読売と朝日の比較スレッド その4

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77文責:名無しさん
英国総選挙についての社説の比較。

・読売
「英総選挙 どうなるユーロへの最終決断」
「総選挙の特徴は、むしろ史上最低の投票率という、有権者のしらけ気分だったとさえいえる。」
「ブレア再選は、好調な経済を追い風に教育、医療など公共サービスへの一層の改革努力を強調し、現職の有利さがもたらしたものだろう。ただ、自由主義と社会的公正を両立させる、いわゆる「第三の道」戦略の成功とは言い切れない。その具体的成果はまだ道半ばといってもよいからだ。」
「この選挙の最大の争点になったのは、やはり欧州共通通貨「ユーロ」への参加問題である。ユーロ問題は、選挙戦の前半ではわきに隠され、しかし、後半は、本来の位置に据えられたが、英国にとってそれだけ悩ましいテーマである。そうであっても、通貨主権を失い、歴史や政治文化にも重大な影響のあるユーロ参加への決断は、決して容易ではないだろう。決断はいつになるのか。日本の経済界の欧州戦略にとっても、大きな関心事である。注目していきたい。」

・朝日
「英労働党大勝 政治の風景が変わった」
「英国の総選挙は予想された通りブレア首相の労働党が大勝した。サッチャー時代から18年も政権にあった保守党を下した、97年の前回選挙とほぼ並ぶ結果である。これだけ大差をつけての連続勝利は過去半世紀に例がない。」
「ブレア氏は、路線をすっかり右向きに切り替えた。かつて英国が誇った国営医療は、保守党時代からの放置で医師や看護婦が足りない。教育などの公共サービスや福祉も投資不足が指摘されるが、ブレア政権は過去4年あまり予算を増やさなかった。いずれも2期目には増やすと公約したが、同時に学校や医療でも民間への委託を拡大することで、税金を使わずにサービスを改善するサッチャー流の手法も採る。」
「お株を奪われた形の保守党はさらに右へ押しやられた。欧州通貨ユーロへの参加に反対して「ポンドを救え」と訴えたが、国民投票で意思表示すればよいと有権者は考えており、空振りに終わった。」
「たとえば選挙公約だ。労働党の公約集は実に具体的に書かれている。年金なら「基礎年金を03年までに単身者で週77ポンド、夫婦で週123ポンドに引き上げる」といった具合で、金額や実施時期を明示している。日本の昨年の総選挙で「現役世代の手取り収入のおおむね6割を確保し、国民が安心できる制度を構築します」とするだけだった自民党の公約とは比較にならない。どんな生活が期待できるのか有権者に分かるようにするのが公約というものだ。日本の政党もそれを心がけてもらいたい。」

朝日は批判精神をもっていると考えている読者も多いが、必ずしもそうではありません。中共、北朝鮮は言うに及ばず、就任直後のまきこさん等批判などありませんでした。読者層と人気、発行部数への影響を図りながら最新の注意を払う論陣のバランス感覚は他紙を寄せ付けません。今回の英国総選挙も社説中で批判はありません。逆に読売は投票率が史上最低であること、改革の道半ばとのネガティブな分析を付け加えています。

今回の選挙の争点がユーロ参加であったことは間違いありません。読売のほか日経などもこの部分に対して多くのスペースを割いてコメントをしています。しかし、この話題は読者にはわかりにくすぎます。遠く離れた英国での出来事であり、しかも小難しい経済の話題です。多くの読者が欧米の予算等に興味が無く、自分の財布へ出入りする金のことしかイメージできないことを考えると、ユーロの話題で社説を締めくくることは好ましくありません。そのために、朝日はここでも「ユーロ」という言葉のかっこいい響きには反応できても、その中身の話になるととたんにチンプンカンプンな読者の視点にたった文章を作っています。

まず、今回の争点の「ユーロ」が「お株を奪われた形の保守党はさらに右へ押しやられた。欧州通貨ユーロへの参加に反対して「ポンドを救え」と訴えた」として、ユーロ論議を「右左」の論議に落としています。これなら朝日読者でも理解できます。右翼左翼の「右」ならイメージできます。また、遠い海の向こうの英国の話では実感がわかない読者がほとんどです。そのため選挙公約を日本と比較し、「自民党の公約とは比較にならない」と自民党をけ落としています。もちろん選挙公約がいい加減なのは自民党だけではなりません。他の野党も同じです。しかし、ここでは読者に理解しやすい社説のストーリーをつくる必要があります。民党を悪のお手本に仕立ればストーリーがすっきりし、普段から政府批判を期待している潜在不満を抱える朝日読者に素直に受け入れられるのです。とにかく、書くことがなければ政府と自民の批判をしていれば、朝日の読者は喜んでくれるのです。

小難しい英国選挙の話も朝日にかかると本当にわかりやすくなります。