1+1=?

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3132人目の素数さん
証明するには前提となる公理系が要請されていなければならない.

1+1=2 は自然数の範囲で示せばいいと思うので,ここではペアノの公理系を採用する.

公理1 自然数 0 (先頭元)が存在する.

公理2 任意の自然数 a にはその後者 (successor)、suc(a) が存在する.

公理3 0 はいかなる自然数の後者でもない(0 より前の自然数は存在しない).

公理4 異なる自然数は異なる後者を持つ:a ≠ b のとき suc(a) ≠ suc(b) となる.

公理5 0 がある性質を満たし,a がある性質を満たせばその後者 suc(a) もその性質を満たすとき,すべての自然数はその性質を満たす.(数学的帰納法)

定義 suc(0)=1, suc(1)=suc(suc(0))=2, suc(2)=suc(suc(suc(0)))=3 などと略記する.

定義 f(1)=suc(a),f(suc(x))=suc(f(x)) を満たす関数 f を定義する.

この関数は,これから示すが自然数の和の法則を満たし,f(b) は a に b を加えた和 a+b を表すことがわかるので,f(b)=a+b と略記できる.

4132人目の素数さん:2005/08/23(火) 12:20:28

定理1 f(0)=a (つまり f(0) の略記 a+0 に対して,a+0=a となるから 0 は和の右単位元である.)

証明 f(suc(x))=suc(f(x)) で x=0 を代入して f(suc(0))=suc(f(0)),suc(0)=1で左辺を置き換えて,f(1)=suc(f(0)).

f(1)=suc(a) で左辺を置き換えると,suc(a)=suc(f(0)).

公理4の対偶をとって,a=f(0) がいえる.



定理2 g(1)=suc(0),g(suc(x))=suc(g(x)) を満たす関数 g を定義すると,g(a)=a.

(つまり g(a) の略記 0+a に対して,0+a=a となるから 0 は和の左単位元である.)

証明 a に関する数学的帰納法.

g(suc(x))=suc(g(x)) で x=0 を代入すると g(suc(0))=suc(g(0)),g(1)=suc(g(0)),suc(0)=suc(g(0)),公理4の対偶で 0=g(0)である.

x=a のとき,g(a)=a とすると,g(suc(x))=suc(g(x)) で x=a とすると,g(suc(a))=suc(g(a))=suc(a) より x=suc(a) でも成り立つ.

ゆえにすべての自然数 a で g(a)=a といえる.



定理3 0 は和の単位元である.(つまり a+0=0+a=a)

証明 定理1,2 より明らか.
5132人目の素数さん:2005/08/23(火) 12:21:25
定理4 f(1)=suc(a),f(suc(x))=suc(f(x)) を満たす関数 f と,g(1)=suc(b),g(suc(x))=suc(g(x)) を満たす関数 g を定義すると,f(b)=g(a).(つまり f(b)=a+b,g(a)=b+a に対して和の交換律 a+b=b+a が成り立つ.)
証明 a, b に関する数学的帰納法.

a=0 について,定理1,2 より成り立つ.

a で成り立つと仮定する.

 b=0 なら定理 1,2 より成り立つ.

 f(b)=g(a) と仮定.f(suc(b))=suc(f(b))=suc(g(a))=f(suc(a)) より f(suc(b))=f(suc(a)) でも成り立つ.

よって,すべての a, b について成り立つ.

よって,交換律が成り立つ.

よって,f(1)=suc(a),f(suc(x))=suc(f(x)) を満たす関数 f は自然数の和の性質を満たしている.

具体的に f がどんな関数か書いてみる.たとえば a=5 なら,

f(1)=suc(5)=6,f(suc(x))=suc(f(x)) を満たす関数 f は

f(2)=f(suc(1))=suc(f(1))=suc(6)=7,これが 5+2=7 を表す.

f(3)=f(suc(2))=suc(f(2))=suc(7)=8,これが 5+3=8 を表す.

定理5 1+1=2 である.
証明 f(1)=suc(1), f(suc(x))=suc(f(x)) を満たす関数 f について,

f(1)=suc(1)=suc(suc(0)).つまりf(1)=suc(suc(0)).

f(1) は 1+1 の略記であり,suc(suc(0)) は 2 の略記であるから,1+1=2