【今こそ】オリジナルヒーロー小説【変身】

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74 ◆MZ/3G8QnIE
遥か上空、超高層ビルの最上階のテラス。
デッキチェアに腰掛け、街を見下ろす一人の少女。
真っ白な髪を左右で二つに結い、フリルのついた少女趣味の服装をした、子供っぽい容貌。
その貌には、どこか大人びた、と言うより老成した憂いの表情が浮かんでいる。
突然傍らのノートパソコンの電源が自動的に入り、何者からかの通信が繋がった。
鹿の頭蓋骨を模した仮面の姿がモニタ上に浮かぶ。
『教祖様』
少女は視線だけ画面に向けた。
『ツカダ司教殿が聖務の途中でネフェシェの妨害に遭遇、彼女により滅ぼされたようです』
「そう」
少女は無関心げに一言だけ応える。
モニタ上の人物が一礼すると、再びノートパソコンが自動的に切れた。
静寂がテラスを包む。
冷たい風が吹き抜けた。
「御姉様……」
少女は立ち上がり、テラスの柵に手をかける。
「さあ、……早く全てを想い出して……、私の元へいらっしゃい……。
そして、その時こそ……、私達は再び一つに結ばれ、宇宙に完全なる終焉をもたらすのよ……!」
強い一凪の風が流れ、少女の髪が鳥の翼の様に広がる。
その口元には酷薄げな笑みが浮かんでいた。


工場と倉庫が立ち並び、人通りのない休日の湾岸地域。
漆黒の大型二輪を駆る仮面の人物がその一角で停車した。
腕に装着されたデジタルウォッチ型端末を操作すると、人物バイク共に戦闘状態を解除し、通常モードに変化。
脱皮の様に外殻が割れ、光の粒子となって消える。
現れる切れ長の目とおかっぱ頭。
丙沙名は緊張状態から開放され、長い溜息をついた。
目の前にかざした右手の平をじっと見つめる。
「ネフェシェ……、それが、私の名前?
彼らは私のことを、知っている?」
だが、そんなことは関係ない。
沙名はぐっと右手を握り締めた。
今の自分は丙沙名だ。
昔の自分が何者であれ、彼らが人々の命を理不尽に奪うと言うのならば。
「私は、戦う」
沙名は握り拳を宙に掲げ、陸の方へと突き出した。
その向こうには、人々が生き、それを狙う悪が暗躍する東京の街並みが存在する。
そこで生きる為、沙名は再びバイクに跨り、一直線に走り出した。