【今こそ】オリジナルヒーロー小説【変身】

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394仮面ライダーネメシス一杯目@
 焼け野原と化した東京。卜部武政(ウラベタケマサ)は人外の怪物と対峙し、こう叫んだ。
「変身っ!」

 それから六十数年後の現在、少女は風を浴びて暫しその地に佇んでいた。
 国が産まれた頃と寸分違わぬ風がその地に流れていた。

 一杯目「怪奇うどん男」

 五年前、祖父は「頼む」の言葉と大量の勾玉を彼に残して他界した。
 五年前といえば自分はまだ単なる医大生だ。オペを終え、52時間ぶりの仮眠。卜部京也(ウラベキョウヤ)は微睡みつつ祖父を回想していた。
 平安時代より続く自分の血筋には時折、人並み外れた狂暴性を顕す者が生まれる。
 旧時の人々はそんな卜部家の者を「人鬼」と忌み嫌い、近世になってからも法の厄介になった者は少なくない。
 京也の父親もそうだった。二十年前、何の前触れもなく包丁を振り回した父親の奇怪な形相は頭にこびりついて離れない。そして、その際京也の額と心に刻まれた深い切り傷。「ち…寝られやしない」
 傷が疼き、目が冴えた。普段は飲まないレンドルミンを入れ、強引に眠ろうとする。

 暗闇。きつい香の匂い。幾つかの炎に照らされ、その中に何十もの人影が揺らめく。
「皆さん!いよいよ大和を我らの元へ還す聖戦の再開です!」
 甲高い男の声が暗闇に響く。炎の揺らぎは暗闇に何らかの像が建っている事を示した。しかしいまいちディテールは判然としない。
「マカリザラキシワンヤ!」
 マントラと響きは似るがやや異なる言。甲高い男の声に続き、周囲の何十人もその言を復唱し続けていた。
 かの地に一泊した後、少女は自宅のある東京へ帰ってきた。自宅といっても一人用の小さなマンション。家族はいない。そもそも彼女に家族の記憶はない。
 そろそろ講義が始まる。少女、梳灘 斎(クシナダ イツキ)は誰もいないマンションの一室に「行ってきます」の声をかけて鍵をかけて大学に駆けた。
 しかし、と思った。マンションを出るとすぐに駅が見えてくるが、その駅がごった返している。通勤ラッシュではない。皆が駅より出ようとしている。
 斎はその中から数少ない大学の友人を見つける。
「お、お早う涼ちゃん…何かあったの?」
「自爆テロ!」
 この日本で、それも庁舎などない至極標準的な街でなぜ?
 涼ちゃんに曰く、複数の犯人が線路から駅にかけて陣取り、連続して自爆しているのだという。
「イツキ!あんたも早く逃げな!」