『解析概論』について2

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772132人目の素数さん
43. 絶対収束・条件収束
  (中略)
級数が収束して,しかも絶対収束をしないときは,それを条件収束という。
  (中略)
 さて,蚤_n において項の符号が一定でないときには,正項を p_1, p_2, …, 負項を -q_1, -q_2, …
と書くとき,p=廃_n,q=拝_n として
                 s = p - q
とするならば,…
  (中略)
 以上は絶対収束の場合である。条件収束(*)の場合には,pもqも共に∞で,s=p-q は無意味で
あるが,s_n = 納ν=1,L] p_ν - 納ν=1,m] q_ν において,正項と負項との配置のためにかろうじて lim s_n が確定する
のである。従って項の順序が収束性に重大なる関係を有せねばならない。実際, 条件収束の級数
は,項の順序を適当に変更して,任意の和に収束せしめ,または収束性を失わしめうることを,
Dirichlet(1829)が指摘した。
773132人目の素数さん:2006/03/10(金) 00:54:30
例えば,蚤_n の項の順序を次のように変更して,任意の正数cに
収束せしめることができる。すなわち,まず正項p_1, p_2, … を順次に加えて,p_αに至って,和が
初めてcよりも大きくなるとする。次に負項-q_1, -q_2, … を加えて,-q_βに至って,和が初めて
cよりも小さくなるとする。次にはまた和がcよりも大きくなるまで正項p_(α+1), p_(α+2), …,p_(α+γ) を加
え,次に和がcより小さくなるまで, 負項-q_(β+1), -q_(β+2), …, -q_(β+δ) を加える。廃_νも拝_νも∞だ
から,このような操作を限りなく継続することができるが,そのようにして生ずる級数
  p_1+p_2+…+p_α-q_1-q_2-…-q_β+p_(α+1)+p_(α+2)+…+p_(α+γ)-q_(β+1) -q_(β+2)-… (2)
においてα,β,γ,δは少くとも1以上だから,蚤_n のすべての項が,いつかは一度用いられて,
(2)は実際 蚤_n の項の順序の変更である。さてこの級数(2)がcに収束することは,その構成
から明かであろう。
774132人目の素数さん:2006/03/10(金) 00:55:38
実際,今二つの負項-q_λと-q_(λ+1)との間に正項 p_μ,p_(μ+1),…,p_νが挟まれてい
るとして,それらの項に対する部分和を考察する。そのとき -q_λ までの部分和はcより小さいが,
それとcとの差はq_λを超えない。そこへ正項p_μ,p_(μ+1),…を加えて行けば,部分和は増大するが,
p_νに達せぬうちは,部分和はcより小(大でない)で,cと
の差はq_λを超えない。p_νに至って部分和は初めてcを
超えるが,cとの差はp_νを超えない。正項の間に挟まれ
た負項に対する部分和も同様で,部分和s_nとcとの差は,符号の変わるところにあるp_ν,q_λを超
えない。然るに,蚤_nは収束するから,番号が限りなく大きくなるとき,p_νもq_λも限りなく小
さくなる。故に(2)はcに収束する。
 同じようにして,部分和を任意の値c_1,c_2に集積せしめ,または絶対値において限りなく大き
くすることもできるであろう。

* 条件収束とは,項の順序を乱さない条件の下において,一定の和に収束することを指すのである。

改訂第三版 (1961) 第4章, §43, p.145-146