【今こそ】オリジナルヒーロー小説【変身】

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396仮面ライダーネメシス一杯目B
「タ・ケ・マ・サ・サ・ン」
 メットを投げ捨て、京也は彼女に詰め寄る。
「君は誰だ」
 居丈高な物言いになってしまった。
「武政は…俺の祖父の名だ。君は祖父の何を知っている!?」
 少女は困惑した風。
「分からない…私、武政さんなんて知らない。知らないはずなんです!」
 知らない記憶が存在する。脳や神経に関しては専門外だったため良く分からないが、少女の言葉が異常でありまた祖父と関係している事は理解できる。
 彼女の話を聞きたくなった。京也は職場で彼女と話そうと予備のメットを取り出すが、その耳に断末魔の悲鳴が刺さった。それも、複数。
 野次馬の数名が有り得ない方向に体をねじ曲げ、血を吐いている。目に見えぬ顎に貪り食われている者もいる。
「こ、これは何だ?」
 思わぬ事態に拳銃を取り出す山下山男刑事。だが標的の姿が見えぬため、対応できない。何も為せないまま、鑑識の人員も八つ裂きにされてゆく。敵の気配が徐々に自分へ近づくのを山下山男は感じていた。
 そしてその気配が突然遠退くのも感じた。気配はその姿を現した。
「見ツけた」
 人語が聞こえ、「それ」が爆発の中心点より飛び出した。
 蜘蛛に似ていた。体長は4〜5mだろうか。円形に牙が配列された口と背から生える二本の触手を除けば本当に蜘蛛に似ていた。
 蜘蛛は巨大な脚で野次馬達を薙ぎ払う。剛力と先端の爪が容易く彼らを切り裂く。
 振り下ろされた爪から間一髪で少女を救う京也。蜘蛛はどうやら彼女を狙っているらしい。
「乗れ。逃げるぞ」
 京也は背後に少女を乗せ、愛車を全速力で飛ばす。だが蜘蛛も体躯に似合わぬ素早さで二人を追う。
 蜘蛛は走りつつ口から糸を吐きつけてくる。それを京也はバックミラーで視認し、紙一重で避けてゆく。自分の反射神経の良さが意外だった。
 逃げながら、京也は懐の勾玉が強く熱を帯びている事に気付いた。この蜘蛛に反応しているのか、それとも背後の少女か。
「念珠…」
 少女がそう呟き、それに気をとられた隙にスリップ、飛びかかった蜘蛛の爪が小さな工場の壁を破る。
 蜘蛛の爪には白い何かが絡み、パートのおばちゃん達が我先に逃げてゆく。
 そう、ここは何と、うどん工場であった。
「ち、まさかうどん工場で追い詰められるとは…」
 京也は少女を背後に庇いながらじりじり後退する。逃げ場が無い。その時、少女が京也の胸に手をあてた。
「『召鬼の念珠』を使ってください」