特筆すべきは当時の政府は裁判官、大学教授などを含め、すべての役人の給与を一律
10%カットしたことである。何と大胆な官製リストラではないか。民間の痛みを少しで
も和らげようという気持ちが伝わってくる。企業の賃金が年々下降線をたどっている中で、首相給与を上げようと画策した官僚より70年前の為政者の方がよほど民情に通じている
ではないか。官と民の賃金格差は既に常態化している。特に高級官僚の給与が高すぎない
かとの批判が強い。
官民格差は中央だけの問題ではない。財務省の資料によると地方公務員の給与は47都
道府県のうち二つの県を除き国家公務員を上回っている。東京都など数自治体は国家公務
員より2割前後も高く、民間平均賃金が全国平均の7割強でしかない沖縄県の公務員でさ
え国家公務員より高い水準にある。
当然の帰結だが、ほとんどの地方の役人はその県の民間平均賃金よりかなりベースが高
い。ここから読み取れることは「官高民低」であり「地方高・国低」という構図だ。マク
ロで見ると地方の公務員と民間の給料差が最も大きい。
地方財政はそんなに潤沢なのか。実態はその反対である。
総務省自治行政局は給与格差が拡大しているとし3年前に通達を出した。それは地方の
給与決定方式が不合理、不透明だという警告だった。
本紙は先月から「あなたの値段・当世給料事情」を連載している。地方の経営不振銀行
のトップが年収700万円にダウンしたこと、Y市の赤字市バスの運転手の5〜6人に1
人は年収1000万円超ということなど、現場のさまざまな給料事情が見えてきた。
国の役人はおおむね民間のサラリーマンより高く、それより地方の役人が一段と上位に
あるという「日本給料地図」だ。中央も地方も官民格差は広がるばかり。もういいかげん
にしてもらいたい。
(毎日新聞 02-14-02:13)