KeislerのFoundations of Infinitesimal Calculus(2nd On-line edition 2007)
をボチボチと読みながら勉強していこうかな,と.
途中で飽きちゃって人が居なくなるかもしれませんが…
ちょっと違った仕方で微分積分を勉強してみたい人,
超準解析とはどんなものなのか,ちょっと齧ってみたい人などにどうぞ.
Foundations of Infinitesimal Calculusは
Keislerのサイトで以下のライセンスの下に公開されています.
ttp://www.math.wisc.edu/~keisler/foundations.pdf Creative Commons Attribution-Noncommercial-Share Alike 2.5 License
http://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/2.5/deed.ja Foundations of Infinitesimal Calculus by H. Jerome Keisler
Copyright © 2007 by H. Jerome Keisler
2 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 01:02:53
On-line editionは
1976年に書籍として出版された初版のmajor revisionで
主な変更点は以下の三つ.
1. (常)微分方程式の章が加わった.
2. 超実数の公理が少し変更された.
3. KanoveiとShelahによる,超フィルターの選び方に依存しない一意的に定義可能な超実数の構成の解説。
cf.
V. Kanovei and S. Shelah, A Definable Nonstandard Model of the Reals,
Journal of Symbolic Logic vol. 69 (2004), pages 159-164.
Shelahのサイトでダウンロード可能.
1976年に書籍として出版された初版には邦訳があります.
(無限小解析の基礎 : 微積分の新手法 / H.J.キースラー著 ; 齋藤正彦訳)
3 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 01:03:56
前提となる知識としては,高校程度の微分,積分の知識と,
函数の概念やØやらA ∪ Bやら{ x ∈ A : P(x) }といった
初等的な集合に関する記法の知識(と或る程度の数学的素養)があれば充分です.
特に,論理学特有の知識は全く使わないので.ロジックを知らなくても大丈夫です.
微分,積分の知識は無くても一応は読めるはず.
目次
1章. 超実数
2章. 微分
3章. 連続函数
4章. 積分
5章. 極限
6章. 積分の応用
7章. 三角函数
8章. 指数函数
9章. 無限級数
10章. ベクトル
11章. 偏微分
12章. 重積分
13章. ベクトル解析
14章. 微分方程式
15章. 論理と上部構造
1Gで超実数を構成しますが,この節は他の章に比較して高度なので
(超実数体の存在を証明抜きに認めてしまえば)飛ばしても理解できます.
2章から14章がいわゆる普通の微分積分で,15章は超準解析のより発展的な事項との橋渡しです.
4 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 01:04:44
1章. 超実数
1A. 超実数体の(代数的)構造
1B. 標準部分
1C. 超実数体の公理
1D. 移行の公理の帰結
1E. 集合の自然延長
1F. 付録. 実数体の代数構造
1G. 超実数体の構成
1F. 付録. 実数体の代数構造
1章はまず1Fから始めるのが良いんじゃないかと.
大抵の標準的な微分積分の本に載ってる内容.
一応環とかイデアルとかを定義はしますが(微分積分の範囲では)ほとんど使わないので
知らなくても大して困りゃしません.
5 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 01:07:00
(可換)環:環(ring)とは0 ∈ R,+ と・は R 上の二変数函数,
- は R 上の一変数函数で,任意の a, b, c ∈ R に対して以下の性質を満たすような
構造(R, 0, +, -, ・)である.
a + b = b + a, ab = ba (交換法則)
a + (b + c) = (a + b) + c, a(bc) = (ab)c (結合法則)
a + 0 = a
a + (-a) = 0
a(b + c) = ab + ac (分配法則)
(a + (-b)のことをa - bと書く.またa・bのことをabと書く.)
部分環:環 R の部分環 S とは R の部分集合 S で0を含み,
+,-,・に関して閉じているもののことである.部分環はそれ自身,環となる.
イデアル:イデアルとは,環 R の部分環で,a ∈ I,r ∈ R ならばar ∈ Iとなるもののこと。
これって、只の物好き、って事は無いんですか?
7 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 01:09:22
剰余類: R を環, S をその部分環とする.要素 r ∈ R の
S による(/ S を法とする/modulo S での)剰余類とは,集合
coset(r) = { r + s : s ∈ S }
のことである.
同値関係:集合 A 上の同値関係とは, A 上の二項関係≡で
a ≡ a (反射法則)
a ≡ b ならば b ≡ a (対称法則)
a ≡ b かつ b ≡ c ならば a ≡ c (推移法則)
を満たすもののことである.
命題1.35 S を環 R の部分環とする。
このとき関係 a - b ∈ S は R 上の同値関係となる.さらに
a - b ∈ S ならば coset(a) = coset(b),
a - b ∈ S でないならばcoset(a) ∩ coset(b) = Ø.
準同型:環 R から環 S の中への準同型とは,
函数 h : R → S で,任意のa, b ∈ R に対して
h(0) = 0, h(a + b) = h(a) + h(b), h(-a) = -h(a), h(a・b) = h(a)・h(b)
となるもののことである.
同型:環 R から環 S への同型とは,
準同型 h : R → S で R を Sの上に一対一に移すようなもののことである.
9 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 01:15:38
いやそのスレを占拠するのも何だかな,と思ったので…
まあsmooth infinitesimal analysisの話題とかを無限小解析の話題だからって
こっちに持って来られても困るわけですが.
>>6 そうかもw
>>3 せっかく無限小解析導入しといてベクトル解析や常微分方程式の所までしかいかないのかこの本は
もったいないな
>>2 >超フィルターの選び方に依存しない一意的に定義可能な超実数
そんなものがあるんですか!!
よろしければ詳しく教えてください!
12 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 05:38:50
ペレルマンの数学には人の目を引くところがない。一見、冴えがないのである。
仮に中盤で解決できそうになったとする。プロなら、それを探し出して一気に解こうとする。
ところが、ペレルマンはそういった常識に囚われない。
有利な態勢になっても、決して解決を急がない。
ポアンカレ予想に対して、ゆっくり解こう、などと考えるのは大変な素質で、
恐るべき底の深さを感じる。
全盛時代のドリーニュは、「最初のチャンスは見送る」と言っていた。
何となく似ているではないか。
底の深さと言えば、もう一つ感じたことがある。
それは、人生経験が数学にプラスするだろう、と思わせる点で、
ペレルマンは五十歳くらいまで年々進歩するはずだ。
もしかしたら、ここ数年がピークなのではないか、
という感じのタオと違う、人間的なスケールの大きさがある。
「たくさん未解決問題を解くのはタオ君でしょうが、ここ一番で仕事をするのはペレルマン君のような気がしますね」
長尾少年の言である。恐らく当っているだろう。
13 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 19:47:52
>>11 1章1Gと15章のそれぞれ終わりのほうで,一応解説されています.
Shelahの論文はネットで読めますよ.モデル論の知識が必要ですが.
1Gにはかなり大雑把にしか書いてませんが,
N 上の超フィルターには定義可能な全順序を簡単に入れることができるので,
なんかどうも,その順序を使って超フィルターの
任意有限個の積の"極限"を取るような操作をすることによって構造を一意に定める,
みたいなことをすれば良いようです.
実際にはKanoveiとShelahはもう少し洗練された手法を用いているらしく,
定理15.39と定理15.40あたりにそれっぽい結果がかいてあります.
14 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 19:48:46
体:体とは構造(F, 0, 1, +, -, ・, ^(-1))で,
(F, 0, +, -, ・)が環となり,1∈F,^(-1)はF-{0}からFの中への函数であり、
Fの任意の要素a≠0に対して以下が成り立つようなものの事である。
1≠0 (非自明性)
1・a = a
a・a^(-1) = 1
部分体:体 F の部分体とは F の部分集合 G で, 0 と 1 を含み,
+,-,・,^(-1)に関して閉じているもののことである.G はそれ自身が体となる.
拡大体:体 G が与えられたとき, G の拡大体とは,体 F で
G が F の部分体となるようなもののことである. G の真の拡大体とは,
拡大体 F で F ≠ G となるようなもののことである.
順序体:順序体とは体 F と二項関係 < で任意の a, b,c ∈ F に対して
以下の法則が成り立つようなもののことである.
a < b かつ b < c ならば a < c. (推移法則)
a < b,a = b,b < aのちょうどどれか一つだけが成り立つ.(三者択一)
a < b かつ c = c ならば a + c < b + c.
a < b かつ 0 < c ならば ac < bc.
15 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 19:49:15
例
Z,整数のなす環
Q,有理数のなす順序体
R,実数のなす順序体
C,複素数のなす体
GF(2),1 + 1 = 0として 0 と 1 のただ二つの要素のみからなる体.
Z は Q の部分環,Q は( R を含む)任意の順序体の部分体で,
R は C の部分体である.偶数の集合は Z のイデアルとなる.
h(n) = 0 n が偶数のとき
1 n が基数のとき
で定められる写像 h : Z → GF(2)は Z からGF(2)の上への準同型となる.
16 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 19:50:21
a・b のことを ab,ab^(-1) のことをa/b,
a < b または a = 0 のことを a ≦ b と書く.
a の 絶対値 |a| を
|a| = a 0 ≦ aのとき
-a a < 0のとき
で定義する.
命題1.36 以下の代数的な規則が成り立つ.
a(-b) = (-a)b = -(ab)
0 < 1
-(-a) = a
a ≠ 0 ならば (a^(-1))^(-1) = a
-(a - b) = b - a
a, b ≠ 0 ならば (a/b)^(-1) = b/a
|-a| = a
|ab| = |a||b|
a < b ならば -b < -a
0 < a < b ならば 0 < b^(-1) < a^(-1)
命題1.37 順序体において b, d ≠0ならば
(a/b) + (c/d) = (ad + bc)/bd
(a/b)(c/d) = ac/bd
17 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 19:51:59
完備順序体:順序体 F は,
空でない部分集合 X ⊆ F が上界を F の中に持つならば
必ず最小上界を F の中に持つとき,完備であるという.
順序同型:順序体 F と G は,
F から G への順序同型 h で,
任意の a, b ∈ F に対して
a < b ⇔ h(a) < h(b) となるとき順序同型であるといわれる.
定理1.38 完備順序体が存在する.任意の二つの完備順序体は順序同型である.
この定理は完備順序体が同型の違いを除いて一つしかないことを示す.
完備順序体のことを実数体といい,R であらわす.
後半の一意性の証明は,x ∈ R' に対して{ q ∈ Q : q < x }の
R'' における最小上界を h(x) とおけばよい.
前半の存在の証明は,完備順序体を実際に構成することによって行われる.
小数展開による方法,Dedekind の 切断による方法,有理数のCauchy 列の同値類を
取る方法などがあるが,いずれの場合も「定義可能な」完備順序体が得られる.
(有限超有理数のなす環を無限小超有理数のなすイデアルで割ったりする方法もあるみたい)
18 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 19:55:58
自然数:順序体 F における自然数の集合 N = {0, 1, 2, ......}は
F の部分集合 X で,0 を含み,x ∈ X ならばx + 1 ∈ X となるような
最小の集合として定義される.
帰納法の原理:もし,0 ∈ Y かつ, n ∈ Y ならば n + 1 ∈ Yとなるとき,
N ⊆ Y.
系1.39 全ての空でない N の部分集合は最小要素を持つ.
19 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 19:56:24
Archimedes性:順序体 F は,任意の x ∈ F に対して
それより大きい n ∈ N が存在するとき(つまり N が F の中で有界でないとき)
Archimedes性を持つといわれる.
1D で R はArchimedes性を持つが、R^* は持たないことを見る.実は次が成り立つ.
定理1.40 順序体 G がArchimedes性を持つ ⇔ G は R の或る部分体と同型.
(証明の概略 G がArchimedes性を持つ ⇔ Q は G で稠密.
Q と G のDedekind完備化をQ~,G~とすると Q~ と G~ はどちらも完備順序体となる.)
20 :
132人目の素数さん:2008/03/17(月) 19:57:12
区間:実区間 I とは R の部分集合で,
a, b ∈ I かつ a < c < b ならば c ∈ Iを満たすようなもののこと.
区間は次のうちどれかになる.
有界閉区間 [a, b] = { x : a ≦ x ≦ b }.
有界開区間 (a, b) = { x : a < x < b }.
有界半開区間 [a, b), (a, b].
非有界開区間 (a, ∞) = { x : a < x }, (-∞, b) = { x : x < b }, (-∞, ∞) = R.
非有界半開区間 [a, ∞), (-∞, b]
>>13 >N 上の超フィルターには定義可能な全順序を簡単に入れることができるので,
初心者ですみません><
どのようにしたら全順序を入れられるのでしょうか?
>>21 章1.Gの29ページのlemma1.58より後にやり方書いてあるぞ
序数の概念使うからまずは序数知らんといけない
>>21 いずれ出て来ますが,簡単に言うと
まず N の冪集合 P(N) に全順序を定義した後,
連続体濃度 c から P(N) への函数のうち,値域が
N 上の超フィルター U_a となるものの全体に辞書式順序を入れます.
まあ私もまだ超フィルターの構成を最後まできちんと分かってないのでアレなんですが.
あ,超フィルターの構成ってか
>>13の定義可能な超実数のモデルのことです.念のため.
25 :
132人目の素数さん:2008/03/18(火) 19:48:36
訂正
順序同型の定義
>>17の2行目
誤: F から G への順序同型 h で,
正: F から G への(体としての)同型 h で,
26 :
132人目の素数さん:2008/03/18(火) 19:49:01
1A. 超実数体の(代数的)構造
これから超実数体の公理をいくつか仮定してその性質を調べていきます.
1Aと1Bでは以下の三つしか使いません.( 1C であと二つ出て来る.)
公理A
R は完備順序体である.
公理B
R^* は R の拡大順序体である.
公理C
R^* は正の無限小,つまり 0 < εかつ,どんな正の実数 r ∈ R に対しても
ε < r となるような要素εを含む.
公理Cは R^* が R の真の拡大順序体であることを仮定すれば,
R の完備性から導けます.R を実数体, R^* を超実数体と呼びます.
27 :
132人目の素数さん:2008/03/18(火) 19:51:15
定義1.1 超実数 x ∈ R^* が
無限小であるとは,任意の正の実数 r に対して |x| < r となること:
有限であるとは或る(正の)実数 r に対して |x| < r となること:
無限大であるとは任意の(正の)実数 r にたいして |x| > r となることである.
二つの超実数 x, y ∈ R^* は x - y が無限小であるとき,
無限に近い x 〜 y という.
定義1.2 超実数 x ∈ R^* に対して, x の単子(モナド) を
monad(x) = { y ∈ R^* : x 〜 y }
で定義する.また, x の銀河を
galaxy(x) = { y ∈ R^* : x - y は有限 }
で定義する.
本によっては monad のことを halo と呼ぶものもある.
定義から, x ∈ R^* が無限小 ⇔ x 〜 0 ⇔ x ∈ monad(0),
x ∈ R^* が有限 ⇔ x ∈ galaxy(0)
28 :
132人目の素数さん:2008/03/18(火) 19:52:27
定理1.3 有限超実数の集合 galaxy(0) は R^* の部分環である.
つまり有限な超実数の和,差,積は有限である.
定理1.4 任意の二つの銀河は相等しいか,交わらないかのいずれかである.
定理1.5 無限小超実数の集合 monad(0) は R^* の部分環であり,
また galaxy(0) のイデアルである.つまり,
(i) 無限小の和,差,積は無限小である.
(ii) 無限小超実数と有限超実数との積は無限小である.
monad(0)は R^* のイデアルとはならないことに注意.
系1.6 任意の二つの単子は相等しいか,交わらないかのいずれかである.
関係 x 〜 y は R^* 上の同値関係となる.
定理1.7 (i) x ≠ 0 は無限小 ⇔ x^(-1) は無限大.
(ii) monad(0) は galaxy(0) の極大イデアルである.つまり
monad(0) ⊂ I ⊂ galaxy(0)となるようなイデアル I ≠ monad(0)は存在しない.
証明 (ii) I を monad(0) ⊂ I となるような galaxy(0) のイデアル,
b ∈ I - monad(0) とすると(i)より b は無限大ではないので
b^(-1) ∈ galaxy(0).従って 1 = b・b^(-1) ∈ I となり、
任意の c ∈ galaxy(0) に対して c = 1・c ∈ I つまり I = galaxy(0)となる.
>>23 ありがとうございます!!
P(N)上に全順序を定義できるんだからその部分集合である超フィルタにも
全順序を定義できるのは確かに当然でしたね><
当たり前のこと聞いてスミマセンでした><<
間違えました><
超フィルタの中に全順序定義するんじゃなくて超フィルタ同士に
全順序定義するんでしたね><
もう一度考えてみます!!!
正確に言うと
>>23のように,
U_a たちに全順序を入れるのではなくて
添字の a たちの集合 A に全順序を入れます.
a から U_a への対応は単射でないので,
ここから U_a たちの間の全順序を入れることは容易ではないと思います.
ただし超実数のモデルを一意的に定義するにはこれで充分のようです.
>>23でそう書くべきでした.すみません.
「 N 上の超フィルター全体に全順序を定義可能か?」
という問題はまた少し違った問題で私には良く分かりません.
整列順序とかはまず定義出来そうにないですが.
>>31 スミマセン……Uの添え字は何を意味するのでしょうか??
あ,定義するの忘れてましたね.
a は連続体濃度 c から P(N) への函数 a : c → P(N) で,
range(a) が N 上の(自由)超フィルターとなるものです.
>>1のリンク先のpdfを見るのが結局は一番早いかも.
>>33 ありがとうございます!!
>>13の超フィルター同士の積というのはどのようにして定義したらよいのでしょうか?
ええと,p.29の真ん中あたりに載っているんですが,
半分お話みたいな感じで書いてあって,
私も超フィルターの積が本当に超フィルターになってるのかとか,
まだきちんと確かめてません.
1章の終わりに載ってるのでもうしばらく待って頂ければ
超フィルターの積の定義も出てくるかと思います。
36 :
132人目の素数さん:2008/03/19(水) 18:16:32
1B. 標準部分
1Aでは実数体が完備であるという性質は使わなかったので,
本質的には順序体とその拡大順序体の性質を調べていたことになる.
1Bでは完備性を用いて標準部分の原理を証明します.
定理1.9 (標準部分の原理) 任意の有限な x ∈ R^* は,
一意的に定まる或る実数 r ∈ R と無限に近い.
つまり任意の有限な単子はちょうど一つ実数を含む.
証明 一意性:x 〜 r , x 〜 s ,r, s ∈ R とすると r 〜 s より r = s .
存在: t を X = { s ∈ R : s < x } の最小上界とすると, t 〜 x となる.
定義1.10 有限な x ∈ R^* が与えられたとき,
一意的に定まる実数 r 〜 x を x の標準部分と呼び, r = st(x) と表す.
37 :
132人目の素数さん:2008/03/19(水) 18:17:00
系1.11 x と y を有限とする.
(i) x 〜 y ⇔ st(x) = st(y).
(ii) x 〜 st(x).
(iii) r ∈ R ならば r = st(r).
(iv) x ≦ y ならば st(x) ≦ st(y).
定理1.12 標準部分函数は galaxy(0) から実数体の上への環としての準同型である.
つまり任意の x, y ∈ galaxy(0) に対して,
(i) st(x + y) = st(x) + st(y).
(ii) st(x - y) = st(x) - st(y).
(iii) st(xy) = st(x)st(y).
系1.13 x と y を有限とする.
(i) st(y) ≠ 0 のとき, st(x/y) = st(x)/st(y).
(ii) x ≧ 0 , y = [n]√(x) ( x の n 乗根)のとき, st(y) = [n]√(x).
39 :
39:2008/03/19(水) 21:35:30
3=√9
1C. 超実数体の公理
(一階述語論理を使わずに)残りの二つの公理を述べるための言葉の定義.
n 変数の実函数とは R^n の部分集合から R への
写像 f : R^n → R を表すものとする.
変数とは文字 x, y, z,...... のことである.
実定数とは実数 c ∈ R のことである.
項(term)とは以下で定まるような表現(expression)のことである.
・全ての変数は項である.
・全ての実定数は項である.
・ τ_1,......, τ_n が項で f が n 変数実函数ならば
f(τ_1,......, τ_n)は項である.
(以上によって項となるものだけが項である.)
項と項の値とは別のものであることに注意.
項 f(x) とは飽くまで文字列としての f(x) のこと.
41 :
132人目の素数さん:2008/03/21(金) 22:20:08
等式とは σ = τ (σ, τ は項)という形の表現のことである.
不等式とは σ ≦ τ, σ < τ, σ ≠ τ (σ, τ は項)
のいずれかの形の表現のことである.
式(formula)とは等式,不等式または 「 τ は定義されている」,
「 τ は定義されていない」( τ は項)の形の主張(statement)のことである.
式系(system of formulas)とは一つ以上有限個の式の集まりのことである.
n 変数 x_1,......, x_n に関する式系 S の実解とは
S の式の x_i に c_i を代入したときに全ての式が定義され、成り立つような
実数の n 個組(c_1,......, c_n)のこと.
「 τ は定義されている」,「 τ は定義されていない」の形の主張は
便宜上付け加えられているだけで,本当は必要が無い.
項 τ(x_1,......, x_n) に対して g を
g(c_1,......, c_n) = 1 τ(c_1,......, c_n) が定義されているとき
0 τ(x_1,......, x_n) が定義されていないとき
によって定まる函数 g : R^n → R とする.
τ が定義されているのは (c_1,......, c_n) が
g(x_1,......, x_n) = 1 の解となるとき,またそのときに限り,
τ が定義されていないのは (c_1,......, c_n) が
g(x_1,......, x_n) = 0 の解となるとき,またそのときに限る.
42 :
132人目の素数さん:2008/03/21(金) 22:20:31
以下の公理が(*, R, R^*)の三つ組として超実数体の性質を定める.
* を自然延長写像という.
公理A
実数体 R は完備順序体である.
公理B
超実数体 R^* は R の拡大順序体である.
公理C
R^* は正の無限小,つまり 0 < εかつ,どんな正の実数 r ∈ R に対しても
ε < r となるような要素εを含む.
公理D(函数の公理)
任意の n 変数実函数 f に対して対応する n 変数超実函数 f^* が存在する.
f^* は f の自然延長と呼ばれる.
R の体の演算の自然延長は R^* の体の演算となる.
n 変数 x_1,......, x_n に関する式系 S の超実解とは
S の式 f をその自然延長 f^* でおきかえ,変数の x_i にそれぞれ c_i を代入したときに
全ての式が定義され、成り立つような超実数の n 個組(c_1,......, c_n)のこと.
公理E(移行の公理)
同じ変数を持つ二つの式系 S と T が与えられたとする.
全ての S の実解が T の実解であるとき,全ての S の超実解は T の超実解となる.
43 :
132人目の素数さん:2008/03/23(日) 22:43:02
1D. 移行の公理の帰結
「移行の公理Eは見た目よりもずっと強力であるが,その射程を余すこと無く
説明するにはロジックの概念を必要とし,15章まで待たねばならない」
ということなので本節ではもっと簡単に得られ,
微分積分の展開を容易にするような一般的帰結で,導きます.
まず移行の公理は T の変数が S よりも少なかった場合にも成立することを示す.
T を変数 x_1,......, x_k に関する式系であるとする.
(c_1,......, c_k)が T の解であるとき,
(c_1,......, c_k,......, c_n )は T の解を含むという.
系1.14 S と T を T の変数が S の変数の部分集合となるような二つの式系とする.
全ての S の実解が T の実解を含むなら,全ての S の超実解は T の超実解を含む.
証明 S を x_1,......, x_n に関する式系とし,
S に自明な式 x_1 = x_1,......, x_n = x_n を加えたものを考えればよい.
系1.15 同じ変数を持つ式系 S と T が、同じ実解を持つならば,これらは同じ超実解を持つ.
(これは1976年の初版では解の公理と呼ばれていたものである.)
実函数 f はしばしば
f(x_1,......, x_n) = y ( S のとき)
の形で定義される.このとき,自然延長 f^* は同じ法則のもとに定義される.
(1Bの最後に既に平方根, n 乗根が出て来た.)
44 :
132人目の素数さん:2008/03/23(日) 22:43:37
系1.16(i) S が任意の実数について成り立つならば,任意の超実数について成り立つ.
(ii) S がどの実数についても成り立たないならば,どの超実数についても成り立たない.
証明 S を x_1,......, x_n に関する式系とし,
式系 x_i = x_i ( 1 < i < n)もしくは式系 x_i ≠ x_i ( 1 < i < n)を考えれば良い.
系1.17 f を n 変数実函数,c_1,......, c_n を実定数とする.
f(c_1,......, c_n)が定義されているならば f(c_1,......, c_n) = f^*(c_1,......, c_n)
証明 f(c_1,......, c_n) = c とし,式系 f(c_1,......, c_n) = c, x = x を考えればよい.
これより,通常は f^* の * を落として, c_i が実数或いは超実数であるとき,
f^*(c_1,......, c_n) を単に f(c_1,......, c_n) と表す.
系1.17より問題は混乱は起きない.
命題1.18はあまり重要そうではないので省略.要するに,公理 B を
「R^* が R の拡大体であり,R の順序 <^* が三者択一の法則を満たす」
( <^* は実函数に関する不等式の自然延長を考えるときの R^* での順序)と弱めても良いという話.
今後,通常は <^*,≦^* の * を省く.
終了?
47 :
(´_J`) ◆i5fLQuQbu2 :2008/03/31(月) 12:28:53
名前付けました.
これ結構しんどいですね.
本の半分くらいは予習済みなんですが,それでも時間の掛かること掛かることw
訂正
定理1.7
>>28の証明の2行目
誤:(i)より b は無限大ではないので
正: b は無限小ではないので(i)より
命題1.18
>>44の話の2行目
誤: R の順序 <^* が三者択一の法則を満たす
正: R^* の順序 <^* が三者択一の法則を満たす
他にも細かいミスは幾らかあるようですが…
次の定理で移行の公理を T が S より多くの変数を持つ場合にまで拡張します.
この定理は今後,ある性質を満たす超実数の存在を言いたいときに
しばしば使われます.
定義1.19 T を x_1 ,......, x_k ,......, x_n に関する式系とする.
T の部分実解とは k 個組 (c_1 ,......, c_k) で,
T の実解 (c_1 ,......, c_k ,......, c_n) へと延長出来るものを言う.
部分超実解も同様に定義される.
定理1.20(部分解定理) S を x_1 ,......, x_k に関する式系,
T を x_1 ,......, x_k ,......, x_n に関する式系とする.
以下は同値である.
(i) S の任意の実解は T の部分実解である.
(ii) S の任意の実解は T の部分超実解である.
(iii) S の任意の超実解は T の部分超実解である.
証明 (i)⇒(iii)⇒(ii)⇒(i)の順に示す.
記法の簡略化の為 S がただ一つの変数 x のみを持ち,
T が2変数 x , y のみを持つ場合について示す.
一般の場合も全く同様に示せる.
(i)⇒(iii) (i)を仮定する.任意の S の実解 x_0 に対して,
y_0 = f(x_0) を (x , y_0) が T の部分実解となるように定めると,
(1) 任意の S の実解は「 f(x) は定義されている」の解である.
(2) 任意の S ∪ { y = f(x)} の実解は, T の解である.
移行の公理より,(1),(2)は超実解の場合にも成り立つ
従って(iii)が成り立つことが分かる.
(iii)⇒(ii)は明らか.
(ii)⇒(i) (ii)を仮定する. x_0 を S の実解とし,
x_0 が T の部分実解でなかったとしよう.
T(x_0 , y) を, T の式系の変数 x に実定数 x_0 を代入した式系とする.
T(x_0 , y) は実解を持たないので,系1.16
>>44より T(x_0, y) は超実解を持たない.
しかし(ii)及び x_0 が S の実解であるという仮定に反する.
従って x_0 は S の部分実解.□
1読めばいいんじゃないの?
和訳してるのか?
俺は楽しみに読んでるんでどんどん続けてくれ。
どーしたんですかー
55 :
132人目の素数さん:2008/04/26(土) 01:16:33
age
すいません、四月になって忙しくて時間が…
Kunenも読みたいんだけど全然進んでないし…
待ってる
まだですかー
59 :
132人目の素数さん:2008/05/11(日) 10:26:29
hage
mage
まだか
62 :
132人目の素数さん:2008/05/30(金) 22:35:25
age
そろそろか?
64 :
132人目の素数さん:2008/06/20(金) 17:59:52
age
65 :
132人目の素数さん:2008/06/20(金) 18:28:01
超準解析のスレにこんなのが載っていました。ご参考までに。
Alain Connes が解析系でフィールズ賞取ったのも
作用素環と超準解析を合体させた論文による。
もし作用素環だけに関する論文だったら、
多分フィールズ賞にはならなかった筈だ。
今の現状は知らないが、
フィールズ賞を受賞するる基準において
昔は解析系は軽視されていたそうだ。
400
67 :
132人目の素数さん:2008/07/29(火) 16:53:08
これ(スレのテキスト)は、古い教科書の改訂版じゃなくて、
上級向けにまとめたもの(著者サイトでは「companion」と表現)だよね。
門外漢にはきつめなので、教科書のほう(これもPDFあり)からいくずら。
68 :
132人目の素数さん:2008/09/05(金) 14:24:05
age
451
うるさい。
605
助けて下さい!!
人任せの罪は重々承知…助けて下さい!!
連投罪…ウヘー
無限小解析的な記述に直して下され…
落ち着け
77 :
132人目の素数さん:2009/01/21(水) 03:00:08
age
何を助けろっちゅーねん
79 :
132人目の素数さん:2009/03/08(日) 03:48:49
518.
80 :
132人目の素数さん:2009/03/09(月) 23:16:09
infinitesimal analysisの前にsmoothがつくとどういう意味になるんですか?
928
889
279
374
まだかー
870
910
200
90 :
132人目の素数さん:2010/07/18(日) 23:17:45
?
??
???
851