■視点
◇「まちづくり」検討不十分
大阪府庁舎移転問題は、WTCビルの先行取得という形で、一時的な収束を迎える情勢となった。移転条例案に十分な支持を集めることができず、購入だけを先行させた形だ。
南港地区や大手前地区での「まちづくり」計画は府議会でも指摘されたように検討が不十分で、府がWTCビルを「購入しただけ」で終わる懸念がある。
橋下徹知事は府庁をWTCビルに移転する理由として「ストック(土地や建物)の活用」という理論を押し通したが、そこに「府民」は登場しない。
府立成人病センター(大阪市東成区)を府庁舎が移転した後の大手前地区に移転する計画を立てたが、命と健康にかかわる拠点医療機関が「パズルの一部」のように扱われる展開は「府民不在」で府議らからも反発があった。
建築や都市計画の世界では唐突なプランを「天から降ってきた」と呼ぶ。今回の結末は政治的攻防の産物だが、大阪再生を本気で考えるなら、相応の時間をかけて一連のまちづくりを「地から生えてきた」計画に高めるべきだ。【福田隆】
http://mainichi.jp/kansai/news/20091024ddf001010002000c.html