【今こそ】オリジナルヒーロー小説【変身】

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420ネメシス ◆z87r6N2.xY
 心配する友人。
「イツキさ、また振られた?」
「…違うの」
「何か欲しいモンとかあるわけ?」
「涼ちゃん、ピストル買ってくれない?」  友人が硬直してしまった。斎が考えた自衛手段だ。しかし友人を巻き込む訳にもいかない。だからやはり友人にピストル買わせるのはやめる。
「自分で買おっと…」
 そう呟くので、涼ちゃんは尚も固まるより無かった。
 オペを終わらせ、京也は仮眠を取る前に人間蝙蝠を倒した地点、及びそこから蠍を召喚した法陣の描かれた倉庫へ向かった。
 蠍はまだ死んでいない。他にも妖魔はいるのかも知れないが、とにかく蠍だけは仕留めてしまいたい。
 倉庫には既に法陣の痕跡は無かったため、京也は自爆テロ現場へ乗り込む必要性も視野に入れたが、再び愛車へ跨がる前に、空中から攻撃を受けた。間一髪それをかわす。
「見つけたぞ、今度は逃がさん!」
 ライダーチョップで切断されたためか、片方のハサミが異常に小さな羽蠍が滞空している。その横に、人間大の草が生えている。
 草の見た目は、大きさを度外視すれば食虫植物サラセニアに似ていた。だが植物は、根を地上に出し、それを脚の様に用いて京也へ突進してくる。
 心の鬼が目を覚まし始めた。超人的な反射神経でサラセニアの突進をさばく。だが京也の足下を狙い、サラセニアが何らかの溶液を飛ばす。直撃を受けた鉄パイプが、瞬時に溶解した。強酸だ。
「食虫…食人植物というわけか。行くぞ!」
 懐から「召鬼」の念珠を取り出す。同時に腰にベルトが発生、目が紅く輝く。
 殺戮を命じる鬼の意志に抵抗しながら、念珠とベルトを呼応させ、念珠を握った右拳を左腰から右腰へスライドさせる。
「変身!」
 心から沸き立つ邪悪な意志を具象化し、京也は「仮面ライダー」へ変化、二匹の妖魔に向かってゆく。

「おい!向こうの角で妙な奴が働き手を募ってるぞ!」
 一人の男が、美月屋の食堂にたむろする男達に声を掛けた。六十数年前の近隣住民。その八割方は飯はなく家も焼かれた。しかし仕事があると聞いては黙っていられない。
 男の報告が終わらぬ内に、店にいた殆んどの男衆が我先にとその妙な奴が待つ角へ走った。だが武政は、店に残っている。
「行かないの武政さん?あれじゃすぐに募集締め切っちゃうよ?」
 そうキヌが問うが、武政は闇市で買ったブドウ糖の欠片をかじりながら呟く。