4年のうち3年が、つまり惑星78439216-3で1500年が経過した今、老科学者は銀河特別警察により捕えられ、
政府高官の尋問を受けていた。政府の計画に背き、プロジェクトを破壊した容疑で。
科学者は椅子に拘束され、2人の男を目の前にし、無罪を主張していた。
ひとりはプロジェクトの責任を負う政府高官。もうひとりはその上司の銀河治安維持局長である。
「博士。あなたに聞こう。なぜ無愛生物の遺伝情報を、ただの人間の遺伝情報とすり替えたか。遺伝情報の作成に
失敗し、それを隠すためにスリ替えたのか。それとも他に理由があるのかを」
質問する治安維持局長のそばで、このプロジェクトに出世を賭けていた政府高官は汗だくになっている。いや、局長
からして、プロジェクトの失敗は進退に大きく響く。彼は単に、冷静さを装っているだけだった。
だが科学者の態度は、相手に怒りを鎮めてもらおうとする姿勢にまったく欠けていた。
「いいや、わしはすり替えてなんかおらん。わしは本当に、愛や利他心などまったく持たない無愛生物という政府の
要請通りに、遺伝情報をプログラムしたんじゃ」
「嘘をつけえ!!」
政府高官の冷静さはたちまち弾け飛ぶ。
「こいつらの社会はなんだ! 家庭も! 歴史も! 宗教も! 政治も! 人間とまるっきり同じじゃないか!
こいつらの作ったあらゆるメディアに『愛』が出てくる! 『正義』も『利他心』もだ! お前の裏切りは明白なんだよ!」
「わしは裏切っとらん」
と、まったく動じずに科学者は答える。
「だから面白いんじゃないか」
「何が面白い! お前がすり替えたせいで、莫大な政府予算が無駄になったんだぞ! こんなことを首相に報告できるか!
俺の出世は! 俺の将来はどうなる!」
「君の出世の道が断たれたのも、わしのせいじゃないよ」
わめきちらす高官に対し、楽しそうに科学者は説明した。
「たしかに無愛生物たちは、自分が『愛』『正義』『道徳』を持っとると主張しておる。しかもどの個体も、他の無愛生物より
愛や正義に溢れていると言い張っとる。じゃが、彼らはな、ただ自分たちの物欲やプライドや安全欲求や、攻撃性を
正当化しておるだけなんじゃ。だれかれ構わず暴れ回るより、正義のためと称して大勢を集めてリンチにかけるほうが、
より安全に、しかも確実に攻撃欲求を満たせる。他の個体を従わせる強い個体は、自分に従うことを『忠義』という道徳で
あるとでっちあげ、子分に教え込む。子分のほうでは『忠義』を破れば不正義の烙印を押され、他の子分の攻撃性の
格好の餌食になってしまうから、ますます強者に媚びへつらう。こうして強者は支配を強化する。血族グループ内でも
同じ現象がおき、そこでは『忠義』は『家族愛』と呼ばれな。他個体を痛めつける際に『お前のためを思って』『愛情ゆえに』
と言うのも同じ手法なんじゃ。彼らは愛や正義のために動いとると主張するが、それら全ては利己的欲求のためだけに
彼らが発明した観念なんじゃよ」
高官と局長は、呻き声をあげた。
「それじゃ……それじゃまるで……」
科学者はうなずいた。
「そう。わしは忠実に、お前さんたちが要求した類の遺伝情報を、完全に新しく創り上げた。が、それは結果的に人間じゃった」
老いた科学者はからからと笑う。
「人間自身が、無愛生物なんじゃよ。わしらはそれを証明してしまったんじゃ」
フレデリック・ブラウンあたりに共通の敵作って冷戦終結ってネタあったなあ
その手の何かを想像してたらニヤリとくる展開で、楽しめました。
後半の説明、好み次第だと思いますが語りすぎかもとおもた
長編の一幕であれば削るのがもったいないほうの、非常に読ませる文章だとは思うのですが、
SFショートショートでは先読みしてしまいがちなのでなんともw
序盤の「およそ2万の惑星に人類が到達」しているのに、
惑星番号が8桁+1桁な点についてはちょっと説明欲しかったかも。
重箱隅突つきばかりでスマソ、おもしろかたですお
こき下ろしただけにしか見えんが
そんなつもりはないです><
なお悪いよ。
取って付けたような「面白かった」など皮肉も同然だから。
ごめんなさい。
感想のつもりが一方的な批判とも取れる内容になってしまったことをお詫びします。
フォーティーナイナー氏の二作とも、楽しませて頂きました。
これからも頑張って下さい。
694 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 03:24:31 ID:8vDgK7p2
感想なんかしなきゃいいのに
感想なんて自己顕示欲と価値観の押し付けにすぎない
『メシエの陥穽』
宇宙には多様な生物がいる。
地球にいるような、炭素を基本構成物とする生命ばかりではない。
珪素や金属元素……さまざまな元素が生命の基本物質となる。
通常の元素ばかりではない。中性子星に息づく原子核でできた生命。波動関数の状態で存在する生命。
命の種類は、無限に近い。
いま、“光”をその本質とする生物が、凄まじいスピードで宇宙を飛んでいた。
彼の故郷はオリオン座散光星雲のひとつ。地球人はM78星雲と呼んでいる場所である。
地球人によって「ウルトラ」の名を冠して呼ばれる彼らの種族――光の戦士たちは、地球人を深く愛していた。
ゆえに、地球人に害なす様々な生物と戦い、これを倒してきたのだ。
その中でも彼は英雄であった。
その彼が、仲間とともに地球を目指している。地球人に対する殺戮をほしいままにしようとしている生物がいる、
との情報を得てのことだ。
彼はその生物の一匹の前に降り立つ。
角ばった巨大な頭部。その下に生えた六本の脚……地球人に非常に有害な生物だ。
その生物は、己よりもさらに巨大な別種のモンスターの上に乗っていた。その生物に我が子を寄生させようというのだ。
放っておけば、やがては大きい方の生物の体内で増加し、体を突き破って無数の寄生生物が生み出されることになる。
そして彼らがさらに別の生物に子を寄生させる。その繰り返しだ。このタイプの生物に滅ぼされた種や文明は、宇宙でも
後を絶たないのだ。
光の戦士は、寄生生物をためらいなく殺した。
戦いに時間をかける余裕はない。地球上では、彼の、彼らのエネルギーは著しく消耗するのだ。
だがすぐに次の戦いが始まる。寄生生物から結果として救われた、より大型のモンスター。そいつもまた、
地球人を殺戮する習性がある。そのモンスターは光の戦士に救われたという自覚もないまま、あたり一面に毒素を
撒き散らし始めた。
力は残り少ない。
それは仲間たちも同じはずだ。
異郷の者でありながら同種の光の戦士である仲間、あの獅子座から来た親友は無事だろうか。
はやく決着をつけなければ……モンスターの鞭のような触手をかわした光の英雄は、意を決してその力を振りしぼる。
必殺の光線を浴びて、モンスターは絶命した。
今日もまた多くの地球人の命が、彼らによって救われた。
兇悪な敵から自分達を守ってくれる、光のヒーローたち。
地球人は彼らをこう呼んでいる。
「ウルトラヴァイオレットレイズ」
紫外線、と。
>>689 >序盤の「およそ2万の惑星に人類が到達」しているのに、
>惑星番号が8桁+1桁な点についてはちょっと説明欲しかったかも。
まあ分かりづらいですね。
到達した惑星より発見した惑星の方がずっと多いはずなのでそれを表現したかったんですが。
紫外線を和英辞典にかけて、ウルトラマンとかけようと思ったのかねw
未知と遭遇
「あああああ。大変な事をやってしまった…」
男の両手にはヌラリンと光る宇宙人のものであるらしい薄い紫色をした体液が付着している。
「どうしようか…。まずは警察に電話を…、いやいや。相手は宇宙人みたいだから警察じゃなくてNASAか?NASA日本支部か?」
混乱しつつも男は、目の前に横たわる宇宙人をとりあえず励ましてみる事にした。
「頑張れ!地球にだって来れたんだ!お前ならやれる!きっと出来る!」
無茶だとわかってはいるが男は続ける。
「車でひかれたくらいで宇宙人が死ぬわけがない!そうだろ?そう思うよな!?俺は思うぞ!」
むくりと身体を起こし宇宙人は言った。
「ハイ。思イマス。」
唐突に生き返った宇宙人に驚き、男は引っ繰り返ってコンクリートの地面に頭をぶつける。
男の頭からはドロリドロリとした赤い血が零れだし、じわりじわりと地面に広がっていく。
「アアアアア。大変ナ事ヲヤッテシマッタ…」
宇宙人の眼前にはドロリンと広がる地球人のものであるらしい濃い赤色をした体液が地面を濡らしている。
地球人である男は二度と息を吹き返さず、宇宙人は警察に自首をした。
不条理なw
でもこれ地球人死んだの、事故であって事件じゃねえよなw
これいいなww
1レスでこんなに笑わせてくれるなんてさすがだw
「おじいさんとラーメン」
幼少の頃からラーメンが好きで、今では孫がいる年である。なのに我が味蕾は未だラーメンを切望していた。
既に好物の域を超えているやもしれぬ。
思えばラーメンの流行の変化をリアルタイムで知っている同志は先に逝っちまってばかりだ。
医者に塩分を控えるように言われようものなら、週に一度のラーメンを食するために徹底的な健康管理を整える。
六日の粗食も七日目のラーメンのためであれば厭わぬ。
死ぬまでラーメンを食い続けること、それが我が生き甲斐なのだ。
そして儂は、今日もまた、新しく出来たラーメン屋に趣いたのだ
儂は仰天した。
ラーメンを頼んで出て来たものは、ラーメンとは名ばかりの鳴門なのである。
なんじゃこれは。
これがラーメンだと。
儂は憤慨して店員を呼んだ。
「なんじゃこれは! ラーメンじゃなく鳴門ではないか!」
「なんと。おじいさん、あなたにとってこれはラーメンではなく、鳴門なのですか!」
「馬鹿にしておるのか!儂かてそこまで耄碌してはおらんぞ!」
呼びつけた若い店員は、阿呆を見る目で儂の眉間をボケたように睨みつけた。
あるいは、本当にボケておるのかもしれぬ。
「なるとはラーメンに含まれます。それは判りますね?」
「ああ、判る。だがそれとこれとは話が別じゃ」
「あなたはラーメンの事を何も理解しておりません」
「なんじゃと?」
儂は憤慨した。
生まれて物心付いてから60年に及び、儂はラーメンを好物としてきた。
その儂に向かって、その言葉は侮辱に値する。
そもそも、儂の目の前におかれているのは鳴門なのである。
ラーメンのスープもなければ麺もない。器さえ平皿だ。
何をどう考えても、この鳴門にラーメンの素質は微塵もない。
ただの鳴門だ。
「いいか、若いの」
儂は自らを落ち着かせるかのように、店員に告げた。
「鳴門が含まれてないラーメンというものも、この世には沢山あるだろう」
「屁理屈です」
「なんじゃと」
「それはあなたのラーメン像であって、他の方が思うラーメン像と一致するとは限らない」
概念の問題か。こんちくしょう、なんだって儂はこんなラーメン屋に入ってしまったのだ。
ふと周りを見回せば、皆が鳴門を上手そうに頬張っている。
塩ラーメンととんこつラーメンの優劣について、激しく論議しながら頬張っている者もいる。
儂は思う。
周りが全て基地外であったならば、儂は儂の正常さを如何にして証明できるのであろうか。
振り返ると、店員はとっくにいなくなっていた。
儂の目の前には、ラーメンとして出された一本の鳴門が転がっている。
儂はそれを手づかみで食してみた。
「――ふむ、豊満なとんこつの味がしみ出してくるわい」
だが、食感は鳴門なのである。
「それなりに美味だった。しかし、こんなものはラーメンではない。『変わり鳴門屋』に看板を変えることを勧めるよ」
儂は憤慨してそう告げて、店を後にした。
- - -
「なんだい、あの変な老人は」
「時代の変遷についてこれないんだろう。俺もオールド・スタイルのラーメンはそれはそれで好きだけどさ……」
「今時、麺を啜るのかい? 50年前ならいざしらずさ、2100年の今ではもうラーメンって言ったらこの鳴門型ラーメンじゃないと納得できないよ」
「時代の変遷って、昔の常識をひっくりかえしちゃうんだろうかね」
「さあねえ」
end
鳴門のみのラーメンは嫌です><
ちくわにラーメン練りこんだ奴をテレビでやってたの思い出した。
しかし、どう変遷したんだw
『食育』
異変が起こったのは、小学5年生の時だった。
「ねえケンタくん」
「なんだよ」
小声で話しかけてきたのは、東京に住んでいる従弟のタカシである。タカシとその両親は夏休みを利用して、
田舎で農家を営んでいるケンタの家に遊びに来ていた。
タカシはすぐにケンタやその友人たちと仲良くなれた。が、田舎の子どもたちにも、敵対グループというのは
あるものである。彼らに追われ、ケンタとタカシは家のビニルハウスに隠れていた。タカシはそこで初めて、
切り離されてスーパーに並んでいる実の部分だけではない、「なっているピーマン」というものを見たのだった。
悪童たちに聞こえないよう、ささやき声で二人は会話を交し合った。
「ケンタくん。ここのピーマン、ちょっと変わってるね」
「うん?」
「ほら、ちっちゃなでっぱりがあるよ」
そう言ってタカシはケンタに、ピーマンを1つもいで手渡した。確かにそのピーマンは変わっていた。
底の方から2つ、そして両脇から2つずつ、小さな突起が見えていたのだ。
「ああ、ときどき変な形のがあるんだよ。スーパーじゃ、キレイなのしか並んでないからな」
「でもみんなそうだよ」
「え?」
ケンタはピーマンなど見慣れ過ぎていて、よく見ていなかった。慌てて他のピーマンを次々と手に取ってみた。
確かにタカシの言うとおりだった。あのピーマンもこのピーマンも、すべて4つのとんがりを持っていた。
「なんだこりゃあ」
「いたぞ!!」
ケンタはつい普通の声を出してしまい、敵対グループの少年達に見つかる破目となった。タカシとケンタは全速力で
走って、なんとかケンタの家まで逃げ帰った。
ケンタの父親は茶の間でのんびりとビールを飲んでいた。ケンタの言うことを聞くと、ピーマンのことを報告した。
父親はすぐ出かけて行き、二時間後に物凄く不機嫌な顔で帰ってきた。商品価値があるのは普通、形の揃った野菜だ。
「ケンタ、お前、野菜に何かしたんじゃないだろうな」
ケンタは首を横に振った。冤罪もいいところである。何をすれば野菜がああなるというのだろうか。
「オオノさんとこに行って来る」
焦った様子で父親は隣家へと向かった。隣家といってもかなり大きな畑を挟んでいるので、それなりの距離がある。
隣家では無農薬有機農法の野菜を作っている。そういうものを有難がる人たちには、ある程度形が崩れていたり、
虫の喰い痕があるような野菜を歓迎する傾向にある。自分たちが特別な、意識の高い消費者であることを野菜の
見た目から確認したいのだ。外見に過剰に執着するのはどちらの消費者も同じである。そして隣家では、タカシの家の
普通の野菜のうち形のくずれたものをこっそり買い取って、有機農法野菜の中に混ぜ込んでくれているのだ。
タカシの家では普通では売れない野菜を処分できるし、隣家では格安で野菜を仕入れることができる。
当然、隣家も無尽蔵に買い取ってくれるわけではない。形の崩れた野菜の数がやたらに増えたりしたら、いかに鈍感な
有機農業信者にもバレてしまう。父はどれだけ買い取り量を増やしてもらえるか交渉に行ったのだった。
もちろん小学生のケンタに、こんな大人の取引が理解できたわけではない。
ただ、父親が夕方、おもしろくない顔で帰ってきて、叔母の前で首を横に振ったことは確かだった。
翌日、ケンタとタカシは川へ魚とりに行った。
タカシもすぐにやり方を覚えたが、今度はケンタが首をかしげることになった。
「ヒレが長いんだよ。これと、これが」
捕った魚のお腹の方から出ている4本のヒレを指してケンタは言った。タカシは同じ種類の魚を詳しく見たことが
なかったので分からなかったが、確かに普通の魚のヒレより、ちょっと長いような気がすると同意した。
タカシとケンタは魚を入れたバケツを持って、ケンタの学校の先生の家へ行った。ケンタの担任は理科が専門の
若い先生で、生き物にとても詳しいのだ。
先生は獲った魚を難しそうな専門書と見比べて「確かに胸鰭と腹鰭が長いね。これはアユのヒレの長さじゃない」と
言った。
「でも他の特徴は、まちがいなくアユだ。別の種がどこかから川に入り込んできたわけじゃない」
ケンタは、先生に昨日のピーマンのことを話した。
「ふうん」
先生はしばらく何事かを考えていた。
「調べてみるよ。何か分かるまで、川で採った魚は食べないほうがいい」と先生は忠告し、2人を家に帰した。
その翌日、先生はケンタの家に来た。
結局ケンタの畑で作っているすべての種類の野菜を何個かずつ分けてくれというのだった。
父親は最初、断ろうとしていた。自分の畑の野菜が何か怪しいから調べさせろなどというのは、どう贔屓目に見ても
愉快な申し出ではない。だが、もし野菜に何か――たとえば、とんでもない毒物が含まれているとか――起こっていた
場合、誰かが食べてしまう前に調べないと大変なことになるという先生の説得を受け、しぶしぶ承知した。
ピーマンの他にトマト、ダイコンなどの野菜が目の前に並べられた。
どの野菜にも、4つの突起がついていた。特にダイコンやニンジンなどはどれも二股になっており、さらに両脇からも
分かれている。人間の手足のように。
「まるでマンドラゴラですね」
きょとんとしているケンタとタカシを見て、先生は笑って説明してくれた。
マンドラゴラというのは外国の昔話にでてくる野菜のお化けで、引き抜くときにものすごい悲鳴を上げて、その悲鳴を
聞いた人は死んでしまうのだそうだ。
「先生、縁起でもないこと言わねえで下さいよ」
父親は渋い顔をした。
「いや失礼。ほんの冗談です。とにかく、収穫にはまだ間があるのでしょう? 安全が確認されるまで、ご自宅でも決して
この野菜は召し上がらないで下さい」
魚のときと同じことを言って、先生は帰って行った。
3日後に、先生と一緒に県の役人がやってきた。
「マンドラゴラどころじゃない」
先生は呻き声をあげた。初めて見る役人たちの声はもはや、悲鳴であった。
それぞれ程度は異なるものの、手足に見える分かれ目の位置から察して「顔」がありそうなところに窪みができていた。
まるで人間の目や口のように。さらに4つの突起の先端には、それぞれ切れ目が生じていて、手足の5本の指を
表現しているようだ。
「変化が早すぎる」
そう言って先生は、それから毎日ダイコンや他の野菜を、幾つかずつサンプルとして持って行った。ケンタも手伝った。
毎日毎日、少しずつ人間に似てくる。5日もすると、ダイコンはもはやダイコンには見えず、気味の悪い人形のような
ものになっていた。顔にあたる部分には、目や鼻、口のような窪みまで出現している。豆や果物、芋など球形に近いものは、
人間の全身ではなく生首に似てきている。
アユのヒレはますます伸び、図鑑で見た深海のサンキャクウオのようになっている。違うのは、胸びれだけでなく
腹びれまで伸びていることで、いわばヨンキャクウオになっている。それと反比例して、尻尾の方が小さくなっていた。
そして頭は丸くなっていく。カエルになりかけのオタマジャクシのようだ。
が、カエルのようにずんぐりした体型にはならなかった。ダイコンやピーマンと同じく、だんだんと人間に似てくるのだ。
しかもアユだけではなく、他にも色んな魚が同じように形を変えている。不思議なのは、変わる魚はものすごい速さで
毎日毎日形が変わっていくのに、変わらない魚はまったく変化しないことだった。
先生はケンタにこんな話をしてくれた。
「僕が子どもの頃ね、なんて言ったかなあ、テレビでなんとかマンってヒーロー番組をやっていてね。悪い科学者たちが
色んな動物を不思議な機械で進化させて、人を襲わせるんだ。その動物が進化した怪物たちっていうのがね、みんな
人間みたいに立って歩くんだよ」
先生は続けた。
「もともと人間は、というより全ての獣は、魚から進化してるんだ。ユーステノプテロンという魚のヒレが発達してできたのが、
獣の四つ脚や鳥の翼、人間の手足なんだよ。ちょうどこのアユみたいにね。もちろん、テレビで怪物が立って歩くのは、
人がぬいぐるみを着て怪人をやらなきゃいけないからなんだけど、ひょっとしたら今の動物たちも、人間と戦う力をつける
ために進化しているのかもしれない。いつの日か、人間は彼らに襲われるのかも……」
ケンタが怯えた顔をしたのに気づいたのか、先生は慌てて笑顔を作ってみせた。
「大丈夫だよ。普通の生き物が立って歩いたり、巨大化して襲い掛かってくるなんて、そんなのはテレビや映画の
中だけの話さ」
もういいよ、手伝ってくれてありがとう、外で遊んでおいで。先生はそう言って、ケンタを青空の下へ送り出した。
その晩、テレビのニュースを見て一家は仰天した。
形が変わってきているのはケンタの家の野菜だけではなかったのだ。何百キロも離れた別の地方でも、同じような
野菜が発見されたらしい。
テレビの中ではその野菜は「ヒトガタ野菜」と呼ばれていた。どうも見つかったのは一つだけらしく、奇妙な突然変異
なのか、誰かのいたずらで作られた人工的なものかぐらいに思われているようだ。生物学者や植物園の職員さん、
超常現象研究家といった人たちが、ああでもないこうでもないとコメントを交しあっていた。
30分ほど見ていてCMが終わったとき、司会の女性アナウンサーが
「ええ、ここでお知らせがあります。全国の視聴者の皆様から『同じようなヒトガタ野菜を自分のところでも見た』という
お電話やメールが続々と寄せられております。すでに対応が困難なほどの数のお電話が来ておりますので、同様の
体験をされた視聴者の方は、なるべくメールにてお知らせくださいますよう、お願い致します」
その番組で火がついた。
日本中の農作物が同じ現象を起こしているらしいことが間違いない事実として報道されたのは、翌日のことだった。
テレビに映ったヒトガタ野菜たちは、ケンタの家の農作物の数日前の姿だった。父親は認めるのを渋ったが、どうやら
ケンタの家の畑がいちばん「ヒトガタ化」が早かったらしい。
食品業界は大パニックになった。全国で野菜の値段が10倍以上になった。当然だろう。人間の形をした野菜なんて、
いやどんな形であれ、正体不明の異変に影響されていることが一見して明らかな野菜など、恐ろしくて食べられる
はずがない。『野菜ゼロ健康食のススメ』などという本が、筆の早い、それに比例して書く内容がいい加減なライターに
よって書き上げられてベストセラーになった。
誰もがヒトガタ化していない野菜を手に入れようとして、熾烈な競争が行われた。たまたまヒトガタ化の遅かった畑の
農家は大儲けをしたが、大した違いはなかった。ほんの数ヶ月ほどで、世界中のほとんどすべての農家の野菜が同じように
ヒトガタ化したからだ。
もちろん、あらゆる大学や政府機関が必死になって原因を突き止めるべく努力したが、まったく何の手がかりも
つかめなかった。
真っ先に分かったのは、それらの野菜からは異常な化学物質や微生物や放射線など、まったく検出されなかったと
いうことだった。ラットその他のどんな実験動物に食べさせてみても、なんの病気も遺伝的な異常も起こさなかった。
次に判明したのは、ヒトガタ野菜が遺伝子レベルで変異を起こしており、つまりヒトガタ野菜の種子から誕生するのは、
やはりヒトガタ野菜であるということだった。しかしDNAをいくら分析しても、ヒトガタが毒を持ったり、危険な物質が
残留したりしている気配は、まったくなかった。
つまり、自然な変異とまったく区別がつかなかったのである。
ある学者は、この現象を「人間に喰われないための合理的な進化」だと言った。自分達を喰う事に人間が抵抗感を
覚えるよう、このような形に変化したのだと。ケンタは先生がこの説を支持しているのを聞いたことがある。しかし、
あくまでも仮説に過ぎず、具体的な証拠は何もない。
ついに科学者たちは「現在知られている限りのあらゆる科学的な調査方法に基づけば、ヒトガタ野菜は『食べても
安全である』と結論せざるを得ない」という合意を発表した。
しかし気味が悪いことには変わりがない。人々は少しでもヒトガタ化の遅い作物を高値で取引するようになった。
業者たちは、ほとんどのヒトガタ作物を丸ごとのままで売らず、もとの形が分からないように加工して売ろうとした。
これに消費者団体や主婦団体が噛み付いた。元の野菜がヒトガタ野菜であることを隠蔽するのは許せない、消費者が
ヒトガタでない野菜を選択する権利を侵害しているというのだ。特に、ヒトガタ化の進んでいない野菜を買える比較的
高所得者の婦人にこの手の意見が目立った。当然だろう。どうせヒトガタ野菜しか買えない低所得者ならば、その事実を
見えなくしてくれるのはありがたいが、選ぶ余裕のある者は確実にヒトガタでないものを選びたい。貧乏人に足を
引っ張られるのはまっぴらだというわけだった。
一方、業者の側では、形の変わって見栄えの良くない作物を加工して売るのは昔からやってきた正当な商行為であると
反論する。そもそもヒトガタ野菜なんて言葉はマスコミの作り出した俗語に過ぎず、法律用語でも科学用語でもない。
どこまで変形していればヒトガタなのかという明確な定義もない。単なるフタマタ大根かも知れないものに「ヒトガタ野菜」
なんて表記はできないと言う。
国会は新しい法律を作り、「ヒトガタ化した加工野菜を売る場合には材料がヒトガタであることを明記すること」と業者側に
義務付けた。そうすればヒトガタ野菜を避けたい消費者は、高いお金を出してもそうすることができる。ほんのわずかの間、
この法律を推進した政治家達は世論に褒められた。ほんのわずかの間。
選択の自由などというお題目は、たちまち無意味なものとなった。ほとんどすべての野菜がヒトガタ化し、非ヒトガタ野菜
がニンジン一本10万円などという値段に跳ね上がるのに、一年とかからなかったからだ。結局この法律は、ヒトガタ野菜を
そうと意識したくない消費者たちに、精神的負担を課し続ける役割だけを果たすことになった。「この野菜はヒトガタですよ。
ヒトガタですよ。ヒトガタですよ。あんたたちは人間と同じ形のものを食べてるんですよ……」と、業者は加工商品にも
書き続ける義務を負い、消費者はそれに耐えることを強いられた。
家畜も同じ運命を辿った。牛や豚は、後ろ足で立ち上がった。最初はまるで動物園のレッサーパンダやミーアキャット
のようにたどたどしい歩き方だったが、それを可愛いと思う人間は1人もいない。しかも日を追うごとに彼らの骨格は
直立二足歩行のスタイルを兼ね備え、牧場はミノタウロスの村と化した。さらにニワトリなどの鳥類は外見の変化に加え、
オウムのように人間の言葉を真似る能力まで身に付け始めた。魚たちもオタマジャクシと化した時点で変化が止まった
わけではない。彼らも変異した。体の前半分からヒトガタになり始めて人魚のようになったり、逆に下半身から変化したりした。
およそ食用の生き物すべてが、変形していったのである。
食用の?
そう。それは奇妙な共通点だった。ヒトガタになるのは、人間が食用にしている生物に限るのだ。このことはかなり早い
段階で指摘されていた。ケンタが川辺で気づいた、ヒトガタに変化しない魚は、人が食べない魚だったのだ。
それではというので、これまで一般には食べられてこなかった生物の栽培や養殖も試みられるようになった。野草に
ネズミ、野鳥、爬虫類、深海魚から昆虫に至るまで、あらゆる生物が試食され、なかには意外と美味しいことが
発見されて、食料品として立派に流通したものもあった。が、さらに不思議なことにそんな生物でも、人間が食べるように
なってしばらくすると、ヒトガタに変わり始める。
結局、人々は諦めて、人間そっくりの物を我慢して食べることにした。慣れてしまえばどうということはない。人間たちは
最初、必死に自分にそう言い聞かせた。後には言い聞かせるまでもなく、本気でそう思うようになっていった。
実際、ヒトガタの味は変質していなかった。豚は二足歩行していようが豚肉の味がしたし、ニワトリの肉はいくら人間の
口真似をしようとあくまで鶏肉であった。
いや、むしろ味は向上していた。
あるテレビ局が料理番組の中で、数名のタレントに二皿の同じ料理を食べさせ、味を比べさせた。片方はヒトガタ食物、
もう一皿は貴重な非ヒトガタ食物でできていたが、外見からは分からないように料理されていた。その結果、ヒトガタの
食物のほうがずっと評判が良かったのである。この番組に出演していた某女優はテレビ局を告訴した。彼女はヒトガタの
食物を絶対に食べないという信念の持ち主なのに、告知されず食べさせられたと。テレビ局側はお返しに、その女優が
残り少ない非ヒトガタ食物を大金に物を言わせて買い占め、庶民を「人食い人種」と呼んで侮蔑していることを私生活を
ワイドショーで大公開し、女優を失脚させた。彼女は経済的にも立ち行かなくなり、庶民たちに混じってヒトガタ食物で
食いつなぐしかなくなった。
こうしてヒトガタ生物たちは、あいかわらず人間に食べ続けられることになったのである。
『ヒトガタ事件』は終息した。いや、定着してしまった。
「……お久しぶりです、先生」
ケンタは老人に挨拶した。
「久しぶりだねえ、ケンタ君」
当時とは変わった、しわがれた声で先生は答えた。
もちろんケンタの外見も、あの頃からは変わってしまっている。もう父や母も亡くなり、ある会社で重役を務める彼を、
ケンタなどと名前で呼ぶ人間は周囲にいなくなっている。
あれから四十年。
ようやく、食用の生き物たちが形を変えたわけがようやく分かった、とケンタは考えていた。その意見を先生に話した
ところ、先生はしわがれた声で「きっとそうだね」と頷いたのだった。
あの生き物たちは、食べられないために人間の姿を模したのではなかった。
食べられるために模したのだ。
人間そっくりの生き物を殺して食べることに慣れていった人間たちは、少しずつ、本物の人間を殺すことにも抵抗が
なくなっていった。現に殺人事件の発生率は、あらゆる国で数百倍以上に膨れ上がっている。戦争と内戦も急増し、
世界人口は減少へと転じた。減少率はどんどん高まっている。
生き物たちの最大の天敵、人間を、人間自身に淘汰させる。これこそが彼らヒトガタ生物が進化した、
自然の目的だったのだ。
ケンタと老人の頭上を、自衛隊の航空機が飛んでいく。
第三次世界大戦のはじまりだ。
(了)
長い割に説明不足じゃないか?結末に関係ない描写は面白いが、落ちまでの流れが適当過ぎる。
まさかこんなオチが来るとは
文章が読みやすくて引き込まれてしまったぜ
714 :
創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 21:45:30 ID:uxmcK+Yp
「最後の夜」
ほんとうは、ちょっとした、てちがいだったそうです。
WHOっていうそしきが、たいさくをけんとうした時にはすでに手おくれで、
はかせの作ったひはかい型どみなんとなのましんというお薬は、世界中にまんえんして、すべての人類をせいぎょしちゃったんだとはかせが言ってました。
わたしはまだ眠くないので、はかせに水をあげます。
あす、雨がふらなかったら、かわいそうだからです。
「もういいんだよ。君もおやすみ? あの花壇の脇がいい。あそこはきっと良い土で、過ごしやすく、儂とそう離れる事もない」
はかせはそう言いましたが、わたしはまだ眠くないので、眠くなったらそうすると言いました。
どこかのお国が、核ミサイルを発射するというニュースが流れた翌日に、はかせはかいはつ済みのお薬を開封しました。
でも、そのお薬は、うんぱんちゅうの事故によってこわれ、はかせはどうろのまんなかで、真っ先に木になったんだそうです。
よくわからないけど、ふくさようっていう魔法なんだって。
それで、半月あとには、はかせはしゃべれなくなっちゃうんだそうです。
となりの家のミーちゃんも、ミーちゃんに毎日えさをあげてたおばさんも、ぢめんに根を生やしていました。
おばさんはきのう、「ほんとうにきもちいいのよ。こわくないのよ」っていいました。
きょう、おばさんはなにもしゃべってくれませんでした。
はかせもきょう、「いがいといいものなんだよ」といいました。
あすは、しゃべってくれないかもしれません。
いえにもどってから、わたしはすこし泣きました。
ああなるのは、いやです。
ねむったひとから、ああなりました。
みっか目で、とても眠いけど、こわくて、おきてました。でも。
でも、ねむけがとても、きもちよくなって。
わたしももう、げんかい、みたいです。
どこかで、せめて人らしく寝ようと思います。
どこにしようかな。
そうだ。あの椅子で寝よう。
あそんでたら、はかせが怒ったあの揺り椅子を、ひとりじめするんだ。
窓の外ははれていて、
みかづきが、
きれいで
了
この、こも、いすの上で木になるのかな
すこし、かなしいおもいました
716 :
創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:13:30 ID:FbCpP+dw
a
88 :一郎 ◆3hGYlvzz3g :2009/06/01(月) 20:21:59 ID:5j2uqSNXO
第2次世界大戦のさなか、敵地にてあてのない味方からの救助を待つ5人の日本兵がいた
「クジをひこう」
切り出したのは小島だった。食料が底をついてから一週間後、俺たちはクジを引いた。
「当たり」クジを引いたのは言い出した小島だった。
まさか食うか食われるかの戦場で味方を食うことになるとは誰が想像しただろうか
俺たちは小島を食った。
味は…覚えてない…
言い出しっぺに限ってこうなるんだよな、マヌケな奴だな。と俺は思った
小島…本当にいい奴だった
それから一週間後、「当り」クジを引いたのは俺だった
走った
みんな目の色を変えて追いかけて来る
死にたくない。死にたくないんだ。
「俺はクジを引くために生まれて来たんじゃないんだぁ!!!」
気が付いたらそこは草一つない荒野だった
悪い夢でも見てたのかな?それとも死んだのかな?
極楽浄土にしては殺風景だな…
そう思いながら歩いた。死んでも腹は減るらしい
何時間歩いただろう…一向に風景は変わらない…
ここは、地獄なんだな…そうだよな、親友の小島に…あんなことしたんだもんな…
もう…歩けない…小島…ごめん
89 :一郎 ◆3hGYlvzz3g :2009/06/01(月) 20:25:02 ID:5j2uqSNXO
「起きて!ねぇしっかりして!」
眩しい…!なんだか見慣れないものが並ぶ綺麗な部屋だ。そして女の子がいる
「は、腹…減った…」
女の子「え!?うんわかった!ちょっと待ってて!!」
バタバタと支度し彼女は泥水のようなものを俺に食わせた。
味は…うまくはなかった…と思う。
「私は翼!ねぇあなたはどこからきたの!?」
俺も聞きたいことは山程あったけれど今は腹が減ってそれどころではなかった。
俺が無我夢中に食っているときも彼女は目を輝かせ無我夢中に話していた。
しかし俺が飯をもっとくれと言うと笑顔が消え、顔色が変わった。
翼「それは…ダメ」
「くれっつってるだろ!」
翼「…それは…ダメなの…」
彼女は泣いた
女の子を泣かしちゃいけないと母さんに言われてたことを思い出して俺は謝った
それから彼女の話で知った
ここは…4120年の日本だった…
90 :一郎 ◆3hGYlvzz3g :2009/06/01(月) 20:28:39 ID:5j2uqSNXO
俺と彼女が会ってから一日が経った
飯が泥水みたいなのということ以外はいいところだ
彼女は明るく本当によくしゃべった。
「歳は…えぇっとたしか17!」と言っていた。
それがたしかじゃなく確かなら俺と同じだ
俺も自分が1945年から来たことを話すと彼女は奇跡やらタイムスリップなどとはしゃいでいた
お互いこの状況だからこそ、お互いの話を信用できたところはあった
だからこそあと三か月ばかしで戦争が終わったことを聞いて、俺は行き場のない怒りを覚えた
そして彼女に当たり散らすように話した
本当は兵士になんてなりたくなかったこと。もっと勉強したかったこと…
親友の小島のとこ…そして…クジのこと…
俺は激昂しながら泣いていた
彼女も泣いた。
そして彼女は言った
「本当に奇跡だよ。私達がこうして会うのは運命だったんだ」と。
そう言いこの世界のことを話し始めた
91 :一郎 ◆3hGYlvzz3g :2009/06/01(月) 20:30:42 ID:5j2uqSNXO
2116年、彼女は13歳だった
彼女は彼女の父が設計した最新鋭の核シェルターを母と見学しに行った
その日、全世界に核が放たれた
もう理由も原因も知る術はない
とにかく世界は滅んだ
彼女達を除いて
世界に残ったのは父、母、研究者2人、そして彼女の5人だった
世界に5人しかいないことが完全に証明され、食料が尽きたころ、彼女の父が言った
「クジをひこう」と
このシェルターには自分が開発に携わった二つの装置があるという
生命体を高品質の食料にする装置、そして500年間コールドスリープできる装置が…
そして「当たり」を引いたのは父だった
そして四人は500年間コールドスリープした。まるであてのない…宇宙からの助けを求めて…
500年ごとにクジを引いた
そして彼女が残った
コールドスリープは身体に重度の負担がかかるため500年に一度、
一年の栄養補給と健康検査が必要なのだという
それが今だったのだ
彼女の一年はあと二日で終わるという…
俺は言葉を失った
92 :一郎 ◆3hGYlvzz3g :2009/06/01(月) 20:31:54 ID:5j2uqSNXO
翼「だから…こうするしかないの」
彼女は話し終わるとクジを出した
「もうクジはごめんだ!」
俺はクジはねのけ外に出た
翼「どこまで歩いても何もないよ!」
「うるさい!!」
本当に何もなかった…
そして夜は凍えるほど寒かった…
俺は情けないことに日が暮れると唯一の建物に帰った
翼「待ってたよ。話を聞いて…。あたしのお父さん…クジを…一つのクジを離さなかったの…」
「え?」
翼「お父さんはあたし達のためにクジをひこうなんて言った…その次の人も…みんな…」
俺はハッとした
小島…!お前もそうやってクジを作ったのか?
お前クジを引いたとき…笑ってた…ホント俺はドジだなって…みんな後は頼むって…
そうとも知らず、俺…俺…
俺は声をあげて泣いた
93 :一郎 ◆3hGYlvzz3g :2009/06/01(月) 20:34:32 ID:5j2uqSNXO
もう覚悟は決まっていた
「一度亡くした命だ…俺が犠牲になるよ。」
翼「ううん。あなたは生きて。あなたがここに来たのは…運命なんだよ…きっと…あたしじゃダメだと思う。」
「そんなこと…!!」
翼「それに!それに…あなたの払って地面に落ちたクジ…『はずれ』だったよ?
だから気にする事なんてないの。…ね?」
彼女はそう言い微笑んだ
俺は何も言えなかった
翼「こっちに来て!この家のこととか機械の使い方教えるね!」
彼女は俺の手を引いて走った
残りの二日は彼女と目一杯話した
本当に楽しかった
俺は彼女を…愛していたんだと思う
そして彼女を食べること一年、俺は眠った
次に起きるとこはどこだろう。
4621年。世界はどうなってるかな?
終
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721 :
創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 09:54:38 ID:1yiK1ree
説明不足感もあるけど良い雰囲気だ
>>722 しかし残念ながら藤子Fの「カンビュセスの籤」とまるで同じだ。
>>723 ありがとうございますー。忘れかけてた頃に反応があってびっくりしましたw
727 :
記憶喪失した男:2009/07/29(水) 14:56:23 ID:g/exD9rQ
「恋する遺伝子」
人類の遺伝子の中には、恋する遺伝子がある。人類という体は、
恋する遺伝子がお互いに出会うための媒介となるタンパク質にすぎない。
未来になり、人類は遺伝子工学を使い進化していった。
ある人類は長身になり、やがて巨人となった。ある人類は翼を生やし、空を飛んだ。
ある人類は青い血を流す魔族となり、ある人類は角を生やした鬼となった。
人類は、多様に進化しすぎてしまったため、やがて、本来の形をみな忘れてしまった。
あそこに飛んでいる白い天使は何だ。あそこを歩いている槌を持った巨人は何だ。
天使と魔族は、お互いに正反対の場所を好み棲んだため、
進化した天使はまるで羽の塊のような毛むくじゃらの動物になった。
進化した魔族は、吸血する触手の塊になった。
数千年後、天使と魔族が出会った時、お互いに自分たちが人類だとはわからなかった。
「ふふっ」
「ぎぎっ」
天使と魔族は出会うと、お互いに引き合い、抱き合った。
何千年の時を超えても、人類の恋する遺伝子が残っていたためだった。
わたしたちはお互いに好きなもの同士。そう遺伝子はわかっていた。
浪漫の欠片ぐらい感じさせる努力をしようぜ
若干独りよがりな完結感がある
729 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/29(水) 19:26:16 ID:4Y4IjD5G
>>727 描写が足らない
個性が足らない
言葉が足らない
それゆえ面白みがまるでない
ありがちな題材であっても面白いものは面白い
それなのにこれが絶望的なまでに面白くないのは
描写、個性、言葉、ありとあらゆる面白さを表現するための、情熱と勢いが足りないから
板全体的に批判厨・批評厨が発生してますね。
>>727 すっきりした読後感でした。
ショートショートでは捻りやギャグが欲しいところですが、これはこれで。
煽りを気にせずまた投下してくださいね。
ちょw
「永遠の命」
「・・・て・・・ねぇ・・・起きなさいってば! 」
「・・・ん・・・やあ、マリア。
お早うのキスは? 」
あれ?
俺ってこんな声だっけ?
「なに寝ぼけてるのよ!
早くそこの服を着て! 」
服?
ああ、この椅子の上の・・・ん?
何だ、この小さい手は?
グッ、パッ、うん。
俺の手に間違いない。
「たっ、大変だ!?
俺が子供になってる! 」
「あったりまえでしょ!
あんた再生したばっかりなんだから。
詳しい事は後で話すから、早くして! 」
「えっ?
じゃあ新しい星に着いたのか? 」
「たった千年ぽっちで着けるわけ無いでしょ!
話はキャンプに行ってからよ! 」
おっと、これは怒らせない方が良いな。
何だか体がぎこちない、ってか
動くけど借り物の体みたいで変な感じだ。
「よし、着替えたよ」
マリアが横目で俺を見ると、
腕の通信機に向かって叫んだ。
「マ〜ッシュ!
ターゲットを確保したわ。
迎えに来て! 」
ドアがスライドして開いた途端、
けたたましい銃声と爆音が聞こえる。
「な、何だこりゃ!
戦争が始まってるぞ! 」
「始まってないわ。
続いてるのよ」
電動サイドカーに乗ったサングラスをかけた男が
耳障りなブレーキ音を立てて乗りつけた。
サイドカーにマリアと俺を乗せると、
またスキール音を響かせて、でこぼこになった
通路を疾走する。
「どっ、どーなってんだ! 」
「どーしたもこーしたも無いわ!
あいつら、私たちを殺すつもりなのよ! 」
「あいつらって誰なんだ! 」
「あたしたちのコピーよ! 」
落ち着け落ち着け、俺。
えーっと、まず今の状況を整理してみよう。
俺たちは、地球から宇宙の深遠へ
居住できる星を探す長い長〜い旅に出た冒険者だ。
だが、まともにやったら生きて辿り着けるわけが無い。
そこで考え出されたのが、記憶を記録媒体に保存して
クローン再生する手法だ。
全身を冷凍マグロにして保存するより、
冷凍した胚幹細胞から再生した方が楽だからな。
だが成長が早くなるわけじゃないから、
記憶保存した脳に適した年齢まで体も培養して
一丁あがり、ってわけだ。
記憶は頭に埋め込まれた通信機で、
神経組織をスキャンした時に記憶媒体を書き換える。
面倒くさいように感じるが、亜光速に耐えて
知恵や経験も再生できるんだから最高の方法・・・のはずだった。
「それで、何でコピー・・・いや、
俺たちは俺たちを殺そうとするんだ? 」
「さあね、聞いてみたこと無いもの」
「何だって!」
「だって奴ら捕まりそうになると自殺しちゃうんだもん。
私たちだってそうよ」
「なんて下らない事をしてるんだ!
俺たちは選び抜かれたエリート中のエリートなんだぞ!
今すぐ止めさせよう。
いや、止めよう」
「そんなの、ここ数百年出ては消える妄想よ。
提案した奴が、向こうの自分と話すんだけど
すぐ殺し合うもの」
「分かった、俺がやってみる」
「やあ、俺」
「よう、俺」
あっちの俺は20才くらいだ。
何だかそれだけで負けてる気がする。
「なあジジイ俺、こんな不毛な事は止めるよう
そっちを説得できないか? 」
「それはそうだチビ俺。
だがお前は分かってないんだな」
「何をだ、ジジイ俺?」
「そもそも何で俺たちが二人いると思う?」
「そう言えば変だな」
「つまりだ、片方がバックアップとして
もう一方が死んでも乗組員が不足しないように
作られてるんだ、チビ俺」
「なるほど、そうなのかジジイ俺」
「そこでだ、記憶を再生されるのはどっちだ? 」
「・・・後に死んだ方だろうな」
「分かったか、チビ俺。
ではさらばだ」
俺は銃を抜いて、俺の頭を撃った。
えらい殺伐とした世界だなw
本人同士なんだから仲良くしろよw
「ママ、宇宙人っているの?」
「いるわよ」
「じゃ、地球が侵略されちゃう可能性もあるの?」
「その心配はいらないわ」
「どうして?!」
「宇宙人はね、自分より容姿が端麗な人を嫌うのよ。だから、宇宙飛行士にわざと不細工な人を選んでいるの」