代数的整数論 012

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556132人目の素数さん
そんな相棒に操られるような心地のまま、和男はソファの上に置いてあった上着のポケットから携帯を取り出した。震える指でカメラの機能を起動して。
しかしまだ眼前の光景にレンズを向ける踏ん切りはつかない。
「い、いやっ!? ダメよっ」
立ち竦む和男の手の携帯電話を目に留め、その意味を悟った雅代が必死な声を上げる。当然だと和男は思った。
この場の記録を画像として残すことは、雅代の口を封じる保険になる──と同時に。絶対的な弱みを握るということでもあった。
「それだけはやめてっ! 撮らないでっ」
だからこそ雅代は半狂乱になって拒絶し、和男はカメラを向けることをためらったのだが。
「やめてっ、和男く……んあああっ」
ひと際深く抉りこんだ三上の攻撃に、懇願を高い嬌声に変えて雅代が仰け反りかえった瞬間、和男は反射的にシャッターを押してしまう。
「アアッ、いやぁ」
短く鳴り響いたシャッター音は、雅代に絶望の声を上げさせ、和男の逡巡を吹き飛ばした。またひとつラインを踏み越えてしまった
自分に戦慄しながら、今度はしっかりと狙いを定めてシャッターを押した。咄嗟に顔を背け片手をかざした雅代の姿が切り取られる。
肌が粟立つような昂奮を感じながら、和男はさまざまな角度から息子の級友に犯される親友の母親の姿を撮りまくった。
極限までいきり立った股間から凄まじい脈動が伝わる。
諦めたのか、雅代はもう懇願するのもやめて、ただ低くすすり泣くばかり。だが悲痛な泣き声もすぐに乱れ弾んでいくのだ。
「……あぁ…んっ…まだ、なの……」
濡れた眼で三上を見上げて、弱い声で呟いた。
三上はなにも答えず、少しだけピッチを上げ腰の振幅を大きくした。
「ああっ、……もう、もう終わりにしてっ」
震える声は切迫して、怯えの色が滲んだ。迫り来る“なにか”に雅代は狼狽し恐怖していた。