複素関数論スレッド§2

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変形理論とは局所的なモジュライ理論のことである。
モジュライ空間が特異点を持たない場合、モジュライ空間は局所的な1次近似によって記述できる。その局所的な1次近似は、微小変形を記述するコホモロジー群である。

1950年代の小平−スペンサーによる高次元複素多様体の複素構造の変形理論は、非線型偏微分方程式を幾何学に応用した最初の例である。
その後、アティヤーやドナルドソンたちオックスフォード学派がアティヤー・シンガーの指数定理からヤン・ミルズ方程式の解のモジュライの問題へと進むのは70-80年代のことである。
小平−スペンサーの理論はモジュライ理論の基礎であり、時代を20年も先取りしていた。

リーマン面のモジュライの問題は重要な問題で、その高次元化をしたのが小平−スペンサーの理論である。小平は、リーマン面の理論の高次元化として高次元複素多様体論を築いてきたが、複素構造の変形理論も高次元化した。
小平が発見したコホモロジー的観点の重要性はその後広く認識されることになり、ホッジ構造の変形理論へと大きく発展していった。