟子に喧嘩っ早くて頭に血がのぼりやすい親友、リーザも甘さが命取りになるかもしれん。
ちょこは……まあ大丈夫だろう。
「マリアベル、一つ気をつけて欲しいことがある」
これは注意しなければいけないことだ、彼は濡れ衣を着せられて指名手配された仲間を知っている。そのために無駄な争いがあったことも。
「扇動には気をつけて欲しい。情報が正しいものとは限らない。信頼できる者の情報にしても偽の情報を与えられているかもしれない」
「ふん、バカチンがその位分かっておるわ」
さて、とりあえずエルクたちやマリアベルの仲間を探さないといけないな。そして首輪の解除も。
俺は機械――特に爆発物の扱いには自信がある。マリアベルも機械に長けているようだ。
そして、オディオのもとに行く方法も探さねばならんな。
俺達は歩き出す、仲間を求めて。
――――――ミッション開始。
【I-8 平野 一日目 深夜】
【シュウ@アークザラッドU】
[状態]:健康
[装備]:使い捨てドッカン爆発ピストル@クロノトリガー
[道具]:紅蓮@アークザラッドU、リニアレールキャノン(BLT1/1)@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、オディオを倒す。
1:I-9城下町に向かう。
2:エルクたち、マリアベルの仲間と合流。
3:首輪の解除。
4:トッシュに紅蓮を渡す。
[備考]:
※参戦時期はクリア後。
※扇動を警戒しています。
※時限爆弾は現在使用不可です。
【マリアベル・アーミティッジ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、マリアベルの着ぐるみ@WILD ARMS 2nd IGNITION、クレストグラフ×5@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式
[思考]
基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。
1:I-9城下町に向かう。
2:元ARMSメンバー、シュウの仲間達と合流。
3:首輪の解除。
4:この機械を調べたい。
5:リルカにクレストグラフを渡す。
6:アカ&アオも探したい。
7:アナスタシアの名前が気になる。
[備考]:
※参戦時期はクリア後。
※アナスタシアのことはシュウに話していません。
※クレストグラフの魔法は不明です。
※レッドパワーはすべて習得しています。
投下終了です。
ご意見、ご感想をお待ちしています。
>>461 誤)ファルガイアを支配者
正)ファルガイアの支配者
です。すみません。
投下乙!
なんちゃって忍者きた! アーク勢で一番頼りになる男ですね。
マリアベルは見事気ぐるみゲット! これで昼間でもお肌は大丈夫w
2人とも機械の知識は充分なので、首輪方面での活躍も期待できますね。
対主催の鍵となりそうなチームですね。
キャラの思考も無駄なく、それでいて重要なところはしっかりと描写されていますね。GJ!
投下乙。
きぐるみが必要とは、バァンパイアか白子すっかこの姫さん。
wikiのマップが大きすぎると言う意見があったので
別ウィンドウ表示式にして見たが、何か問題あったらレスください
投下乙
慎重なシュウにしては随分フレンドリーに話しかけてるなw
クリア後参戦ということだから丸くなったのか
地味にゲートホルダーが登場したところが鍵かな、今度に期待
そろそろ現在地のまとめとか欲しい…と思ったらwikiにあったんだね
こちらも乙です
すごく遅ればせながら代理ありがとうございましたー
描写不足は自覚してます……、すみません。登場話だからと削りすぎた
>>429 鎧つきデフォとして出したつもりですが大丈夫ですかね?
バランスは心配だけれど、他のロワでも鎧デフォのキャラはそのままだったので……
投下乙!
首輪解除役2人に役に立つのか立たないのか分からないアイテムと
重要な役どころになりそう
個人的には、仲間に勧誘するところの描写がもっと掘り下げられてればなお良かったかも
>>470 鎧はまぁ、気にしなくても大丈夫だと思いますよ
頭狙えばいいわけだし魔法使いもバンバンいるし
ルカの鎧ってなんか効果あったっけ
ゲームだと魔法の威力が半減してたけどあれは鎧の効果なのかな?
投下乙!
シュウとマリアベルのコンビは対主催に大きく貢献しそうだな
個人的にはマリアベルの赤塚走りが見たいw
しかし今までを見ると、首輪解除出来そうな奴は誰もマーダー化してないな
>>472 わからん。紋章の力かもしれんし、鎧に特殊な力があるのかもしれんし、単純にルカの魔防がたかいだけかもしれない。
見も蓋も無い事をいえばゲームの設定。
……紋章ははがされずに宿ってたりするんだろうか幻水の連中?
紋章はそのままじゃ?ビッキー涙目になるし。
アティが封印球持ってるし町のどっかに紋章屋もあるかもね。
少なくとも、輝く盾と黒き刃は宿ったままだろう。
ナナミについては今後の書き手さん次第ってとこかね。
>>473 IQ1300のスペース頭脳を誇る、心優しき科学の子をお忘れか?
暗殺集団に所属していた。
その次には、軍隊に属した。
あと、自分を好きだと言ってくれた人が、死神。と呼ばれるほどの凄腕の暗殺者。
人が死ぬところなんか、何度も見て来た。一度なんか暗殺指令も受けた。
だから、怖くない。
そう自分に言い聞かせなければ、一歩も立てなくなることぐらい、あっさりと想像がついた。
何が、と聞かれれば、明確に答えられない。
ただ、ろくな動作も見せずに人の命を奪ったものと、同じものが首に巻きついていると考えると、すぐにむしり取ってしまいたい衝動に駆られる。
怖い。
みんなで幸せに暮らすことを夢見て、ニノは決してへこたれまいと頑張ってきた。
黒い牙の皆もニノに優しかったし、確かに大手を振って言い回れる商売ではなかったが、暖かくて本当の家族みたいだった。
その牙も、もうない。母を装った悪魔が、気付かないうちにニノの大切な家族を切り刻んでしまった。
そして初めての任務として彼女に与えられたのは、ただの捨て駒の役。初めての暗殺任務と信じたまま、殺されるところでさえあった。
ロイドもライナスも行方知れずになってしまった、あの時の寒さと同じ感覚が、辺りの空気に混ざり込んでいた。
妙にぬるい風を避けるように、ニノは物陰に逃げ込んだ。
荷を開いたのは、生き延びるためにはもちろん必要なことだった。
だが、荷を改め、使い方を考えることで少しなりとも恐れを忘れようという、逃避の目的もあったことは否定できない。
名簿に、名前が並んでいた。
知らない名と、知っている名。
「ジャファル……」
黒い牙きっての暗殺者。狙われた者は逃れることができないと言われた「死神」。
思い出すのは、ベルンの王宮の宵闇に響く、血の匂いとうめき声と、武器が打ち鳴らされるざわめき、音もなく煌めく暗殺剣。
暗殺対象だった王子を殺せない、とニノが泣き言を言った時、暗殺犯として死体で捨てられるはずだったニノに黙ってついてきてくれた。
彼女を逃がすために、母から送られてきた追撃部隊を一人で食い止めてくれた。
無口で無表情で無愛想だけど、本当はとても優しい人。
まだ子供の自分を、好きだと言ってくれた人。
「フロリーナも……」
ジャファルとともに黒い牙を抜けて、新たに得た二人の居場所で、初めてできた友達。
弱気で引っ込み思案で、見ているこっちが心配になってくるくらいの、でもニノよりずっと強い、天馬騎士の子。
彼女も今、恐怖で震えているだろう。ちょうど、さっきの自分のように。戦いの強さと心の強さは違う。
「んんっ、しっかりしなきゃ!」
消えかけていた元気を奮い起こし、ニノは再び立ち上がった。
頭の中はまだ重いけど、体を動かす邪魔にはならない。
ふんっ、と大きく息を吐き出し、再び荷物に取りかかった。
魔王なんか知らないし、人殺しだって、できればしたくない。みんなを連れて、元のところに帰ると決めた。
知った名前の残り二人、リンディスはフロリーナの親友だと言っていた。さっぱりした性格の勇ましい人。
ヘクトルは、乱暴でちょっと怖いし、ジャファルにいい感情を抱いていないけど、悪い人ではない。
二人とも、強い。だからそんなに心配はしなくてもいいだろう。
最初に出てきたのは、魔道書だった。
ニノは魔道士である。当たりを引いたんだ、と喜びかけて、ふと違和感に気づいた。
今まで見たことのある魔道書のどれとも、意匠が違う。重厚で雄大で、見た目だけでも凄まじい力を秘めた書であることがわかる。
開いてみた。
数ページ手繰ってみたが、文字は読めても、書に記された理を理解するにはとても追いつかない。
書の理を理解し、書の魔力と己の魔力を通じ合わせることで、魔道書は魔法を放つ。
理を読み解くどころか、この魔道書は、紙面を見るだけでも、深淵を覗くかのような圧倒的な存在感を滲ませている。
ニノにはまだまだ使うことができない。
「残念」
本の角でたたくしかないのかな、と呟きながら、魔道書を荷物に戻した。
次に出たのは、よく乾かしてあるキノコだった。
「またんご……?」
そう、書いてある。致死量二名分といきなり書いてある時点で、まともな物ではないことは一目瞭然である。
黒い牙でも使っていた、いわゆる幻覚キノコだろう。
一度かじってみて、大変な目に遭った記憶がある。
見たこともない派手な色で曲がっていく世界と、解毒し切る前のとてつもない気持ち悪さは、確かに死にそうな気分にもなったが、
これで命を落とすかと聞かれれば、ニノにはよくわからない。
二人分と書いてあるからには、いくつかあるキノコを半分も食べれば死んでしまうのだろう。ただ、ニノはどんなに空腹でも、二度とかじる気はない。
「これも使えないかな……」
敵に渡されたキノコを食べてくれる相手がいれば、使えるかもしれないけれど。
支給品は、いくつまであるのだろうか。
もし3つがあり得るのならば、ニノの荷物が置かれていたあれも、ニノに支給されたものなのかもしれない。
見た感じの印象は、鉄の木馬である。
ただ、見たこともないような管や取っ手、革のようで革と違う材質の部分など、木馬には必要のない部分が多すぎた。
鞍や鐙もなく、手綱もなし。馬の頭までなく、その代わりに申し訳程度に一つ目がついている。
車輪が付いているところからすると荷車の類なのかもしれないが、物を載せる部分は見当たらない。
説明書がついている。
「えーっと……?」
随分と厚い説明書である。紙の質も、エレブ大陸では見たこともない固く丈夫で薄いものだ。
革のような部分が鞍、一つ目の上側から伸びた2本の取っ手が手綱に相当するらしい。取っ手の握りを引き絞ることで車輪を回し、
取っ手のナックルガードを握りこむか、目立たなかったが鐙に相当するものを踏みつけて、車輪を止めるのだという。
まず、鍵を差し込んで駆動機を起動する。
「ひゃっ!?」
獣よりも大きな唸り声が、腹に来る重い震動と共に響き始める。
しまった。これくらい大きな音を聞きつけて、誰かが来るかもしれない。
一瞬、迷った。このまま鉄の木馬を放り出して、どこか森林に隠れてしまえば、音を聞きつけた誰かに見つかる危険はなくなるが、
これが有用なものであったら、人の手に渡してしまうのは避けなければならない。
説明書の感覚として、鉄仕掛けの馬で間違いないだろう。
もしやる気になった人間が機動力を手に入れれば、ジャファルやフロリーナに及ぶ危険がぐっと大きくなる。
勇気を出して、またがった。
説明書の図説を思い出しながら、取っ手をひねると、鉄の馬がひときわ大きく嘶いて動き出した。
「うわ、わ……」
何かを考える余裕はなくなった。
普通の馬もバランスを取りながら乗る必要があるが、これはそれ以上だ。一瞬でも気を抜けば、鉄馬ごと倒れる。
馬ほど体高があるわけではないが、落馬が致命傷になりうるのは常識で、鉄馬の下敷きになろうものなら、どうしようもなくなる。
止まらなければならないと考えるほどに、取っ手から手を離すわけにはいかないという意識が頭を占める。結果、ブレーキの存在は意識から外れた。
もはや声も出ないほどに張りつめた状態で、ニノは必死に鉄馬を操った。
景色が飛ぶように流れていく。
【G-8 荒野】
【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康 、ハーレー騎乗(暴走)
[道具]:フォルブレイズ@FE烈火、マタンゴ@LIVE A LIVE、基本支給品一式
[思考]
基本:全員で生き残る
1:ジャファル、フロリーナを優先して仲間との合流
2:止まる。
[備考]:
※支援レベル フロリーナC、ジャファルA
フォルブレイズ@FE烈火
魔道書。八神将が一人「大賢者」アトスの神将器「業火の理」。エレブ大陸最強の理魔法であるが故に、技量未熟の者には扱うことができない。
よって、時間をかけて読み解き、魔法の腕を上げない限り、ニノにとってはただの柔らかい鈍器である。
マタンゴ@LIVE A LIVE
キノコ。精神を際限なく増幅させることで意識の許容範囲を決壊させ、夢遊状態に伴う恍惚的な悦楽を得る――要するに、ラリる。
二人分の致死量が配給されている。
無法松のハーレー@LIVE A LIVE
無法松の愛車である赤いハーレー・ダビッドソン。異世界の住人のための説明書付き。
>>479にタイトル抜け
鋼鉄のヴァルキュリア3/3 です。
投下乙!
マタンゴきたwブリキないから毒殺くらいにしか使えないけどw
ハーレーはやべぇwしかも暴走中だから誤解フラグですね。
ここで誰か殺しちゃったらニノは本当に報われないなwだがそれがいい。
ニノの過去もざっくりと説明してあって、読みやすい上に繋ぎやすそうなSSでした、GJ。
投下乙。
なんか儚げな子だ。幸薄そう。
投下乙です
さらっとFE参戦キャラの関係図が紹介されてるのな
フォルブレイズを知らんから終章より前から来た事になるのかな
投下乙。
フォルブレイズきたー! と思ったらニノの理レベルはA以下なのね。
そして暴走する乗り物とは…某ロワの少年Yを彷彿と…
>>483 烈火の剣だと完全にアトス専用だから、名前とか知らされてなかったで十分通用する。
ついでに言うとニノは設定上字があまり読めないから、ED後とかにしたほうがつじつまは合う。
いや、そのアトスが持ってるのを見てるだろうと
まあ知らないでも通用するとは思うが
現在位置を見てみると、アティ先生の包囲網がすごい。
かなり近くにピサロ、少しはなれたところに魔王、シンシア、ルカ様と大変危険。
ルールを理解していないから山火事にも近づきかねない。
さらに近くにいるレイは状態がひどく、リルカはジョウイを連れている。松は一般人に近い。
頼みの綱は不明支給品があるヘクトルか?
ビクトールとビジュの予約切れてねえ?
リン、ルッカを投下します。
一人の女性が風に吹かれながら佇む。
その女性の深緑の髪が、風に煽られ流れるようにたなびく。
……こうしている間にもあの魔王オディオによって開かれた殺し合いのこの場で、望まぬ血は流れ尊い命は奪われていく。
「……許せない」
自然と怒りがこみ上げてくる。それに答えるように女性、リンは拳を強く握り、奥歯と奥歯を軋ませた。
その怒りの矛先は他でもない魔王オディオ。
その絶大な力を使い、殺し合いを平気で開き、殺戮を繰り広げさせる存在。
そのオディオを倒すのは勿論の事、ここで起こりうる殺人を出来るだけ止めることも考えなければならない。
殺人の快楽に溺れているモノや私利私欲の為に殺人を犯すモノならともかく、望まない殺人を繰り広げている人間なら、何か手段はあるかもしれない。
形はどうあれ、殺人が起こりうる可能性を最小限に食い止め、一人でも多くの人間を救わねばならない。
相手は未知の力を持つ魔王、その魔王に立ち向かっていく上で一人でも多くの仲間がほしい。
「……にしても、せめて武器のひとつ位無いと対抗しようがない、か」
まず取り出したのは、一見なんの変哲も無い腕輪。
しかし、これを付けることによってほぼ確実に攻撃を食らったときに反撃をすることができるらしい。
あまり気乗りはしなかったが、彼女はそれでも着けることにした。
次に出てきたのは一本の長剣、すらっと美しい刀身が彼女の目の前に飛び込む。
「剣……か、力にはなるか――――」
止まった。言葉が、思考が、視界が、意識が。一瞬の余裕すらなかった。
何かが怪しい、おかしいと感じさせる隙すら与えずに「それ」は彼女を取り込むように精神を犯していった。
彼女が運悪く引いてしまったのは呪われた武器、皆殺しの剣。
剣から発せられる強力な殺意により、絶大な破壊の風をあたり一面に振りまく恐ろしい武器。
故にこの剣を持つものは完全に意識を攻撃することに向けるため、守備をするということは皆無に等しくなる。
何よりも恐ろしいのは、その剣から発せられる殺意に所持者が同化してしまう事だ。
「フフフ、アハハハ、ハハハハハハハハ!!」
この場にいる彼女の知り合いが一度も見たことの無いような笑い方。
口角が裂けるほど上がり、目はいわゆる濁ったドブ川のような色をしている。
今の彼女が。否、今の剣が求めるものはただ一つ。
真紅の、血。
「ねえ、誰かいない?」
「やれやれ、また面倒なことに巻き込まれたみたいね……」
ため息をつきながらメガネの少女、ルッカはその場にしゃがみこむ。
無論、殺し合いなんてするつもりは無かったが。周りの人間が全員そうとは限らない。
誰かを殺すのもゴメンだし、誰かに殺されるのもゴメンだ。
「はぁ……どうしようかなあ」
途方に暮れながら支給のデイバッグを漁る。
真っ先に出てきた名簿は大体を読み飛ばし、最後のほうにあった知り合いの名前で目が止まる。
クロノ、カエル、エイラ、そして魔王。
「……と、いってもどこにいるのやら」
どこにいるか分からない仲間の身を案じても、何も変わらない。
残酷な現実にただただため息をつくことしかできなかった。
ふと首に手を当てる。そこにはこの殺し合いに参加させられているという証にも等しい金属の感触がある。
叶う事ならこれを研究したいが、下手に弄繰り回せば自分の命が危ない。
「サイエンスの行き着いた先でもこれはちょっと苦労しそうね……」
この数分間で何回目かすら分からないため息を漏らす。
自棄になってもう一度デイバッグの中に手をいれ、八つ当たりするように中身を掻きだす。
中から出てきたのは、見たことも無い物質。見たことも無いボウガンのようなもの、そして電子回路の部品。
それらを目にした瞬間彼女の目の色が見る見る変わっていく。
発明家の娘である彼女が、黙っているわけが無いラインナップ。すぐさま三つとも手に取り、仕組みを究明し始めた。
「さて……まずは、これから」
真っ先にルッカが手をとったのは見たことも無い物質。
付属の紙によるとどうやら爆弾らしく、火薬や原材料はまったくもって不明だが爆発の余波を別の次元に送り込むことができるらしい。
つまり、至近距離にいても自分は爆風の被害にあわない爆弾だということだ。
「次元転移か……次元連結だのなんだのの本があったわね。あれの応用?」
ますます興味が沸き構造を理解するために分解しようと思ったが、分解しようにも分解することができないのでとりあえずポケットに入れた。
「……次はこれね」
かつてロボを修理したときにもこんな部品は見当たらなかった。
付属の紙にも「HUMANISM」と書いてあるだけで何の部品かはさっぱり分からない。
「ロボに組み込んだらなんだかすっごく強くなりそうよね……根拠はないけど」
ただなんだか、ルッカは無限の可能性をその部品からは感じることができた。
これもどうしようもないのでとりあえずポケットに入れた。
最後に手に取ったのは見たことも無いボウガン。
大まかに見回してみると、どうやら自動で矢を射出する装置らしい。
言うなれば「オートボウガン」と言った所だろうか。
引き金から動作部、銃で言う弾倉部にさまざまなところにまで精密な技巧が施されている。
「ふむふむ……ここが、こーなって。あー、はいはい。それで……はっはぁ、よく出来てるわねー」
未知の文明の産物を前にしても、ルッカは研究心をむき出しにして立ち向かっていく。
「でも……ここはこうしたほうが良いんじゃないかな、伝導率の問題でそのほうがスムーズに射出できると思うし。
それに、まだまだ軽量化も出来そうよね。あー、基本的な工具でもいいから落ちてないかな……ん?」
改造したい欲に体を疼かせながら、オートボウガンに刻まれた一つの名前を見つける。
フィガロ、その名前を見るや否やルッカはデイバッグの方へと振り向いた。
そう、まさに振り向いたその瞬間。
一本の剣が彼女の頭上に振り下ろされんとしていたのだ。
ルッカは幸運だったかもしれない。
あまり知られていない事実だがオートボウガンはなぜだかとても丈夫である。
精密な機械ということもあるのだが、素材が頑丈なのか、その理由は不明だがとても頑丈に出来ている。
頭や体、とにかく防具の代わりにすれば打撃に関しては無敵になれる、そこまで言い張れるほどだった。
実際、そんな酔狂なマネをするのは国王はおろかフィガロ兵の中にも一人もいなかったわけだが。
そんなことも知らずにルッカは反射的にオートボウガンで剣をはじこうとした。
結果、剣が生み出した破壊の余波を少し抑えるほど攻撃の無力化に成功したのだ。
そのままルッカはバックステップで間合いを離そうとするが、相手は尋常じゃない速度でその間合いを詰めてくる。
「ったく、面倒なもん付けてるわね!」
慣れない打撃をすれば、腕に付けているあの腕輪の効果で反撃を食らってしまう。
下手に打撃に回るよりかは、魔法を使ったほうがまだいいかもしれない。
あまり気乗りはしないが、彼女はオートボウガンを使いギリギリで斬撃をよけながら呪文を唱える。
「……ファイガ!」
薄暗い森林に、大き目の爆発が起こる。その爆発は火柱を立て、あたりの木々を飲み込んでいく。
さすがに襲撃者も瞬間的に怯んだ様だ、その隙を突いてルッカは全速力で走る。
「くっ……魔法か、面倒ね」
リンは驚いていた、目の前の少女が魔道書もなしに魔法を放ったことに。
爆発に多少怯んだものの、少女が逃げていく祭に立てた大きな足音を頼りに足を進める。
彼女の頭は、はじめは無かった思考で今は埋め尽くされている。
その思考は「殺戮」。
彼女が嫌っていた山賊にも似た下卑た笑いを浮かべながら、足音の方向へ駆ける。
剣はただ、怪しく禍々しく輝くだけ。
「ふぅ、ここまで逃げれば大丈夫……かな?」
必死で逃げてきた末に見つけた橋にとりあえず逃げ込むことにしたルッカ。
万が一の最悪のケースを考えて、彼女はあえてこの場所を逃げ場所に選んだのだ。
それでも、その最悪のケースが数分で訪れようとは考えて無かったかもしれなかったが。
目線の先には襲撃者、橋の上から見るとどうやら緑の長髪の女性のようだ。
その女性は今から橋に入らんとするところであり、自分は橋の半分ぐらいの距離の場所にいる。
ルッカは一つ大きな深呼吸をする、そして左手を差し出し手首を自分の方へと反らせて手招きをした。
「さあ、さっさとかかって来なさいよ! 私を斬るつもりなんでしょう?!」
その言葉と同時に、女性は一気に駆ける。
「そんなに死にたいなら、殺してあげるわ!」
剣を構えながら馬の如き速さでルッカへの距離を詰める。
しかし、当のルッカは笑っていた。まるで勝利を確信した策士のように。
「はい……ビンゴ!」
多少の惜しみとともに、ルッカは不思議な物体を投げつける。
その物体は橋と衝突し、一瞬のうちに強力な爆発を生み出す。しかし、その爆風が二人を襲うことは無かった。
しかし、そこにあったはずの橋は物の見事に消え失せていた。
「ふふん……今回はサイエンスの勝ちってところね。
理系特化をナメないでくれる?」
遠く離れた女性にルッカは完全に勝ち誇ったポーズで躍り出る。
さすがに遠くに見える女性も、この距離を飛び越すことは出来なかったのだろう。
そそくさと道筋を変更して森の中へと消えていった。
しかし、その際に悔しがるそぶりを見せずに消えていったのがルッカにとって気がかりだった。
……多少無理してでも足止めしておくべきだったのだろうか?
「……ま、そんなこと考えてもしょうがないし」
回れ右で後ろへと振り向くと、そこには大きな神殿が聳え立っていた。
神殿にはあまりいい思い出はないが、そこにいくしか道は無いのだから仕方が無い。
ルッカは目の前の神殿へと足を一歩ずつ動かす。
「魔王オディオだかなんだか知らないけど、見てなさいよ。
こんな首輪、前進し続けるサイエンスの力で絶対解除してやるわよ!」
【C-8 橋の上 一日目 深夜】
【ルッカ@クロノ・トリガー】
[状態]:わずかながらの裂傷、疲労(中)
[装備]:オートボウガン@ファイナルファンタジーVI、17ダイオード@LIVE A LIVE
[道具]:なし
[思考]
基本:首輪を解除する、打倒オディオはそれから
1:とりあえず神殿に逃げ込んでみる。
2:改造、首輪解除するための工具を探す。オートボウガン改造したい。
3:どこかで首輪を探す。
4:オートボウガンに書かれていた「フィガロ」の二人を探す(マッシュ、エドガー)
5:クロノ達と合流、魔王は警戒。
6:17ダイオードの更なる研究
[備考]:
※バイツァ・ダスト@WILD ARMS 2nd IGNITIONを使用したことにより、C-8西側の橋の一部が崩れ去りました。
※参戦時期はクリア後。 ララを救出済み。
支援
魔法の件といい、リンはやはり驚きを隠せなかった。
まさか橋が倒壊するとは予想だにしていなかった。
「……どれぐらい斬れるのかな、これ」
そんなことをふと呟く。
しかし、次の瞬間には口が裂けそうなほどの笑みへと変わる。
人で試してみればいい、まだまだここには人がいっぱいいるんだから。
皆殺しの剣の殺意は止まらない。自身が滅ぶか、この場にいる人間を殲滅するまで。
次なる獲物を求めて彼女。否、剣は駆ける。
【C-9 橋の前 一日目 深夜】
【リン(リンディス)@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:狂戦士、呪い、少し火傷
[装備]:皆殺しの剣@ドラゴンクエストIV、激怒の腕輪@クロノ・トリガー
[道具]:不明支給品(0〜1)、基本支給品一式
[思考]
基本:打倒オディオ
皆殺しの剣による行動方針:見敵必殺
1:殺人を止める、静止できない場合は斬る事も辞さない。
[備考]:
※参戦時期、支援状態は不明
※皆殺しの剣の殺意に影響されています、解呪魔法をかけるか剣を何らかの手段でリンの手から離せば正気には戻ります。
※C-8で大きな爆発音がしました。
※C-9の中心部にルッカの基本支給品一式入りデイバッグが放置されています。
投下終了です。
皆殺しの剣がすごーくグレーな支給品ですが……クリフトも死んでるし。
何かあればどうぞ。
投下乙。
きゃあ殺人鬼。首輪解除候補のルカが無事で何よりです。
まぁ、世の中には『親友と殺し合いをする運命となる紋章がる』ぐらいだから大丈夫ですよ。
パロロワ的に。
投下乙!
大きなっていっても時間が進んでいるミネアにアリーゼに聞こえない程度の爆発ってことでいいのかな。
頭にオートボウガンはナイス!なつかしの裏技だ。自分のところの王様はやってました。
気になることは、未知の爆弾を失うよりファイガやフレアをえらばなかったのか?
リンがC−9にいるなら崩れたのは東側ではないか?といったとこです。
うまいこと首輪解除キャラがばらけたな。あの2人以外。
投下乙!
オートボウガン装備キタwww
防御力255確保。ルッカこれ物攻無敵www
皆殺しの剣が!
対主催思考すら殺戮願望に転化してしまうとは!リンディス無情
投下乙。あああ、皆殺しの剣がぁぁぁリンやべぇ
さらにオートボウガン装備キタwww
何気にエドガーとも互いにフラグ立ったな
対主催の鍵となるのはこの二人か?
投下乙!
狂化マーダーきた! 解除されてもされなくてもオイシイ展開!
オートボウガンは……w まぁ、出来るもんは仕方ないですよねーw
ルッカとエドガーが出会えるかは、このロワの鍵となりそう。
リンはいろんな意味で今後に期待。支給品の使い方が上手いです。GJ!
投下乙!
オートボウガンの使い方噴いたw
そして皆殺しの剣が来たか。このロワマーダーやべえw
これより投下しますね。
水の音が、聞こえてくる。でもそれは、清流が下る音とは、少し違う。
寄せては返すその水音は、遠ざかったり近づいたりを繰り返している。
その音をぼく――リオウは、桟橋の上で聞いていた。
小さな風が、肌を撫でて流れていく。
山村であるキャロで育ったぼくにとって、潮の香りを孕んだ海風は新鮮だ。
静かに響く波音は穏やかで、心地よささえ感じさせる。まるで、ついさっきの出来事が幻に思えた。
だけど、この見ず知らずの場所と、首に感じる冷たい金属の質感が、嘘などではないと訴えていた。
これが現実ならば、ぼくは、戦場に佇んでいるということになる。
互いに譲れないものを賭けて、傷つき傷つけあい、時に奪い取り時に奪われる、血生臭い世界。
ルルノイエで獣の紋章を倒し、戦争はもう終わったのに、戦場はぼくの前に広がっている。
戦場に立つのは、いつしか日常になっていた。
同盟軍のリーダーになって、多くの戦いを経験してきた。
戦いの中で、数え切れないほどの人たちと肩を並べ、剣を交えてきた。
だからこそ、分かる。
今ここに広がっている戦場は、これまで駆け抜けてきたどの戦場とも異なったものである、と。
ぼくが都市同盟のリーダーとして戦ってこれたのは、明確で強固な意志があったからだ。
皆で手を取り合って、戦争を終わらせたかった。争いのない、平和な世界を作りたかった。
そんな理想に共感してくれる人がいて、信じてくれる人がいて、力を貸してくれる人がいた。
彼らを守りたいと思った。みんなの信頼に答えたかった。
だから戦った。辛いことや悲しいことなんて、数え切れないほどあったけど、血反吐を吐きながらも戦った。
紛れもなく、ぼくの意志で選んだ戦いの道だった。
そうやって自分の意志で戦っていたのは、ぼくだけじゃない。
力を貸してくれた仲間たちも、ハイランド軍で剣を振るっていた敵たちも。
袂を分けてしまった、親友も。
みんな、自分の意志で戦っていた。自身の信念と正義と哲学に従い、誰かに強要されず戦い抜いていた。
互いに譲れない確固たるものを抱いているから、ぶつかり合う。
ぼくが潜り抜けた戦場とは、そういうものだった。
だけど、この戦場はそうじゃない。
この島に立っている人たちは、自分の意志で武器を取るんじゃない。
他人の意志によって、戦わされるのだ。
そんな戦いに、意味など存在しない。理想や信念の通わない戦いなんて、ただの奪い合いだ。
その果てに残るのは、悲しみに痛み、絶望や空虚さだけ。
憎しみと怨みと悪意に満ち満ちたあの魔王は、昏い瞳の奥でそれを望んでいるのだろう。
その望みは、ぼくが――ぼくらが願い欲しているものじゃない。
だから、もう一度戦おう。
大切なものを守るために、かけがえのないものを失わないために。
魔王を、倒す。
計り知れない闇を抱え、圧倒的な力を誇る、魔王オディオ。
その力の強大さを、先ほど名簿に目を通したときに再認識した。
この世にはいないはずの人の名が二つ、そこに記されていたからだ。
死者を呼び戻すなど、並大抵の力では実現できない。
その名前を、思い出す。
一つは、ぼくと親友を庇って命を落とした、大切な義姉の名。
彼女と再会できることだけは、魔王に感謝すべき唯一の点なのかもしれない。
もう一つは、かつてこの手で倒したはずの、凶悪な男の名。
憎悪に取り憑かれたその男は、魔王オディオとよく似ている。
疑うまでもない、最大級の危険人物だ。彼との戦いは、避けられない。
ぼく一人の力では、甦った狂皇子にも魔王にも歯が立たないだろう。
それに、首に巻きついた枷の対処も考えなければならない。
仲間が必要だ。信頼できる、ぼくを信頼してくれる、仲間が。
幸か不幸か、ぼくの仲間もこの島にいる。彼らとの合流は最優先だ。
ナナミ、ビクトール、ビッキー。
そして――ジョウイ。
崩れゆくルルノイエの城に、きみはいなかった。
きっときみは、ぼくらが再会を誓った場所にいたんだろう。始まりの場所で、ぼくを待っていたんだろう。
分かっていたから、きみを迎えに行こうとした。
決着を着けるためなんかじゃなく、再び同じ道を歩むために。
ぼくらの目指すものは同じはずだ。だから。
――もう一度、一緒に戦えるよね?
右手に、視線を向ける。手の甲に刻まれた紋章が、手袋越しに薄ぼんやりと輝いている。
輝く盾の紋章。
対となる黒き刃の紋章は、今もジョウイの手で輝いているだろう。
たとえ紋章が、ぼくらを傷つけ殺し合わせようとしても。
ぼくは、屈しない。抗い抜いてやる。
運命が定められたものだなんて、認めない。紋章に振り回され、宿命に従わされるなんて冗談じゃない。
ぼくの足で、正しいと信じた道を歩く。
それも全て、ぼくの意志だ。誰にも左右なんてされたくない。
「……ッ」
不意に、視界が揺らいだ。
波音が急激に遠ざかり、体から力が抜け落ちていく。
黒く広がる海に攫われるように、意識が遠のきそうになる。
崩れ落ちそうになる足腰に、力を込めた。
支給されていた槍――閃光の戦槍を両手で強く握り、その石突きで体重を支えると、なんとか倒れずに済む。
同じく支給されていた石が、木製の桟橋に落ちて、かつりと音を立てた。
意識を強く保ち、息を深く吸う。自分を繋ぎとめるために、大きく呼吸を繰り返す。
やがて、世界の揺らぎは止まり、潮騒が返ってくる。空気に交じる潮の匂いも、嗅ぎ取れた。
全身に力が戻ってきたところで、落とした石を拾い上げる。
その石は、幻獣と呼ばれる存在の力が結晶化されたものらしい。
使えるかどうか分からないけど、捨て置くわけにはいかない。
もう一度、深呼吸をする。
ぼくを蝕む輝く盾の紋章の呪いに、意志が破られないように。
所持者の命を削るこの呪いから解き放たれるには、黒き刃の紋章の主を殺す他にはない。
紋章は今も、この手で輝いている。
片割れの紋章の主を手に掛けろと命じるように。宿命に抗えるはずなどないと、嘲笑っているように。
ぼくに力を与えてくれる紋章が、命を奪っていく。
それでも、だとしても。
――ぼくは、負けない。負けて、たまるものか。
【D-1 港町 一日目 深夜】
【リオウ(2主人公)@幻想水滸伝U】
[状態]:健康
[装備]:閃光の戦槍@サモンナイト3
[道具]:魔石『マディン』@ファイナルファンタジーY、基本支給品一式
[思考]
基本:バトルロワイアルに乗らず、オディオ打倒。
1:信頼できる仲間を集める。ジョウイ、ナナミ、ビクトール、ビッキーを優先。
2:ルカ・ブライトを倒す。
3:首輪をなんとかしたい。
[備考]:
※名簿を確認済み。
※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所へジョウイに会いに行く前です。
以上、投下終了です。
2主人公の名前は小説準拠にしました。
感想や指摘などありましたら、遠慮なく言ってくださいませ。
投下乙!
紋章に抗おうとする心情が良く表されてたと思う
リオウかっこいい!
一日目・深夜(登場話)までの現在位置書きおこしてみた
2主人公とアズリアがまだだけれど…
A-4 雪原 エドガー、フロリーナ
B-6 草原 トッシュ、ナナミ
B-9 平野 カノン
B-9 川 エルク
C-3 平野 エイラ
C-4 森林 トカ
C-7 森林 アキラ
C-8 橋の上 ルッカ
C-8 橋の前 リン
D-2 森林 シャドウ
D-5 南東部 シンシア
D-6 巨木付近 レイ
D-7 川 無法松
D-7 川原 ルカ
E-2 森林 ジャファル
E-6 山 アティ
E-6 森林 ピサロ
E-8 中心部(森林) アシュレー、ケフカ
E-9 花園 ビッキー、ゴゴ
F-1 教会 イスラ
F-5 森林 ヘクトル
F-6 南部 魔王
F-7 森林 リルカ、ジョウイ
G-4 砂漠 アナスタシア、ちょこ
G-6 川 ブラッド
G-8 荒野 ニノ
H-4 小屋の外 セッツァー
H-7 森林 サンダウン、ロザリー
I-1 灯台付近 マッシュ、にっかつ
I-4 海岸 クロノ、ユーリル
I-8 平野 シュウ、マリアベル
I-9 城内 カエル、冷房
??? オディ
間違ってたらスマソ
おっと、リロ忘れすみません。投下乙でした!
投下乙。
2主はまっとうな主人公だw
でも、ジョウイとの因縁に期待。
投下乙です!
宿命に抗う決意が上手く現れてて凄いと思いました。
>>498 あー、失礼いたしました。
崩れたのは東側ですね……申し訳ない。
あと、バイツァ・ダストを使った理由を多少加えた文を仮投下スレに投下しておきました。
投下乙!
ジョウイとはまたも別々の道を歩くことになったか…
作者さんのジョウイ登場SSと続けて読むと対比がなお面白い
GJです
よし、話題を振ってみる。
このロワで胸が一番大きい人はだれだろうか?
後、胸が一番小さいのと。
そういう話題を待ってました
1番小さいのはちょこだとして、大きいのは……トルネコ?
やっとおっぱいを語れる時が来たか
おっぱいと言ってまず思い出すのは漫画版リーザのおっぱいの強調ぶり
公式でもなんか胸ないと落ちそうな服着てるし
おっぱいと言えばアティ先生。
ないすばで〜と言えばエイラだと思う今日この頃。
それはさておき、予約していたサンダウン、ロザリー、ニノの分が出来ましたので投下します。
城下町へ向かう事に決めてから数時間、ロザリーとサンダウン・キッドはゆっくりとその歩みを進めていた。
本来ならばロザリーの探し人を一刻も早く見つける為に急ぎたいところ。
実際、ロザリー自身ももっと歩みのペースを上げて欲しい旨をサンダウンに告げたのだが、彼は静かに首を振ってそれを否定した。
何せ彼らにはその身を守る為の武器が無い。
サンダウンは凄腕のガンマンであるが、そのガンマンも銃が無ければただの人。
唯一の武器が小振りのナイフ一つのみである以上、慎重に慎重を重ねなければならない。
「………」
ふとサンダウンは立ち止まり、懐から時計を取り出して時刻を確認する。
午前三時を回ったところだった。
このペースで行けば、城下町に辿り着くのは朝方――魔王オディオが言ってた『発表』の時刻の前には到着出来るだろう。
問題はその頃にもなると辺りが明るくなってしまい、やる気になっている者に見つかりやすくなってしまうという点だが……。
「サンダウンさん?」
「………」
心配そうに声をかけてくるロザリーを無言で制す。
余計な事を言って不安にさせてしまってはいけない――と、そこまで考えてサンダウンは思いなおした。
不安にさせてしまってはいけないと言ったが……思えばこの少女は道中ずっと不安な思いをしていたはずだ。
あれだけ熱心に自分に語りかけてきた話――。
己が為にこの殺し合いに乗ろうとしている者の動向を気にしていたに違いない。
ため息を一つ吐くなり、サンダウンはデイパックの中から三つの道具を取り出した。
一つは無骨な腕輪、一つは灰色のマフラー、そしてもう一つは小さな指輪。
何れもサンダウンの支給品であった。
「あの……?」
「……俺には不要だ」
「え?」
そう呟くと共に、ロザリーに向けてサンダウンはその三つの装飾品とそれらの説明書を手渡す。
困惑するロザリーは一体どうしたものかとまごついているが、サンダウンは黙して何も言わない。
サンダウンに何の思惑があるのだろうかと少しばかり考え、ロザリーは問いかける。
「あの……私にいただけるという……事でしょうか?」
「………」
やはりサンダウンは無言であったが、静かにゆっくりとその首を縦に動かした。
それは、サンダウンなりの気遣いだったのだろう。
ピサロの事を延々と考えて少し鬱屈していたロザリーの気を少しでも紛らわす為にと、
己に支給された装飾品の数々を渡してくれたに違いない。
「……いらないなら捨てて構わん」
「いえ……ありがたく頂きます。 ありがとうございます、サンダウンさん」
彼の不器用な優しさに思わず触れ、思わずロザリーの顔に笑みが浮かぶ。
少しだけだが、サンダウンとロザリーの探す彼とは似ているのかもしれない。
何も気にしていないような振りをしながら自分をよく見ていてくれている所。
不器用ではあるものの、本当は心優しい一面を持っている所が。
礼を言いながらロザリーは説明書を読みつつ、装飾品をつけていく。
サンダウンはそんな中でも、辺りを気にしつつだが書を読みやすく装飾品をつけやすくする為にランタンでロザリーを照らしてやっていた。
そしてロザリーがその支給品を全て身につけたその時。
遠くよりサンダウン達のいる方角に向かって、何かの音が近づいてきている事に気づいた。
「サンダウンさん……!?」
「………」
うろたえるロザリーを手で庇うようにして背後に回しながら、サンダウンはランタンを戻して音の方向へと神経を集中させた。
音はこちらへと急速で近づいてきており、一向に止まる様子を見せようとしない。
聞いた事の無いその音が近づくにつれて、地面が振動しているような錯覚まで感じる。
この殺し合いに乗ってる者か否か――どちらにせよ、あまりよろしくない状況だ。
「………」
緊張からか、いつの間にか掻いていた手の汗をポンチョで拭いながら眼差しを一層厳しくする。
今更逃げようにも遅い、音の主はもうすぐそこまで来ているのだ。
唾を飲み込み、息を殺してその主の姿を見ようとした瞬間――。
暗闇の中から、猛スピードでこちらへと向かってくる"何か"が見えた。
確かに速い――馬と同等か、はたまたそれ以上の速度を持っているであろうそれは、一直線にこちらに向かってきている。
サンダウンとロザリーはその速度にも驚いたのだが、それ以上に驚いたのは――その"何か"の形状だった。
「馬……なのか?」
それを見た時の第一印象は、『鉄で出来た馬』だった。
勿論鉄で出来た馬などある筈が無いのだからその認識は間違っているのであろう。
事実、それが更に近づいてきて形状がよりハッキリ見えるとサンダウン達もその認識を改めた。
まるで見た事の無い未知の乗り物。
その乗り物は非常に大型で、到底人が乗りこなせそうなものには見えない。
前方後方についた二つの車輪が回転する事によって前進をしているのだという事は辛うじてわかったが、それにしても奇怪な乗り物だ。
そして、サンダウンの目が車輪からその乗り物の『鞍』にあたる部分に移った時、彼は見た。
緑の髪をしたまだ年端もいかないであろう少女が、振り切られそうになりながら必死に二本の管を掴んでいたのを。
「サンダウンさん!」
ロザリーも気づいたのだろう、声を荒げて少女を指差す。
このままでは少女の身が危険だ。
あれだけの速度を出している乗り物から振り落とされれば、当然無事では済まないはず――。
馬上の少女はそれを理解しているのか、決して掴んでいる二本の管を放そうとはしていない。
が、問題はもう一つ。
仮に振り落とされなかったとしても、このまま木か何かに追突すれば大怪我――最悪は死に至るだろう。
「………」
しかし――と、サンダウン・キッドは考えあぐねる。
少女が殺し合いに乗っている乗っていないに関わらず、このままにしておけないというのは確かな気持ちであるが――。
彼女を止める術を自分達は持ち合わせていない。
或いは銃があればあの管を狙い撃って無理矢理あの少女を乗り物から引き摺り下ろす事は出来るかもしれない。
だが、それは一種の賭けであるしそもそも今のサンダウンの手元には銃が無い。
ならばあの乗り物を力づくで止めるか――というと、それも無理。
あれだけのスピードで駆けてくる乗り物を素手で止めようなど自殺行為に等しい。
サンダウンの仲間である高原の力やレイの素早さならばそれでも止める事が出来るのかもしれないが、生憎とサンダウンは彼らほど腕っ節に自信は無かった。
残念だが手は無い……歯噛みをしながら、サンダウンは一歩下がろうとする――が。
その時……ロザリーの手がサンダウンの背中を押し、下がろうとするサンダウンを引き止めた。
慌てて振り向くと、ロザリーは申し訳なさそうな面持ちをしながらも走り来る乗り物に向けて視線をくれている。
一体何のつもりなのだろう――?
まさか、自分をこのままあの乗り物の前に押し出して轢き殺そうとしている訳でもあるまい。
自分に対し訝しげな目線を送るサンダウンに気づいたのだろう、ロザリーは慌てた様子で、しかし静かに告げる。
「サンダウンさん……あの子を助ける方法がひとつだけ、あります」
「……策があるのか」
「はい、でも……」
そこまで言うと、ロザリーは顔を俯かせて口を閉じる。
彼女には少女を救う策があると言う……しかし、その策を用いる事には消極的だ。
だとするならば、恐らくはその策というのは危険を伴うものなのだろう。
でなければ渋る理由が無い。
「……説明しろ、その策を」
「え?」
俯いていたロザリーに一言呟くと、サンダウンは再び前を向き迫ってくる乗り物を見やる。
「……助けたいのだろう? なら……危険を恐れている場合ではない。
手立てがあるのなら……行動すべきだ……説明しろ……時間が無い……」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
緑の髪をした少女――ニノがその暴走するハーレーに身を預けて既に数十分が経過していた。
あまりのハーレーの暴走ぶりに何度その手を離そうかと思いもしたが、そうすれば死に至るとわかっている為にニノは決してその手を緩めない。
しかし、このままではいけないという事もニノ自身十二分にわかっている。
今までは運よく何にもぶつからずに走行出来たが、このままではいずれ何かに追突してしまうだろう。
追突しては当然これだけのスピードを出しているハーレーの事……衝撃で壊れてしまうだろうし、そうなれば乗っているニノだって当然無事で済むはずがない。
いや、仮に追突するのが木や岩だとしたら死ぬのはニノ一人だけだ……だが、もしも誰かを跳ね飛ばしてしまったら?
――それを考えた瞬間、ニノの顔が悲痛に歪む。
駄目だ、誰かを殺めてしまうだなんて……しかし、このままではどうしようもないのも事実。
……いっそ勇気を出して取っ手を放し、地面に倒れこんでみようか。
そうすれば主を失ったハーレーは徐々に速度を落として停止をするだろう。
頑丈さにはそれほど自身が無いが、簡単な受身の取り方くらいなら知っている。
このハーレーに轢かれなければ、多少の怪我はするかもしれないが死ぬ事は無いはずだ。
「よし……!」
覚悟を決めて、力強く取っ手を握る手を徐々に弱めていく。
――と、その時、ニノの目に信じられない光景が映った。
人が、すぐそこにいる。
暗くて顔までは見えないが、シルエットからして男性と女性の二人組みらしいという事だけはわかった。
このままではぶつかってしまう――咄嗟に避けるよう声を上げてみるが、声はハーレーの立てる爆音で掻き消されて二人には届いていないらしい。
なんとかしなければと考えるものの、すっかりブレーキの事など忘れてしまっていたニノの脳内には有効な打開案が浮かび上がってこない。
ただ胸の中でこのハーレーが止まってくれるように祈り続け――そして、気づく。
二人組が、しっかりとした眼差しでこちらを見ている事に。
何故逃げないのだろう、とニノが驚きながら考えた瞬間に――その二人は動き出した。
それを見て、更にニノは驚愕する。
一見細腕のように見えた女性が、軽々と片手で男性の方を持ち上げたのだ。
ここまでなら、まだニノはそこまで驚愕していなかっただろう。
男勝りな女傑は、沢山とは言わないまでもニノが所属していた軍に居た。
一見か弱く見えた女性が実際は力自慢な豪傑であったというだけなら……そこまで驚きはしない。
だが、問題はその後の女性の行動だった。
女性は片手で男性を持ち上げたかと思うと、すぐさま振りかぶってこちらに厳しい眼差しを送った。
そして、ニノが嫌な予感を感じた瞬間――その男性を思い切り投げたのである。
ニノへと向けて。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
それは、一か八かの賭けだった。
内容は至って単純――ロザリーがサンダウンを乗り物の僅か上空へ目掛けて投げ、今にも振り落とされそうな少女を抱えて着地するというものである。
無論、ロザリーは非力であった……男を持ち上げ、ましてやそれを投げるなどといった芸当が出来る人物ではない。
しかし、それはあくまでも何も身に着けていなかったらばの話――。
ロザリーがその策を実行出来たのは、ひとえに今身に付けている……先ほどサンダウンがくれたアクセサリーのお陰であった。
腕に嵌めたリングの名は"いかりのリング"――仲間を投げつける事の出来るアクセサリー。
首に巻いたマフラーの名は"パワーマフラー"――装着した者の力を上げる事の出来るアクセサリー。
その二つの力を借りて、ロザリーはサンダウンを乗り物の上へと投げつけたのだった。
投げられたサンダウンは、瞳を見開きながら少女へと近づいていく。
勝負は一瞬、一度きり――タイミングを誤り失敗すれば少女も自分もただでは済まないだろう。
二人の距離が確実に狭まっていく中、サンダウンは大きく腕を伸ばして少女へと差し伸べる。
「掴まれッ――!!」
一瞬の躊躇をした後、少女は迷いながらも片手を伸ばす。
その手をしっかり握り引き寄せると、少女は更にもう片方の手を離して乗り物から浮かび上がった。
サンダウンは少女を抱き寄せて胸の中に抱えると少しだけ後方を顧みる。
ロザリーは乗り物の進むだろう方向からちゃんと逃げ出していた。
後は自分達が上手く着地をするのみ――と、少女の頭を更に強く抱きしめて前方を見る。
「………ッ!」
地面へと右肩から落ち、一瞬激痛がサンダウンを襲うが口には出さずに胸元を見る。
少女は震えながら、サンダウンのポンチョをぎゅっと握っていた。
溜息を吐き、一応双方の無事を確認した後にサンダウンは静かに落ち着かせるかのように少女の頭を左手で撫ぜる。
後ろからはロザリーが二人の身を案じて駆けてくるが、無事を確認するとほっと安心したかのようにようやくその顔に笑みを浮かべた。
その時、寝転がるサンダウンと少女、そして立っていたロザリーの耳に巨大な爆音が聞こえ、次いで三人を熱風が包み込んだ。
一体何事かと後方を見れば、巨大な火柱が立ち上がり燃え上がっている。
そして三人は見た――もはや鉄のガラクタと化した乗り物が、その火柱の中心に在る事に。
それを見て何が原因で火柱が上がったのかわからぬほど三人も馬鹿ではない。
よくよく見ればガラクタは原型を留めぬ程に変形しており、巨大な岩へと乗り上げている。
恐らくはあの岩に追突した衝撃で乗り物の内部で発火現象が起こり、引火しやすい何かに火がついたのだろう。
もしも少女があのまま暴走をしていたなら――考えると、ぞっとする話だった。
「……動くぞ」
と、いつまでもその火を見ていたロザリーと少女へと言葉を向けながら、サンダウンは少女の手を離して立ち上がる。
今の爆音を聞いて、またはこの火柱を見て近くに居た誰かがここに来るかもしれない。
そうなる前に、三人は逃げ出さなければならないのだった。
「立てますか?」
「う、うん……あ……ありがとう……」
ロザリーに手を貸してもらいながら礼を言い、少女はよろめきながらも立ち上がる。
長時間振り回されていた為に、少々足は覚束無いがそれも数十秒ですぐに直った。
そんな少女に対してロザリーは優しく微笑み、少女も口元に微笑を浮かべる――が。
すぐにその顔を強張らせた。
「えっと……その……お姉さん達は……」
尻すぼみになっていく少女の言葉――しかし、それだけで少女の胸中をはかり知るには十分過ぎるものだった。
少女は二人がこの殺し合いに乗っているのか否かを不安視しているのだ。
それも当然と言えば当然……この殺し合いにおいて、誰かを信用するというのは何よりも難しい事なのだから。
それをわかっているからこそ、サンダウンもロザリーも決して声を荒げて否定する事なくただ優しく言い聞かせる。
「大丈夫、私もサンダウンさん――こちらの方も、誰かを殺すなんて事は考えてません。
だから安心して下さい」
「……そもそも殺す気ならば助けはしない」
ぶっきらぼうに言い放ちながら、サンダウンは未だ少女の顔を覗き込みながら諭すロザリーから自分の分のデイパックを受け取ると歩き出す。
「あっ、待って下さいサンダウンさん」
「………」
ロザリーの静止の声に、しかしサンダウンは歩みを止めない。
既にハーレーが炎上してより数分の時が流れている――これ以上ここに留まるのは危険だ。
それがわかっているからこそサンダウンは無言で歩みを進めてこの場を離れていこうとする。
少女はただおろおろしているだけで、去るサンダウンと留まるロザリーを今尚不安そうに交互に見ている。
ロザリーも早くその後を追わなければならないというのはわかっているが……このままこの少女を放っておく訳にはいかない。
意を決すると、ロザリーは少女の手を取ってサンダウンの後を追った。
「えっ、あっ、あの……」
「一緒に行きませんか? このままではサンダウンさんの言うように危険だし……それに、一人でいるより私達と一緒に居た方がきっと安全です。
勿論、一緒にいられない理由があるなら無理にとは言いませんけど……」
狼狽する少女へ向けて、尚も優しく告げるロザリー。
その言葉は、確かに少女にとっては願っても無いものだった。
一人でいるより誰かと一緒に居た方が遥かに安全であるだろうし、心も休まるだろう。
目の前の女性は優しく、歩き出した男性も危険を承知で自分を助けてくれた人だ。
恐らくは信用に足る人物であろう事は、少女にもわかっていた……しかし。
「でも……いいの? 私、足手まといになるかもしれないし……」
手元にある魔道書は、未だに読み解く事の出来ない高度なもののみ。
読み進めて理を理解すれば使いこなせるだろうが、それまでは戦う術を持たない赤子に等しい。
そんな状態の自分は何も役にも立てないのだと、やや自暴気味に吐き出す。
「だから私……」
「……気にするな」
声をした方向へ目を向けると、そこには尚こちらに背を向けているサンダウンの姿。
だがその足は少しだけ歩みを止めており――顔を僅かにこちらに向けている。
「……俺にしたって銃が無い以上、碌な護衛など出来はしない。
今更お前に何かを期待するという訳でも……ない」
それは不器用ながらにも、少女を気遣っての言葉だったのだろう。
もうこれ以上言うような言葉は無いと言わんばかりに、サンダウンは再び歩き出す。
その姿を見てロザリーも微笑み、無言でしっかりと少女の手を握る。
「あっ……ありがとう……お姉ちゃん……!」
その手を握り返しながら、少女もロザリーと共に歩き出す。
そして無言で歩く男の背中にも、言葉をかける。
「ありがとう……ありがとう、サンダウンおじさんっ!」
男は少女の言葉に答えるでもなく、ただ少し首を動かしただけで特にどうという風でもないらしい。
それから少女達は歩きながら遅れた自己紹介をした後、再び城へと向かう事に決めた。
少女の持ち物に銃器が無い事にサンダウンは少し落胆をしたようだったが、すぐに立ち直ると再び歩き出した。
少女――ニノの言う仲間、そしてサンダウンとロザリーの仲間がそこに居る事を願いながら。
ただ、その歩みを進めていく。
――少女はまだその時、気づいていなかった。
隣を歩くロザリーの指に嵌められた指輪――それこそが、或いは自身が持つ神将器を扱いうる手助けになるかもしれない物だという事に。
その指輪の名は"導きの指輪"……魔道士である自身の能力を更に上げ、賢者となる事の出来る道具である事に。
【I-8 西部 一日目 黎明】
【サンダウン@LIVE A LIVE】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーY、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いにのらずに、ここからの脱出
1:ピサロの捜索
2:ひとまず城下町へ向かって情報交換
2:ロザリー、ニノの仲間(ユーリル、アリーナ、トルネコ、ミネア、ジャファル、フロリーナ、リン、ヘクトル)の捜索
3:自分の仲間(アキラ、レイ・クウゴ、高原日勝)の捜索(そう簡単には死ぬことはないと思っているので上記の人物よりは優先度は下)
4:銃がほしい
[備考]
参戦時期は最終編。魔王山に向かう前です。
【ロザリー@ドラゴンクエストW 導かれし者たち】
[状態]:健康
[装備]:いかりのリング@ファイナルファンタジーW、パワーマフラー@クロノトリガー、導きの指輪@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーY、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、双眼鏡@現実、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いを止める
1:ピサロ様を捜す
2:ひとまず城下町へ向かって情報交換
3:ユーリル、アリーナ、トルネコ、ミネアたちとの合流
4:サンダウンさん、ニノの仲間を捜す(レイ・クウゴ、アキラ、高原日勝、ジャファル、フロリーナ、リン、ヘクトル)
[備考]
参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。
【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康
[道具]:フォルブレイズ@FE烈火、マタンゴ@LIVE A LIVE、基本支給品一式
[思考]
基本:全員で生き残る
1:ジャファル、フロリーナを優先して仲間との合流
2:ひとまず城下町へ向かって情報交換
3:サンダウン、ロザリーの仲間を捜す(レイ・クウゴ、アキラ、高原日勝、ユーリル、アリーナ、トルネコ、ミネア)
4:フォルブレイズの理を読み進めたい
[備考]:
※支援レベル フロリーナC、ジャファルA
※無法松のハーレーはI-8で大破しました。爆音や炎の影響が近隣に出ている可能性もあります。
投下乙。
よかった。幸薄そうな子が助かってよかった。
新作GJ!
ま、松のハーレーがあああぁぁぁぁぁぁ!
少女二人に渋いオッサントリオか、サンダウンの保護者っぷりに期待!
投下乙!
サンダウン、何気にいい兄ちゃんじゃねぇかw
ロザリー&ニノペアも微笑ましい
ハーレーは盛大な火葬になって。合掌www
ふと気付いた。
アティ先生の時代ってパンツやブラジャーがあるのだろうかと?
投下乙
対主催ばかりのチームってのは微笑ましくていいね
でも、このチーム武器がないんだな
マーダーに襲われたらヤバいな
>>529 サンダウンはおっさんだぜ
でだ、おっぱいの話を…うん、何でもない
投下乙!
サンダウンカッコイイ…けど女にぶん投げられるおっさんを想像するとシュールだw
しかしこのチーム戦力が乏しいから不安じゃ
>>530 そこらへんはまぁ、想像でいいんでねーの?所詮フィクションの世界だし
いやまぁ、無いと明言されてもそれはそれでry
下着のようなものができ始めたのは近世も終わりになってからなので、
中世色が強い世界なら「そんなものはない。ぱんつはいてない」で済ましてもいいw
だがサモンナイトの世界は「なんでも召喚」の世界で色んな時代の文化が混ざっているから、あるんじゃないですかね。
ジッポーライターやデジタル時計も高級品とは言え販売されている世界だし、先生カレンダーで白ビキニ着てたことあるし。
あのミニスカートで「はいてない」つけてないならもはやエロてんてーどころか痴女だよ。
幻水もそうだよなぁ。
たしか本拠地に洗濯場あったよなぁ。
よし、誰か調べてくれ。
>>507 遅くなりましたが、投下乙!
リーダーきた! 参戦時期もかなり上手いですね。
ジョウイも救う方針ですが、始まりの紋章が許すかどうか、彼らの出会いが楽しみです。
回復系の紋章なので戦闘力が心配でしたが、魔石を支給したのはGJ!
本編での動向も分かりやすく纏められていて、あまり喋らなかった主人公のキャラも掴みやすいです。
>>526 投下乙! ハァァァァレェェェェェ!!!
ロザリーにブン投げられるサンダウンって凄まじい光景ですねw
それにしてもニノが不幸にならないでよかった。何かと心配だから彼女はw
そしてなんだかオイシそうなフラグが……クラスチェンジは期待します!
しかし、少女を2人も抱えたサンダウンは大丈夫なのか……こんどは彼が心配ですね、GJ。
じゃあ投下します。
城下町は栄えていた。
……と言ってもいいのだろうか。不思議な気分になる光景が広がっていた。
数多くの民家や店などの建造物が等間隔で並んでいる様は、この城下町がかなり活力に満ちた空間だったのだなと予想させるに充分な景色だ。
しかし、その無機質の活気とは裏腹に、人間を初めとした一切の生命はこの街から姿を消していた。
まるで街を象ったジオラマの中に入り込んだ小人にでもなったような気分である。
何と言うか、元々存在している街から『生きているもの』だけを綺麗に取り除いた、そんな世界が形成されているのだ。
店の種類も豊富で、緑の木々も至る所に見受けられる。
これならば、人が暮らし社会が存在するには何一つ不自由ないはず。
しかし、この暗闇の中で、その街は確かに息絶えていた。
道を照らす街灯だけが、チカチカと自己を主張している。
「これはこれで落ち着くんだがのぅ」
ユラユラ揺れるマントが、夜の空気をかき混ぜる。
都会の賑わいも悪くはないのだが、静かな空間の方が彼女にしてみれば馴染み深い。
夜の支配者、マリアベルが街の死に様を眺めて笑う。
「同感だな」
闇夜に紛れ、任務を遂行する。
それが彼の歩んできた人生であり、この街こそがシュウの見てきた世界の集合体そのもののように感じられた。
2人が目指しているのはこの城下町の中心部、つまりあの大きな城である。
この殺し合いを叩き壊すという目標の元行動している2人であったが、それを実現するためには様々なものが不足していた。
その最たる要素が、情報。
この殺し合いに関しての情報、首輪に関しての情報、魔王オディオに関しての情報。
彼ら2人には、そういった重要な情報が不足していた。
それらの情報を得るのに最も効果的な方法は、他の参加者と会うことだ。
他の参加者の中に、オディオの知り合いや、この殺し合いの関係者がいるかもしれない。
もちろん殺し合いに載った人物との遭遇も充分あり得る。
それは承知の上。
リスクを負わずして得られる情報など無い事は、この2人は重々理解していたのだ。
そしてここら辺一帯で人が集まる場所と言えば、あの城だ。
城下町に人の気配が無い事を確認すると、2人は巨城へと、音も無く走り出したのだった。
「静かにしていろ……」
城門を潜り抜け、冷たい城の床を一歩一歩踏みしめていく。
石で作られた床は硬く、この2人でなければ大きな足音がこのエントランスを暴れまわっていた事だろう。
灯りのないせいで視界は1メートル程度に制限されている。
しかし、闇に生きる彼らには大した影響はない。
周囲の状況を肌で感じ取ればよい。
城壁は分厚く、外界より隔離された城内には一切の風は吹いていない。
誰か人物が潜んでいれば、そこに空気の乱れが生じるはずだ。
この城の一階に、人の気配は、なかった。
「うむ……誰かいると思ったんだがな」
つまらなそうにマリアベルが言う。
先述の通り、彼らは明確な理由があって人探しをしている。
シュウの理由は純粋に情報と自分の仲間だ。
対してマリアベルはそれに加えて、人探しにもう1つの目的を見出していた。
彼女は様々な人間に会いたいのだ。
シュウいう異世界の人間に出会ったことは、彼女に自身の世界の狭さを思い知らしめた。
自分の知らない世界に生きた人間たちを知りたい、と彼女は欲していた。
「まだ上がある。行くぞ」
階段の手すりに背中を擦りつけ、忍びながら上っていく。
その姿を見て、マリアベルは初めてシュウが忍者なのだと実感する。
近代兵器や機械工学などに明るいこの男と、マリアベルがいつか本で見た『忍者』のイメージはかけ離れているものだった。
「御主、本当に……」
本当に忍者だったのだな、というその言葉が、最後まで紡がれる事は無かった。
彼女の言葉を遮ったのはシュウの右手。
「……黙れ。……誰かいる」
右手をマリアベルに突き出して『静止』の合図を出したシュウ。
そのシュウが感じ取ったのは、何者かの気配。
2階の隅の部屋に誰かがいる。
「危険人物なのか?」
「分からん、接触する他あるまい」
2人が小声で作戦を練っている。
意識は人間がいるであろう部屋に集中していた。
だから気がつかなかった。
「お前達、何の用だ?」
声がしたのは彼らの後方。
「……ッ!」
驚いて振り返る。
自分達の後方に人間はいなかったはず……。
「シュウよ……これは……」
「あぁ……間違いない」
自分達の後ろを見事に取った人物を確認した。
それは正確には『人物』ではなく……。
「カエルだ」
「あぁ、カエルだ」
カエルが鎧を着て剣を抱えて立っていた。
そう言えば、こんな置物が階段の途中にあった。
趣味の悪い騎士像だと思ってはいたが、どうやら参加者の1人らしい。
「そうだ、俺はカエルだ」
見れば分かるよ。そんな事は。
マリアベルは喉まで出掛かったそんな突っ込みを、必死で胃の中まで押し戻した。
「驚くのも無理はない……カエルが服を着て歩いているのだからな」
部屋から登場したのはマントの男。名をストレイボウと言う。
彼もカエルの外見に驚かされた人物の1人だ。
「いや、そんな事はない」
マリアベルが笑い混じりに呟いた。
そう言われると、そうだな。ストレイボウは思う。
ストレイボウに比べて、彼らはそれほど驚いてはいないではないか。
「カエルだぞ? 喋るカエルがいるのだぞ?」
ストレイボウのその言葉を聴いて、カエルがムッとしたように思えた。
が、カエルなので表情が読み取れない。
「わらわは、喋るトカゲを知っておるぞ」
「そういえば……俺は一国を支配したサルを知っている」
彼らからしてみれば、そんなカエルも大して珍しい存在ではなかったのだった。
マリアベルは何故か勝ち誇った気分であったが、それがあの宇宙人のおかげだと気付き、少し不愉快な気分になった。
◆ ◆ ◆
「そう言えばお主ら、名簿の確認は済ませたのか?」
一通り自己紹介を終えた後、マリアベルが尋ねた。
他の参加者の情報を求めるためだ。
「あぁ、今から確認するところだが……」
「そうか。それならば覚悟しておくがよいわ。
お主らの知り合いがいる可能性が高いぞ」
マリアベルが告げると、ストレイボウもカエルも慌てて名簿を開き目を通す。
まさか自分の知り合いまで参加させられているとは思わなかったのだろう。
事実、マリアベルとシュウの2人も実際に名簿を見るまでは、仲間達が参加しているとは夢にも思わなかった。
「どうじゃ、ストレイボウよ?」
「いや、俺の知り合いは1人も……待てよ」
ストレイボウの知り合いは1人もいない。
オルステッドと自分の関係を話すつもりも無かった。
よって、彼の知る名前は書いてあるはずがないのだが……。
「どうした?」
「このアキラという名前には、見覚えがある」
確か、あれはストレイボウ死んでからのこと。ルクレチアが滅んでからしばらく経ったときのこと。
人間が誰もいなくなったはずのルクレチアに、その少年はやってきた。
ストレイボウの魂が封印された遺跡に、仲間達とともにやってきた。
確か彼は仲間に『アキラ』と呼ばれていたはず……。
「知り合いか?」
「いや、向こうは俺の事を知っているかはわからない。
だが、信頼にたる少年だと思う」
ルクレチアの現状に、怒り悲しんでいるアキラの姿を思い返す。
あの眼は、あの魂はオルステッドが失ってしまった気高い生命だ。
あの少年ならば、オルステッドを救ってくれる。そんな気さえした。
もしかしたら、彼の仲間も参加しているかもしれない。
だが、『アキラ』以外の名前が分からない。
姿を見れば分かると思うのだが……。
「そうか、別人の可能性もあるのではないか?」
「しかし、マリアベル。そんな変わった名前の人間がそうそういるとは思えんが……」
シュウの言う事はもっともだ。
その場にいる全員がそう思った。
『アキラ』なんて変わった名前など、マリアベルもシュウも聞いた事も無かったのだ。
「そうか、カエルはどうだ?」
「……」
カエルは動かなかった。
名簿を見つめたまま、一切の動きを拒否していた。
それこそ、蛇にでも睨まれたかように。
「おいカエルよ……カ! エ! ル! よ!」
「……ッ! すまない……」
「なんじゃ、仲間の名前でも見つけたのか……」
カエルの余りの狼狽っぷりに、マリアベルは違和感を覚えた。
まるで、自分の愛しい恋人の名前でも見つけたかのようだ。
それとも、実際に恋人の名前を見つけたのだろうか。
そうなると、もう1匹雌のカエルが参加していることになるのか?
「仲間の名前を見つけたのだ。共に世界を救うために戦っている仲間達だ……」
「なるほどな。わらわやシュウの仲間も参加しておる。
世界を救った仲間達じゃ。気持ちは分かるぞ」
世界を救った……。
本当にそう言ってもいいのか、シュウは戸惑う。
確かに彼は世界を救うために仲間達と冒険を繰り広げた。
そして悪の化身である暗黒の支配者を倒すことに成功した。
だが、世界は滅んだのだ。
『大災害』において、人類の大半は死亡してしまった。
自分達のリーダーであるアークも、犠牲となった。
シュウは世界を救ってなど……いなかった。
もしかしたら、この殺し合いに優勝すれば、世界を取り戻せるのでは……。
一瞬だけそんな考えが頭に浮かんだ。
だが、荒廃した世界にも、アークが命を賭けて守ったものが残っている。
こんな殺し合いで世界を修復させたって、そんな世界に何の価値もないのだろう。
(……アイツが聞いたら殴られてしまうな)
トッシュは振り返らなかった。
世界を失っても、恩師を失っても振り向く事はしなかった。
トッシュに出会ってなかったら、自分はこの殺し合いに乗っていたかもしれない。
「……済まない。外の空気を吸ってくる」
「カエル……思いつめるではないぞ……」
バルコニーへ歩いていくカエルの背中にマリアベルの声は届いただろうか。
夜空に混ざっていく背中を見て、マリアベルは月にカエルが似合う事を始めて知った。
「ストレイボウ……」
「なんだ、シュウ?」
「カエルには気をつけろ」
トッシュやエルクが参加していると知ったとき、自分はどう思ったのか。
もちろん悲しんだし、魔王オディオに対する怒りに震えた。
しかし、それ以上に、心強かった。
仲間達がいるなら、こんな殺し合いなど破壊できる。そう思えたのだ。
だが、カエルはどうだ?
彼の様子は明らかにおかしい。
それはまるで……。
「どういう意味だ?」
ストレイボウの意識が尖ったものになったのを、マリアベルは感じた。
「そのままの意味だ。……注意しておいて損はないはずだ」
一流のハンターとして、数多くのモンスターや犯罪者を見てきたシュウにしか分からない事。
カエルの挙動に違和感を感じた。
「根拠はなんだ?」
「ハンターの勘だ」
「勘……だと?」
ストレイボウが立ち上がり、シュウの襟首を握る。
魔法で戦うストレイボウの腕力は弱く、シュウならば簡単に振り払えるものであった。
それでもシュウは動かなかった。
顔色1つ変えることもなかった。
「そんなモノでッ! あいつの事を殺人鬼呼ばわりするつもりかッ!?」
ストレイボウは後悔していた。
友を裏切った事を。
おそらく、この殺し合いも、元を辿れば自分が原因だろう。
自分がオルステッドを裏切ったせいで、全ての悲劇は起こったのだと、彼は思っている。
だから、彼は決意する。
友を信じようと。
「待て! シュウはそこまでは言ってはおらんではないか」
「『オディオを倒す』。そう言ったときのカエルの瞳は、嘘をついている人間の瞳ではないッ!
それを見ていないお前たちには分からないんだよッ!」
ストレイボウが友の話をしたとき、カエルの瞳は確かに輝いた。
アイツは『友』という言葉に重要な意味を乗せている。
自分と同じように。
ならば彼も、自分の友なのだ。
彼を信じる事ができなければ、今度こそ自分は這い上がれない。
ストレイボウは、そう信じている。
「確かに、俺の言った根拠など信じられるものではないだろう。カエルの決意も知らん。俺は俺の感じた事を忠告しただけだ」
「……そうか。分かった」
10秒ほどの沈黙の後、短く呟く。
ストレイボウも無闇な争いをするつもりはない。大人しくシュウを解放すると再び床に腰を下ろした。
「お前達を責めたりはしない。だが、お前達と一緒に行動する事もできない」
「……なッ! それでは……」
「いいんだマリアベル。俺も疑っている人間と行動できるほどお人よしじゃない。行くぞ」
シュウは身を翻し、そのまま廊下へと出て行ってしまった。
マリアベルも2回3回シュウとステレイボウを見比べてから、シュウの後を追っていった。
「カエル、信じていいんだな……」
1人取り残されたストレイボウは、天井に向かって問いかけた。
オルステッドもこんな気持ちだったのか。
俺は、なんて事をしてしまったのだろうか。
今更になって、深く後悔した。
後悔したところで、何も帰っては来なかった。
◆ ◆ ◆
「シュウよ、あれは疑心暗鬼が過ぎるぞ」
城下町にて、シュウとマリアベルは並んで歩く。
シュウがストレイボウを怒らせたことについて、マリアベルは未だに不満なようだ。
「そうかもしれん。だが、俺の勘がそう言っていたのだ。
『カエルは危険だ』と」
だが、明確な根拠がない。
だからストレイボウがカエルを信頼すると言うなら、シュウにそれを咎める権利はない。
それでストレイボウが死んだら、自己責任と言う他ないだろう。
「そうか、まぁわらわは構わんがな。
それに元々、緑色の生物には縁がないのじゃ」
それに、大した情報がないならあの城には用はない。
ストレイボウには少しばかり興味があったのだが、それは仕方がない。
(わらわの隠し事も見破られておるのかのー……)
アナスタシアの事をシュウには内緒にしていた。
シュウを信頼していなかったわけではない。
だが、なんとなく話したくは無かったのだ。
……いつかは話さなくては。マリアベルは決意するのだった。
【I-9 北西部 一日目 黎明】
【シュウ@アークザラッドU】
[状態]:健康
[装備]:使い捨てドッカン爆発ピストル@クロノトリガー
[道具]:紅蓮@アークザラッドU、リニアレールキャノン(BLT1/1)@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、オディオを倒す。
1:エルクたち、マリアベルの仲間と合流。
2:この殺し合いについての情報を得る。
3:首輪の解除。
4:トッシュに紅蓮を渡す。
5:カエルは警戒。アキラは信頼できる。
[備考]:
※参戦時期はクリア後。
※扇動を警戒しています。
※時限爆弾は現在使用不可です。
【マリアベル・アーミティッジ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、マリアベルの着ぐるみ@WILD ARMS 2nd IGNITION、クレストグラフ×5@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式
[思考]
基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。
1:元ARMSメンバー、シュウの仲間達と合流。
2:この殺し合いについての情報を得る。
3:首輪の解除。
4:この機械を調べたい。
5:リルカにクレストグラフを渡す。
6:アカ&アオも探したい。
7:アナスタシアの名前が気になる。
8:アキラは信頼できる。
[備考]:
※参戦時期はクリア後。
※アナスタシアのことはシュウに話していません。
※クレストグラフの魔法は不明です。
※レッドパワーはすべて習得しています。
◆ ◆ ◆
「ストレイボウ、あいつらはどうした?」
シュウとマリアベルの2人が城から出て行くのを、バルコニーから目撃した。
共に行動すると思っていたので、カエルは何かあったのかと不安になる。
「急いで行きたいところがあるらしい。
共に行動したかったのだが、残念だ」
シュウがカエルを疑った事は黙っておこうと決めた。
彼らと争いを起こすつもりはないのだから。
「そうか。それでは俺たちも出発するか」
「あぁ……」
カエルには気をつけろ。
シュウの言葉が頭にこびり付いて剥がれない。
それでも彼はカエルを信頼した。
友を裏切った償いをする為に。
さて、それでは答え合わせをしよう。
ストレイボウとシュウのどちらが正しいのか。
まず、ストレイボウの言い分から見ていこう。
カエルの放った『オディオを倒す』という言葉。
あれは本当だったのか。ストレイボウの言うとおり、あれはカエルの本心だったのか。
ストレイボウの言い分は正解である。
あれは、カエルの本心だ。
カエルはこの殺し合いを開催したオディオに怒りを感じていたし、自己の利益の為に殺し合いに乗るような人物でもない。
そして彼はストレイボウが信じたとおり、友情に厚い人物だ。
友との誓いを守り抜く。それはこの殺し合いにおいても変わる事はない。
では、シュウの言い分は間違っていたのだろうか。
カエルは簡単に殺し合いに載るような人物ではない。
名簿でクロノの名前を確認しても、ルッカの名前を確認しても、それは同じ事。
仲間がいれば、この殺し合いを潰すのに心強い。シュウがトッシュの名前を確認したときと同じことを感じていた。
おそらく、かつての友の名前が記されていたとしても彼は殺し合いには乗らない。
最も心強い味方を得た、と打倒オディオにさらに燃える事だろう。
ではやはりシュウの言い分はハズレだったのか。
いや、シュウの言い分も正しかった。
問題は、カエルが名簿で確認した1つの名前。
それはクロノでもルッカでもない。
エイラという女性の名前だ。
因みに彼女がカエルと恋仲になっているとかいうわけではない。
彼女には既に相手がいたし、それにカエルとエイラでは住んでいる時代が違う。
そう。住んでいる時代が違う。
それが問題なのだ。
それは僅かな可能性だった。
彼女はカエルの住む世界よりも遥か昔の野性に生きる人物。
そして、彼女はカエルが忠誠を誓った王国の祖先かもしれないのだ。
もしも彼女が死んだら、カエルが全てを捧げた王国がなくなってしまうかもしれない。
たとえ彼女が直接の祖先でなくとも、彼女はその時代の人類の長である。
そんな彼女が死んだら、歴史は大きく改変され、王国が消滅してしまう可能性があった。
友が守り続けた王国が消えてしまうのだ。
そもそも、自分と友が出会うと言う事実すら消えてしまうかもしれない。
彼女を生かして返さなければ、全てが滅ぶ。
カエルは迷っていた。その手を汚すか、どうかを。
王国の為に、剣を汚す覚悟はあるのか……自分に問うた。
答えはまだ出てはいなかった。
【I-9 城内 一日目 黎明】
【カエル@クロノトリガー】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:バイアネット(射撃残弾7)、バレットチャージ1個(アーム共用、アーム残弾のみ回復可能)、基本支給品一式
[思考]
基本:魔王オディオを倒す
1:戦力を増強しつつ、北の城へ。
2:殺し合いに……乗る?
参戦時期:シルバード入手後・グランドリオン未解放のどこか。他は後の人にお任せします
※魔王と面識があるかどうかは不明。
※エイラが死んだら、王国が消滅するかもしれないと思っています。
【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ブライオン、勇者バッジ、基本支給品一式
[思考]
基本:魔王オディオを倒す
1:戦力を増強しつつ、北の城へ。
2:カエルを信じる。
参戦時期:最終編
※アキラの名前と顔を知っています。
※アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っているかもしれません(名前は知りません)。
以上、投下終了です。
投下乙
強力な対主催どうしだったが決別か。
その理由にカエルの設定がここで出てくるとは驚いたぜ。
カエル冷房組もシュウマリアベル組も頑張れ!
投下乙
カエルってば複雑な気分だわさ
本物の騎士たる忠義の強さ故に揺れるとはッ!!
冷房もどうなるのか、心配組です
GJ。
やっはぁ! 疑心暗鬼だ疑心暗鬼だ!
このチームの明日はどっちだ。
意外といいかげんだぜシュウさん。
投下乙!
予約されたときは、早くも対主催が合流してしまうかと思ったが杞憂でしたね。
疑心暗鬼、これこそロワの醍醐味!
しかしストレイボウ熱い男になったなぁ。原作とは別人のようだ。
……スレが止まった…?
必死で原作把握してたわw
幻水の料理対決おもしれぇw
>>550 あるあるwww
というか幻水のミニゲームは毎回嵌るわー。
料理対決は全イベント消化するともうできないのが惜しい…。
投下乙!
やー、まさか対主催筆頭になると思ったカエルにこんなフラグが立つとは。
エイラの設定ほとんど忘れかけてた自分にとってはまさにあっと驚かされた展開。
冷房がアキラの事覚えてたりとか細かいとこもフォローしてるのもナイスです。
そして冷房、おめえ誰だw
>>551 何度でもプレイ可だと全料理のグラ見るまでやり尽くす自信があるよw
料理対決の醍醐味は審査員だろw
司会者の紹介が面白過ぎるw
この流れを見て、久しぶりに幻水の料理やりたくなってきた。
データ残ってたかなぁ…
ゲンスイの料理。
実は放っておいたらすぐ腐ります。
そうだっけ?
ほのぼの系のミニゲームのくせに、ストーリーが意外と鬱展開なんだよなw
◆Rd1trDrhhU氏
投下乙です。
うまくまとめましたね。カエルのフラグをうまくたてちゃって……。
参加者中最高レベルの洞察力を持っているシュウだからこそですね。
GJ!
誤字などの指摘を
536にて
「殺し合いに載った人物」ではなく「殺し合いに乗った人物」
537にて
「カエルが鎧を着て剣を抱えて」
なぜ剣が?ブライオンを貸したとは思えませんし。
540にて
ステレイボウではなくストレイボウ
543にて
備考の「魔王と面識があるかどうかは不明」
面識はあるはずです。カエルになってる時点で。
>>558 指摘ありがとうございます。
全体的に推敲不足だったみたいです。申し訳ないです。
近いうちにwikiで修正します。
投下しますね。
山歩きには慣れている。光が届かない夜闇も、竹林で野盗をやっていたレイにとっては障害にはならない。
だというのに、体がまともに動かなかった。
最大の武器である俊敏さが発揮できず、レイは舌打ちを漏らした。
背中の傷が深く、血液と共に体力が零れていく。呼吸が苦しく、息が荒くなる。
一歩一歩を踏みしめるたびに、足元がふらつき倒れそうになる。
間近に迫った、死の気配。それは緩やかに、だが確実に、レイの命を削り取っていく。
だが、こんなところでむざむざ死ぬ気はない。
師から受け継いだ、心山拳。伝承されていくその心を、技を、絶やすわけにはいかないのだ。
だからレイは、足を止め目を閉ざす。
虎が咆えるように一挙に息を吐き出して、体内の毒素を抜く。
特殊な呼吸法で取り入れた酸素を体内で錬成し、血流に乗せて全身に送り出す。
虎咆精気法。
荒ぶる虎の如き力を心に重ね、身体能力の活性化と体力の回復を同時に行う技だ。
失った体力は、確かに戻ってくる。だが、傷の治癒や止血に役立つ技ではない。
せっかく回復した体力も、流出する血液と共にすぐ逃げていってしまう。一時しのぎにしか、ならなかった。
何処かで休むべきだと思うが、あの女を放っておくわけにはいかなかった。
人の姿で好き勝手やられては堪らない。無用な敵を作られる前に、手を打ちたいところだ。
それに。
あの女に分からせてやらなければならない。彼女の行為がどれほど愚劣なのか、を。
心山拳は、心の拳法だ。
言葉を投げかけても通じ合えない相手にも、拳に心と想いを乗せて、その全てを伝え切る。
戦いの果てに心を通わせ、レイの想いを伝えられれば、彼女を止められるはずだ。
体は万全ではないが、やらなければならない。
揺らがぬ信念を抱いて歩くレイ。感覚を研ぎ澄ませ、逃げた女の気配を辿るように。
――鋭さを増した感覚が、別の気配を感じ取った。
咄嗟に身構え、新たな気配の方に意識を向ける。傷が痛むが、構ってはいられない。
警戒心が緊張感を生み、汗が首筋をなぞっていく。
目を眇め、闇と木々の間を睨みつける。
すると、その気配もこちらに気付いたらしく、レイへと近づいてきた。隠れる気は皆無らしい。
現れたのは、赤毛を腰まで伸ばした女だった。
彼女は緊張感や殺気とは無縁そうな笑みを浮かべ、近づいてくる。
「私、アティって言います。あの、お伺いしたいんですけど……」
やけに友好的なアティの態度に、レイは目をしばたかせた。
油断はできない。一度奇襲を受けたのだ。警戒すべきだとは思う。
だが、アティという女からは、一切の殺意を感じない。
アティが巧妙に隠しているのなら話は別だが、それにしては彼女の態度が自然すぎた。
よほど上手い演技をしていたとしても、殺気は態度の不自然さとなって滲み出るものだ。
「って、どうしたんですかその怪我!」
レイの背に刻まれた刺傷と、垂れ落ちる血液に気付いたアティは、目を見開いて駆け寄ってきた。
心配そうな眼差しの彼女から、飛び退いて距離を取る。
「く……ッ!」
その際に背中の傷が広がって痛みが駆け抜け、生温い血液が溢れ肌に纏わり付く。
血がかなり抜けてしまったらしく、意識が朦朧とする。
――本格的に、不味いね……。
足が、縺れる。手近の木で身を支えるため手を伸ばすが、届かない。
倒れる。
そう予測は出来たが、体は上手く動かない。
しかし、地に倒れ伏しはしなかった。
アティが、レイの伸ばした手を握り締めていたからだ。
「見せてください。私、医者志望ですから、ある程度の手当てくらいはできます」
穏やかな笑みを浮かべるアティ。柔らかい手から伝わる温もりが、優しく心地よい。
「……分かったよ。あたいはレイ・クウゴ。とりあえずは信用してやるよ。
ただし、妙な真似をしたらタダじゃおかないからね」
その心地よさが、レイから完全に毒気を抜き、そう告げさせる。
アティに感化され、レイの表情は小さく綻んだ。
「そんな、おかしなことなんてしませんよ」
人好きのする笑顔を浮かべながら、しゃがみ込むアティ。彼女に傷口を見せようとして――。
レイは、振り仰ぐ。決して、アティが牙を剥こうとしたわけではない。
強く黒い新たな気配を、闇の先から感じ取ったからだ。
目を凝らし、意識を気配へと傾ける。
包み隠そうとしない殺気と、オディオにも引けを取らない憎悪を剥きだしにして。
男が一人、闇の彼方から姿を見せた。
◆◆
現れたのは、美しい銀髪の男だった。
長い髪の合間から覗く耳は尖っており、人とは異なる種族であると主張している。
美しい紅玉を思わせる瞳が、レイとアティへ、向く。
男と視線が重なり――皮膚が、粟立った。
その瞳には、憎悪と殺意と悪意がない交ぜになって宿っている。黒く昏い眼光は、刃を連想させるほどに鋭い。
あらゆるものを切り刻もうとする、一対の視線。
それを具現化したように、男は両の手に一振りずつ剣を握っている。
右手には、反り返った刃の剣――刀と呼ばれる武器を。
左手には、鋭い刃の短剣を。
男は一足で跳びあがり、その身を回転させた。髪とマントを靡かせて、アティたちへと突っ込んでくる。
状況が判別できず、アティは眉根を寄せた。
この男が明確な殺意を持って剣を携えている理由が、察せない。
だから、現状をすぐに呑みこめなかった。
剣を振りかざした男が降下軌道に入ったところで、ようやく危機を感じ取り咄嗟に下がろうとするが、遅い。
せめて直撃を避けるべく、封印球を掲げたときに。
レイが、アティを突き飛ばしてきた。
予想外の方向からの衝撃に、容易く地面へと転ぶ。
開いていた口内に入った土を吐き捨て起き上がると、刀がアティの髪の端を切り落とした。
「ぼさっとしてんじゃないよ!」
「ご、ごめんなさい!」
思わず出てしまった謝罪に答えはない。代わりに聞こえたのは、蹴りが空を薙ぐ音だった。
アティを押した後の不自然な体勢から繰り出した回し蹴りでは、男を捉えるには至らない。
男は、バックステップだけで高く宙に浮く。その口が、何かを呟いていた。
急激に気温が低下していき、前触れもなく冷気が立ち昇る。
「足元! 気をつけてッ!」
アティが叫ぶと同時に男が着地し、
「――マヒャド」
冷酷な韻を踏んだ詠唱が、終わる。
巨大な氷塊が、地面を突き破って現れた。
刃物の鋭利さと鈍器の質量を併せ持つ氷が、アティとレイを切り裂き潰そうと襲いくる。
半ば転がって横に跳び、アティは氷を回避する。
勢い余って巨木の幹に背を打ち付けるが、氷の直撃に比べればダメージは少ない。
氷塊はすぐに消失する。
しかし、それが幻ではなかったと証明するように、レイの体は中空に投げ出されていた。
「レイさんッ!」
重力に引っ張られるまま落下するレイを、滑り込んで受け止める。急ぎ怪我を確認し、アティは絶句した。
無残に破かれた衣服から見える右足に、肌の色が見受けられなかったからだ。
皮が裂かれ、肉が抉られ、骨が露出している。
それだけではない。
絶対零度を誇る氷の凶器は、傷口の周囲をも蝕んでいた。
傷の大きさを考慮すれば、右足全体に凍傷が広がっている可能性がある。
極端に低い温度の氷塊に接触したため、血管の収縮と血液の凝固が発生しており、出血はそれほどでもない。
だが、このまま放っておけば間違いなく壊死すると考えられる状態だ。
痛みでショック症状を起こしていて、意識はない。
微かに胸は上下し腕は脈打っているのが、唯一の救いだった。
「よもや避けられるとは思わなかったぞ」
白く煙る冷気の残滓越しに睥睨してくる男を、アティは睨み返す。
「一体どういうつもりですかッ!? 私たちが何をしたって言うんですッ!?」
アティの激情を、男は嘲笑う。
「何をしたか、だと? 原罪の自覚すらないとは本当に愚かだな、人間」
男の瞳は紅いのに、底のない暗闇に似ていた。
「己が欲を充足させるためならば、あらゆる汚れた手段を用いて、他者を貶め辱めるその性質こそ、貴様らの罪だ」
心底からの憎しみを込めて、男は吐き捨てる。
「矮小で醜悪で愚鈍な人間どもに存在する価値など、ない」
端正な顔が、憎悪に塗り固められている。
純粋な悪意に果ては見えず、世の人間を殺し尽くしても晴らされるとは思えなかった。
「……そうは、思いません」
それでも、アティは言い返す。
「確かに、自分のために物を盗んだり、他の人を傷つけたり、争ったりする人は、います」
両親を亡くし塞ぎこんでいた自分を、根気よく支え助けてくれた村の人たちを。
言葉に想いを込めて、失ったものを甦らせられる、人間を。
無価値だと、思いたくないから。
「だけど人は、話ができるんです!
言葉を使って、想いを伝えて、色んな素敵なものをもたらせる生き物なんですッ!
だから、どんな人にだって、想いを込めて話をすれば、きっと――」
アティは想いを言葉に乗せる。強い憎しみを凌駕する想いを、伝えるために。
しかし、
「下らんな」
男はアティの言葉を一蹴するだけだった。憎悪を陰らせることも、綻ばせることも叶わない。
返ってくるのは、無慈悲な言葉だけ。
「貴様の言葉も、想いも、私には決して届かない」
歯痒さと悔しさに、唇を噛むアティ。少し否定されたくらいで折れはしない。
簡単に潰されるほどアティの想いは弱くない。
だが、ここでずっと問答をしているわけにはいかない。
腕の中にいるレイに、急いで治療を施す必要があるのだ。
問題は、どうやってこの場から逃げるか。
サモナイト石があれば、手は見つかるのだが――。
「……悲しい、ね」
思考するアティに、言葉が割り込んでくる。目を落とすと、レイが目を開けていた。
◆◆
驚きを露にするアティの腕からすり抜けると、左足に重心を置いて立ち上がる。
氷塊の直撃を受けたせいで、右足の感覚が鈍く、まともに動かせない。
それでも、レイは確かに地に足を着け、自身の足で立っていた。
「じっとしてなきゃ! 重傷なんですよ!?」
「じっとしていられる状況じゃないだろ? 大丈夫さ、鍛えてるからね」
無茶苦茶な理屈だと分かっている。実際のところは、血が流れすぎて本当に危険な状態だった。
医術の心得があるアティなら、それくらい悟っているだろう。
「大丈夫なわけないじゃないですか! 早く治療しないと――」
「……ああ。治療しないと、もう駄目だろうね」
アティの言葉を遮るレイの声は、随分と落ち着き払っている。
死が迫り近づいて来ているというのに、驚くほど頭が冷えていた。血液が抜けすぎたせいかもしれない。
あるいは、アティの想いを込めた言葉が、レイの心に届いたおかげなのかもしれない。
「そういう意味じゃ……」
こんな状況にありながらも他人を気遣える彼女のひたむきさは、守られるべきだ。
真っ直ぐな想いを伝えられる彼女の尊さは、心は、失われてはならない。
会って間もないが、分かる。彼女は、生きるべきだと。
「自分の体だ、分かってるよ。だけどあたいはまだ、死ぬつもりなんてないさ。だから――」
レイは、自分に残された、たった一つの支給品をアティへと投げて寄越す。
愛着などない、一枚の絵だ。
何の役に立ちそうにもないそれだって、生きる道の標にはなり得る。
「それ、預かっといてくれよ。必ず生きて、取りに行くからさ」
「何、言ってるんですか? まさか、あなたを置いて逃げろって、言いませんよね?
そんな体で戦うなんて無茶、言いませんよね!?」
「……頼むよ、アティ」
短い頼みごとだった。
でもそれだけで充分だと、レイは分かっている。
何故ならば、その短い言葉の中に、たっぷりと想いを込めたのだから。
伝わらない、はずがない。
「嫌です。絶対に、そんなの、頼まれません」
伝わった上でそう言うのは、きっと、アティの心が優しすぎるから。
だからこそ生き延びて欲しいと、レイは思う。
「だったらどうするんだい? 言っとくけど、今のあたいは自分の身を守るだけで精一杯。
あんたが戦力として当てになるならいい。でも、そうじゃないなら足手まといだよ」
「それは……」
あの氷塊を避けたのだから、身のこなしは悪くない。
しかし口ごもるということは、少なくとも今は力になれないと自覚しているのだろう。
「そして、一緒に逃げるとしたらあたいが足手まといだ。
こんな足じゃ、すぐに追いつかれるのは目に見えてる。
――ほら、早く行きな」
そっと、促してやる。するとアティの大きな目が潤み始め、涙の色が顔に浮かぶ。
今にも泣き出しそうになりながら、それでも彼女は、頷いた。
頷いて、くれた。
「必ず、生きて取りに来て下さい。私、待ってますから。約束、ですよ」
言い残し、背を向けるアティ。見送ってやれる余裕はない。
遠ざかっていく足音を聞き、深く息を吸い込む。右足に走る激痛と背中に残る鈍痛も、まとめて飲み込む。
「……待っててくれるなんて、いいとこあるじゃないか」
言ってやると、男は不愉快そうに顔を顰める。
「ふん、偽善に塗れた茶番だな。虫唾が走る。
安心しろ。貴様を殺した後、あの女も追って殺す。預け物は、あの世で返してもらうのだな」
吐き捨てると、男は両手の剣を構え直す。その口は既に、呪文を紡ぎ始めている。
戯言は終わりだという、宣言だった。
「言ったろ? まだ、死ぬつもりはないってッ!」
だから、レイも構えを取る。これ以上、話をするつもりはない。
アティが愚直なほどに言葉を投げかけても、男は揺るがなかった。
想いが乗った言葉が届かないのなら、想いが乗った拳で伝えるまで。
男の構えにも気配にも隙はなく、殺意に曇りはなく憎悪に陰りはない。
対し、こちらは満身創痍だ。怪我は酷く血液が不足し、右足は使い物にならない。
だからといって、死ぬつもりなどない。生きるため、アティに支給品を預けたのだから。
ダメージを考慮すれば、長期戦は不可能。勝機が見出せるのは、短期決戦のみ。
レイは、あらゆるわだかまりや雑念を取り払う。
不安、懸念、恐怖、悪意、悔恨。
その全てを除き去った胸に残るのは、波紋一つない水面の如き想いだけ。
まさに、明鏡止水。
静かで揺らぎのない想いを、澄んだ心で練り上げる。汚れのない想いは昇華され、力となって具現化する。
光が、レイの足元から立ち昇る。
天へと昇り上がる龍にも似たその光は次第に大きさを増し、完全にレイを覆い尽くす。
「心山拳、奥技」
光に呼応するし、大気が震え出す。極限まで高まった力が、夜空へと噴き上がる。
男が炸裂の呪文を唱え終わるのは、ほぼ同時。
「旋牙連山拳……ッ!」
「――イオナズン」
耳をつんざく爆裂音が轟く。だが、その爆風の中心にレイの姿はない。
一足跳びという表現では足らぬ速度で、レイは男の懐に飛び込んでいた。
正拳を打ち込む。当たらない。
背後に回り裏拳。受け流される。
左へ飛び込み肘鉄。掠めるだけに終わる。
片足を負傷しているとは思えない俊敏さを以って、男に波状攻撃を掛けるレイ。
しかし男は確実にその動きに追随し、的確に見切ってくる。
だとしても、構わない。
レイの速度は、飛躍的に増していく。
風を切り裂き大地を蹴り飛ばす。
側転の要領で右へ跳ぶ。両手を地に付いて左足で蹴り上げる。
――靴裏が、皮膚にめり込んだ。確かな、手応えだった。
その一撃をきっかけに、レイの敏捷性が男の動きを凌駕する。残像を残し、攻撃を仕掛けていく。
正面からの拳打、左からの手刀、背後からの当身、右に回りこんでの貫手。
鮮やかで芸術的な動作から生み出される連続技は、華麗で美しく無駄がない。
レイは止まらない。
編んだ髪を躍らせて旋風となり、牙の如き鋭い攻撃を繰り出し、連なる山をも砕こうと拳を叩きつける。
逆巻く嵐を思わせる無数の連撃を、あらゆる方向から浴びせていく。
その様はまるで高速の舞踊。見惚れるほどに洗練された演舞。
だが。
速度と威力の限界が、見え始める。足の負傷と背中の怪我が、限界を近づけていた。
更に伸びるはずの速度は頭打ちとなり、威力を激減させる。
「付け上がるな……人間ごときがぁッ!」
故に。
反撃の機を、与えてしまう。
側面に回りこんだレイに、男は刀を振りかざす。
大振りな、一撃だ。無理矢理に大気を叩き割る重い斬撃は、魔人の攻撃を髣髴とさせる。
「なめんじゃないよ! 人間の、心をッ!!」
それに、レイは真正面から対抗した。どのみち回避は、間に合いそうにない。
全身全霊の力と心を拳に込め、技にする。
男の鳩尾にレイの拳が。
レイの胸部に男の刃が。
互いの勢いを保ったまま、接触する――。
◆◆
鼻の奥にしょっぱさと息苦しさを覚えながら、アティは森の中を駆けていた。
振り返らずに、ただ必死で足を動かす。振り返ると、足が止まりそうだった。
唇を、強く強く噛み締める。そうやって口に力を入れても、嗚咽はどんどん溢れ出て零れ落ちてくる。
レイを放って逃げたアティを責める声が、心の奥から浮かび上がってくる。
彼女を助ける道を諦めた自分を、他ならぬ自分が責め苛んでくる。
あの状況を打破する手が見つからなかったのは事実だ。
サモナイト石もなく、支給された鉄球を自在に操れるほどの腕力もないとなれば、まともには戦えない。
だから、あのときアティにできたことは、レイの頼みを聞くだけだった。
彼女の頼みが、心からのものだと分かってしまったから。
そう、言い聞かせる。その度に、声は尋ねてくるのだ。
――本当に、他にできることはなかった?
――たとえば、私が残ってレイさんを逃がしていたら?
――たとえば、レイさんと協力して二人で戦っていたら?
戦えないとか、二人一緒では逃げ切れないとか、そんなものは言い訳に過ぎない。
諦めた事実は、変わらない。
情けなさが、悔しさがアティを苛む。
何が医者志望だ。何が元軍人だ。何が首席卒業だ。
そんなことには、芥子粒の意味すらない。こんな無様さでは、生徒だって守れるとは思えない。
ただただ無力さを痛感する。そして、それを言い訳にしている自分が、嫌になる。
アティは、封印球を強く握り締める。
もう、奇跡は起こらないのだろうか。この石は、力を与えてはくれないのだろうか。
自己嫌悪の渦がアティを飲み込んでいく。果てなどない闇の底へ、連れていく。
足が縺れ、転ぶ。
コートが土で汚れるが、払う気分にはならない。
情けない自分には、泥まみれの格好がお似合いだとすら思う。
起き上がり、振り返った。
アティが駆けてきた獣道が伸びている。レイを残してきた場所に繋がる、獣道。
そこにはまだ道がある。細く険しく先が見えない道の先で、レイは怪我を押して戦っている。
――このまま一人、逃げてしまっていいの?
心の声が、尋ねてくる。
その問いには、頷けなかった。道を見てしまえば、もう逃げられない。
逃げたくは、ない。
アティを逃がすことが、レイの望みだと分かっていても。
自分だけ助かろうとするなど、アティの信念が許さない。
無力だからと、何もせずにいるのは辛くて苦しくて、嫌だから。
「間に合ってください……!」
封印球に祈り、アティはレイの元へと引き返す。焦燥感に煽られて、急いで引き返す。
◆◆
激痛が残る鳩尾に、銀髪の男は手を当てる。呪文を呟くと、掌が淡く光り始めた。
優しくたおやかな光の正体は、傷を瞬時に癒し体力を回復させる呪文だ。
にもかかわらず、怪我の治癒速度は緩慢で、体力はほとんど回復しない。
むしろ、その魔法を使ったせいで余計に徒労感を覚える。
「効きが、悪いか……」
紅の瞳をした彼――ピサロが舌打ちを一つすると、癒しの光が消える。
回復魔法の効果があまり出ないとなると、無理はしない方がいいだろう。
――口惜しいが、逃亡した女はひとまず放っておくが賢明か。
人間に後れを取るなどとは思わないが、慢心や油断、過信は捨てるべきだと判断する。
今の戦闘で予想以上に消耗してしまったこともあり、慎重にならざるを得ない。
刀と短剣を納刀し、ピサロはマントを翻して歩き出した。
一時の休息のため、西の洞窟を目指す。
ピサロは、振り返らずに歩いていく。
太い幹に背を預け座り込んだまま、動かない格闘家に、一瞥すらせず、歩いていく。
心の拳すらも、ピサロの決意に皹を入れることは、叶わなかった。
【D-5 南東部 一日目 黎明】
【ピサロ@ドラゴンクエストIV 】
[状態]:全身に打傷。鳩尾に重いダメージ。
疲労(やや大)人間に対する強烈な憎悪
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:不明支給品0〜1個(確認済)、基本支給品一式
[思考]
基本:優勝し、魔王オディオと接触する。
1:西の洞窟へ向かい休息を取る。
2:皆殺し(特に人間を優先的に)
[備考]:
※名簿は確認していません。またロザリーは死んでいると認識しています
※参戦時期は5章最終決戦直後
◆◆
巨木が見えてきたところで、アティは、一層強く地面を蹴る。
転びそうになりながらも、少しも減速せずに疾走する。
耳が聞こえなくなったかと錯覚するほどの静けさが、戦闘の終了を物語っていた。
嫌な予感が鎌首をもたげてくる。心臓が狂ったように暴れているのは、全力疾走のせいだけではない。
木の陰から、三つ編みが見えた。
「レイさん!」
叫ぶ。
渇きを訴える喉を酷使して、名前を、呼ぶ。
「レイさん、レイさんッ!!」
縋るように、望むように、求めるように、欲するように。
それでも。
返事は、返ってこない。
足腰が震え、力が抜けていく。
走れなくなった体は、残った勢いに押されて進み、そして。
巨木の傍らまで、辿り着く。
――荒かった息が、詰まった。
「あ、あ……ッ」
夥しい血溜まりの中で、まるで眠っているように。
深い傷口を、夜気に晒しながら。
レイ・クウゴは目を閉じていた。
微動だにせず、目を、閉ざしていた。
「私、が。私が、逃げた、から。わたし、の、せい、で……ッ!」
足腰の震えは大きくなって全身へと伝わり広がり、立っていられなくなって。
腰が抜け、へたり込む。
まだ温かさの残る血溜まりで、身を汚しながら。
まるで、赤子のように、慟哭する。
ひたすらに広がる闇は、ただただ無情で。
泣きじゃくるアティを慰めてくれそうには、なかった。
【レイ・クウゴ@LIVE A LIVE 死亡】
【残り49人】
【D-6 巨木付近 一日目 黎明】
【アティ@サモンナイト3 】
[状態]:疲労困憊。コートと眼鏡とパンツと靴以外の衣服は着用していない。
強い悲しみと激しい自己嫌悪と狂おしいほどの後悔。コートとブーツは泥と血で汚れている。
[装備]:白いコート、水の封印球@幻想水滸伝2
[道具]:基本支給品一式、はかいのてっきゅう@ドラクエW
モグタン将軍のプロマイド@ファイナルファンタジー6
[思考]
基本:アリーゼを探す。
1:茫然自失。
2:アズリアを探してアリーゼ探索に協力してもらう。
3:他の遭難者やビジュという軍人も探す。
4:舟を襲ってきた海賊や島にいるかもしれない召還獣等に警戒する。
5:アリーゼと共に帝都に行く。
6:アリーゼを見つけてから服を取りに戻る。
[備考]:
※参戦時期は一話で海に飛び込んだところから。
※首輪の存在にはまったく気付いておりません。
※地図は見ておりません。
さるさん食らったので携帯から
以上投下終了です。感想指摘等ありましたら、なんでも言ってくださいませ。
投下乙です!
レェェェイイ!!!
カッコいいぜ……カッコよすぎるぜ……。
ピサロも強力な武器をゲットし、アティも今後が気になる展開ですね。
改めて投下乙です!
投下乙です!
ああ……俺の嫁がどんどん散ってゆく……
どいつもこいつも無茶しやがって……
レイさん南無。
ああ、やはりピサロにゃかなわんかったか。
投下乙! レェェェェェイ!!!!
リーザに続きレイまでもが! 俺の嫁が次々とカッコよく死んでいく! 悲しい反面、何か嬉しいw
これは前の話で繋がれたバトンを最良の形でリレーししています。いやーいい連携です。
ピサロは魅力的なマーダーになりましたね。クールなのに憎悪まみれ……これで最終形態があんなキモくなかったら最高だったのにw
レイは早期退場ですが、功夫編のテーマである『伝承』をしっかりと果たしましたね。
序盤で積まれたフラグは少ないので魅せて殺すのは難しい局面ですが、上手く原作のストーリーを使って魅せてくれました。GJ!!
すいません。トリそのままでした。見なかった事に……。
投下乙!
さらば、レイッ!!
ピサロとのマジバトルはカッコイイの一言。壮絶でしたGJ
アティもこれからどうなるんだ!?
ますます盛り上がってまいりましたねぇ
長生きできないと思ってたけどレイ退場か…
無常なり…
……ビジュ、せっかく予約されたのにこの組み合わせってw
葬式準備しとくかな〜
遅れたが投下乙でした
レイかっこよかったぜ!ピサロもいいマーダーで何より
しかし女キャラの死亡率が凄いなw
生きてる女キャラも、リルカはステルスマーダーと行動中、リンは皆殺しの剣で呪われてたりで大変なことになってるし、女に優しくないロワだなw
比較的平和なのは、幻水とクロノの女性陣くらいか。
死者追悼スレは女の子いっぱいでまさに天国といったところかw
>>580 集いの泉のブラ組を忘れてもらっちゃ困るぜ。
つかサモン組、テイルズやSOシリーズ押しのけて選ばれたわりには予約率低いな。
SRPGロワで最初に書かれたアズリアが未だ書かれていないとは・・・。
あとビクトールも残ってるから、早くなんとかしないといけないな。
ビクトールかぁ…
書きにくいキャラではないはずなんだが
>>581 太った親父にとって?
神官や渡辺もいるから決してハーレムではない筈だが…。
つか死者スレのドラクエ組のミネアに対する扱い酷すぎw
>>582 アズもビクも立ち居地が難しいんだろう。
参戦時期によってはおいしくもあるから、書き手さんがたも妄想しとるんだろう。
>>584 渡辺って誰かと思った。
見せしめで殺された奴なんだな。
メガザルがある限りミネアが生還できる可能性なんて万に一つもないんだろうなぁ……なんて
つか自己犠牲呪文・技持ちのキャラはどんなに最後の方まで生き残っても死亡する
ジンクスみたいなもんがあるからな。FFDQロワの5主、ミネアしかりテイルズロワのコレットしかり。
それを使うから燃えるっていうのもあるんだけどね。
それでも俺はミネアには生き残って欲しいと思ってる。
でもどのキャラだって最後まで生き残れる確率なんて殆ど無いからな
死に際の活躍フラグがあるだけでも幸せだよ
期限をちょっとおーばーしてしまいましたが、ブラッド、セッツァー、ヘクトルを投下します。
水が透き通って晴れていればそこが見えそうなくらいほど綺麗な川。
その川の流れはゆっくりと、かつ確実に南へと進んでいく。
ブラッドという大きな船を浮かべながらゆっくり、ゆっくりと進んでいく。
どれくらい流れているだろうか? ブラッド自身は一向に目を覚ます気配は無い。
ただ、彼は幸運なことに大きな岩に引っかかることができ、流れることを止められたのだ。
しかし、彼はまだ目を覚まさない…………。
鎧には数々の打痕。酷い所は金属が拉げてしまっている所まである。
しかし鎧を着込んだ本人、ヘクトルに目立った外傷はない。
それもそのはず、彼が今背負っている女性が傷を治したからだ。
……自らの命を賭してまで。
もう動かない女性は担いでみてもやはり異様なまでに軽かった。
死人はこんなにも軽いものなのか、と不思議な感覚にすら陥りそうなくらい。
なのに軽いはずの女性が、ヘクトルに重い重圧を与え歩みを鈍らせる。
ふと気がつけば、ヘクトルの目の前には砂漠が広がっていた。
もとより目指していたわけだが、半ば無意識に足を進めていたためどれくらい歩いていたのかの自覚は無かった。
ヘクトルが此処に来た理由は一つ。
「すまねえ、本当はしっかり埋めてやりたいんだが……」
ヘクトルは少しへこんだ所に彼女を寝かせ、上から周りの砂を被せていく。
時間はかかるものの、穴を掘るよりかは簡単に済む埋葬だった。
砂が彼女の全身を覆いつくすように被さった所で、ヘクトルは刃の折れた剣をそこに突き刺す。
「ホルンの魔女……リーザ。アンタの分まで俺はあの野郎をぶっ潰す。
アンタが成し遂げられなかった分まで……俺に任しとけ」
その言葉と共に、彼女のデイバッグに入っていた透明の球体を天に掲げる。
数秒その姿勢で固まった後、墓というには簡素すぎたそれに背を向けて走り出した。
今のヘクトルにはグズグズしている時間は無い、ましてや後ろ向きに進むなんてもってのほかだ。
振り返っている時間はない、今は一秒すらも惜しい。
このフザけた殺し合いを止めるための仲間を探すために、自然とヘクトルは駆けていた。
外に出て数分、ふらふらとした足取りのセッツァーは回収したトルネコのデイバッグを手に取った。
デイバッグを二つ持つのも億劫だったので、中身を全て自分のデイバッグに移し変えることにしたのだ。
トルネコのデイバッグの中身は一切確認していない、ひょっとすればこの槍より扱いやすいものが入っているかもしれない。
期待を膨らませながら中を漁ってみるも……セッツァーにはとても扱えたものではない物が二つほど。
唯一使えそうだったのが銀色に輝く一枚のカード。硬さは申し分ないがいつも使っているトランプよりかは扱いづらい。
無いよりはマシと言い聞かせカード以外の物を自分のデイバッグに仕舞い込み、銀色のカードをコートのポケットに押し込んだ。
そして、荷物を移し変える際に気がついた一冊の本に目を通す。
不幸にもこの殺人ゲームのチップとなってしまった者たちの名前が並べられている。
もちろん自分、「セッツァー=ギャビッツァーニ」の名前も。
驚いたのはそこに並ぶ他の名前である。
ティナ・ブランフォード、エドガー・ロニ・フィガロ、マッシュ・レネ・フィガロ、シャドウ、ゴゴ、ケフカ・パラッツォ。
ケフカとゴゴという人物以外はかつてセッツァーの仲間だった人間だ。
ケフカに至ってはあの瓦礫でできた塔でお山の大将を気取っているが、力は本物である。
この五人の強力さは自分も良くわかっている、真正面から殺害するとなると多少無理がある。
しかし、ゲームに勝利し配当を頂く上では避けては通れない壁である。
どんな手段を使ってでも、この五人はできるだけ早めに排除しておきたい。
ありとあらゆる手段を考えているうちに、気がつけば目の前に一本の川があった。
何の変哲も無い……筈だったが、どういうことか全身にやけどを負った男が倒れこんでいる。
セッツァーは槍を手に持ち、男へと足早に近づく。
どうやら男は気絶しているらしい、ここで心臓を一突きにすればいとも容易く殺せる。
しかし、此処でこの男を殺したところでメリットはアイテムが増える程度だろう。
もし殺す瞬間を誰かに目撃されたとなれば自分が人殺しになっていることがバレるかもしれない。
その上この怪我である、放って置けば勝手に死にそうでもある。
後始末、その点を如何に綺麗にできるか。
まだまだ敵を作る状況ではない、正面から戦闘を挑まれ続けてはさすがに生き残れない。
「シャドウ……ヤツなら、どうするだろうな」
こういう場面に場慣れしていそうな仲間だった男の名前を呟く。
槍の構えを解き、怪我の男を川から引き上げようとしたその時。
「おい、アンタ」
見知らぬ方向から唐突に声をかけられた。
声の方向へ振り向くと、微かに息を上げた男が立っている。
「単刀直入に聞く、あんたは殺し合いに乗ってるのか?」
ナイフを構えながら鎧の男はセッツァーに問いかける。
自分の得物は槍、相手はナイフ。
武器のリーチ、攻撃力を取れば自分が上かもしれないがどうやら戦闘経験の差は大きそうだ。
相手の体格、構えからしてもなかなかの熟練者だと感じられる。
無駄に戦闘をして体力を削られるのは避けたい。
その上鎧の男はセッツァーを見る前に怪我をした男にも目を配っていた。
セッツァーはそれを見逃してはいなかった、警戒されているのは間違いない。
無駄に敵を作るのは……やはり賢明ではない。
「まさか……冗談じゃない」
セッツァーは槍を投げ捨てやれやれといったポーズをとり、笑った。
ヘクトルの構えが解かれるのも、すぐの事である。
「いきなりこんなところに連れて来られて、歩いていたら川に人がぶっ倒れてたんだ。
様子を見に来ないほうがおかしいだろ、それで今どうしようかと……な。
ちょっと手伝ってもらってもいいか? 俺一人じゃ完璧に引き上げるのは難しそうだからな」
その言葉を聴き、鎧の男はセッツァーへと歩み寄る。
そして、二人そろって川に浮かぶ男の体を掴む。
「せー……のォッ!!」
水しぶきを上げながら一人の男が川を脱出し陸へと上がる。
躍り出る男は、まるで鮭のように。地面へと放りだされた。
未だに目が覚めない男を目にして、二人は無性に笑いがこみ上げてきた。
「……しっかしひでぇ怪我だな」
セッツァーがそう呟くのも無理はない、怪我の男の全身の火傷は皮膚の色を変色させるほどの強烈なものだった。
幸い、川に漬かっていた事で悪化はしなかったようだが、それでもひどい怪我であることには変わりない。
セッツァーは静かにわずかに覚えた魔法のうちの一つ、ケアルラを詠唱し始める。
柔らかな光がブラッドを包み込み、ブラッドの火傷が少しだけ回復しているように見える。
二度目の光景ではあったが、鎧の男はやはり驚きを隠さずにいられなかった。
「……アンタもか。 なんで杖もなしに回復魔法が使えるんだ?」
セッツァーは別段驚きもせずに、静かに鎧の男のほうへ向く。
「あー、これにはそのいろいろ理由があって……えーと」
セッツァーが頭に手をやっていることに気がつき、鎧の男は急いで口を開く。
「あ、ああ。俺はヘクトルだ。あんたは?」
「……セッツァー、夢を追い続ける男セッツァーだ」
ヘクトルは何気ない自己紹介だった。
だが、セッツァー違った。もう一度確認するため。自分の意思を揺らがせないためでもあった。
「……で、リン、フロリーナ、ニノってのがアンタの仲間でジャファルってのが一応気をつけるべきなんだな?」
互いの世界、魔法のこと、さまざまなことを交えながらの軽い自己紹介の後にお互いの情報交換を始めることにした。
「ああ、リンはこんな状況でも人を斬るってのはよっぽどのことじゃない限りねえ。
ニノはまず無いな、あいつも人を殺すようなヤツじゃない。ジャファルの野郎もニノのおかげでマシになりつつあるが……気をつけたほうがいい。
フロリーナも……大丈夫だ、殺し合いに乗る人間じゃない。
ヘクトルは一切嘘を交えずセッツァーに話す。ジャファルに気をつけたほうがいいというのは的確な情報ではあった。
しかし、現実は残酷なことにそれ以外にもリン、フロリーナの二人が殺し合いに乗っていることを知らない。
「そうか、わかった。俺が知ってるのは……」
セッツァーも名簿を片手にヘクトルに話す。
「まず、ティナだ。コイツはヤバイ。かつて魔導アーマーっていう兵器を使って敵軍の兵士を何十人も殺戮したことがある危険なヤツだ。
しかも俺より魔法の知識に秀でているから戦闘になるのは避けたほうが良さそうだぜ」
セッツァーは喋る、かつての仲間のことを。
「エドガー、こいつもヤバい。国王なんだが自分の国を機械で埋め尽くしてそのうち世界を征服しようだなんて考えてるタマだ。
けったいな機械を使ってあたりのやつらに攻撃を仕掛けてるかもしれないな」
セッツァーは喋る、かつて仲間だったもののことを。
「マッシュ、こいつは安心だ。エドガーの弟なんだが兄貴のやり方に嫌気が差して国を抜け出したらしい。こういう殺し合いには乗らないタチだとは思うぜ」
セッツァーは喋る、排除すべき存在のことを。
「シャドウ、一番危険だな。受けた仕事は必ずこなす。たとえそれが殺人だったとしても……人を殺すことに躊躇いはねえ、近づくのはやめたほうがいい。」
セッツァーは喋る、己の夢のために。
「ケフカ、絶対に安全だ。魔法の知識も豊富だ。こういう殺し合いにはまず乗らないヤツだしな。この忌々しい首輪もなんとかしてくれるかもしれねえ。こいつを最優先で探したほうがいいいかもしれない」
セッツァーは喋る。若干の嘘を交えて。嘘と真実を交差させ、嘘を目立たなくさせる。
結果的にヘクトルには嘘が真実だと刷り込まれていくだろう。
ギャンブルでも使うブラフのテクニック、相手が見抜けるかどうかの問題だ。
「こいつらの特徴だが……」
ここから先は嘘を交えずに述べる。
特徴で嘘をつくメリットは無い。が、本人像で嘘をつくメリットはある。
ティナが殺戮兵器だったのは事実だ、そこを見知らぬ人物に突かれれば多少ひるむことはあるだろう。
エドガーはこの首輪を真っ先にどうにかしそうだ、このゲームを壊されてはせっかくの夢もかなわない。
ヤツの首輪解除というイカサマを真っ先に防がなければならない。
マッシュは……特に気を配る必要も無いだろう。
シャドウが危ない人物なのは事実だ、正体がつかめない。早めに消えておいてほしい人物だ。
ケフカは真っ先に取り除いておきたい、だがヤツに他の人物をぶつければヤツはきっと利用しつくすかその場で殺すだろう。
効率はいいとは言い切れないが、このゲームの参加者を減らしてくれるには違いない。
「とまあ、こんな感じだ。分かったか?」
ヘクトルは頷く、それをみてセッツァーは親指を立て、笑顔を作る。
ヘクトルは知らない、その笑顔の下に潜むものを。
「さて……俺はそろそろ行くぜ。止めなくちゃいけない奴等がいっぱいいるからな」
セッツァーは槍を手に持ち、ゆっくりと進みだそうとする。
「おい、待てよ。俺も一緒に行くぜ」
ヘクトルがセッツァーの肩を掴み、セッツァーを引き止める。
セッツァーはゆっくりと手を振り払い、進み始める。
「悪いな、これはちょっと俺の問題でもあるんでな。俺ひとりにやらせてくれ。それに――」
セッツァーは指を指す。ヘクトルの背後で倒れている男に向けて。
「あいつ、あのままほっといてたら死ぬかもしれないだろ? どうか面倒見てやってくんねえか?」
ヘクトルはその言葉に多少たじろぐが、最終的にはセッツァーの肩から手を離した。
「分かったよ……その代わり、絶対死ぬんじゃねえぞ」
「ああ、分かってる」
ヘクトルと拳を突き合わせ、別れの合図を交わす。
今から歩き出そうとしたその時、セッツァーの歩みが止まる。
「そうだ、コレ。置いてくから使ってくれ。どうにも俺には扱えないんでな」
セッツァーのデイバッグから出てきたのは一振りの斧。
それを地面に突き刺し、セッツァーは闇へと向かう。
「じゃあな」
短く交わす別れの言葉。
「生きてたら会おうぜ」
「ああ、お互いな」
その言葉が宿す真意に、当分気づくことはない。
【G-6 南部、川辺 一日目 黎明】
【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:若干の酔い
[装備]:つらぬきのやり@ファイアーエムブレム 烈火の剣、シルバーカード@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:トルネコのランダムアイテム2個(セッツァーが扱えるものではない)、基本支給品一式×2(セッツァー、トルネコ)
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:手段を問わず、参加者を減らしたい
2:扱いなれたナイフ類やカード、ダイスが出来れば欲しい
※参戦時期は魔大陸崩壊後〜セリス達と合流する前です
※名簿を確認しました。
※ヘクトルの仲間について把握しました。
「さて……と」
斧を地面から引き抜き、ヘクトルは倒れている男のそばによる。
万が一この男が起き上がりざまに襲ってきたときのために、武装は剥がしておきデイバッグは没収しておいた。
そして座り込み考える。セッツァーが信用に足る人物かどうかを。
通りすがりだった自分をいとも容易く信用し、さらに名も知らないこのけが人に回復魔法をかけるほどのお人よしだ。
確かに何か考えているかもしれない、しかし現在のヘクトルにはセッツァーを悪と断定する要素はない。
相手にわざわざ武器を渡し、戦力を増強させるのは並みの考えではない。
しかし可能性を考え始めればいくらでもセッツァーを疑う要素は見つかる。
「あー……めんどくせえ」
が、ヘクトルはそんな難しいことを考えるのは得意ではなかった。
未だ起きない男の隣で、ヘクトルは一人夜空を見上げる。
リーザの遺品のガラス玉を突き上げてみる。光はない夜空だというのに、妙に輝いて見える。
キラキラと、キラキラと。幻のようにビー玉は輝く。
ヘクトルを、見守るように。
【H-6 北部、川辺 一日目 黎明】
【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:全身打撲(小程度)
[装備]:ゼブラアックス@アークザラッドU
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、ビー玉@サモンナイト3、ブラッドの不明支給品1〜2個、ドラゴンクロー@ファイナルファンタジーVI
基本支給品一式×3(リーザ、ヘクトル、ブラッド)
[思考]
基本:オディオをぶっ倒す。
1:仲間を集める。
2:ひとまずブラッドの保護、目を覚ますまでは一応そばにいる。
3:セッツァーをひとまず信用。
[備考]:
※フロリーナとは恋仲です。
※鋼の剣@ドラゴンクエストIV(刃折れ)はF-5の砂漠のリーザが埋葬された場所に墓標代わりに突き刺さっています。
※セッツァーと情報交換をしました。一部嘘が混じっています。
ティナ、エドガー、シャドウを危険人物だと、マッシュ、ケフカを対主催側の人物だと思い込んでいます。
【ブラッド・エヴァンス@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:気絶、全身に火傷(多少マシに)、疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:主催者を倒す。
1:気絶中。
[備考]
※参戦時期はクリア後。
投下終了ですー
最後のほうに焦って推敲したのでけっこうミスがあると思います……
何かあればどうぞ。
そろそろ次スレが必要だと思うんですけど、どうしましょう?
投下乙!
セッツァーめ、なんというギャンブラー!
恐ろしく巧妙な彼の手口は、これから先も皆の中を掻き回していきそうだ
果たして彼との邂逅がヘクトルの進む道にどう影響していくのか……楽しみ!!
GJ
このド外道が! 昔の仲間ですらおとしいれるセッツァが良かったです。
投下乙!
ナイスかく乱。こういうのはセッツァーの得意分野ですね。
アホみたいに強いマーダー達の中で、頭脳派で冷静なセッツァーがどこまでやれるか、楽しみですね。
そしてヘクトル斧ゲット。これで強対主催の仲間入りかな。
リーザの意思をついでやる気にはなっているが、今回のニセ情報によって空回りしないか心配……それはそれで面白いけどwGJ。
投下乙
セッツアー、いいマーダーっぷりだ
情報撹乱は結構厄介だなあ
ヘクトルを通して情報が錯そうしそうだぜ
「ひゃはは、ひゃははは! 死ねエェェェェェ!!」
遡ること数十分ほど前、彼女とちょこは突如緑の髪の男の襲撃を受けた。
振り下ろされた剣から迸る雷光。
ロードブレイザーという世界を焼き尽くしかねない脅威と戦ってきた彼女からすれば大した事のない一撃に見えた。
それでも、聖剣の加護が無い今の彼女にとっては、十分傷を負わしうる攻撃で。
当然当たるわけにはいかなくて、必死で後ろに飛び退いた。
繋いでいた手も離して。
自分が生き残る一心で。
一人だけ死の顎から逃げた。
直撃。
ちょこの幼い身体を電撃が打ち据える。
大人に致命傷を与えるには程遠い威力ではあったが、相手は幼子だ。
最悪、死んだかもしれない。
そう考えた瞬間、胸の奥が僅かに軋んで。
「おいおい、逃げやたったよ! こいつ、ガキを見殺しにしやがった! ヒヒヒヒヒヒヒ!」
「すっごーい! ピカって光ってビリビリ〜ってきたのー!! ゴーゲンのおじーちゃんみたーい!!」
「いひっ、ひゃはははは!うひゃははははは……は?」
それがどういう感情か理解する間もなく、驚愕することとなった。
無傷だったのだ。
落雷を浴びたはずの少女は変わらず笑みを浮かべ、その場でぴょんぴょんぴょんぴょん跳ねていた。
あろうことか跳ねるのに合わせて万歳までしている様は、それだけを見れば非常に可愛らしいものであったが。
「て、手前ェどおして!?」
「今度はねー、ちょこの番なの! いっちゃえ〜!」
声に合わせ炎を纏った巨大な鳳がちょこの前に顕現する。
それだけで砂漠は昼間の姿を取り戻したかのように熱を帯びた。
歪む空気、立ち込める熱風。
良く見知った光景が広がっていた。
規模こそ控えめだが、ロードブレイザーの炎は、いつもこんな風に命を寄せ付けないものだった。
「ひいぃぃぃ……っ!!」
砂塵を舞いあげつつ迫り来る炎熱に男が悲鳴を上げ、デイパックへと手を突っ込む。
怪鳥の爪と嘴が男の服を焼き焦がしにかかるなか、必死で取り出した緑色の玉を男は放り投げた。
しれで、決着だった。
鳳凰をも飲み込む莫大な量の煙が辺りに蔓延。
「けほけほ。真っ白で、何も見えないの〜」
ようやっと視界を取り戻した時には男の姿はどこにも無かった。
†††
思いっきり誤爆しました。
本スレその2の方に、きっちり全部投下しておきました。
支援感謝。