大阪発展の鍵とは? 米コロンビア大教授に聞く
地盤沈下が叫ばれて久しい大阪では今、生活保護世帯が急増するなど、経済面とともに貧困問題も顕在化し、浮揚策について試行錯誤が続いている。
大阪が世界を視野に発展していくための鍵は何か。世界経済の拠点となるグローバルシティー(世界都市)研究の第一人者で、大阪市立大学大学院文学研究科の重点研究国際シンポジウムのために来日した米国コロンビア大のサスキア・サッセン教授に聞いた。
大阪発展の鍵を示唆するサッセン教授
−東京への一極集中が顕著な中で、大阪がグローバルシティーとして力を付けるにはどうすればいいか。
「今やより多くの経済部門で、グローバル価値のある分野が増えており、大阪の製造業をさらに磨くというのが一つ。一方で、知識経済や知識産業も生かせるのではないか。
シンガポールは港湾の運営や管理の知識を、ウルグアイやジェノバなどに提供して産業に生かしている。ものづくりだけでなく知識づくり。知識の輸出によって、もっと伸びていけるのではないか。日本は基本的に輸出型経済で、そういうところに可能性があると思う」
−2番手の都市にもチャンスはあるか。
「その国最大の都市だけでなく、その次にくるような都市が今、グローバルシティーとして注目されている。シカゴでは、1980年代の初めに製造業でたくさんの失業者が生まれた。
その後、シカゴは自分たちの都市を新しく位置付けし直し、都市がもつ深い経済史を生かして製造業のノウハウを上海に輸出し始めた。
2番手の都市にも大きなチャンスがあり、大阪にも可能性があるのではないか。ただ、機会を拡大したからといって東京の優位性が変わるわけではない」
−大阪市では、経済問題だけでなく、生活保護制度の利用世帯数が過去最大になるなど貧困問題が顕在化している。
「豊かな都市といわれているニューヨークにおいて、貧困率は米国の平均値よりも上で、同様にロンドンもイギリスの平均値より高い。グローバル化は、力強さを生み出す半面、不平等を生み出す。増大する不平等、不均衡が現在の傾向だ」
−どうすればいいか。
「政府がかかわるべき。この20年間において、市場の方が力を持っていた。資本主義が資本主義を守るために法律を必要とし、それが行われてきた。
現在、資本主義のひずみがでている。低所得者の人たちのために雇用を創出できるよう、本来政府がすることを人々にやってもらう。都市部での農業の促進や土地の有害物質の除去、都市の清掃などだ」
−いま注目していることと日本のかかわりはどうか。
「米国では環境破壊が進んでいて大きな問題となっている。改善のために多大な努力が払われ、たくさんの労力が必要になっている。
日本は技術面で環境に大きく貢献している。特にナノテクノロジーで顕著であり、大阪から生まれたものもあるのではないか」
http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/100120/20100120031.html