現代数学の系譜11 ガロア理論を読む6

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448現代数学の系譜11 ガロア理論を読む
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本題のつづき

http://www.math.tsukuba.ac.jp/~kazunari/Kimurata/kimurata.html
数学は体力だ!
木村 達雄(数学系教授)

4.勉強と研究の違い(研究の波動)

大学3年の時に,佐藤幹夫先生(佐藤超関数や概均質ベクトル空間の理論の創始者)の集中講義に出た事がありました。自分の考えた理論を生き生きと説明していく講義にすっかり魅了されてしまいました。
内容は難しくて良く分からないのに,何かワクワクするものを感じるのです。このとき,数学は分からなくても感動することがあるのだ,と知りました。
のちに大学院の修士1年になったとき私は武術に夢中になり,真剣を使って戦いの集中力や持続力の稽古に没頭してしまいましたが,修士論文を1年後に提出しなければならなくなった頃,京都大学に佐藤幹夫先生を訪ねました。
ニコニコしながらコーヒーを入れて下さった先生は「どんな研究をしていますか?」と尋ねたので「実は武術しかしていませんが数学これから頑張ります」と答えた。
先生の顔色が変わり,ものすごく怒られて「君の状態では新しい結果を出すのに一年半はかかる」と言われ,とにかく30分だけ,一対一で研究指導をして下さいました。
その時,私は初めて勉強とは全く異なる研究の雰囲気,波動のようなものを感じ,研究はこうするのか,と思いました。

5.数学研究の心構え

佐籐先生は「すぐ追い返したい所だが研究室を一つ使って良いから一週間したら帰りなさい」と言われ,更にオロオロする私に研究の心構えを教えて下さいました。
「朝起きた時に,きょうも一日数学をやるぞと思ってるようでは,とてもものにならない。数学を考えながら,いつのまにか眠り,朝,目が覚めたときは既に数学の世界に入っていなければならない。
どの位,数学に浸っているかが,勝負の分かれ目だ。数学は自分の命を削ってやるようなものなのだ」と言われ,追いつめられた私は,まさにこれを実行しました。
すると一週間で未解決問題の一つが解けてしまいました。佐藤先生に見せに行くと「君に出来る訳がない。
どうしても正しいと言うなら,これが成り立つ筈だから確かめてみなさい」と言われ三日かけて再び持っていくと,それからは佐藤先生は毎日6時間以上に及ぶ個人指導を始めて下ざり,私をグイグイ引き上げて下さいました。
つづく