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朝日新聞、アンケートによる世論創出:
10月1日、朝日のアンケートです。あまりにも興味深い質問方法なので、すべて掲載します。なお、読売のアン
ケートも先週ありましたが、アンケート実施という点において特記事項が無く、つまらないものだったので捨て
てしまいました。
いつもながら、他紙とは異なったアンケート結果を生み出す朝日新聞。自社の主張に沿った答えを引き出し、洗
脳した読者を安心させる結果はどのように生み出されているのか見てみたいと思います。「世論調査では質問の
仕方によって結果を左右することが可能である。したがて「世論調査によって世論を作ることも可能」とさえ言
われている」(浅井晃著「調査の技法」)。改めて読むと朝日の調査の質問項目は、世論を作り出す、すばらし
いものだと気づきます。
Q1 小泉内閣を支持しますか。支持しませんか。
Q2 どういうわけでそう思いますか。
・首相が小泉さん 16
・自民党の首相 6
・政策の面 28
・連立政権のあり方 6
・なんとなく 12
・その他・答えない 2
Q3 小泉内閣のよいところ、わるいところについて伺います。
Q4 あなたはいま、どの政党を支持していますか。
Q1からQ4まではお決まり質問ですが、Q2だけが気になりました。複数の選択肢を並べる自由回答法は、集計を単
純化するというメリットがありますが、同時に無理に強いた回答を求めてしまいますし、最初の選択肢が後に影
響を及ぼしてしまうという問題点があります。そもそも支持の理由が1つである必要はないので、この質問自体
が好ましい者ではありません。特に電話では選択肢を一覧できないため、最初の選択肢を選ぶ可能性が増えてし
まいます。「政策の面」を真ん中に置き、「首相が小泉さんだから」という選択肢を先頭に置くことによって、
首相は政策面での評価は選択肢を逆に配置した場合よりも小さくなります。また回答者の頭の中に、「小泉は個
人人気先行で政策が弱いんだ」と言うイメージが起想されるようになっています。
Q5 アメリカの同時多発テロについておうかがいいたします。アメリカは軍隊をペルシャ湾岸地域などに展開し、報復攻撃を準備しています。あなたは、アメリカのこうした対応を支持しますか。
・支持する 42
・支持しない 45
・その他・答えない 13
Q6 それでは、日本の対応についておうかがいいたします。あなたは、同時多発テロへの対応で、日本がアメリカに協力することに賛成ですか。反対ですか。
・賛成 62
・反対 25
・その他・答えない 13
Q7 アメリカへの協力の一環で、小泉首相は、アメリカの軍隊を後方支援するために、新しい法案をつくり、自衛隊を派遣する方針を打ち出してきました。実施されれば国連の活動を除き、初めての自衛隊の海外派遣になります。あなたは、自衛隊の派遣に賛成ですか。反対ですか。
・賛成 42
・反対 46
・その他・答えない 12
Q8 与党三党は、この法案の中で、自衛隊が武器を使う基準をこれまでより緩めることを盛り込む考えです。あなたは、武器使用の基準を緩めることに賛成ですか。反対ですか。
・賛成 39
・反対 51
・その他・答えない 10
Q5からQ8は、回答は2者択一と問題はありませんが、質問文の長さに驚かされます。公正な調査のための質問の
設計にはいくつかの原則があります。簡潔であることと質問文で回答者に影響を与えなことです。しかし、質問
中に「アメリカは軍隊をペルシャ湾岸地域などに展開し、報復攻撃を準備しています」、「アメリカへの協力の
一環で、小泉首相は、アメリカの軍隊を後方支援するために、新しい法案をつくり、自衛隊を派遣する方針を打
ち出してきました。実施されれば国連の活動を除き、初めての自衛隊の海外派遣になります」といった、ほとん
ど記事に等しい、状況の一面的な解説が入っています。これは質問と言うより社説と同様の意思表示の一過程と
とらえることができ、回答者はこのような形で提供された情報から影響を受けた回答をしてしまいます。
Q5では「こうした対応を支持しますか」と問うていますが、「こうした」というあいまいな表現は調査の質問と
しては避けなければならないものです。引用された文以外のどのような行動が質問に含まれているか回答者には
わからないからです。もし、「アメリカは軍隊をペルシャ湾岸地域などに展開し、報復攻撃を準備しています」
を「アメリカは5000人以上の死者を出したテロ組織の再発防止のため、報復攻撃を準備しています」とすると回
答は大きく異なってくると思われますが、通常のアンケートではこのような回答に影響を与えるような誘導をし
てはならないのです。