代数多様体という幾何学的対象のゼータ関数と、
解析的に定義される保型形式との関係は
整数論において非常に基本的なものであり、
このような関係が存在することは現在広く信じられている。
ワイルズによるフェルマー予想の証明に利用された、
楕円曲線とモジュラー形式の関係を与える谷山−志村予想は
この関係の最初に見いだされた例である。
この予想は、志村多様体という代数多様体の特別なクラスについては、
いくつかの場合に証明されている。
その証明にはエタール・コホモロジー、セルバーグのトレース公式等の
現代数学の最高の技法が駆使される。
セルバーグのトレース公式の一般的な形は難解であるが、
しばしば、これをレフシェッツ型のより幾何学的なトレース公式で
代用することができる。
藤原氏はリジッド解析空間のコホモロジーについての基礎的研究を行い、
レフシェッツ型のトレース公式についてのドリーニュ予想など
いくつかの有名な予想を解決した。
さらに、数年前からは、谷山ー志村予想についてのワイルズの結果を
ヒルベルト・モジュラー形式に拡張することを試み、
これについても著しい結果を出している。
とくに、テーラー・ワイルズの方法を公理化した可換環論的手法は強力であり、
すでに多くの研究者によて利用されている。
藤原氏のこの方面の研究はヒルベルト・モジュラー形式に止まらず、
多変数の保型形式の理論に大きな影響を与えつつある。