朝日新聞の戦争責任

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昭和19年2月23日毎日新聞朝刊
勝利か滅亡か 戦局はここまで来た
 大東亜戦争の戦局は太平洋の戦勢をめぐっていまや建国以来二千六百四年、国歩の艱難
なる今日より大なるはないのみか、大和民族の存亡如何が決せられんとするの有史以来、
未曾有の難局にわれわれは直面するに至っている。
 マーシャル(諸島)よりトラック(諸島)へ、敵は遂に帝国の光輝ある領土、内南洋ーわが
太平洋の"海の生命線"に対し、決戦を企図しての総攻撃を集中し来った。(中略)
 かくて敵はソロモン(諸島)、ニューギニアに着々とその侵攻の線を伸ばし来り、いまや
ラバウル上空に連日間断なく大兵力を挙げて殺到するとともに、一転して中部太平洋方面
に新たなる作戦を展開、ギルバート(諸島)よりマーシャルへ、マーシャルよりトラックへ
と突撃し来った南太平洋と中部太平洋相呼応しての鋏状作戦の展開である。ここに敵の太
平洋作戦の目標がある。鋏の刃の合するところ即ち、南よりの二つの作戦線の延長の合す
るところ、そこに敵の目標がある。具体的にいえば、トラックーその付近海域と更に進ん
では、その西方海域こそはガダルカナル以来の敵の太平洋作戦の大目標であったのだ。
 トラックないし同方面の制海権ないしは制空権を万が一にも敵の優越に委ねた場合、如
何なる事態を招来するかは地図を繙けば一目瞭然であろう。帝国が戦争遂行上、南方戦略
資源地帯とわが本土を結ぶ海上交通の確保は決定的に重大である。(中略)
 国家存亡の岐路に立つの事態が、開戦以来二年二カ月、緒戦の赫々たるわが進攻に対す
る敵の盛り返しにより、勝利か滅亡かの現実とならんとしつつあるのだ。大東亜戦争は太
平洋戦争であり、海洋戦である。われらの最大の敵は太平洋より来寇しつつあるのだ。海
洋戦の攻防は海上において決せられることはいうまでもない。しかも太平洋の攻防の決戦
は日本の本土沿岸において決せられるものではなくして、数千海里を隔てた基地の争奪を
めぐって戦われるものである。本土沿岸に敵が侵攻し来るにおいては、最早万事休すであ
る。ラバウルにせよ、ニューギニアにせよ、マーシャル、トラックにせよ、わが本土防衛
の重要なる特火点たる意義がここにある。
昭和19年2月23日毎日新聞朝刊
 今こそわれらは戦勢の実相を直視しなければならない。戦争は果たして勝っているか。
ガダルカナル以来、過去一年余、わが忠勇なる陸海将士の血戦死闘にもかかわらず、太平
洋の戦線は次第に後退の一途を辿り来った血涙の事実をわれわれは深省しなければならない。
 航空兵力が主兵力たり、血戦兵力となった現下の太平洋の戦いにおいて、われわれは航
空機が膨大なる消耗戦たる事実を三省(よく省みること)しなければならない。(中略)ガダ
ルカナル以来のわが戦線が次第に後退のやむなきに至ったのも、アッツの玉砕も、一にわ
が海洋航空兵力が量において劣勢であったためではなかろうか。(中略)
 空中戦闘と海上の艦隊決戦において如何に勝利を獲得するとも、海上補給に際して敵航
空機の網にかかっては補給はできないのである。敵航空機の海上補給攻撃に対してこれを
防衛するには、わが航空兵力をもって対抗するほかなきはもちろんである。(中略)太平洋
の攻防ともに航空兵力こそ勝敗の鍵を握るものなのである。
 しかも、敵は昨年十月二十七日モノ島上陸に火蓋を切ったソロモンの大攻勢作戦以来、
南太平洋にも、中部太平洋にも、基地航空兵力と機動部隊、即ち海軍航空兵力を結集して
来攻しつつあるのだ。
 敵の戦法に対してわれらの戦法を対抗せしめねばならない。敵が飛行機で攻めに来るの
に、竹槍をもっては戦い得ないのだ。問題は戦力の結果である。(中略)帝国の存亡を決す
るものはわが海洋航空兵力の飛躍増強に対するわが戦力の結集如何にかかって存するので
はないか。(後略)