やっちゃった!今日の朝日のドキュン記事 その87

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157文責・名無しさん
朝日新聞 2008年(平成20年)10月28日 火曜日 大阪 13版 20面 生活面

CM天気図──天野祐吉(コラムニスト)
ことばの不況

 宙に浮いた解散の日を横目に見ながら、自民と民主の両党が、テレビ広告をはじめた。が、どっ
ちもどっちでどっちらけ、ことばの不毛だけが際立っている。

 政治家の武器はことばだ。金ではない。が、どっちの政党広告を見ても、こっちに届いてくる
ことばがまったくない。

 たとえば、自民党のテレビ広告の中の、麻生さんのことばはこうだ。

 「麻生太郎です。不安を抱えながら生きるのは何よりつらいことです。景気への不安、暮らし
の不安を払拭(ふっしょく)するため、景気対策の補正予算成立に全力を注ぎました。そして、
次の対策へ。世界規模の金融危機から、日本の経済を、国民の生活を守るため、さらなる景気対
策を進めます」

 これって、なに? 127字も使ってるのに、なにも伝わってこない。国民がいってほしいのはこん
な解説じゃなく、「私は日本をこうしたい、こうしようじゃないか」という主張だ。それを誠実
に、簡潔に、センスよく、50字くらいで。

 「ザ・ホワイトハウス」というアメリカのテレビドラマのシリーズがある。それを見ていると、
大統領と補佐官たちが、国民に届くことばを選びとることに、骨身をけずっている様子が見えて
面白い。

 もちろんこれはフィクションだが、もうすぐホワイトハウスの住人になりそうなオバマさんに
しても、テレビを見ていて「ことばのプロだなあ」とつくづく感心する。麻生さんは話し上手と
いうことになっているんだろうが、必要なのは「話のプロ」ではない、「ことばのプロ」だ。

 マンガもけっこうだが、「ザ・ホワイトハウス」なんかに学ぶほうがいいんじゃないだろうか。
お金の不況よりも、ことばの不況のほうが、ぼくはこわい。