大阪の中枢港湾、開港直前に出資企業の半数超が撤退
大阪湾岸で国と大阪市が今秋の完成を目指して整備を進める国内最大級の高規格コンテナターミナル(CT)の運営会社に出資した民間企業の半数以上が、運営から撤退していたことがわかった。
国の「スーパー中枢港湾」の指定を受け、総事業費1300億円をかけた国家プロジェクトだが、完成を前に港湾運営が立ちゆかなくなるおそれがあり、港湾管理者の大阪市が巨額の財政負担を迫られる可能性もある。
CTの整備が進むのは大阪湾の人工島、夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)。
島の南東に、超大型のコンテナ船用に水深16メートルバース(岸壁)を整備し、既存の水深15メートルの二つのバースと合わせて延長1100メートルの国内最大級のCTが誕生する計画だ。
貨物が行き来するための夢洲と対岸を結ぶ海底トンネル(片側2車線、約2.1キロ)の工事も合わせると、国と大阪市が投じる事業費は総額約1300億円にのぼる。
このCTの運営を担うため、04年7月に設立されたのが「夢洲コンテナターミナル」(DICT)。
計画では、徹底した効率化とIT化で港湾コストを30%削減してアジアの主要港並みに抑え、コンテナの待ち時間も短縮。2014年度には、大阪港の現在の年間コンテナ取扱量の6割にあたる120万個の扱いを目指している。
このDICTに共同出資したのが大阪港でコンテナを取り扱ってきた港湾運送業者14社。05年11月には、岸壁や埠頭(ふとう)用地といった「行政財産」を借り受ける特定運営事業者の認定を受けた。
その後、新たに出資する業者も現れたが、07年以降は一転して、出資会社の撤退が相次ぎ始めた。昨年末には地元最大手の港湾運送会社の撤退が決まり、残るのは7社だけとなった。
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最大の要因は、初期投資の大きな負担。建設コストを抑制するため、国と市は防波堤や岸壁など基礎構造物だけを手がけ、荷物の運搬に使う巨大クレーンなど総額130億円を超える地上部分の投資はDICTが担う。
筆頭会社の辰巳商会(大阪市)によると、出資会社は国の支援策が決まっていなかった03年、大阪市の働きかけで運営会社準備会を結成。
返済不要の補助金が交付されると期待していたが、会社設立後に国が示したのは、国と市で設ける無利子貸付制度だけ。
制度を最大限利用しても約30億円を市中銀行から有利子で調達しなければならず「投資回収の見通しが立たない」などと失望感が広がったという。
DICTは「あと1社撤退すれば運営が行き詰まりかねないがけっぷちの状態だ」(辰巳商会の細川孜専務)として08年12月、国と大阪市に対し、無利子貸付額の増額▽岸壁使用料(年間15億円程度)の当面の無料化などを要求。
さらに貨物量が低迷した場合、巨大クレーンなどを大阪市が買い取ることも求めた。市が直営化する事態になれば、荷役機械の買い取りだけでも100億円を超える出費が迫られる可能性がある。
大阪市港湾局は「運営会社の行き詰まりはあってはならず、支援策を検討しているが、議会の理解が必要だ」と話す。国土交通省近畿地方整備局は「来年度予算で応えることは難しい」としている。
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