トルク森へは6歳の頃から父様に連れられてよく行っていた。妖精と動物しかいない平和な森。
父様はそう思っていたみたいだけど、そこにはオークが一人いたの。
彼に初めて会ったのは、オークが人を食べることも知らなかったような時分で、父様の付き添いにすっかり飽きて一人勝手に森を探検してたとき。
たぶん何も考えてなかったんだと思う。いつの間にか私は彼に話しかけてて、彼はそれに優しく応えてくれた。
なにを話したかなんてもう忘れちゃったけれど、すごく楽しかったことは覚えてる。
それ以来、私は森に行くのが楽しみになった。
こっそり抜け出して彼に会っては色々な話をして色々な話を聞いた、オークが何者かわかるようになってからもそれをやめようとは思わなかったよ。
彼のことを理解している私からすればやめる必要なんてないと思ったし、そうでなくてもたぶんやめられなかったよ。
16歳になってすぐ、父様から隣国のアトゥリ王子との見合いの話を聞かされた。
私の国がどんな立場にあるか知っていたし、私の立場も分かっていたから話は受けることにしたけれど心にポッカリ穴があいたみたいになった
彼の顔が勝手に浮かんできて涙がすこしでた。 アトゥリ王子が来訪したとき父様が森に案内したの。平和で豊かな森だと。
わからないけれど、どうしても彼に会いたくなって、父様と王子が話しているときに私は抜け出して彼のところへ。
私が結婚することを伝えると彼は優しくほほえんでくれたの。すると、そいつから離れて下さいってアトゥリ王子の叫び声と同時に彼をサーベルで一突き。
王子がサーベルを引き抜くと彼は膝からゆっくり折れて地面に倒れた。
心配して探してきてみれば危ないところだったってアトゥリ王子が言うから私はありがとう、王子って言ったけど泣いてたから上手く言えなかった。お姫様ってつらいなあ。
支援
その夜、お城ではアトゥリ王子の武勇をたたえる晩さん会がひらかれた。
もちろん、私も綺麗な衣装にきがえて、にっこりとほほ笑んで、勇敢な王子さまとお姫さまの役を演じてみせた。
でも、心ではとても悲しかった・・・今にも涙がこぼれ落ちそうで、それを笑顔で押し隠さなきゃいけなかった。
そして、豪勢なパーティのしめくくりは、豪華な夕食。
そこで出た料理は、代わり果てた彼の姿だった・・・こんなのって酷すぎる・・・。
彼は、ジューシーにこんがり焼きあがった彼の肉に勇者のかかげる聖剣よろしくぶっすりとフォークを突きさし、
優しく私の口に運んでくれた。
その瞬間、私は堪えきれなくなっておお声で泣いちゃった。
お城の人たちは右も左もみんな不思議かお。
KYを見るような目でじっと私のことを見るの。
王子は、場の空気を変えようと、手に持った肉をもしゃもしゃと食べ始めた。
そして、こう言ったの。
「まずっ!」