・様々な物・動物・その他諸々を創作板らしく色んな表現で愛でようというスレ
・SS・絵・立体物etc何でもおk。ただエロスは勘弁してくれ
・ルールは簡単。作品を発表した人が次のお題を出すだけ(次のお題:○○)
・作品が投下される間は感想を交換したり雑談でおk。ただあまり雑談ばかりは勘弁
・作品名は名前欄に記入しておくれ
以下
一例と言えない駄目文章↓
――私は笑みを浮かべている。お世辞にもセンスがあるとは言えないスローガンと、このくたびれた町の一角で。
様々な人々が私の前を通り過ぎる。それは女性だったり、男性だったり、子供だったり、老人だったり。
けれど誰も私に見向きはしない。けれど私はそれでも構わない。
私の仕事はここで笑顔を作ることだ。永遠に崩れない――永遠に。
その内、人々の間で大きな戦争が起きたようだ。次々と私の目の前の景色が崩壊し、瓦礫の山と化していく。
やがて私が居た場所も、突然の轟音と共に私の立っていた建物が崩れだした。ミサイルでも落下したのだろうか。
手足を持たない私は為す術も無くその場に叩き落ちた。数分の沈黙――完全に建物は崩落してしまったようだ。
生まれて初めて――そして最後に見る空は――赤く染まっていた。何故だろう。私には感情なんて無いのに
この鬱々と内に溜まる物は何だろうか。上手く表現できない何かが私を包み込む。
このまま私という存在が誰にも認知されずに消えてしまうのだろうか。恐らく――いや、きっと。
次第に灰色の雲が空全体を覆いだした。同時に空から降り注ぐ水――いや、コレが雨と言う物か。
だが何の感慨深さも沸けない。もう終わりなのだ。私もこのまま雨に打たれて朽ちていくだけだろう。散っているガレキの様に。
ふと、雨とは違う妙な生暖かさを持つ液体が、私を濡らした。コレは――なんだ?
曇っている私の視界に、迷彩服に古ぼけたヘルメットを被った童顔の青年が映った。何か口元が動いている。
「・・・かわいいなぁ。俺も生きていたらこんな子と付き合いたかったよ」
そう良いながら私を見つめる青年の目には――雨が――雨じゃない? けれど水が流れていた
やがて青年は力尽きたのか、そのまま私の顔に合わさるように倒れてしまった。
彼が何を言いたかったのか私には分からない。だけど――初めてだ。私に向き合ってくれた人は。
こうゆう時は何と言えばいいのか。横たわる彼を尻目に模索する私は――そうだ。スローガンだ
ありがとう。貴方がいるから、私もいる
最後まで意味は分からないスローガンだが――何故だか今だと理解できそうな気がする
空が眩く光りだした。もう――おしまい。
・・・みたいな感じでお願いします。次のお題は夏も終わりなのでまんま「夏」で
乙
次のお題は「夏」だけど
夏を擬人化するの?
別のものを擬人化して、テーマに夏をもってくるのはアリ?
>>3 どっちでもオーケーです。無論表現方法もね
あと相談なんだけど、ageた方が良いのかなぁ。変な人がいるから悩んでる
乙ー
でもこれだと折角書き上げたのに他の人が先に投下しちゃった、って事も有り得そうだな。
御題は時間がかかる創作物でやるとgdgdになっちゃうとこ多々あるからねー
>>5 表現してもらう人には最初に宣言してもらうってので良いかな
鳥なんかつけてもらって
>>6 まぁね・・・待ってる間にgdgdは・・・
宣言した人待ちだと、それまで作品発表できなくなるな…
一つの御題に対して複数作品投下可能にしておくというのは?
最初に投下した人が次の御題を決める、というふうにしておくと、スレは進むと思うんだ
>>8 良いね、そうしよう
でも1つのお題に対する作品投下数はどれくらいで締め切ればいいかなぁ。
1〜6作品くらい?
次の御題が投下されだしたら自重って感じでいいんじゃない
すまん、ageてしまった
13 :
夏と冬の別れ:2008/08/31(日) 03:30:47 ID:yVD+Aoa3
私が数百の命を奪った日の夜、友人の冬から仕事中毒だと言われた。
「君は頑張りすぎるんだよ。春みたいに、もっと気楽にやったらどうだ?」
彼の言うことを理解したふりをして、私は頷いてみせる。
しかし、私が春や秋のように振舞えるはずがない事は、冬もよく知っていた。
そもそも、あの二人は四季の中でも曖昧な存在だった。
春の暖かさが過剰になれば私になり、秋の涼しさが過剰になれば冬になる。
自分らしさを保つのが難しく、やりすぎても個性を失わない私達とは正反対の季節だった。
私が手を抜けば春や秋のようになるのだろうが、そんな事をする理由がなかった。
「あんまり暑い日が続くと、みんなに嫌われちゃうよ?」
「嫌われるのには慣れてるわよ。他人を心配してみせたって、怠ける言い訳としては認めないからね」
私がそう言うと、冬は困ったような顔をして去って行った。
数日後の新聞には私が殺した人間についての記事が載っていた。
冬にはまた叱られるだろうなあ、などと思いながらも、彼に会いに行く理由が出来た喜びが顔に浮かんだ。
私が自己ベストを更新した事を冬に知らせに行くと、彼はダンボールの箱に荷物を詰め込んでいた。
「何をしているの?」
平静を装って発したはずのその声は、誰が聞いてもわかってしまう程に震えていた。
彼は振り返ることはせず、見ればわかるだろうと言った。
「別の国に引っ越すわけじゃないわよね?」
「もちろん。去年は入れ替えで春が別の地方出身者に変わったけど、僕の入れ替えは聞いていないだろう?」
私の問いかけに、冬はいつものように答えた。
「アフリカだか、どこだったかの国から蚊が移り住んできたじゃない。あれってさ」
「温暖化が原因だと言われてるんだったかな? 僕は夏の虫については専門外だから、覚え違いかもね」
何でもないような表情をしながら、彼の動きは普段と比べられないほど遅かった。
「ねえ、いつからここでは生活できなくなったの?」
「もう何年も前からさ」
私が冬の両肩に手を置いて目を合わせると、彼はようやく手を止めた。
この地域で私が暮らすようになって今年で三年目になる。
彼はそれよりも前から住んでいて、この国のことについて色々と教えてくれた。
海に住んでいた私には想像も出来なかった、陸地の人々の生活。伝統、文化。
私達が出会った時にはもう、冬としての役目を担うことが難しくなっていたのだと冬は言った。
「努力はしていたんだ。けれど、僕の力じゃ冬らしい寒さを維持できないほど環境が変わってしまってね」
冬は私の頭に手を置いた。暑くて立っていることさえ辛いだろうに、私を落ち着かせようとして。
夕立のように涙が流れて止まらなかった。
私は彼の降らせる雪が好きだった。
彼が「うまくできないんだ」と言いながら空に舞わせるわずかな雪は、白い花のようで美しかった。
それなのに、いなくなってしまう。冬がどこかへ消えてしまう。
「私が人に冷房器具を使わせすぎたから? 電気の消費が増えて、そのせいで暑くなったから?」
「違うよ。たぶん、誰のせいでもない。……頼むから、人間のせいだと決め付けて憎まないでくれよ」
彼の代理としてやってきた老人は、北の大地を連想させる力強さで、この国に立派な冬をもたらした。
激しい雪が都市部の交通網を麻痺させて、事故を引き起こし、多くの人命を奪った。
それを見届けた後、私は役目を放棄することにした。夏が怠ければ春のような曖昧な気温になる。
熱射病で倒れる人間はいなくなったが、異常気象だといって連日ニュースで取り上げられた。
私には「やりすぎる」という逃げ道があっただけで、自分らしさを保ちやすいわけではなかった。
来年からは別の夏がこの地域を担当することになった。
頑張りすぎないで。気楽にやっていいんだよ。
そう言ってはみたものの、辞めさせられる者の忠告に耳を貸すはずがなかった。
夏と冬を混ぜ合わせたような、中途半端な気温の夏は一度限りで終わり、翌年からは暑い夏がやってくる。
また大勢の人間が死ぬのだろうが、私にはどうすることも出来なかった。
冬が愛した人の手によって環境が変わり、必死に個性を主張しなくとも季節を感じられる日が来るだろうか。
かつての四季を取り戻したこの国で、彼と季節の循環を形成できる日が来て欲しい。
彼が降らせた優しい雪を覚えている人ならば、ゆるやかな季節の流れを望んでくれるかもしれない。
私は人の心が昔の環境を再建させることを祈り、この国をあとにした。
……こんな感じでよかったのかな?
次のお題は「タンス」で
15 :
箪笥の生き甲斐:2008/09/01(月) 11:24:14 ID:r7MUbucG
配送トラックにのせられて、随分と長い距離を移動した。
引越しや廃棄のために再び動かされる可能性はあるのだろうが、しばらくはこの家で落ち着けそうだ。
一階の和室に私を置いた業者が引き上げた後、二階から誰かが降りてくる足音がした。
おそらく購入時に着いて来なかった家族が、私を見るためにやってくるのだろう。
シールを貼ったり落書きをするような子供は苦手だが、新しい家具なのだから騒がれるのも仕方がない。
そう思って待っていたのだが、足音は近づいてこなかった。
状況は丸一日経っても変わることがなく、私はまだ店に直接買いに来た男の姿しか見ていない。
翌日、服を運び込む作業の過程でセーターから話を聞かされた。
なんでも、私と一緒に大型のテレビを買ったらしく、家族はそれに夢中だという。
すると私は頭部の毛をほとんど失った男の部屋で、他の誰の目にも留まらないのだろうか?
防虫剤の臭いが漂う服たちを自身の内側に納めていると、ふいに寂しさに襲われた。
デパートで展示をされていた頃の私は、自分をすごい存在だと思っていた。
使い捨ての消耗品とは違い、私たち家具は裕福さを表すステータスであり、その中でも私は平均以上だった。
私を買えるのは中流以上の家庭であって、お金のない人間からは羨むような目で見られたものだ。
ところが今の私は注目もされず、同程度の格付けの家具たちと並んでいる。
私が落ち込んでいると、隣に立つ、古びた箪笥が声をかけてきた。
――良かったな、絶好の位置だぜ、そこは。
彼が何を言っているのかわからなかった。
しかし、それから数日と経たない内に、私はその言葉の意味を理解した。
今、私の目の前で跪いている男は、足の小指を押さえて苦しんでいる。
会社では年相応の地位につき、他人に泣かされる事などなくなったであろう男が、だ。
なるほど、これは面白い。
私の中から悲しみが消えていくのが分かり、代わりに楽しい気分がやってきた。
退屈で地味だと思っていた生活だが、デパートで威張っているよりも、こちらのほうがずっといい。
終
次のお題を書き忘れた。
『扇風機』……で。
17 :
扇風機と宇宙人:2008/09/03(水) 02:13:00 ID:IDBUFQkw
夏場になると、よく宇宙人と遭遇する。
それがどういった意味を持つ宣言なのかはわからないが、彼は自分が宇宙人だと暴露する。
機械である私を生物として見ているのか、それとも暑さを忘れるための暇つぶしか。
理由は想像すら不可能だった。どちらにせよ、私はそれに答えるための言葉を持たなかった。
「ワレワレハ、ウチュウジン、ダ」
一人なのにも関わらず『我々』と言っているのも、よくわからない。
そもそも、宇宙人というのは地球からの視点の呼び名ではないだろうか?
私は首を左右に振って、声が変化するのを妨害しようという無駄な努力をする。
抵抗はボタンひとつで強制的に排除され、彼は再び妄言を吐く。
もし、彼が本当に宇宙人だったなら、私も宇宙へ連れて行かれる日が来るのだろうか。
宇宙には大気が無いという噂を聞くが、そうなると私は役立たずだ。
風を送ろうにも、原料となる空気が無いのではどうしようもない。
人間というものは役に立たない機械に冷たい。すぐにゴミとして捨てられてしまう。
愛着を感じていたペットのように、機械の死体も丁重に扱ってくれてもいいと思うのだが……。
暗いことばかりを考え、動物を妬んでいた報いなのか、首の骨を折ってしまった。
動物ならば即死だろうが、幸いなことにも私は風向きを調整できなくなるだけで済む。
ならば、廃棄する理由には程遠いと考えていたのだが、広告はいつも最悪のタイミングがやってくる。
私の主人も、普段は金がないとばかり嘆いているくせに、今日に限ってパチンコで大勝してくる。
もはやこれまでと観念をした時、玄関の扉をノックする音が部屋に響いた。
小さなアパートのせせこましい一室ということもあり、男はすぐに玄関へとたどり着き、扉を開ける。
私は誰もいない空間に向かって風を吐き出し続けていたが、しばらくして、見知った女性が目の前に座った。
見覚えがあるのは当然で、彼女は男と別れたばかりの恋人であり、この家にも何度か訪れていた。
女は追いかけてきた男に振り返ることはせず、私を見つめながら口を開いた。
「あー、アー。ワレワレハ、ウチュウジン、ダ」
女はくすりと笑い、男の表情も張り詰めた状態から、気の抜けたものへと変わっていった。
「ねえ、私達ってこんな些細な事を言うだけでも笑ってたんだよね」
いったい、女は何を言おうとしているのか。
人間の感情すら理解できない私にとって、宇宙人どもの気持ちなどわかるはずがない。
だが、ひとつ。理屈ではないのだがひとつだけ、確信に近いものを持ったひらめきがあった。
もしかすると、私は御役御免となるのを避けられるのではないだろうか?
おわり
……次のお題『鏡』
その叫びが届かないことは知っていた。
口の動きが同じであっても、私のそれは無音の動作でしかなかった。
「お願い、どうか殺さないで」
背を向けた男に向かって、私達は何度もその言葉を繰り返す。
男と女、そのどちらもが音のある世界に生きる存在であるはずなのに、彼女の声は届かない。
包丁を握り締めた男は身体を揺さぶったが、彼の後ろ姿だけを映す私には何が起きたのか理解できなかった。
直後に私が激しく泣き出した事から推測をするのなら、男が何かを言ったのだろう。
衣替えのために床に並べられていた衣服を踏み、彼は彼女との距離を詰めていく。
「ごめんなさい、ごめんなさい。許してだなんて言えないけれど、騙すつもりは無かったの」
私は毎朝、毎晩、彼女の顔を映している。だからわかった。
だが、彼女の言葉が真実であるかとは関係なく、男は罪を犯した。
胸から血を流して倒れた私は痙攣をしており、男はその姿を見下ろしていた。
時計の針以外には動くものがない時間が続いたが、やがて私は、風景の一部と化した女から目を離した。
私は凶器を携えたまま首を動かし、部屋に置かれた姿見に目をやった。
目的を達成した私は、涙を流して笑っていた。
私は死体を隠すこともせず、包丁を投げ捨てるとベランダに出た。
ここは十七階なのだから、男が逃走をするつもりならば部屋の入り口から脱出をするべきだ。
それでは、その行動の意味は?
しかし、刑事のように推理を行なう必要は無かった。
私は先程あのような表情を浮かべた。だから死ぬ。
自分のことなのだから、間違えるはずが無かった。
今頃は、彼も風景の一部になっていることだろう。
私が死んだ部屋で未だに動き続けているのは、風で揺らめくカーテンと時計の針だけだった。
終わり。次のお題は『使い捨てカイロ』で。
20 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 14:27:56 ID:lb909yfP
age
21 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/06(木) 03:59:47 ID:dG23gQ4+
期待で保守
揉みしだかれた私の体はどんどん火照り熱くなる。
そして男の素肌に抱かれる。
私の熱と男の温もりが交わる。
いつまで貴方といられるの…?
貴方にとって私が必要でなくなる時が来る事を私は知っている。
でもせめて、僅な間でも私が貴方の物であったという確かな跡を残したくて……。
低温火傷。
↓ブーツ
お題でも変えてみる?
数珠つなぎではなくなっちゃうが
ここを擬人化総合にして再利用すればいいんじゃないかな
アタシは、彼といつもいられるわけじゃない。
彼は、家の中ではアタシにそっけない態度を取る。
けれど、外に出かけるときはアタシは彼と衣服一枚を隔ててだけど、密着している。
だって、せっかくの機会なんだからくっついていたい。離れなくない。
ずっと彼と一緒に居られれば良いのにと思うけれど、それが無理だって事は知ってる。
だって、彼は最近新しく家に来た女に熱をあげているから。
アタシがここに来たときは、毎日のように一緒に出かけていた。
彼の友達がアタシの姿を見かけた時は、彼は少し照れくさそうに笑ってた。
でも、今のアタシはもう彼を満足させてあげる事が出来なくなっていた。
肌はもうボロボロだし、彼を受け入れるための穴もゆるくなってしまっている。
いつかアタシは捨てられるのだろう。
そして、彼はあの女と一緒に外に出かけるのだ。
女の名前はスニーカー。カジュアルで、足に優しいスニーカー。
アタシはブーツ。彼が、ちょっとオシャレに目覚めた時に買われた革のブーツ。
↓
やっべ忘れてたw
↓餅
まさか動くとはwww
ブーツがこんなにエロくなるとはねぇ
28 :
餅:2009/02/25(水) 14:28:01 ID:gIqVxtAG
「ハァッ、ハァッ!」
うす暗い建物の中で、白い息を荒らげた年配の男が腰を深く落として私をついていた。
くぐもった息遣いとズンとくる低い振動が、単調なリズムを広いガレージ内に響かせていた。
「よし、いいぞ、もっとだ!」
振動に相槌を打つように、反対側の若い男が私の白い体をこねまわす。
私はされるがままだった。否、私には抗う事など出来ないのだ。
体が熱い。湯気が出るほどの熱で体が変質しているのがわかる。
その初めての感覚に、しかし私は恐怖しか感じなかった。
「へへ、あらよっと」
声とともにひっくり返され、私はまた何度も容赦なくつかれた。
もはや上も下もわからない。或いは、そんなものは初めから在りもしなかったのかもしれない。
最初のうちは固さを持っていた体も既にドロドロになってしまったようで、今や感覚はあやふやだった。
どうして。
どうしてこんな事になったのだろう。
「お? そろそろこなれてきたかな?」
若い男が私を千切れるほど強く掴んだ。
私も体を持ち上げて抵抗するが、それは虚しいものだった。
若い男は掴んだ私を口に運び、下品な音を立ててむしゃぶりつく。
体の一部を咥内で蹂躙される悔しさを、私は必死て耐えなければならなかった。
「ハァッ、ハァッ……そろそろか?」
言って年配の男が私をつくのを中断する。
そんな彼をにやにやと眺めながら、若い男は笑うように声をかけた。
「いや、まだまだ早いよ? もうちょい踏ん張ろうぜ」
「そうか。久しぶりだから腰が痛くなってきたぞ」
「だったら代われよ、歳なんだろ? それに俺もそろそろやりたくなってきた」
「フン。俺だって若いつもりだ、まだまだな!」
二人の笑い声が響いてそれは再開される。
少しの休憩を挟んだせいか、その動きも速く力強いものとなっていた。
ああ。
こんなの、早く終わって欲しいのに。
私の一部一部が、少しずつころされてゆくのがわかる。
叩かれ、持ち上げられ、すり潰され、交ぜられる。
それは私が私でなくなる感覚だ。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い
男達は動きながら、楽しそうに話を続けていた。
「そんな事言ってると、ギックリ腰で寝正月になるよ。父さん?」
「ははっ、そうもいかんさ。
……餅搗きは家長の役目だからな!」
ぺったんぺったん。
大晦日なんて大嫌いだ。
↓首輪
これはエロいwwwww
支援
何の支援だよw
32 :
首輪:2009/02/27(金) 17:59:50 ID:04ZG/jrj
前りゃく ごしゅじんさま
はやいものであなたと出会ってから10ねんがたちました。
さいしょ、あなたはわたしに首にまとわりつかれてとても嫌そうでしたね。
まだ小さかったあなたはわたしをはずそうとしてよく首をぶるぶるふったり、
わたしをつかまえようとしてバランスをくずして転んだりしていましたっけ。
あなたの細い首につかまりながら、
わたし自分で自分のことおじゃまだなあ、と思っていました。
でもそうしているうちにあなたはあっという間に大きくなってしまって
わたしもあなたに合わせて大きくならなくていけなかったのでちょっとあせりました。
あの人たちがあなたには似合わないってわたしを捨てようとしたとき、
あなたは低い声でおこってあの人たちを止めてくれましたよね。すごく、うれしかったです。
あのときからわたし、自分がやくたたずだって思うのやめたんです。
わたしたち、どこへ行くのもいっしょでしたね。
あつい夏の日にゆらゆらとけしきがゆがむ道をさんぽしたことや
雨がふるさむい夜に外でねむったことや、
はい色の空から落ちてきた白いわたみたいのがあなたの鼻にあたってすぐ消えて、
あなたがふしぎそうな顔をしていたこと……
わたしのなかにはたくさんのあなたの思いでがつまっています。
わたし、あなたのことが大すきでした。
だからあなたとお別れするのはとってもつらいです。
こんなことになるのだったら、あなたが家をとびだしたときにとめておけばよかった。
あなたが道をわたろうとしたとき、
むこうからぎらぎらのふたつ目が来るよって注いできればよかった……
でもわたしにできたのは冷たくなっていくあなたにしがみついていることだけでした。
わたしを見ただれかがあの人たちにあなたのことを伝えて、
わたしたちはおうちにかえることができました。
わたしがはじめてやくに立ったのにあなたに見てもらえなかったのがとっても残ねんです。
あなたが土にうめられてしまって、わたしはあなたとはなされて
どうしたらいいかと方にくれてしまいました。
このまま捨てられちゃうのかと思っていたのですが、
あの人たちはときどきわたしを取り出して、
ながめたり、なでたりしてあなたの名前をよびます。
それでわたしわかったんです。あなたとわたしは本当にいっしょになれたんだと。
あなたがここにいたってこと、わたしがいるかぎりないことになったりしません。
それが、わたしのあたらしいしごとなんですね。
ああ、ほら、あなたの好きだったあの人が来た。
まだまだたくさん話したいことはあるんですが、このへんにしておきます。
またあえる日をたのしみにしています。
では、さよなら。
あなたのくびわより
↓瓶
ちょっとうるっときた
おれもうるっときた
小さい頃飼ってた犬のこと思い出したよ
これは……
おれも、別れたわんこの首輪はちゃんと取ってあるよ
元気いっぱいだった頃から着けてたからもうぼろぼろだけど、とてもだいじなものなんだ
うるっときた。GJです
36 :
瓶:2009/03/09(月) 21:30:14 ID:10bn90Mq
えー、瓶です。
漂流中です。
もともとは……えーっと、何が入ってたんだっけ。
あっ、そうそう、イチゴジャムが入ってました。結構高いやつ。
中身使われたあと、それ買ってくれた人の娘さんに貰われたんですよ。
綺麗にあらってくれたから、またジャムでも入れてくれるのかなーって思ったら、
中に紙突っ込まれて、蓋されて、海に放り込まれたんです。
娘さん、私に手を合わせて拝んでました。成仏しろよってことですかね。
無理ですけどね。瓶ですし。
それより、私の役目はいつ終わるんでしょうね。
どこに流れ着くんでしょう。
見つけたら、拾ってやってください。
ジャム詰めろとか言いません。リサイクルに出してやってください。
瓶でした。
↓机
爽やかな口調だなw
いい人に拾われるといいねw
瓶いいなw
娘さんはどんな内容の手紙を入れたのだろ
あなたの筆圧はとても強い。
下敷きを使わない限り、あなたが何を書いているのか、私が残らず感じ取れるくらいに。
だからあなたの恋愛について、その感情が生まれる前の始まりから、ぜんぶ知っていたよ。
今の時代には珍しくなった、手紙のやりとり。
小さなきっかけによってスタートした交流は、とても順調に、途切れることなく続いている。
私があなたの手紙を先に読んでいることなど、彼女は気づかないまま。
あなたと出会ったのも、あなたを好きになったのも、彼女より私の方がずっと早い。
あなたと一緒にいた時間の長さでも、今の時点では私が圧倒的に勝っている。
それでもあなたが好きになった相手は、私ではなく、人間だった。
どうして負けたのかはわかっている。
わかっているけれど、納得はできない。
『来月、そちらに行くんだ。会ってみないか?』
私はあなたの望みならば、どんな願いでも叶えばいいと思っている。
これはきっと嘘じゃない。本心なんだ。
二人が会って、もっと仲良くなるのは良いことなんだと思う。
私がただの道具としか思われていなくても、あなたの所有物であるというだけで、私は小さな幸福を感じる。
だから、せめて私が壊れるまでは、あなたに使い続けて欲しい。
突然の地震があったとしても、きっと私があなたを守るから。壊れてでも守るから。
それまで一緒にいられるのなら、あなたが誰と恋に落ちても私は平気だ。
すこしも苦しくなんてない。
これは嘘なんかじゃない。机が嘘を吐くなんて、できないはずだから。
↓手袋
やべ、ちょっと涙出た
これいい話すぎる
42 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 03:03:27 ID:H+2IRPBL
タイトルでちょっと笑ったw
切ないのう
今日もまた、我が主の戯れが始まる。
「なーなー」
我が主は、最近この戯れをお気に入りのようだ。我としては、全く
迷惑極まりない話であるが、語るべき口を主の手に温もりを与える
為に使用している以上、文句を言う事はできない。物理的に。
「てぶくろを反対から読んでみ」
同輩の少女が、今日のターゲットのようだ。少女は何の疑いもなく
『てぶくろ』という言葉を逆から読む。
即ち――
「えっと……ろくぶて?」
「ろくぶてって言ったから六回ぶつな!」
「え、えぇぇ!? あ、いた、いたっ、いたいよぉ!」
少女の気持ちはよくわかる。何しろ、我が主は、我をはめたままの
手でもって少女の頭をはたいているのだから。我は、少女と同じ痛み
を味わされるというわけだ。
我が主は、まだ年少であるが故に、結構容赦が無い。まったく、我
が皮製でなければ、今ごろほつれてほどけ、用済みとして廃棄処分
されていた事だろう。我が事ながら、丈夫な身体に産んでくれた父母
――つまりは、我の作り手だが――に感謝したいものだ。
「いたいぃ! ……もう、さと君、なんでこんなことするのよー」
少女は涙目で我が主を責めるように見ている。当然の事だ。我も
眼(まなこ)があるのならば、同じような視線を我が主に送っていた
だろうに違いないから。
「だって、ろくぶてって言ったじゃん! へっへー、言われた通りに
しただけだもんねー、オレはっ!」
そういうのを屁理屈というのだと我は思ったが、それを伝える事は
できない。物理的に。
「……ふ、ふぇ……」
その屁理屈に、少女は瞳に溜まるだけだった涙を、ついに粒として
目端からこぼした。次いで、泣き声が辺りに響きはじめる。
「ふぇぇぇぇぇえ!」
当然の事だ。我も眼と口があるのなら、泣きたいし喚きたいが、それ
は叶わぬ願いだった。物理的に。
「え、ちょ……泣くなよ和海! こんな事で……あ、だから泣くなって!」
我が主は、少女の涙を見てとたんに慌て始める。なんだかんだで、
根は優しく、そしてヘタレなのだ。泣かせてしまうという事を考えて
いなかった為、予想外の事態に慌てる事しかできないのだろう。
いい気味だ、とは流石に思わなかったが――こんな粗暴なお子様
でも、一応は我が主であるが故――これを機に反省していただきたい
ものだ。
「ふぇぇぇぇん!」
相変わらず、少女は泣き止む気配は無い。我が主はおろおろする
ばかりだ。そういう時は慰めたり、頭を撫でたりしてあげるといいのだが、
そこまで考えが及ばないのだろう。
「ど、どうしたらいいんだよ……」
困惑と動揺で、自分も泣き出しそうになった我が主の目に、彼女の
瞳から零れ落ちる涙を拭う手が映った。
その手は、今朝の寒さに素手を晒しており、寒さに反応した血流に
よって赤く染まっていた。
「なぁ、和海! これ貸してやるから泣き止めよ!」
そう言って、我が主は我を外して少女へと差し出す。
我の、重厚な皮の表面を見て、少女はきょとんとした顔をした。
「それはめてたら暖かいし、グーで殴っても痛くないぞ!」
前者も後者も事実だが、後者は我が痛いのでやめて頂きたい。それ
に、そんなのが少女へのアピールになるのか……と思っていた我を、
少女はその赤くなった手で受け取り、徐にはめた。
普段の、我が主のそれとは違う、柔らかい少女の掌の感覚が、我の
中へ温もりを伝えていく。そして、我はその温もりを逃さず、再び少女の
掌へと返していく。
「……えへへー」
どうやら、我をお気に召していただけたようだ。少女の顔には、涙の
跡こそ残ってはいるものの、泣き顔とは程遠い笑顔が浮かんでいた。
我が主の思考経過はともかく、結果オーライ、と言った所か。
「泣くなよなぁ。なんかオレが悪い事したみたいじゃん。焦ったー」
いや、現実しただろ、と突っ込む事はできない。やはり物理的に。
「……これ、あったかい。今日、このまま、借りてていいの?」
「そんなんでよければ、やるぜ? オレ、もっと軽いのがいいんだー」
なんという暴言。我が主に尽くしてきた我の十年近くに渡る人生……
もとい、手袋生は、一体何だったのだ。
「駄目だよ、そんな事言ったら。この手袋さん、きっと悲しむよ」
「手袋が悲しむわけねーじゃん」
「でも、駄目。大事にしないと、駄目」
先ほどまでの泣き顔や笑顔とも違う、真剣なまなざしに、我が主の
ようなものは再び困惑する。
「……わ、わかったよ、大事にするよ……学校着いたら返してくれな」
「うん!」
まったく。我が主には困ったものだ。できれば、この少女のような主の
掌をこそ、暖め、癒したかったものだが――
「手袋さんも……さと君、嫌いにならないであげてね?」
――!
これは驚いた。我の内なる言葉が聞こえたかのように、少女は我に
そう言葉を告げる。無論、実際に聞こえているはずは無い。単に、少女
の歳相応な想像の産物なのだろうが……。
そうであってくれと言われれば、我としてはそうである以外、無い。
「とりあえず、今日みたいなのは駄目だよ、サト君」
「なんだよ。その手袋なら大事にするぞ」
「違うよ。六回ぶったの」
「あ、あれは……ちょっとした冗談じゃんか」
「……先生に言おうっかなー」
「げ、そ、それだけは! それだけはお許しください和海様!」
「どうしよっかなー」
他愛の無い会話を交わしながら、二人は学校へと歩いていく。
今日も明日も、我は我が主の手から、こんな光景を見ていくのだろう。
それは何だか、とってもいい事のように、今日は思えた――
終わり
ここまで投下です。
ろくぶてって半熟英雄の奥の手であったなぁ・・・。
忘れてた。
↓文庫本
先生に言うって懐かしい響きだな〜
もう二度と味わうことはないんだろうか
48 :
文庫本:2009/04/29(水) 22:31:47 ID:zhno0/OT
「どこへいくの」
「まだ決めてない」
「誰かと一緒なの?」
「僕ひとりだ」
「いつか、ここへ帰ってくる?」
「わからない」
「わたしは……どうなるの」
僕はその言葉に振り返った。
荷物が片付けられたがらんとした板張りの床の上に
ぽつんと一冊の文庫本が転がっている。
「売られちゃうのかな」
日に焼けた表紙が反り返って、紙の端がぴりぴりと震える。
「それとも捨てられちゃうのかな」
カバーはすり切れ、はがれかけた背表紙はテープで補修してある。
そんなぼろぼろの文庫本、買い直せばいいじゃないか、という人がほとんどだろう。
だが、これは僕が選び、愛した本だ。
僕が乏しいこづかいを貯めてはじめて買った本。
片時も手放すことなく、僕に喜びと慰めを与えてくれたこの一冊の薄い本。
僕は文庫本に歩み寄った。
「まさか」
拾い上げ、表紙を撫でる。
「君も、一緒につれていくよ」
文庫本をポケットに滑り込ませる。
ポケットの中で安堵の息をついた文庫本のあたたかい重みが伝わった。
さあ、出発だ。
僕は文庫本と一緒に長い旅に出た。
↓電柱
あったけえ・・・
心が和んだよ
これは…いいな
いま丁度GWだし、俺も旅に出たくなる
良作じゃ
トランク一つと文庫本で旅に出たくなったよ
文庫本かわいいよ文庫本
54 :
曲がり道の電柱:2009/06/24(水) 01:55:09 ID:oA7qjiO8
雨の降る日に師匠は言った。
「我々の役目は……市民に快適な環境を提供することである」
「先生。それではなぜ、私たちにぶつかって死ぬ人間がいるのでしょう?」
僕の質問に対して師匠は咳払いをしてから答えた。
「うむ。よい質問だ。死人が出る理由は、それが街の安全を守ることに繋がるためだ」
「どういう意味でしょう?」
「交通ルールを守らない車両は、善良な市民を殺す事故を起こしてしまう。我々が殺すのはそうした人間だ」
「すると危険な車と相打ちになって壊れ……市民の身代わりになることが僕らの役目なのでしょうか?」
そのとおりだと彼は言う。師匠はこの仕事に疑問を抱いていないようだった。
けれど、僕のほうは納得がいかなかった。いくはずがなかった。
「そんな仕事は専門家に任せればいいじゃないですか。どうして僕らが兼任する必要があるんですか?」
「……これは仕方がないことなんだよ」
「予算の問題ですか? 全国に専門家や、僕らのボディーガードを設置するのは費用がかかり過ぎると?」
「それもある。だが、最大の理由はそんなことではなく、我々が人間を信じたいからだ」
彼が何を言っているのか――理解できない。
「人間は事故を起こします。標識の僕がどんなに呼びかけても、毎月だれかが事故を起こしています」
「いつかは事故もなくなるさ。彼らだって、我々を壊すためにぶつかってくるわけじゃない」
「信じられません」
「信用してやらなければいかんのだ。我々が人を信じて無防備でいるからこそ、あちらも気を使う」
「どのようにですか?」
「ああ、人影は見えなくても電柱がある。スピードを落とさないと危ないな。……こんな具合だ」
僕は笑うしかなかった。
「そんなのは、自分たちが死にたくないからでしょう」
「自分のためにしたことが、同時に他人のためにもなっている。素晴らしいとは思わないかね?」
「思いません。人間が事故を起こさなくなるなんて、そんな夢物語を先生は本気で信じているんですか?」
今まで色々なことを教えてくれた師匠は、いつものように、自信に満ちた声で僕の問いかけに答えた。
「もちろんだよ。だから、事故の無い世界になる前に引退することだって、ちっとも悲しくない」
身体がへし折れているというのに、彼の信念はまったく傷ついていないらしかった。
師匠を砕いた人間は運良く生き残っていたらしく、車から這い出すと電話をかけはじめた。
おそらく今日中には、壊れた師匠を撤去する人間がやってくるはずだ。
いつの間にか雨はやんでいた。
新しくきた普通の車たちが、迷惑そうに事故車を避けて通っていった。
誰もが車と電柱の残骸にちらりと目をやり、そのまま通り過ぎていく。
僕の表面を水滴が伝って地面に落ちた。
↓缶きり
55 :
缶切り:2009/06/26(金) 06:21:20 ID:51lsHPwc
何かを食べなきゃ人間は死ぬが、食事の準備は面倒だ。
だから缶詰を利用する気持ちはわかる。持ち運べて便利だしな。
非力で不器用な人間が缶を開けるには俺が助けてやらなくちゃいけない。
優秀な奴はそうでない奴の手助けをしてやらないといかんのが辛いな。
で、いつものように出番がきたと思ったら、なんだ?
今日のこいつはどこかおかしい。
そんなに震えた手で俺を上手く扱えるわけがないだろ。馬鹿か。
ガチガチとぶつかるばっかりで、俺はちっとも缶に固定されない。
せめて地面に置け。片手で缶を持ち上げたままやろうとするから失敗するんだろうが。
なにやってんだよ。
缶詰と缶きりでヘタな演奏をするために、俺を雪山なんかに連れてきたのか? 違うだろ?
緊急事態になったときのためだろ?
そうだ、いま鳴らした腹の虫だ。そいつを寝かせつけるために俺が来てやったんだ。
だから早く開封して食っちまおうぜ。
腹いっぱいになりゃあ、吹雪が収まるのを気長に待つくらいの余裕も出てくるだろ。
ほら。だからさ、なんとかしろよ。
俺がどんなに凄い奴だといっても、お前が準備を終わらせないと手伝ってやれないんだぞ。
缶切りを持っていたのに開封できずに死亡とか、そういうのだけは絶対にやめろよな。
おい……諦めるなよ。
投げ出すなよ。
俺の声が聞こえないからって無視すんな。
ほら動けよ。何も無い空間を見つめてどうすんだ。
ちょっと努力すれば俺が助けてやれるんだ。だからさ。
なあ、もう一回だけでも試してみようぜ。
なあ。
……おうっ。そうだ。そのやり方だ。最初から床に置いてやれば良かったんだよ。
要領が悪い奴め。食べ方も汚いし、本当にどうしようもない奴だ。
まったく。本当に……。
さあ、食べ終えたならさっさと毛布を探して来い。
お前に死なれちまったら、こんな山小屋に置き去りにされるだろうが。
俺を無事に家へ送り届けるまで、死ぬんじゃないぞ。
今年の夏、栓抜きのお嬢さんが職場に加わっただろ。
お前とは違って、俺にはあの娘を口説き落とすっていうデカイ目標があるんだからな。
↓跳び箱
>>54 師匠かっけー。
>>55 ツンデレ缶きりか、と思ったらボンノー缶きりだったw
ここはたまにみるとちゃんと動いてて良作SSが投下されているから侮れない
バンっ!
私の全身を、衝撃が襲う。情け容赦なく、私の頭頂部に両手を叩きつけ
ながら、子供たちは私を飛び越えていく。私はといえば、その瞬間にグッと
歯を食いしばり、衝撃に耐えるだけ。何も言わない。言う必要も無い。
何故なら、私は跳び箱だから。
今日も幾人の子供達が、私の頭の上を飛び越えていく。
だが――
「ぐぇっ」
中には、上手く越えられず、お腹や胸を私に強くぶつけてしまう子供や、
手をついただけで、そのまま跳べずに終わってしまう子供もいる。
何度かの挑戦で、そういった子供もだいたい跳べるようになるのだが――
「……ぅう」
その少女は、何度挑戦しても、跳べなかった。
両のおさげを振り乱しながら駆け、そして思い切って跳びあがり、私の
頭に手を付き……勢いそのままに、私の頭で腹を打って呻く。その繰り返し
は一体何度目になるだろうか。最早数える事もできなくなるくらい繰り返し、
繰り返しお腹を打ちながら、それでも彼女は諦めない。
その姿に感動にも似た想いを抱きながら、私は彼女の挑戦に付き合う。
今は、確か学校は昼休みとか言う休息時間で、体育館と呼ばれるこの
場所には彼女以外の人影はない。先の体育で使い終えられた私が、いつも
どおり倉庫という場所に片付けられずにこの場にいるのは、彼女たっての
願いらしかった。
「……ぜったい、今週中には跳べるようになってやるもん」
軽く目を潤ませてはいるが、その潤んだ瞳に宿った決意は固い。
彼女はやり通すだろう。必ず、跳べるようになるだろう。今まで何人となく
頭を跳び越えてきた少年少女達の、誰よりも彼女の瞳に宿った意志は強い。
そう私には思えた。
「いくぞっ……!」
再び、彼女は私から距離を取り、駆け出す。
私も、彼女が手を付くのに備え、身を固める。
私は跳び箱だ。跳んでもらってこそ、私のいる意味もあるというもの。
今日は、とことんこの少女に付き合うとしよう。
バンっ!
「ぐぇっ」
……今日だけで済むかどうかは微妙な所かもしれないが。
まあ、それも一興だ。頑張れ、少女よ。
終わり
↓ダンベル
59 :
ダンベル:2009/07/02(木) 04:45:58 ID:ecAcLG5K
あなたが私を放置してから一ヶ月が経ったかな。
なつやすみにダイエットするという計画はどこに消えたの?
たくさん食べても運動すればいいって言ってたじゃない。
にくまれ口なんて叩きたくないけど、あなたは努力が足りないの。
必ずやる、毎日やる、そうしていれば一回の時間は短くてもいいのに。
要するに『継続は力なり』ってこと。
といっても、私だってあなたと同じなんだけどね。
しっかり者とは真逆の、どうしようもない怠け者。
テーブルの上に載せられても、ベッドの下に投げ出されても、私は転がることができた。
貰われて私がここに来る前の、昔のパートナーと一緒に居た時もそうだった。
えいっ、と転がってあなたの傍に行き、遠くに追いやられ、また近づく。
たのしくない、気分が悪いと感じて……私が先に繰り返すことをやめたんだ。
日常からその作業が消えると、あなたも彼女もすぐに私を忘れてしまった。
のぞみが叶うのなら、私が諦める前の日に戻りたい。
こんなのは自分勝手な願いだとわかっているけれど、今になって気がついたんだ。
とおくに私を捨てに行くだけでも、わずかな運動にはなっていた。
はんぱな運動だとか、本来の使い方をして欲しいなんて望まなければ、あれでも十分だったんだ。
永らく無駄なことだと思っていたけれど、あの関係もそう悪いものじゃなかったんだと思う。
遠くの方から、あなたとその友達らしき人の声が近づいてくるのが聞こえてきた。
二回目だからすぐにわかったよ、あなたの友達が私を貰いにきたんだって。
忘れかけていたあなたの手が私に触れて、懐かしくて、暖かくて、悲しかった。
レクチャーが終わったら、もうこの手とはお別れしなければいけない。
なんども同じ失敗を繰り返すつもりは無いから、今度の人間が最後の相方となるんだと思う。
いつあなたが私の新しい主人の家に遊びに来ても、出迎えられるように頑張り続けてみるからね。
↓鉛筆
おお、また投下が
お題になった道具毎にシチュエーションがありドラマがあるのは面白いね。わかりやすいオチがなくても物語に奥行きがある
それだけに書くのも感想つけるのも難しいんだけどさwでも好きなスレの一つなのです
縦読み……だと……
やられたあ
63 :
鉛筆:2009/07/11(土) 02:57:15 ID:ksZn37eu
しゃりしゃりという音がする。
主人のナイフが私の身体を削っている音だ。
機械式の鉛筆削りが安く売られているというのに、彼はあくまでも手作業でそれを行う。
部屋には私たちが立てる音だけが響いていて、他の誰の声も混ざっていない。
彼は慎重にナイフを扱い、私から余分な肉を削ぎ落としていく。
私は実際に使われている間よりも、この時間のほうが好きだった。
彼のような年齢になってまで鉛筆を使う人間は珍しいのだという。
これは文房具店で聞いた話なのだが、義務教育を終えた人間のほとんどは私たちを使わなくなるらしい。
黒鉛の芯だけを交換して、半永久的に使うことのできる筆記具が存在するためだ。
そのライバルの噂を教えられたとき、私は練り消しゴムが嘘を言っていると考えた。
『そんな風に資源を節約できる物が発明されたのなら、私たち鉛筆はすぐ御役御免になるわね』
本気でありえないと思っていたから、私は笑っていられた。
私たちは何かを記述するために生まれて、死ぬ。
記録の代償として私たちは命を削っていき、描いたものを消去する消しゴムも黒く染まっていく。
私も彼女も役目を果たすために命という対価を支払っていくのが当たり前だった。
だからこそ、シャープペンシルという存在は歪んでいると感じた。
どれだけ黒鉛を消耗していったとしても、芯を補充をすればまた最初と同じように機能する。
その不死性はあまりにも気味が悪く、主人の妻が使っているのを見て恐怖を覚えた。
人間だって食物を摂って身体を再構築していくが、完全に同じ身体に戻るわけではないし寿命がある。
だというのに、何故。
命のストックが無限に有るなんていう不自然な怪物の存在を、どうして人間は疑問に思わないのだろう?
幸いにも私の主人は奴を信用していないのか、鉛筆以外を使おうとはしなかった。
順調に私たちの仲間は消耗されていき、シャープペンシルの出番は一度もなかった。
今は私が使われているが、おそらく私が死んだ後も変化が起きることは無いだろう。
主人の友達が遊びに来たときに会話を盗み聞きしたが、どうやらその友達も鉛筆だけを使うらしい。
これによって推測できたことが一つある。
特に役立つ情報でもないが、わずかな希望を生むことにも繋がりそうであった。
私は買い足されてやって来た仲間たちに対して、それを伝えることにした。
『シャープペンシルは摂理に反する危険な存在だ。これは我々と人間の絵描きだけが知っている』
-End-
↓傘
なんという至言
GJ
たしかに奴らは信用おけない。
あと1センチくらい残ってるのに、なぜ芯が引っ込むのだ
66 :
傘泥棒:2009/07/22(水) 05:10:37 ID:Tg+VMtpc
晴れのち雨。今日も私は盗まれる。
雨に備えてきた人と、降らないことに賭けた人。
私は賭けに負けた人のモノになる。
自分が悪いだけなのに、雨に濡れたくないと言う。
他人が困るなんて考えず、手近にあった私を利用する。
なんて自分勝手なんだろう。
私はそいつに奪われて、古い主人から引き離される。
だけど寂しいとは思わないんだ。前の主人も同類だから。
最初の主人が私を買った。
後の八人は私を盗んで使っただけだ。
ひとから盗んで、同じように他人に盗まれた。
もう、最初の主人は私を探してはいないだろう。
たとえ探し続けていても、隣の県まで来てしまった私を見つけられるはずがない。
諦めて新しい傘を購入しているはずだ。
私に拘って、新しい傘を買わないでいられても心苦しいだけだから、それでいい。
今度はもっと高価なやつを選んでいることだろう。
私のような安っぽい外見では、気軽に盗まれてしまうと学習して。
……雨あがりの後、私は捨てられかけたことがある。
誰が使っていたかもわからない品だ、大事に使い続ける気は起こらないのだろう。
盗まれるような場所に置くのだって、わざとかもしれない。
もちろん道端に堂々と捨てていく人間は滅多にいない。
忘れたフリをして、電車や公共施設に私を置いて立ち去る。それが彼らの常套手段だ。
ところが、あの男は他人の目が無かったのをいいことに、私を川の土手に投げ捨てた。
雨が止んでいたためだろう。
水溜りだらけになった道路を自動車が通過していく音が聞こえていた。
それを聞きながら、私は役目が終わったのだと感じた。
頻繁に主人を替えていくよりも、このままゴミとして朽ちていくのが幸せかもしれないとさえ考えた。
だが、しばらくして再び雨が降り出したことで運命は変わった。
私は見ず知らずの人間に拾われ、また、雨避けの役目を任せられた。
一度きり。あるいは二度、三度の主従関係。私は使い捨てられ、どこかの誰かが再利用する。
そのとき私を拾った人間も、長い付き合いを望みはしなかった。
行きに雨が降っていても帰りに止んでいたのなら、私を所有する意味など無い。
名残惜しいなどとは思わずに、みんなが私を捨てていく。盗まれたって気にしない。
主人が悲しむのは、数時間後に雨が降るなどという場合だけだ。そう。それだけだ。
虹を見るたびに、私は今の主人との別れを悟る。
私にとって晴れは別れの時になり、雨は出会いの機会となる。
本日の天気は――雨のち晴れ。今日も私は置き去りにされ、誰かの手に取られるのを待つ。
67 :
66:2009/07/22(水) 05:14:33 ID:Tg+VMtpc
……すいません。次のお題の指定を忘れていました。
「ハサミ」でお願いします。↓
Q,なぜ、まっすぐに切ることができないのですか?
A,あなたのせいです。途中よりも最終到達点を見据えて切るようにしてください。
Q,切れ味が悪いと反省したことはありますか?
A,研いでください。砥石はネット通販でも購入できます。
Q,料理に使いたい……
A,工作に一度使用した物で調理をすることは衛生上とても危険です! 専用の鋏を用意してください。
Q,テレビですごいパフォーマンスを見た!
A,あなたが真似をするのは不可能です。手先の器用さが大幅に不足しています。
Q,紙には勝てても、石には勝てないよね?
A,相手の石を『はさんで』自分の色に染めていくゲームがあります。石にも勝てるようです。
Q,遊びなんかじゃなくって、現実の話をしろよ!
A,私の仲間には水で岩を切断できるものがいます。鋏ではないと言われてしまえばそれまでですが。
Q,切断するっていう機能が似てるだけで完全に別物だ。第一、おまえ自身は大した物を切れないんだろ?
A,はい。あなたの指を挟んだときにも、切断せずに済みました。
Q,……悪かったよ、相棒。ゴロリとわくわくさんみたいな関係に戻ろうぜ。
A,私はノッポさん派です。あなたがゴン太くん役を担当するのなら、相方でも構いませんが。
Q,よし。じゃあ早速だが、遊び道具を作ってくれ!
A,構いませんが、ちゃんと協力してくださいよ。
Q,できるかな?
A,つくってあそぼ!(逆の台詞を担当したかった……)
Q,うーむ。これを、こうして……
A,長くなるので工作シーンは『カット』します。
Q,しまった! 次のお題を決めないといけないんだった。
A,身近にある物にしましょう。そうですね……『懐中電灯』というテーマはどうでしょうか?
/終
これは新しいw
冷静なハサミがなんか妙に可愛くてよかった
まさしく新ジャンルw
そういやハサミって研いだことないなあ……
71 :
光の夜:2009/08/09(日) 07:42:49 ID:mnCI/a/M
停電の原因は地震によるものらしかった。
数時間前はしっかりと地面を照らしていた懐中電灯の光も、そろそろ限界に近づいていた。
「もうダメかな……」
私が弱音を吐くと、彼はスイッチをオフに切り替えて明かりを消した。
「諦めるなよ。ちょっと休めば回復するかもしれないだろ」
彼の主張は正しくもあったが、それは私にとっては無意味な延命措置に思えた。
「回復ってどれだけ? 新品同然にまで戻るの?」
返事は無かった。私がヒステリックになっているのに呆れてしまったのか。
あるいは彼もかなり疲労しているのかもしれない。
「バッテリーの残量を確認したとき、交換するべきだって分かってたよね?」
なのに何故、何もせずに放っておいたのかと彼を責める。
私に対して返ってきたのは、一番聞きたくない言葉だった。
「電池の交換をするってことは、お前と別れるってことだろ。それが嫌だったんだ」
彼の理由はあまりにも身勝手で、人間たちのことをまるで考えていないものだ。
「私の代わりはいくらでもいる……。あなたは食べ物に恋してるみたいなものよ」
「君は自分自身が誰かのエサになることを、運命として受け入れてるって言うのか?」
「そうよ。自分の役目を放棄してまで私に執着したあなたのほうこそ間違っている」
人間のつくる物語でも、それは当たり前の事として描かれている。
人食い鬼と人間の恋は悲劇的な結末で終わるし、野菜と人が夫婦になった話なんて聞かない。
たとえ存在するとしても、それは最終的に食物が人の形になるような展開のはずだ。
捕食関係にある存在が普通に交流を持つなんて、できるわけがない。
「せいぜい、繰り返して充電できる電池を見つけることね。そっちとならあなたも――」
どん、という重い音がした。衝撃は私にも伝わり、すぐに何が起きたのかを把握する。
「何してるのよ、いきなり机から落ちるなんて! 壊れたらどうする気!?」
「お前のいない未来なんていらない。他の誰かと一緒にいたって意味がないんだ」
ああ……こいつは馬鹿だ。私の本心にまるで気づかないなんて。
説得されたことで考えを変えたフリをして、私が死ぬのを待ってくれればいいのに。
そうすれば、私がいなくなった後もこいつが幸せに過ごしていけると思えたのに。
「ねえ、大きな音がしたのに、この人間ったら反応が無いみたい」
「……ん、ああ。そうだな。疲れて眠っているみたいだ」
私が急に態度を変えたことを不思議に思っているのだろう。
彼は何を言えばいいのか分からないといった様子だった。
「降参よ。私もあなたが好き。だから、寿命が切れたら後を追って壊れるのも認める」
「本当か? 好きって……嘘とかじゃないよな? な?」
こいつはすぐに明るくなる。暗い話をしているっていう自覚がまるでないみたいだ。
「こんな嘘つかないよ。短いけれど、死ぬまで一緒にいようね」
「ああ、もちろん!」
彼はライトを点滅させて喜び、それが私の命を削っていくことに気づいてすぐに消した。
「消さなくていいよ」
「そういうわけにはいかないだろ……」
今まではしゃいでいた姿が嘘のように、落ち込んでいる。
やはり、こいつには私が力を与えてやらないとダメらしい。
「ほら。待機状態でもちょっとずつ電力は消耗していくんだから、暗くなっても仕方ないでしょ」
「じゃあ、点滅するか?」
「ばか。そこまで無駄なことは禁止。明かりを天井に向けてもらえる?」
彼が私の言ったとおりにすると、部屋には光の柱が立った。
大気中の埃が照らされて、外出時に一度だけ見た天の川のようだった。
それからは私の命が終わるまで、私達は何かを語るわけでもなく、ずっと偽の星空を見つめていた。
完
↓テレビ
感動した!
同じく!「私」が何か明記されてない所が小憎いぜ!このぅ!
カッコ物悲し綺麗という意味のわからない言葉が出てきたぜw
GJ!
75 :
二つの主張:2009/08/22(土) 03:55:01 ID:6nG4xxIc
ある家庭にテレビとビデオの夫婦がいた。
二人は普段は仲が良かったが、くだらない事で喧嘩をして周囲に迷惑をかけていた。
その酷さはリモコンが何度も雲隠れしてしまうほどである。
これは何を録画するかで言い争った一夜についての、双方の言い分である。
<ビデオ側の主張↓>
テレビ:ふざけるな! なんなんだ、この内容は!
ビデオ:ああ、面白い。この番組は絶対に録画しなきゃだめよ。
テレビ:待った。そんな低俗な番組は保存する価値がないよ。
ビデオ:チャンネルを変えたほうがいいのね。
テレビ:うん。そうだね。別の番組を見よう。
ビデオ:最近はクイズ番組ばかりね。
テレビ:最高だな。
ビデオ:いつも同じような内容ばかりじゃない。
テレビ:みんな物知りで、すごいと思うよ。
ビデオ:探偵が活躍する推理物は……あまり好みじゃないのよね。
テレビ:ああ、確かに退屈だよね。
ビデオ:宝探しのストーリーがいいわ。最近、刺激がないの。
テレビ:チャンネルを回そう。今日は久しぶりにワクワク出来そうな気がするんだ!
<テレビ側の主張↑>
僕の身元がわからないよう、嘘を混ぜているからおかしな部分があるとは思うが、許してもらいたい。
この件は、結局のところ録画の能力を持っている夫人が勝利を収めた。
リモコンの僕はただ遠くで話を聞いているしか出来なかった。
(後日、本の山の下敷きになっている状態から無事に発掘されました)
どちらの語ったことが真実なのかは、僕の口からは話さないでおこう。
一方が正しいのだと書いてしまうと、もし僕がここに書き込んでいる事がバレたときに大変だからだ。
僕としては……どちらが悪者だと判断されても構わない。
いっそ両方が悪いと罵られてもよいはずだとさえ思う。
うん。両方とも屑だって考える人だって、きっといるんだろうね。
ああ、こんなことを書いちゃ駄目なんだろうけど、それでも僕は書かずにはいられなかった。
時代劇が見たくても、指示したとおりのチャンネルに変えろと命令される毎日。
どちらがリモコンなのか分からなくなる。
こっちがいい、あっちがいいと、板ばさみになって二人の命令を聞くのはもう嫌だ。
片方の言うとおりにしたら、今度はネチネチと嫌味を言ってくる。クソ。なんなんだ、あの性悪女。
……うん? なんだ。金槌クンか。
はははっ。どうしたんだい、こんな夜更けに。先輩に相談でもあるのかな?
また恋の相談かな。たしか意中の相手は既に他人の妻になっている――という話だったよね。
そういう場合にはだね……。って、あれ? 違う?
今日はそのことじゃない? なんだそうなのか。
自分の愛するものが、誰かを殺したいほど憎んでいたら?
そうだねぇ。難しい問題だな。簡単な悩みじゃないね。
まあ、僕ならバッサリやっちゃうけどね。時代劇で復讐とかあるでしょ。あんな感じに。
参考になったって? いやいや、お礼を言われるほどでは……あ……れ……金槌……クン……?
……どう……して…………。
終
↓次は「豆腐」で
76 :
創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 01:55:09 ID:g1R2bpqQ
ちょっと一般家庭でもありそうな感じで面白い
子供はテレビデオですね、わかります
うちのリモ子がよく失踪する理由がわかった気がする
「なぁ」
「あによ」
「前から思ってたんだけどさ、お前って豆腐じゃないよな?」
「……何言ってんの絹ごし? アンタと同じで立派な豆腐じゃない」
「だって、お前って甘いじゃん」
「玉子豆腐とかだって甘かったりするでしょ」
「デザート担当じゃん」
「別にデザートに豆腐食べる人だっているでしょ」
「っていうか、決定的なのが……」
「あによ」
「お前、原材料豆じゃねえだろ?」
「……あによ」
「いや、別にいいんだけどよ」
「あによ! 別にいいならそんな事言わないでよっ!」
「あ、ちょ……泣かなくても」
「泣いてないわよっ! ちょっと室温で放置されて水が出ただけなんだからっ!」
「……俺が悪かったよ」
「……あによ。そんな風に謝らないでよ」
「ほら、悪かったって。これでもかけて機嫌直してくれ」
「ちょ……醤油なんかアタシにかけたら、味が凄い事に……っ!?」
「でも、これで少しは大豆分、入るだろ?」
「……な、なによ……そんな気遣い、嬉しくなんかないんだからねっ……」
「泣くなよ」
「だから……泣いてなんかいないってば……」
終わり
ここまで投下です。
↓綿棒
杏仁か胡麻かで数秒悩んだ俺がいる
胡麻ならいいけど杏仁に醤油ってのはどうよw
私にもようやく出番がきた。
つまりは今日が命日になるということだ。
いつもはくだらない談議ばかりだが、最期くらいは真面目な話をしてみよう。
昔、私には友がいた。
本当の名前はもっと長いのだが、愛称であったQと呼ばせていただこう。
ああ、昔のことだと言っても、それほど以前の話ではない。
私達のような短い命の物にとっては、わずかな時間が経つだけでも過去になってしまうものだ。
……話を戻そう。
Qは綿棒だった。それも医療用の特別性だ。
人間どもの一般家庭にさえ普及しているような、私達爪楊枝とは身分が違った。
それでも私たちは親友だった。ああ、親友だったとも。
長い時間を生きられる物には理解できない、私達の間だけで共感できるものがあった。
Qは、もし生まれ変われたなら私のような爪楊枝になりたいと言っていた。
子供の工作などで玩具の材料として長く形を残せる、という可能性を考えていたらしい。
私はというと、Qとは逆に彼が羨ましいと思っていた。
人間に使い捨てられる存在同士なら、より繊細な仕事をして散っていくほうが格好がよい。
私達は度々この話をした。
リサイクルされることがありえない私達にとって、この願いが叶う事はないのだろう。
そう思いながらも私たちは互いの役目を称え合い、来世で相手のようになれる事を願っていた。
そしてある日、彼は死んだ。
Qは人類を救うために命を落としたのだ。
人間にとって害のある病原体を採取する任務だったらしい。
日頃から互いを羨んでいた私達だったが、彼は最期は笑っていた。
綿棒としての生に不満を持っていたQだったが、その死に様に不満はなかったのだろうか。
……なぜかな。どうしてだか、私は彼が羨ましかった。
自分が憧れている死に方だったからではない。
そんな感情が起こったのは違う理由によるものだ。
私達は使い捨てられることでしか、役に立てない。
誰にも活用されないままゴミとして処分されてしまう可能性だってある。
Qは見事に役割をこなして死に、当時の私はまだ死んでいなかった。
それが理由なんだと思う。あの時にはわからなかったが、きっとそうだ。
だから今日、こうして人間に使われて死ねる私は幸せなんだと思う。
唯一つ気になるのは、人間がいま私に施している装飾だ。
脱脂綿を巻きつけられた私の姿は、まるで綿棒のようではないか!
友が自分の望む物になれずに死んだというのに、私だけ……。
願いが叶ったのは喜ぶべきなのだろうが、抜け駆けしているようで後ろめたくもある。
ああ、友よ許したまえ。
私は君の分までも、望んでいた姿で働けることを精一杯に楽しんで死ぬぞ。
-終-
↓アイスクリーム
84 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/16(水) 13:47:52 ID:ZlPtVHKK
ヒロイン
ごめん、なんでもない
サ○ティワン全種擬人化したらすごいだろうな…
いつかやってみたい
そして時代はうまい棒擬人化へ
88 :
アイスクリームヤンキー:2009/10/10(土) 19:05:45 ID:AlS3pbz0
嘗めんじゃねえよ!
アタイを甘く見てっと痛え目見るからな!!
↓キーボード
たったかたかたか、たった。
たったかたかたか、たった。
歌を歌うのは僕の本業じゃないのだけれど、今何故か僕は国民的
落語番組のテーマソングを奏でさせられている。僕のご主人様って、
時々脈絡なく僕をこういう風に使うんだよね。その結果として出てくる
のは、意味不明の文字列。そりゃそうだよ、リズムだけ刻んで、別に
意識して文字を打ってるわけじゃないんだから。
でも、最近は少しだけ……少しだけだよ?……今日は僕に歌わせて
くれないのかな、歌わせて欲しいな、って気になったりもするんだ。
おかしいかな、やっぱり。
僕はパソコンに文字を打ち込んでいく為に打たれるのが仕事なのにさ。
もちろん、歌を歌いたいから歌わせて欲しいって思ってるわけじゃない。
それは僕のやる事じゃないからね。
だけど……。
たかたかたかーたたかたかたん。
たかたかたかーたたかたかたん。
僕はテーマ曲を歌い続け、そしてその瞬間は訪れる。
「あ、閃いた」
ご主人様が呟いた。今日も、また、いつもと同じように呟いた。
たかたか、たか、たかたかたか。
今まで打ち込んでいた意味不明の文字列を消去し、ご主人様は明確
に意志をこめた文章を打ち始めた。
歌は終わり、だけど僕は違うリズムを刻み始める。音楽にはなっては
いない、だけどリズミカルな打鍵の音を。
うん――やっぱりこうじゃなくっちゃね。
そう、歌の後には“これ”が来る。僕のご主人様は、僕を歌わせた後
には必ず、この滑らかな、僕本来の音を奏でさせてくれるんだ。
だから、僕は歌わせて欲しいと、そう思うようになった。歌を歌いたい
わけじゃないけれど、その後には、僕本来の音を、これ以上ないくらいに
奏でさせてくれるとわかっているから。
これから何時間か、僕は奏で続けられるのだろう。その至福の時間が
終わる頃には、ご主人様の仕事は終わる。
終わりが来るのは少しだけ寂しいけれど、それでも今この時の幸せを
全身で味わいながら――僕は音楽とは違う音を奏でるんだ――
終わり
ここまで投下です。
↓水筒
91 :
水筒:2009/10/15(木) 23:54:09 ID:iqNcYq1Q
冬は好きだ。
温かいお茶で満腹になっていると、身体の全体に力がみなぎってくるような気がしてくる。
お茶を吐き出すようにという命令をあまりされないのもこの季節が好きな理由の一つだ。
もちろん、温かな飲み物を提供して喜ばれるのも気分がいい。
夏は嫌いだ。
冷たいお茶を飲ませてもらえるのはいい。
だけど、すぐに吐き出すようにと要求される。
お腹に入れられた氷のせいで内臓に傷がつかないか心配になるのも、この季節が嫌いな理由の一つだ。
春には良い思い出がある。
少女と初めて一緒に行った遠足。
僕らは体を揺らして坂道を登り、たどり着いた山の上。
そこからの景色に彼女は興奮してはしゃぎ、そして誰もが楽しみにしていた弁当の時間。
あの子の友達は水筒を忘れてしまった。
そうしたら、彼女は誇らしげにこう言ったんだ。
「分けてあげるよ。あたしの水筒は大きいから、たくさん飲み物が入るんだ」
重たい重たいと文句を何度か言われたけれど、そら見ろ。役に立っただろうと言いたかったな。
あの時は彼女から見直された気がして嬉しかったよ。
秋の思い出は、まだない。
去年の冬から始まった付き合いだからな。まだ一年にも満たない関係だ。
だけど、何かしらのイベントはあるはずだ。
実は、大人たちが夜中に話している計画を聞いてしまったんだ。
今度の休みの日に紅葉狩りの予定があるらしい。
どういう事をやりに行くのかよくわからないが、どうやら山へ行くようだ。
山道では、また重たいという愚痴を聞かされるのだろう。
僕の身体を軽くしてやるなんて魔法は使えないが、やれる仕事は頑張るつもりだ。
最近、少しずつ寒くなってきた。
彼女に風邪を引かれたりしないよう、温かいお茶をしっかり守ろうと思う。
そうすれば、またあの冬の日のように笑顔で「温かい」と喜んでもらえるはずだ。
「……うん。こうして考えると、君たち使い捨てのペットボトルよりも幸福な時間を過ごしてきたようだ」
「さっきからうるさいぞ。高い所から落とされて壊れてしまえ」
終
↓次は凧↓
どうにも、落ち着かない。
中空に在る我と地上にある彼とを繋ぎ止めているのは一本の糸。
唯それのみである。
落ち着けと云うのが土台無理な話しなのだ。
それにしても。
凧上げといえば正月であろう。
尤も昨今では元日に凧を上げる童子もめっきり見なくなったが――そんな事はどうでも良い。
問題は、何故あの男が斯様な時期外れに凧を上げようと考え、実行したかである。
解らない。
他人の思考など、理解出来よう筈もない。
もし他人の考えが解るという人間がいたのなら、それは思い違いに他ならない。
他人の思いは届かない。
己の思いも届かない。
伝わらない。
圧倒的に隔たっている。
その溝は埋まらない。
永遠に。
永劫に。
永久に。
――だから。
だから、こうして繋がっていたいのか。
隔絶した彼我を。
糸という目に見える形で。
質量を伴った物質で。
しかし、それも。
矢張り我の思い違いなのだろう――
93 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/16(金) 16:56:58 ID:rT/aS8/R
携帯からの即興なんで、多々おかしい点はあると思いますが、そこはスルーでwついでにあげ
↓ベンチ
座られると言う事は、心地よい事だ。
だが、踏みしめられるという事は、あまり心地よいことじゃない。いや、はっきり言って
不快だ。不愉快を通り越して、ただひたすらに不快だ。
僕は腰掛ける為に生まれたのだから、それ以外の事をされると不快な気分になる。
だから今、僕の身体が靴底で踏みしめられている今、僕は不快な気分になっている
……かと言うと、そうでもなかった。
「もうちょっと待ってろよ! もう少しで、届く、からっ!」
どすんどすん。上で飛び跳ねられる振動が、じんわりと身体にしみこんでいく。率直に
言って、結構痛い。普段僕を踏んで、僕の心を踏みにじる奴は、たいていちっこい。でも
今は違う。僕を踏んでいる、踏み台にしているのは、大の大人だ。大きな人と書いて大人だ。
だから、僕は痛みを感じている。結構痛い。いや、かなり痛い。っていうか飛び過ぎ。もっと
こう、考えて飛べよ! ……とまあ、僕に口があったら言っていただろうけど、そんなものは
無いから叶わない。叶えずとも、我慢は、できた。それでも僕は不快ではなかったから、
我慢できた。
僕の上で跳んでいる彼の懸命さも、理由の一つではあったのだけれど、その人が懸命に
なる理由が――彼女の泣き顔が、僕を不快にさせずにいた。
彼女は、いつも僕に座って本を読む。お父さんお母さんに買ってもらったのだろう絵本を、
それはもう楽しそうに、面白そうに、ニコニコとした笑顔で読んでいる。雨が降った日を除けば、
彼女はいつもそうやって僕に座って絵本を読んでいる。日課、なのだろうか。習慣、なのかもしれない。
どちらにせよ、僕は嬉しかった。彼女が笑顔になる助けを、少しでも僕という存在が、僕という
存在に腰掛ける事が、出きているのだとしたら――それは、座ってもらう為に生まれた僕
としては、これ以上無いくらいに嬉しかった。
その彼女が、今、泣いている。
原因は、悪ガキだ。いつも僕の上でぴょんぴょん飛び跳ねて、僕を不快な気分にさせる
悪ガキどもが、たまたま彼女に目をつけた。いつものように笑顔で絵本を読んでいた彼女から
それを取り上げ、あろう事か、近くにあった木へと放り投げ、ひっかけてしまったのだ。
そして悪ガキはいなくなり、泣き顔の彼女がそこに残された。
彼女の泣き顔なんか、見たくはなかった。彼女には、笑っていて欲しかった。その為に
どうすればいいかは、誰にだってわかる。あの本を、木に引っかかってしまった本を取って
あげればそれでいい。
それはわかる。誰にだってわかるのだから、僕にだってわかる。
だというのに。
だというのに、僕はそれをしてあげられない。
だというのに、僕は彼女を笑顔にできない。
どうして僕はベンチなんだろう。どうして僕は誰かを座らせる事しかできないのだろう。
僕に瞳があれば、きっと僕は彼女と同じように涙を流していただろう。
それ程に、悲しく、情けなく、虚しく、腹が立った。僕は。自分が。自分に。
95 :
ベンチ ◆91wbDksrrE :2010/03/07(日) 21:23:28 ID:XefFZ4Yy
「どしたんだ?」
そんな泣き顔を並べた二人の所に、彼はやってきた。
救世主。ヒーロー。救いの手。
だから僕は、彼をせめて助けようと、頑張っている。
不快な気分になど、なろうはずもなかった。僕にできる事は、彼を手助け……足助け?
とにかく、助ける事くらいだったのだから。
彼は頑張っている。頑張ってくれている。僕がそうしたいと思った事を、そうしたいと思った
ようにやってくれている。大の大人が、手に木の枝を持ち、ベンチの上で飛び跳ねて、それを
見た他の人間がどう思うかも気にせず、一心不乱に、一生懸命に、頑張っている。
そして――
「やっ!」
――何度目かの跳躍の後、ようやく彼が手に持つ木の枝は、木の枝にかかった本へと
届き、それを下に落とす事に成功した。
泣き顔だった彼女の顔が、まるで雲間から覗く太陽に照らされたひまわりのように、
ぱぁーっと笑顔の形に咲き誇った。
うん、やっぱり彼女はこうじゃなきゃ、ね。
「ふぃー。とれたとれた……これ、だよな?」
「うん!」
彼女は嬉しそうに、いや、実際に嬉しいのだろう。満面の笑みで頷いた。
本は、少し土ボコリがついて汚れてしまっているようだけど、そんなのは些細な事のようだ。
「ありがとう、おにいちゃん!」
「ま、礼には及ばんよ」
そう言って、救世主は去って行った。何かを求めるでも無く。名を名乗るでもなく。
くやしいが、少しだけその姿は、格好良かった。
そして、僕と彼女が残され――
「……ん」
――!?
思いもしなかった行為に、僕は驚いていた。
彼女が、僕についていた土を、あの勇者の業績の残滓を、その小さな手で払ってくれたのだ。
「うん」
そして、彼女は笑った。僕に向けて――かどうかはわからないけど、笑ってくれた。
ありもしない心臓が高なったような、そんな錯覚を僕は覚えた。
「また来よっと」
彼女は、そんな呟きを残して、僕に背を向けた。
また、彼女は来てくれるらしい。
悪ガキどもがまた来ないとも限らない。それを考えれば、彼女はもしかすると、もうこの僕には
座ってくれないのではないかな、と、そんな事をちょっとだけ危惧していた僕だけれど、幸い、
それは杞憂に終わったようだ。
うん、また来てね。
「……?」
その僕の、口無き身で発した"声"が届いたわけではないだろうけれど、彼女は一瞬こちらを
振り返った。そしてにっこりと、僕の大好きなあの笑顔を見せてくれた。
ああ、本当に、本当に僕は幸せだ。
終わり
96 :
ベンチ ◆91wbDksrrE :2010/03/07(日) 21:24:29 ID:XefFZ4Yy
次
マイナスドライバー
で
97 :
◆wHsYL8cZCc :2010/03/09(火) 15:24:34 ID:uqzt5mM1
俺の頭をみてくれ。
少し歪んでいるだろう。角も丸くなっちまったよ。
もう俺は役目を果たせないだろう。かつてはおれも全鋼焼入だとイキってたぜ。回せない物は無かった。勢い余って傷つけちまったビス達には悪いと思っている。まぁガンコなあいつらにも問題はあったが。
だがそれも終わりだ。時代はマグネットタングステンだとよ。今はもう奴らの時代さ。
ただの高炭鋼の俺の出る幕じゃねぇ。
だが連中もいずれはリタイアする。俺的にはカーボンコーティング辺りが怪しいが‥‥‥
そいつらが出てくるまでは連中がトップだ。老兵は去るのみさ。
俺を見てくれ。角の丸いマイナスドライバーだ。誰にも必要にされない、ただの鉄クズさ。
98 :
◆wHsYL8cZCc :2010/03/09(火) 15:26:11 ID:uqzt5mM1
以上で終了。
じゃ、次は
100円ライター
で。
やったぁ。感想キター。
どうやら俺はオッサン書くの好きみたい。
101 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/13(土) 07:57:16 ID:kRMdeaIY
こういうスレって筆休めに丁度いいと思うんだが人いねぇwww
102 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/13(土) 18:33:50 ID:hbe73hoZ
俺も某所で名前見るまで存在忘れてたからなー。
103 :
◆wHsYL8cZCc :2010/03/17(水) 19:16:51 ID:DfYUFGj4
おいおい誰も居ねぇ。
いや、いるんだが、かわりばんこみたいになるのはどうかな、と思って
他の人を待ってるんだ。
一緒に他の人が来るのを念じようぜ。
えいしょうささやきいのりねんじろ!
ロストした・・・だと・・・。
106 :
◆91wbDksrrE :2010/04/25(日) 19:20:51 ID:fsAqwNyv
っていうかよ、俺の愚痴聞いてくんねーか?
俺ってどう呼ばれてるか知ってるよな? そうだよ、百円ライターだよ。使い捨てられるだけの
悲しい点火具だよ。まあ別にそれはいいんだ。俺だって自分がそういう境遇にあるってのは
わかってるし、それに悲嘆にくれてるってわけでもねー。そんなの愚痴ったって仕方がねえじゃん。
俺がいきなりジッポに生まれ変われるかって言ったら、そんなもん無理なんだからよ。
俺が言いたいのは、だ! 俺の名称についてだよ。
そう、「百円ライター」。これだ。
あのな? ぶっちゃけた話するぞ。俺の値段の話だ。
百二十円。
それが俺の値段なんだよ。
ちょっとだけガスの量が多かったり、点けやすかったり、二十円分俺は百円ライターの奴より
優れてるんだよ!? わかるか、俺は奴らより二十円高いんだ!
なのに俺はいつも呼ばれる。
「百円ライター」と。
この悲しさがお前にわかるか!? なあ、わかるかって聞いてんだよ! 二十円分の俺の価値
は一体どこへ消えてなくなった!?
あ、ちょっとそこ行く店員の兄さん! あんたも俺の話を聞いてくれよ!
「うーん、やっぱりこっちだけ残ってる。百二十円じゃ売れないか。百円に値下げだな」
………………。
マジデスカ?
あ、てめえコラ! 笑いやがったな!?
そうだよ、今日から俺は名実共に百円ライターだよ! ちくしょう、なんでこんな事になんだよ……。
……ああ!? だから笑うなって言ってるだろ! てめえだって冗談みたいな名前しやがって!
なんだよ、着火に使うからチャッカマンって! 親父ギャグじゃねえか! ひょろっちい身体して、
俺を見下してんじゃねえぞ!
……ああ、もう、なんでこんな事になるんだろうな。
ホントに、俺……生まれ変わったらジッポになりてえよ……。
終わり
107 :
◆91wbDksrrE :2010/04/25(日) 19:21:44 ID:fsAqwNyv
ここまで投下です。
次のお題は「ファブリーズ」で。
20円分のプライドって、見てて悲しくなってくるなw
なんか安全上の問題で100円ライターは壊滅の危機らしいし