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天之御名無主:
五百年ほど前、江差の津花の浜に織江という老婆が住んでおりました。
彼女は予知能力があるためになにかと村の衆から大切にされておりました。
春先のある朝のこと、織江は沖の鴎島から不思議な光が発しているのに気が付き、
行ってみますと神々しい翁が岩の上で火を焚いております。翁は織江に徳利を
渡し、「この中に入っている水を海に撒けば、海が白くなるほどに鰊という
魚がやってくる。村の衆に教えてやりなさい。」とのこと。
織江がその徳利を大切に持ち帰り、海に水を撒けば言にたがわず鰊が大漁、
江差の村は大景気に沸き立ちました。
村の衆が礼を言おうと皆で織江の家を訪問したところが彼女の姿が無く、
彼女がいつも大切に拝んでいる神像が残されているだけでした。
そこで村の衆はその像を持ち帰り、祠を建てて拝んだということです。
江差の姥神大神宮の創建由来として残されている伝説です。