【赤い酔星】中日新聞・東京新聞こそ電波その40

このエントリーをはてなブックマークに追加
114文責・名無しさん
なぜ理性は働かなかったのか?
北朝鮮「ミサイル」発射 日本社会の反応 星野智幸 作家

 北朝鮮の発射したミサイルが日本のどこかに落下してきたら迎え撃ってやるというので、
迎撃ミサイルのPAC3なる兵器等が関東から東北に配備されたころ、私は振り込め詐欺のことを考えていた。
 どれほど用心していても振り込め詐欺に引っかかってしまうのは、なぜなのか。 
 振り込め詐欺は、「オレオレ詐欺」とも言われるように、誰かになりすまして金をだまし取る犯罪である。
だから、いかにうまく別人になりすますかが重要なのだろう、と私は思っていた。
 ところが二ヶ月ほど前、NHKのある情報番組を見ていたところ、その考えは覆された。一番のポイントは脳なのである。
脳はパニックを起こすと、自動的に理性の働きを止める性質があるという。突然目の前に木が倒れてきたりしたとき、
これは危険だろうか安全だろうか、などと理性を働かせて考えていたら死んでしまうので、
理性を止めて反射的に逃げることを優先するのである。 
 振り込め詐欺の場合に、理性が抑え込まれる、すなわち疑ったり考えたりすることができなくなると、どうなるか。
ただ相手の言いなりになるか、感情を爆発させるだけになるか、要するに反射的な行動しか取れなくなる。 
 つまり、相手をだましたかったら、おかしいかどうかを判断する能力を奪えばよい。それゆえ、
命にかかわる事故を起こして今すぐ治療費が必要だ、などと唐突に告げて相手をパニックに陥らせ、
状況判断ができないうちに言いなりにさせるのだ。 
 私はミサイル騒動のニュースに接しながら、これではまるでオレオレ詐欺に引っかかっているようなものではないか、 
と思ったわけである。 
 詐欺をする人間が悪い。これは無条件の大前提である。だから、何を措いてもまず、ミサイルを発射する者が悪い。
これを告発し、糾弾するのは当然である。 
 その一方で詐欺らしきことが行われようとしていると感づいたら、自分がパニックに陥らず、
冷静に見きわめようと努めることが肝心だろう。それがこけおどしの詐欺ならば、詐欺だと見抜いているぞ、
だから成果はないぞ、というメッセージを相手に伝えることに腐心すべきだ。 
115文責・名無しさん:2009/04/08(水) 23:17:51 ID:PxvQKawh0
 ところが今回、日本社会がとった行動は、進んでパニックに陥るという選択だった。こけおどしのミサイルに、
「日本を狙いやがった」と激昂し、自らの理性をストップさせ、ただただ感情を爆発させた。四日の土曜日、
ミサイルが発射されてないにもかかわらず、誤探知して「発射」と発表したのも、理性が押さえ込まれていたゆえの
混乱と私の目には映った。相手が判断する能力と落ち着きを失ってくれれば、詐欺師の主導でその後は展開することができる。
これでは詐欺師の思う壺ではないか。 
 では、なぜ日本は自ら進んでパニックを起こしかけたのであろう。日本上空を利用した北朝鮮のミサイル外交は
すでに何度か体験しており、もはやそんなこけおどしに引っかかるような初心でもあるまいに、どうして日本だけが
突出して過剰反応したのだろうか。 
 そのように日本政府が誘導したからである。少なくとも態度としては、軍事的に対応するそぶりなど見せずに国内に
冷静さを保つよう呼びかけていれば、住民がここまで不安に駆られることもなかっただろう。こけおどしの詐欺なのに、
「強盗殺人を犯すかもしれないぞ」といって不安をあおったのは、身内の有力者だったのである。
 北朝鮮がミサイル発射を強行した背景には、病気をした金正日総書記の求心力を高める狙いもあった、などと言われている。
同じことが日本の政府にも言えよう。統治能力を失っている政府が求心力を高めるために、たまたま目の前で行われた詐欺に加担したのだ。
 パニックに陥り感情を爆発させていたら、だれが本当に味方で、誰が詐欺師なのか、その判断もつかなくなる。
われわれ日本社会の住人は、あまりにも安易にパニックや感情の爆発に身をゆだねる癖がついてはいないだろうか。