ある日目覚めたら違う世界にいたとか、
ひょんなことで他の世界に紛れ込んでしまったとか、
そんな感じのSSを書きまくりましょう。
・連作ものはトリップ推奨。名前欄に 「作品名#好きな文字列」 で
・荒らしはスルーor各自NGID
・叩きや批判はほどほどに
あの作品のキャラがルイズに召喚されましたスレみたいな?
せめて一次創作なのか二時創作なのか
それとも両方なのかをテンプレで明記してくれ
憑依ものとか転生ものもこのスレで扱うの?
>>5 それはちょっと違うような……それはそれでスレ立ててくれ
死んだと思った瞬間、記憶(と姿)そのままに違う世界へ〜ならありかも
召還ものって今あるスレではどんなのがあるんだ?
全部ルイズかいww
>>2のスレの派生だよな?それ
>>9 うんw
今までこういうスレが無かったから立ててみたんだけど……
分かりやすい例がルイズなんだ
他は……あまつきとか? マイナーですまん
でも一次もおkだからなんでもドゾー
作品内で召還とか他の世界から落ちてくるとかそういうネタやってる作品で二次はやるの?
12 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 18:24:54 ID:5PaToqMG
フロントミッション3のカドゥキがゼロ使世界に召還された
SSは出来がよかったなあw
レイアースとかふしぎ遊戯みたいな感じ?
いいえルイズです
>>11 二次ならSFでもロボットでもなんでもおk。ただしエロゲとかの二次だったらエロなしでお願いします
あとは逆トリップもおkかな
「ある朝目覚めたら隣に見知らぬ美少女がいました」的な展開の奴。これの二次もあり
それと
>>1はそんなルール決める権限は無いと思ってるから皆で決めていこうぜ
中学生の頃好きなラノベで妄想したりしたな
魔法に失敗しちゃって他の世界に飛ばされてみたいな話を
Fateの鯖として召還とかもあり?
クロスオーバーって奴? 面白いよねこういうの
クロスオーバーは別にスレがあるぞ
オリジナルでもいいし、二次創作でもいいし、オリジナルキャラ使って二次創作でもいい
というとこかねぇ?
ほしゅ
誰か試しに書いてみたら基準が分かりそうだなぁ
一次の作品も読みたいぜ
ほ…しゅ……?
23 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 16:26:43 ID:FCQyRn2l
じゃあネットで手軽に読めるお勧め作品出しあっていこうぜ
クロス系異世界召喚ものではルイズのは勿論のこと
リリカルなのはも次元漂流者な設定
型月世界のは宝石剣、ちとマイナーだがナイトウィザードの話も良く見るな。
後ドラクエ世界にトリップとかも
オリジナルだとなかなか良いのは知らん。
新世界のバイブルくらいか
25 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 12:18:36 ID:oJ7dWhx8
結構好きなジャンルなんだがこういうとこで書こうと思うと
クロスものは専用スレがあるから
オリジナルで頑張る必要がある→1から設定作らないと・・・で難しいな
異世界召還・トリップ物であれば別に二次創作クロスものでもいいんじゃないの?
専用の本スレがあっても空気的にそこに投下しにくいこともあるだろうし
>>26 それがありなら結構行けそうだな
理想郷やナイトトーカー行けば参考になりそうな作品結構あるし
28 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 01:59:37 ID:ghGK2MID
過疎ってる・・・
とりあえず『知らない天井だ・・・』から何か書くかな・・・
SSが投下されるのをwktkしながら待ってる
31 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 16:36:11 ID:fCNZHCet
「僕たちの戦争」っていう小説があるんだけどそれみたいにタイムスリップとかでもOK?
いいんじゃない?
エルハやレイアース、ふしぎ遊戯みたいな感じで良いのかな?
ふしぎ遊戯懐かしいな
消防の頃見てたわ
ED曲しか覚えてないがw
35 :
ムスペルへイム ◆KbXh9E6JQM :2008/09/04(木) 20:34:11 ID:fCNZHCet
「知らない天井だ…何処だよ、ここは?」
そう呟いたのは茨城県つくば市に住む19歳のフリーター、尾島健太だった。
「えっと…俺何してたんだっけ…確か海でサーフィンしてたらいきなりでかい波に飲み込まれてそこから…思い出せねぇ!」
そう叫び、ふと健太は窓の外に目を向ける。その刹那、健太は驚愕する。
「何の冗談だよ…これ…」
健太の目の前にはみたこともない光景が広がっていた。彼は2005年の世界に住んでいるのだがどう考えてもそれは2005年の日本の光景ではなかった。
「…タイムスリップ?俺は未来の世界に来ちまったって言うのか?そんなはずねえよな…」
その時、部屋の扉が開く。入って来たのは白衣を身に纏ったブロンドの髪をした若い女性だった。しかもすごい美人だ。悔しいがミナミよりずっと美人だった。
ミナミ、と言うのは健太の彼女である鴨志田美奈美のことだ。ひょんなことがきっかけで最近は連絡を取ってなかったが。
何故か気まずくなった健太は寝たふりを決め込んだ。その時、女性が呟く。
「まだ意識が戻らないのね…どうしたらいいのかしら?私に出来ることは全てやったんだけれど…」
どうやらこの女性は医者のようだ。この美貌なら女優でも十分通用すると思うのだけれど。
GJ
初投下ありがとう
続くのですか?
37 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/04(木) 21:51:08 ID:fCNZHCet
もちろん
ついでにこの金髪女性の正体を予想してみて
金髪・医者キャラか・・・
料理が下手な湖の騎士しか思いつかないw
俺はセイラさんしか思い浮かばん
40 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/05(金) 00:13:15 ID:2T0T25mf
その時突然、一気に大勢の人間が部屋に入って来た。チラリと片目を開けてみた。
うわっ、美人ばっかじゃねえか。俺は未来じゃなくて天国に来たってのか?だったら悪くねえな。
その刹那、ピンク色でポニーテールにした凛々しい顔をした姉ちゃんが言った。
「シャマル、この男の様子はどうだ?私達全員心配でならないのだ」
え?なんでこの姉ちゃんたちが俺のこと心配しなきゃならないんだ?それ以前に一体俺はどうしてここにいるんだ?
「ああシグナム、まだ意識は戻らないみたい…ごめんなさい…みんな…」
「全く…この寒空の下あろうことか海水パンツ一枚だけという出で立ちで倒れていたところをなのはが見つけなかったら今頃死んでいたぞ?」
どうやら俺は死んじゃいないらしい。よかった。でも待てよ、街に倒れてたってどういうことだ?俺は街から結構離れた海でサーフィンしてたはずだ。
ここで俺は一つの事実と向き合った。要するに…タイムスリップしちまったってのかよ!
「冗談じゃねえ!」
そう叫んで飛び起きたが…あ。叫んだ後我に帰る俺。回りを見る。
キョトンとした顔で全員俺を見つめている。
「…あ、すいません。驚かせたみたいで」
「気がついたようね。頭が痛いとかないかしら?」
金髪白衣の姉ちゃんが聞いて来る。
「いや…大丈夫です。それよりここは何処なんすか?」
遅れましたがGJです。
リリカル世界へのトリップ物ですか、これからどうなるか楽しみです
42 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/05(金) 20:25:50 ID:2T0T25mf
その刹那、金髪の姉ちゃんが回りの皆に目配せをしたのを俺は見逃さなかった。皆は無言で頷くだけだ。
「本来なら部外者であるあなたに話す訳にはいかないのだけど…何のことかあなたには解らないだろうから話すわ。
ここは時空管理局・機動六課隊舎。で、私が医務官のシャマル。あなたを手当てしたのは私よ。
さああなたの質問には答えたわ。今度はこっちの番。あなたは何者?何故冬の街の真ん中で海水パンツ一枚で倒れていたの?」
うわ、いきなり質問攻めかよ…勘弁してくれよ…まあ、俺はこの人に手当てしてもらったみたいだし、しゃあねえ…答えるか」
「俺は尾島健太。茨城県つくば市に住む19歳のフリーターっす。海でサーフィンしてたらいきなりでかい波に飲み込まれて気を失って、気付いたらこのベットの上にいたって訳なんすけど…」
「なるほど、サーフィンしてたから海水パンツ一枚だったのね。それにしても真冬の海で海水パンツ一枚でサーフィンって言うのは考え物ね。
せめてウエットスーツを着ないと」
「いや、あの、俺がいた海は真夏の8月だったんすけど…今は西暦何年の何月何日なんですか?」
43 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/07(日) 21:30:15 ID:1Gf7JYqr
したらシャマルさんは不思議そうな顔で
「西暦?いえ、今は新暦75年の4月だけれど…」
新暦75年の4月?何?未来世界じゃ西暦制度は廃止されちまったってのかよ!?
「じゃあなんですか?4月なのに俺は寒空に倒れてたんですか?」
「いえ、今日は雪女さんがここに訪れているから…いつもは春で暖かいけれど、彼女が来るとその強い魔力で真夏でも雪を降らせるほどだから…」
なんで雪女がこんな所に来なきゃいけねえんだよ!もう訳分かんねえよ!
するとその心情を察してくれたのか、シャマルさんが話してくれる。
「彼女の古くからの友達がここに勤めているの。だから友達に会いに来てるというわけね。
それはいいのだけれど、せめて来る時は事前に連絡を入れて欲しいものね…
真夏なのに雪が降るものだから異常気象だって大騒ぎになったから…」
だろうな。俺のいた世界だったら世界の終わりだとかわめく奴が出て来てもおかしくねえけどな。
「まあ解りましたけど、俺はこれからどうしたらいいんすかね?元の世界に帰りたいのはもちろんなんですけど、
このままじゃ何やっても帰れそうにねえし、下手すりゃ一生そうかも知れねぇ。
いろいろ探していかなきゃなんないんでしょうけど、ただこのベットの上で生活って訳にも行かないし」
44 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/08(月) 08:47:07 ID:/SrBsXJG
「そうね…私としては人手不足なここを手伝ってもらいたいのだけれど…みんなはどうしたらいいと思う?」
そうすっと今度は紅い髪の小さな女の子が
「でもそいつ時空管理局の人間じゃないだろ。部外者の人間をここで働かせる訳にはいかねえだろ?」
やたらぶっきらぼうな口調だなおい。親はどんな教育してんだっつーの!
そしたら今度はツインテールの姉さんが
「ヴィータちゃん、だったら入隊試験受けてもらったらどうかな?私達は戦うだけが全てじゃない。そのバックアップをしてくれる人も大勢必要だよ?
そこで尾島君にそうしてもらうために是非私達の仲間になってもらいたいって思うんだけど、どうかな?」
「まあ…なのはが言うなら仕方ねえな。解ったよ」
「ありがとね、ヴィータちゃん」
「でもなのは、試験ってどうするの?筆記?実技?」
「ああフェイトちゃん、それなんだけどね、両方にしようと思ってるの。だけど私達みたいに戦う訳じゃないからそんな難しい問題にはしないつもり」
え?戦う?何?ここは軍隊なのか?こんな美少女たちを軍隊に入れて戦わせるなんて世も末だなおい。そんなことを考えてたら再びシャマルさんが話す。
「決まりね。それであなたには試験を受けてもらうのだけどいつがいい?私達としては出来るだけ早いほうがいいのだけれど…」
「いやもう今すぐでも大丈夫ですけど?いやむしろ今すぐにでもお願いします」
45 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/08(月) 09:17:37 ID:/SrBsXJG
したらシャマルさんはちょっと困った顔して
「今すぐね…実のところあなたからそんな言葉が出て来ると思わなかったからまだ準備してなかったの…」
何それ?!俺完全に空回りじゃねえかよ!
したら今まで様子を見ていた最後の姉ちゃんが
「それやったら、私が問題作って来るけど、それで大丈夫?」
「お願いしますはやてちゃん…コホン、八神部隊長」
「アハハッ、そんな堅苦しい呼び方せえへんでいいよ?したら、作って来るね」
はやてちゃん…もとい八神部隊長と呼ばれた人はそういって出ていっちまった。
「あの、今の人が部隊長なんですか?」
「そうだ。あの人こそ我らの主、八神はやて。そして私はその守護騎士の一人、シグナムだ。よろしく頼む、尾島」
初対面なのに呼び捨てかよ!まあいい、厳しそうだがねちっこくはなさそうだ。俺はいつまでもねちねちクドクド説教タレる奴は大嫌いだ。
「あ、こちらこそよろしくお願いします」
したらさっきのぶっきらぼうな女の子が
「あたしも守護騎士の一人、ヴィータだ。よろしくな、健太」
「あ…よろしくお願いします…」
口調をツッコもうかと思ったけどこれはもう親の教育だとかそれ以前の問題だと思ったんでやめといた。
「さっき名乗ったけど、私も守護騎士、シャマルです。改めてよろしく」
「あの、手当てしてもらってありがとうございます」
「気にしないで、これが私の仕事だから」
46 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/08(月) 19:32:56 ID:/SrBsXJG
そうは言ってもこの人たちのおかげで俺は命を拾ったのは事実だ。
「あの、この恩は絶対に返します。今はまだ無理かも知れねえっすけど、いつか、必ず…」
「あはは…そんなに気負わなくてもいいんだよ?
あ、自己紹介が遅れたね。私は時空管理局機動六課所属、高町なのは。よろしくね、尾島くん。で、こちらが…」
「同じく時空管理局機動六課所属、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。よろしくお願いします」
「フェイトちゃん…そんな堅苦しくなくてもいいと思うんだけどな…」
「そう?初対面の人には礼儀正しくしないといけないなって思っただけなんだけど…」
そして笑い合うなのはさんとフェイトさん。
その刹那俺はこの二人がたとえ神様でも断ち切れないだろう硬い絆で結ばれてるってことを直感した。
その時、ドアが空いた。入って来たのは…八神部隊長だった。試験問題が出来たんだろう。どんなテストなんだろ?やべえ!すごい緊張してきた!
「おまちどうさま、テスト問題出来たよ。ほな早速やってみて。カンニングでけへんように私が監督官やるし、他のみんなは悪いけど出てってくれるかな?」
みんなは「じゃあまた後で」というニュアンスの言葉を残して部屋を出ていった。
これは台詞系?のわりにところどころで地の文が混じる
どういう形式なのかわからんですよ
48 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/08(月) 20:54:31 ID:/SrBsXJG
台詞型だけど切替えが下手なものだから。
ごめん、忠告ありがとう。気をつけるね。
49 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/09(火) 09:17:16 ID:83FjYk8+
おっし!やるぞってな感じで俺は問題用紙と向き合ったんだが、何これ?小学生、それも低学年から中学年くらいの問題じゃねえかよ!
挫折したとはいえ仮にも俺は大学目指してたんだぜ?こんな問題楽勝だっての。
俺は問題をスイスイ解いてった。そんでペンを転がして
「出来ました、八神部隊長」
「じゃあ採点するから、ちょっと待っててな」
「はい、解りました」
しばらく待つ俺。だけど俺は正直待つのはあまり好きじゃねえ。デートの時間に1時間くらい遅れてきたミナミと喧嘩になったことがあったな。
ミナミとまた遭えるかなぁ…ぶっちゃけ喧嘩別れも同然だったしな。もし帰れたら謝ろう、絶対に。
そんなこと考えてたら八神部隊長が採点を終えた。あんな人を半分馬鹿にしたような問題、解けて当たり前で同時に合格も当たり前な訳なんだけど
やっぱこの瞬間だけはどうしても緊張すんだよなチクショウ!
「すごいじゃない、全問正解や。頭のよさは問題なしや。次は実技試験だけど、早速やってもらえへん?その場で腕たて伏せと腹筋、背筋、スクワット50回ずつ」
何それ!実技でもなんでもねえよそんなの!
ここで俺は気付いた。この試験は建前だ。要するに八神部隊長は俺を試験に合格させて正式な隊員にしたいというわけだ。
ただちゃんとした試験だと俺は合格出来ないだろう、と考えたんだろうな。すげえ腹立つが俺自身ちゃんとした試験受けて合格する自信なんざ皆無だ。
投下が終わったら何か言って欲しい
感想がつけずらいよー
51 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/10(水) 23:22:19 ID:rJqczB73
結構長くなりそうなんだけど
章みたいに分けたほうがいい?
取りあえずある程度書きためて、キリのいいところでまとめて投下してもらえると、読む方も読みやすい。
あと投下直前と終了時に一言断っておけば、割り込みレスされないし感想も貰いやすいよ。
53 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/11(木) 08:14:21 ID:RZFjz5aI
>>52 なるほど。じゃ書きためで行くよ。
取りあえず尾島編第一章は終わらせておくね。
54 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/11(木) 08:46:32 ID:RZFjz5aI
俺は言われた通りのメニューをこなした。5分でな。サーフィンはボディバランスが大事だからな。それをうまく取るためには筋力を均等につけるのが一番だからな。こんなの楽勝だっての!
「終わりました、八神部隊長」
「はい、お疲れさん。実技試験も文句なしで合格や。これで尾島くんも私達機動六課のメンバーちゅうわけや。おめでとう」
「あの、機動六課って一体何をする所なんですか?」
「ん?簡単に説明すると、「レリック」っていう古代遺産の調査と追跡や。せやけどその途中おかしな機械が度々邪魔してな、それでさっきの皆で戦いながらやってるって言う感じやね」
「それで俺はそのバックアップっていうかサポートをするって訳ですか」
「理解が早くて助かるわ。それじゃ今日は疲れてるだろうから休むとええよ。明日からオリエンテーションと訓練やから。
ああ、後でリインにも挨拶させへんとな。私達の新しい仲間なんやし。ほな、また後でな」
「あ、はい…」
八神部隊長は出てっちまった。仕方ねえから俺はまたベットの上に転がった。明日から訓練か。どんな訓練なんだろうな。バックアップって言ってたからそんな厳しいもんじゃないだろ。
そんな感じで俺はその日を終えた。これから先に大事件に深く関わっちまうことも知らずにな…
尾島健太 第一章 完
55 :
ムスペルヘイム:2008/09/11(木) 21:34:06 ID:RZFjz5aI
「何故だ…俺は死んだはず…それに…何処だここは?」
私は宮田司郎。山奥にある羽入蛇村というちっぽけな村の医者だ。今年で27になるがそんなことはどうでもいい。まずはここが一体何処なのかを知る事が先決だ。
私は決壊したダムの底にいたはずなのに気がついたらこんな建物の中にいる。しかも手には宇理炎が握られていた。
どうなっている?それ以前にあの村にこんな建物などなかったはずだが?
しばらく歩くと女性ばかりのとぶつかった。何やら制服を着ている。その途端私は包囲された。
その中の一人、金色の長い髪をした女性が聞いて来る。
「あなたは誰ですか?ここへどうやって?それにその手に持っているものは?」
いきなり質問攻めか。勘弁してもらいたかったが答えないと不審人物とみなされて逮捕されかねないからな。
それに…どうやらこの施設の人間のようだ。ここが何処か解るいいチャンスだ。
「私は宮田司郎。27歳。ちっぽけな村の医者だ。奈落へと続く穴に落ち、死んだと思ったら、目を覚ましたらここにいた、という訳だ」
56 :
ムスペルヘイム ◆LEivbieokw :2008/09/11(木) 21:35:33 ID:RZFjz5aI
「これのことなら気にしなくて大丈夫だ。土偶という大昔の人形に過ぎない。大衆から見ればガラクタさ」
「解りました。取りあえず、事情聴取を行いますから、こちらへ」
「これは任意同行、という事で構わないか?」
「構いません。ではこちらへお願いします。宮田司郎さん」
「俺の名をフルネームで呼ぶな」
俺は懐の36口径リボルバー拳銃に手をかけた…が、そこで冷静になった。どうやら俺の周りにいる女たち、ただものではなさそうだ。
俺が懐から銃を取り出し、引き金を引く前に取り押さえられてしまうだろう。
「…失礼しました。宮田さん。では改めてこちらへお願いします」
「ああ…今行くよ」
そして俺は彼女に連れられ部屋へと入った。刑事ドラマに出て来るような閉鎖的空間を想像していたが実際は…事務室じゃないのか?
「ここは私の仕事部屋です。自己紹介が遅れました。私はフェイト・T・ハラオウン。時空管理局機動六課所属です。今からあなたの取調べを行うことになりますが、
私の質問に正直に答えてください。いいですね?」
「ああ、解ったよ」
「まずあなたがどうやってここに入ってきたのか、それからですが」
「何度も言わせるな。大きな穴に落ちて、死んだと思ったらここで気を失っていただけだ」
フェイトは何やらノートに記入している。ふん、俺のことを頭のおかしくなった夢遊病者とでも書いているのだろう。
57 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 21:46:22 ID:RZFjz5aI
まあいい。何とでも書くがいいさ。そんな判定を下した瞬間、ここから逃げ出してやるよ。
羽入蛇村の暗部を担って来た宮田家の人間をなめるなよ。
「解りました。次にあなたは先程自分のことを医者と言っていましたが、あなたの格好は牧師さんにしか見えないのですが?」
「俺は村で信仰されている『マナ教』の求導師でもある。だからこんな格好なんだ。マナ教については聞かないでくれ。この事情聴取に関係があるとも思えないからな」
「解りました。それでは次ですが、あなたが先程持っていた人形ですが、それをこちらで調べさせていただきたいのですが」
「何故?あんな汚い泥人形を調べる意味が何処にある?」
「じゃあ何故あなたはその汚い泥人形をもっていたんですか?」
なかなか痛い所をついて来るな…だが正直に話したら没収されるのがオチだ。
「俺の病院の地下室で偶然見つけてな。何かと思い、村の図書館で色々調べたが、何のことはない。ただの泥人形だったよ。
昔の連中はこんなものを何のために作ったんだろうな?だがどうしても調べたいと言うなら好きなだけ調べるがいいさ。」
俺は宇理炎をフェイトに手渡した。これは科学などで推し量れる代物じゃない。お前たちがあらゆる手を講じたところで何も判りはしないだろうな。
58 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 22:03:58 ID:RZFjz5aI
「ご協力ありがとうございます。調査が終わり次第あなたにお返し出来ますが、万が一これがロストロギア(古代遺産)だった場合、そのまま没収ということになることをご理解ください」
「ああ、解ったよ」
「ご理解ありがとうございます。最後ですがあなたは私達に協力する意思はありますか?」
協力?いきなり何を言い出すんだこの人は。
「協力って…何に?」
「実はこの機動六課には医者が足りないんです。そこであなたに協力していただけないかと」
「みたところここは俺がいた世界と随分勝手が違うようだが…俺が役に立つとは思えないが」
「ご心配なく、先輩の医務官が色々教えてくれるはずですから。それであなたに協力する意思は?」
ない、といったら精神病院行きだな。ここはイエスしかあるまい。
「ああ、俺でよければ力になろう」
「ご協力ありがとうございます。それでは少し待ってて下さい」
フェイトはおもむろに室内電話を取り、電話をかけた。どうでもいいが携帯電話くらい持ったらどうだ?
「シャマルさん、至急執務官室までお願いします」
誰かを呼んだようだ。多分俺の先輩になるという医務官だろう。しばらくして呼ばれた人物がやって来た。フェイトが切り出した。おい、この女さっきもいなかったか?
「シャマル医務官、この人が今日からあなたのサポート役になる宮田さんです」
「ふ〜ん…さっきの不審者じゃない。信用出来るの?」
「この人が嘘をついているかいないかは目を見れば解ります。この人は嘘はついていません」
「あなたがそこまで言うなら信じるわ。よろしくお願いします、宮田先生?」
「こちらこそよろしく頼むよ。シャマル医務官」
そして俺はシャマルと握手を交わす。これからしばらく世話になる人間だ。まさか俺のこの決断があんな結果を招くとは今は予想も出来なかったがな。
宮田司郎 第一章 完
>>59 ご丁寧にどうもです。
続きはそちらで書かせてもらいますね。
質問スレで逆行物はここでと言われ来ました。
近い内に過去の日本へのトリップ物を出そうかと考えています。
期待wktk
63 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 14:59:25 ID:UaiFONNq
age
64 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 00:15:33 ID:z7JYZZIr
戦国自衛隊みたいに、ある程度強い人達が
過去にトリップするのが主流みたいだけど、
やっぱり特に能力のない凡人主人公も捨てがたいな
65 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 21:51:28 ID:R72Ku3OB
age
66 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 04:32:27 ID:PinU7SF5
異世界の穴から異世界に迷い込んでウッドエルフのおにゃのこに介抱されてエルフの里まで一緒に旅したい
67 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 17:11:24 ID:+OOg/2Ub
>>64 マターリ暮らすのならいいけど「特に能の無い」主人公が支配者になったりする展開には違和感かんじるなあ
やっぱ軍人、政治家、学者みたいなスキル持ちじゃないと
スキル持ちなら専門職・職人系がいいな
>>68 現代→異世界(過去世界?)で通用する職人、専門家って料理人とかしか思い浮かばんな。あとは音楽家?
美術工芸系の職人とか建築家も面白そうじゃね?
>>69 魔法の有無やレベルにもよると思うけど、化学者や医者も使えなくはないんでないかと
軍事学や経済学を修めた人も、上に立てれば役に立つ。ただそこまでどうたどり着くかが…
商売人とかいいかも
あれ?国のトップに立つような能力が必要なの?
もっと庶民生活で役に立つ能力があるんじゃないかと
具体的にいうと手品とか大道芸系
>>73 立つのかw
まあ人気者にはなれますな
芸術家って面白いけど、美的感覚が同じと限らんし、現代でも過去世界でもあんまり一般的な職業って訳じゃないじゃん?(戦国時代とかじゃ特に)
んで原始から近代まで普遍的なスキルとなるとやっぱ料理、声楽を含めた音楽(大道芸、シャーマン的な)かなあと
漢方ならともかく西洋医学には治療薬・医療器具が必須ですし、自らの持つ土木技術や農耕技術、化学的知識を共同体の暮らしに反映させるには多大な影響力が必要です。もちろん技術、知識蓄積の土台も違います
腕力補正のない現代人がアドバンテージなしの裸一貫、腕一本でみとめられるて行くには何が必要なのか考えてみませんか
なんか後半新スレみたいになっちゃったw
料理は調理器具と食材に難ありかなぁ
ブリア・サヴァランとかの頃の調理技術だって現代と懸け離れてるでしょ
出汁ひとつ取っても和洋中それぞれ必要な食材があるし、
油脂や砂糖も入手がむずかしいかもしれない
>>75 あー。鍋とかはともかく塩とか香辛料が貴重な描写ってよくあるな・・・
料理人なら和洋中どんな世界観にも対応できると思ったんだが
そういえば神坂一の日帰りクエストでは
こっちから香辛料をもっていって向こうで金貨に交換して金儲けしてたなぁ
栄養学の知識は結構役に立つ気がする
身一つでできるもの…と考えた結果
マッサージ師が思い浮かんだ
意外といいかも、マッサージ師
なんか新鮮な発想だんべ
現代→異世界(or過去)で料理人の場合
食材の入手の時点で
牛乳:奈良時代あたり貴重な薬・栄養剤。その後廃れる。一般に飲まれるようになるのは明治時代。
ハリスが来日した時も牛乳の入手に2年ぐらいかかったとか。
砂糖:奈良時代あたり貴重な薬、大仏に捧げられる。国内で砂糖作りが始まったのは江戸時代。
8代将軍吉宗が琉球よりサトウキビを取り寄せテスト栽培。
テンサイ(砂糖大根)は18世紀頃は1%ぐらいの砂糖含有率だったものが品種改良が進み現代の20%ぐらいになった。
じゃがいも、さつまいも:メキシコとかアンデスあたりが原産。16世紀頃インドや中国などを経て日本へ。
にんじん:今の西洋にんじん系は明治時代に入ってから。かなり形の違う東洋にんじんですら16世紀頃。
香辛料とか以外でもメイン食材軒並み入手難。
かなりの創作料理技術でも無い限り辛そう。権力者と知り合って食材の開発でもできれば別だけど。
厨展開を無しと考えると無能ヘタレ駄目男に残された道はあるのだろうか?
弓って引くだけなら体力なくてもできるかな?
弓は結構力いるぞ。それに、素人じゃまず当たらない。曲射なら尚更
弩は比較的使い物になるまでが短期間だって聞いた。中世とかだと主力だったみたいだし
>>83 シビアな世界設定だとするとスキルがない、体力がない、貧しい生活に耐えられない、コミュニケーション力がない、身寄りの無い男は生きていけないでしょうな
行き倒れを拾ってくれる人がいるってのも不自然な展開だと思うし(コミュニティの外の人間を警戒して)。女を必要とするところは必ずあるだろうけど
そういう世界で要領よく生きていく描写のある小説が読みたいわ
エロパロの獣人世界に人間がトリップするシェアードワールドスレでは
人間は珍しい奴隷として珍重されて高く売れるから絶対拾われるっていう設定だったな
運よく人が通りかかったり等があったとしても、言語が通じないとかいう悲惨なオチも。
人が通りかからないのなら歩いて集落まで行く→言葉が通じないのではどうしようもない。
言葉の壁が無くても「異世界から来た」なんて言っても変人扱いされるだけだろうし、記憶喪失のフリもボロが出ないようにやるのは大変。
言葉を覚えるところから始まったトリップ物といえば「彼方から」
>>87 異邦人を受け入れられるキャパのある集落が近くにあるってのもなかなか幸運ですしね
猫耳少女スレの高級奴隷って設定てのは結構上手い落としどころなのかもしれませんね
TOEのオージェのピアスみたいなのがあれば万事解決!
体力もない駄目野郎が異世界に召喚され、運良くお金持ちのお嬢様方に拾われる。
そして使用人として使われるが・・・本人は体力がないし、あまり力を入れていないのに拭いた皿は割れる、絞った雑巾はちぎる等破壊を繰り返してしまう。言語も通じないため弁明のしようもない。
ある日魔物でも敵国でもが攻めてきた際に駆り出される。とりあえず適当に戦ってみるがどうも敵が弱いし、鉄製のはずなのに武器もやたら軽い。
実はその世界はドラえもんの地球脱出船の話にあったような重力が弱く、現地人の筋力も低めな世界だった。
十分厨展開だな。
>>91 何それ?
まあ基本エロだからお嬢さまは仕方ないんだけど、そんな不自然なチートじゃなくて、主人公の持つ生きるチカラみたいなので生き残ってくれないものか
個性的な専門スキルとか交渉力とかコミュ力とか、そういうのを持った魅力的な主人公を見たいんだよ
展開が面白さを決める訳じゃないんだから
こういう展開がどうこうと語ったところで実はあんまり意味ないのよな
でも雑談してると楽しいじゃん
人がいるのがわかって活気もでるからSS投下もしやすくなるし
でも召使とか使用人って言葉教えてもらえんの?
下手に知恵つけられたり反抗されたりしたら困るんじゃないの
>>95 同僚とコミュニケーションも取れん様じゃ使えんわなー
炭鉱夫とか農奴とかかね。家の中で働かせるって奴隷でもランク高そう
綺麗な言葉はむこうが優しくないと教えてもらえないだろうが
物の名前ぐらいはわからないと働かせるのにこまらね?
でも子供が母国語を覚えたり、日本語を介して英語を勉強させられたりとは訳が違うからな。歳くって真っさらでもない状態からのスタート。
どういう風に教えられたり指示されたりするのだろうか?
クワ指差して「※○△(あちらの世界でクワを指す単語)」って言われて、その後畑を耕す動作をやってみせるだとか?
で、畑を耕し始めると満足そうに頷いたり、一旦手を止めさせてフォーム修正をしたり。
>>97 穴掘ったり土砂運んだりとか単純労働はできるでしょ。
何か価値を見出だされない内は構ってくれる奴もいないだろうし、言語はモンゴル人力士見習って根性で覚えろ!
生命が懸かってるのに単純労働も出来ないような奴は生きてる価値つーか、わざわざ描写する価値がねえよ
>>98 解るまで暴力、出来なきゃ暴力に決まってんじゃん。それこそアメリカの黒人奴隷的な
使いどころを見出だせてない異民族相手にそんな丁寧に仕事仕込むかよ
現実世界の勉強だけできるエリートが言葉の通じない世界でムチで打たれたり自己を否定されたりして壊れていくのなんてどうだろう
他人の不幸は密の味
「おい!蛮族ども!なんで俺が叩かれないといけないんだよ!俺は早稲田出て有名企業に入ったエリー」ピシィッ!
「痛っ!てめえもう黙っちゃいられねえ!」
主人公は監督者に殴りかかったのだが他の奴隷達に殴られて地に転がった。
監督者「(おいお前ら!この馬鹿にここのルールを教えてやれ)」
リンチ
「チクショウ!なんで俺がこんな目にあわなくちゃなんねえんだよ!?うわあああああああ!」
>>91 似ているのに異世界迷訪記という作品があるけど
>>101 それただの馬鹿かDQNでしょ。
でも案外現実において変に要領だけいい人間よりも、簡単に割り切ってしまう従順やら大人しい人間の方が適応しやすいかも。
元からある世界じゃなくて(文明的なものが)何もない世界にいくつかの世界から人が合わせて100人くらい飛ばされてくるなんてどうだろう?
>>104 なんか30年近く前に漂流教室という漫画があってだな・・・
前例があると何か悪いのかね
好戦的な連中がもしいたら確実に終わるな。
言葉が通じるなら話し掛ける、通じなくてもなんとか協力する・・・なんて甘い展開にはならないのかな?
漂流教室は1つの世界の団体がトリップだろ
多数の世界から何もない世界にトリップっていうのは新しいかも
たしかに多数の世界から呼び出されたのは読んだことがあるけど
何もないのは読んだ事ないな
>>104 文明的なものがないってことは一応自然資源はあるってこと?
ある意味サバイバルキッズ的な。
>>108 ああ勘違い・・・
なんか星新一の短編でありそうなネタだね。もしくは世界史系ジョーク
>>110 そうそう
森の中に突然放り込まれるとか
文明はないけれど独自に発達した生物やモンスターがいるとか
ならこんなことになりそうかな?
(とりあえず各世界組で集まって方針等を取り決める、言語は通じるとする)
地球人かつ日本人計五人くらい組
「とりあえず水やら食料を探すのと火を起こすのに分かれよう。」
火起こし班「ライターもマッチもない。だが都合よく木の枝と木と乾いた草が見つかったから火をおこすぞ!」
しばし作業をするが中々おきない。
「手が痛い・・・」
(近くの別世界組が話し合いを終えたらしい)
別世界組「ファイア」(ボッ)
火起こし班「・・・・・orz」
それだけにとどまらずお情けまでかけられて早速鬱に。
別々の世界から複数の国が一つの異世界に転移する、ってネット小説はあったな
スーファミゼルダの闇の世界みたいに心に映ったもの、あるいは世界に来ただけで変身しちゃうなんてどうだろう
言語が違う世界だと名前を名乗っても多少の誤解などが生まれるのだろうか?
地球と違って言語が違うと発音まで変になる可能性も
なんというか「タカシ」って日本語で名乗ったとしてもあちらの解釈では「クリス」と捉えてしまうみたいな
今僕が考えているのが似た感じかな?
言語が日本語と同じ体系で、平仮名五十音が丸々別の発音と記号に置き換わっているみたいな。
文章は日本語と同じ語順で、日本語に直すと平仮名と片仮名(固有名詞は発音が同じ別文字、片仮名みたいなの)で文章を作る、書くといった感じ。
説明下手だから分からないかもしれないが。
よくある暗号みたいなもんか
なんと意志疎通の難しいことか
その法則性に気付いた主人公は対応表を作る。
相手が何か言ったらそれをメモって翻訳、言いたいことがあったら一度書き出してから喋る。
たしかに面倒。
>>121 だからこそ召喚時のなんちゃらかんちゃらで意思疎通が可能になったっていう設定が幅を効かせてる訳か
法則性が見出だせるならまだいいほうで、訳も分からない言語だと終わる。
124 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 21:52:16 ID:YcQkcGgN
限らん
125 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 12:14:51 ID:Z/cHlQ8v
話題も投下もない
じゃあなんかネタ振ろうぜ
じゃあ横からネタを振るw
>>118のような言語があったとして、丸々既存の言語から置き換わっているとしたら
そこはなにか現実を基に作られた人工的な世界なのかもしれない、と推測できるわな
言語の発生はなによりも単語が先にあるわけで、音節というのは分析的なものでしょ
その分析的な音節ベースでエンコード(≒暗号化)がかかってるとすれば、
それは作為で作られた人工言語以外の何物でもないっていう
そういや、今のハングルがややそれに近い存在だわな
だな
そんな暗号的な言語不自然きわまりない
彼方からとか言葉がわからないトリップものでは少しずつ覚えていく過程が書かれてたな
十二国記も面白い描き方がされてたよ
主人公は「仙」の一種で自動翻訳つきという立場だったけど、
実際には言葉が違ってて「仙」でない人は苦労してたり
言語といえば初代デジモンでとある工場に文字が書かれていて、プログラムの扱いだったはず
131 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 23:25:31 ID:DsNzEXFc
工場だけでパソコンが使えるのが重大なことだとは〜で終わる回?
アンドロモンだっけ?
でも関連性のない言語でも長年ずっと暮してたらだんだん言葉がわかるようにならないかな?
現実でも知らない土地にいきなり行って最初は苦労しつつもだんだん馴染むってよくある話だし
134 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/20(土) 15:36:26 ID:zYH8N7iA
英語の場合日本語を介していたからなんとか勉強できたがな・・・。
いい歳したやつが基本発音と書き取り、一からの言語学習というのもなかなかに面白そうだ。
>>133 大黒屋光太夫なんかスゲーぞ
言葉とか以前の問題だったからな
136 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 14:58:46 ID:Vfh9c6Mq
十二国記参考にしてみたら?
それから言語の関係は、
自分の前にそこに同じように来てしまったっていう人がいるなら、
異世界に召還されてもその人を頼ればどうにかなるんじゃない?
137 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 15:11:45 ID:Vfh9c6Mq
>>88 「彼方から」の言語関係の資料見つからないな
彼方からは特別に異世界の言葉をそんなに作ってたわけじゃないからな
コマの形だったかなんだったかで使い分けていたような
最初は知り合いの名前、次に身近な物の単語と少しずつ覚えていく様子はリアルだった
近所の夫婦の会話を見てて「おつかれさま、あなた」を「おかえりなさい」だと思い込むとか
失敗話もいろいろ小ネタで入ってたな
139 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 16:14:29 ID:8phx08hz
名(迷?)案だと思った方法。
現地人と結婚して子供ができれば、
子供がバイリンガルになってくれるから心配無用。
アイテム(神器?)に込められた、或いは仕掛けられた力の作用で異世界召喚
しかも其のアイテムに翻訳の魔法が込められてって言うのはあり?
って言うか以前そんなSS書いて、しかも現在リメイク版書いてたり
なんかのアイテムやら魔法やらのおかげで翻訳こんにゃく効果っていう設定はよくあるね
142 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 21:26:02 ID:7DX+uHrd
逆にこういうのどうだ?
全くの異世界に飛ばされたはずだったのに、周りの人間が日本語喋ってる。
人種も民族も絶対に違うはずなのに、やっぱり日本語喋ってる。
なんで????????
っていう話。
それも面白いな 何で回りの人間が日本語使えるのか理由を考えてみよう
例えば……
自分が飛ばされた数十年、或いは数百年前にも同じく飛ばされた人、若しくは人たちがいた
彼らは救世主的な存在で彼らの遺した遺産の中に「日本語」があった
とか
現実でも日本人移民や開拓民が活躍した外国の土地に、日本語が断片的或いは丸ごと残ってる例があった筈だし
なかなか投下ないねえ。
日本語が偉い奴だけ使っているとか面白そう
ここは投稿じゃなくて雑談スレだろ
どっちもだよー
雑談もするし投下感想もやる
勘違いしてた。ありがとう
148 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 20:39:45 ID:3+z86CMT
別なところに前晒したのを少しいじったもの。
行った先の世界は機械技術文明よりも魔法等が発達した平行世界。魔物が出たり、一部大陸のかたちが違っていたり。
そして都合の良いことに国際語が日本語。(他に魔術言語もある)余談だが百年前の国際会議で「使いやすい」という理由で国際語認定。
建物は昔話に出てくるような日本式の家だったり、中世西洋風だったり。
東京近辺はお江戸、新宿は西洋街。ビルやマンションの類は無い。
服装はローブ、着物、簡単な洋服と様々。
文明レベルは考えるのが面倒だから考えていない。
なんかみんな本格的だよな・・・
平行世界設定か
日本語があってもおかしくないけど異世界だということね
151 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 00:33:31 ID:s4WM6731
152 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 01:32:42 ID:7W4eNbA9
銀魂は知らない。
あとは魔法は
あちら側にのみ存在する大気中の成分を反応させる
言霊云々
魔力をイメージと共に放出
魔法鉱石やら何かを身につければ誰でも使える
とか考えていたり。
行っただけで魔法が使える、何かを身につければ使える、まったく使えないのどれか。
意図が違うので、連投はしない。
---------------------------------------
それが当然なのだと思ってきた。
それなのに俺に身寄りがいたなんて……。
「さあ、お坊ちゃま、こちらへどうぞ♪」
これまで孤児院で生活して来たから、俺は正直戸惑った。
この男は院長先生やデカイ態度で寄付に来る大人達とどこが違うのだろう。
そして俺の両親は……?
森の奥にこんな大きな洋館があるとは知らなかった。
まるで中世の古城を再現したような構えをしている。
あまりにも俺には大きすぎた。
それにしても、いまさら遺産はないだろう……。
なるほど。そういう意味での異世界か。むしろ別世界。
トビラの向こう側に別世界があるってやつだろ。
リレー小説の出だしの定番じゃね?
156 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/06(火) 00:06:15 ID:v2zVs4q/
ある日扉を開けたら異世界でした・・・みたいな展開だったらどんなにいいことか。
157 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/06(火) 15:53:46 ID:VdZZLcX8
朝起きたらファンタジー世界だったらいいのに
下水道整備されててネコミミ獣人がいて皆優しいシルバニアファミリーみたいな朗らかなファンタジー世界
優しい世界にいきたい。
現実には嫌なことが多すぎる。
神坂一の日帰りクエストを思い出した
なぞの魔方陣で異世界に呼び出されて日常からの脱却に大喜びする女子高生
下水道整備されてて>重要だよね
そう言えば古代ローマ帝国は整備されてたんだよな
反対にフランスの中世はそれより後の時代のはずなのに整備されてなくて町中悪臭漂ってたんだっけ?
実際そこで生活してる住民は下水の重要さとかわからんから
工事に取り掛かるのはすごく大変っぽいね
アルバイトの帰り、青木淳子はいつものように暗い夜道を歩いていた。相変わらずこの時間は人通りが少ない。
だがそれが彼女にとっては好都合だった。
今日は2週間に一度の「例の日」だった。その日になると夜誰もいない倉庫に行き、「発散」させるのだ。
それを人に見られでもすれば化け物扱いされ社会的抹殺は避けられない。だから人がいないほうが好都合なのだ。
さて、何の気なしに倉庫の前までたどり着いた淳子だったが、扉を開けた瞬間、別世界が広がっていた。
「…何これ…」彼女は思わずつぶやいていた。あたり一面大砂漠。草や木の類は全く見当たらない。空はというとどんより
灰色がかっている。後ろを振り返ると、入ってきたはずの扉は…「消滅」していた。
…帰れない。すなわちこの大砂漠に彼女はひとり取り残されたのだ。一瞬にして日常から非日常へと放り出されてしまった淳子。
これからどうすればいい?とにかく、ここで突っ立っていても仕方がないので淳子は歩き出した。この砂漠にも果てはあるだろう。
そう信じて。
163 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/09(金) 06:13:06 ID:VbTXKZFe
伏線だけですか
これからガンガン攻めてく予定だけど、収拾がつかなくなるかも知んない。
てな訳で今日も1話。
淳子は歩き続けていた。もう一時間は歩いただろうか。一向に何も見える気配がない。
ただ一面の砂、砂、砂だ。この砂の粒子を一粒ずつ数えたらまあまず間違いなく無量大数を通り越すんだろうな、
などとばかばかしことを考えながら彼女は歩き続けていた。
ただ、ひとつ救いがあった。砂漠というと灼熱の太陽に照らしだされた極熱の地、というイメージだが、
灰色の雲に覆われたこの空に灼熱の太陽など望むべくもない。別に望んでもいないのだが。
熱くない、どちらかというと太陽が隠れて薄暗く、結果、砂が冷えてかえって涼しいくらいだ。
「この世界にも神様はいるみたいね…別に信じちゃいなかったけど」淳子はひとり呟いた。
しかしそんな無神論者のようなことを言った罰があたったのかいきなり砂嵐に見舞われた。ものすごい突風と砂が淳子を襲う。たまらず伏せる。
5分ほどたち、砂嵐がおさまり立ち上がった淳子の目の前にいたのは…クジラだった。しかもその体長は20メートルはある。
「クジラ!?なんでこんな砂漠にクジラがいるの?」しかもそのクジラは砂嵐で気が立っているのだろう、淳子に襲いかかってきた。
絶体絶命の危機、かと思われたが彼女は不敵に笑った。
「丁度いいわ。あの倉庫でできなかった発散、あんたにぶつけてあげる!」その瞬間、砂クジラは炎に包まれた。
絶叫を上げる砂クジラ。10秒後には砂クジラは完全に巨大な炭の塊と化していた。「こんなものかな…けどさすがにこんな化物が相手だと疲れるわ…」
砂に座り込む淳子。その時、後ろから拍手が聞こえた。驚いて振り返る。一人の女性が立っていた。しかも結構美人だ。
「ありがとうございます、助かりました」その女性が切り出した。「…あなたは?」「私の名前なんてどうでもいいでしょう?」
「…名前も名乗らないような人を信用するわけにはいかないわ…」「ふぅん、じゃあ仕方ないな、秋山って呼んでよ。秋に山梨で生まれたから。下の名前はあなたが好きに決めてよ」
「いえ、秋山さん、と呼ばさせてもらうわ」「じゃあそれでいいよ」「ところで秋山さんはなぜここに?」「学校の教室で先生と話してて、二人一緒に教室を出たらこの有様」
「その先生は?」「たぶんこの砂漠のどこかにいると思うんだけど」この大砂漠でたった一人の人間を探し出すなど雲をつかむような話だ。
「でもまあいいわ。私も一緒に探すわ」「ホント!?ありがとう!」そうして二人は「先生」を探すために歩きだしたのだった。
第2話 FIN
GJです。
続き楽しみに待ってます。
昨日訳ありでPCの前に座れなくてすいません。てな訳で今日は昨日の分も言ってみようと思います。
第3話
砂クジラの撃退、というか抹殺から3時間がたったころ、二人は「先生」を探し続けていた。その道中、秋山が切り出した。
「ねえ、青木さんがあの化け物クジラを焼き殺したのってなんの手品?あたしにも教えてよ」
淳子は言葉に詰まった。あれは手品なんかじゃなくて自分の先天的な能力なのだ。話したところで…いや、見られてしまったのだから仕方ない。
正直に打ち明けよう。「秋山さん、あれは手品じゃなくて『パイロキネシス』っていう超能力の一つ。要するに念じるだけで火をおこすことができるの。
火加減も自分の意思で変えられるし…けどこれは結構体力を消耗するから、あまり使いたくはないんだけどね」
「へぇ…青木さん超能力者だったんだ…いいなぁ、あたしにもそういう不思議な力があれば世の中もっと楽しいのに」ぼやく秋山。
その横で苦笑する淳子。自分はこの力のせいで孤独な人生を過ごしてきた。だけど使い方次第ではもっと楽しい人生が遅れたのかもしれない。
淳子は隣の少女のポジティブシンキングを羨ましく思った。その時、彼女の名前がふとひらめいた。
ポケットからボールペンと紙を取り出し、名前を書き、秋山に見せながらいった。
「ねえ秋山さん、下の名前、『美伽』さんってよばさせてもらっていい?将来、あらゆる人に美しさを加えられる、与えられるような人になってほしいという願いを込めて」
「いい名前、ありがとう青木さん」美伽は満面の笑みを見せる。その時、地平線のかなたに何かが見えた。
「ねえ青木さん。あれ、街じゃない?」「ええ、そうみたいね」「とりあえず、あの街でいろいろ情報を集めよう」「そうね」
そうして二人は地平線に見える「街」に向かって走り出したのだった。
第3話 FIN
んーもうちょっと1話をふくらませられないかな
まだキャラもよくわからないしこれだけじゃあんまり感想かけない
第4話
二人は街にたどり着いた。走ってきたので多少呼吸が荒くなっている。落ち着くまで休み、態勢を整える。
「ようやくたどり着いたね、長かったぁ…」「そうね、とりあえずあのお店で情報収集といきましょう」
さて、この街の建物はというと砂漠の町だけあって造りはコンクリートなどという丈夫なものではなく、ただ土を固めて
木でそれを補強しているというような至極質素な作りである。よって扉などというものもなく、出入り口はどちらかというと
壁に大きな穴があいているという表現のほうが妥当なくらいだ。
そして二人は店らしき建物の中に入った。人がいる。淳子が声をかける。
「あのすいません。私たちここで迷ってしまったんですけど、どうすれば戻れますか?というか、この世界は一体何なんですか?」
その人物が振り返る。その瞬間、二人は凍りついた。全身黒ずくめで顔はというと、雪のように白い。しかも少しニヤついている。「そいつ」が答えた。
「ここ?ここはどこでもないよ?僕たちの住む世界さぁ、ハハ。君たちは「自分たちの世界」から「こっち側」に迷いこんじゃったようだねぇ。お気の毒だよあははは」
美伽がそいつの態度に激昂し、どなる。
「おい!なにがおかしいんだよ?!どうすれば元の世界に戻れるんだよ!?それにその恰好、お前いったい何者なんだ?」
「僕?闇人零式、とでも言っておこうか。僕が人間だった時の名前は…忘れちゃったぁ、別に興味もないしさ、あははは」
闇人零式、と名乗ったそいつの態度にとうとう黙っていた淳子が…キレた。
「ボウッ!」と音を立てたその瞬間、そいつの右腕は燃えていた。パイロキネシスを発動させたのだ。とたんにあわてる闇人。
「熱い熱い熱いよぉ!助けてくれぇ!」「じゃあ私たちの質問に正直に答えてもらえるかしら?」「わかった!約束するからこの火を消してくれぇ!」
淳子はポケットから携帯用消化器を取り出し、闇人に噴射する。すると炎は消えた。
「これで火は消えたわ。それじゃ約束通り私たちの質問に答えてもらうわ、まず、この世界は一体何なの?」
「さっきも言ったでしょ?僕たちの暮らす世界さ。君たちの世界とは平行に存在する世界、パラレルワールドって言ったほうがわかりやすいかな。つまり本来は交わることがない」
「確かに。でも私たちは現にここにいる。それはなぜだと思う?」「因果律、じゃないかと思うんだ」
「因果律?なんだよそれ?」「わかりやすく言うと、『原因と結果の関係』のことだよ。ひとつ例に出してみると、『転んで足を怪我した』っていうのも因果律だよ」
「それとあたしたちがここにいるのと何の関係があるんだよ?」「本題はそこだね。何者かがこの砂漠と化した世界を変えるために君たちを召喚したと僕は考えるけど」
「その何者か、っていうのは?」「たぶん僕や君たちなんかよりずっとずっと高位の存在だろうね。あまりに高位すぎてもはや目に見えないくらいの」
「私たちの世界ではそんな存在を『神』と呼んでいるのよ」先ほどの紙に字を書き、闇人に見せる。
「へぇ…神、かぁ。僕たちの世界では明確な呼称がなかったんだよ。これからは僕たちの世界でもつかわせてもらうよ。」
「そんなことより次の質問、あなたは一体何者なの?」「さっきも言ったでしょ?闇人零式。人間の死体に『闇霊』っていう生命体が憑依することによって誕生する生物」
「待てよ、つーことはまず人間そのものがいなければお前らは存在しえない、ということだな?」「うん、そうなるね」
「ということは昔はここにも人間がいたってことだよな?」「うん、昔はいたよ。この街にもたくさん。けどある日を境にいなくなってしまったんだ。それがなぜだかはわからないけれど」
「今も人間はいると思う?」「たぶんいるんじゃないかな。この世界のどこかに」
「じゃあ、ここまでの話を一度整理してみましょう。まず私たちは自分たちの世界から『神』の意思によってこの世界を変えるために召喚された」「うん」美伽と闇人がうなずく。
「召喚された先は何もない砂漠。ようやくたどり着いた町にいたのはあなたたち闇人。この街に最初住んでいた人間たちはどこかへ疎開。この世界のどこかでいまも生活しているはず。こんなところかしら」
「うん。そんなところかなぁ。あ、ここからはあくまでも僕の憶測なんだけど、聞いてくれるかな?」「なんだよ?」
「いくら君たちをいきなりこっちの世界に召喚するような自己中な神様でも君たち二人だけでこの世界を変えろだなんて無茶なことは言わないと思うんだ」
「つまり、私たち以外にもこの世界に召喚された人たちがいる、ってこと?」「そういうことだね」唐突に美伽が切り出す。
「なあ、あたしたち『先生』を探してるんだけど、見なかったか?」「『先生』というと、金髪でメガネをかけた美人のお姉さんのことかな?」
「そうそう!その人だよ!今どこにいるか知ってるか?」「あの人ならずいぶんと怪我してたから、この街の病院にいるはずだよ。この街の入り口付近で倒れてるのをお巡りさんが見つけて病院に運び込むのを見たんだ」
「で、その病院はどこにあるんだよ?」「この店をでて右に曲がってまっすぐ行ったところにある大きな建物だよ。行けばすぐにわかるさ」
「わかった、ありがとな。行こう、青木さん」「ええ、行きましょうか。いろいろ情報ありがとう、助かったわ」「どうも。まさかお礼を言われるとは思わなかったけど」
と闇人がいった次の瞬間にはもう二人の姿は消えていた。
「彼女たち、一番聞きたかったことを聞いてないけど…大丈夫かなぁ…元の世界に戻る方法」
第4話 未知との遭遇 FIN
>>167 アドバイスありがとう。それを受けて4話から膨らませてみたんだけど、長すぎたね。しかも見にくい。
とりあえずこれまでの登場人物の紹介。
青木淳子 20代前半女性。超能力「パイロキネシス」を使い、自在に炎を操る。出典「宮部みゆき著 クロスファイアより」
秋山美伽 17歳。普通の高校生。ただ運動能力は抜群だが、気が強いのが玉に瑕。
闇人 本文参照。出典「SIREN2」より
乙です
俗に語であるようなファンタジーっぽい感じじゃなくて
異世界な雰囲気ですね、見た目は荒涼とした絵に描いたような砂漠なのに
感覚的には砂漠を感じさせない異質な世界
闇人は優しいやつだ
第5話
店で出会った闇人の言葉どおりに進むと、なるほど確かに病院があった。が、土を木で補強してあるという作りは同じだ。
二人は病院内に入り受付の看護婦らしき黒ずくめの人物に声をかける。言うまでもないが闇人零式だ。
「あのすいません。こちらに金色の髪をした眼鏡をかけた若い女性が運び込まれた、って聞いてきたんですけど」すると『看護婦』が答える。
「ああ、その女の人ならなんとか一命を取り留めてついさっき集中治療室から出たところよ。今は一般病棟の204号室にいるはずだけど。でもまだ意識が戻らないらしいわぁ。大丈夫かしら」
「一般病棟の204号室だね。ありがと。いこ、青木さん」美伽はそう言って走り出した。あわてて後を追う淳子。さして時間もかからず、二人は『204号室』の前にたどり着いた。
ただ、扉の隣に何やら文字らしきものが書いてあるのだが、二人にはそれが解読できない。幸いなことに204は数字だったためここが『204号室』だということはわかった。
淳子が静かに扉を開き、病室にはいる。個室ではなかったが、床に伏せっているのが『先生』一人のため同じようなものだった。なるほど確かに包帯で全身を包まれた女性らしき人物がベッドの上に横たわっている。
「先生!」美伽が駆け寄る。『先生』の両肩を鷲掴みにし、揺さぶりながら叫ぶ。「先生!私だよ!お願いだから目を開けてよ!先生!」その刹那、誰かが扉を開き病室にはいってきた。振り返る二人。
その姿を見て二人は戦慄した。おぞましい―。それが二人の共通の第一印象だった。まず頭というと、確かに頭らしきものはあるのだが、顔がない。
その顔はというと…人間でいうところの腹にあった。しかもその顔から下にあるのは…5本の指だ。人間の脚部に当たる部分だろう。『そいつ』が口を開く。
「あのねお嬢さん。ここは病院なんだからお静かに願えますか?」―バタン。美伽が卒倒した。『そいつ』があわてた様子で駆け寄る。
「貧血ですか?いけませんね。とりあえずそこのベッドに寝かせましょう。お姉さん、手伝ってもらえますかな?」何も言わずに淳子は言われたとおりにした。「先生」の隣のベッドに寝かせる。
貧血じゃなくてあんたのあまりのおぞましさに気絶したんじゃないの、と淳子は心の中でつぶやいた。まあそう思っていても仕方ない。淳子はここでも情報収集に余念がなかった。
「あなたを医師と見込みますが違いますか?」「ええ、まさしく私は医師ですがそれが何か?」「先生を治療したのはあなたね?」「ええ、私ですよ」
「先生はどんな傷を負っていたの?」「そうですね、全身をかなり鋭利な爪で引っ掻かれていましたね。出血多量で運び込まれるのがあと少し遅かったら命はなかったでしょう」
「そんな重傷を負いながらなぜ先生はこの街の入り口までたどり着けたと思う?」「この傷を負わせた怪物の詰めが甘く、怪物は死んだと思って立ち去るも実は生きて命からがらたどり着いたのでしょうね」
「それにしてもよく輸血用の血液製剤があったわね?」「昔ここで暮らしていた人間たちが、血液製剤を冷凍保存していたのが救いでした。解凍してすぐに輸血することができました」
「なるほどね…それで彼女はいつになったら目を覚ますと思う?」「それは神のみぞ知るところ、といったところです」「医者にもそれはわからない…か。わかったわ。ありがとう」
「いえいえ。ところで今日はもう遅いので泊って行かれるといいでしょう。ここは宿屋も兼ねていますので」「でも私たち、お金を持ってないけど?」「この世界に通貨はないんですよ。だから基本的に商業をはじめとしたものはすべて無料なんです」
「それであなたたちはどうやって生計を立てるというの?」「私たち闇人は食事を必要としませんからね」都合のいい世界だな、と淳子は思った。そういえば、この世界に来てから結構時間がたつが一向に腹が空かない。
「なるほどね…それじゃお言葉に甘えさせてもらうわ。明日はこの街をいろいろ散策してみたいんだけど、いいかしら?」「かまいませんよ?ただ地下に潜む『屍人』たちには気を付けてください」
「屍人?」「あなたたちの世界では『ゾンビ』と言ったほうがわかりやすいですか。毎日昼間ところどころに出没するんです。私たち闇人には何もしてきませんが、あなたたち人間を見つけると襲いかかってくるようですから」
「ちょっと待って。ということは彼女を襲ったのもその『屍人』なんじゃないかしら」「その可能性も否めませんね」「わかったわ。とりあえず明日、いろいろ探ってみるから」
「わかりました。しつこいようですがくれぐれもお気をつけて」「ええ、ありがとう。ああそれと最後に一つ聞いていい?」「なんでしょうか?」「あなたのような姿をした闇人は何て呼ばれているの?」
「闇人甲型、と呼ばれています」「甲型、ね。わかったわ。ありがとう」「それでは今度こそこれで失礼します」「おやすみなさい」そして闇人は部屋をあとにした。
「さて、明日に備えて私ももう寝よう…」そして淳子もベッドに横たわり眠りについたのだった。
第5話 邂逅 FIN
適度に改行して欲しいお;読みにくいお
乙です
確かにちょっと見にくいですかな
びっくりしますぜ
闇人は語尾に〜ぁとか付けたがる輩ですか
でも甲とかいたり、いろいろいるんすね
闇人は協力的なアレですがゾンビは敵と、「先生」は食われないということは
ただのゾンビではないようですね、昼間動きまわるとかあるし
>>174-175 ご忠告ありがとうございます。おっしゃる通りです。僕たち書き手はなにより読み手のことを考えながら
書かなくてはいけないものだと思っています。それができなければただの自己満足に過ぎませんからね。
ところでものは相談なんですが実は第6話で新しい登場人物を登場させたいのですが、誰にしようか迷っています。
候補としては、「SIREN」の須田恭也、「FINAL FANTASYZ」のセフィロス、「スパイラル〜推理の絆」のカノン・ヒルベルトの
3人のうち誰か一人なんですが。
それともなにかリクエストはありますか?名前と出典作品と簡単な紹介を添えていただければと思います。
できれば男性キャラクター希望です。ただ戦闘能力がずば抜けて高いようであれば女性キャラクターでもかまいません。
ご協力のほう、よろしくお願いいたします
177 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 23:11:00 ID:hmhrZ+H+
どれでも…知らないのばっかなので
FFはキャラがアレな気がするので、FFはどうすか?
こんばんわ。ゴーストライターです。それでは第6話 行ってみます。
第6話 降臨〜片翼の天使〜
淳子が目覚めると、まだ日の出前だった。しかし目覚めが非常によい淳子はそのままベッドから起き上がり、深呼吸と間延びをした。
窓から外を見ると、日の出前ということもあり薄暗い。もっとも日が出てもあまり変わらないのだが。
しかし淳子は日の出前のこの独特の空気が気に入っていた。
自分たちの世界のように小鳥がチュンチュン鳴いたりすることはないから物足りない気はするのだが。
隣を見ると、美伽とその先生は相変わらずベッドの上だ。先生の隣に立ち、その手を握りしめながら淳子は言った。
「あなたの大切な教え子が心配してるわ。早く起きてあげてね」
そして彼女は病室を後にし、一階のロビーへとやってきた。早朝ということもあり誰もいない。受付もまだ開いていない。
ロビーのベンチに腰掛け、しばし物思いにふける淳子。どうすればこの世界を変えられるのだろう。
人差し指を立てて指先にライターのような小さな火をおこす。
「私にはこの力がある。でもそれは世界一つを変えるにはあまりにも小さすぎる。どうしたらいいの?」
その時、誰かの気配がした。その方向を向く淳子。そこにいたのは…昨日の闇人甲型よりもさらにおぞましい闇人だった。
昆布まきのような姿に鶏のような足、そしてなにより、昆布まきの先端の…顔。淳子は頭がくらくらした。その闇人がいった。
「あら、朝早いんですね。隣座ってもいいかしら?」
その姿でどうやって座るというのか、と淳子は心の中で思った。が、特に断る理由もなく淳子はうなずいた。淳子の隣に「座る」闇人。
「あなた、別の世界からやってきたんですって?頭巾屋の彼から聞いたわよ。この世界を変えるために神様が遣わしたそうじゃない」
頭巾屋の彼とは、淳子と美伽が最初に出会った闇人のことだ。あの店は頭巾屋だったのだ。彼ら闇人は例外なく頭巾をつけているから
そんな店が一つや二つあってもおかしくはない。
「ああ、あの人ですか…あの人は私のことをほかに何か言ってませんでしたか?
「いえ、別に何も言ってなかったわよ?」安堵の息をつく淳子。
自分の右腕を燃やされたなどと触れまわれられたら化け物扱いは必至だ。化けものはどっちだ、という話ではあるのだが。
「先生から聞いたわ。昼間出歩くそうねぇ。彼も言ってたと思うけど屍人には気をつけてね」
「あの、屍人ってなんなんですか?あのお医者さんはゾンビみたいなものだって言ってましたけど」
「あらあら、ずいぶんアバウトな説明ね。まあ間違いじゃないんだけど。まあいいわ、教えてあげる」
そう言って闇人は「屍人」の説明をしてくれた。まず、姿かたちは人間そのものなのだが、目から血の涙を流している。
さらにたちの悪いことに、不死なのだ。肉片からでも復活するというから驚きだ。
「そんな生き物が…どうして屍人は生まれたんですか?」当然の疑問を口にする淳子。答える闇人。
「今はもう跡形もないけどずいぶん昔、この町に工場があってね。ある化学薬品を作ってたそうよ。そこまではいいんだけど…」
「けど?」淳子が尋ねる。
「突然の事故でその化学薬品が工場全体に漏出する事故が起きちゃったの。その薬品に感染した職員たちのなれの果てが…屍人」
「もしかしてその事故が原因で人間たちはこの街から去って行ったんじゃないですか?」淳子が指摘する。しかし闇人は首を振る。
「当時、芹沢大介という科学者がいてね、その人が作ったある『兵器』によって屍人は一掃されたそうよ」
「一掃された?じゃあなぜ今も屍人はいるんでしょうか?」当然の疑問を口にする淳子。
「それはわからないわ。でも今も屍人はこの街の地下にいるわけだし、生き残りがいたとしか考えられないわ」
生き残り…そいつらが先生を襲った。そして殺そうとした。なんの罪もない先生を―。
その時淳子の心に屍人に対する憎悪が芽生えた。しかもそれはどんどんと肥大化していった。不死?肉片からでも蘇る?
そんなこと知ったことか。すべてを炭へと変えてしまえば生き返れるはずなど無い。屍人をこの世界から抹殺する。
それがこの世界を変えるために歩みだす一歩だと淳子は思った。気がつけばすっかり日は昇っていた。腕時計に目をやる。
9時だ。そろそろ美伽が目を覚ましているころだ。淳子は立ち上がり、闇人に言った。
「いろいろとありがとうございます。ところで、穴ナたちのような闇人は何て呼ばれてるの?」
「私たちは一般的に闇人乙式、って呼ばれてるわ。でもそれは総称、結構数がいるから個別に呼び名があるんだけどね」
「ちなみにあなたは何てお名前なんですか?」
「暗井安子。暗い所だと落ち着くから」なるほど、と淳子は感心した。
「それじゃ私はこれで。ご縁があればまたお会いしましょう、暗井さん」
「あなたもね。お気をつけて」といって暗井はトコトコ歩いて行った。
病室に戻る淳子。美伽が起きていた。開口一番で尋ねる美伽。
「ちょっと青木さん、どこ行ってたんだよ?起きたらいないから心配したんだよ?」
「ごめんね美伽さん。ちょっと病院の中をふらふらしてただけだからね。それより、先生はまだ起きないみたいね」
「そうなんだよね。本当心配だよ…早く目を覚ましてくれないかな…」淳子もそれに同意した。そして美伽に告げる。
「ねえ、美伽さん。私これからちょっと街へと出かけてくるわ。やりたいことがあるの。詳しいことは聞かないで」
「わかった。あたしはここで先生を見てるから」と言ってほほ笑む美伽。そういえば、彼女の笑顔を見たのはこれが最初だと淳子は気づいた。
「ありがとう。それじゃ、行ってくるわ」病室を再び後にする淳子。そして受付で地下道への道をを聞く。
「この病院を出て左手に500m進んだところに廃墟があります。そこから地下道へといけますが…本当に行かれるんですか?」
「もちろんよ。そのためのこの力よ」そう言って淳子は今朝やったように人差し指を立て、先端に火をともす。
「魔法が使えるんですか?」淳子は拍子抜けした。魔法?そんなものを信じているのか?
「超能力よ。パイロキネシスっていうの。思うだけで火を起こせるの」自分の力について解説する淳子。
「驚きました。超能力って言ってもスプーン曲げくらいのものだと思ってましたから」
そういえば以前、スプーン曲げで話題になったユリ・ゲラーって人がいたっけ。
ポケモンのユンゲラーの名前の由来にもなった人だ。だがそんなことはどうでもいい。
「それじゃ、『終わらせてくるわ』」と言って淳子は病院を後にし、言われた道を進み廃墟へとたどり着く。
「ここね。すべてを終わらせてあげる」淳子は廃墟の中へと歩を進めた。何もない。ただ下りの階段があった。その階段を下りる。
そして地下一階へとたどり着く。何も見えない。深淵の闇とはこういう闇のことを言うのだろうと淳子は思った。
とりあえず、何も見えないのではお話にならないので、掌の上に炎を起こし松明の代わりにする。とたんに明るくなる視界。
地下道の直径はだいたい5メートルくらいか。ところどころに細い道が何本も枝分かれしている。どうやらこの道が大通りのようだ。
すいません。都合により今日はここまでです。また明日の夜続きを書きます。
おつおつ
屍人退治かあ、市内だけで他はいないということですか
元職員のゾンビで容易に復活できて、生命力が強い手強い奴
それで先生は仲間だし、カギとなる人物だから助けるというわけなんですかなあ
別世界の中に唐突に現代的な「芹沢大介」なんて名前が出て正に異世界だなwというか
でも人がいる形跡がある、何よりも闇人がいる
なんか人がいる形跡も現代と近いような気もしないでもない?
まだちょっと見にくいかな
よくあるような地の文と台詞の間隔とかで
ん?今どこ読んだかなってなるかも
内容は好きです
2chは行間がせまいからみっちりつまってるとどうしてもね
つ【専ブラ】
どうもゴーストライターです。助言してくださった方たちありがとうございます。また更に見やすくなるよう努力します。
お待たせしました、続きを書きたいと思います。誰も待ってないという突っ込みはナシの方向でお願いします。
その大通りをまっすぐ進む淳子。それにしても、何の目的でこんな地下道を作ったのだろう。
だがそれを考えていても仕方ない。淳子は歩を進め続けた。しかし行けども行けどもコケやカビの生えた壁だ。
ただ片道の数が不自然なほど多い。こんなに片道をつくる必要がどこにあるというのか。侵入者を迷わそうとしている?
迷わそうとしてもこの大通りに抜けられたら終わりだし、それ以前に自分たちも迷ってしまうのではないだろうか?
それとも、自分たちだけが迷わずにいられる方法があるというのだろうか?もしもそうだとしたら…自分はクモの巣にかかった蝶と
何ら変わらないということになるが、すべて終わらせると誓った以上、引き返すことはできなかった。
その時、淳子は急に開けた場所に出た。手の炎では小さくてよく見えないため、両手で器をつくるようにして炎を起こした。
どうやら何かの神殿のようだ。大きな祠がある。そしてその祠の前には…10人程度の人影があった。おそらく「やつら」が屍人だろう。
いきなり明るくなれば気がついて襲いかかってこられてもおかしくないのだが、目を閉じながら何か熱心に祈っているらしく、気づいていないようだ。
これ幸いと淳子はしばらく遠くから様子をうかがうことにした。すると全員でなにかお経のようなものを唱え始めたが、淳子には彼らの言葉が理解できなかった。
しかもどこか恐怖にとらわれている感じがする。こうして全員で一つのことをすることでその恐怖から逃れようとしているようだ。
何かがおかしい―。淳子はそう直感した。こんな行動をとる連中が人間を襲ったりするだろうか?だいたい、彼らの手には先生にあんな大けがを負わせられる爪が見当たらない。
先生を襲ったのは彼らじゃない?とすれば一体誰の仕業なのか。そう考えていたその時、彼女の背後から「ガシャンガシャン」と機械的な音が聞こえてきた。
あわてて近くの柱に身を隠す。それと同時にひどく怯えたそぶりを見せる屍人たち。
10秒ほどたち、その足音の主が現れた。その姿を見て、淳子はあわや大声を出すところだった。何とかその声を抑え、両手の上の炎を消し、息をひそめる淳子。
機械兵器―。すなわち、ロボットだった。それも体調が3メートルほどあり、右手には巨大なツメ、左手には何かレーザー砲のようなものを搭載している。
そのレーザー砲の出力を供給するためか、左肩が右肩に比べて異様に大きく、結果、左右非対称の奇妙な姿を形作っている。さらに頭部は―まるで悪魔を思わせるような
凶悪な形相をしている。さらに全身に重装甲を施し、ちっとやそっとの攻撃ではびくともしないほどの耐久力と、その巨体を支えるために肥大化した足。
そして背中には巨大な推進装置らしき部分が確認できた。このとき、淳子の頭の中ですべてのピースがつながった。つまりこうだ。
大昔ここでは大勢の人間が暮らしていて、その人間たちの一部はある化学工場で働いていたが、突然の事故で薬品が漏えい。外部に漏れるのを防ぐために工場は封鎖されたが、
その結果工場内の人間は見殺しにされ、薬品に感染し屍人化。ウイルスは撲滅できたものの肝心の屍人たちが残っている。彼らが襲いかかってこないという保証はどこにもない。
いやむしろ見捨てられたのだから襲いかからないほうがおかしいのだが。その屍人たちをせん滅するために芹沢大介が作った「ある兵器」というのが…すなわちこいつのことだ。
こいつによって屍人は虐殺され、最後に残った10人をも今その手に掛けようとしているところなのだ。そしてその兵器は左腕の砲塔を屍人たちに向ける。
キュィィィィィンという起動音とともにエネルギーが充てんされ、最大になったところでそれは発射された。しかも直線と思われたが、拡散式のレーザーだった。
その光線を浴びた屍人たち10人は…消滅した。それを確認し、その凶悪な顔を満足げにゆがませるロボット。その刹那、淳子の心はその兵器に対する憎悪に支配された。
渾身の力をこめ、ロボットに巨大な炎の玉を浴びせる。が、まるで効いていない。それどころか、即座に反応し右腕の巨大な爪を淳子に振り下ろしてきた。とっさによける淳子。
そして再び炎を放つが、やはりまったく効いている様子が見えない。そしてついに拡散砲を淳子めがけて発射しようとしたまさにその時その左腕がボトリと落ち、爆発を起こす。
片膝をつくロボット。一体誰が?淳子はあたりを見渡した。しかしその姿は見えない。まだ残っている右腕の爪を振り回すが、空しく空振りするだけだ。そして右腕も切り落とされる。
そしてまたも爆発。衝撃でその場にあおむけに倒れこむロボット。起き上がろうともがくが両腕がないのと、重すぎる体重のためにそれはとてもできそうになかった。
その刹那、巨大な隕石がロボットに向けて落下し、その重みで押しつぶされ、大爆発した。あの化け物をいとも簡単に…誰がこんなことを?淳子は再び炎をともし、あたりを探る。
が、誰もいない。360度あたりを見回すがやはり誰もいない。その刹那後ろから声をかけられる淳子。振り返ると銀色の長い髪をした男がやたら長い日本刀を携えて立っていた。
「さっきからきょろきょろとせわしいようだが…私のことを探しているのか?」「ええ、その通りよ。それにしてもよくあの化け物をあんな簡単に倒せたわね?いったい何者なの?」
「人にものを尋ねるときはまず自分の名を名乗るものだと思っていたが…違うか?」「…失礼。私は青木淳子。ごく普通のアルバイト。さて、私は名乗ったわ。あなたの番よ」
「セフィロスだ。ソルジャーをやっていてな。一時は英雄として崇められたこともあった。だからあんな玩具、破壊することなど造作もない」そして小さく笑うセフィロス。
「さて、私からも聞かせてもらおうか。ここはいったいどういう世界なのか。なぜ私はここにいるのかを」淳子は自分のこれまでのいきさつと仕入れた情報をセフィロスに話した。
「なるほどな。私にとってみれば迷惑な話でしかないのだがこの世界を変えなければ元の世界に帰れないというなら仕方がないな。私には元の世界で果たすべき目的もある」
その目的を聞いたところで教えてはくれないだろうと直感した淳子は、別のことをセフィロスに聞いた。怒らせると恐そうだったので声をやわらげて。
「あの、ところであなたは元の世界では最後に何をしていたんですか?私は先ほど話した通りですが」セフィロスは一瞬困った表情をしたが、すぐに淳子に向けて言った。
「考え事をしていてな。そのうち眠ってしまったらしい。気がついたらこの闇の中だ。しばらく歩いていたら、お前とこの玩具が戦っているのが見えたからお前を助けたというわけだ」
「それはありがとうございます。おかげで助かりました」「気にするな。それより、先ほどのお前の話では仲間がいるようだが…どこにいるのだ?」
「この上に町があります。そこの病院に二人ともいますが…あなたはこれからどうされるんですか?」「一人でいても世界は変わりそうにないからな、私も一緒に行こう」
「ありがとうございます。それじゃ行きましょう」そして二人は病院に向けて歩き出したのだった。
第6話 降臨〜片翼の天使〜 FIN
第6話いかがでいたでしょうか。まだ少し見にくいですね。でも温かく見守ってやってくださいね。
ゴーストライター
乙です
なんかまた戻っちゃった気がw
セフィロスですか、強そうな感じですね言うまでもなさそうだが
隕石は瓦礫のたぐいであろうか
新たに一人仲間が加わりましたが、何かしら役割があるようですな
しかし、かの少女秋山某にはなんか特にこれといった能力はないように見えます
なんかあるんでしょうか?
続き期待
>ゴーストライターさん
作品読んでる者です
一応スレのやつまとめてwikiに載せたいなとか考えているんですが
試みとして、創作発表板のwikiに専用ページを設けて
そこに載せたいと思っていたりしています、如何でしょうか?
>>187 また戻っちゃいましたかwそうですね…ちょっち行が長すぎましたね。
隕石は「ブラックマテリア」です。「ディシディア ファイナルファンタジー」で
使ってたのをモチーフにしました。少しネタバレになってしまいましたが。
彼女についてはまだ迷っています。あくまでも「普通の人間」を突き通すのか、それとも
何か特殊能力を発動するのか。後者に傾いてるんですが、どんな能力にするのかはまだ考えていないのが
現状です。まあ、あなたもおっしゃってくださったようにこれからもがんばりますので期待していてください。
>>188 ご愛読ありがとうございます。そうですね、大丈夫ですよ。載せていただいてかまわないです。
編集権限の問題により名前の直しが効かないので慎重に
一応異世界召還・トリップスレin創発wikiまとめぐらいが適当だと考えるが
何か意見が欲しいですが、大丈夫ですかね
なければできるだけ早くですが、載せたいと思っています
>>189 ありがとうございます、試みなので慎重に進めたいですね
191 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:04:17 ID:c0HZmjE6
一応age
ていうかもうページできてた、名前が…
192 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:20:27 ID:L7VBMKuY
このスレでの共通の設定が欲しい
共通の異世界を作って欲しい
共通の設定ねえ…
なんか難しいからなあ、そういうのってさ
なんかいろいろと苦慮してるところもあるしなあ
異世界ってだけじゃ魅力ないかな?、共通の設定は…
194 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/22(木) 00:48:15 ID:L7VBMKuY
そうか……
じゃあそのうち作品投下する
いや決して否定的なわけじゃないんです
なんとなく、設定で話し合うとか
そういうのに最近どうも億劫でw
まあこういうの思いついたとか思ったとかを
なんとなくおもしろいと思っていたりして、そういうのを他の人と話して話にまとめられないかとか
そういうのは思ったりするんですがね…
>そのうち作品投下
書き手が増えていいことですな期待してます
自分も寄与したいが、いかんせん稚拙だ――
第7話 Gun With Wing〜翼ある銃〜
地下での戦いののち、淳子とセフィロスは帰り道を歩いていた。やはり暗いので、淳子は掌に
炎を起こしていた。淳子を中心として、半径5メートルを照らせる。その炎を見て、セフィロスが口を開く。
「ファイアが使えるのか。これから炎を必要とする機会は多そうだからな。頼りにしているぞ」
「私も。これからどんな怪物が出てくるかわからないもの。あなたのその剣の技、頼りにしてるわ」
苦笑するセフィロス。これから病院に戻り、あの二人と合流したとしても戦う力があるのは自分たち二人だけだ。
大勢の敵に囲まれたとき、あの二人を守りながら戦うのは至難の業だ。自分だって無限に炎を起こせるわけじゃない。
自分がもし力を使い切ってしまったとき、あの二人を人質に取られたとしたら?正直、万事休すだ。
「どうした。不安そうな顔をしているが…考えていても何も始まらんぞ?あまり深く思いつめないことだ」
「ええ、大丈夫よ。ありがとう、セフィロスさん。おかげですこし気が楽になったわ。そうね、考えていても始まらない」
その時、片道の一つから二人の前に何者かが現れた。とっさに刀を構えるセフィロス。たがそれを制する淳子。
その人影の正体は…目のあたりまで伸びた前髪と長髪、白い無地の長そでのシャツ、ジーンズに素足という出で立ちの男だった。
つまり、闇人でも屍人でもなくれっきとした人間だった。その男が口を開いた。妙に特徴的なしゃべり方で。
「ああ、あの世にも人間がいたんですね僕と同じように亡くなられた方たちですか?三途の川まではどうやっていけばいいんでしょうか?」
「あの、あなたが何を言っているのかがわからないんですけど…ここはあの世じゃなくて、私たち人間が住む世界と平行に存在する異世界です」
「異世界ですか興味深い話ですですが私はもう死んでいるはずなんです自らそうするように仕向けましたから。死んでも異世界に来れるとでも?」
「けど私たちは死んでないですし、元の世界に戻るにはこの砂漠化した世界を変えるしかなさそうなので、その方法を今摸索中なんです」
「つまり私もあなたたちと同じようにこの世界を変えるために召喚されたというわけですかしかも蘇生までされて。信じられない話ですが事実のようです」
「やっと理解したか…それで、お前はこれからどうするつもりなのだ?私たちとともにこの世界を変えるつもりはないのか?」
「ええ、もちろんあなたたちと一緒にこの世界を変えますよ。『どんな天才でも、一人では世界を変えられませんから』。それがいいところでもありますが」
「なら決まりね。この上の病院に私の仲間がいるの。彼女たちと合流して、これからどうするかを話し合いましょう。それがこの世界を変えるための第一歩」
うなずく二人。そして再び地上への道を歩き始めるのだった。
すいません。眠いので今夜はここまでです。また帰ってきてから続きを書きます。
この青年の正体を予想しながら待っていてください。
乙です
誰か分からないけど
なんていうか長く伸ばした前髪だとか
なんとなくだらしない人のような印象、浮世離れしてるとかそう思いたいがw
淳子とセフィロスはもう仲が
そういえば地上の二人すっかり忘れてた、大丈夫だろうか
名前が相当に厄介
変更もできなし…真白にして削除もできない
第一話ってやっちゃって、こりゃ不味いことしたかなと
名前が三話ってできないから直接題聞いてみるか、致し方ない
誤爆です、すいませんw
もういいやw
>>196 上記のようなページ名のことで相談なんですが
第三話からなんか名前を継続して使って、その上で○○第三話みたいにしたいと思っているんですが
なんか使ってよろしい名前ありませんかね?
題名みたいに扱うわけだから、一存ではとてもやれないので
コテ名じゃさすがにアレかなーと思ったんで
コテ名でいいんじゃないの?
ゴーストライター作第○○話とかで迷ったんですが
コテ名なのか、もしかして題名なんだろうかと
あとは副題とかがついてたりもするんで
>>201 この創作のタイトルなんですけど「Chenge The world」にしようかと考えてるんですけど、
それでいかがでしょうか?
>>204 分かりました
それで載せておきたいと思います
たぶんもう被ることはないでしょう
謎の青年と合流したのち、三人は再び地下道を歩き続けていた。3人ともどちらかというと無口なタイプなので
淳子・セフィロス・謎の青年3人とも何もしゃべらずにただ歩き続けた。淳子が炎を起こし続けるには結構精神力を
要求されるので、それを途切れさせないように沈黙を保っているというのも理由の一つである。というかこれが主な理由である。
その時、三人の前に階段が現れた。先刻淳子が降りてきたあの階段だ。その階段を昇る3人。そして廃墟を抜け、地上へと舞戻る。
「ここが異世界か。思っていたより殺伐としているな。見たところ砂漠の町のようだが…さて、お前の言う病院というのはどこにある?」
「こっちよ。わたしについてきて。ところであなた、素足のようだけど大丈夫?石ころとか落ちてたら痛いでしょう?靴とかあったかしら」
「いえ私は靴が嫌いなんですよついでにいうと靴下も。それに素足のほうが落ち着きますしなにより大地とじかに接しているわけですから」
「ふぅん…初めて見た時から思ってたけどずいぶん変わった人ね。まあいいわ。さて、二人とも待ってるわ。病院に行きましょう」
そして3人は病院への道を歩き出した。すでにあたりはうす暗くなっている。昼間でもあまり変わらないが。腕時計を確認する淳子。17時。
曇天の雲に覆われているとはいえ、自分たちの世界ではもっと明るいはずだ。改めてここが異世界だということを実感する淳子。
そんなことを考えていたらもう病院の前へとたどり着いていた。500mしかないのだから当たり前ではあるが。
「さあついたわ。ここが『病院』よ。ところでセフィロスさん。その刀どうにかならないの?ここには敵はいないから大丈夫よ?」
「…だろうな。それに病院内をこんなものをぶら下げて歩くわけにもいくまい。しまっておくとしよう」
そう言って刀を一振りすると、刀は消えた。どうやら自分の意思で消したり現わしたりすることができるようだ。
「ありがとう。それでさっき話した闇人だけど、まあ…姿かたちはあれだけど…いい人たちだから刀とか抜いたりしないでね?」
「ふん…奇妙なものなら今まででもさんざん見てきたさ。さっきの機械人形のようにな。いまさら何をみて驚けというのだ?」
「私もセフィロスさんに同意ですそういう類のものなら私もこれまでさんざん見てきましたから問題ありませんさあなかに入りましょう」
病院内に入る三人。ロビーには相変わらず誰もいない…と思いきや、奥からとことこと今朝話した暗井安子が歩いてきた。
言葉を交わした淳子は問題ないが、あとの二人はというと…目が点になっている。ちなみに女神転生とは何の関係もない。
「…さすがにこれは予想外だったな・・・怪物や化けものの類ならこれまでさんざんみてきたつもりだったが、さすが異世界、侮れんな」
「そうですね私も同感ですこの世界ではまだまだ新しい発見がたくさんありそうで期待できそうです」
「あらあら淳子さんおかえりなさい。そちらの二人は新しいお仲間ですか?世界を変えるためには一人でも多いほうがいいですからねぇ」
「まったくですね。二人ともすごい頼りになってくれるんですけど…まだまだこの人数じゃ世界を変えるなんてとてもできそうには…」
「それはそうよねぇ…まあ、そのうちに人も集まってくるわよ。現にこうして新しいお仲間も増えたことだしねぇ」
「そうですね…気楽…にはいかないでしょうけど、がんばってみます。私たちが元の世界に変えるためにも」
「うん、その意気よ。がんばってねぇあなたたち。遠くから応援してるわ。あなたたちに闇のご加護があらんことを」
ずっこける3人。それを見て微笑み、去っていく暗井。起き上がり、病室へと歩を進める3人。2階への階段を上り、
『204号室』の前に立つ3人。淳子が扉を開ける。椅子に腰かけていた美伽が立ち上がりこちらへと歩いてくる。
「遅いよ青木さん!どこ行ってたんだよ!遅いから心配したんだよ?あの化け物クジラみたいのにやられちゃったって想像したら…」
「心配掛けたみたいね…ごめんね美伽ちゃん…でもこの通り私は無事よ。この人たちが助けてくれたから」
「青木さんを助けてくれてありがとう。ああ、私は秋山美伽。この名前は青木さんにつけてもらったんだ。元の世界ではあたし、名前がなかったから」
「名前がなかった?どういうこと?美伽ちゃん」淳子が驚いた顔をして聞く。目を閉じ答える美伽。その表情はどこかさびしげだ。
「あたしね、生まれつき両親がいないんだ。父さんはあたしが生まれる前に事故で死んだそうだし、母さんはあたしが生まれた直後に…
それであたしは孤児院に引き取られて育てられたんだけど、あたしだけ生まれつき両親がいないじゃん。だから当然名前もなくて…
孤児院の大人たちもあたしに名前をつけようとしたんだけど、年取ったらどうするんだっていう名前ばっかでさ。それでまだちっちゃかったのに
かたくなに拒んでてさ、仕方がないから『あーちゃん』で手を打ってもらった。秋に山梨で生まれたから秋山ってのは淳子さんには話したね。
そんなこんなで10数年をその孤児院で過ごしながらこれまで生きてきたんだ。けど小さい頃はよくいじめられたなぁ…
まあそれはどうでもいいとして、これがあたしの名前がないいきさつ。それで名前なんだけど、あなたたち二人の名前は?」
「セフィロスだ。これからよろしく頼む」
「私は…そうですね『竜崎』と呼んでください元の世界でもそう呼ばれていました。これからよろしくお願いします秋山さん」
そう言って右手をのばす竜崎。握手の姿勢だ。それを見て美伽が握手に応じる。続いてセフィロスとも握手する。
「さて、淳子のいう『先生』だが…まだ目覚めないようだな。ひどい怪我を負っていたそうだから無理もないが」
「ええ、あのロボットにやられたのよ。間違いなく。あいつさえいなければこの人がこんな目にあうこともなかっのに…」
「ロボット?何の話だよ淳子さん」
淳子は美伽に地下道での出来事を話した。
「そんなことがあったんだ…でもまあ、セフィロスと竜崎のおかげで無事なわけだし、問題ないよ。あとは先生さえ目覚めれば万事解決!」
「おい、淳子には『さん』付なのになんで俺と竜崎に対しては呼び捨てなんだ?それに万事解決と言ったがそれは元の世界に戻って初めて言えるセリフだと思うが」
「その通りですまあ私は呼び捨てにされたことについては特に言いたいことはありませんが。それに私は青木さんを助けてはいませんよ」
「いいじゃん二人とも。固いことはお互い言いっこなし!細かいこといちいち気にしてたら世界なんて変えられないよ?そう思うでしょ?淳子さん」
「え?ええ…まあ、そうね。まあ二人とも、美伽ちゃんはこういう性格だし、あまり深く追求しないであげてね。私からもお願いするわ」
しぶしぶ納得するセフィロス。素直にうなずく竜崎。その時、廊下から足音が聞こえてきた。コツコツという音だ。甲型のドタドタという音でも、
乙型のシャカシャカという音でもない。零式の可能性もあるがこの足音のピッチは速い。零式はこんなに早くは歩かない。ということはすなわち…
人間だ。そしてその足音は『204号室』のドアの前あたりで止まった。扉は閉じられている。ノックの音が聞こえる。ゴクリと唾をのむ一同。その時竜崎が
「私がでてみますよここでこうしていても始まりませんしなにより怪物に『ノック』するという知能があるとは思えませんし。いってきます」
そして扉のほうへと歩き少しだけ扉を開き顔だけ外にのぞかせる竜崎。扉の向こうの人物と何か話している。そしてこちらを振り向き、言った。
「どうやら私たちと同じようにこの世界に飛ばされた方のようです。よってこの部屋に招きます、よろしいですね」
返事も聞かずに竜崎はその人物を部屋の中へと招き入れた。ものすごい美少年だった。美伽の顔が赤くなる。一目ぼれしてしまったらしい。
「お初にお目にかかりますみなさん。僕はカノン・ヒルベルト。ある人物に殺されたと思ったら、なぜか砂漠の真ん中にいてしばらく歩いていたら…」
「この街にたどり着いたというわけか。そしてこの街でもひときわ目立つこの病院にやってきた。おおかた暗井にでもあって俺たちの居場所を聞いたのだろう」
「御察しが早く助かります。ところであなたたちも僕と同じように元の世界から飛ばされてきたとお見受けしますが」
うなずく一同。そして自己紹介、自分がどういう経緯でこの世界に飛ばされたのか、これまでのこの世界でのいきさつをカノンに話した。
「この世界を変える…そうすれば僕たちは元の世界へと帰れる。そういうことですね。わかりました。僕もあなたたちと一緒に行きますよ」
「ありがとう、そうしてくれると助かるわ。カノンくん。彼女、美伽さんもそれを望んでいるようだし。ね、美伽さん?」
うなずく美伽。相も変わらず顔は真っ赤っかだ。それを見て苦笑するカノン。
「でも『先生』が目覚めないと僕たちは動けそうにないですね。目覚めるまで待つしかないんですね…」
「そういうことですとりあえず今日はもう遅いですしこのあたりで休みませんか?」竜崎が提案する。
同意する一同。そしてみんなは眠りに就くのだった。この世界を変えるための鋭気を養うために。元の世界へと帰還するために。
第7話 GUN With Wing〜翼ある銃〜 FIN
というわけで謎の青年は「DEATH NOTE」のLでした。次回はいよいよ…ご期待くださいませ。
おつおつ
考えてみたらなんで二人も穴倉でばったりなんだろう?w
Lは変だとかよく言われそうなタイプですな、ボソッと淳子はぼやきましたけど
まあ裸足は暑くないから平気と
結構いきなり登場人物増えてやってきましたね
まあうつろに知ってるくらいなんですが
カノン・ヒルベルトの合流により、この場にいる人間は6人となった。うち一人はいまだに目を覚まさないが。
そこで淳子が目を覚ます。眠気眼で腕時計に目をやる淳子。午前六時。相変わらず早起きだ…と思いきや、
淳子よりも早く目覚めていた、というよりも果たして眠っていたのかどうかすらわからない男が淳子に声をかけた。竜崎だ。
「これは青木さん朝が早いようですね驚きました。あれだけ力を使っていればずいぶん体力を消耗すると思いましたが」
「見くびらないでもらえるかしら?あれくらいの炎だったらほとんど体力を消耗することはないわ。精神力は食うけどね」
竜崎にそう言い、間延びをした後再び場を見渡す淳子。美伽、先生、カノン、竜崎、そして自分。あれ、一人足りない。
「ねえ竜崎さん。セフィロスさんはどこに行ったの?彼もあなたと同じように寝てたのかどうかわからない人だけれど」
「ああセフィロスさんなら、3分ほど前つまり青木さんが起きる直前に出て行かれましたよ。たぶんお手洗いじゃないですか」
竜崎が言い終えると同時にセフィロスが部屋へと戻ってきた。やはり手洗いだったようだ。
「おはよう淳子。朝が早いようだな。もう目はさめているか?そうでないなら覚ましてやろうか?…冗談だ」
「おかげさまで目はすっかりさめてるわ。あなたの手を借りなくても大丈夫。けどあの人に関してはそうはいえないわ…」
「『先生』か…美伽はとても大切に思っているようだが…きっと母親代わりの存在だったのだろうな。母親、か…」
セフィロスがさみしげな表情になったのを淳子と竜崎は見逃さなかったが、あえて何も言わないでおいた。
「ねえ、二人に一つ聞くけど…もし元の世界に帰れたら一番最初に何をしたい?私はとりあえずテレビがみたいかな」
「私はそうですね甘いものがたくさんたべたいですどうやらこの世界には甘いものがないようですからそれがすごく残念でなりません」
「そうだな…ソルジャーとしての仕事も残っているし、それを果たさなければならないだろうな。だから今は休暇みたいなものだ」
「みんな普通なのね。あ、私も人のことは言えないか」
笑いあう3人。その笑い声に目を覚ましたのか、カノンが起き上がる。眠気眼がすごく可愛いカノンだった。
「ああ…おはようございますみなさん。朝が早いようですね。僕が一番かと思っていましたが、驚きました…」
「おはようカノンくん。よく眠れたかしら?」
「ええ、おかげさまでよく眠れました。さして疲れてる訳でもありませんでしたし。それより先生は…」
「残念ですがまだ目が覚めないようですこのまま目が覚めないのではないかと思うと私も心配でなりません」
その時、美伽が目を覚まし、ベッドから起き上がる。カノンと同じように眠気眼が可愛かったりする。どうでもいいが。
「ふあぁ〜みんなおはよう…朝早いねぇ…今何時?」腕時計に目をやり時間を確認し、答える淳子。
「6時半よ。これでも十分早いほうだと思うけど。みんなの中じゃ一番遅いからね。先生を除けばだけど…」
「そうか…先生はまだ目覚めないのか…」そういって美伽は先生の隣に立ち、その手を握り締めていった。
「先生…お願いだから目を覚ましてよ…先生がこのまま死んじゃったらあたし元の世界へ帰れても意味ないよ…」
激昂しているのだろう、手を握る力がだいぶ強くなっている。少女とは思えない力の強さだ。それは同時に先生への想いの強さの表れでもあった。
するとその想いが神様にも通じたのであろうか、ついに奇跡は起こったのだった。
「う、うぅん…」と小さな唸り声をあげて、先生がついに目を覚ました。その刹那、美伽は狂喜乱舞し、先生に抱きついた。
「よかった先生!やっと目が覚めたんだね!このまま先生が目を覚まさなかったらと思うとあたし…」
嬉しさの余り涙を流す美伽。そんな彼女に先生はその髪をなでてやさしく語りかけるのであった。
「ごめんね秋山さん。心配掛けたみたいね…でも、もう目覚めたから大丈夫よ。ところで、この方たちは?」
淳子からセフィロス・竜崎・カノンの順番で自己紹介とこれまでのいきさつを話した。
「世界を変える…ですか…そういえば、意識を失ってた時、夢を見たんです。その夢では、何か頭に角みたいなものが
生えた巫女さんのような服を着た小さな女の子が出てきて、その女の子が言うには『勝手ながらあなたをこの世界を変えるために
呼ばせてもらったのです。この世界を変えることができたならあなたたちは無事に元の世界に帰れるのです。
ただ僕はあなた一人に世界を変えろだなんて無茶は言わないのです。そこであなたのほかにもあの9人、この世界に呼んであるのです。
一人はあなたの教え子である秋山さんですが、あなたはその9人と力を合わせてこの世界を変えるのです。残りの未知数な8人についてですが、
そのうちの半分は彼らのほうから自らやってくるのです。もう半分は、自分たちで見つけ出すのです。全員そろったら、僕はあなたたちの前に
姿を現すでしょう。世界を変える方法はその時に話すのです。それでは、しばらくお別れなのです」と言われました」
「つまりなにか、その小娘がこの世界における神で、この荒廃した世界を変えるために私たちを召喚したということか?」
「今の話を聞く限りそのようですしかもどうやら本当の神のようです死者をよみがえらせるほどの力を持っているのですから」
「それにしてもずいぶん身勝手な神だな。小娘らしいと言えばそれまでだが…あったら切り捨ててやろうかと思うが」
「それはやめておいたほうがいいかと思いますこの世界を変える方法はおそらく神しか知らないでしょうし神の存在自体が世界を変えるための
ファクターの一つだとしたら二度と世界を変えられなくなります軽率な行動はくれぐれも慎んでくださいセフィロスさん」
「お前にいわれなくともわかっている竜崎。冗談を言ってみただけだ。私とて神を斬ろうなどとは思っていないさ。お前らもだろう?」
「ええもちろん。ただ一方的に呼ばれたのには少し腹は立つけどね。でも呼ばれてしかもそうしなければ帰れないんじゃ仕方ないじゃない?」
「僕も淳子さんに同意です。せっかく蘇がえらせてもらったんですからその恩には報いたいです。竜崎さんもそう思うでしょう?」
「はいそう思います。どんな天才でも一人では世界を変えられない。ただ10人もいればきっとこの世界を変えられるはずです」
「その通り。さて、世界を変えるために私たちはこれから何をすべきかということだけど…まだ見ぬ仲間を探せばいいのよね?」
うなずく一同。そこで先生がベッドから起き上がろうとするが苦痛に顔をゆがめ、美伽があわてて止めに入る。
「ダメだって先生!まだ傷が癒えてなんだから完治するまで寝てなきゃ!別にみんなそんな急いでるわけじゃないんだから待ってくれるよ。そうでしょ?みんな?」
やはりうなずく一同。満足げにほほ笑む美伽。
「すいません皆さん…迷惑をおかけします…それでは…私はしばらく休みます…」
再び眠りに就く先生。そして残りの5人はこれから思い思いの時間を過ごすことになるのだった
第8話 目覚め、そして道しるべ FIN
神様の正体は…いまさら言うまでもないでしょう。次回からいよいよ冒険の旅へと出ます。ご期待くださいませ。
乙で
残り九人!あと九人も!?
死んだって、先生が死んでたのかと思ったw
第9話 旅立ち
先生が目覚めてからすでに2週間がたち、ようやく先生の傷は完全に癒えたのだった。そしてついに世界を変えるための
壮大な旅に出るその日が訪れるのであった。出発の時、病院の前で淳子ら6人は町中の闇人たちの餞別を受ける。
というのもそれまでの二週間が暇でしょうがなかった一同は、街中を練り歩き、街中の闇人たちと親しくなっていたのだ。
大勢の闇人たちに手を振られ、淳子たちは街を後にした。とはいっても相変わらず一面の砂漠なのだが。
「でも仲間を探すって言ってもなんの手がかりもないんじゃ…これからどうすればいいの?」淳子がぼやく。
「手かがりについては先ほど闇人さんに聞いたのですがここから北に30kmほど行ったところに『ヴァンゲリオ』という
大きな町がありそこに行けば何かわかるだろうと言っていましたとりあえず目的地はそこでしょう」と竜崎。
「30kmか…遠いねぇ。たぶん今日中にはたどり着けないだろうね。昔言った戦場ヶ原の遠足じゃ3km歩くので2時間かかったから。
単純計算で30kmじゃ20時間だよ。ひぇ〜大変だぁ〜…」美伽が嘆く。そんな彼女を先生がたしなめる。
「秋山さん、誰も今日中にその街へたどり着こうだなんて思ってないわ。無理をして歩き続けて怪物にでも襲われたらどうするの?」
「そうだな。とりあえず暗くなってきたら適当なところでキャンプを張ってそこで休もう。これから先の旅は長くなりそうだ。疲れをためるのは得策ではない」
セフィロスが冷静に分析する。その言葉にうなずく一同。そして今まで黙っていたカノンが口を開いた。
「そういえば先生、本名は何て言うんですか?僕たちにとってあなたは先生ではないですし…せっかくだから教えていただけますか?」
「ああ…そういえばまだ名乗ってなかったわね。ごめんなさい。私の名前は『上条小百合』。上条って呼んでくれてかまわないわ。」
「わかりました。それじゃあ上条先生とよばさせていただきます。あ、結局先生って呼んじゃいましたね、アハハ…」
笑ってごまかすカノン。それにつられて笑う一同。そして再び新たな街へと歩き出した、が、30kmの道のりはあまりに長く、
全然街が見えてくる気配がない。そのうちにあたりが薄暗くなってきた。それでも少しでも街に近付きたいという思いから、道なき道を
歩き続ける6人。だが淳子が腕時計を確認した午後7時。あたりは完全な闇に包まれた。闇を照らす光もないため、何も見えない。と思いきや
淳子がパイロキネシスを発動し、砂の大地に煌煌と炎を燃やす。普通なら燃料もなしに炎を維持することなどできないが、淳子の起こす炎で
燃やせないものはない。すなわち、砂そのものが燃えているのであり、淳子は精神力を消費することなくこの炎を自由に操ることができるのだ。
その炎を中心として野営する6人。そして今後について話し合う。まず最初に口を開いたのは、竜崎だった。
「さてみなさん私たちは上条先生が夢で逢ったという少女の外見をした神によってこの世界に召喚されましたここまではいいですね?」うなずく一同。
「ここで重要になってくるのはその神は何を『基準』として私たちを召喚したかということですこれは私の推測ですが私たちは力を合わせれば
この世界を変えられるだけの何らかの能力を持っているということです。そんな能力もない人間を召喚したところで無意味なのですから。
すなわちこれから私たちが出会うであろう残り4人の仲間たちも私たちと同じように何らかの能力を持っているとみていいでしょう」ここで美伽が口をはさむ。
「ちょっと待ってよ竜崎。竜崎たちはそう自由に炎を起こしたり、ものすごい剣技をもってたり、すごい頭が良かったりするかもしれないけど、
あたしや先生はなんの変哲もない普通の人間なんだぜ?これはどう説明する気だよ竜崎?」上条先生もその言葉にうなずく。しかし竜崎は凛として言い返す。
「いいえあなたたちも私たちと同じく何らかの能力を持っているはずですただ自分自身がその能力に気づいていないだけで。ふとしたきっかけですぐにその能力は覚醒するでしょう」
「気づいてないだけって…!あたしたちは自分のことくらいちゃんと理解してるって!いいかげんなこと言うと承知しないよ竜崎!」激昂する美伽。たが竜崎はそれでも動じない。
「では聞きますがあなたは自分で自分がどういう人間なのかを即答できますか?9割以上の人間はできませんなぜなら自分のことをきちんと見つめていないから」
「それと特殊能力となんの関係があるのさ竜崎?」
「簡単な話です自分を見つめなおしたときに何が見えてくるかそれはもちろん本来の自分自身ですということはすなわち自分自身が普段ひた隠しにしているものも
見えるということですその正体は誰かに対する愛情などその形は様々でしょうそれが顕在化し表面に出てくるときこそが力が覚醒するまさにその時なのです。
秋山さんの例にたとえてみましょうあなたは上条先生のことが好きだと私は認識していますもちろんそれは人間としてでしょうが。
とすれば上条先生が危機に陥った時あなたは間違いなく助けたいと思うはずです。その時にこそ普段ひた隠しにしている上条先生へのもう一つの
感情が表に現れ能力が覚醒するというわけですそれがどういう感情なのか私にはわかりませんただ負の感情でないことだけは確かですそして…上条先生あなたにも同じことが言えます」
竜崎の言葉に黙り込んでしまう2人。と、ここでセフィロスが口を開くのだった。
「だが竜崎。そんな危機に遭遇したとしてもし能力が覚醒しなかったらどうするつもりだ?今の話はお前の推測なのだろう?」
「おっしゃるとおりですその時は私が二人を助けます戦えない私でも二人を逃がすための囮にはなりえるはずですから」あきれ顔の一同。
そして淳子は再び腕時計を確認する。午後11時。そろそろ眠りにつかないと今日の疲れが明日に影響を及ぼしそうだ。
「さあみんな、そろそろ寝ないと明日が厳しそうよ。今日はこの辺で休みましょう」そして話もそこそこに一同は眠りに就いた、と思いきや
皆が寝静まった後も起きている人物が2人いた。竜崎とカノン・ヒルベルトだ。竜崎が再び口を開く。
「すいませんカノンさんやれ超能力だの何だのと人を怪物みたいに扱ってしまったようですそれは今ここで謝ります」
「いや僕は全然気にしてないですよただ美伽さんや上条先生は結構ショックを受けてたみたいですけどね」苦笑いを浮かべるカノン。
その時、2人の周りを取り囲む10の影が現れた。竜崎が目を凝らしてみるとその正体は…ハイエナだった。
「伏せてください!」と叫ぶカノン。伏せる竜崎とほぼ同時にハイエナの群れは二人に襲いかかった。眠っている4人に襲いかからなかったのは永遠の謎だ。
10匹のハイエナに一斉に飛びかかられるカノン。だが少年は超人的反射神経でそれを回避し、懐から拳銃を2丁取り出し、
それを両手に携え「グルルルル…」とうなるハイエナたちに向けて宣言した。いつものような笑顔ではなく、ひどく冷徹な顔で。
「なるほど。一匹ずつじゃ絶対に仕留められないからまとめてやってきたというわけか。だけど残念だね。君たちのようなのが何匹来ようが
この僕をしとめることなんて永遠にできやしないんだってことをその身をもって思い知るがいい!」
言い終えると同時にカノンはハイエナの群れへと発砲した。拳銃とは思えない連射速度も圧巻だが、それよりも凄いのが命中率。ほぼ全ての弾がハイエナに
直撃している。15秒後にはハイエナ10匹の血まみれの死体が転がっているだけだった。伏せているまま、唖然となる竜崎。
そう、これが「ガン・ウィズ・ウィング(翼ある銃)」と呼ばれ恐れられたカノン・ヒルベルトの実力だった。
「銃をこの手に握るのはずいぶん久しぶりですが、感覚は全然鈍っていないようです。安心しました。もう立って大丈夫ですよ竜崎さん」
起き上がる竜崎。そしてポケットに手を突っ込み、言った。
「お見事ですこれなら世界を変えるのに十分な力ですただできれば暴力は使いたくないところですがこれから先はそうもいっていられないでしょうし」
「その通りですよ竜崎さん。世界にはきれいごとだけじゃ解決しえないこともある。世界を変えるなんてその典型。だから僕はこの手を汚すんです」
「では私はあなたができるだけその手を汚さない道を模索するとしましょう。さて、そろそろ眠くなってきました。私はもう寝ることにします」
「それなら僕もそうします。明日も早いのでしょうし」そして最後まで起きていた二人も眠りについた。
そして再び朝を迎えた。目覚める一同。淳子が号令をかける。
「さてみんな起きたね。忘れ物ない?それじゃ、出発!」何を忘れるのかという指摘は抜きにして6人は再び砂漠を歩き出すのだった。
第9話 旅立ち FIN
ところで反応がないのだけれどみてる人いるのでしょうか?それが不安で仕方ないです。
見てますよ
いる
いるよー
すいません、これからの展開を考えていたら更新が遅れてしまいました。それでは第10話、お送りいたします。
第10話 男と獣と人間と。その一
砂漠のど真ん中で目覚めた一同は再び砂漠を歩き出したが、やはり街は見えてこない。せめてあと何kmあるのかそれが知りたかった。
「うへぇ…歩いても歩いても全然街なんて見えてこないじゃん…この世界では飲まず食わずでも生活できるみたいだけど、こう砂漠ばかりじゃ気がめいるって」
「うん、確かにそうですね…砂漠なんて初めてですから…何もない死の世界、という表現もできますね。もっともそこで生活している人もいるのでしょうけど」
ぼやく美伽とカノン。そんな二人を淳子がなだめる。
「ぼやかないぼやかない二人とも。大変なのはみんなおんなじなんだから。ゴールのないマラソンなんてあると思う?それと同じよ。がんばって歩こう」
「は〜い…」疲れた表情で返事する美加と、無言で微笑みを返すカノン。満足げにうなずく淳子。そしてまた歩き続ける。空は今日も曇天模様だ。
このままだと本当に気がめいってしまいそうだった。そこで一同は何か雑談しながら歩くことにした。そうすれば少しでも道のりが短く感じられる。
他愛もない話を繰り広げ、笑いあいながら歩く一同。その姿はとても楽しそうだった。一種のコミュニティと呼べるだろう。
そしてついに一同が待ち焦がれた瞬間は訪れる。地平線の向こう、街のようなものが見えてきた。砂漠だから蜃気楼なんてことも考えられるが、この空模様でそれはない。
歓喜乱舞し、6人はその街に向けて向けて走り出した、のはいいが砂漠のため走破性が悪質で途中何度も転び、さらに竜崎の走る姿はとても滑稽だったため、
みんな笑ってしまいなかなか前へと進めなかった。ようやくその街の入り口にたどり着いたときにはセフィロスを除いた全員の息が切れていた。呼吸を整え、街の看板を確認する。
『ウェルカム トゥ ヴァンゲリオシティ!(ようこそヴァンゲリオの街へ!)』と書かれていた。がなぜかひどくかすれて読むのも一苦労だった。上条先生が口を開いた。
「ようやく着いたみたいですね…闇人さんたちの町と比べるとずいぶん大きいですが…人通りはずいぶん少ないですね、街の端だからでしょうか?」
「それはわからん。とにかく一度町の中へとはいって情報収集をするのが先決だ」と、セフィロス。うなずく残りの五人。そして町中へと歩を進めた。
途中、元の世界でいうホームレスのような人たちと何度か出くわしたが、聞こうとしても何かに怯えたように走り去っていってしまった。しかし一つわかったことがある。
「なぜ私たちを見たとたん逃げ出すのかはわかりませんただこの世界にも人間が存在するということが今わかりましたそれがわかっただけでも大きな進展です」
そして10分ほど歩いただろうか、町の中心部らしき場所へとたどり着いた。人通りも入り口付近と比較してずいぶん多くなっている。ここで淳子が残りの5人に提案した。
「ねえみんな。私たち6人もいるんだし、情報収集するんだったら3グループ2人位に別れてやったほうが効率的だと思うんだけど。どう思う?」
「あたしは賛成。早く元の世界に帰りたいしさ。でもその分け方はどうするのさ淳子さん。あたしはやっぱ先生と一緒がいいな」その要望に首を横に振り、答える淳子。
「これよ」といって取り出したのは、6本のくじだった。「この6本のくじに1、2、3の番号が2本ずつ振ってある。その番号でグループを分けるわ。それじゃ準備はいい?」
頷き、一斉にくじを引く6人。その結果、淳子・上条先生、セフィロス・竜崎、カノン・美加、という結果になった。よくよく考えたらこの3ペアはろくに言葉を交わしていなかった
「それじゃ一時間後にこの場所で落ちあいましょ。じゃあみんな、情報収集よろしくお願いね」そして各々散らばる各ペア。2度手間にならないようきちんと方向は分けてある。
さて、まずは淳子と上条先生のペアだったが、結構気が合い、いろいろなことを話しながら歩いて行った。お互いの趣味だとか、仕事についてだとか、他愛ない話だったが。
「ところで上条先生、美加ちゃんはずいぶんあなたのことを好きなようだけど、なにかあったのかしら?私はあんなふうに誰かのことを好きになったことがないから…彼女のことを羨ましく思ってるのだけど」
「ええ、秋山さんが孤児院で育ったのは青木さんも聞いた通りだと思いますが、実は私もあの孤児院で育ったんです。彼女が入ってきたとき私は10歳でした。だから私はいま…27歳っていうことになりますね。
私の年齢はさておいて、成長した私はその孤児院で子供たちの世話をする仕事に就きました。自分を育ててくれた孤児院に恩返しをしたかったんです。これは私が20歳の時です。そこで私は秋山さんのお世話を任されたんです。
当時の彼女は周りの子から仲間はずれにされててとても心がすさんでいて誰にも心を開いてなかったんです。私も最初は苦労しました…ジュースを顔に浴びせられたりして…それでも私はあきらめずに彼女と向き合い続けました。
そしてそれから1年がたってようやく心を開いてくれて…以来人が変ったように明るくふるまって今に至るというわけです。だから秋山さん、私をあんなに慕ってくれるんでしょうね」
「上条先生という母親の存在…それが彼女を救ったというわけね。母親…か」なぜかひどく悲しげな表情になる淳子。それに気づいたものの、触れないほうがいいと判断した上条先生。
「ああ、ごめんなさい。感傷に浸っちゃったみたいね。あなたのことが知れてよかったわ。さて、そろそろ情報収集始めないと遅れるわよ」そして歩き、一軒の店へと入る2人。店員を発見し、話しかける淳子。
「あの、すいません。この街のほかに街はありますか?」「はい…ありますけど…あと10か所…でもなぜそんな誰もが知ってることを今更聞くんですか…?」これまでのいきさつを話す淳子。
「この世界を…変える…ですか…無理ですよ…獣人たちが支配してるって言うのに…たった10人で何ができるって言うんですか…」と絶望の表情で答える店員。淳子が問い詰める。獣人とは何かを。
「獣人はこの街を含む11の街を支配していて、それぞれの街には『獣貴12師』と呼ばれる獣人たちの長が君臨していてそれぞれの町を支配しているんです。獣人たちは僕たち人間よりもいろいろな面で優れているから
僕らのことを『下僕』として支配するようになりました。これが30年くらい前の話です。それまでは獣人なんていなかったんですよ…いきなりどこかからやってきたんです。もちろん当時は僕ら人間も抵抗しました。
けれど『世界救済委員会』という武装組織によって瞬く間に鎮圧されてしまいました。以来人間たちはずっと肩身の狭い思いをしてきたんですよ。30年もの間…」
「わかったわ。いろいろ教えてくれてありがとう。私たちが彼らに持ち寄る情報はこれね。そして次の目標も決まり。『世界救済委員会』の殲滅および人間たちの解放」
驚きの表情を見せる店員。そんな店員に微笑みを返す2人。そして2人はその店を後にし、あの広場へと向かうのであった。
乙です
美加は怒りっぽいのか若いのに
『世界救済委員会』などと呼称する団体は獣人の組織でしょうかね
やっとこの世界というか地域というかで同じ世界の住人足るまともな人間に会えたのに
祝う気になれないのは、ひとえにやはり異世界だからか
>>220 編集してるんですがどうでしょうか
今までの点でどこか訂正すべき点なんかないでしょうか?
>>222 特にはないです。貴方にお任せしますよ。
第10話 男と獣と人間と〜その2
淳子たちがある店の店員からこの街の歴史と現状を聞き出しているころ、セフィロスと竜崎はいまだに町をぶらぶらしているだけだった。
なにか収集を持っていかねば残りの四人から何を言われるかわかったものではないので、先ほどから情報を得ようと道行く人々に
声をかけようとしているのだが、どういうわけかそのとたんにひどく怯えた顔をされ、逃げられてしまうのだ。
この街の住人がよそよそしいのは足を踏み入れた時から感じていたがこれは少し異常だと二人は思っていた。どうなっているのだ?
「竜崎、お前も感じているだろうがこの街のやつらはなぜこんなにおびえているのだ?少し尋ねようとしただけで逃げられる始末だ」
「はい私もそう思います私の生きている世界の歴史ではだいたい恐怖政治を敷く君主がいると国民はこんな感じになったようですが」
「ならばその君主とやらを倒せばこの街のやつらもこの状態から解き放たれるのだろう?なぜ一丸となって立ち上がろうとしない?」
「君主は強大な権力をもった存在なのはいうまでもありませんしたがって民が反乱などおこそうものならすぐに強力な軍隊をもって鎮圧し
結果かかわった人間の大半は処刑されてしまいます幸い闇人さんたちの話ではこの世界にはお金が存在しませんので重税に苦しむことは
ないはずですからそれは救いですがどちらにせよ圧政に苦しんでいることに変わりはありません。なんとかしたいですね」
「神はなにをやっているのだ?大勢の人間が苦しんでいるというのに何もせずに手をこまねいているだけか。だとしたら何と無力な神なのか」
「だから私たちを召喚したのでしょうつまりこの街というか国を救うことが世界を変えるための第一歩だと考えることができます」
「なるほどな。だがそのためには結局情報が必要になるだろう。何もわからずに無闇に戦うのは危険だ。たとえお前の頭脳をもってしてもな」
「お褒めに預かり光栄です。私もあなたの分析に同意しますまずは情報を入手することが第一です。相手は強大ですから一丸とならないと」
その時、二人の目の前にある事件が飛び込んできた。見ると、ある姉弟がチンピラ5人に囲まれている。15歳くらいの弟が必死に抵抗していたが
殴られあっけなく取り押さえられてしまった。姉のほうは押し倒され暴行を受けそうになっている。通り過ぎる人たちは見て見ぬふりをして通り過ぎるだけだ。
「あの連中にでくわしたのが淳子じゃなく私たちだったのが連中には幸運だったな。殺さずにすむ」次の瞬間、セフィロスは目にもとまらぬ速さで一人を殴り倒した。
いきり立つチンピラ。一斉に襲い掛かるが回し蹴りや肘打ちなどを見舞われ一蹴される。そして一切、愛刀・正宗を使うことなくチンピラ5人を倒してしまった。
「ひぃ!参った!降参だ!頼む、お願いだから命だけは助けてくれ!俺達まだ死にたくねぇんだよ!何でもするからさ!頼むよ助けてくれよ!」と跪くチンピラ。
普通このような展開では悪役は「おぼえてろ!」などと無様な捨て台詞を残して逃げていくものだが、セフィロスが凄まじい殺気を放ち、逃げられないことを悟ったのだった。
「そんなに言うなら許してやろう。その代わり貴様らが知っていることをすべて話してもらおうか。たとえばこの国の歴史、現状などだ。できなければ貴様らの命の保証は出来かねるが」
「そんなことでいいならいくらでも話すさ。まず俺たちは人間じゃなく獣人だ。獣に人って書いて獣人な。この街は今から30年くらい前までは人間たちが平和に暮らしてたんだけどよ、
そこに森林伐採なんかで住処を追われた俺達獣人が移住してきたんだ。当時俺達には住処を奪った人間たちに恨みがあった。そして俺達獣人は身体能力で人間より優れてるから
そこを生かして人間たちを襲い屈服させた。そして人間たちに謀反を起こされないように『世界救済委員会』っていう組織を結成。以来この街を含む11の町を一つの国家として治める
ようになったんだ。世界救済委員会は『獣貴十二師』っていう獣人たちの頂点に君臨してるやつが治めていて、そいつらの決定は絶対で誰にも逆らえない。逆らえば軍事部に粛清されちまうから」
「そして貴様らもその世界救済委員会とやらのメンバーというわけか?だから支配の対象である人間、つまりこの姉弟を襲ったというわけか?」
「いや、救済委員会のメンバーは獣人全体の6割くらいで残りの4割が俺らみたいな上級市民として人間たち下級市民をさっきみたいにいたぶろうとしたり
獣貴十二師に準ずるような貴族たちは人間たちを召使としてこき使ったりしている。貴族連中は人間を生物と思ってねえからこき使いすぎて死んじまっても
ゴミ捨て場に捨ててきて代わりを探してくるんだ。あれはさすがに俺達もひでぇなって思うから抗議とかしたりすんだけど聞く耳持たずさ。
獣人は死んだらみんな地獄に落ちちまうんだろうな。いくら人間に恨みがあるとも言ってもこれは正直やりすぎだ。悪かったな嬢ちゃん、坊や」
プイ、とそっぽを向く少年と苦笑いを浮かべて頭を下げる少女。
「わかった。これであの4人にも手土産ができたな。さて貴様らはもういっていい。私たちはこの姉弟を送っていく」
そして去っていくチンピラたち。セフィロスが姉弟に声をかける。
「怪我はなかったか…あるよな。殴られたり、押し倒されたりしたものな。またさっきみたいのに襲われないように家まで送ろう」
そう言って手を差し出したセフィロスの手を取って少年は立ち上がった。続いて少女も引き起こし、4人は姉弟の家まで歩いて行った。
そして姉弟の家までたどり着いた。「すみません。わざわざ送っていただいてありがとうございます。お茶でも御馳走しますのでどうぞ上がっていってください」
「いえ私たちは先を急いでいるのでまことに残念ですがお断りさせていただきますお気持ちはありがたく頂戴しますが」それを断る竜崎。うなずくセフィロス。
「ならせめてお名前を伺わせてください。それすらも駄目ですか?」「セフィロスだ」「竜崎と申します」そして名前だけ告げ、立ち去るする二人。
実はその実、誘いを断ったのをすごく公開していた。なぜならその少女はすごく美人だったから
225 :
:創る名無しに見る名無:2009/02/11(水) 17:14:37 ID:mGVWzXLO
メールです
こんなところでワールドデストラクションを見ることになろえとは
セリフ部分が全体的に多かないですか?
地の文とかでキャラが自分の考えとかで想像したりするところとか
おもしろいと思うんですが
>>227 そうですか。それではその部分に注意してまた続きを書いていきたいと思います。
地の文はお気に召してくださったようでありがとうございます。
第10話〜男と獣と人間と。その3
セフィロスと竜崎が姉弟を家まで送り届けているとき、美伽とカノンはすでに情報を手に入れ、先ほどの
広場まで歩いている最中だった。他の2組は情報収集に苦労していたがこの二人に関しては美伽の屈託のない
笑顔とカノンの微笑みを武器に道行く人々の安心を勝ち取り難なく情報を入手していたのだった。
手に入れた情報とは、この「ヴァンゲリオ」という街では獣貴12師の一人、「クマ師」が治めており
獣貴12師の中でも1、2を争う、という表現もおかしいのだが穏健派であり、軍事部の干渉を拒否していて
軍事部が幅を利かせている他の町に比べれば随分暮らしやすいとのことだ。クマなのに穏健とは何とも奇妙な話だが。
情報入手という目的を既に達成した二人は残りの時間どうすればいいかを歩き話しながら考えていた。
「で、あのさぁ…か、カノン君、わ、私たちもうやること無くなっちゃったたし、残り、りの時間どうしようか?なんか適当に話す?」
そんな些細な提案をする美伽の顔は真っ赤でしかも口調もたどたどしい。そうその姿は正に恋する乙女そのものだった。
そんな美伽の姿をみて、その気持ちを知ってか知らずかカノンは微笑みながらとても優しい声で答えるのだった。
「うん、そうだね。僕たち二人まだろくに会話したことなかったしね。いい機会だから何か話そうか。どんな話がいいかな美伽さん?」
美伽は心の中でガッツポーズをした。好きな男の子の目の前でしかも一対一で緊張して声が裏返ってしまっていたので『変な人』だと
思われてしまったのではないかと思っていた美伽にとってこのカノンの反応は最高のレスポンスだった。そしてまたカノンに切り返す。
「あ、そ、それならさ…わ、私たちこうして異世界に飛ばされちゃったわけなんだけど、も、元の世界ではどんな風に暮らしてたとか…」
するとカノンの表情が一瞬曇る。美伽は「しまった!」と思った。せっかく接近するチャンスをつかんだのにこれでは台なしではないか。
しかしそんな心配は美伽の杞憂に終わり、すぐにまた微笑みを浮かべカノンはその問いかけに対して返事をするのだった。
「美伽さんはその名前からすると日本の生まれなんだよね?僕はヨーロッパで育ったんだ。北欧のほうだから冬は寒くてさ…暖炉が恋しかったなぁ…」
暖炉などアメリカやイギリスなどの外国映画でしか見たことがないと美伽が話すと「アハハハ」と笑ってまた答えるカノン。
「アハハ…そうだよね。日本は冬でも北欧ほど寒くはないからストーブとかでこと足りるって聞いたことがあるよ。
でも北海道っていう地方だけは冬は北欧と同じくらい寒くなるんだってね。反対に沖縄っていうところは冬でもまるで春のように暖かいそうだね」
ヨーロッパに住んでいるのになぜそんなに日本の気候について詳しいのか美伽が尋ねた。
「日本には僕の友人が暮らしてるんだ。彼らとはとても仲が良くてね、よく文通なんかして連絡を取り合ってたんだ。だから日本についていろいろ知ってるんだ。
日本は一部の何も知らない外国人からみたら未だに丁髷を結ってたり刀をぶら下げてるとか思われてるんだけれど他国に対してそんな偏見を抱いているからいつまで
たっても戦争はなくならないんじゃないかな。もっとも、幼いころから両手を真っ赤な血で染め上げてきた僕にそんなことを言える権利はないか…」
と、自分の言葉ですごく悲しそうな顔をするカノンをさっきまでのもじもじはどこへやら、美伽はその肩を叩いて満面の笑みをもって励ますのだった。
「昔のことばっかり気にしてもしょうがないよカノン君。確かに過去には背負わなくちゃいけないものもたくさんあるよ?けどカノン君がいくらその手を
血で染めて来たからってそれはあたしにとってはどうでもいいことなんだよ。だからあたしは今ここでカノン君とともに過ごせていることを神様に感謝してるんだ!」
それと同時にカノンに抱きついてさらに可愛らしい笑顔を見せる美伽。今度はカノンのほうが赤くなる番だった。女の子に抱きつかれたことなど今までい一度もなかったから。
「そう言ってくれると嬉しいよ…僕も美伽さんにこうして巡り合えたことすごく幸運だって思ってる。一期一会っていうのかな?だから離れてくれないかな…周りの人も見てるしさ」
その言葉を聞き周りを見渡す少女。見てみると、道行く人たちがすべてこちらを見ている。白い目もあれば興味津津、あるいは羨望のまなざしまでそれは様々だった。
ただ、男の子に抱きついたところを大衆に見られるのはやはりすごく恥ずかしい。顔から火が出でもおかしくないほど赤くなるのだった。淳子さんに頼めば実際にそうしてくれるだろうな、とも思った。
「あはっ…ごめんねカノン君。つい興奮しちゃってさ。勢いで愛の告白、みたいな?あ、それよりここ、一番最初の広場じゃないかな?ほらあの噴水!」
美伽が指をさす。確かにここはくじ引きをし、3組に分かれたあの広場だった。
「そうみたいだね。とりあえず、みんなまだ戻ってきてないみたいだし、僕たち二人で待ってようか」
「うん。そうだね。でもカノン君。さっきのことは二人だけの秘密だからね!」「わかってるよ。アハハ…」
そして笑いあう二人は残りの4人の到着を待つのだった。
第10話 男と獣と人間と。その3 FIN
ご指摘の点は良くなったでしょうか?キャラクター同士のコミュニケーションに重きを
置いていた結果、セリフも自然と多くなってしまったんでしょうね。とりあえず次はVPシリーズのあの人とその従者を
登場させたいと考えています。
乙で
合ってるやら合ってないのやらよく分からないコンビですね
一方は空回りしてるような…まあ合ってるのか?
嗅ぎまわってて危なくないんだろうか…
第11話 男と獣と人間と。その4
カノンと美伽が広場に到着して10分が経った頃、残りの2組も広場に到着したのだった。淳子と先生は何やら険しそうな
表情で、セフィロス・竜崎は何か悔しそうというか、後悔しているといった表情がカノン・美伽の両名から見て取れた。
が、なぜ残りの2組がそんな表情をしているのかはここでは置いておこう。まずは各々が手に入れた情報を統合して一つに
まとめることが先決だというのが2人の共通意見だった。とすればまずは口を開かないことには始まらない。カノンが初めて口を開くのだった。
「おかえりなさいみなさん。苦労したとは思いますが役に立ちそうな情報は手に入りましたでしょうか?僕たちは手に入れましたけど」
と言ってさしたる苦労もなくこの街の住人から手に入れた情報を残りの4人に披露するカノンと美伽。軍事部が介入していないという事実に驚く4人。
残りの2組も自分たちの手に入れた情報を披露する。セフィロス・竜崎ペアに関しては姉弟を助けて誘いを断ったという事実は伏せておいた。
これで各ペアの収穫の公開は終わった。あとはこの情報をもとにこれからの自分たちの行動を決定するだけだが…ここで問題が生じたのだった。
各ペアが手に入れた情報を統合すると…つまりこうだ。
この街にほかにあと10の町があり。いまからおよそ30年ほど前までは人間たちが平和に暮らしていた。そこに人間たちの森林伐採で
住処を追われた獣人たちがやってきて、この街に移住を始めた。人間たちに恨みのあった獣人たちは人間たちを襲うようになり、
身体能力で優れていた獣人たちはこの11の町の人間たちを征服。以来、世界救済委員会という組織を結成し人間たちを下僕として
支配するようになり、11の町を獣貴12師という獣人たちの長が治め(各町の政治方針は獣貴12師一人一人に委託され他のメンバーの介入は許されない)
それに逆らえば軍事部に粛清されるが、この「ヴァンゲリオ」という街を治める「クマ師」は穏健派であり軍事部の介入を許さないという政治方針を掲げているために
軍事部はこの街に進駐できずにいて、結果的に軍事部が進駐している他の町に比べると人間は暮らしやすい街なのだということだが、
問題というのはこの6人の考え方の違いが発端によるものだった。
淳子は、人間たちを圧政から解放する、そのためには世界救済委員会の殲滅が必須だという主張を展開したが竜崎がそれに猛反対を示したのだった。
竜崎は、そもそも獣人がこの街に移住してきたのは人間たちの身勝手な森林伐採のせい、それを棚に上げて獣人だけに罰を加えるのは理不尽極まりないと主張した。
「それは確かに事実ね。でもだからといって獣人たちが人間を苦しめてもいいという理由にはならないわ。苦しんでいる人々を見殺しにしろっていうの?」
「あなたの言うことにも一理ありますでも人間たちを救う方法が獣人たちの殲滅というのは短絡的すぎます。もっと別のやり方があるはずです」
「竜崎さんあなたは人、ここでは獣人か、を信じすぎるようね。私は元の世界で何人も平気で人を殺せる薄汚い人間を見てきた。そいつらは根本が腐敗してるから
治らない。治らないならこれ以上の被害を防ぐために駆逐するしかない。この街の獣人たちもそう、憎悪に駆られ人間たちを苦しめ自分たちを苦しめてきたのは人間だから
自分達が人間を苦しめても誰にもそれを咎めることはできない、たとえ神にも。そう錯覚してる。そんな連中は排除するしかないのよ!わからないの?」
「残念ですがわかりません。どんな人にも、過ちをやり直すチャンスがあるはずです。それを奪う権利はあなたにも、そして私にもありません」
淳子はまだ何か言いたそうな表情をしていたが、観念したような表情をみせ、竜崎に言うのだった。
「わかった。じゃあ聞くけれど獣人の殲滅以外で人間たちを救うって言ってたわよね?その具体的な方法を聞かせてくれない?」
淳子の問いかけは至極当然のものだった。自分の考えを否定したのだから当然自分の考えを述べるべき。
そう思った残りの4人も竜崎に目を向ける。全員の視線が竜崎に集まる。だが竜崎はかすかにも動じることはなく、宣言するのだった。
「やることは簡単です。まずこの街の市長、クマ師に謁見し自分たちがここに来た経緯を話します。その後、相手の気持ちを考えた上で
この街の人間の解放を約束させます。口約束ではなく、書面の上できちんと。そしてこの約束を反故にした場合、容赦なくあなたの頸を
はねると脅しをかけておけばまあ破られることはないでしょう。誰だって死ぬのは嫌ですし、幸いこちらにはそれをすぐに実行してくれる
方もいらっしゃいますから」
そしてセフィロスのほうを向く竜崎。セフィロスは別に何も言い返すこともなく、「フッ…」と鼻で笑うだけだった。
「そして?その約束を取り付けたら次はどうするの?まさかそれでおしまいなんてことにはならないと思うけれど」
「この街の人人間すべてをこの広場に集めます。そして私たちが指導者となり、『反乱軍』を組織させます。
名前はそうですね…「世界救済委員会」に対抗して「世界革命委員会」なんていうのはどうでしょうか。
武器はこの街のあらゆる店からかき集めます。幸い店はすべて人間たちが経営しているようですから獣人たちにも
すぐには気づかれません。そして準備が整ったら行動開始。この街を拠点として、圧政に苦しむ他の町へと一気に攻め込みます。
もちろん道中には軍事部が鎮圧してくるでしょう。しかし救済委員会は全体の6割。そのうち軍事部はだいたい6割程度でしょう。
その6割を10の町へと分けて派遣しているのですから当然各町に進駐している部隊の数は必然的に少なくなります。それに対して
ひとつの町のすべての人間を集めた反乱軍が攻め込んだらどうなるでしょうか?個々の能力は高くとも数では圧倒的に不利。
我々は勝利を勝ち取ることができるでしょう。そして解放した街の人間たちも反乱軍として参加させれば…
さて、この一連の流れをそれぞれの町で繰り返せば…どうなると思いますか?」
街が解放されるたびに増え続ける反乱軍。対してそのたびに数を感じていく軍事部の兵隊たち。最終的には圧倒的戦力差の前に
世界救済委員会は屈することになるだろう。
「なるほどね…でもそううまくいくかしら。あなたも見てきたと思うけどこの街の人間たち獣人に対してすごく怯えてた。
集まってくれると思う?私には到底そうは思えないのだけれど」
「大丈夫です。すでに根回しはしてあります。実は私たちは情報収集の傍ら獣人たちに襲われている姉弟を助けたのですが
その時に命を助ける見返りとして獣人たち5人にあることをしておくように言っておきました。同時に姉弟にも」
つまり、こちらから働き掛けなくとも人間たちは向こうからこの広場に集まってくるというのだ。いったいどんな根回しをしたというのか。
その時、ある男が6人に対して声をかけてきた。見るとまだ美伽と同じくらいの年の青年とそれにつき従っているメイド姿の若い女性だった。
「先ほどから話を聞かせてもらっていた。聞けばこの街の人間を解放するっていうじゃないか?面白そうだから俺たちも混ぜてはくれないか?」
その目はからかっているという感じは微塵もなく、真剣そのものだった。そこで竜崎はその青年に名前となぜそう思ったかを尋ねるのだった。
「ああ、悪い。自己紹介がまだだったな。俺はウィルフレド。17歳。それでこっちは…」
「エーリスと申します。以後お見知りおきくださいませ。皆様」
「それであんたたちについていこうと思った理由だけど、俺は父親を連れ去った戦乙女に復讐するために旅をしてた。そしてとうとう復讐を
果たしたと思ったら戦乙女は不死だと知り、さらにこのエーリスによって冥界に落とされたと思ったら…落ちた先は一面の砂漠。
そして横を見るとひどく驚いた様子のエーリスがいた」
ウィルフレドによると、自分は戦乙女に復讐するために冥界の女王、ヘルと契約をしたのだが結果的に復讐は失敗に終わり、
契約を果たせなかった自分をエーリスは容赦なく冥界に落とそうとしたが、着いた先は…この異世界だったというわけだ。
冥界に落とそうとしたはずなのに自分もろともこんなパラレルワールドにいるのだからエーリスが驚くのも当然の話だ。
「それで、エーリスと一緒に再び今度は当てもない旅を続けることになったんだけれど、最初に就いた町がここだったというわけで
この街をしばらく歩いていたらあんたたちが革命を起こすだとか話してたから当分の間あんたたちについていこうと思っただけさ」
「するとあなたたちが7人目と8人目になるわけね?」
嬉しそうな顔をしてそういう淳子。新たな仲間が加わったのだから当然と言えば当然か。
「おい、7人目と8人目ってなんの話だ?」
6人を代表して竜崎が自分たちもウィルフレドと同じくこの異世界を変えるために召喚されたということ、
10人全員集まり初めて自分たちを召喚した神が姿を現すということ、世界を変えるまでは元の世界に帰れない、
ということなどを話した。驚いた表情を見せるウィルフレド。
「あんたたちもこの世界に迷いこんだって言うわけか。わかった。この世界を変えるまで俺はあんたたちについていく。エーリスはどうする?」
「ウィルフレド様の御心のままにさせていただきます」
そして「フフフ…」とミステリアスな雰囲気を醸し出しながら笑うエーリス。その返事を聞き、ウィルフレドが言った。
「じゃあいっしょに来てくれると助かる。人数は多いほうがいい」
その一連のやり取りを終え、自己紹介をするメンバー。そうして世界を変えるために行動を開始するのだった。
といっても別段なにをするというわけでもなく、ただこの街の人間を待つだけなのだが。
というわけで「ヴァルキリープロファイル・咎を背負う者」よりウィルフレドとエーリスが登場ですが、
ネタばれすみません。けれどいいネタが思い浮かびませんでした。
というわけで次回からいよいよ革命開始です。
乙乙
竜崎は説得力はあるみたいだけど
普通のやり方で謁見までもっていく気なんだろうか?
下っ端とかの妨害やら時間が掛かったり…
まあいざとなったらいくらでも強行できそうw
第12話 ザ・マーシナリーズ その1
青年ウィルフレドと謎の女性エーリスが合流してから3日がたった。クマ師との謁見も滞りなく進み、住人の解放を約束させた。
さて、獣人5人組と姉弟に依頼したこととは「3日後の正午に町の中心の大広場に集まるよう町の住人全員に伝える」
という内容だった。姉弟も獣人5人組もよくやってくれたようで、広場にはこの街の住人の大半が集まっていた。
住人達はこれから何が起こるのか気が気でないようで、ざわざわと騒がしい。たとえて言うなら全校集会の開始前といったところか。
そんな様子を広場の入り口付近でうかがっていた8人。その8人にあの5人組と姉弟が近付いてきた。
3日後の正午にその広場の入り口付近にいるから声をかけてくれと竜崎が頼んでいたのだった。5人組のリーダー格の男が口を開く。
「よお、約束どおりこの街の住人全員集めたぜ。とはいっても俺らが近付いたとたんに逃げ出そうとするもんだから苦労したけどよ。
でも、そちらのお嬢ちゃんと坊やはうまいことやったみてえだな。蛇の道は蛇とはよく言ったもんだな。ハハハ」
使い方違いやすぜ、アニキ。という子分の突っ込みに対してその頭をはたくアニキ。こうしてみるとただの漫才コンビにしか見えない。
蛇の道は蛇というのは、同類のすることはその方面のものにはすぐにわかるという意味だ。それにしてもこんな言葉を知っているあたり
獣人は意外と頭もいいのかもしれない。と思った一同。続いて姉弟の姉が口を開く。やはり獣人が怖いのか、口調が震えている。
「いえ、そうでもないですよ…この街の人たち、基本的に他人のことには無関心ですから…話を聞いてもくれない人たちが結構いて…苦労しました。ね、ゆう…」
『ゆう』と呼ばれた15歳程度の少年は姉の問いかけに、「うん、姉さん」と無表情で答えるだけだった。可愛げのない子供だとウィルは心の中で思った。
「よお、ところでお嬢ちゃんと坊や、名前は?俺はガーランド。んで、こいつらが右からアルフ、キャスパー、ベントナー、ジェイソンだ。よろしくな」
名前を聞く際に自ら名乗るとは獣人にも紳士的な一面もあるのだということを一同は感心した。姉弟も友好的にふるまう獣人たちに心を動かされたのか、自己紹介するのだった。
「柊霞(ひいらぎ かすみ)と申します。最初はそれはそれは最悪な形での出会いでしたけどこうしてみなさんとお近づきになれてうれしく思います…」
と律儀に頭を下げ、微笑みを浮かべる少女。その姿に5人組の心にズキューン! と来るものがあった。おもわずにやけてしまったのは、キャスパーだった。あわててそれを隠す。
「…俺は柊広樹(ひいらぎ ひろき)。獣人なんてみんなクズみたいな連中だって思ってたけどあんたたちは違うようで俺もその認識は少し改めるよ。これからよろしく」
そして握手を交わす5人組と姉弟だった。その顔に企みや恨み、ねたみといった負の感情は、ない。ただ、相容れない存在であるはずの人間と獣人がこうして握手しているということは
両種族にとって記念すべき日になったのは確かだった。それを知っているのは当事者の5人組と姉弟、そしてこの8人だけではあるが。
「んで、住人は集めたぜ。これからどうすんだよ。こいつらけしかけて救済委員会に反乱でも起こすつもりかい?だったら俺たちも混ぜてくれよ?こいつら集めたって時点で片棒を担いだわけだしよ」
それに同調する残りの4人。その提案に驚く一同。しかし5秒ほど間をおき姉弟もそれに同調するのだった。竜崎が5人組と姉弟にそれぞれ言う。
「ガーランドさん、あなたがたは獣人ですつまりあなたがたは反乱ではなく世界救済委員会を裏切るということになりますがそれでよろしいですか?霞さんと広樹さんは…まあ覚悟の上なのでしょうね」
その竜崎の言葉を聞き、うなずく姉弟。一方5人組はそれを笑い、ガーランドは竜崎たちに高らかとこう宣言するのであった。
「問題ないね。俺らはもともと俺達5人だけで今まで生きてきたんだぜ?世界救済委員会を滅ぼして人間たちとうまくやれる世の中をつくれねぇかななんて考えてた矢先にあんたたちが現れた、
天の導きと思ったね。あんたたちならできるだろうと思ったもんだからあんたらについていこうって思っただけだよ。裏切りなどはじめから覚悟の上だよ」
ガーランドのその言葉を聞き、竜崎は満足そうにうなずいたのだった。そして右手を彼らに差出して言うのだった。
「それではあなたたち7人はただ今から私たち8人と運命共同体ですこれから私たちは世界救済委員会に反乱をおこしますが、あなたたち7人を表の指導者としてこの住人たちを指導していただきたいのです。
私たちが異世界からきたと話したところで彼らは信じはしないでしょうし、それでしたらあなたがたがトップに立ったほうが
彼らもついてくるでしょうし。なぜ起こそうなどと思ったと問われれば世界救済委員会に嫌気がさしたとでも言えばいいでしょうし、事実そうですから」
なるほど、とうなずく一同。こうすることで余計な集めたのは彼らなのだから自分たちが指導者と言えば余計な混乱は回避できる。しかし、すぐにキャスパーが当たり前の疑問を口にする。
「でもさ、あんたたちはどうすんのさ?もとはと言えばあんたらが反乱起こすって言いだしたんだろ?俺達よりもあんたらのほうが適役なんじゃね?この広場で演説だけアニキがやってあとはあんたらが実質指導するほうが効率いいだろ」
キャスパーのその言葉にも一理あると思った竜崎を除く一同。しかし竜崎は首を横に振り、静かに言うのだった。
「いえこの反乱はあくまでもあなたたちの手で起こす必要があるのです私たちはいずれもとの世界へと帰りますということはこの世界からいなくなるということですその時世界救済委員会に代わってこの国を治めるのは…あなたたちです」
といい、7人を指さすのだった。自分たちが救済委員会亡きあとこの国を治めるといわれ、顔を見合わせる7人。そんな7人の気持ちを汲んでか知らずか、竜崎は再び7人に言うのだった。
「ではこれからあなたたちにやってもらうことはそのための第一歩です。今から彼らの前に出て演説をしていただきましょうその役割はリーダーのガーランドさんが適任でしょう。私たちはここで見ておりますので
皆さん、よろしくお願いいたします」
急に演説をしろと言われても当然そんなことしたことがない。それどころか今まで大衆の前に立ったことすらないのだ。動揺するのは必然だった。とはいえしなければ始まらない。7人は大衆の前へと姿を現す。
その刹那、騒がしかった住人達がとたんに静かになる。自分たちの恐怖の対象である獣人たちが現れたのだから当然と言えば当然だが。そして、ゆっくりと口を開くガーランド。
「あー、住人のみんな集まってくれてありがとう。えー、今回みんなに集まってもらったのはほかでもない。えー、みんなも知ってるとは思うけど俺達獣人たちのみんなに対する支配は目に余る。獣人の俺が言うのもなんだけど。
そこで俺とここにいる6人で革命を起こそうと思ったわけだよ。でも俺らだけじゃ無理難題。そこでみんなにも手伝ってもらいたいんだ。やることは簡単だ。この街の店という店から武器になりそうなものを手当たり次第にかき集めて
みんなで救済委員会の圧政に苦しむ他の町へと進むわけだ。ここから一番近いトルベルアの町がいいな。さあ、みんな今の暮らしを変えたくないかい?自由な日々をつかみたくはないかい?なら剣をとり戦おうぜ!
今から俺らが始めるのは反乱なんかじゃねぇ!俺たちとみんなが五分五分の対等関係で向き合えるその時をつかむための闘争だ!今のおれの言葉を信じるかどうかはみんなの自由だ。だけど今の生活を変えたいと思うのなら、
俺らに付いてきてほしい。俺からはこんだけだ。あとはみんな次第だよ」
そしてガーランドの演説は終わった。最初はたどたどしかったが途中から友人に話すような感覚ですいすいしゃべっていた。もともとしゃべるのは好きだったのだろう。
そして巻き起こったのは、大歓声だった。まさかこれほどまで支持を得られるとは予想だにしていなかった一同は驚きを隠せなかった。ここでガーランドがダメを押した。
「声援をありがとう。その様子だと俺たちに賛同してくれたと受け取っていいのかな。じゃあまずは武器を集めてこよう。すべてはそこからだ」
そして30分ほどたち、広場には住人すべてが一つずつ手にとってもまだ有り余るほどの武器が集まった。クワやカマ、ナタといった農具から、刀、槍、サーベル、そしてチェーンソーなどたくさんの武器が集まった。
それをみてまさかこんなものまであるとは思わなかった革命軍首脳部は驚いた。だが、すぐに満足そうな顔を見せるメンバー。
「よく集めてくれた。さて、時は満ちた。今こそ…ゲームの始まりだ!俺達の自由と平等を取り戻すためのな!」
そして再び大歓声。その様子を傍らでうかがっていた8人は満足そうにほほ笑むのだった。
第12話 ザ・マーシナリーズ〜その1 完
237 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 20:11:32 ID:8/wCp8Im
悪役いいね
乙で
なんかいかにも在野って感じがする指導者
革命というか一揆前夜って感じがw
裏で主人公たちが動いたり、指導者もそれなりなんで別に大丈夫か
ふと思ったけれど
ジョン万次郎とかある意味すごいトリッパーだよな
同じ日本人もいないし、寂しくなかったんだろうかなぁ
言葉もわからんしなー
仲間でもいれば辛くはないだろうがなぁ
第12話 ザ・マーシナリーズ〜その2
反乱軍の表向きのリーダーであるガーランドの号令によってヴァンゲリオの町を飛び出した5000の軍勢は一路、目的の町
「トルベルアの町」を目指して行軍していた。地面ももう砂漠ではなく、街と街とを結ぶ街道であるためにそれなりに整備され
半日足らずで着けるだろうと竜崎は考えていた。さて、裏の指導者である例の8人は、自分たちの正体が他の反乱軍メンバーに
ばれないよう、反乱軍の一メンバーとして行動していた。集まって話していると怪しまれるので、1000人からなる一個大隊の中に
分けて配置した。具体的な割り振りは、先頭の大隊にセフィロス・カノン・淳子。これは真っ先に戦闘に突入するため、
住人の被害を最小限に食い止めるため、戦闘力が高いメンバーを割り振ったものだ。
次のグループにはウィルフレド、エーリス。当初はウィルフレドを先頭に配属する予定だったのだが、
エーリスがどうしてもウィルフレドと行動を共にすると言って聞かず、結果、第2大隊に配属する運びとなったのだった。
第3大隊には竜崎。ちょうど真ん中にいるために各大隊に指示を(ガーランドの指示として)出しやすいとの判断からこうなったものだ。
第4大隊には美伽を配属した。エーリスと同じように先生と離れたくないとダダをこねるものの、そうすると第5大隊に一人もいなくなるので
竜崎が頑として首を縦に振らなかったので、仕方なく一人だけで動くことになったのだった。
最後尾の第5大隊には上条先生。この大隊は戦闘というよりも後方支援を目的としたグループだ。そのため、医療の知識や武器の修理など専門的な
知識に長けたものが多く集まっている。上条先生は他のメンバーと比較しても一番の知識人兼常識人であることは疑いようのない事実だった。
そしてメンバーを振り分けたのにはもうひとつ大きな狙いがあった。それは美伽など現代の人間なら誰でも持っているであろうあるものを利用して、
伝令が必要になる連絡を格段にスピードアップさせようというものだった。幸いにも「それ」はこの世界においても効力を失うことはなく、さらに
なぜか竜崎が自分の分も含めて4つも持っていたので、「それ」を持っていなかったセフィロス、ウィルフレド、エーリスにも行き渡った。
重要なのは「それ」が機能するまでの時間だ。その時間が切れてしまえばその機能を失ってただのプラスチックの塊になり下がってしまう。
だが、最初の広場にて集められた武器の中にはチェーンソーがあった。とすればそのチェーンソーを作るために当然必要になるあるものはこの世界にも
あるということになる。金属だとかそんな材料の話をしているわけではない。すなわち、この世界においても「電気」は存在するというわけだ。
つまり、8人がもっているそれ、つまり携帯電話はその機能を失うことなく稼働し続けるというわけだ。さらにそれぞれの携帯電話は他の7台の番号、
メールアドレスも入力済みだ。つまり、いつでもどこでもこの8人は連絡を取り合うことができるというわけだ。これはこれから先の戦いにおいて非常に
大きなアドバンテージになる。
「でもそんなにうまくいく?連絡取れてもそれによって的確な戦術立てられなかったら意味ないよ?向こうはプロなんだし」広樹が竜崎に問いかける。
広樹たち7人も竜崎と同じような目的で第3大隊にいて、竜崎と行動を共にしているのだった。
「それに関しては問題ありません私はこうみえても結構頭が切れるものですから戦術戦略を立てることなどお手の物です」
と。竜崎は無表情で広樹に返す。そんな顔を見て少年は「ふ〜ん…」と興味なさそうに返事を返すだけだった。
そんなとき、竜崎の携帯電話がなる、開いて画面を見ると、淳子からだった。応答ボタンを押し、電話に出る竜崎。なにやら相槌を打っている。
そして「わかりました」とだけ言って電話を切り、指導者7人にいう。
「先頭の第1大隊が目的の街に近づいたようです淳子さんに連絡して待機してもらうよう他の方たちに連絡してもらうようお願いしました
さてそろそろ暗くなってきたので第1大隊に合流ののちテントを取って行軍の疲れを癒しましょう実際に町を陥落する作戦はその時みなさん
お話します。今はとりあえず歩きましょう」
そして15分ほど歩いただろうか。竜崎たちは先頭の第1大隊に合流した。疲れた表情で腰を下ろす指導者たち。半日近く歩き続けていたのだ。無理もない。
第1・第2大隊はすでにテントを張り、食事や会話をしながら休息を取っていた。こんな大きなキャンプを張って街に見つからないのかとも
心配になった霞だったが、トルベルアの町は要塞ではない。さらに付け加えて言うなら外が見渡せるような高い建造物もない。
たとえあったとしてもサーチライトもなしに外の暗黒の世界を見渡そうなど無理な話だ。しかもキャンプは街の光がぎりぎりで届かないというまさに絶妙な位置に
張っている。この裁量はすべて竜崎の指示によるものだった。世界一の名探偵の名はだてではない。
「さて皆さんお疲れ様でした。まずは食事をとりましょう今後の作戦についてお話しするのはそれからでも遅くありませんし何より私自身お腹が空きました」
その言葉を聞いて苦笑いを浮かべる指導者7人。そして竜崎とともに食事をとるのだった。といっても竜崎の分は板チョコ5枚だったが。
第12話 ザ・マーシナリーズ〜その2 完
トリップを変えてみました。まあどうでもいいですね。次回はついに戦闘に突入します。
うまくかけるか不安ですが、がんばってみます。それではまた次回。
って、うぉい!w
読んでるぞ
架空言語を創作するスレから来ました。
完結するかどうかは作者の根気次第ですが、やれるところまでやってみます。
序
眼下に広がる一面の氷。
彼が先ほどから立ち尽くしているのは、俄かには信じ難い場所だった。
「……寒い」
口に出してみたものの、彼が感じている寒さは、とてもその一言で内包しきれるようなものではなかった。
体に突き刺さるような冷たさ。最早痛みに近い。
幸い、灰色の曇り空から雪が降り注いでくる様子は無かったが、遠くの方で強い風が唸りを上げて吹き荒れていた。
地平線の彼方まで360度、真っ白い景色が続いている。大パノラマだ。
「何だよ、遊園地にだって北極体験アトラクションとかあるじゃん。落ち着けよなぁ、俺」
何かの間違いだと思って、不安をごまかそうとする彼。しかしムダに口を動かすと、口の中に冷気が入りこんでくる。
猛烈に寒い。この雪景色の中随分薄着をしている青年は身震いして、とっさに息を吐きだした。
すると舞い上がった白い息は、瞬間に凍りついて空中でキラキラと輝いた。
彼はいささか唖然としてその行く末を見つめていた。
「つか、ここどこよ?」
果てしなく続く氷原の真ん中で、彼は頼りなさげな声でそう呟いた。
辺境な感じだな
248 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/17(金) 23:02:28 ID:QYuydOyw
ほうほう
夜の森の中で目覚めていきなり独り言でブツブツ喋りだす
って展開じゃない時点でまだ期待できるな
まだまだ序盤って感じでまだよくわからんな
これからに期待
252 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/18(土) 15:09:08 ID:o9wQnW7B
ロープレワールド(ラノベ)
まだ少ししか読んでないけど期待できそう
というかそういうシチュを体験したいよ
ローションプレイ……!?
ところで昔の人はローションとか石鹸とか化粧水の類は何を使っていたんだろう
へちま水とか?
254 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/19(日) 13:43:52 ID:9HvdWENK
しかし仮に異世界に行けたとしても、コミュ力低じゃあ厳しいかも。
やっぱり話の分かる人や優しい人、できれば美少女に拾ってもらわないと。
設定、プロットはまとまったんだが、あれから三ページぐらいしか書き進められなかった。
マジで死にたいwww
生きなさい
することがないっていうか、どうしようもないっていうか。
彼は真っ暗い洞窟の中で途方に暮れながら、冷え切った地面の上に一人座っていた。
洞窟、と言ってみたが、厳密な話ここが洞窟なのかすらも分からない。
とにかく彼が最初に目を覚ましたのは、妙に音が反響する、厚い氷の下にぽっかりと空いた狭い空間の中だった。
「ヤナさん、また明日」
「おう。練習、がんばろうな」
梁取誠治(やなとり・せいじ)は校門を出て直ぐの場所で友人に手を振り、横断歩道を一つ跨いだ通り沿いのバス停へと向かった。
季節は秋。日の長かった夏と比べて、今の時期太陽の光は五時頃になるともう西へと傾き始める。
信号待ちしながらその場留まっていると、ボーン、ボーンという頭に響くような重い音が鳴るのが耳に入ってきた。完全下校を促すいつものチャイムだった。
「週末どうすっかなぁ〜」
彼は金属製の腕時計をつけた右手で、脱色した髪の毛を掻き毟った。
苛立ちからなのか、足が自然にリズムを刻んでいる。
忙しく行き交う自動車が、彼の目の前を物凄い勢いで何台も横切っていた。
六車線の広い道路の反対側には、証券会社か何かの高いビル。
学校の目の前とだけあって毎日見てはいるが、何をしている会社か、などということに彼は興味がなかった。
しばらくして、歩道の信号が赤から青に変わる。
彼を含めて、何十人もの人々が一斉に再び歩き出した。彼は喧騒に身を委ねまいと、雑踏の中をつかつかと歩いて行った。
彼は市内の公立高校に通う、高校二年生だった。
定期券をバスの入り口で機械にかざし、窓際の空いている席を探した。
車内は帰宅途中の学生やサラリーマンであふれかえっていた。走り出して揺れる中で、吊革につかまって、ブレーキを踏むと同じ方向に体をふらつかせる人々。
彼は舌打ちすると、「お年寄りに席を譲りましょう」の注意書きを無視して、一人掛けの席に荷物を投げて乱暴に腰かけた。
その様子を一瞥して怪訝な顔をしている者たちもいたが、彼には見えていない。
彼は鞄からiPodを取り出して耳にイヤフォンをはめると、一瞬伸びをするために上に体を反った。
東から空を塗り替えようとする薄暗い藍色。
低床バスの椅子から窓ガラスの外を見上げると、摩天楼は一層大きく見える。
つき始めた電飾や派手なサラ金のネオンサインが、眼球の中で拡散してはスパークを起こしていた。
学習塾や予備校の看板も目立つ。
「絶対合格」「夢を、あきらめない」
使い古された謳い文句を並べるポスターの中に、ガッツポーズをしてにっこりほほ笑む女子高生の写真が映し出されていた。
彼は虚ろな目をしてそれを見つめた後、静かに瞼を閉じた。
最近、疲れてる。ホントどうしちゃったんだろ。
軽音の連中と一緒のときはまだ良いのだが、ここのところ妙に塞ぎこむことが増えた。
理由は幾つか思い浮かぶ。けど、その話ならあまり考えたくはない。
彼は車体の振動音を感じながら、浅い眠りに落ちようとしていた。
彼は市内の公立高校に通う、高校二年生だった。
一応進学校を掲げる彼の高校は、十二月頃に模擬試験を実施したり、まだ二年生だというのに予備校の講師を招いて放課後に補習を行ったりする。
そんな中彼は、放課後所属する軽音の仲間とつるんでは、駅周辺の地下街で遊び呆ける生活を続けていた。
彼は頭は悪くないのだが、何分やる気が無かった。
別に赤点ギリギリだろうと卒業できれば良かったし、毎日授業中は爆睡して友達と下らない話に花を咲かせている方がずっと幸せだったからだ。
しかし、普通の高校なら模範的な17歳で確かにそれで通るのかもしれないが、環境は彼を許さないような状況になりつつあった。
押しては寄せるまどろみの波に身を任せながら、彼は鞄の中に入っている申込用紙の存在を思い出していた。
昨日会社から帰ってきた親父が、判子を押して無言で差し出した紙だった。
「明日やる模試は、希望者は今日まで受験を申請できるからな」
ショートホームルームで担任が散々注意を呼び掛けていたことが、今更頭を過った。
今日まで一応模試の受付締切だったな……
週末は軽音の仲間とエレキ持って調整に行こうとしていたが、生憎親からも担任からも模試を受けろと言われていた。
でも、結局俺はそれを無視してしまった。いつも楽器やらで重たい荷物が、今の彼にはずっと重たいものに思えた。
畜生。
彼は何か悔しいような、寂しいような焦りを感じていた。
クラスはもう受験ムードだ。
皆もうどんどん目の色変えて、そっちの方へ行っちまう。
実際、軽音の連中の中にも、今月中に活動を辞めたいと言ってくる奴まで現れていた。
そしてその中の一人は、今も学校を休み続けていた。
教室に残った、空いた席。
脳裏に浮かび上がっては沈んでいく友の顔。
泣き笑いのような、あの、やつれた顔。
俺もそうなるのか?
あいつみたいに死んだ魚みてぇな目して、生きてかなきゃならねぇのかよ?
それが受験か? 勉強することが、そんなに必要なのか?
冗談じゃない、そんなのお断りだ。
深い憤りは、彼の心の中を荒れ狂う嵐の海へと変えた。
彼は不意に閉じた目の外に光の存在を感じ取った。
日差しが眩しい。
ビルの少ない、駅前の開けた通りに出たのだろうか。瞼は閉じているのだが、はっきり感じる。
光は血管を流れる血を透かして、先程まで目に映っていた闇が赤く染まっていく。
もう夕暮れどきらしい。
彼はこの光の中に、消える様に溶けていきたいと思った。
何故、こんなにも理不尽なんだ?
よく言うじゃないか、高々一生内でも三年かそこらだって。
じゃあなんでその時期に一生の大半が決まっちまうんだよ?
時間が経って鎮められようとする心の波さえ、彼には邪魔くさいものに思えた。
もっと乱れろ。
狂え。
全てを飲み込んで、俺の心なんてバラバラにしてくれ。
しかし、彼がそう強く思えば思うほど、光は優しく彼を包み込んでいった。
母親の腕に抱かれる赤ん坊のように、程なくして大人しくなっていく彼。
一体それが何なのかは分からなかた。でも、こんなに安らかな気持ちを味わうのは、何年振りだろうか?
不思議な感覚は、彼の脳髄を陶酔へと導いた。
快感ではない。むしろ違和感に近い部分もあったが、彼は疑問を持たなかった。
網膜に相変わらず映し出されていた赤い光は、白い光へと変わっていったような気がした。
俺は……
彼の意識は、真っ白い光の中へ転落していった。
ちょっと訊きたいが
このスレって聖戦士ダンバインとか天空のエスカフローネみたいに
ファンタジー世界+ロボットというのもありだよね?
どんとこい
いい加減本来生まれるべきだった世界に戻りたいよ。
この世界は酷すぎる。
お前が生まれるべきだった世界について語ってくれよ
ルイズが三人くらいこうねなんでもない
266 :
創る名無しに見る名無し:2009/05/12(火) 01:31:50 ID:NMIuP8Ak
やっぱり前にも言ったけど優しい娘の世話になりたいよ。
で、もちろん自分は高ランクの魔術師。
いや、職業とかどうでもいいからまったく別の環境に。
ギルドでも農家でも魔具職人でもいいからとにかく別世界で生きがいの見出だせる仕事を。
環境が変わっても本人が変わらなきゃ生き甲斐なんて見つからないようなw
トリップを機に新しい自分を見つけられると思ってヒャッハー!
↓
>>267で壁にぶつかってようやく気が付く
↓
自分は薄志弱行で到底行先の望みが〜〜
ギルドなんて親方以外はきついばかりで使い潰されるだけだぜ。
現代日本がいかに恵まれているのか、歴史だけでなく他国の状況も調べればすぐ分かる。
努力が報われる社会から出て異世界に行きたいって、ただの逃避だろ。
努力することから逃れたいだけだろ。
逃避が認められるのは、社会が努力を認めてくれないような年齢に達してしまったようなおっさん連中だけ。
異世界の事情なんて妄想する人の自由だろ
現実のそれと比較するのは野暮。別に便所のない世界でもかまわん
「異世界系トリップ話か」
「会計の伊勢さんがトリップしてマタンゴー!なお話しー?」
「この前までライブアライブ動画見てたからって、わかりにくいネタ
を振るんじゃない。加えて言うなら、伊勢がブーマーの伊勢を想定
しているとか言っても、誰もわからないんだからな」
「爆笑問題より好きでしたー!」
「お前歳いくつだよ……それはともかく、異世界系トリップ話だ」
「上で何かあれこれ言ってるねー」
「まあ、異世界系トリップ話がいつの時代もなくならないのは、
現実世界でどうにかならない事でも、世界が変わったらどうにか
なるんじゃないか、っていう願望が人間にあるからだろうな」
「日本神話とかでもあるねー」
「厳密に言うと違うがな。でも、死者の世界に行って、現実で
救えなかった命を助ける、ってのは、動機としては通じるものがある。
それが神話において全世界的に存在していると考えると、こういった
欲求は全世界、いつの時代も共通していると考える事ができるな」
「ちょっと無理ないー?」
「まあ、世界を移動してどうにかしなくても、あの世でどうにかすりゃ
いいや、という考え方な所もあるけどな。エジプト神話とか」
「それでそれでー?」
「でも、やっぱり異世界に行って頑張れる理由ってのは、ちゃんと
欲しいところだよな」
「ほほー」
「よくある話だと、異世界に移動した事で、主人公の眠れる力が
覚醒し、いきなり勇者になってしまうというパターン」
「あるねー」
「異世界の常識にとらわれない考え方が、異世界でものすごい
威力を発揮し、凄腕の軍師としてもてはやされるパターン」
「うんうんー」
「力自体は大したこと無いが、異世界存在である事が、異世界での
超常兵器などの機動キーとなっているパターン」
「身を守る力は異世界で身につけるんだよねー」
「だいたいこんなもんだろうな、パターンとしては」
「かなー?」
「……考えれば他にもありそうだが、勢いで書いてるからな」
「勢いは重よー」
「ともあれ、異世界トリップ物って、世界の命運を握る存在として、
主人公が描かれるのが普通なんだよな、パターンに則って考えると」
「でないと物語にならないー」
「まあ、そりゃそうだな。でも、世の中には逆転の発想というものが
あるわけで、異世界でようやく平穏な生活を手に入れた男が、
異世界を救う為にその平穏な生活を壊される、という展開を
昔考えた事がある」
「詳しく聞かせてみー」
「なんかお前偉そうだな……まあいいや。主人公は、顔だけは
それなりだけど、それ以外はあんまりうだつの上がらない
サラリーマン。で、付き合ってた恋人に振られて、世を儚んで
ビルの屋上から飛び降りる」
「ミンチよりひどくなりましたとさ。めでだしー。完ー」
「終わらすな! まあ、異世界に行く前に何か疲れてたら何でも
いいんだよ! とにかく、そうやって飛び降りたら、偶然異世界への
扉が開いて、そこに飲み込まれる主人公」
「なんで異世界への扉が開くのー? なんでー?」
「それは、鍛えてるからだー! ……だから、誰もわからないネタ
織り交ぜるのやめないか? な?」
「なんでー?」
「真面目に答えると、死という形で世界に別れを告げようとした
主人公の意思に反応して何とかかんとか」
「ありがちだねー」
「言うなっ! ……とりあえずまあ、主人公は異世界にワープ。
で、そこであくせくと満員電車に揺られる必要も無く、上司の顔色を
伺って過ごす必要も無く、悠々自適に自給自足生活をできる環境を
手に入れる。何か、どっかのおじいさんにでも拾われたんだろうな」
「おしえてーおじーさんー♪」
「歌うな。でまあ、おじいさんの孫娘とかと、何となく互いを意識しながら、
平穏な生活を営んでいたと思いねえ」
「孫娘はおじいさん似でごつい、いわばジャイ子ー」
「おかしな設定を付け足すなっ! ……まあ、そうやって異世界の
暮らしにも慣れた、むしろこっちのが理想じゃね、みたいな感じに
思い始めた頃、世界移動の余波を感知してやってきた、この国の
権力者達が操る軍隊によって、その平穏な生活は終わる」
「あららー」
「おじいさんや孫娘は無残にも殺され、主人公の身にも危険が
降りかかる。せっかく手に入れた平穏をぶち壊され、やけになった
主人公は特攻を敢行し、銃弾を雨霰とぶち込まれ――」
「死んじゃったー?」
「どっこい生きてるシャツの中〜」
「誰にもわからないネタは混ぜないんじゃなかったのー?」
「え!? ド根性ガエルのぴょん吉はわかるだろ!?」
「お前歳いくつだよー」
「さりげに最初の方で歳を疑われたの根に持ってやがるな……」
「気のせい気のせいー」
「……まあいい。んでまあ、他世界からの召喚存在である主人公は、
異世界における法則が適用されない存在となっていた事が、ここで
明らかになるわけだ」
「煮ても焼いても死なないのー?」
「そう。それどころか、痛みや熱さすらも感じない」
「切っても裂いても死なないのー?」
「そう。というか、切れもしないし裂けもしない」
「……なーんだー」
「なんで残念そうなんだおい……ともかく、主人公がそういう存在で
あるという事を理解した軍隊は、主人公を手に入れようとするんだが、
かろうじて息があったおじいさんの手によって逃がされる」
「おじいさん、実は歴戦の勇者だったりするんだねー」
「そんな感じだな。ともあれ、そうして主人公は逃避行を始め、
なんやかんやあって権力者達に反抗する抵抗組織に拾われ、
そこで『平穏な生活を与えてくれる事』を条件に、協力する事になる。
そこで出会った女の子と、またもやいい雰囲気になったりしながら、
銃弾飛び交う戦場に放り込まれたりする。でも死なない。それどころか
死ぬような目に遭うことすらない」
「無敵の魔人だねー」
「でも、ぶっちゃけ一人の人間が無敵でも、局地戦でしか勝利は望めない。
ましてや、主人公は別に何かの武道に通じてたり、世界を移動する
事で何かの力に目覚めたわけでもない。ただの人だ。農作業してた
お陰で体力はあるけどな」
「じゃあ、主人公の懸命の努力にも関わらず、革命軍は敗北ー?」
「だが、指導者がイメージ戦略とかそういうのに長けてたお陰で、
なんやかんやあって革命軍が勝利」
「おおー。正義は勝つー」
「ところが、革命軍の指導者は主人公を拘束しようとする」
「なんでー?」
「革命の成功は、主人公の存在をイメージとして用い、それが
成功したからなわけで、主人公がいなくなると、残党を抑える事が
できなくなる。残党を掃討した後も、反抗勢力を相手にするには
主人公の存在が必要となる。よって、主人公の自由を奪う事を
指導者達は決定したわけだ」
「おお、いいもんかと思ったらわるもんだったのかー」
「でも、途中いい雰囲気になった女の子が、主人公を逃がしてくれる。
んで、彼女も主人公と一緒に逃げる」
「愛の逃避行きたー」
「二人で安住の地を探す事にして、ターンエンドだ!」
「何を勘違いしてるんだー? オレのターンはまだー」
「はいはいまだ終わってないねはいはい」
「むー。流すなー!」
「流されるような事を言うなっ! ……まあ、その最中、敵側勢力に
主人公の元カノが召喚されたりとか、他にもいろいろ考えてたが
……あらすじだけでも長くなったのではしょる」
「確かに長いねー」
「間違いなく長編になるから、実際にSSとして書くとなると、相当
気力が溜まってからじゃないと、絶対途中で放り出す自信があるぞ」
「だよねー。それにー」
「それに?」
「ぶっちゃけ、ありがちな展開の逆を狙って、結果的にありがちな
展開になってるよねー」
「……言うな」
「結局、何がしたかったのー?」
「いや、まあ、その……枯れ木も山の賑わい、というか。なんか
少しでもスレの活性化になればな、と」
「設定だけ語ってご満悦とか、厨のやる事じゃんー」
「ぐさっ」
「刺さるくらいならやらなきゃいのにー」
「……いつか、その内、書く……書くかな? 書けたらいいな?」
「書くらしいですー」
「わかったよ! 書けばいいんだろ書けば! 書いてやるよ!」
「それでこそ男ー」
「……あ、そうだ! 尚、この一連のレスは全てフィクションであり、
実際の約束、契約等とは一切関係が」
「じゃあそういう事で」
「ありま」
――ブツッ――
ここまで投下です。
何をやっているんだ私は。
なにやってんだwww
随分お久し振りです皆さん。ゴーストライターです。今まで世界各国を放浪してました。
ネタと自分探しの為に。ようやく見つかって日本に帰国後、PCを起動して「さあ、書くぞ!」と意気込んでいたら規制に巻き込まれていました。
そこでPCのワードを利用して続きを書き、それをメールで4回位に分けて送信して
携帯のペースト機能を用いてここにアップするという方法を思い付きました。
もちろん、続きを読みたいと思う人がいればの話ですが。
避難所の代行スレ、かなり高性能だしな。
代行してくれてる方にはいつも頭が下がります。
>>277-278 貴重な情報提供ありがとうございます。では僕も代行依頼したいと思います。
やっぱり都合のいい展開は無理か。
>>261を書き込んだものだが
お前らガンダムで言うなら連邦とジオンどっちが好き?
>>280 無理とか無理じゃないとかはともかくとして、物語には
ならない、もしくはしにくいだろうな。
>>281 ジークジオン!
でも時代とかが違えばティタやブルーコスモスが好き。
>>283 了解した
とりあえずヒロインが金髪ツインテでツンデレなお姫様って事が今決まった。
やぁ、良く来てくれたな旅人。いや、異邦人と言った方がいいのか
うん?ここはどこなのか?そうだな、君達とは違った歴史をたどった地球と言っていい。割と珍しいケースでね、個人での転移というのは
コーヒーは飲むかな?噴き出す用途にバーボンも用意させよう・・・ま、それは冗談として。ウィスキーか塩、ジャム、どちらがいい?私はジャムでいくが
・・・で、だ。一服しながらでいい。我々の世界と何処がどう違うのか。相互の理解を深める為に質問をしてくれると助かる。出来るだけ質問には答えよう
ん?ああそうだな、紹介が遅れた。私は東シベリア共和国海軍少佐、ミリア・ロジェストベンスキーだ。今後の面倒を引き受けている。以後、よろしく頼む
世界はある。だが、此処が異世界に対してどういう答えが欲しいのかわからないんでこんな風に見切り発車してみますた
287 :
創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 10:34:18 ID:N1zXyOPS
とりあえず質問するとしたら
何故言葉が通じる?特殊補正か?日本語が標準言語なのか?
その話ぶりだと似たようなことが他にもあるのか?
世界状況。特に日本。
何か注意すべき点。
こちらでの文化とか。
おすすめの作家の本ある?
やっぱり地球ベースの別世界だと同じ作家でも元の世界と違った作風や文体ということもあるのかな?
test
チラ裏ですまんが、ボツにした最近まで考えていたプロットがある。長くはなるが、
@主人公がある日突然古い穴とかに落っこちる→どこか知らない原始的なコミュニティで介抱される。→ここが何処で何時なのかを突き止めようと旅に
A仲間を見つけ、長い旅の末に他とは違い一際進歩した都市を見つける。→その都市で自分が何百年も未来の地球に居る事を知らされる。
B主人公は自分のいた時代からそう遠くない未来に人類の大半がある理由によって死滅したのを聞かされる。
Cその都市が発展したのは過去の遺産&人類大量死滅の原因がある場所より見つかった物からリバースエンジニアリングをしたため
D原因を探るために数人の仲間と共に当時の残骸がある場所へ→見つけた残骸は明らかにオーバーテクノロジー&地球外的な物
E絶滅の理由は、@’自星の環境激変に体が耐えられなくなった異星人が地球を見つけ、まだ文明も無かった頃の人類の姿をコピー
A’その後定住する星を見つけ、数千年の後に戻ってきてみたら地球では明けても暮れても何処かで戦争の毎日。
B’その事を悲観した異星人達が姿をコピーしたという歴史ごと人類を抹殺すべく、自分達の船の一つを地球に向けて落とした。
F仲間の内一人がその異星人と判明→殆ど同時に異星人の船団がやって来る。→主人公達は立ち向かう事に
って考えていたんだが、これじゃ異世界・トリップ物じゃないし、なんか猿の惑星+セキレイ+インディペンデンス・デイっぽくなっちゃってなあ……
戦争してたからって滅ぼすとか
そいつ等の方が幼い精神構造してるように感じる
癇癪かよって
野蛮人が宇宙に出られたら困る。
より広い視点からの判断。
限られた資源を同じ共同体(種族・集団)で使うには
他の共同体と争うのは避けられない。
それを考えられないのなら、遠からず滅びるか、無限の資源を持ち、
持たない者の苦悩が分からないのかのどちらかだよ。
ちょっと質問なんだけど
寝ると異世界で目を覚ます→異世界で寝ると現実で目を覚ます
ってのはトリップの部類にはいるんだろうか…
異世界ではあるんだけど…
夢幻三剣士か
夢幻伝説 タカマガハラを思い出した
トリップ扱いでいいんでない
>>293 ちょwゲストはそこまで言ってないw
戦争ばっかしてる野蛮人だから(と言うのは表向きで派閥争いの為に)地球征服・・・だw
記憶が残っていたら現実に戻ってくると空しくなるだろうな。
そしてひたすら寝続けて異世界に。
299 :
289:2009/05/25(月) 10:28:34 ID:WHEz73PM
宇宙人が人間を滅ぼす理由?色々有るけど高尚な理由なら某有名SF作品の言葉を借りるけど、
「地球人はしょっちゅうお互いに憎み合い、戦争したり、他人の物を騙し取ったり、殺し合ったりしている。
私達宇宙人としてはこんな連中が科学の進歩によって宇宙に出て来てもらっては困るのだ。
平和な宇宙に戦争や憎しみを持ち込まれては堪らない。だから今の内に地球を滅ぼしてしまおうか。」
ってところかな?
自分の場合は「平和な種の自分達(宇宙人)が自星の環境について行けなくなった為に他星への移動がてらに地球人の姿をモデルにしたのに、
数千年経って化けの皮剥がして見たらとんでもなく原始的で野蛮だった。自分達の矜持が過去の事実を抹消してしまえと示したからだ。」
ってのも含まれているけどね。ところでこの間のやつを本腰入れて書いたなら、この板なら何処に投下すれば良いかな?
トリップや旅、SFが混じっているから迷ってしまって。
この野蛮な宇宙人に立ち向かう地球人類の話が読みたい。
というかこの宇宙人は頭の中が19世紀以前だろ。正直なんでこんな連中が宇宙にいけるのかサッパリ分からん。
スパロボでもやっとけ
ゲストよりフリーザ様のがまだ地球侵略の理由として妥当性があるよな。
302 :
創る名無しに見る名無し:2009/05/28(木) 17:05:08 ID:VXoWyhWn
むしろ主人公達が宇宙人に取り入って粛清実行部隊にでも入る展開を。
恋人をレ〇プされた揚げ句殺されたけど、犯人の親がお偉いさんや警察関係の人間だから揉み消された
→世界に絶望
とか。
適当に流し読みしてきたけど
ゼロの使い魔や今日から魔王的と考えればOK?
おkなら書こうかと思うけど
304 :
285:2009/05/30(土) 16:55:28 ID:RGA1ta3Z
質問が来てたので続きをば
305 :
285:2009/05/30(土) 16:57:18 ID:RGA1ta3Z
質問を受けた彼女はやんわりと微笑むと、コーヒーを啜って唇を湿らせた
「満州国の白系ロシア人が我が国の建国グループ主流でね、日本語は第二母国語になっている」
天然資源や北極海パトロール、対ソ緩衝地域としての役割で立ち回り、枢軸陣営での経済力では日伊に続き、第三位にあたる
「日本は覇権国家だな、グレイトネイバルウォー、つまりは太平洋戦争に勝って以来ずっとな」
私の専門になるが、と、前置きして彼女は続けた
「国際上は英仏、そして日伊でしのつきあっている。海軍力では四分六、いや、三七ぐらいでこちらが優位といえるが、欧州とこちらでは距離がな」
インド洋に我々が進出するのが先か、イタリアが英仏の攻勢を持ちこたえられなくなるかが、やり合った場合の初期情勢を決めるだろう。と、彼女は断言した
「それから、こんな事が以前にもあったのかと聞いたな。結論から言えばあった。日本が国ごととかな。だから個人での転移は珍しいが、価値としては結構微妙だな」
あー・・・それでも君が持って来た細菌なんかの遺伝子が、僅かでもこっちと違ってたら、製薬などの面でおいしい存在にはなれるから、落胆はしなくていい。と、取って付けたようにフォローされる
306 :
285:2009/05/30(土) 17:02:07 ID:RGA1ta3Z
「注意すべき点、といわれても特にはないな。不穏な言動や思想を実際に行おうとしない。なんてのは言う必要もないだろう?」
彼女は肩を竦める
「文化は、といっても様々だが、あれかな?時の一般観艦式の際に某十二姉妹全てをそれぞれ飛行甲板に描いて痛空母にしたとか、そのあたりか?」
それでも四隻余ってるのが、なんともな、と。呆れるように笑う
「それからオススメの本、といえば少し前に映画でリメイクされた日本沈没三部作だな、一部で災害救助と原因究明、二部で政治交渉と武力進攻、第三部で停戦、復興の開始の流れになっている」
あ、と彼女は付け加えた
「サン・テグジュペリの月のお姫様とか、文学的なそっちの方が良かったかな?」
星の王子様の続編を、かいつまんで彼女は説明した
「ま、気を楽にしててくれ。悪いようには・・・」
艦長より乗員に達する。総員、出航準備をなせ。繰り返す、出航準備をなせ。本艦はフォックスロット訓練海域にて日本海軍第三艦隊と合流、その指揮下に入る。他に遅れて恥をかかせるな。以上だ
「まいったな・・・」
唐突に流れた放送に、彼女は肩を竦めた
「すまない、しばらくこの部屋に軟禁させてもらうことになりそうだよ」
307 :
285:2009/05/30(土) 17:05:36 ID:RGA1ta3Z
安心させるようにだろう、明るい声で彼女は言った
「続報もないようだし、半殺しの三艦隊で済むぐらいなら、戦闘も無い可能性も高い」
第三艦隊は各国合同の緊急派遣艦隊としてのの役割が強く、低烈度紛争では良く出張り、対象国家が死なない程度にさら地にしては去っていくので半殺しと言うらしい
「必要なものがあればいってくれ、割とこういう時は取り寄せにも無理が効く。必要物資的にな。目立たない程度に、だが」
ここはとりあえず艦内らしい。待遇は悪くはないが、緊急事態だからといって、どこかで降ろしてくれるつもりもないようだ。
選択肢が発生しますた
ニア「微妙な立場って言う割には扱いが慎重ですね」
「それより何か、自分に出来る事とかありますか?」
「あれこれ持って来てもらえますか(中身募集)」
「ミリィって呼んでもいいっすか?」
「(こんなに良くしてくれるなんて、この人は俺の事が好きに違いない、そうに決まった!ルパンダイヴをせざるをえない!)ミィィィリアアアアアッ!!!」
308 :
285:2009/05/30(土) 17:13:08 ID:RGA1ta3Z
沈黙の六艦隊、荒鷲の五艦隊、境界の四艦隊、半殺しの三艦隊、圧殺の二艦隊、無の一艦隊。等と俗に言われておりまする
十二姉妹は勿論コヨーテ・ラグタイムs
という訳で投下終了です。続、く?
>>244の続きです。PCがすぐにフリーズするために使えなくなりいよいよ携帯から失礼します。
それではCHANGE THE WORLD第12話 ザ・マーシナリーズをお楽しみ下さい。
第12話 ザ・マーシナリーズ〜その3
食事も終わり竜崎は革命軍5000人の表の指揮官である7人の前で作戦の内容を事細かに説明していた。
その内容はこうだ。全5大隊を正五角形を描くように配置し街を包囲し夜明けを待つ。
すでに竜崎の指示のもと、その配置についている。もちろん敵側に発見されない位置で。そして夜明けと同時に一斉に突入、元来夜行性である獣人は
その能力を発揮出来ずに5000の軍勢に奇襲に有効な対処すら出来ずに敗北するだろう。更にこちらにはパイロキネシスの使い手、ガンウィズウィング、
伝説のソルジャー、妙に剣に長けた少年とただならぬ殺気を発する謎の美女という超人的戦闘能力の持ち主がいるのだ。万に一つも負ける要素は見当たらない。
竜崎の完璧な作戦だった。後はこちらが100%の力を発揮出来るよう部隊の皆に休養を取らせるだけでいいのだ。
「どうですか皆さん理解いただけたでしょうか理解出来ないようであれば理解出来るまで何度でも説明します
理解できてない人がいた為に作戦が破綻などという事態は避けたいですから特にあなた方のように頂点に立つ人達は」
竜崎が「おやつ」のクレープを食べながら指導者7人に淡々と告げる。それに対して7人は無言で頷く。
元々獣人は頭がいい。獣と人の血が混じり合い進化していったのが獣人だ。そしてその進化のプロセスの中で獣人は獣と人間の短所をそれぞれの
長所にて補完していったのだ。その結果、獣人は人間を越える霊長類としてこの11の街に君臨することとなり、人間を支配するようになったのだ。
但し獣人はこの点に関しては致命的と言っていいくらいに欠落していた。「多種族を慈しむ心」と「自分達を絶対的存在だと思い上がり神の如くに振る舞っていた」という点だ。
そして獣人達がそれに気付く時、その時は同時に自分達が今まで築き上げて来た物全てが無へと帰した時に他ならない。
「いいでしょうそれでは皆さんもそろそろ休んで下さい明日は忙しくなりますから」
竜崎が皆を休ませるよう促す。しかしここで広樹少年の指摘が飛ぶ。
「竜崎さんが先に寝なよ。いろいろ考え過ぎて頭も疲れてるだろうし」
「ご心配なくその分甘い物を食べて頭を常に回転させられるようにしていますので」
>>309の続き
「ふ〜ん…でも竜崎さんそんなに甘い物ばかり食べてたら虫歯になるよ?歯は大事にしようよ」
「ご心配ありがとうございます広樹さんさて皆さんおやすみなさいまた明日目覚める時それはこの国の夜明けでもあります」
「夜明けねぇ…まあいいや!考えてても仕方ねぇ!今日は早く寝ようぜ」
7人のリーダー、ガーランドの一言にてその夜は皆眠りに就くことになったのだった。
やはりここまでの行軍で疲かれていたのだろう。皆、5分も絶たぬうちに眠りの淵に誘われたのだった。
「頼みましたよ皆さん明日は皆さんの態度次第でこの戦いの趨勢が決まるのですから今は休めるうちに休んでいて下さい」
夜食の板チョコをかじりながら竜崎が一人つぶやく。そしてそのまま一睡もせずに夜は更けて行き…そして、夜は明けた。
「いよいよです皆さんこれは聞くまでもないことですが念のために聞きます覚悟はよろしいですか?」
無言で頷く7人。もはや、言葉はいらなかった。そして竜崎は携帯電話を手に取り、言った。
「竜崎です。これよりトルベルアの街攻略作戦『五稜郭の呪縛』を発動します。準備はいいですか?全軍…突撃」
言い終えると同時に5000の軍勢が城壁に囲まれた街へと突入した。閉ざされた門はいとも簡単に破られ、武器を手にした解放軍が
街の中へと流れ込む。
戦闘部隊、解放軍のエース、第一大隊が500m程走っただろうか。ここで遂に世界救済委員会軍事部と衝突するのだった。その数ざっと500人。
第一大隊総隊長、青木淳子がストップをかける。そして敵部隊を挑発するかの如く言うのだった。冷徹な笑みを浮かべて。
「あら、随分早いお出ましね。獣だから朝にはめっきり弱いものだと思ってたけど。私達が何しに来たか、分かるわよね?」
そんな淳子に対して敵部隊のリーダーらしき男が答える。完全に見下した口調で。そしてそれが命取りになるとも知らずに。
「ふん、我ら崇高な存在たる獣人に抗うために下等な人間が寄り集まったところで何も変わらんわ!貴様ら虫けらごとき、踏みつぶしてやるよ!」
「それが、あなたの遺言と言う訳ね…確かに聞き届けたわ。実行は地獄でどうぞ?崇高な存在なら訳ないだろうから」
その瞬間、業火に包まれ、炭と化すリーダー。敵兵士の目が点になる。そしてそれは味方も同じだった。
さすがのセフィロスやカノンも驚きを隠せない様子だった。淳子は炭の塊と化したリーダーの元へと歩いて行った。
>310の続き
そして淳子が歩む度に後退りする獣人達。強力な獣人達が人間、それも女性一人に恐れをなしているのは今までは考えられない光景だった。
そして炭の塊へとたどり着いた。何を思ったか炭の塊を自らの頭上へと持ち上げたではないか。
そして一言呟く。「生命って儚いわね…」そしてそのままアスファルトの地面へと叩き付けるのだった。
炭であるために非常に脆くなっていていとも簡単に5体が砕け散った。そして頭であった部分が淳子の足下へと転がって来きた。
それを「グシャリ!」と踏みつぶしそして煙草の火を消すかの如く踏みにじるのだった。
その凄惨な光景にその場にいた人間、獣人全てが息を飲んだ。獣人達からは「おい…なんだよあのバケモノ…」などと言う弱音が聞こえて来た。
そして再び第一大隊の元へと戻り、敵部隊に対して形だけ最後の警鐘を鳴らすのだった。もちろん聞き入れるなどと淳子は毛頭思っていない。
「さて、私の宣戦布告のパフォーマンスはいかがったかしら?ここで文字通りあなた達の腰に生えてる尻尾を巻いて逃げるなら見逃してあげてもいいわよ?」
淳子のその言葉に顔を見合わせる獣人達。しかしやはり自分達が人間などに尻尾を巻いて逃げるなどとプライドが許さなかったのだろう。
「怯むな!たかが人間などいつでも八つ裂きにしてやれると言うことを奴等に思い知らせてやるのだ!」
副隊長らしき女性が声を荒げて叫ぶ。それと同時に一斉に突撃する獣人部隊500人。
そしてそれを迎え撃つ解放軍第一大隊1000人が激突する。ここにこれからの歴史において長く語られることになる「人間解放戦争」の幕開けの瞬間だった。
人間に極力被害を及ぼさぬよう、最前線にて戦うセフィロス、カノン、淳子の三人。
「一気に攻め込め!あの3人さえ殺れば敵は総崩れだ!集中攻撃だ!殺れ!殺れ!!」
敵リーダーの女性の指示が飛ぶと同時に敵部隊の攻撃が一気に3人に集中する。
そしてこれこそが3人の狙いだった。いかに攻撃を集中させても実力差は火を見るより明らかだった。
セフィロスの斬撃。カノンの銃撃。淳子の業火。当初500人いた敵部隊はこの3人によって300人以下にまで減っていた。
そして遂に淳子の指示が飛ぶ。「各部隊500人ずつ分散完了したようね。全員突撃!一気にけりをつけて!」
それと同時に一気に攻め込む第一大隊1000人。実は竜崎から敵の攻撃が自分達に集中するような場合、
部隊を半分に分散させて敵部隊を挟むように左右に配置し、タイミングを見計らって挟撃を行うよう指示を受けていたのだ。
冷静さを欠いていた獣人達はこの攻撃によって完全に浮き足立ち、総崩れを起こすのだった。
戦闘開始から30分が経った頃、辺り一面に獣人たちの死体が転がっていた。対してこちら側の死者は0人。
諸戦は解放軍の完全勝利に終わった。そして3人の前に敵部隊のリーダーの女性が連行された。
「隊長、敵指揮官を捕らえました。処遇はいかが致しましょうか?これは私見ですがやはり見せしめのために…」
淳子はその男をギロリと睨み付けて言った。
「見せしめならさっき私がやったわ。見てなかった?それに私たちの目的は獣人の虐殺じゃなくて人間の解放。違うかしら?」
「いえ、おっしゃる通りです…」淳子の眼光に怯んだ男が答える。淳子はそんな男の気持ちを察したのか今度は優しい声で話しかける。
「そんな怯えなくてもいいわよ。私は間違なくそしてどんな時でも味方なんだから。取りあえずあなたは周辺住人の騒ぎを収めてきてくれないかしら?」
淳子の言うように獣人と戦ったことでこの町の住人がちょっとした騒ぎになっている。まだ朝早いというのに。
男は一言「了解しました」と返事をするとそのまま騒いでいる住人たちの元に走って行った。すでに他の解放軍メンバーによって
おおかたのあらすじは説明されていて、事態を収集するのは訳もなく、騒ぎは収まった。
ここでセフィロスが捕らえられた敵指揮官の女性に話しかける。見たところまだ20歳に満たないあどけなさも残るもけだかく美しい獣人だった。
それが心と一致する場合など殆どなく、むしろその真逆を取るケースが殆どだということを淳子は自分の人生経験から
よく理解していた。外面だけの美しさに捕らわれ心も美しくすることを忘れ他の人間を見下す。そんな連中だということだ。
ましてやこの女性は獣人。間違なくそうに決まっている。本当ならば先程の男に言われるまでもなく自らの手で炭くずにしてやるところだ。
しかし竜崎に「決して戦闘以外で敵を殺さないで下さい」と釘を刺されている以上そうする訳にはいかなかった。
「女…名は何と言う?」
「…………ブライト。セフィリア・ブライト…今し方貴様らの手にかかり全滅した世界救済委員会軍事部
トルベルア方面軍第一大隊の副隊長だ…殺すなら………早く殺せ………」
命乞いなど一切せず最期まで自らのプライドを貫こうとするその獣人、セフィリアに3人は正直感心した。
そこで今度は3人の中で一番温和なカノンがセフィリアに話しかける。
「セフィリアさん。僕たちはあなたを殺すつもりはありません。それにあなたを痛め付けて情報を聞き出す気もありません。
僕たちはただあなた達獣人に支配されているこの国の人間の解放。それだけが目的です」
「貴様…私に生恥をかかせるのか!殺せ!さもなくば自ら舌を噛んでやる!」
「何故あなたはそんなに死にたがるんですか?死ねばあなたがこれまで築きあげて来たもの、全てが無に帰ってしまうと言うのに…
そうだ。セフィロスさん、淳子さん。しばらくこの人と二人で話がしたいので外していただけますか?」
「ああ、解った…」「私もセフィロスさんに同意。けど気をつけてね?」
「ご心配なく。彼女は僕を襲っては来ませんから」何の根拠があってそんなことが言えるのかが淳子には解らず首を傾げるが
セフィロスは鼻で笑い、立ち去るのだった。そしてそれを小走りで追いかける淳子。これでこの場にいるのはカノンとセフィリアだけとなった。
そしてセフィリアを縛っていた縄をほどく。必要以上にきつく縛られていて、彼女の肌には縄の後がくっきりと付いていた。
人間がいかに獣人を憎んでいるかがこの跡から垣間見える。憎しみからは何も生まれはしないのに…と、カノンは心の中で呟く。
「貴様…捕虜を自由にするなどどういうつもりだ?今すぐ貴様の首をへし折ってやってもいいのだぞ?!」
カノンはそんなセフィリアの脅しに眉一つ動かすことなく、逆にセフィリアを試すような口調で返すのだった。
「では何故あなたはそれを実行に移さないのでしょう?僕があなたを一瞬で殺せる武器とそれを使いこなす腕を持っているからですか?
ならこれでどうでしょうか?」
カノンは懐から自分の愛銃を取り出し、セフィリアの足下へと滑らせた。もちろん安全装置は外した状態で。
「これで僕は丸腰になりました。あなたが僕を恐れる理由はなくなった訳です。さあ、どこからでもどうぞ?それともまだそれが出来ない理由がありますか?」
セフィリアは俯いたまま答えない。二人の間にしばしの沈黙が流れる。が、やがてセフィリアが重い口を開くのだった。
「…私に…人間を傷つけるなど…出来るはずないだろう…私には…初めから無理だったんだ…」
カノンは首を傾げる。彼女は獣人だ。獣人にとって人間は言ってみれば下等な存在。それを傷つけることなど日常茶飯時で
獣人たちはそのことに関して毛の先ほども罪の意識など抱いてはいない、という話をガーランドから聞いていたからだ。
まして彼女は軍事部の獣人なのだ。間違なく人間を虫けら呼ばわりでもして迫害して喜んでいる非道な存在。
少なくともカノン・ヒルベルトはそう認識していた。しかし目の前の獣人の女性は自分に人間を傷つけるなど最初から無理だと言った。
どういう事だろう。不思議に思ったカノンは今自分が考えていた事をそのままセフィリアに尋ねた。
するとセフィリアは「フッ…」と笑いしゃがみ込んで話し始める。
「そうだろうな。私達はそう思われて当然だろう…たとえ人間に恨みがあるとはいえ、何の罪もないこの国の人間を
30年の長きに渡って苦しめ続けて来たのだからな。さて、何故私が人間を傷つけられないか…その理由を教えてやろう。
一つは今話したようにこの国の人間に対する罪悪感だ。私はそれから生み出される感情から人間達を傷つけることは出来ない…
もう一つは…………言うまでもないか…」
セフィリアはそう言って横を見る。カノンもそれに習う。見ると10人の幼い子供たちがこっちに向かって走ってくるではないか。
見るとまだ12、3歳くらいの少年少女だった。そしてセフィリアを守るように取り囲み、カノンの前に立ちはだかり口々にこう言うのだった。
「お姉さんをいじめるな!」なるほど、この子供たちにはカノンがセフィリアを虐げているように見えたのだろう。
そして一斉にカノンに襲いかかる。しかし、カノンの超人的反応速度、身体能力の前には彼らの拳もむなしく空をを切るだけだった。
もちろんカノンは反撃など一切せずに回避行動に専念している。しかも笑っている。この状況を楽しんでいるようだ。
「やめないかお前たち!その人は私をいじめてなどいない!」セフィリアが口を開く。その途端大人しくなる子供たち。
「済まなかったな人間。私がこの子たちに一番に説明しなかったために迷惑をかけてしまったな」
「いえ、結構楽しかったですよ。それよりもう一つの理由と言うのは…この子たちですか」
「ああ、この子たちは獣人の迫害で親を殺されたんだ。ぼろ雑巾のような姿でゴミ捨て場に投げ捨てられた両親の亡骸の前で
立ちすくしていたんだ。酷い話だろう。当時私は既に軍事部に入局していてふと街を巡回していた時のことだ。
身寄りのないこの子たちもいずれ親と同じ運命を辿るだろう。そう思った私はこの子たちを保護することにしたんだ。
もちろんそんなことが本部に知れようものなら私は裏切り者として処刑され、この子たちも間違なく殺されるだろう。
私は何としてでもそれを隠し通す必要があった。だから私は必死に努力し、あらゆる手段を駆使してようやく今の地位を手に入れたんだ。
そして私は軍の中でも徹底的に人間を排除するように振る舞った。もちろん演技で実際は一人も手に掛けてはいないが。
そうすることでこの子たちを不自由させる事なく育てることも出来るし、またこの子たちを隠すことにもなると考えたからだ」
つまり、自らの手で人間を傷つけてしまえばもう自分にはこの子たちを育てる資格はないということだ。
軍部では人間排除の急先鋒として活動しつつ、その裏では孤児達の保護。その相反する二つの面に置かれたら普通の人間では
恐らく精神やあるいは人格が崩壊してしまうだろう。それをセフィリアは驚異的な意志の強さと精神力で耐えて来たのだ。
だが、それも今日で終わりだ。隊長を死なせた上に500人もの隊員が戦死したとなれば副隊長であるセフィリアは間違なく
その責任を問われるだろう。つまり、失脚だ。いや、最悪軍を追放されてもおかしくない。それならばいっそ―
「セフィリアさん、僕たちの仲間になりませんか?僕たちと一緒にいればあなたの立場は捕虜。その子供たちは
この街の解放戦において新たに解放軍に加わったことにすればいい。もちろん戦わせません。非戦闘部隊に所属させて
怪我人の手当てを手伝ってもらいましょう。それに、行軍中にこの子たちに勉強を教えられる人もいますし」
セフィリアは少し考えたがやがて笑い、カノンに答える。
「その提案、飲もう。これから私の命はお前達と共にある。好きに使ってくれ。ところで人間、名前は何という?」
「カノン・ヒルベルトと言います。これからよろしくお願いします。さて、セフィリアさんのことを皆さんに説明しなくてはいけませんね」
カノンは携帯電話にて淳子とセフィロスを呼び出し、今までのことを話すのだった。2人とも納得した様子で
「ええ、もちろんいいわよ。頼もしい味方が増えるのに異を唱える訳ないじゃない。ねえ、セフィロスさん」「ああ、その通りだ」
こうしてセフィリアと十人の少年少女を新たに仲間に率いれた解放軍だったが、
その前途は多難だった。竜崎の目論見では都市を一つずつ攻略して行くごとに
解放軍メンバーを増やしていく算段だった。しかしこのトルベルア市では好戦波の
ブタ師が統治していて、救済軍がことあるごとに人間住人を迫害するので人間は
彼らに怯えきってしまっており、とても味方になってくれそうにないという話を
いましがたセフィリアから聞いたところだった。市民の不甲斐なさに表情が暗くなる一同。
さて、この時点で青木淳子率いる第一大隊は市全体の2割ほどを制圧していたが、
他の部隊が気になる。淳子は携帯電話を手に取り各部隊に連絡を取る。状況を聞き
その表情は明るくなったり暗くなったりする。やがて連絡も終わり、淳子は
各部隊の戦況を第一大隊のメンバー1000人に伝える。当初はザワザワと
騒がしかったが淳子が話始めた途端、ぴたりと静かになる。
「みんなの奮闘のおかげでこの緒戦、完全勝利を収めることが出来たわ。
まずは礼を言わせて。さて本題だけど、他の部隊がどうなっているか
みんなも気になってると思うから伝えておくわね」
そして淳子の口から各部隊の戦況が語られる。ウィルとエーリス属する第2大隊。
市中心部まで侵攻することに成功。ブタをあしらった
黄金のモチーフが所々に点在する、はっきり言って悪趣味極まりない宮殿、
つまりブタ師の住まいの前までたどり着いたところで宮殿の防衛部隊800人と
交戦状態になるもこれを壊滅させた。ただ味方にも150人程の死傷者が出て、
第5大隊に治療と死者の葬儀を要請したとのことだ。現在は宮殿前広場にて
待機中であり、各部隊との合流後、一気に宮殿内部に侵攻し、ブタ師の身柄を
確保、それが出来なければ殺害も厭わない、という作戦だった。
殺生を忌み嫌う竜崎が殺害も厭わないといったのには理由があった。
一つは獣貴12師の一人であるブタ師が沈んだとなれば軍の志気は恐らく低下する。
少なくとも、これまで虐げて来た人間達にやられた、という事実でこれまでの
彼らの考え方に綻びを生じさせることは確実だ。竜崎のねらいはこれからの自分達の
行動によって獣人たちの人間に対する考え方を変えさせることにあった。
この戦いがあるべき終結を迎えたあと、人間と獣人が互いを許しあい
そして共存して行く。それこそが竜崎の目的だった。
つまり、ブタ師の陥落はその為の礎であり、この戦いにおける竜崎の目的完遂の
ために絶対必要な事項なのだ。そしてもう一つの理由は、人間が自分達の手で
獣人のヒエラルキーの頂点に君臨する獣貴12師の一人を打倒した、という事実を
作ることによって解放軍の志気を高め今後の作戦展開を有利に進める、という狙いだった。
そして、この解放軍のブレインたる竜崎属する第3大隊は現在も敵と交戦中、
しかしながらこちら側にも獣人が存在することで裏切り者が出始めたと誤解した
敵部隊にかなりの動揺を誘うことが出来、戦況は圧倒的有利に進んでいるとのことだった。
恐らく、勝利は時間の問題であろう。しかし、ここで淳子は口をつぐんでしまう。
「あの、青木さん。第4大隊と第5大隊はどうなったんでしょうか?」
急に黙り込んでしまった淳子を不思議に思ったカノンが声を掛ける。すると淳子は
首を横に振ってその問いに答えるのだった。まるでこの世の終末を宣告するような
そんな悲しげな声だった。
「実は…両方とも連絡が取れないの…」
そして淳子は自分の考えを一同に話す。圏外とも考えたが、この市は高低差が殆どない
平野の中心部に位置していて、圏外になる箇所があるとは思えない。更にいうなら
携帯電話の電波を遮断出来るような妨害電波を発生させるような装置も見当たらない。
そんな技術力は淳子の世界で言えば十五世紀頃のヨーロッパの町並みをそのまま
再現したようなこの市にあるはずもなく、何より通信手段は手紙位のものだから
妨害電波発生装置など作る必要すらないのであった。
となると連絡がつかない理由として考えられるのは…最悪の考えが頭をよぎる。
その刹那、淳子は何かにつき動かされたかの如く第2大隊に連絡を取る。第2大隊は
死傷者の救護を第5大隊に要請したと言った。すなわちその時にはまだ健在だった。
救護を要請したのがどれくらい前なのか。それが一刻も早く知りたかった。
まだ間に合うかも知れない。美伽や上条先生の安否が不安でならなかった。
「はい、こちら第2大隊のウィルフレド。青木さん、何か用ですか?」
淳子は今自分が考えていたことをそっくりそのままウィルに話した。
そして、しばらく話した後に電話を切るのだった。―15分前。ここで淳子は
自分達と第4、第5大隊の位置関係を考えた。
317 :
レス代行:2009/06/24(水) 21:54:56 ID:u0vHEU7j
乙です。なにかずいぶん見やすくなりました。次回以降もこの調子でお願いします。
全5部隊にて星を描くように市を蹂躙する様から『五稜郭作戦』と名付けられた
今回の作戦。市中心部から見て北西の方角に第1大隊、その真向かい、つまり北東に
第2大隊、南西には第3大隊、そして北に第4大隊、最後に南東に第5大隊という構図だ。
各部隊が一斉に攻め込んだのであればある程度は市内に侵入したと考えるのが普通だ。
5部隊に一気に侵攻を受け、朝方で判断力が鈍っている獣人は妥当な
決断を下すのに時間がかかる。そのスキを突いて一気に攻勢を仕掛け、この市を
陥落させるのがこの作戦の主目標だ。しかし2部隊も壊滅したとなれば間違なく
今後の作戦行動に支障を来す。それだけじゃない。美伽や上条先生が戦死などと
いうことになれば淳子たちの最大の目的である『世界を変える』ことも不可能となる。
そうなれば淳子たちは永遠にこの世界に取り残されたままだ。淳子の焦りは頂点に達する。
心臓が激しく鼓動し、息が荒くなる。いても立ってもいられずに淳子は電話を掛ける。
相手は第2大隊のウィルと第3大隊の竜崎だ。用件を確実に伝える為に息を整える。
「もしもし、今から言うことをよく聞いて」
そして淳子は現在も健在である残りの3部隊にて第4、第5大隊の捜索、援護を
依頼する。2人とも「了解」と返事をして電話をきった。自分達も動かなくては。
現在位置は北西の門からちょうど100m程だ。恐らく、南東の方角に歩いて行けば…
ここで淳子は首を振った。歩く?バカな。全速力で走って行くに決まっている。
淳子はメンバーにことの次第を説明し、そして捜索は開始された。
―2人とも無事でいて、それだけを考えながら淳子はただ走り続けるのだった。
第十二話 ザ・マーシナリーズ 完
第13話 The angel of the massacre〜殺戮の天使〜
淳子たちが第4、第5大隊の捜索を開始する40分ほど前、その2部隊は市中心部から
500メートルほど離れた位置にて合流していた。このトルベルア市は半径
1km弱の城塞都市だ。市中心部に位置するブタ宮殿を中心として段々と大きな円を
描くように市民の住居や道具屋などの店が立ち並び、そしてその円の大きさと
反比例するように住人の階級は下がって行く。市の一番外れに住んでいるのは
もちろん人間で、その中でも最も貧しい人々が暮らしている箇所だ。
俗に言う貧困街、スラムである。そしてこの2つの部隊はもうまもなく平民街から
そのスラムに入るかどうか、という地点にて合流した。その数2000人。人々は
再び生きて巡り合うことが出来た互いの幸運を称えあった。小百合、上条先生も
その一人で、孤児院の教え子である秋山美伽と談話しながら時間は過ぎていった。
そして、現在から20分前、つまり第2大隊から死傷者の救護を要請された直後に
それは唐突にやって来た。獣人の大軍勢による奇襲攻撃を受けたのだ。その数、
4000人。せめてもっと周囲に警戒していれば結果は違ったかも知れない。
しかし、人々は油断しきってしまっていた。2000人もいる。獣人とてそう簡単に
手出しは出来まい。そうたかをくくってしまっていた。
結果、次々に襲いかかって来る獣人に殆ど何も出来ぬまま人々は倒れていった。
元々戦う術など持っていなかった小百合はただ逃げ惑うしかなかった。途中で
美伽とはぐれてしまった。大丈夫、彼女は運動神経は抜群だ。きっと逃げられる。
そんなことを考えながら小百合はただただ全力で走った。逃げた。逃げるしかなかった。
そしてどれ程走っただろうか。辺りはすっかり静まり返っている。
後ろを振り返っても獣人たちが追って来る気配はない。ホッと胸をなで下ろす。
しかし、またすぐに新たな不安に襲われた。美伽はどうしただろうか。上手く
逃げ切れただろうか。彼女の安否が気になって心配で仕方がなかった。不安で
胸が張り裂けそうだった。小百合はもと来た道を再び走り出す。逃げる時は
全く感じなかった苦しさが、今その時の分もまとめるような形で一気に
襲いかかって来たような、そんな苦しさだった。
まるで得体の知れない何者かが、自分が美伽のもとまで行くことを阻んでいる、
そんな風にさえ感じられた。しかし、小百合はそれでも走り続けた。心臓の鼓動が
悲鳴にさえ感じられる。ただ、ここで自らの心臓を庇い美伽が命を落した、などと
いうことになれば小百合は一生涯それを後悔することに
なるだろう。どんな大事な局面でも決して後悔だけはしたくない。それが小百合の
信念だった。そして小百合は今ようやく先ほどの場所にたどり着いたのだった。
全身が酸素を求め、息は一秒足りとも止めていられなかった。小百合はその場に
しゃがみ込みただひたすらに息を整えることだけに専念した。こうしている間にも、
美伽が命の危険に晒されている。小百合の焦りはただ募っていくばかりだった。
やがて呼吸も落ち着き、小百合は辺りを見渡す。目を覆いたくなるような光景が
広がっていて、実際に目を覆った。それだけ凄惨な光景だった。
320 :
ラーズグリーズ ◆WH113haXK5ba :2009/06/28(日) 01:00:21 ID:t04cd+cV
本来は灰色であるはずの石畳が今では人々の鮮血で真っ赤に染め上げられ、その上には
無数の人々の亡骸がただただ横たわっている。小百合は吐き気を懸命に堪えながら
その死体たちを一人ずつ見ていった。美伽がこの死体の山の中の一人でないか確かめる為だ。
ある死体は顔面が完全に破壊され、生前この人がどんな顔をしていたかはもはや見る者の
想像に任せるしかない有様だった。またある死体は両手両足がその根元から切断されていた。
さらに背中には非常に鋭利な刃物で斬られた跡が4本平行に連なっていた。そしてその顔は
苦痛に歪んでいる。この背中の傷は医者ではない小百合の見立てでもそう深くはなかった。
つまり、この傷は致命傷ではなく、この人は生きたまま四肢を切断されたということになる。
そして、この世のものとは思えない苦痛の中で死んでいった………余りにも惨すぎる。
次の死体は…女性だった。そしてその遺体を見た瞬間、小百合はその場で嘔吐した。
それだけ酷い有様だった。眼球は抉り取られ耳はもぎ取られ、頭部は何度も重い鈍器で
殴られたのだろう。完全に陥没していた。ここまででも十分鬼畜の所業なのだが、
小百合が嘔吐したその理由は、腹部にあった。無残に引き裂かれ腸や内蔵が露わとなり、
さらに酷いのは…………この女性は妊娠していたのだ。その胎内には新たな生命が
宿っていて、この世に生まれ出てくるのを心待ちにしていたに違いない。
その新しい命は…どんなパズルの天才であろうと決して組み立てることは出来ないだろう。
そう小百合に思わせるほどに粉々にされていた。何故こんな酷いことが出来るのか。
昔、獣人達が人間達にどんな目に合わされたのかは小百合には知る由もない。
獣人たちが人間そのものを憎み、そして自分達を蹂躙した人間たちに復讐してやる、
そう考えるのはいわば自然の流れであろう。それは小百合も理解していた。
ただ、その報復がこの殺戮、いや虐殺だというのならばもはやそれは報復の域を超越している。
獣人たちはただ人間を虐殺したかっただけで常にその機会を伺っていて、人間の方から
その機会を持って来てくれたと狂喜乱舞した。その結果がこの大虐殺劇である。
もはや小百合は一秒とてその場にいられなかった。一目散にそこから逃げ出した。
どれくらい走ったか解らない。さっきから走ってばかりではないか。自分はいつから
マラソンランナーになったのか。そんなくだらない思考が頭をもたげるようになる。
そして立ち止まり膝をつく。先ほど自分の見た光景がフラッシュバックし、再び吐き気に
襲われるが今度は堪えることが出来た。第4、第5大隊が事実上全滅した、という事実は
今のところ自分しか知らないはずだ。美伽が生きていれば話は別だが。
何とかして残りの3部隊3000人に連絡を取れないものだろうか。そうすれば幾分
勝ちの目は出て来る筈だと小百合は考えた。青木さん、セフィロスさん、カノン君、
ウィルフレドさんやエーリスさんもいる。彼らならば必ず勝利をつかみ取ることが
出来る。そう、彼らは何も出来ずにただ逃げ惑うばかりの自分とは違うのだ。
人間を獣人の支配から解放する為に武器を取り、戦う彼らと自分は仲間…なのだろうか?
えっと…ディケイドみたいなことかな?
>>321 すいません。そもそも「ディケイド」が何なのかがよく分からないものですから。
よろしければ解説していただけないでしょうか?
>>320の続きです
…解らない。彼らは私のことを仲間だと思ってくれているかもしれないが、私には彼らと
共に歩む資格があるのだろうか?いっそのこと全てを投げ出して楽になってしまおうか、
そんな思考が脳を駆け巡るがそれをすぐに払拭する。あの少女の姿をした神様だって言って
いたじゃないか。―あなた達10人が全て揃った時にこそ、この世界を変えることが出来るのだと。
そうだ。私達はその為に誰一人として欠けてはならないのだ。それは他のみんなに対する
最大の裏切り行為に他ならない。逃げ出すなどと一瞬でも考えた自分がすごく恥ずかしかった。
そう、自分は剣を取り戦うことは出来ないだろう。しかし、みんなの為に必ず
出来ることがあるはず。まずはそれを探すことから始めよう。まずは………美伽の捜索だ。
ここはやはり先程の場所に戻り、彼女の生存を信じてその名を呼び続けるしかないだろう。
小百合は小走りで先程の場所に戻り、それを実行に移した。美伽の名を一つ呼ぶごとに
反応がないか確認するために周囲をよく見渡す。たちこめる死臭を懸命に堪えながら
小百合は少しずつ移動しつつそれを何度も何度も繰り返した。しかし、横たわる亡骸達が
呼び掛けに応じる気配は全くなかった。小百合は絶望にうちひしがれた。美伽がいなかった、
という事実もその一因だが何より、生存者が遂に一人も見つからなかったのである。
ここに横たわる2000人は1人残らず虐殺されたのだ。ただ獣人たちの快楽の為だけに。
この光景を他の仲間達が見たらどう思うだろう。青木さんは怒りに我を忘れて獣人を
一人残らず焼き殺してしまうだろう。セフィロスさんはどうだか解らない。実際、私は
彼がどういうタイプの人間かがよく分かっていなかった。ただ第一印象として
落ち着いた人だとは思っていたけれど。
そしてカノン君が怒りや憎しみに我を忘れて暴走するところなど想像も出来ない。
竜崎さんに至っては…そもそもこういう話題に彼を登場させること自体が間違いだ。
ウィルフレドさんとエーリスさんはまだ出会ったばかりでそう軽々しく考えられない。
かく言う私は…ただひたすらに獣人が憎かった。ただ快楽の為にこんなに多くの人々を
鬼畜の所業の上になぶり殺しにした獣人を最後の一人まで狩り尽くしてやりたかった。
獣人という種族そのものと、戦う術を持たぬ自らを小百合は呪った。
そしてその場に跪き、呪詛の言葉を呟く。
「獣人よ…私はお前たちを未来永劫許さない…お前たちをこの世から一人残らず
抹殺出来るのなら私はたとえ悪魔にでもこの魂を捧げよう…」
そして立ち上がり、曇天の空に覆い隠された太陽を見上げる。何故かひどく眩しかった。
まるで神が悪魔に魂を捧げると口にした自分を睨み付けているようにさえ感じられた。
その刹那、足音が聞こえた。振り向くと、獣人の大軍勢にすっかり包囲されていた。
何故気付かなかったのだろう。獣は獲物を確実に仕留める為に気配を消して近寄り、
そして一気に襲いかかり、一瞬のうちに獲物を仕留め食事にありつくと言うが、これだけの大人数だ。
…なるほど、獣人として知恵を身につけた結果がこれだという訳だ。小百合は苦笑した。
獣人を呪い、半ば自暴自棄になった小百合は獣人の軍勢に対して言い放った。
「アハハハハ…虐殺はさぞかし楽しかったでしょうねぇ…それで何の用?私を殺しに来たの?
これだけやっておきながらまだ足りないだなんて贅沢にも程があると思うけど?」
すいません、読んでる人がいたら挙手をお願いします。
ノ
このスレは毎日チェックしてるよ
326 :
創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:20:19 ID:cmpDOVVG
>>322 横槍すいませんでした
私の幼稚な理解力では追いつくのが難しかったので…
「ディケイド」は、仮面ライダーでした^^;
あとここは暇さえあれば確認しとります
>>327 ありがとうございます。仮面ライダーだったんですね。僕もクウガとアギトは見てました。
基本的に火曜と日曜以外は毎日更新するのでたまには感想も落としていただけると励みになります。
>>323の続き
すると獣人たちは一斉に笑いの渦に包まれる。売れない芸人が見たら羨ましがる程に。
小百合には何故彼らが笑ったのかが皆目理解出来なかった。私は冗談など言っていない。
真剣そのものだ。やがて笑いも収まり、獣人舞台の隊長らしき見るからに傲慢そうな
男が口を開く。小百合の予想通り、ひどく傲慢な口調で。
「女ァ…さっきから何かを鳴きながら探しているようだがその探し物はコレのことか?」
そしてその獣人の男は自らの後ろに手を伸ばし、それを小百合に見せつけた。
その瞬間、小百合は凍り付いた。男が見せたのはボロボロに痛め付けられた美伽の姿だった。
彼女の綺麗に纏めたポニーテールを男は鷲掴みにして持ち上げていた。しかも、
服までズタズタにされ、ほぼ全裸に近い状態だった。
「秋山さん!?…獣人、彼女を放しなさい!今すぐ!」
しかし小百合のこの言葉も獣人たちの失笑を買うだけだった。そして再び男が口を開く。
「女ァ…人間ごときが誰に口を聞いているか理解出来ていないようだな。まあいい。その無礼は
あとでたっぷり払わせてやるとして、冥土の土産に一ついいことを教えてやろう。
この小娘の末路についてだが…」
そして男は耳を疑うようなことを口にする。ブタ師のディナーとしてその食卓に
乗せられるのだ。ブタ師は美伽のような少女の肉を最も好むのだという。
「さて話はここまでだ。さて、覚悟は出来たか?まあ出来ていなくともやってやるのだが。クククッ…」
そして男が言い終わると同時に小百合は四方から獣人の鋭利な爪によって串刺しにされていた。
「…ッア…!」
声にならない叫びをあげて小百合は鮮血を吐く。そして、爪が引き抜かれると同時に
血が吹き出し、小百合はその場に仰向けに倒れる。朦朧とする意識の中、小百合は呟いた。
「ご、めんね…秋山、さん…あなた、を…守れ、なかっ、た…」
そして、世界が暗くなる。完全な闇に包まれた。
―女。……私を呼ぶ声が何処からともなく聞こえる。その声はどんどん大きくなって来る。
そしてその声は恐ろしくおぞましかった。そしてまた一言、その声の主が話しかける。
―獣人を滅ぼしたいか?この声の主は何者なのだろう。そう考えつつも小百合は
はい、と返事をする。すると今度は美しい男の声が聞こえる。
―その為には悪魔にでも魂を捧げようってさっき言っていたけど、その気持ちは今も変わらないかい?
まるで少年のような明るくも美しい声だった。思わず聞き惚れてしまったが小百合は
「今も変わらない」と返事をする。するとその声は満足したような声で返す。
―なら、キミの魂はボクが受け取るよ。その代わりボクの力をキミに貸してあげよう。
…力?力って何?小百合はその声の主に聞き返す。
「あの、貴方は何者なんですか?」
そして、その声の主はフフフ…と笑い、話し始めるのだった。
「ボクの名はルシフェル。キミをこの世界に召還した神様の知り合いさ。と、言っても
仲はあんまりよくないんだけどね」
そしてルシフェルは長々と語り出す。ルシフェルによれば、自分たちを召還し世界を変えよう
と試みている神に興味を持ち、その達成の為に必要不可欠な小百合が死ぬのは
神にとっても自分にとっても不都合であり、だからこそ小百合を助けたのだという。
「あの…ありがとうございます…」
小百合はルシフェルに礼を言う。そんな小百合にルシフェルは苦笑しながら返事をする。
「お礼なんていらないさ。キミの魂もさっき受け取ったし。おっと、忘れてたよ。これがボクの力さ…」
その刹那、小百合の胸の中に温かい何かが生まれた。恐らくはこれが力の源なのだろう。
そしてルシフェルは再び語り出す。その力を使いたい時はただ使いたいと思うだけでいい。
まどろっこしい呪文の詠唱も何も一切必要ない。最後にルシフェルは一言付け加える。
「さあ、後はキミ次第だよ。頑張っておいで。ボクはいつでもキミの味方だから。フフフ…」
そして再び意識が遠くなる。気がつくとついさっきまで小百合が倒れていた場所だった。
不思議なことに、致命傷を負わされたはずの腹部に痛みは全くなかった。擦って見ると、
…傷がなかった。まるで最初からそんな傷などなかったと言われているようだった。
目を開いて、空を見る。相変わらずの曇天模様だ。横を見ると、先程自分を殺した獣人が
歩いて行くのが見えた。先程の時間から15秒程しか経っていないようだった。
そして、目を再び開いた小百合に気付いていないのだろう。これは小百合にとってチャンスだった。
力を使う前に奇襲を受けては堪らないからだ。これなら確実に力を使うことが出来る―!
四肢に力がみなぎる。そして小百合は起き上がる。獣人たちはひどく驚いている。無理もない。
あの状態で生きていられるはずがない。それに何故傷がふさがっているのだ。あり得ない。
そんな思考が、獣人たちの頭の中を駆け巡った。そして再びあの男が叫ぶ。今度は
傲慢さなど微塵も感じられずただひどく動揺している様子が見て取れた。
「おい!何してる!生きてんじゃねぇか!もう一度殺れ!今すぐだ!」
その声と同時に先程小百合を殺した獣人が舞い戻る。再び小百合の息の根を止めるために。
―だが、獣人のずば抜けたその走るスピードも小百合の力の発動を阻止するためには余りに遅かった。
「待っててね秋山さん。今度こそあなたを助け出して見せるから…!」
そして小百合は目を閉じて、瞑想する。その刹那、彼女の体は黒い光に包まれる。
金色の髪は漆黒に染まり更に後ろ髪は地面につく程に長くなる。元のショートヘアーは見る影もない。
手の10本の指はさながら脇刺のように長く細くなる。そして小百合の白い上着と
同じく白い長ズボンは完全に漆黒に染まっていた。だがしかし、今の彼女の姿で
一番目を引くのは、背中から大きな翼が6枚ずつ左右対象に伸びていることだった。
その翼はまさしく天使の翼だった。…漆黒に染められてさえいなければ。
その美しい姿に獣人たちはただただ息を飲むしかなかった。そして彼らの獣としての
勘が自らを警告する。死にたくなければ逃げろと。しかし、獣人が人間ごときに
背中を向け、尻尾を巻いて逃げたとなれば間違なく末代までの恥だ。そんなくだらないプライドの
為に彼らは逃走という選択肢を思考の中から払拭した。そしてその瞬間、彼らの運命は決まったのだった。
「怯えるな!少しくらい姿が変わったところでどうと言うことはない!我ら獣人の力を奴に見せつけてやるのだっ…!?」
男が言い終わるのと、小百合がその首を切り落としたのはほぼ同時だった。
12の翼で、瞬時に男の元まで移動しその長い指を刃に変えることで首を一瞬で切り落としたのだった。
そして、切断された体の断面から大量の血液が吹き出し、小百合はそれを浴びた。
「汚らわしい…」
冷酷非情な声でただ一言そう呟き、小百合はその男の首の無くなった体に掌を当てる。
その刹那、男の肉体は粉々に砕け散り、消滅した。支えを失い、倒れて来た美伽の身体を小百合は
優しく受け止め、まだ息があることを確認すると、ぎゅっと抱き締めた。
そして彼女を抱いたまま、空高く飛び上がる。上空から美伽を安全な場所に避難させることが
出来る箇所を探す。それはすぐに見つかった。小百合が入って来た南東の門のすぐそばには、
時計塔があり、その時計盤の隣には制御室らしき部屋へと続く扉があった。
そこに美伽を寝かせておけばいい。先程抱き締めた時に小百合は自分の気を少し
美伽に送り込んだので死ぬ心配はない。小百合は戦闘機も真っ青のスピードで空を飛び、
ものの2秒で時計塔の前へとたどり着いた。そして制御室へと続く扉のノブに手を掛ける。
案の定鍵がかかっていたが、小百合は少しも動じる事なく扉そのものに掌を当てる。
あの獣人の男と同じように扉も粉々に砕け散った。そしてやはりその中は時計の制御室で、
無数の歯車が時計を動かすために駆動していた。小百合はその歯車から出来るだけ
離れた位置に美伽を寝かせ、髪を撫でた。そして再び翼を広げて、奴らのもとに舞い戻る。
わざと獣人たちに包囲される形になる場所に降り立ち、冷酷非情に宣告する。
「お前たちはここで滅びる。これは神の与えた定めだ。甘受するがいい。せめて苦しまぬように導いてやろう…」
そして、両手を真横に広げ、大きな光の塊を生み出す。更に上空へと舞い上がり、それを
組み合わせて一気に地面に叩き付けた。地面に衝突すると同時にその四方200mほどが閃光に包まれる。
やがて光も消え去り、辺りが見渡せるようになった時、獣人たちは一人残らず…消滅していた。
無表情でそれを見つめる小百合。彼女がこの時何を思っていたかは知る由もない。
ただ確かなのは、これで虐殺された人々も、たとえほんの少しであろうと浮かばれた、ということだ。
そして再び時計塔へ向かい、美伽を抱きかかえて地上へと舞い戻り、元の姿に戻る。
―淳子の第1大隊が現場に到着したのはその5分後だった。到着するなり、第1大隊のメンバーは
目を疑った。虐殺された第4、第5大隊のメンバーの亡骸を目にし、ただ呆然と立ちつくすしかなかった。
そして、これだけの虐殺劇を演じたであろう敵、恐らく獣人の姿も何処かへ消えていた。
2000人もの人間を虐殺したのだ。かなりの大部隊に違いない。故にそうそう隠れることなど
出来るはずがない。下手をすればそいつらに奇襲を受ける危険もある。淳子はそう考えていた。
その時、淳子は亡骸の山の向こうに立ちつくす人影を見つけた。あの人なら何か知っているはず。
淳子、セフィロス、カノン、そしてセフィリアは亡骸を踏まぬよう僅かな隙間を縫って
その人影に近付いた。見るとそれは…上条先生だった。しかもその足下には傷だらけの美伽が倒れていた。
「上条先生!」
淳子が呼び掛ける。すると彼女はこちらを振り向き、手を振り返す。淳子たち4人は
亡骸の山を通り越し、駆け足で彼女の元へ向かった。そして、そこにたどり着く。
倒れている美伽の息を確認し、安堵の息をつく淳子。そして泣きそうな声で小百合に話しかける。
「よかった…二人とも生きていて…それで美伽さんは大丈夫なの?」
小百合は少し疲れた声で答える。
「ええ…応急処置を施しましたから…ところで…見ない方がいるようですが…」
はっとした顔で淳子は返事をする。
「あ、ごめんなさい。この人はセフィリアさん。人間を大切に思う貴重な獣人よ」
人間を大切にする?そんな獣人は確かに貴重だろう。だが、小百合から見れば彼女もまた
ただの獣人でしかないのだ。そして獣人は最後の一人まで…排除。自分の内に宿す
力の源がコイツを殺せと命令する。小百合はそれを必死に押さえ付けた。脂汗が額に滲む。
そんな小百合の様子を不審に思ったセフィロスが声を掛ける。
「小百合、具合でも悪いのか?汗がひどいようだが…」
小百合は冷静さを保とうと息を落ち着かせて返事をする。が、どうしても途切れ途切れになってしまう。
「え、ええ…大丈夫…です…こんなに…たくさんの…人の…死を…目の当たりに…したものですから…」
その瞬間4人は全く同じことを思った。彼女は自分とは違う普通の人間だ。
きっと今まで人の死に殆ど関わって来なかったのだろう。そこへこの亡骸の山だ。
彼女がこんな状態になるのは言ってみれば人間として当然の事なのかも知れないと。
そして小百合はセフィリアに問い掛ける。その解答次第によっては彼女の首も切り落とすつもりだ。
「セフィリアさん…あなたは…この人達を虐殺した…獣人とは違う…そう受け取っていいですか…?」
「もちろんだ。私は決して人間を殺したりはしない。それがこの30年に対する私なりの償いだ」
その言葉を聞き、小百合は心の底から安堵する。これでようやく内なる力を押さえられる。
そして、再び息を整え、セフィリアに自己紹介する。今度は途切れることはなかった。
「初めまして、セフィリアさん。私は上条小百合と申します。孤児院で子供たちに
勉強を教える教師を勤めています。これからよろしくお願いしますね」
そして、右手を差し出し、握手をセフィリアに求める。それに応じるセフィリア。
二人の右手が、しっかりと結ばれる。小百合はもう一つ信念を持っていた。
それは、握手を交わした相手を未来永劫信頼し続ける、と言うものだった。そして小百合が
この信念に基づいて握手をしたのはセフィリアの他には秋山美伽だけだった。
先程の呪詛とは相反するが、小百合にとってセフィリアはもはや獣人ではなかった。
ルシフェルに対する言い訳かも知れないが、そう思うことによって小百合は
内なる力を押さえ付けることが出来た。
「あの、それで青木さん。ウィルさんや竜崎さんたちはどうされました?」
思い出したように小百合が切り出す。それを聞き、淳子はハトが豆鉄砲を食らったように
電話を掛ける。それを見て、同じく小百合も豆鉄砲を食らったような顔になる。
携帯電話!なんであれを使って美伽に連絡を取らなかったのだろう。…いや、あの奇襲では
正常な思考など出来るはずもない。ただ逃げ惑うしかなかった。まあいい。過ぎたことだ。
小百合は懐から携帯電話を取り出し、使えるかどうかを確認する。…問題ない。
などと小百合が考えているうちに、淳子は連絡を終わらせていた。
「ウィルさんと竜崎さんに現在位置を伝えておいたわ。5分程でつけるそうよ。
上条先生にはみんなが到着したら色々とお話を聞かせてもらうわ」
今聞かないのは、同じことを二度も話す事のないようにするための淳子の配慮だった。
小百合にも彼女のその細やかな優しさはしっかりと伝わり、思わず笑みがこぼれる。
そして5分後、第2、第3大隊が現場に到着する。そして皆一様にその目を疑う。
中には泣き崩れる者もあった。恐らく、家族や友人がいたのだろう。
「…なんなんだよこれ…軍の連中、前々から非道な奴らだとは思ってたけどいくらなんでも
やり過ぎだろ!やって言い事と悪い事の区別もついてねぇのかよ!チクショウ!」
反乱軍のリーダーで獣人でもあるガーランドはその場で我を忘れて怒り狂う。
怒りのあまり辺り構わず暴れ回るので、残りの4人が必死に取り押さえた。
そしてその亡骸の山を無表情で見つめる男が一人。竜崎だ。
突然ですがここでオーディエンスの皆さんに意見を聞きたいと思います。
このまま3000人で解放まで突っ走るのか
虐殺に怯えた人間たちに失望して主人公達だけで行くのかどちらの展開を希望しますか?
中間の「怯えなかった人間たちだけ付いてこさせる」で
>>334 その考えはいいですね。ではそれで行きます。貴重な御意見ありがとうございます。
彼がこの2000人の亡骸を目の当たりにして何を思ったのか知る由もない。ただ、少し考えれば分かることかも知れないが。
そして竜崎が何かを語ろうと口を開きかけたその時、皆に話し始める女性がいた。青木淳子だ。
「この周りの建物、随分汚れてるけど住んでいるのは人間でしょう?
こんなに非道い殺され方だもの。悲鳴はこの世のものとも思えなかったでしょうね。
みんな、私の言いたいことは、解るわよね…?」
淳子が言いたいのは、虐殺される人間たちをただ見殺しにしたこのスラムの人間も
獣人とそんなに変わらない、ということだ。ただ、死の恐怖に怯え行動を起こせない気持ちは
淳子にはよく解る。淳子がこれまで手にかけて来た悪人たちも殺される直前、卑屈なまでに
彼女に命乞いをして来たからだ。もちろん淳子は聞く耳も持たずその全てを葬り去って来たのだが。
7人の間に重い空気が流れ、しばらくの沈黙が訪れる。淳子は目を泳がせて過去を振り返り、
セフィロス、竜崎は無表情のまま立ち尽くす。カノンは小百合と共に美伽の容態を気にかける。
ウィルとエーリスは何処か悟ったような表情をしていた。そして、その重苦しい沈黙を破る男が一人。竜崎だった。
「みなさん、ここで私達が考えるべきはこの解放軍の今後についてです。非常に残念ですが
この惨状によってメンバーの士気は激減したでしょうよって…ここでメンバー全員にあることを問う必要があります」
そのあることとは…これからも死を恐れずに自らを支配から解放するために戦う意思があるかどうかだ。
竜崎はガーランドにそれを耳打ちし、3000人に伝えてもらうよう頼んだ。
彼はまだ怒りが収まらないのか震えていたが、たとえ傀儡であろうともリーダーの役目を忘れてはいなかった。
3000人を集合させ、怒りに震える声を落ち着かせて皆の前で話し始める。
「あー、みんな…これを見て思うところは多々あるだろうな…実際俺もマジギレしちまったし…
だから…ここでみんなに問いたいんだ」
そしてガーランドは問う。これからも死を恐れずに人間を支配から解放するために
戦う意思があるかどうかを。戦う意思があるならついて来てくれればいい。ないならば
そのままヴァンゲリオ市に帰ってもいい。言うまでもないがこれは完全に個人の自由意思
であり、たとえ引き下がろうとも何人たりともそれを咎めることは出来ないということだ。そしてガーランドはその決断を一人一人に下してもらうために10分の時間を与えた。
そして、何も言わず、話さず、語らず、口にせず考え込むメンバーたち。彼らの頭の中では
様々な思いが交錯していた。自分達のかけがえのない家族、友人の命をこれ以上ないほど
残虐なやり方で奪われたのだ。当然復讐してやりたい気持ちはある。そして、怒り、憎しみは
人を何倍にも強くする。悲しいことだが。しかし一方で、心の中で死にたくないと弱音を吐く
自分がいるということもまた事実だった。命あっての物種という言葉があるように。
彼らの間にも重い空気が流れる。たった10分で決められる問題ではないのかもしれない。
しかし、今決めなければならないことだ。彼らは人間の解放と自分の命を天秤にかけ、
今まさに振れているその針が止まるのを待ち、その目盛を読んでいるところだ。
さて、解放軍メンバーが苦渋の決断に苛まれている時、7人は周囲を偵察していた。
竜崎は獣人たちはもうこの世に存在しないと推測したが、それは証明されて初めて真実となる。
その証明のために彼らは今、探索しているのだ。生き残った彼らを志半ばで倒れた英雄たちと
同じ道
を歩ませる訳にはいかない。
さて、偵察のグループ分けだが美伽が負傷中のために現在は7人で、2人組で行動すると
一人端数が出る。そのため一組は3人組とならざるを得なかった。
効率よりも安全を重視した竜崎の判断だ。ちなみにその概要は、
セフィロス・小百合、淳子・ウィルフレド、カノン・エーリス・竜崎、という内容だった。
小百合は戦えないためにいざという時最も戦闘に長けているセフィロスがいれば心強い。
これも竜崎の判断だ。実際は全く逆なのだが。そして、3組はそれぞれ別の場所へと向かって行く。
小百合は男性恐怖症の節があるのか何処かぎこちなく歩いていた。そんな様子を
セフィロスは不審に思い、そのついでに小百合に対する疑問を打ち明けた。
「…小百合、先程から様子がおかしいようだが…果たして何があった?」
セフィロスは、いくら小百合が必死に逃げたといっても相手は身体能力では通常の人間より
遥かに上回る獣人であり、そうそう逃げおおせるものでもなく、仮にそうだとしても
獣人たちが消滅したのに小百合だけが健在なのは竜崎の推測である、超自然的な力が働いたとするならば不自然であると指摘した。
そして、真直ぐに小百合を見つめるセフィロス。小百合はそんな彼と目を合わすことが
出来ずにただ目を泳がせている。しかし、この状況でセフィロスの問いから逃れられる
合理的な解答を小百合は持ち合わせてはいなかった。しかも、ここでもし曖昧な返事を返したら
恐らくセフィロスは落胆するだろう。そうすればもう彼とは…いや、皆と仲間でいられなくなる。
そんな気がしてならなかった。小百合は唇を噛み、何かを考えていたがやがて深い溜め息をつき
セフィロスに打ち明け話を始めるのだった。自分が一度殺され、精神世界でルシフェルと
名乗る少年から力を授かり、その力を使い殺戮の天使と化して獣人を裁きの光で浄化した、と。
全てを暴露し、吹っ切れたのかそれとも自暴自棄になったのか、小百合は笑いながら言った。
「アハハ…これがその殺戮の天使の姿よ…」
そして、黒い光に包まれ、殺戮の天使へと姿を変える小百合。
その姿を見て、セフィロスはしばらくの間黙っていたが、やがてその口を開く。
「…小百合。その姿のまま聞いてくれ。お前はその力をどう使うつもりなのだ?」
殺戮の天使は答える。冷酷な声で。獣人たちに対してもそうだったように。
「決まっている。私の大切な仲間たちを守るためだ」
どうやらこの姿になると性格まで変わるらしい。泳がせていた目は今やセフィロスを
キッと睨み付けていた。しかし彼はその冷たい眼光に眉一つ動かさず、天使に言い返すのだった。
「それを聞いて安心した。もしお前が全てを破壊するためなどと言ったら、私はお前を斬り捨てていたからな」
そしてセフィロスは語る。力とはその使い方により意味を大きく変えるものだと。小百合が誰かを守りたいと思い続ける限り、決してその力に取り込まれたりすることはないと。
そしてセフィロスは、最後に一つ付け加える。
「決して私のようになるな。お前なら、憎しみに打ち勝てるはずだ…」
天使には彼の最後のその言葉がよく理解出来なかったが、睨み付けたその鋭い眼光は
穏やかなものとなり、いつもの小百合のものである。そしてため息をつき、セフィロスに言った。
「ありがとう…」
天使のその言葉にただ無言で頷くセフィロス。そして天使は彼の胸元へ飛び込み、抱きついた。
普段の彼ならば突き放している所だが、今は天使の自由にさせた。二人の間に穏やかな時が流れる。
やがて天使は元の姿へと戻り、顔を赤らめた小百合はセフィロスに一つお願いをするのだった。
「あの、セフィロスさん…私の力の件については他のみんなには…」
その願いに無言で頷くセフィロス。安心したのか溜め息をつく小百合。
そろそろガーランドの設けた10分が経とうとしていた。結局獣人はいなかった。
小百合が、いや、殺戮の天使が全てを無に帰してしまった。これを救済委員会はどう受け止めるのだろうか。
しかし、今はそんなことを気にして
いても仕方がない。2人は集合場所へ向けて歩き出そうとした…
まさにその時、背後に何者かの気配を察知したセフィロスは正宗を手に取り、構えた。
そこにいたのは、黒ずくめの服に身を包み、金色の長髪をたなびかせ、ハットを手に携えた男と
漆黒の兜鎧に身を包み巨大な剣を携えた男だった。
セフィロスはその2人組から小百合を守るようにして立ちはだかる。セフィロスの見立てでは
この2人組はかなりの手慣れであり、小百合を守りながら戦うのであればかなり分が悪かった。
そんな時、金髪の男が第一声を発する。その声には少なくとも敵意はこもってはいなかった。
「俺達はお前と剣を交える気はない。取りあえず刀を収めてくれないか。話はそこからだ」
セフィロスはあったばかり、しかも不審人物の言うことなど信用するものではないと考えたが、
謎の男の言うとおりにしなければ話が進みそうにない。それに無視して立ち去ろうとして背後から
切り付けられる可能性も十二分にある。セフィロスは素直に刀を収めた。
それを確認し、金髪の男は再び話し始める。
「さすが、伝説の英雄。話が早い。さて、自己紹介しなくてはいけないな。
俺はユーバー。んで、こっちが…」
ユーバーと名乗る男に親指で指された兜鎧の男はただ一言、
「ペシュメルガだ…」
と名乗った。ユーバーはそんなペシュメルガの素っ気なさを鼻で笑い、語り始める。
自分たちはセフィロスたちをこの世界に召還した神の従者であり、これからの旅に戦力として
同行するように指示されたと言う。ここでセフィロスは考えた。
今、解放軍メンバーは部隊を離れるかどうかを考えている最中だが、恐らく半数の1500人は
離脱してしまうだろう。それは今後の戦いが更に苦しくなることを意味していた。
それならば戦力は少しでも多い方がいい。考えた末に、セフィロスは2人を迎え入れることにした。
「そうこないとな。さて、もうすぐ時間だろう?集合場所に急がなくていいのか?」
ユーバーのその言葉にセフィロスはただ一言返事を返し、踵を返して小百合と共に集合場所へと向かうのだった。
そして、それを追従するユーバーとペシュメルガ。ところが、歩いている最中、セフィロスは妙なことに気付く。
後ろの二人の気配は確かにし、振り向くとユーバーは不思議そうに首を傾げおどけて見せるのだが
足音が全くしないのだ。もちろん、足音を立てぬよう歩く訓練をすればそれは可能だが、
ペシュメルガが身に着けているのは重い兜鎧であり、いかに訓練しようとも
足音を立てずに歩くなど不可能なはずなのだ。少なくとも、人間ではない。いや、神の従者だという時点でそれは解りきったことなのだが。
それに、何故今になって従者など使わすのだろう。神の話では神自らが召還した10人が揃って
初めて世界を変えられる、それは即ち、これから先の困難を自分達の力で乗り切ることにこそ
意味があるということだ。そこへ従者など送り込んだのではその意味がなくなってしまうのではないか。
神は一体何を考えているのか。そうセフィロスがそう思考を巡らせていると、
死者の死臭が鼻をつく。いつの間にか集合場所にたどり着いていた。
どうやら自分達が一番最後だったらしく、偵察に出た他のメンバーはすでに揃っていた。
そして、解放軍メンバーも一人一人残るのか帰るのか決まったようだったが、
生きたメンバーを残すのか帰すのか議論する前にまずはこの死者たちを弔うのが
先決ではないのか?これでは彼等が余りに気の毒だ。これから先の旅路で化けて出て来ても
全くおかしくない。セフィロスは竜崎にその旨を伝える。すると竜崎は少し驚いた様子で答えた。
「失礼なことを言いますがあなたの口からそんな言葉が聞けるとは思いませんでした」
セフィロスはその
竜崎の言葉に別に怒りを顕にするでもなく、ただ鼻で笑って受け流した。
「私のことなどどうでもいい。今私が話したことに関してお前がどう考えたのかを聞かせてもらおう」
「私もあなたの言うとおりだと思います。ちょうど皆さんの考えもまとまったようですし」
といって竜崎はガーランドの元へ歩き、彼に何かを耳打ちする。
そしてその竜崎の言葉に頷き、一同に語り出す。
「考えがまとまったようだけど、ここで忘れちゃいけないことが一つある。彼らの弔いだ」
ガーランドは未だ道に横たわる亡骸たちの方を向く。一同もそれに同調する。
さて、問題なのはその方法だ。竜崎は埋葬が一番だろうと考えたが2000もの亡骸だ。
3000人で墓穴を掘るといっても結構な時間がかかる。そもそも、どこに墓穴を掘るのか。
この市周辺の平原に墓地を作るという手もあるが間違なく獣人たちに蹂躙されるだろう。
もっとも、たとえ蔑んでいる人間であろうと死者であり、墓地を蹂躙するなど死者への冒涜
以外の何物でもなく、神をも恐れぬ者の所業なのだが、傲慢な獣人たちならやりかねない。
かと言って、彼らの故郷ヴァンゲリオ市まで彼らの亡骸を運ぶとなると途方もない時間がかかり、
そしてその時間のうちに新たな軍がトルベルア市に配備されてしまうだろう。
そうなれば彼らは完全に犬死にだ。竜崎の天才的頭脳をもってしてもこの問題は
解決出来そうになかった。そもそも、普通に暮らしていれば考える必要すらないのだから。
竜崎は親指の爪を噛む。彼は考えに行き詰った時に爪を噛む癖があるのだ。
そんな時、小百合が彼に声を掛けた。何故か妙に先生らしい口調だった。
「竜崎さん。あなた一人でなんでも考え込まないで」彼女は語り続ける。確かに私達は竜崎のその
知恵を頼りにしている。でも、三人よれば文殊の知恵という言葉があるように、
ここにいるみんな、青木淳子、カノン・ヒルベルト、セフィロス、ウィルフレド、エーリス、竜崎、そして自分、
今は傷を負い倒れているが、美伽がいる。一人が困難に直面した時は全員でそれを乗り越える。
「それが、『チーム』というものだと思いますよ、竜崎さん」
小百合は最後にそう締めくくった。それに対し竜崎は言った。右手を差し出して。
「では、今更ですが改めてお願いします。皆さんの力を私に貸してくださいそして私の力が必要な時はいつでもこの手を差し延べましょう」その竜崎の言葉にまず一番最初に彼の右手に自らの右手を重ねたのは、小百合だった。
続いて淳子、カノン、ウィルフレド、セフィロス、エーリスの順にその右手を重ねて行く。
そして、竜崎が呟くように6人に語る。
「ここで散った多くの英雄たちの死を無駄にしないよう私達は最後まで戦いましょう。正義は必ず勝ちます」
竜崎のその言葉に、ただ無言で頷く一同。そして、先程とは逆の順番でその右手をよけて行く。
本題だが、この2000人の亡骸はどうすれば永遠の安息につくことが出来るのか、ということだが、
先程から自分たちをほっといて盛り上がっている7人にかなりの苛立ちを覚えている
男が一人いた。ユーバーだ。苛立ちから凄まじい殺気を放ち、その殺気を感知したセフィロスが
小百合に耳打ちする。あの2人のことを皆に話せと。小百合はそれに対して別に反発するでもなく、
ユーバーとペシュメルガが加わった経緯と彼らの紹介を一同に済ませた。
5人はその話を疑うこともなく、2人を迎え入れた。ただ一人、エーリスだけが
何故か微笑みを浮かべ、ユーバーとペシュメルガも彼女を見て何か感じ取ったようだった。
そしてユーバーはエーリス
の元に歩み寄り、耳元で囁いた。神の従者とは思えぬおぞましい声で。
「こんなところで冥界の番犬に出会えるとは思わなかったよ。その姿じゃ不便も多いだろうがな」
エーリスはその言葉に笑みを消し、凶悪な目付きでユーバーを睨み付ける。そして彼に言い返す。
「余計なお世話です。地上で過ごすにはこの姿のほうが都合がいいものですから」
「だろうな。まあ、精々頑張ることだ。冥界の女王のペットさんよ」
エーリスは何も言い換えせずにただ唇を噛むしかなかった。呼吸も荒くなり、握った拳に爪が食い込む。
ユーバーに罵倒されたのがよほど悔しかったようだ。
そして、そのエーリスの異変を察知したウィルフレドが彼女の元へと駆け寄る。
「大丈夫かエーリス?今あの金髪に何か言われてたみたいだけど、気にするなんてお前らしくもない」
「ええ、大丈夫です…ご心配をおかけしました…ウィルフレド様…」
そういって立ち上がるエーリス。まだ少し息が荒い。しかし、罵倒されただけでそんなに息を荒くするものだろうか。
エーリスがこんな状態になったのにはもっと別のところに原因があるのではないかとウィルは勘ぐった。
だが、それについて考えていても始まらない。ウィルはその細やかな疑念を頭の片隅に
しまい込んだ。出来れば、その記憶の引き出しが再び開かれることのないよう祈ろう。
彼はひたすらそう思った。そんな時、かの金髪が再び口を開く。今度は澄んだ綺麗な声だった。
「それでこの亡骸をどうするのか考えはまとまったのか?そうじゃないなら俺に考えがあるんだが」
そのユーバーの自信満々の言葉に一同は訝しげな視線を彼に送るが結局のところ
考えが何らまとまっていないのは事実であり、ひとまずは彼の話を聞くことにした。
荒唐無稽な内容であれば軽く受け流せばいい。一同はそう考えていた。そして竜崎が
その考えとやらを話すようにユーバーに促した。それを受けて語り出すユーバー。
自分達は神の従者であると同時に魂の導き手でもあり、戦争後に野晒しになった多くの人間達の魂を
神の代行者として天国、或いは地獄に導く役割を担っていると言うのだ。
そしてその際、亡骸は跡形もなく消滅する。俄かには信じがたい話だが、賭けてみる価値はあった。
竜崎は彼に死者たちを天国へ導くよう依頼した。それに対してユーバーは何故か一瞬ニヤリと笑い、頷いた。
彼は懐から筆のようなものを取り出すと、それで亡骸の山を囲むように石畳の上に
見えない線を描いて行く。そして亡骸たちは彼の描いた見えない囲いに覆われた。
彼らを昇天させる準備が出来たようだ。彼は最後に一言付け加えた。邪な笑みを浮かべて。
「じゃあ始めるが…目を閉じていることだ。あいつらと同じように天国に行きたくなければな」
彼の話ではどうやら彼の行う儀式を目にしてしまうと魂を吸い取られると言うのだ。
その儀式をみることのメリットがほとんど存在しないということを考えると彼に従ったほうが
無難だと判断し、皆はその瞼を閉じる。ただ、ペシュメルガとエーリスは目を開けたままで
ユーバーもそれをとがめるでもなくただ淡々と儀式を始めるのだった。
竜崎たちは目を閉じているものの耳は生きていて、彼が何か呪文のようなものを
唱えているのは解った。そしてこういう時、人間はその好奇心からつい目を開いてしまうものだ。
青木淳子の元の世界の日本には、「鶴の恩返し」という昔話がある。その話の中でおじいさんがちょっとした
好奇心で戸の隙間から中を覗くと、助けた鶴が自らの羽で織物を織っていて
秘密を知られて
しまった鶴は大空に飛びさってしまった、という話だが、この場合だと飛び去るのは自分達の命であり、
まだ世界を変える方法すら掴んでいないというのにこんな所で小さな好奇心程度のために命を落とすなどシャレにもならない。
6人は固くて瞼を閉じて儀式が終わるのを待った。その刹那、閃光が走る。目を閉じていなければ
確実に眩んでいる強さだった。そして、ユーバーが言った。
「ご苦労だったな。無事に送り届けた。もう目を開けても大丈夫だ」
彼の言葉を受け、目を開く一同。すると、そこには信じられない光景が広がっていた。
つい先程まで、つまるところ竜崎たちが目を閉じる直前、2分程前までは確かにあった
2000人の亡骸が綺麗になくなっているのだ。
しかも、血塗られていたはずの石畳やスラムの壁は何ごともなかったかの如くに
本来の姿のまま自分達の眼前に存在している。まるでここで虐殺劇があったことすら否定するような
状態に竜崎たちはただ息を飲むしかなかった。しかも、竜崎たちがその目を閉じていたのは
わずか2分弱だ。そんな短時間で2000人の亡骸を跡形もなく消滅させることなど出来るはずもない。
神に通じる力を持っていない限りは。彼らは改めてこの2人が神の代行者ということを実感した。
ただ、エーリスは物凄い形相でユーバーを睨み付け、ユーバーはそれに対してニヤリと邪な笑みを返した。
さて、ユーバーの手により彼らが抱えていた問題は解消された。
いよいよ本題だ。3000人一人一人に己の意思で導き出した答えを問う時がやって来た。
「みんな、待たせたな。弔いも無事…かどうかはわかんねえけど終わったみたいだし、いよいよみんなに
答えを聞きたいと思うんだ」
そして右手をあげるガーランド、残るならば右。右手を降ろし続いて左手をあげる。
去るならば左。二つに一つだ。ガーランドは最後にこう締めくくる。
「さあ、みんなの答えを聞かせてくれ」
そして、自ら出した回答を彼に示す解放軍メンバーたち。その結果は…
右、つまり残留が1000人。左、帰還が2000人。この結果を見て憎まれ口を叩く男が一人。ウィルフレドだった。
「臆病者に用はない。ここは残った1000人の勇気を称えよう」
彼のその言葉に、エーリスを除く5人全員が彼を睨み付けた。その態度にウィルは舌打ちし、そっぽをむく。
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創る名無しに見る名無し:2009/10/29(木) 10:48:36 ID:1QZ6iiOA
岡田外務大臣キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
http://qb5.2ch.net/test/read.cgi/saku2ch/1256630318/1
早く記念カキコしないと埋まっちゃうwww
test