WTC移転で府議会、悩む賛否両派──折衷案模索も
大阪府庁舎移転条例案を巡り、府議会が混迷を深めている。議会側には反対論が根強いが、衆院選などで影響力を示した橋下徹知事との対立を避けたいのが本音。
条例案可決が困難な中、ビル購入予算案のみの可決を目指すのか、それとも12月の会期末まで先送りか、与野党を超えた調整も進む。「両議案否決なら出直し知事選」の可能性もあり、賛否両派の攻防が激しくなりそうだ。
▼本命は先行取得?
大阪市の第三セクタービル「大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)」への移転条例案可決には3分の2の賛成が必要だが、3月の議会採決では定数112に対し反対65票で否決。
橋下知事の再提出を受けた今議会でも各会派は「3分の2の賛成を集めるのは困難」とみる。
そこで、移転条例案の結論を先送りしてWTCを買い取る補正予算案の成立を目指す動きが浮上。予算案だと可決のハードルが「過半数」に下がるからだ。
「庁舎移転を核とするWTC周辺の大阪湾岸部開発で関西再生の起爆剤に」とする橋下知事と、「湾岸部の庁舎は防災面の課題も多い」などとして大阪中心部の現庁舎を譲らない議会反対派の双方の顔を立てる折衷案だ。
知事与党・自民の幹部は「ビル買い取りだけなら、反対派も歩み寄る」と分析する。衆院選を機に知事との関係改善に向かう民主の幹部も折衷案でのとりまとめを模索。
「せっかく知事が民主に対して心の扉を開いているのに、こちらから閉ざす必要はない」(別の民主幹部)というわけだ。
▼課題多い折衷案
ところが、折衷案で第2庁舎とする部分移転にとどまれば、知事が訴える「移転効果」はしぼむ。
移転効果の一つは本庁舎と周辺の民間ビルなどに入居する部署をWTCに集約する「分散化の解消」。仮に民間ビルの部署だけ部分移転すると、年間約6億2千万円に上る賃料負担はなくなるが、現状より業務効率が悪化する懸念もある。
さらに知事が「職員と年間来庁者約40万人の人の流れがWTC周辺の街づくりのきっかけになる」とする構想も前提が揺らぐ。大阪市や経済団体と協調するWTC周辺の街づくり構想は全面移転が前提で、府幹部は「構想の迫力がなくなる」と話す。