【ノックダウン】硫化水素による自殺28【H2S】

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69優しい名無しさん
電車で帰省していた時のこと。

結構まんべんなく人が座っているくらいの乗車率で、私は優先席付近に立っ

ていたのだが、貧血を起こしてしまい床にしゃがみこんだ。

すると優先席に座っていた老夫婦の片方(おじいさん)が席を譲ってくれ

た。私も最初は遠慮したが「わしは健康だけどアンタ具合悪そうだし、優先

席はジジババの為だけのもんじゃないよ」と言って下さったし、おばあさん

のほうも勧めて下さったので座らせてもらった。貧血が回復したら立つか移動

しようと思いながら。

で、しばらく座っていたら、とある停車駅でおばちゃん二人が乗ってきた。

そのおばちゃん、暫く席を探して車内をうろついていたが、生憎満席だった

らしくドアの方に戻ってきた。そしてドア付近に立ったまま喋り出したのだが

その内容が丸聞こえ。「あの子老人立たせて座ってるわよ」「私たちだって

立ってるのにねぇ」「これだから最近の若い子は……」と完全に私に文句を

言っている。

なんかいたたまれなくなって立とうとするも、まだ具合が悪くて立てそうに

ない。私の様子に気付いたおばあさんが「いいのよ気にしないで」と言って下

さるものの肩身の狭い思いをしてたら、おじいさんがキレた。

おじいさんはそのおばちゃん二人に歩み寄って行って

「確かにあの子は若いが、具合が悪いからわしが席を譲ったんだ。あんたら見

た所座らなきゃいけないようなトシでも身体でもないだろうが。悪口言ってる

暇があったら少し他人のこと考えたらどうだ」

と穏やかだが説得力のある口調で窘めた。

おばちゃん二人、最初は呆然とおじいさんを見ていたが、結局コソコソと

車両を移っていった。

戻ってきたおじいさんは、私に「あんなの気にする必要ないからね」と朗ら

かに笑っていた。

こんな人と結婚できたおばあさんは幸せだと思った。