【今こそ】オリジナルヒーロー小説【変身】

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422ネメシス ◆z87r6N2.xY
 ポーカーフェイスのまま、怒りを表出する武政。その懐から、「召鬼」と記された勾玉…「念珠」が現れる。
 両目が赤く輝き、腰には骨盤状のベルトが出現する。武政の意志に卜部家伝統の、心に巣食う鬼が語りかける。
《壊せ!引き裂け!全てを殺せ!》
 武政はその衝動を全力で抑制する。衝動に身を委せれば眠った男衆全員を八つ裂きにしてしまう。八つ裂きにするのはカメレオン一匹で充分だ。
「とうとう出番ですぜ。見てろ…」
 言葉によって衝動を抑え込む。初の実戦にはやる心で鬼の意志が爆発しそうだが、念珠を握った右拳を高く振り上げる事で自分自身の意志を奮わせる。
 振り上げた右拳をゆっくり腹まで下ろし、ベルト中央の宝玉と接触させた後、一気に右側へ振るう。自らの意志で鬼の力を制御するため、右拳を振るった瞬間、武政は叫んだ。
「変身っ!」
 宝玉から生じた、鬼の意志が変容した物理的エネルギーの嵐。武政は身を屈め、ベルトの前で両腕を交差する。全身の筋肉が発達し、白い金属片が体を包み、例えば目や口が明らかに変形しているのが分かる。
 嵐が止み、武政は邪悪な姿に変わっていた。
 筋骨隆々の黒い身体の各所を白い外骨格で覆っている。
 肩と腕、腿の装甲より禍々しい棘が天を向く。
 紅い目の質感は昆虫の複眼に似るが、つり上がった形状が顔に「V」の字を描く。
 牙と化した歯や周囲の顎は、イナゴかカマキリのそれに似ていると感じた。
 魔人と化した武政は一度拍手を打ち、カメレオンを指差して言う。
「オレね、お前みたいな奴が世界で二番目に嫌いなんだわ」
 眼前の魔人は自分と同じ改造兵士なのだろうか?カメレオンは少し後退するが、武政は跳躍の後、彼の肩口へ蹴り込む。
 よろめいたカメレオンの頭部を掴まえ、腹に二回膝を入れ、体重をかけて両肘を打ち込む。
「ぐ…貴様は何者だ…」
「悪い子いねがー…的な?」
 地を這うカメレオンの腹を蹴り、先程男衆を集めた角へぶつける。
 強敵と踏んだカメレオンは擬態色を使って不可視化、その状態から更に舌を伸ばし、一方的に武政を攻め立てる。
「…うざっ」
 苛々した武政は「鬼神」と記された念珠をベルトと呼応させる。
 直後、緑の光がベルトから生じ、武政の全身を包む。その光の中、更なる異形へ変貌する武政。
 赤く輝いていた目、ベルトの宝玉、額の第三の目は緑に変色。