続き
☆国連は今や存在しないも同然に
核拡散防止やアフガニスタン復興に貢献するため、大胆な演説で国際世論の支持を呼びかける
わけでもない。人権の擁護者として活躍するどころか、難民を助けようともしない。例によって
名誉学位を受けるため4月にマルタを訪問したときは、マルタがアフリカからの不法移民を船で
イタリアに送り出している問題について聞かれたが、答えは逃げ腰だった。「介入する立場にない」
スリランカ内戦で多くのタミル人が「人間の盾」として反政府組織に海岸沿いに連行されても、
潘とその顧問たちはニューヨークの国連本部で手をこまねくだけで、やっと現地に赴いたのは内戦が
終わってからだ。
彼の指揮の下、国連は単に役立たない組織になっただけでなく、あってもなくてもほとんど関係ない
存在になった。潘の欠陥は、彼が韓国の外交官として働いた数十年を振り返っても明らかだ。
当時のあだ名「官僚中の官僚」が、その欠陥をよく物語っている。潘にとって幸運なことに、そして
世界にとっては不運なことに、徹底して反米的なアナン前事務総長に手こずった後、アメリカの
ブッシュ前政権は官僚タイプを求めていた。アジアから国連事務総長を選ぶ順番が回ってくると、
ブッシュ政権のコンドリーザ・ライス前国務長官は、潘を当選させることを自らの使命と心得た。
だが外部の専門家には、潘は不評だった。ジャーナリストのジェームズ・トラウブは、著書「善意」の
なかで、事務総長選の最中の潘がニューヨークのシンクタンク、外交評議会で行った演説を
回想している。「退屈な演説と意味のわからない下手な英語のせいで、ついうたた寝をしてしまった」