緊急寄稿・広岡達朗
楽天はどうすれば勝てるチームになるか。球団から全権GMを要請されたが断った。前回、
ロッテ時代のGM経験などから、辞退した。
しかし、新球団が窮地に陥っているのを見るのは忍びなかった。GMは引き受けないが、
球団のフロントと現場のポイントに適任者を配置して、それぞれの持ち場で勉強なさる
べきだと、アドバイスした。
田尾監督とも話した。田尾は成績とスタッフに責任を感じていた。しかし、初めての監督
で不備があるのは当然だ。問題は反省し、勉強する気があるかどうかだ。ボクは田尾に、
野球の勉強ができる人材を呼んだらやるか、と聞いた。やる気が確認できたので、契約期間
の3年はユニホームを脱ぐなと言った。
その時点で、ボクは来年の布陣をほぼ固めていた。コーチ、新戦力、外国人選手にも、メド
をつけていた。自分のコネクションで、協力を取り付けていた。
フロントにはチームづくりの一から教えた。人材育成のノウハウを具体的に教えた。いい人材
を取るためのスカウト部門の強化。育成のためのコーチ陣の強化。受け入れ態勢、つまり合宿
所や練習所の整備など、球団のバックアップのポイントを指摘した。
ベテラン選手はクビにしてもよい、しかし戦力状況と、新球団ということを考えるならば、
続投希望者には門戸を開き、秋季キャンプでテストして体力、気力を再度、判断して去就を
決める。秋季キャンプの仕込みが勝負だ―田尾監督にはそう話していた。
それが白紙になった。清原のトレード話がきたからである。時期は特定できないが、
フロントが突然「清原を取るつもりです」と言ってきた。これがおかしい。事前の相談
は一切なかった。ボクの球団構想に清原は入ってない。
球団が、清原のような大ベテランのスーパースターを獲得するのは、その選手が、チーム
にいい影響を与え、改革にプラスになる、という価値を認めた場合である。米国でもスカ
ウティングリポートでは、その影響力が二重丸で評価される。
清原は巨人で、はっきり答えが出た。あれだけの選手なのだから、醜態をさらしてもらいたく
ない、とも思う。その清原を「取る」というのは、商売のための客寄せ選手ということでは
ないか。清原は、もうしまいの選手である。読売のトップから押し付けられた、という話も
あったが、清原は、楽天を育てていくうえで大きな障害になる。ボクが伝えてきたこととは
相いれない。ボクは別の補強を意見したが、考慮されなかった。
何かが裏で動いたのだろう。ボクは楽天と縁を切ることにした。
楽天は、成績不振で田尾監督を解任した。が、今年の戦力でダレが勝てるか。戦前、専門家
は100敗すると予想した。そういう戦力を与えて、不振だから新監督を一年でクビにする。
こういう人事では球団は強くならない。監督は育たない。商売第一、儲け優先では、野球の
レベルも上がらず、日本のプロ野球界に展望を持つのは難しいと思う。