327 :
優しい名無しさん:
出刃包丁持った猫が、俺に包丁突きつけてきた。
猫は言う。
「ころされたくなかったら、いますぐちかって」
「やくそくして」
「ちゅうしゃもびょういんも、おもちゃもごはんもいらないから」
「ぼくをひとりにしないっていって」
「ぼくのこと、あいしてるって」
「だいすきだよっていってなでて」
「ぼくはもうすぐねむるから」
「つめたくなって、うごかなくなるから」
「それまでのすこしのあいだでいいから」
猫が言うまま、僕は彼の背を撫でた。
彼に言われはしなかったけれど、僕は彼を抱き上げた。
翌朝、彼は動かなくなった。
彼との約束にはなかったけれど
僕は、彼を抱き締めて
抱き締めながら、泣いたんだ。