【今こそ】オリジナルヒーロー小説【変身】

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409ネメシス◇ ◆xQREh3zr9.
「変身するのが怖かった。念珠が疼く。俺の中の鬼が全てを八つ裂きにしろと命じる」
 あの状況で変身すれば京也は衝動に抗えず、斎を巻き添えにしていた。
 だが、あの蠍と蝙蝠を無視できない。斎は止める京也を無視し、自らの「見知らぬ知識」に従い、妖魔の気配を探し始める。自分に家族はおらず、親しい者も少ない。だからこそ、その親しい者を傷つける可能性があるあの蠍を放っておけない。
 斎を追う京也。その際、蠍に壊された街の瓦礫が見え、蠍に襲われた警官の遺体が運び出されるのが見えた。
「俺が変身していれば…こうはならなかったか」

 午前三時。夜明け前に妖魔の仲間を再び呼び出すため、人間蝙蝠は漸く蠍を捕捉。再度法陣で囲う。
「さて、お前の仲間を呼び出すには『血』が欲しいところだが…おやおや」
 蝙蝠と蠍のいる倉庫。そこへ足を踏み入れた者がいた。妖魔の気配を追ってきた斎だ。
「…妖魔を呼んで、何をする気なんですか」
 気丈にも斎は自分の方から蝙蝠に問う。蝙蝠はそんな彼女を嘲笑う。
「我々の志を阻む仮面ライダーを倒すためさ。ちょうど良い。召喚の儀には君の血を使おう」
 迫る蝙蝠の牙。そこへ爆音が響き、倉庫内のガラクタを撥ね飛ばして一台のバイクが駆けつける。
「卜部さん!」
「戦える力が無いのに無茶をするな!」
 斎をそう一喝し、直後に京也は戦える力があるのにそれを行使しなかった自分を嫌悪した。
「命を救える手段があるなら、それに賭ける…医者の基本なのにな」
 メットを地に叩きつけ、蝙蝠を睨む。
「斎ちゃん、君は君の持つ『覚えのない知識』で無意識の内に妖魔の名を知った」
 そして蝙蝠。斎がいた事で奴の計画が狂った。どうやら妖魔は斎に接触すれば反射的に彼女を最優先に抹殺しようとするらしい。だから蠍は暴走した。
「そうだ。妖魔は一匹が法陣内に固まっていれば同族を召喚できる。復活している可能性がある仮面ライダーを呼び寄せ、同族を大量に呼び出して倒す手筈だった。だが同族召喚の儀を始める前にこの蠍は単独で暴れおった…」
 怒る蝙蝠を無視し、蠍は最優先抹殺対象たる斎に今にも飛びかからんとしている。京也は一つ笑った。
「蝙蝠、貴様の計画、半分は成功しているぞ。何故なら、貴様がお探しの相手はここにいるからな」
 懐から「召鬼」の念珠を取り出す京也。同時に腰に骨盤状のベルトが生じ、眼は赤く輝く。もう死なせない。自分は他人の命を救える力があるのだから。