ホラー作家の坂東眞砂子さん
ttp://www.walkerplus.com/tokyo/20060411/image/bo2037_1.jpg ttp://news.80.kg/index.php?%B5%B4%C3%DC%BB%D2%C7%AD%BB%A6%A4%B7%BA%E4%C5%EC%E2%C3%BA%BD%BB%D2#w669b0fe 自伝小説『わたし』から
ジャンクロードと生きるために、タヒチに来た時、わたしは不感症だった。もっとも自分が不感症だと感じてもいなかった。そもそも、わたしは肉体だけではない。人生すべてに対して不感症なのだ。
〜略〜
人と話していても心の底から融けこめない。景色を見ても、写真を眺めているみたいにどこか遠くに感じる。男と抱き合ったり、素肌を接しあわせると、ロマンチックな映画を見ているようだ。
男根が入ってくるのは、ポルノビデオを眺めている感覚。なにをみても、なにをしても実感がない。
〜略〜
ジャンクロードとのセックスにおいても同様のことの繰り返しだった。一日中、交わっても、ちっとも満足できない。
セックスなんてもううんざりだ、と思いつつ、やっぱり必死で縋りつくように、セックスに挑んだ。 縋りつきたかったのは、実感だった。
ジャンクロードの上に跨り、男根をわたしの中に入れ、腰を彼の腰にぶつける時、小学校の頃、男の子と喧嘩した時の興奮が蘇る。
〜略〜
わたしの中に居座る不感症を追い遣るために、わたしは子供時代の喧嘩の興奮を追い求める。ジャンクロードの肩に噛みつき、腰を打ちつけ、汗でぬるぬるする肩や腕や首筋を両手で愛撫する。
彼はわたしの唾液でどろどろになった唇の中に、自分の舌を入れる。わたしの赤紫色に充血した唇、その奥に広がる洞窟に吸い込まれようと、口の中に唇を突き出す。
わたしは彼の口を呑みこみ、男根を呑みこむ。
全身に活力が漲る。わたしは勝ったのだ。
〜略〜
体の芯から震えが起きる。ジャンクロードとのセックスの刹那、わたしは生きている。