やっちゃった!今日の朝日のドキュン記事 その98

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2012/06/04(月)の朝日新聞朝刊11面オピニオン面 〈風〉コラム記事

『従軍慰安婦の碑 米国が見た日本の戦争責任』 立野純二 パリセイズパークから


その石碑は地元でも知らない人がいたという。それを一躍有名にしたのは、海を越えた
日本からの抗議だった。

腰の高さほどの御影石。約60センチ四方の銅板には、うずくまる女性に指図をする
兵士の後ろ姿が彫られている。「日本帝国軍部に拉致された20万人以上の女性を悼む」。
それは従軍慰安婦の碑だ。

ニューヨーク郊外のニュージャージー州パリセイズパーク市。住宅街の図書館の脇に碑が
据えられたのは、2010年秋だった。人口2万の半分は韓国系。州内の韓国系市民団体
が発案した碑の計画に特に反対も出なかった。

イタリア系のジェームズ・ロタンド市長は、それまで慰安婦とは何かも知らなかったという。
ベトナム戦争などの既存の碑に、戦争の悲劇を伝える碑を加えることに「違和感は感じな
かった」と語る。「ナチスを責めても今のドイツは平和国家と誰もが思うのと同じで、今
の日本は当時と違う国と考えているから」

その市長をこの5月、ニューヨークの日本総領事が訪れた。サクラなどの寄贈案に触れつつ、
この碑が日米友好の妨げになりかねないと指摘。さらに後日、自民党の国会議員4人が訪れ、
文言が「事実に反する」とし、撤去を求めた。論議は平行線をたどり、市長は撤去を拒んだ。

「慰安婦の碑、反目を深める」。そう報じたのはニューヨーク・タイムズだ。同紙のサイト
では、この記事に165通の読者の声が寄せられている。うち90通は市の立場を支持。
「戦争責任を隠そうとする日本の圧力に屈するな」との声が大半だ。「米国には関係ない」
などと碑の撤去を求めたのは9通だった。
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この図書館の司書役スティーブ・カバロさん(56)は、各地で様々な歴史学習会を開いて
おり、広島・長崎を取り上げたこともある。慰安婦問題では、当時の朝鮮人当局者への女性
たちの深い怒りにも触れ、「歴史は一方的に悪者を決めることはできない」と説いていると
いう。「この件で傷ついた日本人がいるなら残念だ」と私にこぼした。

日韓の歴史をめぐる対立については、欧米のNGO「国際危機グループ」が2005年に提言
を出した。日本政府には慰安婦ら戦争被害者に公金での補償を促し、韓国政府には日本から
の支援が経済発展をもたらしたことを認めて謝意を表明するよう勧めた。その実現の兆しは
ない。

提言をまとめた米国人のピーター・ベックさん(現在、アジア財団韓国代表)は、深いため息
をついた。「日韓が共に相手の民族主義的な発言や行動に過剰反応している。感情論を抑える
ような政治の指導力がどちらにもないから希望も見えない」

韓国への戦後補償をめぐる日本政府の姿勢は一貫している。1965年の日韓請求権協定で
「解決済み」というものだ。国際法上も常識とされてきたが、国際司法に詳しい明治大学の
大沼保昭特任教授は「その解釈が長続きできる保証はない」と言う。近年の国際法の考え方は、
人権保護を幅広く認める方向へ流れが加速しているからだ。

戦争責任を負う国家対人間の構図がある限り、史実や法の解釈論を繰り出しても、国際世論は
「弱者救済」に味方するのは当然だろう。アジアを代表する人権国家を自負するならば、その
日本の尊厳のために、もう一度、戦後責任を考え直すべきではないか。(アメリカ総局長)