【神々の】ガロア生誕200周年記念スレ【愛でし人】

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180Kummer ◆SgHZJkrsn08e
集合 S の濃度を |S| と書く。
181Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 07:24:35.06
L/K を有限(>>87)な正規拡大(>>163)とする。
L/K の自己同型群を Aut(L/K) と書いた(>>123)。
|Aut(L/K)| (>>180) と [L : K] (>>87) の関係を調べよう。

まず L = K(α) となる α ∈ L がある場合を考える。
α の K 上の最小多項式(>>116) を f(X) とする。
f(X) の Ω における根全体の集合を S とする。
|S| ≦ deg f(X) である。
>>165より |Aut(L/K)| = |S| である。
一方、>>120より deg f(X) = [L : K] であるから
|Aut(L/K)| ≦ [L : K] である。

|Aut(L/K)| = [L : K] となるのは f(X) が重根を持たない場合に限る。
f(X) が重根 β を持つとする。
f(X) = g(X)(X - β)^m、m ≧ 2 とする。
Ω (>>82)が複素数体のとき f(X) を複素関数とみて f’(X) を f(X) の導関数とする。
即ち h ∈ Ω、h ≠ 0 として f’(X) = lim[h → 0] (f(X + h) - f(X))/h
このとき、f’(X) ∈ K[X] である。

f’(X) = g’(X)(X - β)^m + mg(X)(X - β)^(m-1)
よって、f’(β) = 0 である。
f(X) は β の最小多項式であるから f’(X) は f(X) で割り切れる。
しかし、deg f’(X) < deg f(X) であるから、これは矛盾である。
よって、f(X) は重根を持たない。

Ω (>>82)が複素数体以外の場合にも f(X) の導関数は以下のように形式的に定義出来る。
182Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 12:08:00.68
定義 73
A を可換環とし、A[X] を A 係数の1変数多項式環とする。
f(X) = a_nX^n + a_(n-1)X^(n-1) + ... + a_1X + a_0 を A[X] の元とする。
f(X) の導多項式(derivative)とは次の多項式のことを言う。

na_nX^(n-1) + (n-1)a_(n-1)X^(n-2) + ...+ 2a_2X + a_1

f(X) の導多項式を Df(X)、df(X)/dx、f’(X) などと書く。
183Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 12:24:01.12
命題 74
A を可換環とし、A[X] を A 係数の1変数多項式環とする。
D:A[X] → A[X] を f(X) ∈ A[X] にその導多項式(>>182) Df(X) を対応させる写像とする。
このとき、D は A-加群の準同型である。
すなわち、f(X)、g(X) ∈ A[X]、c ∈ A のとき。

1) D(cf(X)) = cD(f(X))

2) D(f(X) + g(x)) = D(f(X)) + D(g(X))

証明
直接に計算しても簡単であるが、次のようにも証明出来る。

1、X、...X^n、...は A-自由加群 A[X] の基底である。
よって、A-加群の準同型 ψ:A[X] → A[X] で
各 n に対して ψ(X^n) = nX^(n-1) となるものが一意に存在する。
明らかに ψ = D である。
証明終
184Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 12:44:40.12
A を可換環とし、A[X] を A 係数の1変数多項式環とする。
D:A[X] → A[X] を f(X) ∈ A[X] にその導多項式(>>182) Df(X) を対応させる写像とする。
f(X)、g(X) ∈ A[X] のとき、次の等式を(f(X) と g(X) に関する)Leibnizの公式と言う。

D(f(X)g(X)) = D(f(X))g(X) + f(X)D(g(X))
185Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 13:08:40.55
命題 75
任意の f(X) ∈ A[X] を固定する。
f(X) と g(X) に関するLeibnizの公式(>>184)が成り立つような g(X) ∈ A[X] の集合を Λ(f(X)) と書く。
このとき、Λ(f(X)) は A[X] の A-部分加群である。

証明
記法を単純にするため f(X) や g(X) をそれぞれ f、g などと書くことにする。

1) c ∈ A、g ∈ Λ(f) とする。
D(fcg) = cD(fg) = c(D(f)g + fD(g)) = D(f)(cg) + fD(cg)
よって、cg ∈ Λ(f) である。


2) g, h ∈ Λ(f) とする。
D(f(g + h)
= D(fg) + D(fh)
= D(f)g + fD(g) + D(f)h + fD(h)
= D(f)(g + h) + f(D(g) + D(h))
= D(f)(g + h) + fD(g + h))

よって g + h ∈ Λ(f)
証明終
186Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 13:21:10.92
命題 76
A を可換環とし、A[X] を A 係数の1変数多項式環とする。
任意の f(X)、g(X) ∈ A[X] に対してLeibnizの公式(>>184)が成り立つ。

証明
n と m を任意の整数 ≧ 0 とする。
D(X^(n+m)) = (n+m)X^(n+m-1)
D(X^n)X^m = nX^(n+m-1)
X^nD(X^m) = mX^(n+m-1)
よって、X^n と X^m に関してLeibnizの公式(>>184)が成り立つ。
よって、>>185の記法で X^m ∈ Λ(X^n) である。
>>185より、Λ(X^n) は A[X] の A-部分加群であるから Λ(X^n) = A[X] である。
よって、任意の f(X) ∈ A[X] に対して X^n ∈ Λ(f(X)) である。
再び>>185より、Λ(f(X)) は A[X] の A-部分加群であるから Λ(f(X)) = A[X] である。
よって、本命題の主張が得られる。
証明終
187132人目の素数さん:2011/11/08(火) 13:38:02.21
熊ーさんすげーな
188Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 14:04:49.75
命題 77
A を可換環とし、A[X] を A 係数の1変数多項式環とする。
D:A[X] → A[X] を f(X) ∈ A[X] にその導多項式(>>182) Df(X) を対応させる写像とする。
一方、ψ:A[X] → A[X] を次の条件を満たす写像とする。

1) ψ は A-加群の準同型である。

2) 任意の f(X)、g(X) ∈ A[X] に対して
ψ(f(X)g(X)) = ψ(f(X))g(X) + f(X)ψ(g(X))

3) ψ(X) = 1

このとき ψ = D である。

証明
2) において f(X) = 1、g(X) = 1 とおくと ψ(1) = ψ(1) + ψ(1)
よって、ψ(1) = 0 である。
任意の整数 n ≧ 1 に対して ψ(X^n) = nX^(n-1) を n にかんする帰納法で証明しよう。

3) より n = 1 の場合は成り立つ。
n ≧ 2 として、ψ(X^(n-1)) = (n-1)X^(n-2) と仮定する。
2) より、ψ(X^n) = ψ(X)X^(n-1) + Xψ(X^(n-1)) = X^(n-1) + (n-1)X^(n-1) = nX^(n-1)

以上で任意の整数 n ≧ 1 に対して ψ(X^n) = nX^(n-1) が証明された。

よって、1) より ψ = D である。
証明終
189Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 14:17:41.84
定義 78
K を体(>>82)とする。
f(X) を定数でない K 係数の多項式とする。
α ∈ Ω (>>82) を f(X) の根とする。
このとき、f(X) = g(X)(X - α)^m、m ≧ 1、g(α) ≠ 0 となる g(X) ∈ K[X] が一意に存在する。
m = 1 のとき α を f(X) の単根と呼び、m ≧ 2 のとき α を f(X) の重根と呼ぶ。
m を α の f(X) における重複度と呼ぶ。
190Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 14:32:33.99
命題 79
f(X) を K 係数の定数でない多項式とする。
f’(X) を f(X) の導多項式(>>182)とする。
α ∈ Ω (>>82) を f(X) の根とする。
α が f(X) の重根(>>189)であるためには f’(α) = 0 が必要十分である。

証明
必要性:
α が f(X) の重根であるとする。
f(X) = g(X)(X - α)^m、m ≧ 2、g(α) ≠ 0 となる g(X) ∈ K[X] が一意に存在する。
f’(X) = g’(X)(X - α)^m + mg(X)(X - α)^(m-1)
m ≧ 2 えあるから f’(α) = 0 である。

十分性:
α が f(X) の単根(>>189)であるとする。
f(X) = g(X)(X - α)、g(α) ≠ 0 となる g(X) ∈ K[X] が存在する。
f’(X) = g’(X)(X - α) + g(X)
よって、f’(α) = g(α) ≠ 0
証明終
191Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 15:08:07.39
命題 80
Ω (>>82)には最小の体(>>82) P が存在する。
P は有理数体 Q または Z/pZ に同型である。
ここで Z は有理整数環であり p はある素数である。

証明
環準同型 ψ:Z → Ω が一意に存在する(ψ(1) = 1 と仮定する)。
ψ(Z) は Ω の最小の部分環である。
よって、ψ(Z) の Ω における商体 P は Ω の最小の体(>>82)である。

ψ(Z) は環として Z/Ker(ψ) に同型である。
よって、Ker(ψ) = 0 のときは P は有理数体 Q に同型である。

Ker(ψ) ≠ 0 のときは Ker(ψ) = nZ である。
ここで、n は有理整数 ≧ 2 である。
よって、ψ(Z) は環として Z/nZ に同型である。
Z/nZ は整域であるから n は素数である。
このとき、Z/nZ は可換体である。
よって、ψ(Z) は Ω の最小の体(>>82)であり、ある素数 p に対する Z/pZ に同型である。
証明終
192Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 15:16:33.40
定義 81
>>191より、Ω (>>82)には最小の体(>>82) P が存在する。
P を(Ω の)素体と言う。
>>191より、以下の二つの場合がある。

1) P は有理数体に同型である。
2) ある素数 p があり、P は Z/pZ に同型である。

1) のとき Ω の標数は 0 であると言う。
2) のとき Ω の標数は p であると言う。

Ω の標数を char(Ω) と書く。
193Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 16:21:18.49
定義 82
K を体(>>82)とする。
f(X) ∈ K[X] を定数でない多項式とする。
f(X) の Ω(>>82) における全ての根が単根(>>189)のとき f(X) を分離的という。
194Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 16:35:40.75
命題 83
K を体(>>82)とする。
f(X) ∈ K[X] を定数でない多項式とする。
f’(X) を f(X) の導多項式(>>182)とする。
f(X) が分離的(>>193)であるためには f(X) と f’(X) が互いに素であることが必要十分である。

証明
必要性:
f(X) と f’(X) が互いに素でないとする。
定数でない多項式 g(X) ∈ K[X] があり f(X) と f’(X) は g(X) で割り切れる。
g(X) の Ω(>>82)における根の任意の一つを α とする。
f(α) = 0 かつ f’(α) = 0 であるから、>>190より α は f(X) の重根である。

十分性:
f(X) が重根 α を持つとする。
>>190より f(α) = 0 かつ f’(α) = 0 である。
g(X) を α の K 上の最小多項式(>>116)とすると、f(X) と f’(X) は g(X) で割り切れる。
よって、f(X) と f’(X) は互いに素ではない。
証明終
195Kummer ◆SgHZJkrsn08e :2011/11/08(火) 16:43:06.20
K を体(>>82)とする。
f(X) ∈ K[X] を定数でない多項式とする
>>194より f(X) が分離的かどうかは f(X) と f’(X) の最大公約多項式 gcd(f(X), g(X)) を
求めれば分かる。
gcd(f(X), g(X)) はEuclidの互除法(例えばWikipedia参照)により K[X] における有限回の手続きで求まる。