その一方で北朝鮮問題に象徴されるように、安倍さんは自分の信念に関わる部分
については、ときには「けんか腰」ではっきりと発言する。そのバランスがいい。
温厚な雰囲気がありながら、言動が激しいほうが「目立つ」し、そこで気配りが
しっかりしていれば、「出る杭を打つ」人も減り、極端に憎まれることもない。
今後自民党の幹事長としてもこのような姿勢は貫かれるだろうから、うまく党内
運営を図って、信頼されるリーダーになるに違いない。
そうはいっても、今回の自民党三役の人事を見ると順風満帆とはいえないのも
確かだ。そこには安倍さんが直接選んだ人達が配置されていない。本来なら幹事長
を決めたら、新幹事長と内閣の要の官房長官で人事を決めていく。今回はそれを
やらず、ほとんど小泉総理が独自にきめた。その結果、安倍さんより年齢が上の
「旧世代」の幹部たちが勢ぞろいした。その点では、やりづらいと思う。
しかし政権与党である自民党の事実上のナンバーワンとして、日々、難しい決断、
判断を行っていれば、代議士を三期分ほど務めたのと同じくらいの経験をする
ことになる。それぐらいのチャンスを与えられたと思って頑張っていただきたい。
私がいうまでもなく、本人も将来に向けて期するものがはっきりとあるはずだから、
三年も幹事長を務めれば、同世代の政治家は、あっという間に引き離されてしまう
だろう「役が人をつくる」のである。そのころにはいよいよ「安倍さんの出番」と
いうことになっているかもしれない。
最後に、今後私は埼玉県知事として、治安向上に向けた警察官増員問題や、しつけ
や基礎教育が崩壊している教育の建て直しなどに力を注いでいこうと考えている。
そして安倍さんも治安や教育問題に関心が高く、明確な主張をもっておられる。
政権与党のナンバーワンと埼玉県知事が力を合わせて「日本の難題」を克服する事が
できれば、これほど望ましいことはない。お互い立場は変わったが、これからも
どんどん議論を交わしていければと思うのである。(了)
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