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math夫さん:
「dxの意味」についてはやはり厳密な議論は初等的には出来ませんので、
これは諦めますが、多分参考になるであろう事を若干書きます。
一般に(微分可能な)関数f(x)に対して、dfと書かれる「f の微分」とい
う概念があります。この概念が導関数(あるいは微分商と呼ばれる)df/dx
に比べて、捉え難い理由は、導関数は関数なのであるのに対して「微分」
は関数でも数でもないという点です。言わばそれらとは関係があるが全く
別の概念なのです。勿論、直観的には「微小変化」という事で捉えられる
し、それはそれで有用な解釈なのですが、数学的に厳密に捉えるのは初等
的には容易ではありません。歴史的に見ても、上で言う微分の概念は
ニュートンの師バーロウが既に持っていたものですが、数学的な基礎付け
はずっと後の話しです。ですから、ここではこの「微分」の定義をするよ
り、何故その様なものを考えるのか、導関数だけではいけないのは何故か、
という点と、微分と導関数の関係について説明します。まず、微分を考え
る理由は
「導関数」という概念は座標の取り方に依るが、「微分」は依らない
という事です。つまり、導関数を求めている時、即ち関数 fの「微分をす
る」という時、我々は必ず何らかの座標、例えば xについての導関数を求
めている訳です。違う座標をとれば導関数は異なります(鎖法則ですね)。
ですから、解析力学や微分幾何学等で「座標の取り方に依らない」より明
解な議論をしようとする時に、導関数よりも微分の概念の方が重要となり、
そのため微分形式等の理論装置が出来て来た訳です。
ではこの微分という物と導関数の関係はどうなっているのでしょうか。ま
ず、「微分」というものそのものは依然得体の知れないものだが「微分」
には関数が掛けられる、つまり、微分×関数はまた微分になるという事を
認めて下さい。さらに座標関数(例えば、 xという関数)を考えて下さい。
これの「微分」dxはちょっと特別な性質を持ってます。それは「任意の関
数の微分はdxに何らかの関数を掛けた形に一意的に書ける」という事、つ
まり、微分可能などんな関数 fを持って来ても df = h dxとなる様な別の
関数 hが必ず見つかり、しかも唯一見つかるという事です。実はこの hと
いうのが「座標 xに関する fの導関数」なのです。これから導関数を微分
商の形に書いた優雅な式 df=(df/dx)dx が得られる訳ですが、これは二つ
の微分を割って得られたという物ではなく、上の様な手続きで得られた式
なのだという方が若干厳密です。