23 :
大人の名無しさん:
万に一つもありえないことだった。
いつものように彼の頭脳にはすべてのデータが正確にインプットされていた。
獲物の年齢、性別、身長、性格、くせ。
獲物の住む家の間取り、警備態勢。
使用する狙撃銃、及び弾丸の特性、火薬の量。
もちろん射座と獲物との距離、時刻、風向き、太陽の方向、雲量。
逃走経路。
体調も万全だった。いつものように彼は、すとん、と
落とし込むように引き金をひいた。
そしてスコープの向こうで脳漿をぶちまけ、獲物は倒れるはずだった。
だが、結果は違った。スコープの中で、やつはまだ生きていた。
驚愕の表情でこちらを見つめ、そして素早くカーテンをひいた。
たちまち、複数の犬の鳴き声、重い靴音、バイクのエンジン音が
獲物の屋敷の方向から聞こえ始めた。
彼は失敗を悟った。なぜ。
はっとして彼は自らの股間に視線を落とした。
まちがいない、他に原因はありえない。
いつも右置きの彼のものが、
緩くなったトランクスの中で左側に垂れ下がっていた。
ほんの100gほどの肉棒の重みが、
精密機械のような彼のバランスを微妙なところで崩していたのだ…。