【今こそ】オリジナルヒーロー小説【変身】

このエントリーをはてなブックマークに追加
524ネメシス ◆z87r6N2.xY
 その六十数年前、工事現場はコブラ男の恐怖にさらされていた。
「貴様らは我らがザラキ天宗の僕となるのだ!逆らう者は…」
 労働者の一人を掴み上げ、毒牙をむく。が、その口腔に石が投げ込まれた。石の主は続いてコブラ男に飛び蹴りを浴びせ、男を逃がす。
「卜部武政…歯向かうか」
 武政は既に理解していた。奴の狙いはカメレオン同様、改造兵士の素体を集める事。そして彼らの組織の名はザラキ天宗。
「んで、その計画に気付いた人をコブラの毒で始末…だろ?」
 武政の乱入に機を見て必死に逃げる労働者達。僅かな隙間を潜って地上に出る者、地下奥深く隠れる者もいる。
 漸く敗戦から立ち直ろうとしている日本の人々を尚も苛むか。武政の中に怒りの炎が湧き、その炎が「鬼の意」を覚醒させる。
 武政は「召鬼」の念珠を取り出した。瞳が紅く輝き、腰に骨盤状のベルトが出現する。
 念珠を握る右拳を高く掲げ、それを腰の位置まで降ろす。
「変身っ!」
 拳を一気に右斜め下へ振るう。ベルト中央の宝玉より、鬼の衝動が変換された力の嵐が生じ、武政を包む。身体中の筋肉組織が異常発達し、それを白く鋭い外骨格が包む。額に新たな知覚器官「第三の目」が生まれ、武政は鬼の姿へ変わる。
「オレね、お前みたいな奴が世界で二番目に嫌いなんだわ」
 言って武政は左腰より「鬼馬」の念珠を取り出し、それをベルトに読ませる。直後、壊れていた筈のバイクが起動。車体各部を武政と同様の生体強化外骨格が覆い、別物へ変わる。そのマシン…スカルレイダーに跨がる武政。
「卜部武政…貴様、何者だ!」
スカルレイダーのバックミラー、足元の割れた硝子に映る自分の姿を見る。
「仮面…ライダー…とかどうだろ?」
 素体のマシンからは考えられないほど鋭く軽快な動きでコブラ男の周囲を跳ね回り、外骨格や車輪をぶつけて直接的なダメージを与えるスカルレイダー。
 更に仮面ライダー自身も車体から飛び出してコブラ男の腹に拳を見舞う。
 吹き飛んだコブラ男とそれを追う仮面ライダー。両者は地上に出る。
「くく…成る程、カメレオンを倒したのは貴様か。それは報告せねばな」
「オレ噂になるの嫌いだし」
 右腕を鞭状に伸ばし襲いかかるコブラ男。仮面ライダーはそれを跳躍でやり過ごし、空中で「鬼神」の念珠をベルトに読み込む。着地と同時に目、ベルトの宝玉、額の第三の目は緑に変色。
 胸の装甲に爪のような部位が生じ、肩角は背後に向かって伸びる。