・Epilogue 〜KAGEROH〜 Chapter#04
カーテンコールである。
再び陽炎がモチーフとして使われ、最後はオープニング冒頭に流れた音色に戻る。
こうして季節が美しい構成で連環していくのだ。
西川もそうだが浅倉氏はこんな風に妙に律儀なところがあり、論理性、整合性をよしとする気質が伝わってくる。
一方でライブに顕われるアナーキーさも併せ持っている点に於いて、二人は似ている。
いつまで続くか分からないが、とりあえず今後も良い関係を保っていただきたいと切に願う所存である。
長い旅にようやく終わりが見えてきた。
お断りさせていただくと、あくまでこれは筆者のための考察であり考え方の一例に過ぎない。
また何年かしたら、歌詞カードを眺めながら再考してみようと思っている。
アルバム発売時のキャンペーンとして「ショートストーリーを送ってください」みたいな募集がHP上でかけられいくつかの作品が公開されたり、
西川が「最近のリスナーは一方的に与えられる事に慣れすぎて自分から物を考えたり想像する楽しみを知らない人が多い。そういうきっかけになれば」的発言をしたり、極端な話この曲の全てはリスナーに委ねられている。
「絵のない絵本」であり「フィルムのないサウンドトラック」であるらしいからだ。
最後に、テキストという形でひとつの映画をこのアルバムに乗せてみたいと思う。
※最近の映画でネタバレを含むので未見の方は要注意。
ジョゼと虎と魚たち (2003)
監督 : 犬童一心
出演 : 妻夫木聡
池脇千鶴
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD4269/ 面倒なので詳細は↑で見ていただくとして。
主人公はごく平凡なちょっとスケベで優しい大学生であり、ヒロインジョゼは脚の動かない「こわれもの」の少女である。
二人は思いがけない出会いから徐々に恋に落ちる。
世間から隔絶され(祖母が対面を気にして表に一切出さないため)祖母が拾ってくる本の中でだけ生きてきた少女と主人公は健常者と障害者という壁もありなかなか素直になれないのだが、そのもどかしい感じがよく表現されている映画だ。
ジョゼとは彼女が気に入った作品の主人公の名前である。
人恋しさにこわれそうな心を気の強さで繕おうとする彼女だが、主人公のまっすぐな気持ちについに屈する。
所詮成就する事はないだろうと心のどこかで思いながら。
二人がSEXをするシーンは街を見下ろす月夜ではなく昼下がりの部屋であったが、池脇千鶴の貧に(ry)が物語にリアリティを与えている。
やはり脱がなきゃいけない時は潔く脱いでこそ女優である。
彼女の家で暮らし始めた二人だが、就職、帰郷と時を経て関係性が少しずつ変わっていき、そしてごく普通に別れがやってくる。
ありふれた理由。
ありふれない理由。
昔の彼女とよりを戻し明るい日差しの中歩く主人公は、ふと失くしたものに気がつき往来でとめどなく涙を流す。
田辺聖子の短編を原作とするこの映画は出てくるのは関西弁だし、背景はボロ家に大学に雀荘にと全くロマンチックさのかけらもない。
今まで書いてきた文章とも符合しないし、何よりきちんとした主題歌がある。
けれどなぜか筆者には、匂いのない花や透明な痛みが確かに感じ取れたのだった。
長々とお付き合いいただいたが、今度こそ終了である。