【今こそ】オリジナルヒーロー小説【変身】

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398仮面ライダーネメシス一杯目C
 召鬼。あの勾玉か。怪物に狙われ、祖父と関係があると思しき少女の言葉。従うより他無いやも知れぬ。言葉通り、『召鬼の念珠』を取り出す。
 その時、心で一匹の獣が吠えた。壊したい、殺したい。京也が全力で封印してきた、卜部家特有の殺戮衝動。
 愛車のバックミラーに、自分の両眼が紅く輝いているのを発見する。
 自分を内より呑み込もうとする殺戮衝動が全身を痙攣させる。その衝動の高ぶりが一つの基準を越えた時、京也の腰に骨盤状の器官が出現した。
 骨盤の中心には赤く輝く球体が埋め込まれており、その球体と手に持った『念珠』が紅い稲妻で繋がる。共鳴しているのだ。
 京也は衝動のまま、そしてDNAに組み込まれた見知らぬ記憶のままに呟く。
「変…身…」
 腰の球体から何らかのエネルギーが嵐となって京也の全身を包む。心の衝動が物理的な力へ変化し、京也の体を内から変える。
 体は黒一色、筋骨隆々に変容し、そこに白い金属片が集結して装甲を形成する。
 僅かな間の嵐が鎮まった後、そこには刺々しい白い外骨格で体の各所を覆った異形があった。
 昆虫のそれに質感が似た紅い複眼は顔の中点で一つのV字を描き、そのつり目の上部、いわば眉の部位にまたもV字型に角が延びる。
 額からも天に向かって一本の角が伸び、その根元には赤い発光部「第三の目」が生まれている。
 体の各所を外骨格で覆い、肩、腕、腿の装甲からは鋭い刃が伸びる。全体として「白いカマキリ」を想起させた。
 これが自分の、卜部家へ継承され続けた鬼の姿か。京也は戸惑いつつ、それでも沸き立つ殺戮衝動に抗えず、蜘蛛へ突進する。
 八本の脚がそれぞれ爪を突き刺そうとするが、手足の動きだけでそれらを弾く。
 蜘蛛の腹部に滑り込み、振り上げた拳の一撃で天井へ吹き飛ばす。何とか天井へ着地した蜘蛛は京也へ糸を吐きつける。
 首を締め上げられる京也。だが本能のままに左腕へ力を込める。同時に腕の尖鋭部が高速振動を開始、その腕を振るって糸を切る。
 蜘蛛は残った糸を吸収し、背の触手を伸ばして京也の周囲を包囲、跳躍して脚爪数本を同時に振り下ろす。
 危うい所で爪を押さえ込む京也。だが馬力ではこの蜘蛛に劣っているかも知れない。爪が徐々に京也の胸との距離を狭める。
 その時、成りゆきを見守っていた少女の声が聞こえた。
「『昂鬼』の念珠!」
 同時に左腰の発光部から、その勾玉が飛び出す。勾玉は再びベルト状の部位と共鳴。