いいんじゃないすか
ここ実は過疎だし。
ではお言葉に甘えて...短編シリーズの予定が、2話目でネタ切れしたwww
ちなみにシリーズ名は『青薔薇記憶外科』
青薔薇一輪目『昇天』
埃っぽい土(ダート)のスペースが、この青薔薇が咲き誇る無限の庭園には用意されていた。
『ヒンメル!』
「彼」は軽やかに呼びかけた。
霧の中からぼんやりと力強く何かがやってくる。
駆けてきたのは銅色に眩しく輝く体を優雅に見せつける鹿毛(かげ)と呼ばれる毛色の牝馬(ひんば)であった。
『よしっ、よーし、よーし!』
「彼」はその華麗なる牝馬(レディ)の首を抱きしめ、そのレディは鼻面で「彼」に応えた。
絵になるような美しい光景だった。 「彼」の年は若干18、身長は160cmを切る小柄で細い体型であった。
この年になっても「彼」は青年ではなく少年にしか見えない。 無邪気に馬と戯れる姿も何もかもが純粋だった。
『お前は相変わらず可愛いやつだなあ、ヒンメルよ、あははは、そんなに舐めるなよ』
ヒンメルとは愛称で、この幻の様に美しい馬の名は正確にはヒンメルファールトと言う。
『お前は察しがいいな、いや、いつもやっているからか』
「彼」はポケットから角砂糖を一粒取り出し、ヒンメルに与えた。
誇り高きヒンメルも「彼」には全てを許した。 仔馬のように無邪気に甘えている。
この時間が「彼」の最も幸福な時間である。
『よしっ』
言うと、ヒンメルはいつの間にか馬具(ばぐ)を身に着けていた。
『…っと、いいぞ、最高のコンディションだ!』
ヒンメルの鬣(たてがみ)を掴むと、「彼」は身軽に跳び上がり、ヒンメルの背に鞍(くら)越しに乗った。
狭かった土(ダート)の範囲は、ヒンメルの手綱を「彼」が掴んだ瞬間に、その視界一杯に広がった。
『行くぞ、ヒンメルッ!!』
掛け声に合わせ、その大柄なレディは勢い良く両の前脚を空中にひるがえし、一声、いなないた。
全てが夢のように、夢のように、夢のように!
情景がスピードに乗って無限に開けて、霧がかっていた視界は果てしない「彼」とヒンメルの為の土(ダート)コースに変貌した。
どこまでも走り続ける事ができた。 「彼」もヒンメルも不思議と一向に疲れなど感じ無かった。
一瞬が永遠に、永遠が一瞬に違いなかった。
澄んだ空気が「彼」の肺を満たしていく。 「彼」の血は快く燃えていく。
―と、走り走り果てた先に白くなびくものが立ちはだかっていた。
『…!?』
「彼」は急遽、ヒンメルの手綱を引き上げ、急ブレーキをかけた。
白くなびいているものの正体は、白衣であった。
いつ薔薇園に戻ったのか、青い薔薇の植え込みの前に白衣をまとう人物が、陽炎のように現れたのである。
『やっ…、やあ、先生じゃないですか!』
「彼」は馬上からその白衣の人物に、先に声をかけた。 何故だか声はうわずっていた。
『……如何かな…』
医師、または教授、研究員らしき白衣の人物は、脚をずらして斜め前に立ったまま、流し目で「彼」にぼそりと問いかけた。
『え…ええ…最高です! 僕も、ヒンメルも』
『それは良かった。 私独自で開発した実験的試みも成功したのだね』
先生と呼ばれる者は相変わらず身体を正面に向かせず、目線だけを投げて受け答える。
『時に、キミの視界は今どうなっている? 何が見えている』
『あ…、はあ、ええと…まず先生』
『それは愚問だったね、私以外他は?』
『…青い薔薇…青い薔薇の植え込みが…』
『土(ダート)ではないのか…他にキミからの質問はあるかね?』
『ええっと……あの…言ったら何かが怖い気がするんですけど』
『何かな』
『先生の白衣が見えた瞬間、僕は何故かとても強い恐怖を…おぼえました』
『なるほどね、白い物が怖いと言うんだね?』
『はい…でも、何故怖いのか、絶対に思い出したくない』
『…ふむ』
先生と呼ばれる人物は、見たことのない外国の煙草を一本取り出し火をつける。
煙から甘いコーヒーの香りがする、何とも不思議な煙草であった。
『キミは、限界が近いかも知れない。 残酷な宣告だけれども、キミも実験段階なのだと了承した筈だ』
『は……はぃ…』
「彼」は目に涙を浮かべていた。
『夢…夢を見るんです。 いえ、夢か…解らないような…幸せなのに、何で』
『ああ、悟ってはいけない! 気付きが限界に達すれば、キミの「此処での」寿命は縮む!
大体は10年前後の「処置」ができるまでになったんだ! キミはまだ…生き給え「此処」で』
『じゅう…ねん』
「彼」ははっとした。 何かがひび割れて行くような感覚が襲ってくる。
『よし給え!!』
『だ…だめだ…だめ…聞かずにいられない…先生!』
『押し黙れ!』
『あ、あああああ』
『しっかり!』
『だめだ! 気になって仕方がないっ!』
「彼」が叫ぶと庭園の青薔薇たちがざわめいた、そして、ヒンメルが消え、「彼」が一人で立ち尽くして先生と呼ばれる人物と対峙していた。
『ああ…あそこは! そうだ、あの大きな白い埒(らち)が、白い埒が迫ってくる!』
『キミ…いや、鴫原(しぎはら)くん!』
それが「彼」の名だった。
「彼」こと鴫原は頭を抱えてうずくまった。 庭園の石畳の上に膝をついて。
『あ…ああ、僕は。
もう18なんて年じゃないはずだ…、い、嫌だ…見えてくる!!』
『鴫原くんっ!』
先生と呼ばれる人物の叫びは虚しく響き渡った。
鴫原は「あの瞬間」を思い出してしまった。 もう誰の声も届かぬ内的世界に意識が飛んでいる。
鳴り渡る怒涛のような歓声。 鮮やかな礼服に身を包んだ合奏団はまるでオーケストラに見える。
とても広いゲート。 16頭もの名だたる名馬達。 あまりに広い馬場。 ベージュのスーツの男性が旗をかざす。
ここは中央・東京競馬場なのだ。 何もかも華やかで鴫原は重圧を感じた。
鴫原の所属する高崎競馬とは何もかも違いすぎる。 それでもパドックには高崎からの応援団がいた。
記憶が戻っていく。 自我が揺らいでいく。
「天からの使い・高崎の女神ヒンメルファールト」。 パドックには立派な横断幕があった。
鞍にまたがると見慣れた顔が多くあった。
鴫原はその笑顔を見て少しだけ安心したのを覚えている。 だが馬場は荒涼としていた。
「ヒンメル伝説幕開け、高崎で無敗12連勝、もはや敵無し!」「女神光臨ヒンメル素質あり本誌大胆◎」
無敗の女神ヒンメルファールト、その馬と一緒にデビューして勝ち続けた主戦騎手・鴫原。
土(ダート)しかない北関東の地方競馬で連勝した結果、中央のダート最高峰、フェブラリーステークスへの参戦―。
3番人気、単勝8.6倍。 地元での無敗伝説と話題性でここまで注目を集めた。
『フェブラリーステークスのゲートが開かれました!さあ中央のプライドが勝つか地方の底力か勝つか!
先頭スティングレイ、後方待機フェイクフーリガン、中央ダートの守護神、女神の力を止められるか!
今日も堂々1番人気レアクティオーン! そして北関東最強馬ヒンメルファールトは最内キープ!
いい位置取りだいい位置を選んだのか僅か18歳のパートナー!鴫原智治(ともはる)ジョッキー!!』
実況は初めの所しか覚えていない。 ヒンメルと共に走るだけで精一杯だった。
広がる雄大なコースは歪んで見えて把握できなくなっていった。 声援だ、声援が聞こえる。
「僕」の名前を、誰か、が。
『鴫原、鴫原!!』
『鴫原! と…、りを…、隣を…よく………』
でも、なにか、声援と、ちがう。
でもこのままカーブを曲がって、なんとか、直線らしい所に入れば―。
『ヒ、ヒンメル…、鴫原あぁぁぁぁーっ!! あぶな』
地元のひとたちの声は、ぷっつりと、きこえなくなった。
「僕」は気が付くとダートの上で真っ白な埒を見上げていた。 腕が…すごく痛い。
『おっとここで一頭落馬ー!!
…ヒンメルファールトです!!落馬したのは7番ヒンメルファールトです!!
馬混みで馬体接触、故障発生で鴫原ジョッキーが内埒に激突した模様!せ…先頭は1番人気レアクティオーン!
後続馬が続々とダート王者の後を追います!マーブルメンが突出して伸びている!しかし届かない…』
そうだ、「僕」のヒンメルは…ヒンメル…。
『!』
ヒンメルは叩き付けられた「僕」の真横にいる! そうだ、ヒンメルは、ヒンメルは「あの時」…。
左回りのコース最内で埒に投げ出されて左腕を強打した「僕」なんかよりもっと酷い怪我をしていたんだ。
お前は脚が…左前脚が! 明らかに折れていた。 それだけならまだ良かったんだ。
『ヒンメル!』
「僕」は首を捻り彼女を見て叫んだ。
今すぐうずくまれ、安静にすれば助かるから! もう競争なんかどうでもいいんだよ!
『ヒンメル!』
左前脚を折ったままヒンメルは立っていた。 まだ後続から馬が来る…? 守ってるつもりなのか?
それで「僕」を守りきったヒンメルは力尽きて左前脚からよろけて、「僕」に向かって倒れ―。
―なかったんだ。 直角に折れてしまった左前脚と左後脚で力一杯踏ん張って、「僕」を押し潰すまいと。
『ヒンメル! ヒンメルッ! いいんだよ、僕の事なんか気にするな!!』
確か「僕」は泣いていた。
でもヒンメルは右側の力を抜いて、一旦よろけた「僕」の反対側に倒れていた。
無茶をしたから―左前脚複雑骨折に右後脚骨折。 馬は身体の仕組み上、立てなければ生きられない。
『鴫原さん! 無事ですか!?』
救護の人が来てくれた、「僕」の左腕も骨折していたと後で解った。
『僕は生きてる! ヒンメルファールトは…』
『………』
『ヒン…メル』
白衣の獣医団に囲まれて、布を被されていた。 もう解りきっていたから、楽に、と。
埒も、救護班も、獣医団も、ヒンメルが隠された布も。 みんな―白。
『あ…ああ…ヒンメルは…もう、いないよ…僕は…「時を幸せだった頃のまま、かつ永遠に止めてくれる処置」ができると言う
あなたのホームページを見て…ここに来ただけなんだ』
「彼」は我に返った。 造花の青薔薇の敷き詰められた偽物の庭園で。
『…すまんね。 まだ完璧に時を止めるまでの暗示はまだまだ未熟でね、完成していないのだよ。
私は単なる時代遅れの心理学をかじっただけの精神科医くずれに過ぎんから…。
患者さんが過ぎた日の幸せを忘れる気にならない事に頼らざるをえない。 いやそこが大事な所さ』
『くそっ!! 今の僕は一体いくつだ!』
『29くらいじゃないか』
『………あなたが憎くなったけど…紛れもない僕の記憶、僕の選択、僕の人生です。
一応、幻でもヒンメルに逢わせてくれた事にも感謝します。 でももう二度とあなたには会わない』
『ああ、それがいい、キミは意志が強いようだ。 私は弱い者を救済したいだけなのだよ』
「彼」…否、「鴫原智治」は白衣の人物に背を向けた。
『最後に、先生』
『何かね』
『ヒンメルファールトの意味を知っていますか』
『ああ、ドイツ語は少しは解る。 だが是非キミから聞きたいね』
『「ヒンメル」はドイツ語で天国。 「ヒンメルファールト」とは、キリストの昇天、だそうです』
『…そうだな』
『この名を背負った運命なんでしょうかね。 いや、もうあなたとの話はいい』
『ふむ』
『じゃあ…さようなら』
鴫原は庭園の長い道を歩き、重々しい鉄細工の門を開き、去っていった。
『さて…時を止める方法を改善せねば…まだまだ予約が詰まっているからな…』
白衣の人物は、口元を歪ませた。
(了)
お粗末。
蛇足。先生は女医。
青薔薇二輪目『線路』
「彼」は頬杖をついて車窓の景色を眺めていた。
『惜しいですね、この影森(かげもり)鉄道が廃線になってしまうなんて。 せっかく開通から100年目に入る所で…。
僕ぁその100年のうち何年この路線を使ってきたでしょうか。 ほんの10分の1ですよ。
通学中、JRの最寄り駅まで走る時間が無い時はこちらを利用させて頂いてました。
一時間に一本ですが、あの頃の7時台のダイヤがちょうど良かったんですよ。
あれから若干変わってきましたがね。 SLで旅行にも行きました。
JRと提携できていたし非常に便利だったのですがね…まったく何故でしょうねぇ…。
新幹線までスムーズに乗り換えできたと言うのに。
しかし、何も不便は無いけども、やはり現に車両に居るのは僕一人ですからね』
天井の中央では古びた大きな扇風機が首を振り、「彼」は心地よい風を受けている。
布は薄いがやたらスプリングの効いているチープな座席。 だが座り心地は良い。
「彼」はとかく理屈屋で饒舌であった。 元々、「彼」は所謂鉄道マニアである。
が、この「彼」は自分の住所に根付いていた私鉄に特に入れ込んでいた。
『JRには無い味がありますよ…。
「運転中は運転士に話しかけないでください」とはありますが、最早この状況ではね。
話し相手も運転士さんしかいない訳ですよ』
『………』
運転士は応えない。
「彼」は黒縁の眼鏡のズレを直す仕草をした。
『はは…。 最後まで仕事をやり通す貴方には好感が持てますよ。 ホームで話し込んでいてダイヤが1分狂ったりしてましたがね』
『………』
『いやぁ、この揺れがね、独特ですよ。 かつて地下鉄で使われた車両が文字通り日の目を見たと…』
『………』
『終点にはなかなか着きませんね、影森鉄道はせかせかしたJRや大手私鉄と違ってのんびりで良いですよ。
三峰口(みつみねぐち)か…。 年に一度は必ず出かけに行くようにしてますが。
そういう人も何故いなくなってしまったのか…ロープウェイもあったのに』
『………』
『いなくなる…か』
窓からは豊かな緑と真っ直ぐで強い陽光が差し込む。
「彼」はずっと愛すべき風景を見ていた。
この光景を春夏秋冬、365(366)日、同じものは二つと無い風景を一体何度見ただろうか?
『まったく…いつまでもこうして走っていられれぱ良いのにな』
窓側の座席で腕組みしつつ切なく笑う。
『いつまでか…いつまで? 次の駅は…いや、もう終点だろう? いや、これでいい…』
「彼」は一瞬、目眩を覚えた。
『ともかく…いつまでもこうしていたいものですね、運転士さん』
『………』
『いやぁ、今日は本当に無口ですね、先頭車両に僕一人だけの時なんて多々あったではないですか。
もう注意書きなんて形だけで時々談笑したものではないですか、色々と…』
『………』
『色々…? 鉄道蘊蓄も…季節の話も…あの話題も…。
語り尽くしてしまったっけ…』
『………』
『語り尽くした…』
『………』
「彼」は脳貧血の如く視界にノイズが走り暗くなって、体が冷えてゆくような嫌な感覚に襲われた。
『いや、もう…あれだけ親しくなれば当たり前ですね、話題が無くなるぐらいは』
『………』
『何とか言ってくださいよ、気分が良くないですよ』
『そうですね』
『その通りですよ、まったく…』
窓の外には自分の好きだった景色が流れ続けている。 相変わらず扇風機は回るしスプリングの座席は揺れ続ける。 現実に違いない!
『何か、最近の話でも…廃線以外の事で何か違う話題を』
『………』
『な、何故なんですか、触れようとすると口を閉ざしてしまうのは』
『弾が切れたようだね』
『あ、貴方は…先生』
「僕」は、「僕」は一体何を………。
『思い出はもっと強烈にかつ大量に、過去でさえ創造できるようでなくては駄目なのだよ、北元(きたもと)くん』
先生は運転席側のガラス越しに、こちらを見て暗く笑っている。
「僕」は座席を立ち、そちらに向かってすがり、窓を叩いた。
『貴方がそこに居るのは筋違いでしょう! 僕ぁ、あの運転士さんと話していたはずだ!!』
『誰と? 何の話をかね?』
『そ、それは………』
今度は「僕」が黙りこくる番だった。
『認め給え。 現在を打ち倒すだけの弾はもう無くなってしまったんだろう』
『いや、絶対に違う!!』
『この幻影のロジックも知らないキミに安易に否定して欲しくはないな、了(さとる)くん』
何故? 何故なんだ…車両はあるのに、運転士さんがいないって事は。
「彼」─否、北元了はその場に崩れてしまった。 恐ろしい事実が心からわき上がりかけていた、しかし、それを認めたくはない─考えたくなかったのだ。
『風景は君が一番気に入った日のものが流れ続けている。 だが運転士は所詮、他人だよ。
キミとは違う現在(いま)を生きているのさ。 その人物まで創り上げる事ができたかどうか、だ。
キミの思い出とはそんなに薄っぺらいものだったのかね! 見損なうな!!』
『い…いや、数年分! 数年分…いや10年分の思い出を僅かでも取りこぼした事なんか無い!!』
『だから、それらを全て消費してしまった今、どうするのかを決めるんだろう。
風景はいつまでも変わらない、簡単に心に刻める。
だが、私の施す処置はキミ一人だけが対象だときちんと説明したはずだが』
『…くっ!』
あの話題も…この話題も…全て語り明かしてしまった
。 だから運転士さんは何も応えない…。
『中途半端なのが一番良くない。 この旧都営地下鉄6000形電車はいつまでも不変のまま走り続ける。
その他大勢は別さ、キミが覚えている限りの事だよ、「大したもの」じゃなかったから乗客もいないのだろう』
『いいや…運転士さんと二人きりになる程寂れた日もあったんだ!』
『それは自分で補い給え。 君の思い出─ひいては思い出への思い、で』
もう何も見たくなかった。
『…もう負けましたよ、先生。 お願いだからそちらへ行かせてください』
『こちら側は現在だよ。 そちら側は過去。 キミが過去を忘れ去ればこちらへ来られるだろうよ』
『そんな…』
『完全に割り切って、空想し続けるか! 完全に忘れるか! どちらかはっきりし給え!!
北元くん! 君の心に風景が残り続ける限り、この列車は止まる事などないと言っている』
『………』
『どうしたね』
『………』
『止まった世界で生きてゆくのもそれなりにリスキーだと言うのに…』
『………』
『ああ、このガラス越しで会話してはいけなかったのだったな』
『………』
『では私は失敬しよう、北元くん』
『………』
影森鉄道は永遠だ。
あら終わった。
えーと、三点リーダとか偶数でないのでなんか違う感じはあるけれど作法は横において。
雰囲気はすごくある。
どういうことだったのかもまあわかるんで、より鮮烈なイメージを切りだしたいところ
青いバラとはよく言ったと思う。ぴったりマッチしてる。
「押し黙れ!」で違うだろとあのシーンにも関わらず噴いてしまったけれど。
まだ、最終コーナー回るまでわからんから、納得いくまでいじるのもありかも。
むろんこれで完結でアリだとは思う。
台詞とか間の使い方には向上の余地があるかな。
続いてたw割り込みスマン支援
ん、続くのかコレと思いきや2話って書いてあった
ごめんなさい
こっちは台詞多いなあ
台詞の間の情景や描写によって、特定の会話を強調できるよ
どもありがとうございますm(__)m
アドベンチャーゲームのシナリオに感動して文章を書き始めた(10年前、16歳)ので
小説としての正しい文法ってのが、まるで駄目駄目で、最近やっと勉強しました。
三点リーダとダッシュは2つ打つのが基本、それもわかってねぇでやんのorz
これから書くものは、三点リーダとダッシュ2つに、台詞は「」使用でいきます。
恐れ多いお言葉とアドバイスありがとうございました!! もう弾切れで〜す。
皆さんいい方なんで、またなんかできたら安心して投下してみますね。
それにしても文章書きコミュより2chの方が平等で優しいなんて皮肉ですよね。
コミュだと新入りいびりに古参持ち上げとか、しがらみで激しく傷つきましたわorz
2chでも文芸板はそういうところがあるんだw
この板も悪く言えば馴れ合いって言われるしね。
「発表専門」板はここだと俺は思ってるし、
今日の感想は全てマジレスなんでまたきてくだしあ。
がんばってねー
>>402 ありがとさんよっ!
俺は自分で云うのもナンだがw大器晩成型なんで皿のようなやさしい馴れ合いで
磨かれていくのが理想だ。同人すらしてないペンペン草よ。
さて、君のあったかさに、連載中のもの序章を投下しにきた。
我ながら「嶽本のばら始めましたってか?」と突っ込むような文体。
でもうら若き女性一人称は我が敬愛する太宰治の独壇場でもある。
太宰治+嶽本のばら+芥川龍之介みたいなカオスの様相になるか…?
(芥川は、河童や歯車などの精神病ネタについての要素のみで)
folie a deux
〜フォリ・ア・ドゥ〜
あの御方に出逢ってわたくしはお姫様になりました。
あの御方は、ああ、あの麗しき御方。
皇子の肩書きに相応しい清楚にして華麗なるお召し物。
眼鏡越しの理知的でどこまでも、どこまでも優しい、あの瞳。
なんて事でしょう、あの御方に出逢う事が無ければわたくしは自らに流るる貴族の
血なんかまったく気がつかないまま、ありきたりの平民の娘のままでした。
それは、そう、手巻き式腕時計のように精密な部品が、緻密に折り重なって時を
紡ぎ出すように、あの御方とわたくしの出逢うべき運命を指し示したのです。
出逢いは街角でした。 わたくしは、まだ、お姫様であると言う自覚がありません
でしたから、平民の着るような機能性しかない安価なお洋服を身につけていました。
そこに――ああ、突然、運命の滴がお空から降り注いだのです!
そう、あの通り雨は、わたくしとあの御方を引き合わせる為に神様がお恵みくだすったのです。
それも、たまたま、少しだけ遠出をしてちょっぴり高級なショッピング街へ出掛けた
日の事でしたから、雨宿りの場所も、高級ブランドの入ったジュエリーショップの
ウィンドウで、まるで戦前からあるようなモダンで、心地よく古びた屋根の下です。
ガラス張りに背をもたれて、わたくしだけかとおもっていたんです、でも、
そこには見目麗しき――どこか儚げで華奢なお身体で、今にも雨中の霧に霞んで消えてしまいそうなほど
――美しい、男性…。
わたくしは、一目惚れだなんてはしたない、その御方と触れ合う以前は引っ込み思案な
何の取り柄も無いただの娘でしたから、ああ、なんて綺麗な男性がいるのかしら、と
お互い2メートル程の距離で並んで、控えめに、控えめに…とその御方の横顔を
見つめてしまいました。 雨音で、気付きませんようにと願いながらも目を逸らせなくて。
しかし、その御方は――ええ、はっきりと、言ったのです、横顔のままで。
『姫よ、やっと逢えた』
と。
わたくしは何だかよく覚えていませんけれど顔が熱くなったのを記憶しています。
『皇子の嗜みさ』、
そう言うと、その男性は鞄からトランプ柄の折り畳み傘を出したのです。
得体の知れない話なので、頷いてくれるだけでおkー
まだまだ主題に入ってないから。
あと、サクラバクシンオー級の超スプリンター(長くて2〜4000文字くらい…??)
の自分にしては、今回は長くなりそうなんです(燃え)!
もちろん全編とか大部分ができたらうpろだ使ったりHP誘導しますけど。
あんたホントにええ人じゃ、一緒に縁側で緑茶飲んで語ろうぞ。
つ旦旦
遅まきながらお茶は頂いといてと……。
あんまりロココ調でもなさそうだぞw
口語と文語が入り混じっちゃってる
それから改行をする場所を意識して作るといいよ
文章を読点以外の場所で二行に折られると読みにくくなることがあるからさ。
この一パラ目なんかは出会いの前に空行で割ったりすると非常に読みやすくなるかと
研磨ありがとうございます。
ウェブ小説の改行には非常に悩まされているんですよ。
通常、小説ってやたらに改行なぞせず、決められた枠の中できっちりと
表示されているのですよ、原稿用紙詰めみたいに。
でも掲示板に載せる事を考えたりパソコンで書くと「なんとなく」で
改行してしまったりしますよね、「ノベル」から「小説」へのステップアップを
(三点リーダやダッシュの規定から始まり)意識し始めたため、大幅に加筆修正予定です。
言い訳にしかなってませんけどねw
文体のチェックもありがとうございました! 浅学ですのでとても助かります。
まあ、とりあえずは雰囲気重視で書き続けて(凹むと書けなくなるから…
次回作から気を付けますんでしばしのお許しを。)
先生質問ですorz
例えば登場人部の頭で何かか閃いたり、ふっと思いがよよぎるときに、
俺な何故逃げてるんだろう─本当はわかってるクセに─俺は足音も気にせずアスファルトの迷路を駆け回った。
とかダッシュで一部分を囲って思考や情景を挿入するのってありますよね。
この場合は普通に─(短文)─でいいんですよね?
俺は逃亡の果てに一匹の黒猫を見つけた。しゃがんでみるとこれからの運命─一晩中モフモフ地獄─も知らず寄って来る。
と、こんな風に漢数字の一とくっついた場合とかも読者の読解力任せでいいんですかね。
〜〜なみなみにすべき??
あと、お暇がありましたかご教授願います。
>口語と文語が入り混じっちゃってる
この作品は今のノリで完走したいので、申し訳ありませんが自分なりのままで行かせてもいます。
ただ、特に一人称の作品が多いため、今後の参考になります!!
あと、太宰の『斜陽』や『女生徒』を読んだ事があったらでいいですが、あれは完璧な口語に
なっているものなのでしょうか。気になったので。
斜陽
ttp://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1565_8559.html 女生徒
ttp://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/275_13903.html いや、あの………引き合いに出したらあまりの眩しさに、目が、目がー!!
何を大事な事書き忘れてんだ!!!
>>あと、お暇がありましたかご教授願います。
>口語と文語が入り混じっちゃってる
具代的な箇所があったら是非指摘してください、次に繋がるし、今のがもっとよくなるかも。
太宰の話したら逸れてしまった、最強クラスの睡眠薬で、プチ自殺、日付2日進んでた。<これは寝言也
それにしても、貴兄の批評はとてもいい教師、と言う感じがしますね。
>台詞とか間の使い方には向上の余地があるかな。
これすごく励みになりました。普通「改善り余地」って言うけど、「向上の余地」と言われたらやる気でますもん。
矮小なコミュニティになると、誰がボス猿になるかの争いで、満面笑みで他人の足を引っ張り合う。
新人かせ来れば自分より下の奴ができて嬉かったんだろーなー、一生やってろって感じ。
ここでもなれ合いにならないように作品以外はぽつぽつ来る程度にするよ。じゃね♪
誤字脱字ひでえ…まだヤクが抜けてねぇぜ、キー打つ手がメロメロだ。orz
看護婦さんいわく「とにかく水をいっぱい飲んで早く出すように」と…
あ〜健康茶でのまのまイェイ<死語
先生の名には及ばぬ未熟者でありますが、御返事を。
一つ目の質問ですが、これはダッシュを二つ使う必要があります。挿入文では四つということですね。
例として挙がっている文ですと、
しゃがんでみるとこれからの運命―― 一晩中モフモフ地獄―― も知らず寄って来る。
とするのが掲示板向きということになりましょうか。
ふたつめ、斜陽を覗いた印象で言いますと、一応は口語ですね。
旧口語とでも言いましょうか。
この件に関しては自分の元の書き方がまずかったようですね
指摘したかったのは
>自らに「流るる」貴族の血
のように、一部のみに旧口語がもちいられいているということです。
自分は二パターンの文体例を考えていました。
次レスでちょっとトライしてみます。
書いてみたけどこれは……読みにくいかもw
例えばこういう書き方があります。
二つ目を書く気力がなくなったのでw、ひとつだけですがご勘弁。
結局のところ、どれくらいの程度擬古調になるか、という問題に過ぎませんが、
なかなか難しいものではあります。
―――――――――――――――――――――――
あの御方に出逢つてわたくしは、御姫様に成りました。
あの御方は、ああ、あの麗しき御方。
皇子の肩書きに相応しい清楚にして華麗なる御召し物。
眼鏡越しの、理知的で何処までも、何処までも優しい、あの瞳。
なんて事でせう。
あの御方に出逢う事が無ければ、自らに流れてゐる貴族の血などには全く気が付かぬ、
ありきたりの平民の娘の儘でした。
そのとき、そう、丁度手巻きの腕時計の小さな小さな部品たちが、緻密に折り重なつて時を紡ぎ出すように、
あの御方とわたくしの出逢うべき運命が噛み合って、うごきはじめたのです。
出逢いは街角でした。
わたくしにはまだ、御姫様で在ると言う自覚が有りませんでしたから、
平民の着るやうな、質素な御洋服を身につけて居ました。
そこに――ああ、突然、運命の滴が御空から降り注いだのです。
そう、あの通り雨は、わたくしとあの御方を引き合わせる為に神様がお恵みくだすったのに違い有りません。
それも偶々、少しだけ遠出をしてちょつと高級なショツピング街へ出掛けた日の事でしたから、
雨宿りも、素敵なジュエリイショツプのウインドウ。
其処はまるでずつと前からあつたやうな、モダンで心地よく古びた屋根の下でした。
ガラス張りに背をもたれ、わたくしだけだと思つて居たのですが、其処にはいらつしやつたのです。
――見目麗しき、どこか儚げで華奢な御身体、今にも雨中の霧に霞んで消えてしまいそうな――美しい、殿方が。
わたくしは一目惚れだなんてはしたないといった、引っ込み思案で何の取り柄も無い、只の娘でしたから、
ああ、なんて綺麗な殿方がいるものかしらと、離れて控えめに、控えめにその御方の横顔を見つめて居ました。
雨音で、気付きませんようにと願いながらも目を逸らせず――。
しかし、その御方は――ええ、はつきりと仰つたのです、横顔のままで。
「姫よ、やつと逢えた」と。
わたくしは、何だかよく覚えていませんけれど、顔が熱くなったのを記憶しています。
「皇子の嗜みさ」
そう仰ると、殿方は鞄からトランプ柄の折り畳み傘を取り出されたのでした……。
――――――――――――――――――――――――
もし作法を気にするのであれば三点リーダも必ず二つくっつけて。「…」ではなく「……」で使いましょう。
この場合でも、例えばつは小さくした方が読みやすいですし、漢字で書かない方がいいんじゃないか、
と思われるようなところもあるでしょうが、これは雰囲気を出すためだけの方法なんですね。
同じように言い回しも「言った」→「仰った」のような改変を入れています。
作者様なのでどこが変わっているかは一目でおわかりと思いますので、是非参考ほどにでもなれば幸い。
ああそれから、改行位置もかなり変わっているかと思います。
>自らに「流るる」貴族の血
のように、一部のみに旧口語がもちいられいているということです。
わっはっはっはっはっはっ(自分に大爆笑)
きっかけはギャルゲシナリオ(PS版『ONE』です)だけど、小説とか文学とか
「本格」を意識したのは、やはり太宰からで、今は坂口安吾も好きで、
ファウスト上(新潮版)読み終えて、キリがいいからと下を積んでるなw
いやね、もうホント太宰ファンみんなが通る道って言うか、若者のはしか
なんて言われるぐらい、バリバリ影響受けてる「流るる」まさにそこだっ!www
他の作品でも「朽ちたる」とか言ってるわ〜。
添削版
ありがと、でも、連載(ネットですが)が続かないタイプなので、やる気が落ちる
恐れがあるので、あえて、最後まで書ききってから反省会にしたいですね。
あと三点リーダ2つが常識、はごくごく最近意識したもので、載せたバージョン
ではまだ反映されてなかったです、言い訳ごめん。
でも前のレスで三点リーダとダッシュは2つが常識と意識した、と言ってるハズ。
関係ないっすけど、ラノベなら当たり前なんだろうけどダッシュを3つも5つも
使う、そのうえそれを乱用するような今の売れ線作家ってどせうなんだろう。
エロゲ文学とか…なんか色々言うと該当者のファンとか怖いんで寝言にしておこう。
そろそろ休むよ、おやすみ、あんま2人でなれ合うと他の人が入りづらくなるしね。
でも2人しかいないっぽいって言うorz でも思い切って晒して良かったよ。
あ。最後に疑問。ダッシュに「。」はつけますか?
人影に覆われた瞬間、黒猫はモフられる運命を悟っていた──
人影に覆われた瞬間、黒猫はモフられる運命を悟っていた──。
どっちが正しいんでしょ? なんか質疑応答でwiki作れそう。
原稿ならつけますね
ただ、こういう場(オンラインの文章)ではどちらが語感的に合うか(文の印象が変わりますよね)
で選んでいいレベルだとは思うところ
馴れ合いとかじゃなくてさ、その書き込みの気持ち悪さに皆引いてるんだと思うよ。
>>417 誹謗中傷しか生み出せないおまいよか奴らは万倍マシ
おまいも何ぞ創作の話せぇや
そうでなきゃ完璧に板違いだぞ
なかなか薄幸な少女を描くのって大変だなー
いや、これはちょっと自重しないといけないレベルだな……。
>>419 何故に時間が経ってから言うw
基本ここは過疎スレで、その時々で違う物書きが作品投下して
感想やアドバイスをひっそりもらってハイありがとうでおしまい、
次の方どうぞーってスレだと思うよ
もし君も物書きなら投下してみて流れを変えればいいじゃない(^^)
過疎スレだから四日くらい間が空いたって遅レスのうちには入らんだろ
それに、このスレにいるからって物書きとは限らないぜ?
はじめまして。どなたかいらっしゃったら感想、批評などお願いします。
暗めの物語です。
あるところに、幼い仲の良い兄妹が住んでいました。兄の名前をアトゥル、
妹の名前をティチルといいました。
アトゥルとティチルは、お父さんとお母さんと毎日楽しく暮らしていました。
お父さんは学校で歴史の教師をやっていました。決して裕福な生活では
ありませんでしたが、税も高くなく、治めていた国王も優しい平和な国だったことも
あって、とてもとても幸せでした。
しかしそんな幸せな生活は、アトゥルが七つ、ティチルが五つのとき終わりました。
となりの国が攻めてきたのです。
二人の友達のお父さんたちは、どんどん兵士として戦場に送り出されていきました。
病弱だったことで一度徴兵を逃れたお父さんですが、二人は自分たちのお父さんも
連れていかれるのではないかと、いつも心配に過ごしていました。
けれど、二人の心配も杞憂に終わりました。戦争はとなりの国の圧倒的な戦力で、
すぐに決着がついてしまったのです。お父さんが戦場に行かずに済んだことを二人は
とても喜びました。優しい国王は見せしめのために首を落とされました。
二人の幸せな生活は戻ってきました。友達と遊んだり、お父さんやお母さんと一緒に
でかけたりしました。二人とも、この生活がずっと続くと信じていました。
しかしまた、幸せな生活は壊されました。お父さんが仕事を辞めされてしまったのです。
となりの国の領土となった今、前の国の歴史を教える人はとなりの国にとって
必要ありませんでした。二人はお父さんから仕事を奪ったとなりの国を嫌いに
なりました。
お父さんはその日から毎日、一日中ずっと家にいるようになりました。たまにしか
飲まなかったお酒も、毎日飲むようになりました。いつもイライラしたような顔をして、
物に当たったり、二人に当たったりしました。お母さんはそんなお父さんに怯えて、
いつもお父さんのご機嫌ばかり取っていました。
そのころ、となりの空き家に引っ越してきた人がいました。気立ての良いおばさんで、
となりの国の人でした。
二人は、あまりお父さんに会いたくなかったので、よくとなりの家に逃げていました。
殴られて前のお父さんを思い出して辛い思いをするよりも、それを作った原因の国の人の
ところに逃げる方がいいと思ったのです。
おばさんには殴られたあとは転んだだけと説明していました。おばさんは二人が嘘を
ついていることに気づいていたようでしたが、何も言わないでいました。
あるとき、二人はお父さんにとてもひどく殴られました。二人にはどうしようもない
理不尽なことで怒られて、長い時間殴られました。二人はお父さんの動きが止まった
一瞬の隙をついて外に逃げ出しました。お父さんは家の中で何か大声で怒鳴って
いましたが、追ってくることはありませんでした。
二人はとなりの家に行きました。いつものようにおばさんがでてきました。おばさんには
いつものように、転んだだけ、と説明しようとしました。しかし、それを言おうとすると涙が
溢れて止まらないのです。限界を超えた辛い思いは、涙となって流れ落ちました。何も
言えずにしばらく泣いてばかりいると、おばさんはしゃがみこんで、二人と目線を
合わせました。そして、本当のことを話して欲しいと言いました。
二人はおばさんに本当のことを話しました。お父さんが教師を辞めさせられたこと。
酒浸りの生活になったこと。いつも殴られていること。おばさんはそれを聞くと、必ず
助けるからね、と約束しました。
二人はこっそりと家に帰りました。お父さんは酔いつぶれていました。一生懸命ベットに
運ぼうとしているお母さんを横目で見ながら、二人は自分たちの部屋に入りました。
次の日、二人は起きるとすぐに、お父さんに怒られました。なんで逃げたんだ、お前たちの
ためにせっかく躾をしてやってるというのに。二人はじっと下を向いて我慢していました。
ついにお父さんが手を上げた時です。ノックの音がしました。
お父さんもお母さんもアトゥルもティチルも、玄関の方を見ました。お父さんはお母さんに
無言で出ろと伝えると、上げていた手をおろしました。
お母さんがドアを開けると、制服を来た男の人達が立っていました。その男の人達は
お母さんに名前を聞くと、お母さんが止めるのも無視して家の中に入ってきました。
制服の人たちはお父さんの名前を確認すると連れていきました。お母さんも連れて
いかれました。お父さんは抵抗していましたがすぐにおとなしくなりました。
二人は優しい顔をした若い制服の人と一緒に外へ出ました。そして馬車に乗って、
街の方へ行きました。
街の中の大きな建物の前で馬車は止まりました。二人は制服の人と一緒に降りると
その建物へ入っていきました。
中にはたくさんの子供達がいました。制服の人は近くにいたおじさんに話しかけました。
二人は手をつないで立っていました。
二人が立っていると制服の人が戻ってきました。と同時に制服の人は敬礼をしました。
その視線は二人の後ろに向いていました。
二人が後ろを見ると、高そうな服に身を包んだ若い男の人が立っていました。その男の人は
二人に気づくと、声をかけてきました。
いろいろと聞かれました。アトゥルがほとんどの質問に答えました。質問が終わると男の人は
さっき制服の人が話しかけたおじさんに話しかけました。おじさんはガチガチに固まって、言葉を
聞くと何回も首を縦にふりました。
男の人は後ろに控えていた人に二言三言聞くと、二人に向き直って、君たちを王宮に迎え入れて
あげよう、と言いました。
二人は後ろに控えていた人たちに連れられて、馬車に乗り込みました。ついさっき乗った馬車より、
とてもとても高級な馬車でした。
男の人はとなりの国――いや、今となってはこの国です――の王子でした。二人は王子の
使用人として城に迎え入れられました。実際には、王子の話し相手となったり、他の使用人に
可愛がられたりしていることの方が使用人として働いている時間よりもよっぽど長かったのですが。
二人は、王子の寵愛を受け、とてもとても不自由のない生活を送りました。
了
>>423-424 そうですね。
一通りザッと読んで一番に思ったのが、「これはどういう人を読者の対象にした話なんだろう?」という所ですね。
出だしから童話っぽいんですが、使っている文字や表現に、童話とは思えない部分が多々見受けます。
あと、「制服の人が〜」というのがすごく目立ちますね。
面白いかどうかと言う部分に関しては、「う〜ん」と言う感じです。
前述しましたが、とにかく中途半端なんですよ。
もっと童話方向に振るなら、表現を平易にして漢字を減らす。
小説にしたいなら、もっと出だしから小説にする。
オチとかは、童話ならこんな感じでも良いとは思います。
個人的には、「これでめでたしめでたしってのはめでたい感じがしないなあ」とは思いますが、
それは大人が読んでるからヒネた読み方をしてるのだと思ってもらって良いです。
小説だったら、むしろこれから本番でしょう。
なぜ王子は二人を引き取ったのか。裏があるんじゃないのか?
そんな感じで。
なんだろう?
毒があるんだか無いんだかわかんない話ですね。
読む人によっては「ふーん」で終わってしまいそうな。
感想もなんだか半端になってしまってごめんなさい。
あと、スレの投稿なので致し方ない部分はありますが、
やはり文章の切れ目とかの関係で、読みづらいです。
>>425 早速感想ありがとうございます!
>これはどういう人を読者の対象にした話なんだろう?
今まで考えたこともありませんでした…… 基本的に思いつきを文にするので、思いついたのが童話調なら童話調でがーっと書いちゃうんです。
で、書いてるうちに好きなように単語を入れていると、いつの間にか表現が童話調から離れていってしまう、と。
「制服の人が〜」は今読み返すとすごくくどいですね……。しかしどう変えればいいかわかりません。「彼」や、意味が通じるだろうところはカットすればいいんでしょうか。
小説か童話かは私にもよくわかっていないので微妙です。自分としては童話の振りをした小説、というのが一番しっくりきますが、そんなものないですよね。
今後は最初に方針を決めて書きたいと思います。
>これでめでたしめでたしってのはめでたい感じがしないなあ
書いてる本人もそのつもりです。そのため、最後は曖昧な表現にしてあります。
不自由がなくても、幸せかどうかは分からない。という感じです。でも曖昧すぎて中途半端かなあ、と今は思います。
最初はこれで終わりのつもりでしたが、続きもありかなという気がしてきました。
>読みづらい
すみませんとしかいいようがありません! 形式段落の一つ一つが長いので改行した方がいいだろうと思いやったのですが、逆に見にくくなりましたかね。
本文のほうだったらそれは私の文章力不足です。精進します。
私の中で「ふーん」となってしまう理由を考えてみたところ、世界が狭いのかなと思いました。箱の中の物語というか、遠い感じがするのでしょうか。
次にまた何か書くときは「ふーん」で終わらせないような作品にしたいと思います。
数ヶ月してからニューウェーブ。本当に過疎なんだね。
ある程度馴れ合いになるのは仕方ないさ。
ところで長いから外部リンクは……だめか。と言うかまだ種明かしも済んでないからな。
完結したら見て頂くやも知れませぬ。……とにかく人がいなくてorz
人はいるよ
ネタがないだけで……orz
429 :
1/5:2010/04/15(木) 15:15:36 ID:EDwWeY8G
俺、明石 星佳は今日、可愛い魔女の女の子を奴隷にしました。
……別にイカれてなんかないからな。
正直、自分でも未だに夢なんじゃじゃないかなぁって思う。
だからさ、散々、赤くなるまでほっぺや手の甲をつねってみた。
だけど目は覚めなかった。
それならばと近くにいた買い物帰りのおばさんに、今日は何日ですかと尋ねてみた。
当然、俺の知っている通りの日付をおばさんは教えてくれた。
哀れなモノを見るその冷たい目線は、一生忘れられないだろう。
俺は、寝ぼけてるわけでも、狂ってるわけでもなかった。
そしてもちろん、俺は魔法の国の王子様でもなければ、未来の国の未来人でもなく、何処にでも居る平々凡々な一高校生である。
それならなぜ、そんなことになったのか。
全ての事の発端は、放課後、俺が特に仲の良い高校の友達二人にジャンケンで負け、コンビニにアンパンを買いにパシらされた帰り道から始まる――
俺の通う高校がある街、姫塚町は都心から少し離れた地方にあった。
昭和の名残を感じさせるような建物がちらほらと残ってたりするこの古き良き街が、俺は大好きだ。
そしてこの街の丁度真ん中を区切るように走るのが姫塚川。
江戸時代の頃に治水工事がなされ、平成の今日に至るまで、陰に日にこの街の発展を支えてきた由緒ある川である。
俺はその時、右手にアンパンが三つ入ったコンビニ袋をぶら下げて、その姫塚川の近くの土手を歩いていた。
季節は秋真っ盛り。まさに天高く馬肥ゆるって奴だ。
もう放課後の時間帯というだけあって、日も傾き、辺りは淡いオレンジの光に包まれていて、川の周りを漂う赤とんぼからは、どこか心穏やかな秋の空気を感じる。
秋は夕暮れ、言ったのは清少納言だったっけ?
まぁ誰が言ったかなんてのはどうでもいいが、その言葉はまさに核心を付いていると思った。
見てみろよ姫塚川の水面を、夕焼けの明かりを反射してまるでガーネットを散らしたかの様にキラキラ輝いてやがる。
430 :
2/5:2010/04/15(木) 15:16:23 ID:EDwWeY8G
俺は昔から、一人でこういう美しい光景を見ると興奮してしまう性質だ。
聞いてるとヤバげな人間に聞こえるかもしれないが、まぁ外見にでる違いは少し足取りが軽くなったり、コンビニ袋の揺れ幅が大きくなったりぐらいだから問題ない、と思う。
そんなこんなで、俺はちょっぴりハイになってたんだよな、その時。
だからさ、
「ねぇ」
いきなり後ろから空いていた左手を握られて、
「あんたもしかして、ニンゲン?」
こんな意味不明な質問された時も、なんの疑いもせずに後ろを振り向いた。
俺の後ろに居たのは、一人の小柄な少女だ。
髪は黒い艶のあるショートヘアで、服は水色のワンピースを着ている。
肌は雪のように白くきめ細やかで、その可愛らしい顔は目鼻口が絶妙な場所に配置され様式美さえも感じられた。
そして何よりも俺の心を奪ったのは、少女のその大きな瞳であった。
俺の顔を見詰めるその双眸は、俺が今まで見たことも無い、鮮やかなオレンジ色の光を灯していたのだ。
「ねぇ、ニンゲンなの?」
少女の再びの問いにハッっと我に返る。
この少女の、何処か人間離れした瞳に見とれて、少し呆けていたようだ。
「ああそうだ、俺は人間だ。それがどうかしたか?」
俺は平静を取り繕ってこう少女に返事をした。
今考えると、どうかしてたのは俺のほうだったのだ。
普通は、いきなり見ず知らずの少女に『お前は人間か』なんて聞かれたら気味悪がるもんだ。
だが、さっきも言ったよう、その時の俺は、ちょっぴりハイだったのだ。
これっぽちもそんなこと、疑問にすら思わなかった。
「ふふ、じゃあ、お兄さんにこの指輪をあげる。大事にしてね」
正直何が『じゃあ』なのかは解らなかったが、少女は薄く笑いながら、ポッケから一つの指輪を取り出し俺に差し出した。
それは銀製の、細部まで装飾の施された、明らかに高価な物と解る指輪だった。
お前達だったら、そんなとても値の張りそうな、ブランド物っぽい指輪を他人にくれると言われたら、受け取るか?
俺はもちろん貰わなかった。多分当たり前だろう。
431 :
3/5:2010/04/15(木) 15:17:24 ID:EDwWeY8G
……ここから先は、正直話したくは無い。
だが、それでは話が進まないのだ。
恥を忍んで、続けるとしよう。
だから俺はさ、
「お嬢ちゃん、こういう物は簡単に他人にあげちゃいけないんだぜ」
とかなんとか言って、格好つけて、その少女の指輪を彼女のお人形のような右手を取って、その人差し指に嵌めてやったのさ。
優雅に、華麗に、美しくな。
……笑いたきゃ笑え。その時は俺もどうかしてたんだ。
さてさて、それで少女が「そっかぁ、解ったよお兄ちゃん。じゃあねー」でどっかに言ってしまえば、それでよかった。
それなら俺は、この話をただの黒歴史として、自分の心の奥深くにコンクリ詰めにして沈めていただろう。
だが、そうはいかなかったから、俺は今話しているのだ。
「あ、あぁ……」
なんと、指輪を嵌められた少女が、この世の終わりを三回ぐらい味わったような顔で、つまり顔面真っ青にして、小刻みに震えているではないか。
「お、おい、どうしたんだ」
その突然の変化に心配になって、俺が少女の顔を覗き込もうとすると
「あんたなんてことするのよぉ〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!」
少女の、可愛らしい怒鳴り声が俺の耳を突き抜けていった。
その時はまだ、俺は何で少女が急に怒鳴ったのかも解らなかったし、自分が一体何をしてしまったのかも気づいていなかった。
解るわけはないし、気づける筈が、なかった。
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁ! あんたなんてことしてくれたのよぉ!」
少女が半泣きで俺の頭をポカポカと殴ってきた。謂れのない迫害だ。
「おい、俺はただ指輪を嵌めただ」
「これは『隷属の指輪』なのっ! ただ嵌めたじゃ済まされないのよぉ〜。ううぅ……」
とうとう少女はその場に座り込んで愚図り始めてしまった。
これじゃまるで俺がこの子を泣かせたみたいで凄く気まずい。
「というか何なんだその『隷属の指輪』って」
随分と不吉な名前である。
なんてたって『隷属の指輪』だ。RPGかなんかじゃ装備しただけで、トラウマになりそうな音楽が響きそうである。
432 :
4/5:2010/04/15(木) 15:19:09 ID:EDwWeY8G
随分と不吉な名前である。
なんてたって『隷属の指輪』だ。RPGかなんかじゃ装備しただけで、トラウマになりそうな音楽が響きそうである。
「この指輪はねぇ、嵌めさせた相手を自分の言う事を何でも聞く奴隷にする、すっごい指輪なのっ! この意味が解るかニンゲンっ!」
嵌めさせた相手を奴隷にする指輪とな?
それは
「つまり、どういう意味だ?」
「だぁっもうこの低脳! いい、あんたが私にこの指輪を嵌めさせたの、解る!? つまり私は、あんたみたいなのの奴隷に……うわぁーんんん!」
怒ったり泣いたり忙しい少女だ。
さて、少女の話を信じるなら、俺はこの子を、『隷属の指輪』とやらで奴隷にしてしまったということらしい。
その話を信じるなら、今すぐ教会の神父さんかなんかに呪いを解いてもらわなきゃな。
そしてもちろん
俺はそんな話は信じない。
ここは、RPGの世界なんかじゃない、現実、リアル、トゥルーワールドなのである。
「お嬢ちゃん、お兄ちゃんをからかってるのかな? そんな夢みたいな指輪あるわけ無いだろ」
俺が慈悲深い声で少女を諭すように話しかける。
「じゃあこれを見ても同じことが言えるっ!?」
すると、少女はキッっと半べそで俺を睨みながら、いきなり姫塚川に向かって左手を突き出した。
そしたら突然、少女の体が淡いオレンジ色の光を帯びて
そして、信じがたいことが起こった。
「凍れっ!」
少女の鋭い声と共にその光が爆発したかの如く溢れかえる。
すると、なんということだろう、姫塚川の大体十メートル四方ぐらいの範囲が、一瞬で凍ってしまったではないか!
その氷は、ただ表面に張っているのではなく、しっかり川の中を泳いでいた魚達まで瞬間冷凍保存している。
俺は恐らく、生まれて初めて、空いた口が塞がらないってのを直に体験した。
433 :
5/5:2010/04/15(木) 15:22:17 ID:EDwWeY8G
「お、お前、こりゃどうゆう仕掛けで」
仕掛け? 仕掛けだって?
川の水を一瞬で凍らせるなんて、そんなの小手先芸で出来るわけが無いだろ。
俺は、口で言いつつも本当は解っていたのだ。
この現象には、種も仕掛けもないって事ぐらい。
それでも、簡単には認められない。
だってこんなことは、それこそ
「仕掛けも何も、これは魔法よ!」
そう、魔法でも使わない限り実現不可能だって事ぐらい、一目瞭然だったからだ。
「さぁニンゲンっ! お前はこれを見た上で、この偉大なる黄昏の魔女、ナランハ・ソーサレスを夢幻の類だと言い切れるのかっ!」
そう言って少女――ナランハ・ソーサレスは目に涙を溜めながら、俺に右手の人差し指をビシリと突きつけた。
その指の付け根に輝くは、銀色に光る『隷属の指輪』。
俺は、魔法という、俺たちの生活から最も身近で、最も遠い、ファンタジーの世界を初めて目の当たりにしたのだった。
.二章
「――と、まぁ、こんな感じだった訳だ」
「訳なのよっ!」
俺の落ち着いた声と、ナランハの威勢の良い声がその部屋に響いた。
場面変わって、ここは姫塚高校の美術室。
この絵の具独特のすいた臭いのする部屋が、俺の所属する美術部の部室だった。
ただ、美術部といってもこの部活は、部員が俺を含めて三名しかおらず、またその活動も一般的な美術部とはほとほとかけ離れていた。
まぁどこの高校にも、廃部寸前の部活を乗っ取って部室を駄弁り場にするなんてのは良くあることで。
つまり、そういうことだ。
「そんなのどうでもいいから、早くアンパンよこせ明石」
MF文庫に突っ込む予定です。
読みやすいラノベのようで好き
435 :
夏目悠平:2010/07/14(水) 23:20:06 ID:898R9R3a
魔法を使わぬ魔法使い (1/3)
俺は悪い人間だった。小さいころから乱暴者として恐れられていたし、学校でも、先生に目の敵にされていた。
そのおかげでいつも一人ぼっちだった。心の隙間を埋めるため、さらに悪事を重ねた。
しかし、不思議なことに、悪事を重ねれば重ねるほど心の隙間は大きくなった。
もちろん、オレみたいなやつは成長してもろくな人間にならない。
十数年もすれば、立派なギャンブル狂になった。
いつもいつも金が足りなくて、困っていた。金貸しは血眼で、逃げ回る俺を探しまわった。
ある日、決めた。銀行強盗をすることに。
そして、ついに銀行から金をに奪ってしまった。
銀行でたくさんの金を奪い、なんとか警察を振り切ったとき、目をくらませるために、
ある一軒の民家に侵入することにした。
しかし、この民家にだけは入るべきではなかった。
このときに俺の人生は変わってしまったに違いない。隣の民家に侵入してさえいればよかったのだ。
あの家の扉は地獄の門だった。それとも、邪悪な魔法使いの家の門というべきだろうか?
あれを開けた瞬間、俺の人生は暗転したのだ。
ここを開けさえしなければ、俺の命は助かったのかもしれない。
話しを戻そう。俺はその家の玄関わきになぜか置かれている、
黒いベールの掛けられた黒い箱をわき目に、乱暴にドアを開けた。
436 :
夏目悠平:2010/07/14(水) 23:22:30 ID:898R9R3a
(2/3)
すると、家の中には一人の痩せた男が立っていた。おそらくその家の主人なのだろう。
俺はすさまじい顔をしながら拳銃を突きつける。
「ちょっと待ってくれ!撃つな!警察から逃げているのなら、君を逃がしてあげるから!」
痩せた男は蒼白な顔で叫んだ。
「僕には家族がいるんだ・・・。愛する者のためにも、まだ死ぬわけにはいかない。」
しかし、俺は焦っていた。銃を突き付け、本当に逃がしてくれるのか?と叫ぶ。
痩せた男は答えた。
「家の玄関のわきに黒いベールに覆われた、黒い箱があったろう?あの箱は、今度、海外の別荘へ運び込む予定の箱なんだ。
運び入れるのは宅配業者だから、勝手に中を覗いたりはしない。」
俺はごくりと唾を飲み込む。そして「それで?逃がしてくれるなら生かしてやる!」と叫んだ。
「だから君はそこに入っていればいい!そうすれば逃げられる。」
痩せた男はそう言い終えた。
俺は鬼のような恐ろしい顔でにやにやしながら言う。
「でも、俺の目撃者がこのまま生きてたんじゃ困るよな?お前が通報して、
俺が空港を出た瞬間に捕まるかもしれない。」
そして、ゆっくりと引き金に力を込める。
痩せた男の顔は一層、蒼白になった。そして意を決した様子で言った。
「実は、僕は偉大なマジシャンの弟子なんだ・・・。もし嘘をついたら、君は罰を受けることになる。僕の魔法によって、剣を持った筋肉隆々の男達が召喚され、大勢の見物人が見守る中、君は断罪されるだろう。」
俺はそれを聞いてゲラゲラ笑った。魔法だって?あまりにも突飛な脅しだ。
いや、脅しにすらなっていない。こいつはファンタジー小説の読みすぎなんじゃないのか?
痩せた男はなおも続けた。
「彼らに正直に罪を告白すれば、人道的な方法で罰してくれる。彼らに最後まで罪を隠したなら、残酷な方法で罰せられる。」
痩せた男は疲れた顔に笑みを浮かべた。
「これは君への復讐なんだ・・・。僕を裏切った君は罰を受ける。
魔法はもう効き始めてるんだ。僕を逃がしてくれれば、まだ助けてあげられるんだけどね。」
俺はその言葉を最後まで聞くことなく、痩せた男の顔に向かって引き金を引いた。
437 :
夏目悠平:2010/07/14(水) 23:25:30 ID:898R9R3a
(3/3) 省略された・・・ごめんなさい。
俺は黒い箱のなかへ逃げ込んだ。黒い箱のなかでほっと一息をつく。
奇妙な表現だが、なかなか入り心地のいい箱である。
狭すぎず、広すぎない箱だ。まるで、だれかが入ることを予想して作られたかのようだ。
俺は疲れていたので、すこし眠ることにした。今日はすこし働きすぎたのかもしれない。うとうとしていると、ふいに箱が持ちあげられる感覚がした。やっと宅配業者が取りに来たのだろう。
「紳士織女のみなさん!Mr.フーディのマジックショーへようこそ!」
やかましい声がすぐ隣でそう叫んだ。その声で俺は目を覚ました。やかましい声はさらに続ける。
「最初にお見せするマジックは奇跡の脱出です!」
俺はそれを聞いて、すっと血の気が失せていくのを感じた。
「私がまずこの黒い箱に入ります。私が入ったあとで、なんと、助手たちが何本もの長剣をこの箱に思いきり突き刺してしまいます!」
それから、小声でMr.フーディはつぶやく。「くそっ。助手の痩せた男はなにをしているんだ?今日はあいつも舞台に立つはずじゃなかったのか?」
観客達の大歓声が聞こえる。
俺は完全に混乱した頭で選択しなければいけなかった。
ここを出るべきなのか。しかし、あっという間に不審者として捕まってしまうだろう。
罪を償わなければならなくなる。
それとも、じっと待ち続けるのか。
しかし、鉄の刃はすぐそこだ。考えれば考えるほど混乱した。
ふと、脳裏に、俺が殺した痩せた男の顔が浮かんだ。
「それでは、箱の中に逃げるスペースがないことをお見せするため、実際に長剣を刺してみましょう・・・。」
そう言い終えたMr.フーディは、小声で剣を持った屈強な助手たちに「おい、やれ!」と言った。
指示を受けた助手達が、それぞれ、大きな剣をゆっくりと振り上げた。
観客は大きな声で歓声を上げる。
黒い箱のなかでは、男が押し殺した声で泣いていた。
うむ、書きたい物についてはわかる。
わかるんだが、その為のディティールがちょっと甘いかな、と。
書き込みというか、やり取り部分での違和感覚えた部分は
いきなり拳銃を突きつけられて、すぐに「警察から逃げているなら、君を逃がしてあげる」と
事情を把握する痩せた男は、理解力ありすぎじゃね?
とか
痩せた男の提案から、それを男が突っぱねる流れで、どうしていきなり男が「裏切り者」として
扱われる事になるのかがわからない。別に男は命を助ける事を確約したわけでもないのに。
とかの部分かな。
あとは、設定的な部分で
玄関脇っていう、人目につく所に、手品に使うギミック込みの箱を置いておくものかな?
という部分も違和感覚えたかな。
発想としては、男がこういう形で罰を受ける、というのは面白いと思う。
痩せた男の予言めいた言葉とかも。
あとは、どれだけそれを自然な形で、違和感を覚えさせずに最後まで
持っていくか、かな?
439 :
夏目悠平:
>>438 感想ありがとうございます。
確かに、細部が甘いところは多々ありますね・・;
構想を練り、文章を書ききってしまうと、
それだけでパワーを使い果たしてしまうので、
細部を手直しするということがなかなかできないんです。
これは、これから直していくべき課題ですね。
作品一つ一つの作成により長い時間を掛けるべきなのかもしれません。
ありがとうございました。m(_ _)m