読売と朝日の比較スレッド

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99つづき
・朝日
(5月1日朝刊、トップ)
「教科書採択から「教師の意向」の排除が進む 本社調査 29都道府県教委が手続きを変更」
「「つくる会」に沿う形」
「公立小中学校で来年から使う教科書を市区町村の教育委員会が選ぶ「教科書採択」にあたり、教師らの調査機関が教科書を推薦したり、学校ごとに希望をとったりする制度を廃止する例が全国に広がっていることが朝日新聞社の調査で分かった。これらの変更は、歴史認識を巡って論議を呼んでいる中学歴史教科書の編集を主導した「新しい歴史教科書をつくる会」の主張に沿っている格好だ。実際に教科書を使う教師の意向が反映されにくくなる可能性があると、反発も出てきている。 」
「「新しい歴史教科書をつくる会」は、今回の採択に向けて(1)「絞り込み」や「学校票」をなくす(2)保護者らの参加や情報公開を進める−などを主張してきた。」
「採択の中心を担うのは教師 浪本勝年・立正大教授(教育法)の話」
「教科書採択で教師の意見を反映しにくくなるのはおかしい。採択では教師、学校が中心的役割を担うべきで、保護者や関係者の意見は参考として聞くべきだ。教室で自分が使う教科書を人に押し付けられるのでは、より良い授業はできない。教育の専門家である教師が採択で力を発揮しなければならない。」
(朝刊、34ページ、第2社会面、トップ)
「教科書選びで教師外し 教委まかせ、大丈夫? 不安と反発、現場に充満」
「教師たちが授業で使う教科書選びに、自らの希望が届かない。来年4月から小中学校で使われる新教科書選びでは、そんな状況が多くなりそうだ。教科書選びの権限を握る教育委員会の採択過程で、教師や学校に使いたい教科書を推薦してもらうのを止める動きが全国的に広がっているからだ。」
「「教科書採択の民主化を求める神奈川の会」の本間昇代表は「教育現場の意見を聞くのに整理委員は役立ってきた。授業をやったこともない教委委員が教科書を選べるわけがない」と反発する。」
「出版労連教科書対策委員会の吉田典裕さんは、「教師らの間では「つくる会」教科書への反発も予想される。その意見をなるべく排除し、同会の教科書が選ばれやすくするのが目的なのは明らかだ。保護者参加なども教員の影響力を弱める方策に使われてしまっている」とみる。」

教科書採択の問題を「つくる会」の教科書に縛り、教科書問題キャンペーンを張る朝日の記事には迫力と感動があります。建設的な意見ではなく、やり場のない怒り。多くの読者が冷静な論調よりも、怒りの感情に引き込まれることを朝日は理解して論陣を張っているのです。「不安と反発、現場に充満」、読者の感情を揺り動かすいい表現です。昨日の社説で「悪」のイメージを植え付けた「つくる会」を引き合いに出し、「つくる会」の画策で、教科書採択が「悪」に支配されかけているとするストーリーです。ここでは現場の教師達が「悪」に敵対する無力な同情を引く「善」の被害者として描かれています。もちろん教委が「つくる会」息のかかった人というわけではありませんが、ストーリーの都合上教委は教科書を選ぶ権限を独り占めする、無能な、「つくる会」の太鼓持ちのイメージで見られる必要があります。

「善」である現場教師の意見を聞かないで、「悪」の教委が勝手に教科書を選んでしまうことについて、さらなるイメージの固定化のために権威者による、公正な立場を装ったコメントが必要になります。そこで選ばれたのが家永訴訟の際に検定反対の立場で大騒ぎした浪本教授です。三流大学であっても一応大学教授ということであり、世間向けの肩書きとしては問題ありません。大学予算も少なく貧乏であり、アルバイトには前向きです。それでいて、朝日好みのコメントを書いてくれる最適な人物です。また、記事中にコメントを出している吉田氏は、韓国から日本の良心勢力と褒め称えられた(*1)「子どもと教科書全国ネット21」に所属する人です。

今日の朝日もさえています。記事もコメントを求めた3流権威者の選び方も計算され尽くしたものでした。

(*1)下記参照
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2001/04/26/20010426000006.html